説明

画像形成方法及びインクセット

【課題】コート紙上でもインクが凝集し易く、耐擦性に優れた画像を形成することができる画像形成方法を提供する。
【解決手段】塗工層を有する記録媒体に、エピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマーを含有する処理液を付与する処理液付与工程と、前記記録媒体に、自己分散顔料、溶剤、界面活性剤、ワックス粒子、及び水を含有するインク組成物を付与するインク付与工程と、を有する画像形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法及びインクセットに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、インク組成物(インク)の小滴を紙等の記録媒体に付与して画像を形成する方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度、高品位な画像を、高速で印刷可能であるという特徴を有する。
近年、インクジェット記録方法に関し、色濃度向上の観点や、にじみやムラの抑制の観点等から、定着液(処理液)とインク組成物とが接触することで画像を形成する、定着液とインク組成物との二液を用いたインクジェット記録方法に関する検討が行われている。
例えば、色素及び環に直結した酸性基を有する芳香族化合物を含有する水性記録液と多価金属塩を含有する水性定着液とを用いる画像形成法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、耐久性のあるインクジェットインク画像を得るために、インクと特定濃度のエピハロヒドリンとアミンのカチオンコポリマーとを含む定着剤組成物とを用いる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−103897号公報
【特許文献2】特表2009−509822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献2に記載の方法では、コート紙の如く、インクが浸透し難い紙に対して画像記録した場合には、画像の耐擦性が不十分であった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、コート紙上でもインクが凝集し易く、耐擦性に優れた画像を形成することができる画像形成方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
また、本発明は、コート紙上でのインク凝集性および画像の耐擦性に優れたインクセットを提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1> 塗工層を有する記録媒体に、エピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマーを含有する処理液を付与する処理液付与工程と、
前記記録媒体に、自己分散顔料、溶剤、界面活性剤、ワックス粒子、及び水を含有するインク組成物を付与するインク付与工程と、
を有する画像形成方法である。
【0007】
<2> 前記インク組成物の全質量に対する前記ワックス粒子の含有量が、0.1質量%〜10質量%である前記<1>に記載の画像形成方法である。
【0008】
<3> 前記ワックス粒子が、カルナバワックスの粒子である前記<1>または前記<2>に記載の画像形成方法である。
【0009】
<4> 前記ワックス粒子の体積平均粒径が、50nm〜100nmである前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載の画像形成方法である。
【0010】
<5> 前記溶剤が、多価アルコールである前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載の画像形成方法である。
【0011】
<6> 前記インク組成物が、更に、重量平均分子量が1,000〜10,000であり、酸価が50mgKOH/g〜100mgKOH/gである樹脂を含有する前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載の画像形成方法である。
【0012】
<7> 前記処理液の全質量に対する前記共重合ポリマーの含有量が、0.5質量%〜5質量%である前記<1>〜前記<6>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
【0013】
<8> 前記インク組成物は、シングルパス方式により前記記録媒体に付与される前記<1>〜前記<7>のいずれか1つに記載の画像形成方法である。
【0014】
<9> エピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマーを含有する処理液と、
自己分散顔料、溶剤、界面活性剤、ワックス粒子、及び水を含有するインク組成物と、
を有するインクセットである。
【0015】
<10> 前記インク組成物の全質量に対する前記ワックス粒子の含有量が、0.1質量%〜10質量%である前記<9>に記載のインクセットである。
【0016】
<11> 前記ワックス粒子が、カルナバワックスの粒子である前記<9>または前記<10>に記載のインクセットである。
【0017】
<12> 前記ワックス粒子の体積平均粒径が、50nm〜100nmである前記<9>〜前記<11>のいずれか1つに記載のインクセットである。
【0018】
<13> 前記溶剤が、多価アルコールである前記<9>〜前記<12>のいずれか1つに記載のインクセットである。
【0019】
<14> 前記インク組成物が、更に、重量平均分子量が1,000〜10,000であり、酸価が50mgKOH/g〜100mgKOH/gである樹脂を含有する前記<9>〜前記<13>のいずれか1つに記載のインクセットである。
【0020】
<15> 前記処理液の全質量に対する前記共重合ポリマーの含有量が、0.5質量%〜5質量%である前記<9>〜前記<14>のいずれか1つに記載のインクセットである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、コート紙上でもインクが凝集し易く、耐擦性に優れた画像を形成することができる画像形成方法を提供することができる。
また、本発明によれば、コート紙上でのインク凝集性および画像の耐擦性に優れたインクセットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、塗工層を有する記録媒体に、エピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマーを含有する処理液を付与する処理液付与工程と、前記記録媒体に、自己分散顔料、溶剤、界面活性剤、ワックス粒子、及び水を含有するインク組成物を付与するインク付与工程と、を有する。
本発明では、処理液として、エピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマーを含有する処理液を用い、かつ、塗工層を有する記録媒体(例えば、コート紙)に、インクを定着させて画像形成する場合に、インクとして、自己分散顔料、溶剤、界面活性剤、ワックス粒子、及び水を含有するインク組成物を用いて画像形成を行なうことで、インク組成物が凝集し易く、耐擦性に優れた画像を形成することができる。
なお、以下、インク組成物を単に、「インク」と称することもある。
【0023】
処理液は、主として、記録媒体上に付与されたインク組成物を、記録媒体に定着させる機能を有する。記録媒体上に付与されたインク組成物は、インク組成物中の液体成分が記録媒体に吸収され、液滴が乾燥して、顔料を中心とする固形分が記録媒体上に定着すると考えられる。このとき、記録媒体上に付与されたインク組成物の液滴が、記録媒体上で広がると、隣り合う液滴と重なり合い、ニジミが生じると考えられる。
本発明においては、インク組成物がワックスを含有することで、インク組成物の液滴が凝集し、記録媒体上に広がらずに、むしろ、絞まって液滴が小さくなるように記録媒体上に存在すると考えられる。
広がらずに、絞まった状態で記録媒体上に定着したインク液滴が乾燥すると、記録媒体上に形成されるインク膜は、記録媒体上に広がって定着したインク膜に比べ、インク膜の膜厚が大きい。従って、本発明により、記録媒体に形成された画像は、画像濃度が大きく、色味に優れると考えられる。
【0024】
