説明

画像形成方法及びこれを用いる画像形成装置

【課題】立体画像を形成する時に、画像の乱れを防止でき、トナー飛散を防止できる画像形成方法及びこれを用いる画像形成装置を提供する。
【解決手段】電子写真方式によりトナーを用いて画像を形成する画像形成装置100に用いられ、表面に静電潜像が形成される感光体ベルト1の表面を帯電させる帯電工程と、感光体ベルト1表面に露光することで静電潜像を形成する露光工程と、感光体ベルト1表面にトナーを供給してトナー像を形成する現像工程と、トナー像を転写用紙7に転写する転写工程と、トナー像を転写用紙7に定着させる定着工程とを備えて、現像プロセスを複数回繰り返し行うことで立体的な画像を形成する画像形成方法において、レーザ照射によりトナー像を溶融する溶融工程と、レーザ照射によりトナー像が溶融した後にトナー像上に新たなトナー像を積層する積層工程とを備えることを特徴とするものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法及びこれを用いる画像形成装置に係り、特に、電子写真方式によりトナーを用いて画像形成を行う静電複写機、レーザプリンタ及びファクシミリ等の画像形成装置に採用される画像形成方法及びこれを用いる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ及びファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置において、トナーを用いて立体画像を形成する立体画像形成装置がいくつか提案されている。
【0003】
特許文献1には、トナー像形成を複数回繰り返すことで立体画像を形成する手段が提案されている。
【0004】
特許文献2には、トナーに発泡剤を内包させ、定着部で加熱する事で発泡剤を発泡させることで立体画像を形成する方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献3には、トナーに発泡剤を内包させた立体画像形成法において、表面に透明保護シートを設けることで耐久性を向上させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−63039号公報
【特許文献2】特開2000−131875号公報
【特許文献3】特開2005−134559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記文献の従来技術より立体画像を形成する場合には、つぎのような問題を有している。
【0008】
具体的には、特許文献1に提示されている手段によれば、トナー層を用紙上に順次積み上げていくことで立体画像を形成することができる。しかしながら、用紙上に転写されたトナーは、静電気で紙上に保持されているため、トナー積層工程を繰り返すことにより、帯電したトナー同士が反発することでトナーが飛散したり、積み上げたトナー画像が崩れたりすることで画像乱れが発生するという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に提示されている手段によれば、発泡剤を内包するトナー像を画像定着時に熱で膨張させることで立体画像を形成することができる。しかしながら、熱で膨張したトナーは、高さ方向に熱を伝導し難くなるので、定着部において紙表面まで熱が伝わらずに定着性が悪いという問題があった。また、熱発泡によるトナー像の高さ調整は、ばらつきが大きく制御困難であるという問題があった。
【0010】
また、特許文献3に提示されている手法によれば、発泡剤内包トナーの定着性を改善するために、紙面上に形成されたトナー像の表面側に透明の熱圧着保護シートを重ね、定着部でトナーを挟むように紙に貼り付けることで立体画像を形成することができる。しかしながら、透明の保護シートというサプライ品が増加するため、コストが増大するとともに、保護シートと熱発泡トナーとの間に隙間が生じ、画像欠損になる場合があるという課題があった。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、立体画像を形成する時に、画像の乱れを防止でき、トナー飛散を防止できる画像形成方法及びこれを用いる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための本発明に係る画像形成方法及びこれを用いる画像形成装置は、次の通りである。
【0013】
本発明は、電子写真方式によりトナーを用いて画像を形成する画像形成装置に用いられる画像形成方法であって、表面に静電潜像が形成される静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電工程と、前記静電潜像担持体表面に露光することで静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像担持体表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記転写されたトナー像を記録媒体に溶融定着させる定着工程と、を備えて、現像プロセスを複数回繰り返し行うことで立体的な画像を形成する画像形成方法において、レーザ照射によりトナー像を溶融する溶融工程と、前記レーザ照射によりトナー像が溶融した後に前記トナー像上に新たなトナー像を積層させる積層工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明は、前記溶融工程を前記転写工程の後に実行し、すなわち、前記レーザ照射により溶融されるトナー像及び前記トナー像に新たに積層されるトナー像を前記記録媒体上に直接形成するようにし、前記溶融工程において、前記レーザ照射によりトナー像を溶融して前記記録媒体に定着させる条件を、前記記録媒体に最も近いトナー像を溶融定着させる場合とそれ以外のトナー像を溶融定着させる場合とで異なる条件とすることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、前記溶融工程において、前記記録媒体に最も近いトナー像を定着させる時のレーザ出力を、それ以外のトナー像を溶融定着させる時のレーザ出力よりも大きくすることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、前記溶融工程において、前記記録媒体に最も近いトナー像を溶融定着させる時のレーザ照射時間を、それ以外のトナー像を定着させる時のレーザ照射時間よりも長くすることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、前記転写工程として、前記静電潜像担持体表面に形成されたトナー像を前記記録媒体に転写する前に中間転写媒体に一時的に転写する中間転写工程を備え、前記溶融工程を、前記中間転写工程の後に実行して、前記中間転写媒体において、順次積層されるトナー像を溶融定着させるレーザ照射側の面を、前記記録媒体と接触する面とすることