説明

画像形成方法及び画像形成装置

【課題】軽量柔軟な二重構造の帯電ローラを用いてハーフトーン画像に白点や黒点を生じさせない画像形成方法及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】帯電ローラ16は、ニトリル系発泡ゴムと導電性カーボンブラックとからなり中心の芯金53上に支持された第1の導電性弾性層54と、エピクロルヒドリン系ゴムと導電性カーボンブラックとからなると共に表面にイソシアネートを含む表面処理液により表面処理されて第1の導電性弾性層54上に設けられた第2の導電性弾性層55とで構成される。この帯電ローラ16から感光体ドラム14に印加する直流・交流の重畳電圧の印加交流電圧Vpp(V)と感光体ドラム14の周面を被覆する有機感光体の膜厚d(μm)との間には2つの式「30d+950≦Vpp≦30d+1350」及び「14≦d≦28」の関係が成立するように構成され制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーフトーン画像に白点や黒点を生じさせない画像形成方法及び画像形成装置に係わり、更に詳しくは、簡便軽量な二重構造の帯電ローラを用いてハーフトーン画像に白点や黒点を生じさせない画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体に形成したトナー像を用紙に転写して定着することにより用紙に文字や画像を形成する電子写真式の画像形成装置(プリンタ)が知られている。通常、上記の感光体は、ドラム型であり、その周面上に露光ヘッドにより静電潜像を形成される。その静電潜像を現像器によってトナー像化され、更に転写器によって用紙上に転写される。
【0003】
上記の静電潜像の形成には、これに先立って帯電装置による初期化帯電が必ず行われる。この初期化帯電では、旧来は放電型の非接触帯電器やブラシ型の接触帯電器が用いられていたが、放電型は周囲の環境へ悪影響が及ぶこと、ブラシ型は均一な帯電が実現されにくいことでそれぞれ問題があり、現在ではほとんどローラ型の接触帯電器すなわち帯電ローラが用いられている。
【0004】
この帯電ローラを用いる方式では、ローラは、通常、軸金(芯金)に外嵌する導電性の厚いゴム層から成るゴムローラ型であるが、これでは高価であるので、ローラを安価に構成するために軸金に外嵌する導電性発泡体ローラの上に導電性のチューブを被せ、双方を両端部の非画像形成領域で接着剤により接着して構成した軽量で二重構造の帯電ローラを用いる方式が知られている。(例えば、特許文献1参照。)
一般に、帯電ローラに用いられる上記の導電性発泡体としては、ポリウレタン、シリコーンゴム、ニトリルゴム製などの導電性発泡体が用いられてきた。ただし、帯電ローラには、感光体ドラムへの非汚染性や、自身の導電性などの性能が要求されるため、導電性発泡体からなる弾性層の表面に、各種のコーティング層、表面処理層、又は被覆チューブ等による二重構造が採用されている。
【0005】
また、上記の軽量二重構造の帯電ローラでは、帯電ローラの両端部を感光体ドラム側に付勢して帯電性を強化する場合、中央部よりも両端部に圧力がかかって中央部と両端部で帯電性にムラが生じることを解消するために、端部から画像形成領域まで所定範囲入り込んだ所まで接着剤を塗布して端部の電気抵抗性を高める方式が知られている。(例えば、特許文献2参照。)
また、これらの二重構造の形式の中には、放電音が小さく且つ帯電性に優れた帯電ローラとして、芯金上に、第1の導電性弾性層としてニトリル系ゴムからなる導電性発泡層を形成し、その上に、第2の導電性弾性層としてエピクロルヒドリン系ゴムからなる被覆層を形成した帯電ローラが提案されている。(例えば、特許文献3参照。)
【特許文献1】特開平11−125956号公報(段落[0031]〜[0033]、図5)
【特許文献2】特開2001−22251号公報(段落[0054]〜[0058]、図5)