インク組成物の液滴が記録媒体上で広がらずに、絞まって記録媒体に定着すると、インク膜が記録媒体に接する接着面積は、記録媒体上に広がって定着したインク膜の接着面積より小さいと考えられる。この場合、記録媒体上で広がらずに、絞まって記録媒体に定着したインク膜により形成される画像は、一般には、擦れ等の外力に対し、インク膜が剥がれ易くなると考えられる。
しかし、本発明においては、インク組成物がワックスを含有するために、ワックスが外力に対する潤滑剤として作用し、外力を受け流し易いと考えられる。その結果、本発明により形成された画像は、擦れ等の外力に対しても、インク膜(画像)が剥がれ難く、耐擦性に優れるものと考えられる。
以下、本発明の画像形成方法に用いられる記録媒体、処理液、及び、インク組成物、ならびに、画像形成方法について、詳細に説明する。
【0025】
〔記録媒体〕
記録媒体としては、塗工層を有する記録媒体を用いる。
塗工層を有する記録媒体は、一般のオフセット印刷などに用いられ、コート紙等と称される、いわゆる塗工紙である。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。
面積が1250cm以上であることは、画像形成時に付与されるインクの付与量が比較的多い場合を示すものであり、1250cm以上の場合にスタッカーブロッキングが生じやすい。
【0026】
本発明における記録媒体は、塗工層が両面で12g/m以上であるものが好ましく、より好ましくは18g/m以上である。塗工層が両面で12g/m以上であるものは、一般のオフセット印刷などに用いられる塗工紙である。塗工層が前記範囲内であると、インクの吸収量が多く、本発明において奏される効果が大きい。
また、記録媒体の坪量は、70g/m〜350g/mが好ましく、より好ましくは70g/m〜200g/mである。一般のオフセット印刷などに用いられる塗工紙は、坪量がこの範囲に含まれる。坪量が前記範囲内である場合は、インクの吸収量が多く、本発明において奏される効果が大きい。
【0027】
塗工紙は、従来の通常の水性インクジェットによる画像形成においては、インク吸収が遅く、特に高速にあるいは両面に画像形成する場合において、インクの吸収、乾燥が追いつかず、複数枚を重ねて集積したときに記録媒体間で画像が転写してしまうスタッカーブロッキングが生じやすいが、本発明の画像形成方法では、スタッカーブロッキングの発生が防止され、細線や微細な画像部分が精細かつ均質な高品位の画像を形成することができる。
【0028】
本発明においては、特に、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましい。より具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。
【0029】
塗工紙は、一般に上市されているものを入手して使用できる。例えば、一般印刷用塗工紙を用いることができる。具体的には、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」、日本製紙(株)製の「オーロラコート」、「ユーライト」等のコート紙(A2、B2)、及び三菱製紙社製の「特菱アート」等のアート紙(A1)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)などを挙げることができる。また、日本製紙(株)製の(N)シルバーダイヤや、富士フイルム(株)製の「画彩写真仕上げPro」を用いてもよい。
【0030】
上記の中でも、色材移動の抑制効果が大きく、従来以上に色濃度及び色相の良好な高品位な画像を得る観点からは、好ましくは、水の吸収係数Kaが0.05mL/m・ms1/2〜0.5mL/m・ms1/2の記録媒体であり、より好ましくは0.1mL/m・ms1/2〜0.4mL/m・ms1/2の記録媒体であり、更に好ましくは0.2mL/m・ms1/2〜0.3mL/m・ms1/2の記録媒体である。
【0031】
水の吸収係数Kaは、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No51:2000(発行:紙パルプ技術協会)に記載されているものと同義であり、具体的には、吸収係数Kaは、自動走査吸液計KM500Win(熊谷理機(株)製)を用いて接触時間100msと接触時間900msにおける水の転移量の差から算出されるものである。
【0032】
〔処理液〕
処理液としては、エピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマーを含有する処理液を用いる。
処理液は、後述するインク組成物と接触することで凝集体を形成可能なように構成されたものである。具体的には、処理液は、インク組成物中の色材粒子(顔料等)などの分散粒子を凝集させて凝集体を形成可能な凝集剤を少なくとも含むことが好ましく、必要に応じて、他の成分を用いて構成することができる。インク組成物と共に処理液を用いることで、インクジェット記録方式で画像形成する場合には、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い描画性(例えば細線や微細部分の再現性)に優れた画像が得られる。
【0033】
(エピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマー)
エピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマーは、エピハロヒドリンと、ジメチルアミンと、を共重合して得られるポリマーであれば特に制限されない。
ここで、エピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマーの共重合成分の1つであるエピハロヒドリンとは、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0034】
【化1】

【0035】
一般式(1)中、Xは、ハロゲン原子を表す。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、Xが塩素原子である場合はエピクロロヒドリン、Xが臭素原子である場合はエピブロモヒドリン等と称する。
【0036】
エピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマーのもう1つの共重合成分であるジメチルアミンは、第2級アミンであり、かかる成分を含むことで、線状の共重合ポリマーが得られ易い。
エピハロヒドリンとジメチルアミンとが共重合することで、ハロゲンの対イオン(X)を有するヒドロキシ−及び第4級アミン−含有ポリマーを形成し得る。
【0037】
エピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマーは、他の共重合成分として、ジメチルアミン以外の第2級アミンや、第1級アミンを含んでいてもよい。この場合、モノメチルアミンのような第1級アミンは、共重合ポリマー中に分枝を付加することができる。従って、例えば、エピハロヒドリンとジメチルアミンとの他に、第1級アミンを含有させることで、共重合ポリマーのあるグループは線状共重合を促進し、共重合ポリマーの他のグループは分枝を導入することができる。共重合ポリマーが、アミン成分として、第1級アミンと、ジメチルアミンを含む第2級アミンとの両方を含有する場合、第2級アミンと第1級アミンのモル比(第2級アミン:第1級アミン)は、約100:1〜10:1とし得、それによって所望の割合にて分枝をもたらすことができる。
【0038】
また、エピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマーは、市販品を用いてもよく、例えば、エピクロロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマー(SNF Floerger社製、Floquat FL−14)として入手することができる。
エピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマーの処理液中の含有量は、処理液全質量に対し、0.5質量%〜10質量%であることが好ましく、1質量%〜5質量%であることがより好ましい。
【0039】
(溶剤)
処理液は、溶剤を含むことが好ましい。
溶剤としては、親水性有機溶媒を用いることが好ましく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体等が挙げられる。