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、前記定着工程において、前記中間転写媒体上のトナー像を前記記録媒体に一括転写定着させる時は、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着手段を前記中間転写媒体に前記記録媒体を当接させて、それ以外の時(例えば、立体画像形成時)は、前記定着手段を前記中間転写媒体から離間させることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、前記定着工程が実行される前に前記記録媒体を予備加熱する加熱工程を備えることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明は、表面に静電潜像が形成される静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体表面を帯電させる帯電装置と、前記静電潜像担持体表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像担持体表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記転写されたトナー像を記録媒体に定着させる定着装置とを備えて、現像プロセスを複数回繰り返し行う画像形成方法により立体的な画像を形成する画像形成装置において、前記画像形成方法として、請求項1乃至6のうちの何れか一項に記載の画像形成方法を用いることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明は、前記定着装置よりも記録媒体搬送方向上流側に、前記記録媒体を予備加熱するための加熱部を設けることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、前記転写装置として、前記静電潜像担持体表面に形成されたトナー像を前記記録媒体に転写する前に一時的に転写する中間転写媒体を備え、前記中間転写媒体を、該中間転写媒体を保持するバックアップ部材によって前記定着装置と対向する位置に設け、前記定着装置として、前記中間転写媒体とともに前記記録媒体と圧接する加圧部材を備え、前記バックアップ部材の構成を、前記中間転写媒体上に形成されたトナー画像を前記記録媒体に一括転写定着させる時に前記中間転写媒体を介して前記加圧部材と当接する部分の表面硬度が、前記中間転写媒体に接触することでニップ部を形成する前記加圧部材の表面硬度よりも低くなるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電子写真方式によりトナーを用いて画像を形成する画像形成装置に用いられる画像形成方法であって、表面に静電潜像が形成される静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電工程と、前記静電潜像担持体表面に露光することで静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像担持体表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記転写されたトナー像を記録媒体に溶融定着させる定着工程と、を備えて、現像プロセスを複数回繰り返し行うことで立体的な画像を形成する画像形成方法において、レーザ照射によりトナー像を溶融する溶融工程と、前記レーザ照射によりトナー像が溶融した後に前記トナー像上に新たなトナー像を積層させる積層工程と、を備えることで、トナー像を順次重ね合わせて立体画像を形成する際に、トナー像をレーザ照射により瞬時に選択加熱・冷却させた後に溶融固化したトナー像上にトナー画像を転写していくので、重ね合わされる直前のトナー像が固体状態(粉体ではない)になるため、重ね合わせ時に元画像が崩れることを防止して、高さが減ったり画像が乱れることがない良好な立体画像が得られる。また、転写トナー像と元画像のトナー像がぶつかり合って発生するトナー飛散を防止することができる。
【0024】
また、本発明によれば、前記溶融工程を前記転写工程の後に実行し、すなわち、前記レーザ照射により溶融されるトナー像及び前記トナー像に新たに積層されるトナー像を前記記録媒体上に直接形成するようにし、前記溶融工程において、前記レーザ照射によりトナー像を溶融して前記記録媒体に定着させる条件を、前記記録媒体に最も近いトナー像を溶融定着させる場合とそれ以外のトナー像を溶融定着させる場合とで異なる条件とすることで、効率的にトナー像を前記記録媒体に溶融定着させることができる。
【0025】
すなわち、記録媒体に一番近いトナー像を定着させる場合、トナーを十分溶融させてトナーが記録媒体の表面繊維に絡みつくようにしないと、一度定着したトナー画像が簡単に剥がれ落ちてしまう(定着不良)。特に、レーザ加熱でトナー像のみを選択的に加熱する場合は、非接触加熱法となるため、十分定着させようとすると、トナーを出来るだけ低粘度になるよう加熱して、毛管現象による浸透効果をあげる必要がある。更に、十分粘度の下がったトナーが記録媒体の繊維に絡みつかせるため、溶融したトナーが記録媒体の繊維内に流れ込むための時間と、繊維にトナーが絡み易くするために記録媒体のトナーと接触する部分を十分暖めるための時間も必要となる。そのため、記録媒体に一番近いトナー層とそれ以外を溶融定着させる場合では、定着条件を変更してすることで余分なエネルギーを削減することができる。
【0026】
具体的には、特に、最初に記録媒体(例えば、紙)上に転写形成されるトナー層(第一トナー層)を定着させる場合は、それ以降のトナー画像を定着させる場合よりレーザ出力を強くするように制御する、もしくはレーザの走査時間を遅くする。このようにすることで、第一トナー層を十分溶融させ、紙の繊維質の間の隙間に溶融トナーをしみこませることができるので、十分な定着性を確保することができる。
一方、第一のトナー層以外をレーザ加熱する場合は、第一のトナー層をレーザ加熱する条件より低いレーザ出力にすることで余計なエネルギー消費を防止できる。あるいは、操作時間を短くすることで処理時間の短縮を図ることができる。
【0027】
また、本発明によれば、前記溶融工程において、前記記録媒体に最も近いトナー像を定着させる時のレーザ出力を、それ以外のトナー像を定着させる時のレーザ出力よりも大きくすることで、トナーを十分溶融させて前記記録媒体へのアンカー効果を高めることができる。
【0028】
また、本発明によれば、前記溶融工程において、前記記録媒体に最も近いトナー像を定着させる時のレーザ照射時間を、それ以外のトナー像を定着させる時のレーザ照射時間よりも長くすることで、トナーを十分溶融させて前記記録媒体へのアンカー効果を高めることができる。すなわち、トナーの表面温度を上げて記録媒体と接する面のトナー溶融粘度を下げて定着性を良好にすることができる。
【0029】
