説明

画像形成方法及び画像記録物

【課題】起泡性、消泡性に優れ、均一な塗工が可能な画像形成方法、及び該方法により得られる画像記録物の提供。
【解決手段】処理液の塗布工程と、インクジェット記録用インクを用いた画像形成工程とを有する画像形成方法において、該処理液が少なくとも、特定構造を有するフッ素系化合物のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、カチオン性高分子化合物、有機酸及び水を含有する画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録用インクを用いた画像形成方法及び画像記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法において、塗工層を持たない普通紙表面を処理液で処理した後、インクジェット記録用インクを用いて画像形成することにより、画像品質(画像濃度、彩度、カラーブリード、文字滲み及び白ポチ)に優れ、且つ画像部のスミア定着性に優れた画像を形成する方法が既に知られている。しかし、従来の処理液では、気泡発生により均一な塗工がしにくいという問題がある。
例えば、特許文献1には、普通紙表面に予め塗布する処理液として、カチオン性高分子化合物と水溶性有機酸を併用することにより、普通紙表面に顔料着色剤が留まり易くなり、画像品質やスミア定着性を向上させることができ、また、処理液の表面張力を下げる界面活性剤を併用することにより、更なる高濃度化・高彩度化を達成できることが開示されている。しかし、上記気泡発生の問題は、表面張力を下げるために添加する界面活性剤によってもたらされるものであり、強力な界面活性能を有する界面活性剤で表面張力を下げて速やかな紙への浸透性を実現している特許文献1の発明では、前記気泡発生の問題は解決できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、処理液を用いたインクジェット記録による画像形成方法であって、起泡性、消泡性に優れ、均一な塗工が可能な画像形成方法、及び該方法により得られる画像記録物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、次の1)〜3)の発明によって解決される。
1) 被記録材表面に処理液を塗布する塗布工程と、該処理液を塗布した被記録材に、着色剤、水溶性有機溶剤及び水を含有するインクジェット記録用インクを、画像信号に従って吐出して画像を形成する画像形成工程とを有する画像形成方法において、該処理液が少なくとも、下記化合物(1)〜(4)のいずれかのフッ素系化合物、カチオン性高分子化合物、有機酸及び水を含有することを特徴とする画像形成方法。
【化1】

化合物(1)〜(4)において、MはK、Na、NH、Liから選ばれるいずれか、RfはCF、C、C、Cから選ばれるいずれかを表す。
2) 前記カチオン性高分子化合物として、第4級アンモニウム塩型のカチオン性高分子化合物を含有することを特徴とする1)に記載の画像形成方法。
3) 1)又は2)に記載の画像形成方法で作製されたことを特徴とする画像記録物。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、インクジェット記録用インクを用いた画像形成方法において、被記録材の処理液の成分として、特定構造のフッ素系界面活性剤を用いることにより、起泡性、消泡性に優れ、均一な塗工が可能な画像形成方法、及び該方法により得られる画像記録物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の画像記録方法を実施する装置の一例を示す側面断面図である。
【図2】本発明の画像記録方法を実施する装置の他の例を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
上記本発明の実施の形態について詳しく説明する。
本発明では前記特定構造のフッ素系界面活性剤を含有する処理液を用いる。この処理液には、通常、カチオン性高分子化合物、有機酸、湿潤剤、浸透剤を添加する。また、必要に応じて、その他の界面活性剤、樹脂微粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐防黴剤、防錆剤などを添加することもできる。
処理液は、インクジェット記録用インクで画像を形成するインクジェット記録工程の前の前処理工程において前処理液として用いることが好ましいが、インクジェット記録工程の後の後処理工程において後処理液として用いることも可能である。また、インクジェット記録工程と同時に処理を行う同時処理液として用いることも可能である。
【0008】
以下、上記処理液の各成分について説明する。
<フッ素系界面活性剤>
フッ素系界面活性剤は、処理液の表面張力を低下させるために加える。表面張力が低下すると普通紙表面の濡れの改質、画像品質の彩度アップ及び白ポチ改良の効果がある。一般的に、フッ素系界面活性剤は界面活性能に優れ、高い浸透性、濡れ性を確保することができるが泡立ち易い。しかし、前記特定構造のフッ素系界面活性剤は、高い界面活性能を有する上に起泡性が非常に低く泡立ちにくいという特徴を有している。したがって、該フッ素系界面活性剤を添加することにより、高い浸透性、濡れ性を維持しながら、泡立ちの少ない処理液が得られ、泡による障害をなくした均一な塗工が可能となる。更に消泡剤を添加しなくてもよいため、吐出性、保存性の向上も期待できる。
フッ素系界面活性剤の添加量は、処理液全体の0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、浸透性の向上に顕著な効果が得られないことがあり、10質量%を超えると、高温で保存したときに粘度上昇などが起こり易くなり、塗布安定性に問題を生じることがある。
【0009】
処理液には、前記特定構造のフッ素系界面活性剤を単独で用いてもよいが、その他のフッ素系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤などを併用することもできる。
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテルエステル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンオレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、エーテルカルボキシレート、スルホコハク酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル、脂肪酸塩、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、ナフテン酸塩等が挙げられる。
【0010】
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリコールエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリコキシド等が挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン誘導体、ジメチルアルキルラウリルベタイン、アルキルグリシン、アルキルジ(アミノエチル)グリシン等が挙げられる。
前記アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール系〔例えば、エアープロダクツ社(米国)製のサーフィノール104、82、465、485、あるいはTGなど〕などが挙げられる。
【0011】
<カチオン性高分子化合物>
カチオン性高分子化合物は、着色剤及び水分散性樹脂を凝集させ、普通紙表面に着色剤を残すことにより、画像濃度を高くし文字滲みを向上させるために加える。
カチオン性高分子化合物としては、第4級アンモニウム塩型のものが好ましく、例えばジアルキルアリルアンモニウムクロライド重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級アンモニウム塩重合物、変性ポリビニルアルコールジアルキルアンモニウム塩重合物、ジアルキルジアリルアンモニウム塩重合物が挙げられ、その他のカチオン性高分子化合物としては、カチオン性特殊変性ポリアミン化合物、カチオン性ポリアミドポリアミン化合物、カチオン性尿素−ホルマリン樹脂化合物、カチオン性ポリアクリルアミド化合物、カチオン性アルキルケテンダイマー、カチオン性ジシアンジアミド化合物、カチオン性ジシアンジアミド−ホルマリン縮合化合物、カチオン性ジシアンジアミド−ポリアミン縮合化合物、カチオン性ポリビニルホルムアミド化合物、カチオン性ポリビニルピリジン化合物、カチオン性ポリアルキレンポリアミン化合物、カチオン性エポキシポリアミド化合物が挙げられる。特に好ましいのは下記の化合物である。
【0012】
<一般式I>
【化2】

[式中、Rはメチル基又はエチル基を示し、Xはハロゲンイオンを示す。また、nは整数を示す。]
<一般式II>
【化3】

[式中、Xはハロゲンイオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン及び酢酸イオンのいずれかの陰イオンを示し、RはH又はCH、R、R、RはH又はアルキル基を示す。また、nは整数を示す。]
<一般式III>
【化4】