【特許文献3】特開2005−292600号公報([要約]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、上記のようなトナーを用いる電子写真式のプリンタは、当初の頃はA4判の用紙を横にした場合の印刷速度が13枚/秒程度であったものが種々の技術面の改良により29枚/秒の印刷速度が普通となり、当初の倍以上の印刷速度に高速化されてきている。
【0007】
ところが、このように印刷速度が高速化されると、厚いゴムの一層構造のゴムローラ型では何らの問題も生じないが、上述した特許文献1〜3のような導電性発泡体ローラと導電性チューブとの軽量二重構造のものでは、両端部のみの接着であるため、長期の使用で表層部の導電性チューブに捩れや皺が生じて均一な帯電性が得られなくなるという問題が発生する。
【0008】
また、そればかりでなく、特許文献1〜3に開示されている帯電ローラを試作して実験してみると、ハーフトーン画像を印刷すると白点や黒点が発生する、という問題があることが判明した。
【0009】
本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、軽量柔軟な二重構造の帯電ローラを用いてハーフトーン画像に白点や黒点を生じさせない画像形成方法及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
先ず、第1の発明の画像形成方法は、少なくとも、中心の芯金上に支持された第1の導電性弾性層と該第1の導電性弾性層上に設けられた第2の導電性弾性層とを備えた帯電ローラと、有機光半導体の感光材料から成る有機感光体により表面を被覆された感光体ドラムと、を備え、上記帯電ローラにより感光体ドラムを初期化帯電した後、該感光体ドラム上に静電潜像を形成し、該静電潜像をトナー像化し、該トナー像を用紙に転写して画像を形成する画像形成方法において、上記帯電ローラの上記第1の導電性弾性層を、ニトリル系発泡ゴムと導電性カーボンブラックとで形成し、上記帯電ローラの上記第2の導電性弾性層を、エピクロルヒドリン系ゴムと導電性カーボンブラックとで形成するとともに、その表面にイソシアネートを含む表面処理液により表面処理された表面処理層を形成し、上記感光体ドラムが被覆される上記有機感光体の膜厚をd(μm)とし、上記帯電ローラに印加される転写電圧を直流電圧「−550V」と交流電圧Vpp(V)の重畳電圧としたとき、2つの式「30d+950≦Vpp≦30d+1350」、「14≦d≦28」で示される条件で上記帯電ローラによる上記感光体ドラムへの初期化帯電を実行するように構成される。
【0011】
次に、第2の発明の画像形成装置は、少なくとも、中心の芯金上に支持された第1の導電性弾性層と該第1の導電性弾性層上に設けられた第2の導電性弾性層とを備えた帯電ローラと、有機光半導体の感光材料から成る有機感光体により表面を被覆された感光体ドラムと、を備え、上記帯電ローラにより感光体ドラムを初期化帯電した後、該感光体ドラム上に静電潜像を形成し、該静電潜像をトナー像化し、該トナー像を用紙に転写して画像を形成する画像形成装置において、上記帯電ローラの上記第1の導電性弾性層はニトリル系発泡ゴムと導電性カーボンブラックとからなり、上記帯電ローラの上記第2の導電性弾性層はエピクロルヒドリン系ゴムと導電性カーボンブラックとからなるとともに、その表面にイソシアネートを含む表面処理液により表面処理された表面処理層を有し、上記感光体ドラムが被覆される上記有機感光体の膜厚をd(μm)とし、上記帯電ローラに印加される転写電圧を直流電圧「−550V」と交流電圧Vpp(V)の重畳電圧として、2つの式「30d+950≦Vpp≦30d+1350」、「14≦d≦28」で示される条件で上記帯電ローラによる上記感光体ドラムへの初期化帯電を実行するように構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、二重構造の帯電ローラを用いてハーフトーン画像に白点や黒点を生じさせない画像形成方法及び画像形成装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1は、一実施の形態における帯電ローラを備えた画像形成装置の内部構成を示す側断面図であり、例としてタンデム型のカラー画像形成装置を示している。