また、本発明によれば、前記転写工程として、前記静電潜像担持体表面に形成されたトナー像を前記記録媒体に転写する前に中間転写媒体に一時的に転写する中間転写工程を備え、前記溶融工程を、前記中間転写工程の後に実行するようにして、前記中間転写媒体において、順次積層されるトナー像を溶融定着させるレーザ照射側の面を、前記記録媒体と接触する面とすることで、すなわち、前記中間転写媒体上にトナー像を形成し、前記中間転写媒体の外側面からレーザ照射してトナー像を溶融し、固化するサイクルを繰り返すことで立体画像を形成する構成にすることで、常に記録媒体と接触する側の面が加熱されるので、形成された立体画像を記録媒体に一括転写定着する段階においても、記録媒体と接する面側のトナー温度が最も高温となり低粘度になるため、記録媒体への浸透効果を得ることができる。従って、例えば、レーザ出力を変更しなくても必要な定着性を得ることができる。
【0030】
また、本発明によれば、前記定着工程において、前記中間転写媒体上のトナー像を記録媒体に一括転写定着させる時は、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着手段を前記中間転写媒体に前記記録媒体を接触させて、それ以外の時は、前記定着手段を前記中間転写媒体から離間させるようにすることで、トナー画像が崩れることなくすみやかに積層形成することができる。
【0031】
また、本発明によれば、前記定着工程が実行される前に前記記録媒体を予備加熱する加熱工程を備えることで、前記記録媒体が事前に加熱されて表面の繊維が十分暖かい状態になるため、溶融状態のトナーのアンカー効果が高くなり、定着性を良好にできる。
【0032】
さらに、本発明によれば、表面に静電潜像が形成される静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体表面を帯電させる帯電装置と、前記静電潜像担持体表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像担持体表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記転写されたトナー像を記録媒体に定着させる定着装置とを備えて、現像プロセスを複数回繰り返し行う画像形成方法により立体的な画像を形成する画像形成装置において、前記画像形成方法として、請求項1乃至6のうちの何れか一項に記載の画像形成方法を用いることで、トナー像を順次重ね合わせて立体画像を形成する際に、トナー像をレーザ照射により瞬時に選択加熱・冷却させた後に溶融固化トナー像上にトナー画像を転写していくので、重ね合わされる直前のトナー像を固体状態(粉体ではない)になるため、重ね合わせ時に元画像が崩れることを防止して、高さが減ったり画像が乱れることがない良好な立体画像が得られる。また、転写トナー像と元画像のトナーの衝突により生じるトナー飛散を防止することができる。
【0033】
また、本発明によれば、前記定着装置よりも記録媒体搬送方向上流側に、前記記録媒体を予備加熱するための加熱部を設けることで、前記記録媒体が事前に加熱されて表面の繊維が十分暖かい状態になるため、溶融状態のトナーのアンカー効果が高くなり、定着性を良好にできる。
【0034】
また、本発明によれば、前記転写装置として、前記静電潜像担持体表面に形成されたトナー像を前記記録媒体に転写する前に一時的に転写する中間転写媒体を備え、前記中間転写媒体を、該中間転写媒体を保持するバックアップ部材によって前記定着装置と対向する位置に設け、前記定着装置として、前記中間転写媒体とともに前記記録媒体と圧接する加圧部材を備え、前記バックアップ部材の構成を、前記中間転写媒体上に形成されたトナー画像を前記記録媒体に一括転写定着させる時に前記中間転写媒体を介して前記加圧部材と当接する部分の表面硬度が、前記中間転写媒体に接触することでニップ部を形成する前記加圧部材の表面硬度よりも低くなるようにすることで、前記バックアップ部材側に形成されるニップ部の形状が凹状になるため、前記ニップ部の記録媒体搬送方向下流側での記録媒体の剥離性が向上する。更に、前記中間転写媒体の外部に配置されたレーザ照射体によって、トナー像の記録媒体側の面が高温になるように加熱されている(中間転写媒体の面に接している側のトナー温度は、記録媒体側より低くなっているため粘度が高く、中間転写媒体の面から剥がれ易い)ので、更に記録媒体の剥離性がよくなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】前記画像形成装置における転写用紙上にトナー像を積層させて立体画像を形成する時のトナーの状態を示す説明図であって、(a)は転写用紙に最初のトナー像が転写されたときのトナーの状態を示す説明図、(b)は前記トナーがレーザ照射により溶融する初期状態を示す説明図、(c)は前記トナーが転写用紙上に溶融した状態を示す説明図、(d)は溶融したトナーの一部が転写用紙の繊維間に入り込んだ状態を示す説明図、(e)は最初のトナー像の上に次のトナー像が転写された状態を示す説明図、(f)は次のトナー像がレーザ照射により溶融する初期状態を示す説明図、(g)は最初のトナー像と次のトナー像とが溶融結合した状態を示す説明図、(h)は最初のトナー像と次のトナー像との積層定着が完成した状態を示す説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置におけるトナー像のトナー表面温度とレーザ照射時間との関係によるレーザ定着特性を示すグラフである。
【図4】本発明の第5実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す説明図である。
【図5】本発明の第7実施形態に係る画像形成装置における転写定着ローラと駆動バックアップローラの構成を示す説明図である。
【図6】本発明の第8実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(第1実施形態)
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は発明を実施する形態の一例であって、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す説明図である。
【0037】
まず、第1実施形態に係る画像形成装置100の全体構成について説明する。
画像形成装置100は、電子写真方式によりトナーを用いて画像形成を行う画像形成装置であって、図1に示すように、トナー像を形成するための感光体として感光体ベルト1と、感光体ベルト1を張架する駆動バックアップローラ11およびアイドリングローラ12と、感光体ベルト1を所定の電位に帯電させるための帯電装置2と、該所定電位に帯電された感光体ベルト1上に画像情報に基づいて静電潜像を形成する露光装置3と、感光体ベルト1上に形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像装置4と、転写用紙(記録媒体)7を静電吸着もしくは機械的に保持して感光体ベルト1上に形成したトナー像を転写用紙7上に転写するための転写ドラム装置(転写装置)5と、転写ドラム5上に保持された転写用紙7上に転写されたトナー像を熱融着させるためのレーザ加熱装置(定着装置)6と、転写用紙7にトナー画像を転写した後、感光体ベルト1をクリーニングするクリーニング装置8と、感光体ベルト1上に残された静電潜像を消去する除電装置9とを備えている。