中でも、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。また、これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
(他の成分)
処理液が含み得る他の成分は、例えば、溶剤、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0041】
処理液の粘度としては、インク組成物の凝集速度の観点から、1〜30mPa・sの範囲が好ましく、1〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。なお、粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて20℃の条件下で測定されるものである。
【0042】
また、処理液の表面張力としては、インク組成物の凝集速度の観点から、20〜60mN/mであることが好ましく、20〜45mN/mであることがより好ましく、25〜40mN/mであることがさらに好ましい。なお、表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて25℃の条件下で測定されるものである。
【0043】
〔インク組成物〕
インク組成物としては、自己分散顔料、溶剤、界面活性剤、ワックス粒子、及び水を含有するインク組成物を用いる。インク組成物は、本発明の効果を損なわない限度において、他の成分を含有していてもよい。
【0044】
(自己分散顔料)
自己分散顔料とは、多数の親水性官能基及び/又はその塩(以下、「分散性付与基」という。)を、顔料表面に直接又はアルキル基、アルキルエーテル基、アリール基等を介して間接的に結合させたもので、顔料分散用の分散剤を用いずに水性媒体中に分散可能な顔料である。ここで、「分散剤を用いずに水性媒体中に分散」とは、顔料を分散させるための分散剤を用いなくても水性媒体中に分散可能なことをいう。
【0045】
自己分散顔料を色材として含有するインクは、通常、顔料を分散させるために含有させる分散剤を含む必要がないため、分散剤に起因する消泡性の低下による発泡がほとんどなく、吐出安定性に優れるインクを調製しやすい。自己分散顔料の表面に結合される分散性付与基には、−COOH、−CO、−OH、−SOH、−PO及び第4級アンモニウム並びにそれらの塩が例示でき、これらは顔料に物理的処理又は化学的処理を施すことで、分散性付与基又は分散性付与基を有する活性種を顔料表面に結合(グラフト)させることにより結合される。前記物理的処理としては、例えば、真空プラズマ処理等が例示できる。また、前記化学的処理としては、例えば、水中で酸化剤により顔料表面を酸化する湿式酸化法や、p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法、等が例示できる。
【0046】
本発明においては、次亜ハロゲン酸及び/又は次亜ハロゲン酸塩による酸化処理、又はオゾンによる酸化処理により表面処理される自己分散型顔料を好ましい例として挙げることができる。自己分散型顔料としては、市販品を利用することも可能であり、マイクロジェットCW−1(商品名;オリヱント化学工業(株)製)、CAB−O−JET200、CAB−O−JET300(以上、商品名;キャボット社製)等が例示できる。
【0047】
−顔料−
顔料は、目的に応じて適宜選択することができ、有機顔料又は無機顔料のいずれであってもよい。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。例えば、アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、などが挙げられる。染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
また、無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。なお、カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
上記の顔料は、1種単独で使用してもよく、また、上記した各群内もしくは各群間より複数種を選択して組み合わせて使用してもよい。
【0048】
自己分散顔料のインク組成物中における含有量としては、色濃度、粒状性、インク安定性、吐出信頼性の観点から、インク組成物の全質量に対して、1〜25質量%となる量が好ましく、2〜20質量%となる量がより好ましい。
【0049】
(溶剤)
本発明におけるインク組成物は、水を主たる溶媒として含むものであるが、溶剤の少なくとも1種を更に含有する。溶剤は、疎水性有機溶媒でも親水性有機溶媒でもよいが、親水性有機溶媒であることが好ましい。親水性有機溶媒を含有することで、乾燥防止、浸透促進、粘度調整等を図ることができる。親水性有機溶媒を乾燥防止剤として用いる場合、インク組成物をインクジェット法で吐出して画像記録する際に、インク吐出口でのインクの乾燥によって発生し得るノズルの目詰まりを効果的に防止することができる。
【0050】
乾燥防止のためには、水より蒸気圧の低い親水性有機溶媒が好ましい。乾燥防止に好適な親水性有機溶媒の具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体等が挙げられる。
中でも、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。また、これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの親水性有機溶媒は、インク組成物中に10〜50質量%含有されることが好ましい。
【0051】
また、浸透促進のためには、インク組成物を記録媒体により良く浸透させる観点から親水性有機溶媒が好適に用いられる。浸透促進に好適な親水性有機溶媒の具体的な例としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類や等が挙げられる。これらは、インク組成物中に5〜30質量%含有されることで良好な効果が得られる。また、これらの親水性有機溶媒は、印字・画像の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲内で用いられるのが好ましい。
【0052】
また、親水性有機溶媒は、上記以外にも粘度の調整に用いることができる。粘度の調整に用いることができる親水性有機溶媒の具体的な例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。
なお、親水性有機溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
溶剤は、上記の中でも、インク安定性の観点から多価アルコール(多価アルコール系溶剤)であることが好ましい。
【0054】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ベタイン界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤の具体的な例としては、特開昭59−157636号公報の第(37)〜(38)頁、リサーチディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも用いることができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を用いることにより、耐擦性を良化することもできる。また、これら表面張力調整剤は、消泡剤としても使用することができ、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及びEDTAに代表されるキレート剤等、も使用することができる。
【0055】
(ワックス粒子)
ワックス粒子は、インクを凝集させ、また、インク液滴が固化して画像として記録媒体に定着した後に、画像の耐擦性を上げるため、インク組成物に含有される。
ワックス粒子のワックスとしては、天然ワックスおよび合成ワックスを挙げることができる。
【0056】
天然ワックスとしては、石油由来ワックス(石油系ワックス)、植物由来ワックス(植物系ワックス)、動植物由来ワックスが挙げられる。
石油由来ワックスとして、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等、また、植物由来ワックスとしてはカルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ等、また、動物植物由来ワックスとしてはラノリン、みつろう等を挙げることができる。