【0014】
同図に示すカラー画像形成装置1は、例えばデスクトップ型のパソコン用ラックに載置可能な程度の大きさの小型のカラー画像形成装置であり、本体基部2の前面(図の右方)に開閉給紙トレー3を備え、下部に用紙カセット4を着脱自在に備えている。用紙カセット4には多枚数の用紙Pが載置・収容されている。
【0015】
また上蓋5は、本体基部2の後部上面と共に排紙トレー6を形成しており、そこには上部排紙口7から排出される画像形成済みの用紙が積載される。本体基部2の上面には上蓋5の前方側方に、液晶表示装置、電源スイッチ、複数のデータ入力キー等からなる操作パネル9が配設されている。
【0016】
このカラー画像形成装置1の内部には、略中央に、用紙搬送ベルト(以下、単にベルトという)11が前後に偏平なループ状に配置されている。用紙搬送ベルト11は、その両端部を駆動ローラ12と従動ローラ13に保持されて、図の矢印Aで示す反時計回り方向に循環移動する。
【0017】
ベルト11の上循環部には、4個の感光体ドラム14(14a、14b、14c、14d)が用紙搬送方向(図の右から左方向)に多段式に並設されている。そして、各感光体ドラム14を夫々取り囲むようにして(以下、代表的に感光体ドラム14dの周囲装置についてのみ符号を付して示す)、クリーナ15、帯電ローラ16、書込ヘッド17、現像器18及び転写シート19が配置されている。
【0018】
感光体ドラム14aに対応する現像器18から感光体ドラム14dに対応する現像器18まで、各現像器18には、減法混色の三原色であるM(マゼンタ:赤色染料)、C(シアン:緑味のある青色)及びY(イエロー:黄色)の各色トナーと、文字や画像の黒色部分等の印字に専用されるK(ブラック:黒)トナーが夫々収容されている。
【0019】
上記4個の書込ヘッド17は、支持部材21を介して上蓋5に支持されている。転写シート19は、ベルトユニットに所属する部材として配置されている。また、詳しくは後述するが、上記の感光体ドラム14、クリーナ15、及び帯電ローラ16はドラム副ユニットを構成し、現像器18は内部に諸部材を備えて現像副ユニットを構成している。そして、これらの両副ユニットが合体して画像形成ユニットを構成している。
【0020】
ベルト11は、下循環部の下流側裏面に押接するテンションローラ22によって図の矢印Bで示す下方に常に付勢されて適度の張力を保っている。ベルト11の上循環部の上流側端部には、吸着ローラ23が圧接して、ここに用紙搬入部を形成している。
【0021】
ベルト11より搬送方向上流側には、待機ローラ対24、その下方に給紙案内路25、その下端部に給送ローラ対26が配設される。その給送ローラ対26の下方に、用紙カセット4の給紙端が位置しており、この給紙端上方に給紙コロ27が配設されている。
【0022】
一方、ベルト11の用紙搬送方向下流(図の左方)には、断熱性の匡体内に組み付けられた圧接ローラ、発熱ローラ、分離爪、周面清掃器、オイル塗布ローラ、温度測定器等から成る定着器28が設けられる。
【0023】
定着器28の後方には搬出ローラ対29が配置され、それより上方に用紙排紙路31が形成され、用紙排紙路31の終端は排紙トレー6の後部上方に開口して、そこには排紙ローラ対32が配置されている。
【0024】
また、ベルト11と用紙カセット4の間には適宜の回路基盤を装着した電装部33が配設され、その回路基盤には複数の電子部品からなる制御装置が搭載されている。制御装置は、特には図示しないがコントローラ部とエンジン部からなる。
【0025】
コントローラ部は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(読出し専用メモリ)、EEPROM(再書込み可能な読出し用メモリ)、フレームメモリ、イメージデータ転送回路等からなり、ホストコンピュータ等から入力される印刷データを解析し、印字用データを作成してエンジン部に転送する。
【0026】