[式中、Rはメチル基又はエチル基を示し、Xはハロゲンイオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン及び何れかの陰イオンを示す。また、nは整数を示す。]
【0013】
<有機酸>
有機酸は画像品質を向上させるために添加する。被記録材(記録紙)の種類・性質等にもよるが、水溶性で且つpKaが5以下の有機酸を用いると画像品質向上効果が大きい。
画像品質向上効果が大きい有機酸としては、例えば、アスコルビン酸(pKa:4.17)、アスパラギン酸(pKa:1.88)、クエン酸(pKa:3.13)、酒石酸(pKa:2.93)、グルコン酸(pKa:2.2)、グルタミン酸(pKa:2.2)、琥珀酸(pKa:4.21)、サリチル酸(pKa:2.97)、蓚酸(pKa:1.04)、リンゴ酸(pKa:3.4)、乳酸(pKa:3.83)、ピルビン酸(pKa:2.49)、フマル酸(pKa:3.02)、マロン酸(pKa:2.05)、アジピン酸(pKa:4.42)、フィチン酸などが挙げられる。また、上記有機酸の一部が塩になった化合物も効果がある。
有機酸の添加量としては、有機酸のpKa値等にもよっても変わるが、処理液全体の0.1〜5.0質量%程度が好ましく、0.1〜3.0質量%がより好ましい。
更に、処理液の静的表面張力を20〜35[mN/m]の範囲にすると、普通紙表面の濡れが改質され、画像品質の彩度アップ及び白ポチ改良に効果がある。
また、湿潤剤、浸透剤及びその他の添加剤については、後述するインクジェット記録用インクに用いるものと同様のものを用いることができる。
【0014】
次に、インクジェット記録用インク(以下、単にインクと云うこともある。)の成分について説明する。一般にインクジェット記録用インクは、着色剤、水、水溶性有機溶剤(湿潤剤)、湿潤剤、浸透剤を含有し、必要に応じて、樹脂微粒子などのその他の成分を含有する。
<水溶性有機溶剤(湿潤剤)>
本発明で用いるインクの水溶性有機溶剤(湿潤剤)としては、温度23℃、相対湿度80%の環境中の平衡水分量が40質量%以上である多価アルコールを少なくとも1種含むものが好ましい。また、該多価アルコールを湿潤剤全体の50質量%以上用いると、吐出安定性確保にも優れた効果を奏する。更に、該多価アルコールのうち、沸点も粘度も高い湿潤剤A及び沸点と粘度が比較的低い湿潤剤Bを含有することが好ましい。
前記多価アルコールのうち、常圧で沸点が250℃を越える湿潤剤Aに該当するものとしては、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール(沸点190〜191℃/24hPa)、グリセリン(沸点290℃)、ジグリセリン(沸点270℃/20hPa)、トリエチレングリコール(沸点285℃)、テトラエチレングリコール(沸点324〜330℃)等が挙げられ、沸点140〜250℃未満の湿潤剤Bに該当するものとしては、ジエチレングリコール(沸点245℃)、1,3−ブタンジオール(沸点203〜204℃)等が挙げられる。
【0015】
上記湿潤剤A、湿潤剤Bは、いずれも温度23℃、相対湿度80%の環境中の平衡水分量が40質量%以上の吸湿性がある材料であるが、湿潤剤Bは、湿潤剤Aに比べて蒸発性が比較的高い。特に好ましいのは、湿潤剤Aがグリセリンで、湿潤剤Bが1,3−ブタンジオールの組み合わせである。
湿潤剤Aと湿潤剤Bの量比(質量比)は、後述する他の湿潤剤Cの量や浸透剤などの他の添加剤の種類や量にも影響されるので、一概に云えないが、例えば湿潤剤B/湿潤剤A=10/90〜90/10の範囲が好ましい。
前記平衡水分量とは、塩化カリウム飽和水溶液を用いて、デシケーター内の温度を23±1℃、相対湿度を80±3%に保ち、このデシケーター内に、各水溶性有機溶剤を1gずつ秤量したシャーレを保管し、次の式により飽和する水分量を求めたものである。
飽和水分量(%)=(有機溶剤に吸収した水分量/有機溶剤)×100
【0016】
上記湿潤剤A、湿潤剤Bの組み合わせに対し、必要に応じて他の湿潤剤Cを併用してもよい。湿潤剤Cとしては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレンなどが挙げられる。
前記多価アルコール類としては、例えば、ジプロピレングリコール(沸点232℃)、1,5−ペンタンジオール(沸点242℃)、3−メチル−1,3−ブタンジオール(沸点203℃)、プロピレングリコール(沸点187℃)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(沸点197℃)、エチレングリコール(沸点196〜198℃)、トリプロピレングリコール(沸点267℃)、ヘキシレングリコール(沸点197℃)、ポリエチレングリコール(粘調液体〜固体)、ポリプロピレングリコール(沸点187℃)、1,6−ヘキサンジオール(沸点253〜260℃)、1,2,6−ヘキサントリオール(沸点178℃)、トリメチロールエタン(固体、融点199〜201℃)、トリメチロールプロパン(固体、融点61℃)などが挙げられる。
前記多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点135℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点171℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点231℃)、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(沸点229℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点132℃)、などが挙げられる。
【0017】
前記多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル(沸点237℃)、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(沸点202℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(沸点226℃)、ε−カプロラクタム(沸点270℃)、γ−ブチロラクトン(沸点204〜205℃)などが挙げられる。
前記アミド類としては、例えば、ホルムアミド(沸点210℃)、N−メチルホルムアミド(沸点199〜201℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(沸点153℃)、N,N−ジエチルホルムアミド(沸点176〜177℃)などが挙げられる。
前記アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン(沸点170℃)、ジエタノールアミン(沸点268℃)、トリエタノールアミン(沸点360℃)、N,N−ジメチルモノエタノールアミン(139℃)、N−メチルジエタノールアミン(沸点243℃)、N−メチルエタノールアミン(沸点159℃)、N−フェニルエタノールアミン(沸点282〜287℃)、3−アミノプロピルジエチルアミン(沸点169℃)などが挙げられる。
前記含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド(沸点139℃)、スルホラン(沸点285℃)、チオジグリコール(沸点282℃)などが挙げられる。
【0018】
その他の固体湿潤剤としては糖類などが好ましい。糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類などが挙げられる。具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖[例えば、糖アルコール(一般式:HOCH(CHOH)nCHOH(ただし、nは2〜5の整数を表す)で表される。〕、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
【0019】
インク中の湿潤剤の含有量は、ヘッドからのインク吐出安定性に非常に影響がある。着色剤量が多い系で湿潤剤の含有量が少ないと、ノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み、吐出不良をもたらすことがある。
湿潤剤のインク中における含有量は、20〜50質量%が好ましく、20〜45質量%がより好ましい。含有量が20質量%未満では、吐出安定性低下や維持装置での廃インク固着を起こしやすくなる。また、50質量%を超えると、紙面上での乾燥性が悪くなったり、普通紙上の文字品位が低下することがある。
また、普通紙における画像品質向上のため、前記平衡水分量が40質量%以上の多価アルコール以外の湿潤剤として、沸点が240℃未満で、温度23℃、相対湿度80%の環境中の平衡水分量が40質量%未満の湿潤剤B′を適度な割合で入れることが好ましい。湿潤剤B′の使用量は、湿潤剤全体の50質量%未満とすることが、吐出安定性確保などの点で好ましい。
【0020】
<浸透剤>
本発明で用いるインクは、浸透剤として、炭素数8〜11の非湿潤剤性ポリオール化合物又はグリコールエーテル化合物を少なくとも1種含有することが好ましい。これらの中でも25℃の水中において0.2〜5.0質量%の溶解度を有するものが好ましく、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール[溶解度:4.2%(25℃)]、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール[溶解度:2.0%(25℃)]が特に好ましい。
上記以外の非湿潤剤性ポリオール化合物としては、脂肪族ジオールとして、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオールなどが挙げられる。
【0021】
その他の併用可能な浸透剤としては、インク中に溶解し、所望の物性に調整できるものであれば特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテルなどの多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、エタノール等の低級アルコール類などが挙げられる。
インク中の浸透剤の含有量は0.1〜4.0質量%が好ましい。含有量が0.1質量%未満では速乾性が得られず滲んだ画像となることがあり、4.0質量%を超えると、着色剤の分散安定性が損なわれ、ノズルが目詰まりし易くなったり、被記録材への浸透性が必要以上に高くなったり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0022】
<着色剤>
本発明で用いるインクの着色剤としては、顔料、染料、着色微粒子などから適宜選択して用いることができる。染料としては、水溶性染料、油溶性染料、分散染料などがある。良好な吸着・封入性の点からは油溶性染料や分散染料が好ましい。また、得られる画像の耐光性の点からは顔料が好ましい。
前記水溶性染料は、ポリマー微粒子に効率的に含浸される観点から、有機溶剤(例、ケトン系溶剤)に2g/リットル以上溶解することが好ましく、20〜600g/リットル溶解することがより好ましい。
前記水溶性染料は、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料に分類される染料であり、好ましくは耐水、耐光性が優れたものが用いられる。
【0023】
前記酸性染料及び食用染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,29,45,92,249、C.I.アシッドブラック1,2,7,24,26,94、C.I.フードイエロー3,4、C.I.フードレッド7,9,14、C.I.フードブラック1,2などが挙げられる。
前記直接性染料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227、C.I.ダイレクトオレンジ26,29,62,102、C.I.ダイレクトブルー1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,87,90,98,163,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171などが挙げられる。
【0024】
前記塩基性染料としては、例えば、C.I.ベーシックイエロー1,2,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,40,41,45,49,51,53,63,64,65,67,70,73,77,87,91、C.I.ベーシックレッド2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112、C.I.ベーシックブルー1,3,5,7,9,21,22,26,35,41,45,47,54,62,65,66,67,69,75,77,78,89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,141,147,155、C.I.ベーシックブラック2,8などが挙げられる。