【0038】
帯電装置2は、厚さ0.1のステンレス板に複数のくさび状の電極を形成したくさび状電極2aを備え、このくさび状電極2aを感光体ベルト1の表面より7mm離した位置に設置している。本実施形態では、くさび状電極2aと感光体ベルト1の間には、感光体ベルト1表面の電位を制御するためのグリッドを設けたスコロトロン帯電器を使用した。
【0039】
くさび状電極2aは、図示しない高圧電源から−3〜−8KVの高圧が印加されており、これによってくさび状電極先端に不平等電界を生じさせて、発生した気中放電の電子なだれにより感光体ベルト1の表面を帯電させるようにしている。
【0040】
露光装置3は、印刷する画像パターンに応じて感光体ベルト1の回転軸の軸線方向に沿って(主走査方向)図示しない走査装置によりレーザ光を照射することで静電潜像を形成する。
【0041】
現像装置4は、キャリア(磁性体)とトナーが混合された現像剤が収容され、攪拌されて帯電されたトナーを現像ローラ4aに形成された磁気ブラシによって回転搬送して、感光体ベルト1に供給し、感光体ベルト1上の静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する。
【0042】
レーザ加熱装置6は、レーザダイオード61と、これを発振させるためのレーザ発振回路62と、レーザから照射された光を平行光に変更するコリメータレンズ63と、該平行光を操作方向に走査するためのポリゴンミラー(図示せず)と、該ポリゴンミラーによって走査された照射光が、感光体上に均一な走査速度で移動するように構成されたfθレンズ(図示せず)と、該照射光を感光体ベルト1に照射するための反射ミラー64と、面倒れ補正レンズ65とから構成されている。
【0043】
レーザ発振回路62は、溶融工程において、転写用紙7上のトナー像の部分のみを選択加熱するようにレーザ発振回路62を駆動するレーザ出力制御装置66によって制御される。
【0044】
次に、画像形成装置100における特徴的な作像プロセスについて説明する。
画像形成装置100は、感光体ベルト1表面を帯電させる帯電工程と、感光体ベルト1表面に露光することで静電潜像を形成する露光工程と、感光体ベルト1表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像工程と、トナー像を転写用紙7に転写する転写工程と、転写されたトナー像を転写用紙7に定着させる定着工程と、を備え、更に、レーザ照射によりトナー像を溶融する溶融工程と、前記レーザ照射によりトナー像が溶融した後に前記トナー像上に新たなトナー像を積層する積層工程と、を備えて、現像プロセスを複数回繰り返し行うことで立体的な画像を形成する。
【0045】
まず、画像形成装置100は、外部装置から画像データを取得する。
画像形成装置100は、図1に示すように、駆動ユニット(図示省略)によって感光体ベルト1を矢印A方向に所定の速度(ここでは167〜225mm/s)で回転させるとともに、帯電装置2が感光体ベルト1の表面を所定の電位に帯電させる。
【0046】
感光体ベルト1の表面電位は、くさび状電極2aと感光体ベルト1の間に設置されたグリッド(図示省略)に印加する電源の電圧を変更することで所定電位になるように調整される。本実施形態では、感光体ベルト1の表面電位は、−620Vに均一帯電されている。
【0047】
感光体ベルト1の表面電位を均一にするために、帯電工程が行われる前に、除電装置9により、感光体ベルト1に均一な光を照射することで、一旦感光体ベルト1の表面電位を0Vにする。
【0048】
次に、用紙トレイ10から転写用紙7が転写ドラム5上に搬送され、図示されない高圧電源から電圧を印加されることで転写ドラム5上に静電吸着される。
【0049】
転写ドラム5上に配置された転写用紙7に対して図示されない高圧電源から電圧が供給されて、転写ドラム5が回転することで感光体ベルト1上のトナー像が転写用紙7上に転写形成される。
【0050】
そして、レーザ加熱装置6により転写用紙7上に転写されたトナー像が加熱されて、転写用紙7上に溶融固化する。
【0051】
最初に転写用紙7に転写されたトナー像は、レーザ加熱装置6によって、加熱溶融されて転写用紙7上に定着されるが、トナー像の部分のみ選択的に加熱されるため、その熱量は少なく、トナーの溶融熱は急速に転写用紙7に吸収されて冷却固化される。
【0052】
尚、転写用紙7は、溶融工程において、トナー像の部分のみ選択的に加熱されるため、感光体ベルト1が不要に加熱されることはないが、レーザ加熱後に転写用紙7を冷却させる冷却装置を用いてもよい。
【0053】
レーザ加熱装置6によるレーザ加熱後、感光体ベルト1上に形成された次のトナー像を、先のトナー像が定着された転写用紙7上に再び転写して(積層工程)、同様に転写された次のトナー像をレーザ加熱装置6で加熱溶融することで、トナー像が乱れることなく順次トナー像を積層して立体画像を形成していくことができる。
【0054】
ここで、本発明によるトナー像を積層させて立体画像を形成するプロセスと定着メカニズムについて図面を参照して説明する。
図2(a)〜(h)は転写用紙上にトナー像を積層させて立体画像を形成する時のトナーの状態を示す説明図であって、(a)は転写用紙に最初のトナー像が転写されたときのトナーの状態を示す説明図、(b)は前記トナーがレーザ照射により溶融する初期状態を示す説明図、(c)は前記トナーが転写用紙上に溶融した状態を示す説明図、(d)は溶融したトナーの一部が転写用紙の繊維間に入り込んだ状態を示す説明図、(e)は最初のトナー像の上に次のトナー像が転写された状態を示す説明図、(f)は次のトナー像がレーザ照射により溶融する初期状態を示す説明図、(g)は最初のトナー像と次のトナー像とが溶融結合した状態を示す説明図、(h)は最初のトナー像と次のトナー像との積層定着が完成した状態を示す説明図である。
【0055】
まず、図2(a)に示すように、転写工程において、最初に形成されたトナー像G1は転写用紙7上に転写される。この時、転写されたトナー(以下、「転写トナー」と称する。)T1は溶融していない。
【0056】
次に、溶融工程において、トナー像G1は、図2(b)に示すように、レーザ加熱装置6からのレーザ照射によりトナー表面側から加熱されて温度が上昇し、融点になると転写トナーT1の溶融が始まる。この時、トナーT1の上面が最初に溶ける。
【0057】
そして、図2(c)に示すように、レーザ照射の照射時間の経過にともない転写トナーT1の溶融範囲はトナー像下部まで到達し(用紙接触面のトナーが溶ける。)、トナー像G1と転写用紙7との間に存在する間隙が無くなる。