エンジン部は、CPUやROM等を備え、入力側にはコントローラ部からのデータや指令信号、不図示の温度センサの出力、用紙検知センサの出力等が入力し、出力側には不図示のモータを駆動するモータドライバ、そのモータの駆動を各部に伝達する駆動系を切り替えるクラッチドライバ、書込みヘッド17を上記印字用データに基づいて駆動する印字ドライバ、帯電ローラ16、転写シート19、後述する現像ローラ等に所定のバイアス電流を供給するバイアス電源ドライバ等が接続されている。
【0027】
エンジン部はコントローラ部からのデータや指令信号、各種のセンサの出力等に基づいて各部を駆動制御する。
図2(a) は、上述の画像形成ユニットのみを取り出して示す外観斜視図であり、同図(b) は、その内部構成を示す側断面図である。尚、同図(a),(b) には図1に示した部分と同一部分には図1と同一の番号を付与して示している。
【0028】
図2(a),(b) に示すように、画像形成ユニット35は、現像副ユニット18とドラム副ユニット36とが一体に組み付けられて構成される。一方のドラム副ユニット36は、図1にも示した感光体ドラム14、クリーナ15、帯電ローラ16を備え、更にドラムカバー37を前後(図2(b) の左右)に移動自在に備え、クリーニング部の内部に廃トナー送出パイプ38を備えている。
【0029】
上蓋5(図1参照)の閉成に伴われて、書込ヘッド17が図2(b) の矢印Cで示すように円弧状の軌跡を描いて降下し、その先端部(露光部)が、ドラムユニット36の匡体上部において感光体ドラム14の軸方向に沿って形成されている長溝孔39(図2(a) 参照)に嵌入して位置決めされる。
【0030】
他方の現像ユニット18は、ドラム副ユニット36を支持する支持部41(41a、41b)と、現像剤(トナー)40を収容する現像ケーシング42と、この現像ケーシング42の開口部から周面の一部を露出させた現像ローラ43とを備え、更に現像ケーシング42の内部には、トナー40に埋没するようにしてトナー撹拌部材44、トナー供給ローラ45、ドクターブレード46、掬いシート47等を備えている。また、上部には、廃トナー受入パイプ48が配設され、この廃トナー受入パイプ48には廃トナーを収容する回収袋49が取り付けられている。
【0031】
この現像副ユニット18の一方の支持部41aには軸受け孔51(図2(a) 参照)が形成され、他方の支持部41bには上から切り欠くように形成された図では定かに見えないが軸受け溝が設けられている。その上開口部近傍に固定レバー52が上下に略90度回動可能に取り付けられている。
【0032】
現像副ユニット18の支持部41aの側面からは、現像ローラ43の支持軸43−1の一方の端部が突出し、軸受け孔51から感光体ドラム14の支持軸14−1の一方の端部が突出している。
【0033】
また支持部41bの図2(a) では見えない側面には、現像ローラ43の支持軸43−1の他端が突出し、上記の軸受け溝からは感光体ドラム14の支持軸14−1の他端が突出している。
【0034】
上記の現像副ユニット18とドラム副ユニット36が一体に組み付けられ図2(a),(b) に示すように画像形成ユニット35として完成したとき、廃トナー送出パイプ38と廃トナー受入パイプ48が、不図示の搬送パイプによって連結される。
【0035】
続いて上記構成のタンデム型カラー画像形成装置1の動作を、上述した図1及び図2(b) を再び参照しながら説明する。先ず、図1に示す装置本体1に電源が投入され、使用する用紙の紙質、枚数、印字モード、その他の指定がキー入力あるいは接続するホスト機器からの信号として入力されると印字(印刷)が開始される。
【0036】
給紙コロ27が用紙カセット4に載置収容されている用紙Pを一枚取り出し、給送ローラ対26、給紙案内路25を介して待機ローラ対24へ給送する。待機ローラ対24は回転を一時停止して、その挟持部に用紙Pの先端を当接させて用紙の進行を制止すると共に斜行を矯正し、搬送タイミングを待機する。
【0037】
駆動ローラ12が反時計回り方向に回転し、従動ローラ13が従動して同じく反時計回り方向に回転する。これによりベルト11は、上循環部が4個の感光体ドラム14に当接して全体が反時計回り方向へ循環移動する。