【0057】
合成ワックスとしては、合成炭化水素系ワックス、変性ワックス系が挙げられる。
合成炭化水素系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロブシュワックス等が挙げられ、また、変性ワックス系としてはパラフィンワックス誘導体、モンタンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等を挙げることができる。
前記ワックスの中でも、パラフィンワックスは炭素数20〜40の炭化水素を主成分とするもので、画像光沢感や、ノズル先端から水分蒸発防止、水分保持効果が優れている点で好ましい。
また、ポリエチレンワックスは、樹脂との相溶性が優れるため均質で良好な画像を形成しやすい点で好ましい。さらに、ポリエチレンワックスは変性し易いため、その変性されたグリコール変性ポリエチレンワックスは、グリコールに起因する湿潤性を付与することができ、ノズル先端でのインク組成物の湿潤性効果がみられ、よって吐出安定性が一層効果的に出来る点でより好ましい。
【0058】
本発明においては、上記ワックスの中でも、インク組成物の凝集性、および画像の耐擦性の更なる向上の観点から、植物由来及び石油由来のワックスから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0059】
ワックスの融点は、画像が記録された記録媒体を重ねたときに、記録媒体同士がくっつく等の画像のベタツキを抑制するため(耐プレスブロッキング性のため)、40℃以上であることが好ましく、また、インク組成物をインクジェット記録に用いるときの吐出安定性の観点から、100℃未満であることが好ましい。ワックスの融点は、45℃以上100℃未満であることがより好ましく、50℃以上95℃以下がさらに好ましい。
【0060】
本発明で用いるワックスは、ワックス粒子として用いるが、分散物の形(特に、エマルション)で添加されることが好ましい。分散物の溶媒としては水が好ましいがこれに限定されるものではない。例えば通常の有機溶媒を適宜選択し、分散時に使用することができる。例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、アルコール類(炭素数1〜8の低級アルコール、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコールなど)、グリコール誘導体類(セロソルブ、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなど)、炭素数1〜5の低級脂肪酸エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチルなど)、ハロアルカン類(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、トリクロロメタン、トリクロロエタン、四塩化炭素など)、炭化水素類(オクタン、ソルベントナフサ、テレピン油、石油エーテル、シンナー、石油ベンジン、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、フェノール類(フェノール、レゾルシノールなど)、エーテル類(テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、リン酸エステル類(トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェートなど)、アミド系のDMFその他DMSOなどを挙げることができる。好ましくはアルコール類、ケトン類、グリコール誘導体類、低級脂肪酸エステル類、ハロアルカン類、炭化水素類である。特に、水を混合使用する溶媒系においては、水と均一溶媒となるアルコール類、ケトン類、グリコール誘導体類の中から選ばれる溶媒であり、水不使用の場合の溶媒としては炭化水素類、ケトン類、低級脂肪酸エステル類、ハロアルカン類の使用が好ましい。
【0061】
これらによりワックスの分散物は、安定性に優れるものである。なお、上記の有機溶媒は、同一もしくは異なる種類の溶媒と2種以上を混合して用いてもよい。
ワックス粒子の分散物は、ワックス粒子を公知の分散剤ないし乳化剤と共に上記溶媒で混合することにより調製することができる。ワックス分散物の調製にあたっては、ボールミル等を用いてもよい。
【0062】
ワックス粒子の体積平均粒径は、インクの経時安定性の観点から、10nm〜200nmであることが好ましく、50nm〜100nmであることがより好ましく、60nm〜90nmであることが更に好ましい。
ワックス粒子の体積平均粒径は、光散乱を用いた粒度分布測定装置等で測定することができ、本発明においては、日機装(株)製、マイクロトラックUPA EX150を用いて測定した値である。
【0063】
ワックスは、インク組成物の全質量に対し0.1質量%〜10質量%(ワックス固形分濃度)であることが耐擦性、耐プレスブロッキング性及びインク吐出性(直後、経時後)の向上の点で好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。
【0064】
(水)
本発明におけるインク組成物は、水を含有することが好ましい。また含有する水の量には特に制限はない。本発明において水の好ましい含有量は、10〜99質量%であり、より好ましくは30〜80質量%である。
【0065】
(樹脂粒子)
インク組成物は、さらに樹脂粒子を含有することが好ましい。
樹脂粒子としては、例えば、特開2010−046896号公報の段落番号[0021]〜[0055]に記載される樹脂粒子を用いることができる。
本発明においては、特開2010−046896号公報の段落番号[0021]〜[0055]に記載される樹脂粒子の中でも、吐出安定性及び液安定性の観点から、自己分散性ポリマー粒子が好ましく、カルボキシル基を有する自己分散性ポリマー粒子がより好ましい。自己分散性ポリマー粒子とは、界面活性剤の不存在下に、ポリマー自身が有する官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性ポリマーであって、遊離の乳化剤を含有しない水不溶性ポリマーの粒子を意味する。
【0066】
水不溶性ポリマーの主鎖骨格としては、特に制限は無く、例えば、ビニルポリマー、縮合系ポリマー(エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース、ポリエーテル、ポリウレア、ポリイミド、ポリカーボネート等)を用いることができる。その中で、特にビニルポリマーが好ましい。
【0067】
ビニルポリマー及びビニルポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−181549号公報及び特開2002−88294号公報に記載されているものを挙げることができる。また、解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する連鎖移動剤や重合開始剤、イニファーターを用いたビニルモノマーのラジカル重合や、開始剤或いは停止剤のどちらかに解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する化合物を用いたイオン重合によって高分子鎖の末端に解離性基を導入したビニルポリマーも使用できる。
また、縮合系ポリマーと縮合系ポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−247787号公報に記載されているものを挙げることができる。
【0068】
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、自己分散性の観点から、親水性の構成単位と芳香族基含有モノマーに由来する構成単位とを含む水不溶性ポリマーを含むことが好ましい。
【0069】
前記親水性の構成単位は、親水性基含有モノマーに由来するものであれば特に制限はなく、1種の親水性基含有モノマーに由来するものであっても、2種以上の親水性基含有モノマーに由来するものであってもよい。前記親水性基としては、特に制限はなく、解離性基であってもノニオン性親水性基であってもよい。