【0058】
さらに、レーザ照射されると、図2(d)に示すように、溶融したトナーの熱が転写用紙7に伝わり、転写用紙7表面の繊維質の隙間に溶融トナーが入り込む。その後、レーザ照射が終了すると、溶融したトナーは急速に冷却・固化するので、紙繊維に入り込んだトナーがくさびの役割を果たしてアンカー効果を発揮して、トナー像G1は転写用紙7に固定される。
【0059】
そして、トナー像G1は転写用紙7上に安定して定着しているので、図2(e)に示すように、次のトナー像G2を重ねて転写することが可能なる。
【0060】
次に、本発明の構成でトナー像の上にトナー像を重ねて定着させる場合について説明する。
【0061】
転写用紙7上に形成されたトナー像G1の上に次のトナー像を転写させるプロセスにおいては、図2(e)に示すように、通常は、新たに転写するトナー像G2の面積の方が小さく形成される。これは、立体的に画像を積み重ねる場合に安定するからである。
【0062】
この時、レーザは、図2(f)に示すように、未定着の新たなトナー像G2と既に転写用紙7に定着されているトナー像G1の両方に照射される。そのため、転写トナーT2の加熱面は、未定着の新たなトナー像G2の上面と既に定着しているトナー像G1の下面の両方となる。
【0063】
新たに転写されたトナー像G2は、図2(f),(g)に示すように、転写トナーT2の上面がレーザ照射により加熱され、転写トナーT2の下面が既に定着しているトナー像G1側から加熱されることになり、上下両方の方向から同時に加熱される。そのため、転写用紙7に最初にトナーを溶融定着するときよりも少ない時間(少ないエネルギー)でトナー像G1に新たなトナー像G2を溶融付加することができる(図2(h)参照)。
【0064】
以上のように構成したので、第1実施形態によれば、感光体ベルト1を用いて立体画像の形成する画像形成装置100において、レーザ照射によりトナー像を溶融する溶融工程と、レーザ照射によりトナー像が溶融した後にトナー像上に新たなトナー像を積層する積層工程という、特徴的な所定動作を繰り返すことにより、画像が乱れることがない良好な立体画像を転写用紙7上に形成することができる。
【0065】
すなわち、第1実施形態によれば、トナー像G1,G2を順次重ね合わせて立体画像を形成する際に、トナー像G1をレーザ照射により瞬時に選択加熱・冷却させた後に溶融固化したトナー像G1上にトナー画G2を転写していくので、重ね合わされる直前のトナー像G1が固体状態になるため、重ね合わせ時に元画像が崩れることを防止して、高さが減ったり画像が乱れることがない良好な立体画像を転写用紙7上に形成することができる。
【0066】
また、トナー像G1,G2を積層する際に、次のトナー像G2と元画像のトナー像G1がぶつかり合って発生するトナー飛散を防止することができる。
【0067】
尚、第1実施形態の画像形成装置100を構成するレーザ出力制御装置66は、レーザ出力のオンオフだけでなく、レーザ出力の値や走査時間を最適に設定した値に変更制御可能に構成されていてもよい。
【0068】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図3は本発明の第2実施形態に係る画像形成装置におけるトナー像のトナー表面温度とレーザ照射時間との関係によるレーザ定着特性を示すグラフである。
【0069】
第2実施形態では、第1実施形態の画像形成装置100における転写用紙7の上に最初に形成されるトナー像G1をレーザ加熱して定着させる場合の定着条件と、すでに転写定着させたトナー像G1の上に転写させたトナー像G2をレーザ加熱させる場合とで異ならせることを特長とする。
【0070】
第2実施形態における画像形成装置100による転写用紙7上のトナー像をレーザ定着させる場合のレーザ照射時間と定着強度の関係を、横軸を照射時間、縦軸をトナー表面温度として図3に示す。
【0071】
レーザの出力は、300mWで、レンズによって単位面積あたりのW数は、0.09W/mmまで集光されている。
【0072】
トナー表面温度は、レーザ照射が始まると上昇し、80℃くらいまでは瞬間的に温度が上昇する。トナーの温度が80℃を超えると周囲との温度差が大きくなり放熱量が多くなるので、トナー温度の上昇率が若干鈍るがそのまま温度が上昇していく。
【0073】
このような加熱条件で、レーザ照射時間が2秒の場合と5秒の場合でベタ画像の定着性を比較した。
その結果は、レーザ照射時間が2秒の場合は、トナーは転写用紙7に溶融定着するが、手で強く擦ると表面が剥がれる程度の弱い付着力であった。一方、レーザ照射時間が5秒の場合は、トナーは転写用紙7に強く定着されており、手で擦ってもトナーが剥がれることはなかった。
【0074】
この画像サンプルを、トナー像が形成された面を谷折に180°曲げた後、広げて谷線部の剥がれた長さを測定する折り曲げ試験をした。
その結果は、レーザ照射時間が2秒の場合は、約1mmの巾でトナーが剥がれた。一方、レーザ照射時間が5秒の場合は、50〜60μmの巾でトナーが剥がれた。従って、レーザ照射時間が5秒の場合の方がより転写用紙7にトナーが染み込んでいることがわかった。
【0075】
また、図3に示すように、レーザ照射時間が2秒の場合は、トナー表面温度は、トナー融点近くの103℃まで到達しているが、転写用紙7との界面まではトナーが十分溶けた状態でないため、転写用紙7表面の繊維質までトナーが入り込まないので転写用紙7への定着性が悪くなる。これに対して、レーザ照射時間が5秒の場合は、転写用紙7界面のトナーまで十分溶融した状態であり、更に、転写用紙7表面も加熱されているため、溶融したトナーが転写用紙7の繊維まで入り込むので定着性が良好になる。
【0076】
尚、図3に示すようなレーザ照射による加熱条件(トナー表面温度、レーザ照射時間)、特に、レーザ出力は、トナーへの加熱時間を長くして、トナーの表面温度測定を容易にするために設定した値であるため、実際の作像プロセスにおいては、出力をさらに大きくしたり、レーザ光の集光度をあげてW密度を大きくすることで加熱時間を短縮してもよい。
【0077】
以上のように、第2実施形態によれば、トナーへのレーザ照射時間を長くして、転写用紙7の繊維質の間に溶融トナーが流れ込むまで十分加熱してやることで、転写用紙7上にトナーを安定した状態で定着させることができる。
【0078】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態は、トナー像を積層させて溶融定着させて立体画像を形成する際に、レーザ出力制御装置66によって、最初に形成されたトナー像をレーザ溶融させる場合におけるレーザ溶融条件を、その後のトナーを積層していく工程で行うレーザ溶融条件よりもレーザ出力を上げるように変更制御行うことを特徴とするものである。
【0079】