【0038】
これと共に感光体ドラム14を中心に配置された諸装置が印字タイミングに合わせて順次駆動される。感光体ドラム14は時計回り方向に回転し、帯電ローラ16は、感光体ドラム14周面に一様な高マイナス電荷を付与して電位を初期化する。
【0039】
書込ヘッド17は、その感光体ドラム14周面に画像信号に応じて露光を行って電位を減衰させる。これにより、上記初期化による高マイナス電位部と、露光によって減衰した低マイナス電位部からなる静電潜像が、感光体ドラム14周面に形成される。
【0040】
現像ローラ43は、その静電潜像の低電位部に現像ケーシング42のトナー40を転移させて感光体ドラム14周面上にトナー像を形成(反転現像)する。
最上流の感光体ドラム14a周面上のトナー像の先端が、ベルト11との対向部に回転搬送されてくるタイミングで、その対向部に用紙Pの印字開始位置が一致するように待機ローラ対24が回転を開始して用紙Pを用紙搬入部へ給送する。
【0041】
従動ローラ13と吸着ローラ23は、給送された用紙Pをベルト11と共に挟持して搬送する。用紙Pは、ベルト11に吸着され、感光体ドラム14aと転写シート19により形成されている最初の転写部へ搬送される。
【0042】
転写シート19は、不図示の転写バイアス電源から出力される転写電流(又は転写電圧)をベルト11を介して用紙Pに印加する。これにより、感光体ドラム14a上のM(マゼンタ)トナー像が用紙Pに転写される。
【0043】
続いて、感光体ドラム14bと転写シート19により形成されている上流から2番目の転写部においてC(シアン)トナー像が転写され、更に感光体ドラム14cと転写シート19により形成されている上流から3番目の転写部でY(イエロー)トナー像が転写される。
【0044】
更に、感光体ドラム14dと転写シート19により形成されている最下流の転写部でK(ブラック)トナー像が転写されて、4色のトナー像が用紙P上に順次塗り重ねられる。
このようにして4色のトナー像を転写された用紙Pは、ベルト11から分離されて定着器28に搬入される。定着器28は熱と圧力とにより、トナー像を用紙Pに定着させる。この画像定着後、用紙Pは搬出ローラ対29により、用紙排紙路31、及び排紙ローラ対32を介して排紙トレー6上にトナー像を下にして排出される。
【0045】
図3(a) は、上記のように動作する本例のカラー画像形成装置1における帯電ローラ16と感光体ドラム14の配置関係を示す正面図であり、同図(b) は、帯電ローラ16の直径方向の断面図である。
【0046】
同図(a),(b) に示す本例の帯電ローラ16は、中心の芯金53上に支持された第1の導電性弾性層54と、この第1の導電性弾性層54上に設けられた第2の導電性弾性層55とで構成されている。
【0047】
第1の導電性弾性層54は、ニトリル系発泡ゴムと導電性カーボンブラックとで構成されている。また、第2の導電性弾性層55は、エピクロルヒドリン系ゴムと導電性カーボンブラックとで構成され、その表面にイソシアネートを含む表面処理液により表面処理された表面処理層を形成されている。
【0048】
ここで、実施例1として、第1の導電性弾性層54と第2の導電性弾性層55の製法を説明する。
先ず、ニトリル量33%の中高ニトリル系ゴム(ムーニー粘度:ML1+4 (100℃):30)を100質量部、亜鉛華を5質量部、ステアリン酸を1質量部、導電性カーボン(トーカブラック#5500:東海カーボン社製)を25質量部、DOP30を質量部、加硫材(硫黄)を1質量部、及び加硫助剤を3.5質量部を用意する。
【0049】
次に、これらに、発泡剤(ADCAセルマイクCAP:三協化成製)、発泡助剤3質量部をそれぞれ添加し、ロールミキサーで混練りして作成したゴム状物質(発泡前の第一の導電層)を、外径6mmの芯金53上に、厚さ1mmで押出しにより予備成形する。
【0050】
この後、電気炉で150℃で1時間加熱して上記発泡前の第1の導電性弾性層を発泡させ、外径D1が8.8mmになるように研磨加工し、発泡した第1の導電性弾性層54を作成する。