本発明において前記親水性基は、自己分散促進の観点、形成された乳化又は分散状態の安定性の観点から、解離性基であることが好ましく、アニオン性の解離基であることがより好ましい。前記解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の定着性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
【0070】
親水性基含有モノマーは、自己分散性と凝集性の観点から、解離性基含有モノマーであることが好ましく、解離性基とエチレン性不飽和結合とを有する解離性基含有モノマーであることが好ましい。
解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
【0071】
前記不飽和カルボン酸モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。
前記不飽和スルホン酸モノマーの具体例としては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。
前記不飽和リン酸モノマーの具体例としては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記の解離性基含有モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
【0072】
前記芳香族基含有モノマーは、芳香族基と重合性基とを含む化合物であれば特に制限はない。前記芳香族基は芳香族炭化水素に由来する基であっても、芳香族複素環に由来する基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、芳香族炭化水素に由来する芳香族基であることが好ましい。
また前記重合性基は、縮重合性の重合性基であっても、付加重合性の重合性基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、付加重合性の重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を含む基であることがより好ましい。
【0073】
本発明における芳香族基含有モノマーは、芳香族炭化水素に由来する芳香族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましい。芳香族基含有モノマーは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
前記芳香族基含有モノマーとしては、ポリマー鎖の親水性と疎水性のバランスとインク定着性の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0075】
自己分散性ポリマー粒子は、自己分散性、及び、画像形成時にインクと処理液とが接触したときのインクの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が25mgKOH/g〜150mgKOH/gであることが好ましい。酸価は、50mgKOH/g〜100mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が低いと樹脂の分散安定性が低く、インクの安定性が低下する。また、酸価が高いと、インクの粘度が高くなり、吐出性が悪化するといった弊害が発生する。
【0076】
自己分散性ポリマー粒子は、アクリル系ポリマーの粒子であるのが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含み、その含有量が10質量%〜95質量%であることが好ましい。芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量が10質量%〜95質量%であることで、自己乳化又は分散状態の安定性が向上し、更にインク粘度の上昇を抑制することができる。
本発明においては、自己分散状態の安定性、芳香環同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、15質量%〜90質量%であることがより好ましく、15質量%〜80質量%であることがより好ましく、25質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
【0077】
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、例えば、芳香族基含有モノマーに由来する構成単位と、解離性基含有モノマーに由来する構成単位とを用いて構成することができる。更に、必要に応じて、その他の構成単位を更に含んでもよい。
【0078】
前記その他の構成単位を形成するモノマーとしては、前記芳香族基含有モノマーと解離性基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限はない。中でも、ポリマー骨格の柔軟性やガラス転移温度(Tg)制御の容易さの観点から、アルキル基含有モノマーであることが好ましい。
【0079】
−樹脂粒子の分子量−
樹脂の分子量範囲は、重量平均分子量で、1,000〜20万であることが好ましく、1,000〜10万であることがより好ましく、1,000〜1万であることが更に好ましい。重量平均分子量を1,000以上とすることで吐出安定性を確保することができる。
なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)によって測定することできる。本発明においては、GPCは、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。また、条件としては、試料濃度を0.35質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、RI検出器を用いて行なった。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製した。
【0080】
樹脂粒子(特に自己分散性ポリマー粒子)は、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。
樹脂粒子(特に自己分散性ポリマー粒子)のインク組成物中における含有量としては、画像光沢の均一性などの観点から、インク組成物の全質量に対して、1〜10質量%であることが好ましく、2〜5質量%であることがより好ましい。
【0081】
(他の成分)
インク組成物が含み得る他の成分としては、例えば、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、インク組成物を調製後に直接添加してもよく、インク組成物の調製時に添加してもよい。具体的には特開2007−100071号公報の段落番号[0153]〜[0162]に記載のその他の添加剤などが挙げられる。
【0082】
本発明のインク組成物の粘度としては、インクの付与をインクジェット方式で行う場合、打滴安定性と凝集速度の観点から、4、5mPa・s〜6.5mPa・sが好ましく、5mPa・s〜6mPa・sがより好ましい。
また、インク組成物の付与をインクジェット方式以外の方法で行う場合には、1〜40mPa・sの範囲が好ましく、5〜20mPa・sの範囲がより好ましい。
インク組成物の粘度は、E型粘度計(東機産業製)を用いて25℃で測定した値を採用する。
【0083】
インク組成物の表面張力は、インクジェット方式で良好に打滴するために、20〜60mN/mであることが好ましく、20〜45mN/mであることがより好ましく、25〜40mN/mであることがさらに好ましい。一方、インクの付与をインクジェット方式以外の方法で行う場合には、20〜60mN/mであることが好ましく、30〜50mN/mであることがより好ましい。
本発明において、インク組成物の表面張力は、プレート法を用いて25℃で測定する。
【0084】
〔画像形成方法〕
本発明の画像形成方法は、塗工層を有する記録媒体に、エピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマーを含有する処理液を付与する処理液付与工程と、前記記録媒体に、自己分散顔料、溶剤、界面活性剤、ワックス粒子、及び水を含有するインク組成物を付与するインク付与工程と、を有する。
また、本発明の画像形成方法は、必要に応じてその他の工程を備えて構成される。
【0085】
以下、本発明の画像形成方法を構成する各工程を説明する。
【0086】
−処理液付与工程−