前記反応性染料としては、例えば、C.I.リアクティブブラック3,4,7,11,12,17、C.I.リアクティブイエロー1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67、C.I.リアクティブレッド1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97、C.I.リアクティブブルー1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95などが挙げられる。
【0025】
前記顔料としては特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、無機顔料、有機顔料のいずれかであってもよい。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエローカドミウムレッド、クロムイエローカーボンブラックなどが挙げられる。これらの中でもカーボンブラックが好ましい。なお、カーボンブラックとしては、例えばコンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。なお、前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなどが挙げられる。
【0026】
前記顔料の色としては、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、黒色用のもの、カラー用のもの等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
前記黒色用のものとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料などが挙げられる。
前記カラー用のものとしては、黄色用では、例えば、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、23、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83(ジスアゾイエローHR)、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、128、138、150、153などが挙げられる。
【0027】
マゼンタ用では、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、92、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(ジメチルキナクリドン)、123、146、149、166、168170、172、177、178、179、185、190、193、209、219等が挙げられる。
シアン用では、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、15(銅フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(銅フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63等が挙げられる。また中間色としてはレッド、グリーン、ブルー用として、C.I.ピグメントレッド177、194、224、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントバイオレット3、19、23、37、C.I.ピグメントグリーン7、36などが挙げられる。
【0028】
前記顔料としては、少なくとも1種の親水性基が顔料の表面に直接又は他の原子団を介して結合した自己分散型カラー顔料が好適に用いられる。この顔料は分散剤を用いることなく安定に分散させることができるので、顔料を分散させるための分散剤が不要になる。
該自己分散型カラー顔料としては、イオン性を有するものが好ましく、アニオン性親水性基を有するものや、カチオン性親水性基を有するものが好適である。
前記アニオン性親水性基としては、例えば、−COOM、−SOM、−POHM、−PO、−SONH、−SONHCOR(ただし、式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表す。Rは、炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表す)等が挙げられる。これらの中でも、−COOM、−SOMが顔料表面に結合されたものを用いることが好ましい。
また、前記「M」のアルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、有機アンモニウムとしては、例えば、モノ乃至トリメチルアンモニウム、モノ乃至トリエチルアンモニウム、モノ乃至トリメタノールアンモニウムが挙げられる。
前記アニオン性親水性基を有するカラー顔料を得る方法としては、例えば、顔料を次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法、スルホン化による方法、ジアゾニウム塩を反応させる方法が挙げられる。
前記カチオン性親水性基としては、例えば、第4級アンモニウム基が好ましい。
【0029】
本発明で用いるインクにおいては、前記親水性基が、他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合されていてもよい。他の原子団としては、例えば、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基が挙げられる。
親水性基と他の原子団からなる残基の具体例としては、例えば、−CCOOM(ただし、Mはアルカリ金属、第4級アンモニウムを表す)、−PhSOM(ただし、Phはフェニル基、Mはアルカリ金属、第4級アンモニウムを表す)、−C10NHなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本発明で用いるインクにおいては、顔料分散剤を用いた顔料分散液を用いてもよい。
前記顔料分散剤としては、例えば天然系の親水性高分子として、アラビアガム、トラガンガム、グーアガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天などの海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲンなどの動物系高分子、キサンテンガム、デキストランなどの微生物系高分子などが挙げられる。また、半合成系の親水性高分子として、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウムなどのデンプン系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどの海藻系高分子などが挙げられる。また、純合成系の親水性高分子として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、非架橋ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂などのアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、4級アンモニウムやアミノ基などのカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物、セラックなどの天然高分子化合物が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンアクリル酸のホモポリマーや他の親水基を有するモノマーの共重合体からなるようなカルボン酸基を導入したものが高分子分散剤として特に好ましい。これらの共重合体の質量平均分子量は3,000〜50,000が好ましく、5,000〜30,000がより好ましく、7,000〜15,000が更に好ましい。
前記顔料と前記分散剤との混合質量比は、1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、1:0.125〜1:3の範囲がより好ましい。
【0031】
前記着色微粒子としては、着色剤を含有させたポリマー微粒子の水分散物が好適に用いられる。ここで、前記「着色剤を含有させた」とは、ポリマー微粒子中に着色剤を封入した状態及びポリマー微粒子の表面に着色剤を吸着させた状態のいずれか又は双方を意味する。ただし、着色剤が全てポリマー微粒子に封入又は吸着されている必要は無く、本発明の効果が損なわれない範囲で、着色剤の一部がエマルジョン中に分散していてもよい。
着色剤としては、水不溶性又は水難溶性であって、ポリマー微粒子に封入又は吸着され得る着色剤であれば特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができる。ここで、前記「水不溶性又は水難溶性」とは、20℃で水100質量部に対し着色剤が10質量部以上溶解しないことを意味する。また、「溶解する」とは、目視で、水溶液表層又は下層に着色剤の分離や沈降が認められないことを意味する。
前記着色微粒子の含有量は、インク中において、固形分で4〜20質量%が好ましく、4〜12質量%がより好ましい。また、前記着色微粒子の平均粒径は、インク中において0.16μm以下が好ましい。
【0032】
<樹脂微粒子>
本発明で用いるインクには、樹脂微粒子を含有させることができる。
樹脂微粒子は、増粘・凝集する性質を持ち、着色剤の浸透を抑制し、更に被記録材への定着を促進する効果を有する。また、樹脂微粒子の種類によっては被記録材上で被膜を形成し、印刷物の耐擦性を向上させる効果を有する。
前記樹脂微粒子としては特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アクリル系モノマーとシラン化合物とを乳化剤存在下で重合して得られるシリコーン変性アクリル樹脂が好適に挙げられる。
前記アクリル系モノマーとしては特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマー、アミド系アクリレート、カルボン酸含有モノマーなどが挙げられる。
前記アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどが挙げられる。
【0033】
前記メタクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N,N′−ジメチルアミノエチルメタクリレートなどが挙げられる。
前記アミド系アクリレートとしては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、メトキシメチルアクリルアミドなどが挙げられる。
前記カルボン酸含有モノマーとしては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
前記シラン化合物としては特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0034】
また、前記シラン化合物としては、一般にシランカップリング剤として知られる単量体を用いることができる。
前記単量体としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0035】
前記シラン化合物としては、加水分解性シリル基を含むものを使用することもできる。なお、「加水分解性シリル基」とは、容易に加水分解できることができる基(以下、単に「加水分解性基」ともいう)を含むシリル基を意味する。
前記加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、メルカプト基、ハロゲン基、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、イソプロペノキシ基などが挙げられる。
シリル基は、加水分解によりシラノール基となり、該シラノール基は脱水縮合してシロキサン縮合が生成するが、前記加水分解性シリル基は、重合反応を経て加水分解して消失することが好ましい。前記加水分解性シリル基が残存していると、インクの保存性が悪化することがある。
【0036】
前記乳化剤としては特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、ジアルキルスルフォコハク酸エステル又はその塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、エチレンジアミンのポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル又はその塩、芳香族及び脂肪族リン酸エステル又はその塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシル硫酸塩、ラウリル硫酸塩、ジアルキルスルフォコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン脂肪酸エステル、ラウリルアルコールエトキシレート、ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ラウリルエーテルリン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物などが挙げられる。
前記乳化剤の例示化合物における塩としては、例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