【0051】
続いて、エピクロルヒドリンゴム(ECO)を100質量部に、導電性カーボンブラック(トーカブラック#4500:東海カーボン社製)を20質量部、亜鉛華を5質量部、ステアリン酸を2質量部、及び加硫剤を1.5質量部をそれぞれ添加し、ロールミキサーで混練りして、これをインジェクション成形後、170℃×30分で加硫を行い、厚さ0.7mm、内径D2が8.7mmのゴムスリーブを形成する。
【0052】
更に、酢酸エチル100質量部、イソシアネート化合物(MDI)20質量部、アセチレンブラック(電気化学社製)4質量部、及びアクリルシリコーンポリマー(モデイパーFS700:日本油脂社製)2質量部を、ボールミルで3時間分散混合して表面処理液を作成する。
【0053】
この表面処理液中に、上記のゴムスリーブを、23℃で60秒間浸漬した後、120℃のオーブンで1時間加熱して、ゴムスリーブに表面処理層を形成して、第2の導電性弾性層55を作成する。
【0054】
このようにして作成した第1の導電性弾性層54に第2の導電性弾性層55を被覆した後、両端部から2mmまで、第1の導電性弾性層54と第2の導電性弾性層55の間にウレタン系のホットメルト接着剤をデイスペンサで塗布して両端部を接着し、帯電ローラ16を作成した。
【0055】
この帯電ローラ16において、第1の導電性弾性層54の外径D1と、第2の導電性弾性層55の内径D2との間には、「D2−D1=8.7−8.8=−0.1(mm)」の関係がある。
【0056】
このような方法で作製した帯電ローラ16を、市販のカラープリンタ(N5300:カシオ計算機社製)の帯電ローラ部に取り付けた。
この帯電ローラ16には、転写電圧として直流電圧と交流電圧の重畳電圧を印加することにした。直流電圧に交流電圧を重畳して印加すると、感光体ドラムへの初期化帯電の電圧が平均化され、帯電ムラの発生を抑えることができることは良く知られている。
【0057】
しかし、特にハーフトーンの画像形成時に白点や黒点が発生するのを抑えることについては、転写電圧として単に直流電圧と交流電圧の重畳電圧を印加することは帯電ムラの発生を抑える万能な方法ではない。
【0058】
また、感光体ドラム14は、有機光半導体の感光材料から成る有機感光体により表面を被覆されているが、この感光体ドラム14を被覆する有機感光体の膜厚と、上記の特別な製法による帯電ローラへの印加重畳電圧における交流電圧との関係を調べた先例はない。
【0059】
そこで、本例では、感光体ドラム14の周面を被覆する有機感光体の膜厚を、15μm、18μm、22μm、25μmとした4種類の感光体ドラム14を用意して、上記カラープリンタの感光体ドラム部にそれぞれ取り付けることにした。
【0060】
また、帯電ローラ16に印加する重畳電圧は、直流電圧「−550V」と、交流電圧Vpp(V)とし、交流電圧Vppは、1350V〜1750Vの範囲のものを印加することにした。
【0061】
これらの条件以外は、上記プリンタの初期設定の値をそのまま用いて、ハーフトーン画像の印刷を実施した。
図4は、その実施結果を示す図表である。同図は横に実施例1〜4として、感光体ドラム14の有機感光体の膜厚15μm、18μm、22μm、25μmを示し、縦に重畳電圧の中の交流電圧1350V、1450V、1550V、1650V、1750Vを示している。
【0062】
そして、それらの各条件で実施したハーフトーン画像の印刷結果における白点や黒点の発生の程度の評価を、そのときの実施条件となった有機感光体の膜厚と交流電圧とが対応する枠内に示している。
【0063】
上記の評価としては、白点や黒点の発生がなかったものを「○」、白点の発生がやや見られたものを「△」、そして、白点と黒点の発生があったものを「×」とした。
同図で判明するように、実施例1〜4に対して、交流電圧1350Vのときは、評価は全て「×」であった。そして、交流電圧1750Vのときは、評価は全て「○」であり、交流電圧1450V〜1650Vでは、実施例によって、「×」、「△」、「○」に分かれた。
【0064】