処理液付与工程は、インク組成物中の成分を凝集させる成分であるエピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマーを含む既述の処理液を、塗工層を有する記録媒体上に付与する工程である。
即ち、凝集体の形成が可能な処理液を記録媒体に付与し、処理液をインク組成物と接触させて画像化する。この場合、インク組成物中の樹脂粒子や自己分散顔料などの分散粒子が凝集し、記録媒体上に画像が固定化される。
【0087】
記録媒体上への処理液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。
【0088】
処理液付与工程は、インク組成物を用いた画像形成工程の前又は後のいずれに設けてもよい。
【0089】
本発明においては、処理液付与工程で処理液を付与した後に画像形成工程を設けた態様が好ましい。すなわち、記録媒体上に、インク組成物を付与する前に、予めインク組成物中の色材(好ましくは顔料)を凝集させるための処理液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を付与して画像化する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
【0090】
処理液の付与量としては、インク組成物を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、凝集剤(例えば、2価以上のカルボン酸又はカチオン性有機化合物)の付与量が0.1g/m以上となる量とすることができる。中でも、凝集剤の付与量が0.1〜1.0g/mとなる量が好ましく、より好ましくは0.2〜0.8g/mである。凝集剤の付与量は、0.1g/m以上であると凝集反応が良好に進行し、1.0g/m以下であると光沢度が高くなり過ぎず好ましい。
【0091】
また、本発明においては、処理液付与工程後に画像形成工程を設け、処理液を記録媒体上に付与した後、インク組成物が付与されるまでの間に、記録媒体上の処理液を加熱乾燥する加熱乾燥工程を更に設けることも好ましい。画像形成工程前に予め処理液を加熱乾燥させることにより、滲み防止などのインク着色性が良好になり、色濃度及び色相の良好な可視画像を記録できる。
【0092】
加熱乾燥は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行なえる。加熱方法としては、例えば、記録媒体の処理液の付与面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の処理液の付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
【0093】
−インク付与工程−
インク付与工程は、既述のインク組成物を記録媒体に付与する工程である。
インク組成物の記録媒体上への付与は、処理液の付与と同様に、既述の塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。本発明で用いる既述のインク組成物は、水を溶媒とした粘度の低い液状組成物であり、ノズル等の細孔からの吐出性に優れるため、インクジェット法に用いることが好ましい。すなわち、本発明の画像形成方法は、インクジェット記録方式によるインクジェット記録方法であることが好ましい。
インクジェット法においては、インク組成物を、シングルパス方式で付与する。シングルパス方式については後述する。
本工程では、記録媒体上に選択的にインク組成物を付与でき、所望の可視画像を形成できる。
【0094】
インクジェット法を利用した画像の形成は、具体的には、エネルギーを供与することにより、所望の記録媒体、すなわち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載のインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に処理液を吐出することにより行なえる。なお、本発明の好ましい画像形成方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
【0095】
インクジェット法は、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0096】
また、インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
尚、前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0097】
インクジェットヘッドとしては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているライン(シングルパス)ヘッドを用いたライン(シングルパス)方式とがある。
本発明の画像形成方法は、このシングルパスヘッドを用いてシングルパス方式で記録媒体上にインク組成物を付与するものである。
ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
本発明の画像形成方法は、本発明の前記インク組成物を用いることによりプレスブロッキングの発生を抑制することができ、また、前記インク組成物をシングルパス方式で吐出することにより、吐出精度の向上が図れ、また、ノズルプレートとインクとの接触による侵食の抑制効果も大きい。
【0098】
更には、本発明における画像形成工程では、ライン方式によるために、インク組成物を1種のみ用いるのみならず2種以上のインク組成物を用い、先に吐出するインク組成物(第n色目(n≧1)、例えば第2色目)とそれに続いて吐出するインク組成物(第n+1色目、例えば第3色目)との間の吐出(打滴)間隔を1秒以下にして好適に記録を行なうことができる。本発明においては、ライン方式で1秒以下の吐出間隔として、インク滴間の干渉で生じる滲みや色間混色を防止しつつ、従来以上の高速記録下で耐擦過性に優れ、ブロッキングの発生が抑えられた画像を得ることができる。また、色相及び描画性(画像中の細線や微細部分の再現性)に優れた画像を得ることができる。
【0099】
インクジェットヘッドから吐出されるインクの液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、0.5〜6pl(ピコリットル)が好ましく、1〜5plがより好ましく、更に好ましくは2〜4plである。
【0100】
−加熱定着工程−
本発明の画像形成方法は、インク付与工程の後、インク組成物の付与により形成されたインク画像に加熱面を接触させて加熱定着する加熱定着工程を有することも好ましい。加熱定着処理を施すことにより、記録媒体上の画像の定着が施され、画像の擦過に対する耐性をより向上させることができる。
【0101】
加熱は、画像中のポリマー粒子の最低造膜温度(MFT;Minimum Filming Temperature)以上の温度で行なうことが好ましい。MFT以上に加熱されることで、ポリマー粒子が皮膜化して画像が強化される。加熱温度は、好ましくはMFT以上の温度域が好ましい。具体的には、加熱温度は、40〜80℃の範囲が好ましく、より好ましくは50℃〜75℃の範囲であり、更に好ましくは55℃〜70℃の範囲である。
ポリマー粒子の最低造膜温度(MFT)はポリマーのTgとインク溶剤の種類、量によって制御され、一般的にはTgが低いほど、インク溶剤のI/O値が低いほど、インク溶剤の量が多いほどMFTは低下する傾向にある。
【0102】
加熱と共に加圧する際の圧力としては、表面平滑化の点で、0.1〜3.0MPaの範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜1.0MPaの範囲であり、更に好ましくは0.1〜0.5MPaの範囲である。
【0103】
加熱の方法は、特に制限されないが、ニクロム線ヒーター等の発熱体で加熱する方法、温風又は熱風を供給する方法、ハロゲンランプ、赤外線ランプなどで加熱する方法など、非接触で乾燥させる方法を好適に挙げることができる。また、加熱加圧の方法は、特に制限はないが、例えば、熱板を記録媒体の画像形成面に押圧する方法や、一対の加熱加圧ローラ、一対の加熱加圧ベルト、あるいは記録媒体の画像記録面側に配された加熱加圧ベルトとその反対側に配された保持ローラとを備えた加熱加圧装置を用い、対をなすローラ等を通過させる方法など、接触させて加熱定着を行なう方法が好適に挙げられる。
【0104】