前記乳化剤としては、例えば、不飽和二重結合を有する反応性乳化剤を使用することもできる。反応性乳化剤の市販品としては、アデカリアソープSE、NE、PP(旭電化工業社製)、ラテムルS−180(花王社製)、エレノミールJS−2、エレミノールRS−30(三洋化成工業社製)、アクアロンRN−20(第一工業製薬社製)などが挙げられる。
【0037】
前記樹脂微粒子の体積平均粒径は、10〜300nmが好ましく、40〜200nmがより好ましい。体積平均粒径が10nm未満では、樹脂エマルジョンの粘度が高くなり、インクジェット記録装置で吐出可能なインクの粘度とするのが困難になることがある。また、体積平均粒径が300nmを超えると、インクジェット記録装置のノズル内で粒子が詰まり吐出不良となることがある。
前記シリコーン変性アクリル樹脂由来のシリコーン量は、100〜400ppmであることが好ましい。シリコーン量が100ppm未満では、擦過性や耐マーカー性に優れた塗膜が得られないことがあり、400ppmを超えると、疎水性が強くなりインク中での安定性が低下することがある。
前記シリコーン変性アクリル樹脂の最低造膜温度は20℃以下であることが好ましい。最低造膜温度が20℃を超えると、十分な定着性を得ることができないことがある。すなわち、印字部を擦ったり、マーカーでなぞったりすると、顔料が剥がれて印字メディアを汚してしまうことがある。
【0038】
前記着色剤である顔料のインクにおける添加量は、0.5〜25質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましい。一般に顔料濃度が高くなると画像濃度が上がり画質が向上するが、定着性や吐出安定性、目詰まりなどの信頼性に対しては悪影響が出やすくなる。しかし、本発明で用いるインクにおいては、顔料の添加量が多くなっても、吐出安定性、目詰まり等の信頼性を維持した上で定着性を確保することができる。
【0039】
前記樹脂微粒子以外のその他の成分としては特に制限は無く、必要に応じて適宜選択することができ、例えば、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤などが挙げられる。
前記防腐防黴剤としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が挙げられる。
前記pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずにpHを7以上に調整できるものであれば特に制限は無く、目的に応じて任意の物質を使用することができる。その具体例としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリストール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が挙げられる。
【0040】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、りん酸系酸化防止剤などが挙げられる。
前記フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)としては、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニオルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトライキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
【0041】
前記アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N′−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチル−フェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ジヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン等が挙げられる。
前記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−β,β′−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイド等が挙げられる。
前記りん系酸化防止剤としては、トリフェニルフォスファイト、オクタデシルフォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイト等が挙げられる。
【0042】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤などが挙げられる。
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等が挙げられる。
前記サリチレート系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリチレート、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート等が挙げられる。
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、ブチル−2−シアノ−3−メチル−(p−メトキシフェニル)アクリレートなどが挙げられる。
前記ニッケル錯塩系紫外線吸収剤としては、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、2,2′−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−n−ブチルアミンニッケル(II)、2,2′−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、2,2′−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)トリエタノールアミンニッケル(II)等が挙げられる。
【0043】
<インク物性>
本発明で用いるインクの物性としては特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
粘度は、25℃で、5〜20mPa・secが好ましく、5〜10mPa・secがより好ましい。粘度が20mPa・secを超えると、吐出安定性の確保が困難になることがある。
表面張力は、20℃で、22〜55mN/mが好ましい。表面張力が22mN/m未満では、紙上での滲みが顕著になり、安定した噴射が得られないことがあり、55mN/mを超えると、紙へのインク浸透が十分に起こらず、乾燥時間の長時間化を招くことがある。
pHは、7〜10が好ましい。
【0044】
<被記録材>
被記録材としては、インクジェット記録が可能な公知の材料の中から適宜選択することができるが、本発明の画像形成方法が特に有効なのは、塗工層を持たない普通紙であり、中でも一般にコピー用紙として用いているサイズ度10S以上、透気度5〜50Sの普通紙である。
【0045】
本発明に係る処理液を被記録材に塗布し、インクジェット記録用インクで画像を形成する方法について、図1に示す装置を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の画像記録方法を実施する装置の一例を示す側面断面図であり、インクジェット記録ヘッドを走査して画像形成するタイプの記録装置の例である。
図1の処理液塗布及びインクジエット記録装置において、給紙ローラ(7)によって送り出された被記録材(6)に、塗布ローラ(4)とカウンタローラ(5)によって、処理液(1)が均一に薄く塗布される。処理液(1)は汲み上げローラ(3)によって汲み上げられ、膜厚制御ローラ(2)によって塗布ローラ(4)に均一に塗布される。被記録材(6)は処理液(1)を塗布されながらインクジェット記録ヘッド(20)のある記録走査部まで送られる。処理液塗布動作終了部(A)から記録走査開始部(B)までの用紙経路の長さは、被記録材(6)の送り方向の長さよりも長く設定されているので、被記録材(6)が記録走査開始部(B)に到達した時点では、処理液(1)の塗布を完全に終了することができる。この場合、処理液(1)の塗布は、インクジェット記録ヘッド(20)が印字のための走査を開始し、被記録材(6)が間欠的に搬送される前に実施できるため、被記録材(6)の搬送速度が一定の状態で連続的に塗布でき、ムラのない均一な塗布が可能となる。なお、図1の装置では前処理の必要な被記録材(6)は下段のカセットから、処理の必要がないか又は処理されては困る被記録材(17)は上段のカセットから供給するようになっているため、被記録材搬送経路を長く設けるのに好都合である。
なお、図中の(8)は給紙トレイ、(10)は用紙送りローラ、(11)(12)(13)(14)(15)(16)は被記録材送りローラ、(18)は給紙ローラ、(21)はインクカートリッジ、(22)はキャリッジ軸、(23)はキャリッジである。
【0046】
図2は、本発明の画像記録方法を実施する装置の他の例を示す側面断面図である。この装置も、インクジェット記録ヘッド(20)を走査して画像形成するタイプの記録装置であり、図1の装置に比べてコンパクトな装置構成とした例である。
被記録材(17)は給紙ローラ(18)によって送り出され、塗布ローラ(4)とカウンタローラ(5)によって処理液(1)が被記録材(17)に均一に薄く塗布される。処理液(1)は汲み上げローラ(3)によって汲み上げられ、膜厚制御ローラ(2)によって塗布ローラ(4)に均一に塗布されている。被記録材(17)は、処理液(1)を塗布されながらインクジェット記録ヘッド(20)のある記録走査部を通過し、被記録材(17)が処理液(1)の塗布を完了するまで送られ、用紙が処理液(1)の塗布を完了した時点で再び被記録材(17)の先頭が記録走査開始位置に至るまで戻される。塗布完了は、例えば処理液塗布装置の出口近傍に、公知の被記録材検知手段(不図示)を設けることにより検出することができる。この検知手段は必ずしも必要では無く、予め被記録材(17)の長さの情報をコントローラにインプットし、モータの回転数を制御することにより、被記録材(17)の搬送ローラの外周の送り量を被記録材(17)の長さに対応するようなシステム構成としてもよい。
【0047】
処理液(1)が塗布された被記録材(17)は、処理液(1)が乾燥固化する前に再び記録走査位置に搬送されてくるが、この際には、インクジエット記録ヘッド(20)の走査とタイミングを合わせて間欠的に搬送される。被記録材(17)を戻すとき送られてきた経路と同じ経路を戻すと被記録材(17)の後端が処理液塗布装置に逆進入することになり、塗りムラや汚れ、用紙ジャムなどの不具合が起こるが、被記録材(17)を戻すときは被記録材ガイド(31)で方向を切り替える。すなわち、被記録材(17)に処理液(1)を塗布した後、被記録材(17)を逆送する時には、被記録材ガイド(31)を図の点線の位置に、ソレノイドやモータなどの公知の手段で移動させる。これにより、被記録材(17)は、被記録材戻しガイド(34)の位置に搬送されるので、被記録材(17)を汚したり、用紙ジャムが生じることを防止できる。
なお、図中の(31)は被記録材ガイド、(32)(33)は被記録材送りローラ、(34)は被記録材戻しガイド、(35)は用紙送りガイドであり、図1と同じ番号で示される部分は、図1と同様である。
【0048】
処理液塗布工程は、10〜1000mm/sの一定の線速度で連続的に行なうことが好ましい。そのため、図2に示す装置では、枚葉の被記録材(6)を用い、ある枚葉の被記録材(6)についてみると、被記録材(6)に処理液(1)を塗布する工程をその枚葉について終了した後に、インクジェット記録方法により画像を記録する工程を始める。このように、装置における処理液塗布の速度と画像記録との速度は殆どの場合に一致しないため、その枚葉の記録開始部と記録終了部とでは、処理液(1)が塗布されてから画像が記録されるまでの時間に差があることになる。しかし、この差がかなり大きくなった場合でも、水よりも沸点が高く蒸発速度の小さな親水性溶媒を多量に含み、インクジェット記録装置の使用環境での空気中の水分と平衡する量に近い水分比率に調整されている処理液(1)であれば、処理液からの水分蒸発が著しく抑制されるため、枚葉の被記録材(6)の、記録開始部と記録終了部で生じる画像品質の差を、少なくとも目視で観察できる水準以下に抑えることができる。
【0049】
この装置での被記録材(6)の搬送工程からも明らかなように、処理液(1)を塗布した後、画像を形成するために、処理液(1)が塗布された被記録材(6)をローラ、コロ、ガイドなどの被記録材(6)に接触する手段で搬送することが必要になる場合が多い。このような場合に、被記録材(6)に塗布された処理液(1)が被記録材(6)の搬送部材に転写してしまうと、搬送機能に障害を生じたり、汚れが蓄積して、画像品質が低下してしまうという問題を生じる。この問題を防止するには、装置側から、例えばガイドを波板にしたり、コロを拍車状にしたり、ローラの表面を撥水性の材料にしたりするという手段を講じ、問題の発生を軽減することができる。