具体的には、転写用紙7上に積層して転写されるトナー像のうち、転写用紙7と接する面に形成される最初トナー像は、転写用紙7に直接トナー像を定着させるため、十分溶融加熱する必要がある。そこで、トナーをより溶融させなければならない条件においては、第3実施形態のように、レーザ出力制御装置66によってレーザ出力を上げることにより、レーザの主走査時間を遅くしなくても、トナーが十分に加熱溶融され、効率的な定着動作を行うことができる。
【0080】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
第4実施形態は、上述した第3実施形態と同様の効果を得るために、転写用紙7上に転写されたトナー像のうち、転写用紙7と接する面に形成された最初のトナー層を転写用紙7に定着させるため、最初のトナー像をレーザ溶融させる場合に、その後のトナー像を積層していく積層工程、溶融工程で行うレーザ溶融条件よりレーザの走査時間を長くすることを特徴とするものである。
【0081】
具体的には、転写用紙7上に積層して転写されるトナー像のうち、転写用紙7と接する面に形成される最初トナー像は、転写用紙7に直接トナー像を定着させるため、十分溶融加熱する必要がある。そこで、トナーをより溶融させなければならない条件においては、第4実施形態のように、レーザ出力制御装置66によってレーザの走査時間を長くすることで、その他のトナーが十分に加熱溶融され、効率的な定着動作が行えるようになる。
【0082】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
図4は本発明の第5実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す説明図である。
【0083】
第5実施形態に係る画像形成装置500は、トナー像を形成するための感光体として感光体ドラム501と、感光体ドラム501を所定の電位に帯電させるための帯電装置2と、該所定電位に帯電された感光体ドラム501上に画像情報に基づいて静電潜像を形成する露光装置3と、感光体ドラム501上に形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像装置4と、感光体ドラム501上に形成されたトナー像を中間転写ベルト(中間転写媒体)510上に転写する転写ローラ520からなる転写装置502と、中間転写ベルト510上に形成されたトナー像を転写用紙7に転写定着させる転写定着ローラ503と、中間転写ベルト510上に転写されたトナー像を熱融着させるためのレーザ加熱装置6とレーザ加熱装置6を画像情報に応じて制御するレーザ出力制御装置66と、転写用紙7にトナー画像を転写した後、感光体ドラム501をクリーニングするクリーニング装置8と、感光体ドラム501上に残された静電潜像を消去する除電装置9とを備えている。
【0084】
中間転写ベルト510は、駆動バックアップローラ511およびアイドリングローラ512により張架されている。
【0085】
尚、第5実施形態に係る画像形成装置500において、上述した実施形態における画像形成装置100と同様な構成を有するものは同一の符号を付することで説明を省略する。
【0086】
帯電装置2は、厚さ0.1のステンレス板に複数のくさび状の電極を形成したくさび状電極2aを備え、このくさび状電極2aを感光体ベルト1の表面より7mm離した位置に設置している。本実施形態では、くさび状電極2aと感光体ドラム501の間には、感光体ドラム501表面の電位を制御するためのグリッドを設けたスコロトロン帯電器を使用した。
【0087】
くさび状電極2aは、図示しない高圧電源から−3〜−8KVの高圧が印加されており、これによってくさび状電極先端に不平等電界を生じさせて、発生した気中放電の電子なだれにより感光体ドラム501の表面を帯電させるようにしている。
【0088】
露光装置3では、印刷する画像パターンに応じて感光体ドラム501の回転軸の軸線方向に沿って(主走査方向)図示しない走査装置によりレーザ光を照射することで静電潜像を形成する。
【0089】
現像装置4は、キャリア(磁性体)とトナーが混合された現像剤が収容され、攪拌されて帯電されたトナーを現像ローラ4aに形成された磁気ブラシによって回転搬送して、感光体ドラム501に供給し、感光体ドラム501上の静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する。
【0090】
レーザ加熱装置6は、前述した画像形成装置100を構成するレーザ加熱装置と同様な構成を有している。
【0091】
次に、画像形成装置500における特徴的な作像プロセスについて説明する。
画像形成装置500は、感光体ドラム501表面を帯電させる帯電工程と、感光体ドラム501表面に露光することで静電潜像を形成する露光工程と、感光体ドラム501表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像工程と、トナー像を転写用紙7に転写する転写工程と、転写されたトナー像を転写用紙7に定着させる定着工程と、を備え、更に、レーザ照射によりトナー像を溶融する溶融工程と、前記レーザ照射によりトナー像が溶融した後に前記トナー像上に新たなトナー像を積層する積層工程と、を備えて、現像プロセスを複数回繰り返し行うことで立体的な画像を形成する。
【0092】
まず、画像形成装置500は、外部装置から画像データを取得する。
画像形成装置500は、図4に示すように、駆動ユニット(図示省略)によって感光体ドラム501を矢印B方向に所定の速度(ここでは167〜225mm/s)で回転させるとともに、帯電装置2が感光体ドラム501の表面を所定の電位に帯電させる。
【0093】
感光体ドラム501の表面電位は、くさび状電極2aと感光体ドラム501の間に設置されたグリッド(図示省略)に印加する電源の電圧を変更することで所定電位になるように調整される。本実施形態では、感光体ドラム501の表面電位は、−620Vに均一帯電されている。
【0094】
感光体ドラム501の表面電位を均一にするために、帯電工程が行われる前に、除電装置9により、感光体ドラム501に均一な光を照射することで、一旦感光体ドラム501の表面電位を0Vにする。
【0095】
次に、感光体ドラム501上に形成されたトナー像は、転写ローラ520に図示されない高圧電源によって電圧を印加することで中間転写ベルト510上に静電転写される。
【0096】
そして、レーザ加熱装置6により中間転写ベルト510上に転写されたトナー像が加熱されて、中間転写ベルト510上に溶融固化する。
【0097】
最初に中間転写ベルト510上に形成されたトナーは、レーザ加熱装置6によって、急速に加熱溶融されるが、トナー像の部分のみ選択的に加熱されるため、その熱量は少なく、トナーの溶融熱は急速に中間転写ベルト510に吸収されて冷却固化される。
【0098】
尚、溶融工程において、溶融トナーから中間転写ベルト510に吸収される熱量は微小のため、中間転写ベルト510の温度上昇量は少ないが、溶融工程の安定性を増すために、冷却用のローラ(例えば、金属製で内部にヒートパイプを使用してもよい。)を中間転写ベルト510に当接させて強制的に冷却するようにしたり、駆動バックアップローラ511に冷却手段を設けて中間転写ベルト510を冷却するようにしてもよい。