加熱加圧する場合、好ましいニップ時間は、1ミリ秒〜10秒であり、より好ましくは2ミリ秒〜1秒であり、更に好ましくは4ミリ秒〜100ミリ秒である。また、好ましいニップ幅は、0.1mm〜100mmであり、より好ましくは0.5mm〜50mmであり、更に好ましくは1〜10mmである。
【0105】
前記加熱加圧ローラとしては、金属製の金属ローラでも、あるいは金属製の芯金の周囲に弾性体からなる被覆層及び必要に応じて表面層(離型層ともいう)が設けられたものでもよい。後者の芯金は、例えば、鉄製、アルミニウム製、SUS製等の円筒体で構成することができ、芯金の表面は被覆層で少なくとも一部が覆われているものが好ましい。被覆層は、特に、離型性を有するシリコーン樹脂あるいはフッ素樹脂で形成されるのが好ましい。また、加熱加圧ローラの一方の芯金内部には、発熱体が内蔵されていることが好ましく、ローラ間に記録媒体を通すことによって、加熱処理と加圧処理とを同時に施したり、あるいは必要に応じて、2つの加熱ローラを用いて記録媒体を挟んで加熱してもよい。発熱体としては、例えば、ハロゲンランプヒーター、セラミックヒーター、ニクロム線等が好ましい。
【0106】
加熱加圧装置に用いられる加熱加圧ベルトを構成するベルト基材としては、シームレスのニッケル電鍮が好ましく、基材の厚さは10〜100μmが好ましい。また、ベルト基材の材質としては、ニッケル以外にもアルミニウム、鉄、ポリエチレン等を用いることができる。シリコーン樹脂あるいはフッ素樹脂を設ける場合は、これら樹脂を用いて形成される層の厚みは、1〜50μmが好ましく、更に好ましくは10〜30μmである。
【0107】
また、前記圧力(ニップ圧)を実現するには、例えば、加熱加圧ローラ等のローラ両端に、ニップ間隙を考慮して所望のニップ圧が得られるように、張力を有するバネ等の弾性部材を選択して設置すればよい。
【0108】
加熱加圧ローラ、あるいは加熱加圧ベルトを用いる場合の記録媒体の搬送速度は、200〜700mm/秒の範囲が好ましく、より好ましくは300〜650mm/秒であり、更に好ましくは400〜600mm/秒である。
【0109】
本発明の画像形成方法は、シングルパス方式で吐出を行うインクジェットヘッドに付着したインクを除去する除去工程を有することも好ましい態様である。
除去工程を施すことにより、即ち、インクジェットヘッドに付着したインク組成物、インク組成物由来の固着物、又はその他の付着物を除去することにより、吐出直後及び経時後のインク吐出性がより向上する点で好ましい。
【0110】
<インクセット>
本発明のインクセットは、エピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマーを含有する処理液と、自己分散顔料、溶剤、界面活性剤、ワックス粒子、及び水を含有するインク組成物と、を含んで構成される。
本発明のインクセットは、上記処理液と、自己分散顔料、溶剤、界面活性剤、ワックス粒子、及び水を含有する本発明におけるインク組成物とを含んでいれば特に限定はなく、必要に応じ、他のインク組成物を含んでいてもよい。
他のインク組成物としては公知のインクを用いることができる。
【実施例】
【0111】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。尚、特に断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0112】
<インク組成物の調製>
−インクC1−
下記組成となるように成分を混合溶解して、インクC1を調製した。
・自己分散顔料
〔Cabot製自己分散性シアン顔料、CAB−O−JET250〕・・・2.5%
・溶剤
トリプロピレングリコール ・・・・17%
テトラエチレングリコール ・・・・・4%
・水 ・・73.4%
・界面活性剤
リン酸エステル界面活性剤 ・・・0.5%
Zonyl−FSN100〔Dupont社製フッ素系界面活性剤〕・・・0.1%
・樹脂粒子(下記構造の樹脂)
スチレン−アクリル樹脂〔Mw5200、酸価62KOHmg/g〕・・・0.5%
・ワックス分散物〔中京油脂社製セロゾール524、固形分30%〕 ・・・・・2%
(ワックス粒子(体積平均粒径70nm)を含むカルナバワックス分散物)
【0113】
【化2】

【0114】
−インクC0、及びインクC2〜インクC6−
インクC1の調製において、ワックス分散物であるセロゾール524の量を、0.25%、0.5%、3%、4%、及び5%に変え、ワックス分散物の量の増減に応じ、インク全体で100%なるように水の量を増減して調整した以外は同様にして、インクC2〜インクC6を調製した。
さらに、インクC1の調製において、ワックス分散物であるセロゾール524を用いず、水の量を75.4%とした他は同様にして調製したインクを、インクC0とした。
【0115】
−インクC7〜インクC9−
インクC3、インクC1、及びインクC4の調製において、ワックス分散物をセロゾール524から、トラソルCN(固形分30%)に変更したほかは同様にして、それぞれ、インクC7、インクC8、及びインク9を調製した。
【0116】
−インクC10−
インクC1の調製において、自己分散顔料(CAB−O−JET250)を、PB 15:3〔大日精化(株)製〕を下記分散方法によりポリマー〔BASFジャパン(株)製ジョンクリル683〕で分散した顔料に変更した以外は同様にして、インクC10を調製した。
【0117】
(分散方法)
PB15:3を400g、ジョンクリル683(酸価160)〔BASFジャパン(株)製〕を80g、それぞれ秤量し、イオン交換水1560gに混合し、さらに、ポリマーの酸価分を中和するのに適した量の水酸化ナトリウムを添加した。得られた混合液を、乳鉢で1時間混錬した後、日本精機社製小型攪拌機付超音波分散機US−600CCVP(600W、超音波発振部50mm)で20分間、粗分散を行い、粗分散液を得た。
次に得られた粗分散液と0.05mmジルコニアビーズ1.3kgを、コトブキ技研興業社製スーパーアペックスミル(形式SAM−1)へ供給し、回転数2500rpm、処理流量15L/hで160分間分散を実施した。分散終了後、32μm濾布で濾過し、適量の水を添加し10質量%シアン顔料分散液とした。
【0118】
表1に、インクC0〜インクC10のワックス含有量〔%〕を示す。ワックス含有量〔%〕において、「分散物」欄の数値は、インク全質量に対するワックス分散物の量を示し、「固形分」欄の数値は、インク全質量に対するワックス分散物固形分の量を示す。
【0119】
<インクの安定性評価>
得られたインクC0〜インクC10を、50℃で7日間放置した前後における粘度変化を、E型粘度計(東機産業社製)を用いて測定し、下記基準で評価した。その結果を表1に示す。
−評価基準−
◎:粘度変化が1.0mPa・s未満であり、問題のないレベル
○:粘度変化が1.0mPa・s以上〜1.5mPa・s未満であり、実用上問題のないレベル
×:粘度変化が1.5mPa・s以上であり、吐出において実用上問題のあるレベル
【0120】
【表1】

【0121】
<処理液の調製>
−処理液1(エピハロヒドリンとジメチルアミンの共重合ポリマー含有処理液)−
下記組成となるように成分を混合溶解して、処理液1を調製した。
・エピハロヒドリンとジメチルアミンの共重合ポリマー
SNF Floerger社製、Floquat FL−14 ・・・・・2%
・溶剤
4−メチルモルホリン−N−オキシド ・・・9.5%
トリメチロールプロパン ・・17.0%
・界面活性剤
Zonyl−FSN100〔Dupont社製フッ素系界面活性剤〕・・・0.1%
オルフィンE1010〔日信化学社製〕 ・・・0.9%
・水 ・・70.5%
【0122】
−処理液2(多価金属含有処理液)−
下記組成となるように成分を混合溶解して、処理液2を調製した。
・溶剤〔グリセリン〕 ・・・10%
・多価金属〔塩化カルシウム〕・・・・5%
・水 ・・・85%
【0123】
<画像形成方法及び評価>
得られたインクC0〜インクC10のうち、インクC0〜インクC4及びインクC7〜インクC9と、処理液1〜処理液2とを組み合わせて構成されるインクセットを用いて、下記手順により画像形成し、画像形成の評価、及び、得られた画像に対しての評価を行なった。インクセットの構成と評価結果を表2に示す。なお、表2中、「ワックス量」において、「分散物」欄の数値は、インク全質量に対するワックス分散物の量を示し、「固形分」欄の数値は、インク全質量に対するワックス分散物固形分の量を示す。
【0124】
〔実施例1〕
(株)リコー製GELJET GX5000プリンターヘッドを用意し、これに繋がる貯留タンク中のインクを詰め替え、インクC1を充填した。