しかしながら、被記録材(6)に塗布された処理液(1)は、極力速やかに被記録材(6)に吸収され、見かけ上は乾燥された状態にすることが本質的に重要である。この目的を達成するためには、処理液(1)の表面張力を40mN/m以下とし、速やかに液が被記録材(6)に浸透するようにすることが有効である。処理液塗布後の「乾燥固化」は、上記のように、被記録材(6)に処理液(1)が吸収されて、見かけ上乾燥したようになることを意味するものではなく、水分など処理液中の液状化合物が蒸発し、液体状態を保てなくなり固化することを意味している。本発明にかかる処理液(1)を上記のように前処理塗布装置と画像記録装置がセットになった記録装置を用いることにより、処理液(1)が被記録材(6)に吸収され、見かけ上は乾燥している状態になっていても、処理液(1)が固化していない状態で、インクジェット記録を行なうことができ、処理液(1)の塗布量が極めて少ない量においても、画像品質を著しく向上できる。
【0050】
図1、図2のような装置の動作を制御するため、パーソナルコンピュータなどのホストマシーンからのプリント指令を受けると、処理液塗布・画像記録装置はヘッドクリーニング作業と処理液塗布作業とを同時にスタートし、全て準備が完了した時点で記録動作を開始する。この場合、画像データの転送は、1走査分でも、複数走査分でも、あるいは1ページ分でも構わない。また、ヘッドクリーニング、噴射チェック動作は必ずしも必要ではない。更に、ヘッドクリーニング、噴射チェック動作と画像データ処理・画像データ転送をシーケンシャルに行なう必要はなく、処理液塗布、ヘッドクリーニング、噴射チェック動作と、画像データ処理・画像データ転送とを同時にスタートさせるなどパラレルに処理することが可能である。このように、処理液塗布、ヘッドクリーニング、噴射チェック動作と、画像データ処理・画像データ転送とをパラレルに処理することにより、処理液塗布作業を行なう場合にも、インクジェット記録装置のスループットを殆ど落とさずに画像記録をすることが可能である。
【0051】
本発明の画像記録方法において、インクを液滴として被記録材に付着させ画像を形成する手段としては、公知のあらゆるインクジェット記録方法が適用できる。図1、図2では、ヘッドを走査する方式のインクジェット記録装置の例を示したが、ライン化されたヘッドを用いることにより、ある枚葉の被記録材において、処理液の塗布と画像記録とを同時に等速度で行なうこともできる。
また、ヘッドの駆動方式としては、PZT等を用いた圧電素子アクチュエータ、熱エネルギーを作用させる方式、静電気力を利用したアクチュエータ等を利用したオンディマンド型のヘッドを用いることもできるし、連続噴射型の荷電制御タイプのヘッドを用いることもできる。熱エネルギーを作用させる方式では、液滴の噴射を自在に制御することが困難とされており、被記録材の種類等による画像へのばらつきが大きくなりがちであるが、処理液を被記録材に塗布することにより、これらの課題は解消され、被記録材の種類に依らず安定した高画質を得ることができる。
また、本発明の画像記録方法は、インクジェット記録方式による各種記録に適用することができ、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、などに特に好適に適用することができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例では処理液を前処理液として用い、インクジェット記録工程の前に処理液を塗工したが、インクジェット記録工程と同時に、又はインクジェット記録工程の後に処理液を塗工することもできる。
【0053】
(調製例1)
<シアンミルベース1の調製>
特許4138214号の調製例3を参考にして、以下の手順で調製を行った。
まず、ポリマー溶液を調製するため、機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えた1Lフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー(東亞合成社製、商品名:AS−6)4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを仕込み、65℃に昇温した。
次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー(東亞合成社製、商品名:AS−6)36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスジメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
65℃で1時間熟成した後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。
反応終了後、フラスコ内に、メチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液800gを得た。このポリマー溶液の一部を乾燥し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(標準:ポリスチレン、溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したところ、質量平均分子量は15000であった。
【0054】
続いて、得られたポリマー溶液28g、銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)26g、1mol/L水酸化カリウム溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水30gを十分に攪拌した。
その後、3本ロールミル(ノリタケカンパニー社製、商品名:NR−84A)を用いて20回混練した。
得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、十分に攪拌した後、エバポレーターを用いてメチルエチルケトン、及び水を留去し、固形分量が20.0質量%の青色のポリマー微粒子分散体(シアンミルベース1)160gを得た。
得られた分散体中のポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装社製)で測定したところ、平均粒子径(D50%)は93nmであった。
【0055】
(調製例2)
<マゼンタミルベース1の調製>
銅フタロシアニン顔料をC.I.ピグメントレッド122に変えた点以外は、調製例1と同様にして、赤紫色のポリマー微粒子分散体(マゼンタミルベース1)を得た。
得られた分散体中のポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装社製)で測定したところ、平均粒子径(D50%)は127nmであった。
【0056】
(調製例3)
<イエローミルベース1の調製>
銅フタロシアニン顔料をC.I.ピグメントイエロー74に変えた点以外は、調製例1と同様にして、黄色のポリマー微粒子分散体(イエローミルベース1)を得た。
得られた分散体中のポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装社製)で測定したところ、平均粒子径(D50%)は76nmであった。
【0057】
(調製例4)
<ブラックミルベース1の調製>
CTAB比表面積が150m/g、DBP吸油量100mL/100gのカーボンブラック90gを2.5N(規定)の硫酸ナトリウム溶液3000mLに添加し、温度60℃、速度300rpmで攪拌し、10時間反応させて酸化処理を行った。
この反応液を濾過し、濾別したカーボンブラックを水酸化ナトリウム溶液で中和した後、限外濾過を行った。
得られたカーボンブラックを水洗いし、乾燥させて、顔料濃度が20質量%となるよう純水中に分散させ、表面処理したカーボンブラック顔料分散体(ブラックミルベース1)を得た。
得られた分散体中のカーボンブラック顔料について、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装社製)で測定したところ、平均粒子径(D50%)は99nmであった。
【0058】
(調製例5)
<シアンミルベース2の調製>
下記処方の材料を用い、次のようにしてシアンミルベース2を調製した。
ポリマーBに、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールを加えて水に溶解させ、油溶性染料ソルベントブルー70及びアルミナ微粒子を混合して充分に湿潤したところで、混錬装置であるダイノーミル KDL A型(WAB社製)にφ0.5mmジルコニアビーズを充填して、2000rpmで60分間混錬を行った。
得られたミルベースに1規定の塩酸を3質量部加えて攪拌した後、イオン交換水400質量部を加えてよく攪拌し、遠心分離機を用いて染料ペーストと水に分離し、上澄み液を除去する操作を数回繰り返した。
更に塩基性化合物として2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール1質量部を加え、再びダイノーミル KDL A型(WAB社製)で混錬を行った。
この混練物を取り出して1μmのフィルターでろ過し、染料濃度15%のシアンミルベース2を得た。
(シアンミルベース2処方)
・ソルベント ブルー70 15質量部
(田岡化学社製 油溶性染料、Oleosol Fast Blue ELN)
・アルミナ微粒子 3質量部
(住友化成社製 APK−G008)
・ポリマーB(スチレン−アクリル系ポリマー) 15質量部
(ジョンクリル586 ジョンソンポリマー社製)
・イオン交換水 67質量部
【0059】
(調製例6)
<マゼンタミルベース2の調製>
下記処方の材料を用い、シアンミルベース2と同様の手法で、染料濃度15%のマゼンタミルベース2を得た。
(マゼンタミルベース2処方)
・ソルベント レッド49 15質量部
(オリエント化学工業社製 油溶性染料、Oil Pink 312)
・シリカ微粒子 5質量部
(日本アエロジル社製、Aerosil−RX200)
・ポリマーB(スチレン−アクリル系ポリマー) 15質量部
(ジョンクリル586 ジョンソンポリマー社製)
・イオン交換水 65質量部
【0060】
(調製例7)
<イエローミルベース2の調製>
下記処方の材料を用い、シアンミルベース2と同様の手法で、染料濃度15%のイエローミルベース2を得た。なお、ポリマーAは後述するようにして調製したものである。
(イエローミルベース2処方)
・ディスパース イエロー160 15質量部
(有本化学社製 分散染料、Plast Yellow 8050)
・ポリマーA 15質量部
・イオン交換水 70質量部
【0061】
<ポリマーAの調製>
脱水管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を備えた容量2Lの四つ口フラスコに下記処方の材料を入れ、脱水しながら3時間かけて180℃まで昇温させ、脱水縮合反応を行って、ポリマーA(ポリエステル樹脂)を得た。
(ポリマーA処方)
・デカンエポキシエステル 10質量部
(ジャパンエポキシレジン社製:カージュラ E−10P)
・アジピン酸 27質量部
・ヘキサヒドロ無水フタル酸 42質量部
・ネオペンチルグリコール 2質量部
・トリメチロールプロパン 26質量部
・ジブチル錫ジオキサイド 0.1質量部
【0062】
(調製例8)
<ブラックミルベース2の調製>
下記処方の材料を用い、次のようにして調製した。
イオン交換水に下記構造の分散剤を溶解し、油溶性染料ソルベント ブラック3を投入して充分に湿潤させたところで、混錬装置であるダイノーミル KDL A型(WAB社製)にφ0.5mmジルコニアビーズを充填して、2000rpmで60分間混錬を行った。
この混練物を取り出して1μmのフィルターでろ過し、染料濃度15%のブラックミルベース2を得た。
(ブラックミルベース2処方)
・ソルベント ブラック3 15質量部
(オリエント化学工業社製 油溶性染料、Oil Black 860)
・分散剤:C1225−O−(CHCHO)42−H 5質量部
・イオン交換水 80質量部
【0063】
<記録用インクの作製>
表1の成分欄に示す各材料を、調製例9〜16の各欄に示す配合比で用いた。
まず、表1の調製例9〜16の成分欄に示す水溶性有機溶剤(湿潤剤)、浸透剤、界面活性剤、防黴剤及び水を1時間攪拌して均一に混合した。調整例12、16では、更に樹脂微粒子も添加して1時間攪拌し均一に混合した。
次に、顔料ミルベース又は染料ミルベース、及びpH調整剤を加えて1時間攪拌し均一に混合した。
この混合物を平均孔径0.8μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにより加圧濾過し、粗大粒子やゴミを除去して、調製例9〜16の各インクを作製した。
なお、表中の数値は各成分の配合割合(質量%)を示し、ブランクの箇所は、該当する材料を配合しなかったことを示す。また、表中に商品名等で記載した材料の詳細は次のとおりである。
・アクリルシリコーン樹脂エマルジョン:昭和高分子社製、ポリゾールROY6312、固形分40%質量、平均粒子径171nm、最低造膜温度(MFT)=20℃
・Proxel GXL:1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンを主成分とした防黴剤(アビシア社製、成分20%質量%、ジプロピレングリコール含有)
・ゾニールFS−300:ポリオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル(Dupont社製、成分40質量%)
【0064】
【表1】