【0099】
レーザ加熱装置6によるレーザ加熱後、中間転写ベルト510上に形成された溶融固化トナー像の上に、新たにトナー像を転写して(積層工程)、再びレーザ加熱装置6で加熱溶融することで、トナー像が乱れることなく新たなトナー像を積層して立体画像を形成していくことができる。
【0100】
以上のように構成したので、第5実施形態によれば、中間転写ベルト510を用いて立体画像を形成する画像形成装置500において、レーザ照射によりトナー像を溶融する溶融工程と、レーザ照射によりトナー像が溶融した後にトナー像上に新たなトナー像を積層する積層工程という、特徴的な所定動作を繰り返すことにより、画像が乱れることがない良好な立体画像を中間転写ベルト510上に形成することができる。
【0101】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
第6実施形態は、図4に示すように、基本構成を第5実施形態の画像形成装置500と同様の構成として、中間転写ベルト510を駆動する駆動バックアップローラ511と相対する位置に設置された転写定着ローラ503が、中間転写ベルト510に対して離接可能な構成にしたことを特徴としている。
【0102】
ここで、第6実施形態における転写定着ローラ503の離接制御タイミングについて説明する。
【0103】
転写定着ローラ503は、中間転写ベルト510上に立体トナー像を形成する場合に、トナー像を積層する積層工程においては、中間転写ベルト510が搬送される際に、中間転写ベルト510上に形成されたトナー像が転写定着ローラ503と当接して剥がれないように、中間転写ベルト510とは離間状態になっている。
【0104】
そして、中間転写ベルト510上に立体トナー像を形成し終えて、中間転写ベルト510から立体トナー像を転写用紙7に転写定着させる時に、中間転写ベルト510を介して相対している駆動バックアップローラ511と転写定着ローラ503とが当接するようになっている。
【0105】
転写用紙7に中間転写ベルト510から立体トナー像を転写定着する時は、図示しない給紙トレイから転写用紙7が、駆動バックアップローラ511と転写定着ローラ503との間に形成される接触ニップ部に搬送される。
【0106】
立体トナー像は、転写用紙7と対向する部分がレーザ照射により加熱溶融状態になっているので、接触ニップ部において転写用紙7に圧着されると、転写定着ローラ503による熱と圧力により転写用紙7上に転写定着される。
【0107】
ここで、立体トナー像の転写用紙7への定着性をよくするために、溶融工程(中間転写ベルト510の立体トナー像を転写用紙7に転写定着させる時のトナー像を熔融して定着させる工程)時のレーザ出力を、それ以前の溶融工程のレーザ出力より大きくなるように制御してもよい。
【0108】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について図面を参照して説明する。
図5は本発明の第7実施形態に係る画像形成装置における転写定着ローラと駆動バックアップローラの構成を示す説明図である。
【0109】
第7実施形態は、図5に示すように、基本構成を第5実施形態の画像形成装置500と同様の構成として、駆動バックアップローラ511の表面硬度が転写定着ローラ503の表面硬度より小さく(柔らかく)なるように構成したことを特徴としている。
【0110】
第7実施形態では、例えば、駆動バックアップローラ511の構成として、φ10のアルミ製芯金513の表面に厚さ5mmのスポンジ514を被覆して、更に、その表面に厚さ40ミクロンのPFAチューブを被膜したソフトローラを使用し、転写定着ローラ503の構成として、厚さt2の円筒状の芯金503aを用いて、その表面にフッ素コートを施したハードローラを使用した。
【0111】
このように、駆動バックアップローラ511を転写定着ローラ503よりも柔らかく構成することで、中間転写ベルト510の搬送経路は、転写定着ローラ503に接する前は、駆動バックアップローラ511の曲率半径に沿って進むが、転写定着ローラ503と接するニップ位置では、転写定着ローラ503の曲率半径に沿って屈曲し、該中間転写ベルト510が転写定着ローラ503から離れる時点で再び駆動バックアップローラ511の曲率半径方向に屈曲して進行する。
【0112】
転写定着ローラ503の屈曲により、中間転写ベルト510の上に形成された立体トナー像と中間転写ベルト510との間にせん断力が作用して、中間転写ベルト510から容易に立体トナー像を剥がすことができる。
【0113】
以上のように、第7実施形態によれば、駆動バックアップローラ511をソフト構造にすることで、立体トナー像を中間転写ベルト510から容易に剥がして転写用紙7に安定して定着させることができるようになる。
【0114】
尚、駆動バックアップローラ511と転写定着ローラ503のどちらもソフトローラタイプの場合は、駆動バックアップローラ511のゴム硬度が、転写定着ローラ503のゴム硬度より柔らかくなるように、ゴム硬度、ゴム厚さ等を調整すればよい。
【0115】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について説明する。
図6は本発明の第8実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す説明図である。
第8実施形態に係る画像形成装置800は、図6に示すように、基本構成を第5実施形態の画像形成装置500と同様の構成として、定着工程前に転写用紙7を事前予熱する用紙予備加熱装置22を設けたことを特徴としている。
【0116】
用紙予備加熱装置22は、主に予熱ローラ23と、該予熱ローラ23の内部に配置されたハロゲンランプ23aと、該予熱ローラ23の表面温度を測定する温度検知素子(図示せず)と、温度検知素子の検知温度に基づき、ハロゲンランプ23aをオン/オフ制御する温度制御装置(図示せず)と、予熱バックアップローラ24とから構成されている。
【0117】
用紙予備加熱装置22には、複写機やプリンタで一般的に用いられる熱ローラ方式の定着装置を使用してもよい。従って、予熱ローラ23には、モノクロ用のハードローラを使用してもよく、また、カラーで用いられるソフトローラを使用してもよい。
【0118】
また、予熱ローラ23の表面温度は、使用するトナーの融点やトナーの種類にも依るが大体110℃前後に設定してあればよく、装置全体の消費電力の観点から使える電力で制御できる温度範囲から決めてもよい。
【0119】
以上のように構成したので、第8実施形態によれば、定着工程前に転写用紙7を事前予熱する用紙予備加熱装置22を設けたことで、中間転写ベルト510上に形成された立体トナー像を転写用紙7に転写定着させる時に転写用紙7が予熱されているため、予熱しない場合より転写用紙7の紙繊維質への溶融トナーの浸透がよくなり、トナー像の定着性を良好にすることができる。