記録媒体として、坪量104.7g/mの(N)シルバーダイヤ〔日本製紙(株)製〕を用意し、用意した記録媒体を、500mm/秒で所定の直線方向に移動可能なステージ上に固定し、ステージ温度を30℃で保持した。さらに、処理液1を、バーコーターで約1.2μmの厚みとなるように、記録媒体上に塗布し、塗布直後に記録媒体を50℃で2秒間乾燥させた。
その後、GELJET GX5000プリンターヘッドを、前記ステージの移動方向(副走査方向)と直交する方向に対して、ノズルが並ぶラインヘッドの方向(主走査方向)が75.7度傾斜するように固定配置した。記録媒体を、副走査方向に定速移動させながら、インク液滴量2.4pL、吐出周波数24kHz、解像度1200dpi×1200dpiの吐出条件にて、ライン方式でインクC1を吐出し、シアンのベタ画像を印字した。
【0125】
画像の印字直後、記録媒体を、60℃で3秒間ドライヤーにより乾燥させた。更に、記録媒体を、60℃に加熱された一対の定着ローラ間を通過させ、ニップ圧0.25MPa、ニップ幅4mmにて定着処理を実施し、実施例1の評価サンプルを得た。
【0126】
<耐擦性評価1(マーカー擦り)>
評価サンプルを、印字後3時間室温で放置し、市販の蛍光ペン〔ゼブラ社製、蛍光オプテックス2、WKT4−Y〕を用いて、画像部から非印字部(白字)に筆記し、白字の汚れ、蛍光ペン先の汚れを目視で評価した。
−評価基準−
○:白字の汚れ、蛍光ペン先の汚れを目視で確認できない
×:白字の汚れ、蛍光ペン先の汚れを目視で確認できる
【0127】
<耐擦性評価2(紙擦り)>
10mm×50mmに裁断した未印字の(N)シルバーダイヤを、文鎮(質量470g、サイズ15mm×30mm×120mm)に巻きつけ、評価サンプルの画像が印字された面を3往復擦った。このとき、未印字のシルバーダイヤと評価サンプルとが接触する面積は、150mmであり、評価サンプルの画像が受ける負荷は、荷重260kg/mに相当する。擦った後の評価サンプルの印字面を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
−評価基準−
A:印字面の画像(色材)の剥れは視認できなかった。
B:印字面の画像(色材)の剥れは視認できなかったが、擦った紙に色材が転写した。
C:印字面の画像(色材)の剥れがわずかにと視認できたが、実用上問題なし
D:印字面の画像(色材)の剥れがはっきりと視認でき、実用上問題あり
【0128】
<インクの凝集性評価(ドット広がり)>
(株)リコー製GELJET GX5000のプリンターヘッドを、前記ステージの移動方向(副走査方向)と直交する方向に、ノズルが並ぶラインヘッドの方向(主走査方向)を合わせて固定した。次に、GELJET GX5000に繋がる貯留タンク中のインクを詰め替え、インクC1を充填した。
記録媒体として、坪量104.7g/mのOKトップコート+(王子製紙(株)製)を用意し、用意した記録媒体を、500mm/秒で所定の直線方向に移動可能なステージ上に固定し、ステージ温度を25℃で保持した。さらに、処理液1を、バーコーターで約1.7μmの厚みとなるように、記録媒体上に塗布し、塗布直後に記録媒体を50℃で2秒間乾燥させた。
次に、ステージを504mm/秒で搬送方向(副走査方向)に移動させ、インク滴量2.4pL、吐出周波数5kHz、ノズル配列方向×搬送方向75×300dpiで、インクC1を吐出し、ドット画像を印字した。
【0129】
印字した画像を、顕微鏡〔王子計測機器(株)製ドットアナライザーDA6000〕を用いて、拡大倍率50倍で観察し、下記評価基準で評価した。観察されるドットが円形である場合には、画像形成時にノズルから吐出されたインク液滴が、隣り合うインク液滴と重なり合って滲むことなく固化したこと考えられる。
−評価基準−
A:ドットの広がり率が1.90未満である
B:ドットの広がり率が1.90以上、1.95未満である
C:ドットの広がり率が1.95以上、2.00未満である
D:ドットの広がり率が2.00以上である
【0130】
なお、ドットが円形である」「広がり率」とは、「記録媒体に印字されたドット直径」/「打滴時のインク滴が球であったと仮定したときのインク滴の直径」により算出される値であり、インクのにじみを判断する基準となる。広がり率が2以上であることでインクにじみが大きいと考えられる。
【0131】
〔実施例2〜実施例7、比較例1〜比較例3〕
実施例1の画像形成および評価において、インクセットのインクC1と、処理液1を、表2に示す組合せのインクセットに変更したほかは同様にして、実施例2〜実施例3、比較例1〜比較例3の評価サンプルを作製し、評価した。実施例2〜実施例3、比較例1〜比較例3のインクセットの構成と、各評価結果を表2に示した。
【0132】
【表2】

【0133】
表2から明らかな通り、本発明では、耐擦性とインク凝集性に優れた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗工層を有する記録媒体に、エピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマーを含有する処理液を付与する処理液付与工程と、
前記記録媒体に、自己分散顔料、溶剤、界面活性剤、ワックス粒子、及び水を含有するインク組成物を付与するインク付与工程と、
を有する画像形成方法。
【請求項2】
前記インク組成物の全質量に対する前記ワックス粒子の含有量が、0.1質量%〜10質量%である請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記ワックス粒子が、カルナバワックスの粒子である請求項1または請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記ワックス粒子の体積平均粒径が、50nm〜100nmである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記溶剤が、多価アルコールである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記インク組成物が、更に、重量平均分子量が1,000〜10,000であり、酸価が50mgKOH/g〜100mgKOH/gである樹脂を含有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記処理液の全質量に対する前記共重合ポリマーの含有量が、0.5質量%〜10質量%である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【請求項8】
前記インク組成物は、シングルパス方式により前記記録媒体に付与される請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項9】
エピハロヒドリンとジメチルアミンとの共重合ポリマーを含有する処理液と、
自己分散顔料、溶剤、界面活性剤、ワックス粒子、及び水を含有するインク組成物と、
を有するインクセット。
【請求項10】
前記インク組成物の全質量に対する前記ワックス粒子の含有量が、0.1質量%〜10質量%である請求項9に記載のインクセット。
【請求項11】
前記ワックス粒子が、カルナバワックスの粒子である請求項9または請求項10に記載のインクセット。
【請求項12】
前記ワックス粒子の体積平均粒径が、50nm〜100nmである請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項13】
前記溶剤が、多価アルコールである請求項9〜請求項12のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項14】
前記インク組成物が、更に、重量平均分子量が1,000〜10,000であり、酸価50mgKOH/g〜100mgKOH/gである樹脂を含有する請求項9〜請求項13のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項15】
前記処理液の全質量に対する前記共重合ポリマーの含有量が、0.5質量%〜5質量%である請求項9〜請求項14のいずれか1項に記載のインクセット。

【公開番号】特開2011−194613(P2011−194613A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61296(P2010−61296)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】