【0065】
<前処理液の作製>
表2の成分欄に示す各材料を、調製例17〜23の各欄に示す配合比で用いた。まず、湿潤剤、浸透剤、界面活性剤及び純水を1時間攪拌して均一に混合し、次いで、カチオン性高分子化合物又は高分子化合物と有機酸とを加え1時間攪拌して均一に混合した。
得られた混合物を、平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過し、粗大粒子やゴミを除去して、調製例17〜23の各前処理液を得た。
なお、表中の数値は各成分の配合割合(質量%)を示し、ブランクの箇所は、該当する材料を配合しなかったことを示す。また、表中に商品名等で記載した材料の詳細は次のとおりである。
・シャロールDC−902P:第一工業製薬社製、ジアルキルジアリル−4級アンモニウム塩のカチオン性高分子化合物、固形分50質量%、pH3〜5
・シャロールDC−303P:第一工業製薬社製、ジアルキルアリル−4級アンモニウム塩のカチオン性高分子化合物、固形分41質量%、pH3〜5
・ポリマロン360:荒川化学工業社製、カチオン性高分子化合物、固形分20質量%、pH4.5〜5.5、スチレン−マレイン酸共重合体
・アクアリックHL−415:日本触媒社製、ポリアクリル酸高分子化合物、固形分45質量%、pH2以下
・ソフタノールEP−7025:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(日本触媒社製、有効成分100質量%)
【0066】
【表2】