図5は、上記の評価結果を表すハーフトーン画像における白点や黒点の発生と、帯電ローラに印加する直流・交流の重畳電圧の中の交流電圧と、感光体ドラムの有機感光体の膜厚との相関を示す図である。
【0065】
同図は横軸に有機感光体の膜厚d(μm)をd=14から28まで示し、縦軸に交流印加電圧Vpp(V)をVpp=1300から1800まで示している。そして、図4に示した「×」、「△」、「○」評価結果が、縦横の対応する位置にプロットされている。
【0066】
先ず、下方に斜めに並ぶ評価「○」と他の評価「×」又は「△」との間に境界線56を設けて、評価「○」の下限となる有機感光体の膜厚dと交流電圧Vppとの関係を調べると、同図から、式「Vpp=30d+950」の関係があることが判明した。
【0067】
すなわち、境界線56は、有機感光体の膜厚d=15では、Vpp=30×15+950=1400(V)の下近傍を通過している。また、同様に、有機感光体の膜厚d=18では、Vpp=30×18+950=1490(V)、d=22ではVpp=30×22+950=1610(V)、d=25ではVpp=30×25+950=1700(V)の下近傍をそれぞれ通過している。
【0068】
このことから、評価「○」の上限となる有機感光体の膜厚dと交流電圧Vppとの関係は、膜厚d=15のときのVpp=1750の上近傍を通って、上記の境界線56に平行する境界線57が想定される。この境界線57は、式「Vpp=30d+1350」で表すことができる。
【0069】
すなわち、交流電圧Vppの立場から見ると、評価が「○」となる電圧の範囲は「30d+950≦Vpp≦30d+1350」であるということができる。
また、有機感光体の膜厚dの立場からみると、評価が「○」となる膜厚の範囲は、ばらつきも考慮して、同図から判明するように、「14≦d≦28」であるということができる。
【0070】
尚、上記の実施の形態では、帯電ローラ16の形状として、第1の導電性弾性層54の外径を、第2の導電性弾性層55の内径よりも1mm太くして、第1の導電性弾性層54の外周面と第2の導電性弾性層55の内周面が可及的に密着するようにし、更に、両端部から2mmまでを、ウレタン系のホットメルト接着剤で接着して、両弾性層が相互に位置ズレを起こさないようにしている。
【0071】
第1の導電性弾性層54の外径が第2の導電性弾性層55の内径よりも太いとはいっても1mmの差であるので、第1の導電性弾性層54に第2の導電性弾性層55を被覆するのには、それほどの困難はない。したがって、両弾性層の接着を両端部から2mmまでとせず、全面を接着するようにしてもよい。
【0072】
そのようにしても、図5に示したハーフトーン画像における白点や黒点の発生と帯電ローラに印加する直流・交流の重畳電圧の交流電圧と感光体ドラムの有機感光体の膜厚との相関には大きな変化はない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】一実施の形態における帯電ローラを備えたタンデム型のカラー画像形成装置の内部構成を示す側断面図である。
【図2】(a) は一実施の形態におけるカラー画像形成装置の画像形成ユニットのみを取り出して示す外観斜視図、(b) はその内部構成を示す側断面図である。
【図3】(a) は一実施の形態におけるカラー画像形成装置の帯電ローラと感光体ドラムの配置関係を示す正面図、(b) は帯電ローラの直径方向の断面図である。
【図4】有機感光体の膜厚別に作成した実施例1〜4の感光体ドラムと帯電ローラに印加する重畳電圧の交流電圧の各条件ごとに形成されたハーフトーン画像の白点や黒点の発生の程度の評価を示す図表である。
【図5】ハーフトーン画像における白点や黒点の発生と帯電ローラに印加する直流・交流の重畳電圧の中の交流電圧と感光体ドラムの有機感光体の膜厚との相関を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1 カラー画像形成装置
2 本体基部
3 開閉給紙トレー
4 用紙カセット
5 上蓋
6 排紙トレー
7 上部排紙口
9 操作パネル