【0120】
尚、上述した実施形態では、本発明に係る画像形成方法や画像形成装置の構成を図1、図4に示すような画像形成装置100,500に適用した例について説明したが、レーザ照射によりトナー像を溶融する溶融工程を実行し、レーザ照射によりトナー像が溶融した後にトナー像上に新たなトナー像を積層する積層工程を実行する構成を備える画像形成装置であれば、上述したような構成の画像形成装置や複写機に限定されるものではなく、その他の画像形成装置等に展開が可能である。
【0121】
以上のように、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
1 感光体ベルト(静電潜像担持体)
2 帯電装置
3 露光装置
4 現像装置
5 転写ドラム(転写装置)
6 レーザ加熱装置
7 転写用紙(記録媒体)
11 駆動バックアップローラ
12 アイドリングローラ
22 用紙予備加熱装置
61 レーザダイオード
62 レーザ発振回路
63 コリメータレンズ
64 反射ミラー
65 補正レンズ
66 レーザ出力制御装置
100,500,800 画像形成装置
501 感光体ドラム(静電潜像担持体)
502 転写装置
503 転写定着ローラ
503a 芯金
510 中間転写ベルト
511 駆動バックアップローラ
512 アイドリングローラ
513 アルミ製芯金
514 スポンジ
G1 トナー像
G2 トナー像
T1,T2 転写トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式によりトナーを用いて画像を形成する画像形成装置に用いられる画像形成方法であって、表面に静電潜像が形成される静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電工程と、前記静電潜像担持体表面に露光することで静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像担持体表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記転写されたトナー像を記録媒体に定着させる定着工程と、を備えて、現像プロセスを複数回繰り返し行うことで立体的な画像を形成する画像形成方法において、
レーザ照射によりトナー像を溶融する溶融工程と、
前記レーザ照射によりトナー像が溶融した後に前記トナー像上に新たなトナー像を積層する積層工程と、を備えることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記溶融工程は、前記転写工程の後に実行され、
前記溶融工程において、前記レーザ照射によりトナー像を溶融して前記記録媒体に定着させる条件は、前記記録媒体に最も近いトナー像を溶融定着させる場合とそれ以外のトナー像を溶融定着させる場合とで異なる条件とすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記溶融工程において、前記記録媒体に最も近いトナー像を溶融定着させる時のレーザ出力は、それ以外のトナー像を溶融定着させる時のレーザ出力よりも大きくすることを特徴とする請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記溶融工程において、前記記録媒体に最も近いトナー像を溶融定着させる時のレーザ照射時間は、それ以外のトナー像を溶融定着させる時のレーザ照射時間よりも長くすることを特徴とする請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記転写工程は、前記静電潜像担持体表面に形成されたトナー像を前記記録媒体に転写する前に中間転写媒体に一時的に転写する中間転写工程を備え、
前記溶融工程は、前記中間転写工程の後に実行され、
前記中間転写媒体において、順次積層されるトナー像を溶融定着させるレーザ照射側の面を、前記記録媒体と接触する面とすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記定着工程は、前記中間転写媒体上のトナー像を前記記録媒体に一括転写定着させる時は、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着手段を前記中間転写媒体に前記記録媒体を当接させるようにして、それ以外の時は、前記定着手段を前記中間転写媒体から離間させることを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記定着工程が実行される前に前記記録媒体を予備加熱する加熱工程を備えることを特徴とする請求項5または6に記載の画像形成方法。
【請求項8】
表面に静電潜像が形成される静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体表面を帯電させる帯電装置と、前記静電潜像担持体表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像担持体表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記転写されたトナー像を記録媒体に定着させる定着装置とを備えて、現像プロセスを複数回繰り返し行う画像形成方法により立体的な画像を形成する画像形成装置において、
前記画像形成方法として、請求項1乃至6のうちの何れか一項に記載の画像形成方法を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記定着装置よりも記録媒体搬送方向上流側に、前記記録媒体を予備加熱するための加熱部を設けることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記転写装置は、前記静電潜像担持体表面に形成されたトナー像を前記記録媒体に転写する前に一時的に転写する中間転写媒体を備え、
前記中間転写媒体は、該中間転写媒体を保持するバックアップ部材によって前記定着装置と対向する位置に設けられ、
前記定着装置は、前記中間転写媒体とともに前記記録媒体と圧接する加圧部材を備え、
前記バックアップ部材は、前記中間転写媒体上に形成されたトナー画像を前記記録媒体に一括転写定着させる時に前記中間転写媒体を介して前記加圧部材と当接する部分の表面硬度が、前記中間転写媒体に接触することでニップ部を形成する前記加圧部材の表面硬度よりも低いことを特徴とする請求項8または9に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−112673(P2011−112673A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266056(P2009−266056)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】