【0067】
表3の成分欄に示す各材料を調製例24〜30の各欄に示す配合比で用いた点以外は、調製例17〜23の場合と同様にして、調整例24〜30の前処理液を得た。
【表3】

【0068】
表4の成分欄に示す各材料を調製例31〜34の各欄に示す配合比で用いた点以外は、調製例17〜23の場合と同様にして、調整例31〜34の前処理液を得た。
【表4】

【0069】
表5の成分欄に示す各材料を調製例35〜38の各欄に示す配合比で用いた点以外は、調製例17〜23の場合と同様にして、調整例35〜38の前処理液を得た。
【表5】

【0070】
上記調製例17〜38の各前処理液について、以下のようにして静的表面張力及び泡立ち試験を行った。評価結果を表6〜表9に示す。
<前処理液の静的表面張力の測定>
前処理液の静的表面張力は、全自動表面張力計(CBVP−Z、協和界面科学社製)を用いて、25℃で測定した。
<泡立ち試験>
10℃の環境下で、各前処理液を100mLのメスシリンダーに10mL入れ、各前処理液と気泡の体積合計が100mLになった時点で空気の注入を停止した。
空気の注入開始から空気の注入停止までの時間を起泡時間とし、空気の注入停止時点から各前処理液と気泡の体積合計が20mLになるまでの時間を消泡時間として評価した。評価基準は次のとおりである。
〔起泡性〕
◎:起泡時間が15秒以上
○:起泡時間が10秒以上、15秒未満
△:起泡時間が5秒以上、10秒未満
×:起泡時間が5秒未満

〔消泡性〕
◎:消泡時間が600秒未満
○:消泡時間が600秒以上、1200秒未満
△:消泡時間が1200秒以上、1800秒未満
×:消泡時間が1800秒以上
【0071】
【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【0072】
実施例1〜6、比較例1〜6
ワイヤーバーコート法又は図1に示す装置を用いたロールコート法により、表10、表11の各実施例及び比較例の欄に示す被記録材上に、調製例17〜23の前処理液を塗布した後、温風乾燥又は自然乾燥した。
次に、温度23±0.5℃、50±5%RHに調整した環境下で、インクジェットプリンタ(IPSiO GX3000 リコー社製)を用いて、前処理液を塗布した被記録材上に、調整例9〜16のインクを4色のインクセットとして吐出し、画像を形成した。
その際、インクの吐出量が均しくなるようにピエゾ素子の駆動電圧を変動させ、被記録材上に同じ付着量のインクが付くように設定した。インクのDry付着量は、表10、表11に示すとおりである。
なお、表10、表11中の被記録材の詳細は次のとおりである。
・マイペーパー:リコー社製(上質紙)、坪量69.6g/m、サイズ度23.2秒、透気度21.0秒
・Type6200:リコー社製(上質紙)、坪量71.7g/m、サイズ度20.0秒、透気度22.5秒
・4024:Xerox社製(上質紙)、坪量81.5g/m、サイズ度27.0秒、透気度16.0秒
・マイリサ100W:リコー社製(リサイクルペーパー)、坪量68.5g/m、サイズ度29.0秒、透気度16.0秒
【0073】
【表10】