11 用紙搬送ベルト(ベルト)
12 駆動ローラ
13 従動ローラ
14(14a、14b、14c、14d) 感光体ドラム
14−1 感光体ドラム支持軸
15 クリーナ
16 帯電ローラ
17 書込ヘッド
18 現像器(現像副ユニット)
19 転写シート
21 支持部材
22 テンションローラ
23 吸着ローラ
24 待機ローラ対
25 給紙案内路
26 給送ローラ対
27 給紙コロ
28 定着器
29 搬出ローラ対
31 用紙排紙路
32 排紙ローラ対
33 電装部
35 画像形成ユニット
36 ドラム副ユニット
37 ドラムカバー
38 廃トナー送出パイプ
39 長溝孔
40 現像剤(トナー)
41(41a、41b) 支持部
42 現像ケーシング
43 現像ローラ
43−1 現像ローラ支持軸
44 トナー撹拌部材
45 トナー供給ローラ
46 ドクターブレード
47 掬いシート
48 廃トナー受入パイプ
49 回収袋
51 軸受け孔
52 固定レバー
53 芯金
54 第1の導電性弾性層
55 第2の導電性弾性層
56 下境界線
57 上境界線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、中心の芯金上に支持された第1の導電性弾性層と該第1の導電性弾性層上に設けられた第2の導電性弾性層とを備えた帯電ローラと、有機光半導体の感光材料から成る有機感光体により表面を被覆された感光体ドラムと、を備え、前記帯電ローラにより感光体ドラムを初期化帯電した後、該感光体ドラム上に静電潜像を形成し、該静電潜像をトナー像化し、該トナー像を用紙に転写して画像を形成する画像形成方法において、
前記帯電ローラの前記第1の導電性弾性層を、ニトリル系発泡ゴムと導電性カーボンブラックとで形成し、
前記帯電ローラの前記第2の導電性弾性層を、エピクロルヒドリン系ゴムと導電性カーボンブラックとで形成するとともに、その表面にイソシアネートを含む表面処理液により表面処理された表面処理層を形成し、
前記感光体ドラムが被覆される前記有機感光体の膜厚をd(μm)とし、前記帯電ローラに印加される転写電圧を直流電圧「−550V」と交流電圧Vpp(V)の重畳電圧としたとき、2つの式
30d+950≦Vpp≦30d+1350
14≦d≦28
で示される条件で前記帯電ローラによる前記感光体ドラムへの初期化帯電を実行する、ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
少なくとも、中心の芯金上に支持された第1の導電性弾性層と該第1の導電性弾性層上に設けられた第2の導電性弾性層とを備えた帯電ローラと、有機光半導体の感光材料から成る有機感光体により表面を被覆された感光体ドラムと、を備え、前記帯電ローラにより感光体ドラムを初期化帯電した後、該感光体ドラム上に静電潜像を形成し、該静電潜像をトナー像化し、該トナー像を用紙に転写して画像を形成する画像形成装置において、
前記帯電ローラの前記第1の導電性弾性層はニトリル系発泡ゴムと導電性カーボンブラックとからなり、
前記帯電ローラの前記第2の導電性弾性層はエピクロルヒドリン系ゴムと導電性カーボンブラックとからなるとともに、その表面にイソシアネートを含む表面処理液により表面処理された表面処理層を有し、
前記感光体ドラムが被覆される前記有機感光体の膜厚をd(μm)とし、前記帯電ローラに印加される転写電圧を直流電圧「−550V」と交流電圧Vpp(V)の重畳電圧として、2つの式
30d+950≦Vpp≦30d+1350
14≦d≦28
で示される条件で前記帯電ローラによる前記感光体ドラムへの初期化帯電を実行する、ことを特徴とする画像形成装置。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−76601(P2008−76601A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253918(P2006−253918)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】