【表11】

【0074】
実施例7〜13、比較例7〜11
表12、表13の各実施例及び比較例の欄に示す前処理液とインクセットを用いた点以外は、実施例1〜6、比較例1〜6の場合と同様の処理を行った。
【表12】

【表13】

【0075】
実施例14〜19、比較例12〜13
表14、表15の各実施例及び比較例の欄に示す前処理液とインクセットを用いた点以外は、実施例1〜6、比較例1〜6の場合と同様の処理を行った。
【表14】

【表15】

【0076】
実施例20〜25、比較例14〜15
表16、表17の各実施例及び比較例の欄に示す前処理液とインクセットを用いた点以外は、実施例1〜6、比較例1〜6の場合と同様の処理を行った。
【表16】

【表17】

【0077】
上記各実施例及び比較例の画像について、以下のようにして、画像濃度、色ムラ、画像彩度、文字滲み、カラーブリード、白ポチ、スミア定着性を評価した。
<画像濃度>
Microsoft Word2000で作成した64point文字「黒四角」の記載のあるチャートを各被記録材に打ち出し、印字面の「黒四角」部をX−Rite938で測色し、下記評価基準により判定した。印字モードは、プリンター添付のドライバの「普通紙−標準はやい」モードとした。なお、上記「黒四角」とは、黒色に限らず、各色で塗りつぶした四角のことである。
〔評価基準〕
◎:OD値 ブラック 1.40以上
イエロー 0.90以上
マゼンタ 1.10以上
シアン 1.20以上
○:OD値 ブラック 1.30以上1.40未満
イエロー 0.85以上0.90未満
マゼンタ 1.00以上1.10未満
シアン 1.10以上1.20未満
△:OD値 ブラック 1.20以上1.30未満
イエロー 0.80以上0.85未満
マゼンタ 0.90以上1.00未満
シアン 1.00以上1.10未満
×:OD値 ブラック 1.20未満
イエロー 0.80未満
マゼンタ 0.90未満
シアン 1.00未満

【0078】
<色ムラ>
画像濃度と同様に、チャートを各被記録材に打ち出し、印字面の色ムラの有無を、目視により下記評価基準で判定した。印字モードは、プリンター添付のドライバの「普通紙・標準はやい」モード・カラーマッチングoffとした。
〔評価基準〕
◎:全く問題なし
○:僅かにあるが問題なし
△:少しあり問題あり
×:問題あり

【0079】
<画像彩度>
画像濃度と同様に、チャートを各被記録材に打ち出し、印字面の「黒四角」部をX−Rite938で測色した。印字モードは、プリンター添付のドライバの「普通紙−標準はやい」モードとした。
標準色(Japan color ver.2)の彩度の値(Yellow:91.34、Magenta:74.55、Cyan:62.82)に対する測定した彩度の値の比率を算出し、下記評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:0.85以上
○:0.8以上0.85未満
△:0.75以上0.8未満
×:0.75未満

【0080】
<文字滲み>
Microsoft Word2000で作成した6point文字「轟」の記載のあるチャートを各被記録材に打ち出し、文字滲みの発生を、目視により下記評価基準で評価した。
〔評価基準〕
◎:全く問題なし
○:僅かに発生問題なし
△:少し発生問題あり
×:発生問題あり

【0081】
<カラーブリード>
被記録材に打ち出したイエローのベタ画像内に、マゼンタ、シアン、ブラックの0.5mmの線画像をそれぞれ形成し、異なった色の記録液が隣接した場合に滲んで起こる色境界にじみの発生を目視により観察した。
同様に、シアンのベタ画像内に、マゼンタ、イエロー、ブラックの0.5mmの線画像をそれぞれ形成した場合、及びマゼンタのベタ画像内に、シアン、イエロー、ブラックの0.5mmの線画像を形成した場合についても、色境界にじみの発生を観察した。
〔評価基準〕
◎:全く問題なし
○:僅かに発生問題なし
×:発生問題あり

【0082】
<白ポチ>
Microsoft Word2000で作成した64point文字「黒四角」の記載のあるチャートを各被記録材に打ち出し、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック印字面の「黒四角」ベタ画像部内を目視により観察し、白ポチの有無を下記の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:全く問題なし
○:僅かに有るが問題なし
×:問題あり

【0083】
<スミア定着性>
Microsoft Word2000で作成した3cm×3cmの単色ベタ画像があるチャートを各被記録材に打ち出し、温度23±1℃、湿度50±10%で24時間乾燥させ、CM−1型クロックメータに両面テープで取り付けたJIS L 0803 綿3号を印字部位に当てるように10往復させた後、綿布のインク付着汚れを、X−Rite938で測定し、綿布の地肌色を差し引いた汚れ部の濃度を、下記評価基準により判定した。
〔評価基準〕
◎:0.03未満
○:0.03以上0.07未満
△:0.07以上0.1未満
×:0.1以上

【0084】
結果を表18〜表21に示すが、評価はインクセットの各色ごとに行い、各評価項目について最も多い判定結果を記載した。また、判定結果が同数の場合は、良い方の判定結果を記載した。
表から分るように、実施例では全ての評価項目について「◎」又は「○」の好結果が得られた。これに対し、比較例では画像濃度を除く2つ以上の評価項目が「×」又は「△」であった。
【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【符号の説明】
【0085】
1 処理液
2 膜厚制御ローラ
3 汲み上げローラ
4 塗布ローラ
5 カウンタローラ
6 被記録材
7 給紙ローラ
8 給紙トレイ
10 用紙送りローラ
11、12、13、14、15、16 被記録材送りローラ
17 被記録材
18 給紙ローラ
20 インクジェット記録ヘッド
21 インクカートリッジ
22 キャリッジ軸
23 キャリッジ
31 被記録材ガイド
32、33 被記録材送りローラ
34 被記録材戻しガイド
35 用紙送りガイド
A 処理液塗布動作終了部
B 記録走査開始部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】特開2009−166387号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材表面に処理液を塗布する塗布工程と、被記録材表面に、着色剤、水溶性有機溶剤及び水を含有するインクジェット記録用インクを、画像信号に従って吐出して画像を形成する画像形成工程とを有する画像形成方法において、該処理液が少なくとも、下記化合物(1)〜(4)のいずれかのフッ素系化合物、カチオン性高分子化合物、有機酸及び水を含有することを特徴とする画像形成方法。
【化5】

化合物(1)〜(4)において、MはK、Na、NH、Liから選ばれるいずれか、RfはCF、C、C、Cから選ばれるいずれかを表す。
【請求項2】
前記カチオン性高分子化合物として、第4級アンモニウム塩型のカチオン性高分子化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成方法で作製されたことを特徴とする画像記録物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−230401(P2011−230401A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103564(P2010−103564)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】