説明

画像形成方法

【課題】定着分離性が改善され、高品位の画像を得ることができる画像形成方法を提供する。
【解決手段】トナーとして、100℃における損失弾性率(A)と150℃における損失弾性率(B)との(A)/(B)が1〜20であり、かつ(A)が80000Pa・s未満であるトナーを用い、定着装置として、定着ローラ61は、外周面がクラウン状に形成されたクラウン部61aと、外周面が逆クラウン状に形成された逆クラウン部61bを有し、加圧ローラ62は、外周面がクラウン状に形成されたクラウン部62aと、外周面が逆クラウン状に形成された逆クラウン部62bを有し、定着ローラ61のクラウン部61aと加圧ローラ62の逆クラウン部62bを対応させると共に、定着ローラ61の逆クラウン部61bと加圧ローラ62のクラウン部62aを対応させて、定着ローラ61と加圧ローラ62とを圧接させた定着装置を用いる画像形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の定着装置と特定のトナーを用いた画像形成方法に関し、詳しくは、ロール対により形成されるニップ部、あるいはロールとベルトとにより形成されるニップ部に未定着トナー像を担持する記録媒体を通過させ、加熱するとともに加圧してトナー像を記録媒体に定着させる定着装置と特定のトナーを用いた画像形成方法に関する。上記定着装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置において用いることができる。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真式印字装置の定着部を構成する定着装置では、トナーが全面に付着した印字パターンを定着する場合、記録用紙が薄紙である場合、画像先端からトナーが付着している場合に、定着ジャムや定着部材に記録用紙が巻き付くといった不具合が生じていた。
このような不具合に対して、定着部材を小さくすることで、定着後の曲率を大きくし、定着部材と記録用紙とを分離させることが行われていた。また、それ以前は、定着ローラ上にオイルを塗布しトナーと定着部材間に離型層を形成し、定着部材と記録用紙とを分離させることが行われていた。また、トナーにワックス等の離型剤を含有させることにより、定着部材と記録用紙との分離を促進させることが行われていた。
定着性が改善された定着装置として、特許文献1ないし3には、定着ローラ、加圧ローラともに軸方向にクラウン形状を少なくとも2個以上持ち、定着ローラのクラウン部分と加圧ローラの逆クラウン部分の組み合わせと定着ローラの逆クラウン部分と加圧ローラのクラウン部分の組み合わせで定着ニップを形成する構成を有する定着装置が開示されている。
しかしながら、記録用紙として薄紙を用いる場合や、隙間なく画像先端から全面にトナーが付着している印字パターン等の条件が重なると、定着ジャム等は完全には改善されないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、定着分離性が改善され、高品位の画像を得ることができる画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、定着ニップから排出される記録用紙の形状に着目し、薄紙を用いた場合でも厚紙並の強度が得られる定着装置を、先に出願した(特願2009−5710号)。この定着装置は、記録媒体の曲げ剛性を向上させることにより、記録媒体の分離性を向上させることが可能な定着装置である。
しかし、この定着装置においては、通紙方向に沿って縞模様のように光沢差を生じる画像ノイズが発生する場合がある。
本発明者らはさらに検討を行ったところ、芯金厚みが軸方向で一定な定着ローラを加熱した場合、表層温度がクラウン部分と逆クラウン部分では異なり、ゴム厚みが薄い逆クラウン部分でゴム厚が厚いクラウン部分より熱伝導率の関係上高温になることがわかった。ここで生じる温度差によって、定着ローラのクラウン部分を通過するトナーは逆クラウン部分を通過するトナーよりも定着ローラから受ける温度が高い。したがって、温度の高い部分は高光沢となり、温度の低い部分は低光沢となって、特願2009−5710号の定着装置に特有の画像ノイズとなり画像品位を損ねると考えられる。
従来の定着装置は軸方向においてゴムの厚みを積極的に変化させることはされていなかったため、定着ローラの一部が異なる温度になることは少なかった。もっとも従来、繰り返し印字における定着ローラ上の温度低下が画像光沢に影響を与えることは指摘されてきたが、この場合、印字一枚目の画像と繰り返し印字中の画像を比較すると光沢差を認められることはあっても、印字一枚目の画像のみを見ても、繰り返し印字中の画像のみを見ても、それぞれ単体では画像全体にわたって大きな光沢の違いは無いため、単体の画像を見るうえでは特に違和感はない。しかし、特願2009−5710号の定着装置では、一枚の画像の中に光沢の高い部分と低い部分が縞模様のように存在するため、非常に目立ち画像品位を低く感じられる。
そこで、本発明者らはさらに検討を重ね、トナー溶融時の粘弾性(損失弾性率)を好適に設計することにより、上記の定着装置特有の画像ノイズを低減することに成功し、本発明に至った。
【0005】
すなわち、以下の1ないし13の発明によって、上記課題は解決される。
1.少なくとも樹脂と着色剤を含有するトナーを用いて形成されたトナー画像を接触加熱方式の定着装置を用いて記録媒体上に定着する工程を有する画像形成方法において、前記トナーの100℃における損失弾性率〔G’’(100)〕と150℃における損失弾性率〔G’’(150)〕との比G’’(100)/G’’(150)の値が1〜20であり、かつ100℃における損失弾性率〔G’’(100)〕が80000Pa・s未満であり、前記定着装置が、加熱源によって加熱される定着ローラと、当該定着ローラに圧接して配設された加圧ローラを備え、前記定着ローラと前記加圧ローラが互いに圧接して形成された定着ニップに記録媒体を通過させることにより、当該記録媒体上の未定着画像を記録媒体に定着させる定着装置であって、前記定着ローラは、外周面がクラウン状に形成されたクラウン部と、外周面が逆クラウン状に形成された逆クラウン部を、それぞれ少なくとも1つずつ有し、前記加圧ローラは、外周面がクラウン状に形成されたクラウン部と、外周面が逆クラウン状に形成された逆クラウン部を、それぞれ少なくとも1つずつ有し、前記定着ローラの前記クラウン部と前記加圧ローラの前記逆クラウン部を対応させると共に、前記定着ローラの前記逆クラウン部と前記加圧ローラの前記クラウン部を対応させて、前記定着ローラと前記加圧ローラを互いに圧接させた定着装置であることを特徴とする画像形成方法である。
2.前記定着ローラと前記加圧ローラとを無負荷状態で互いの前記クラウン部と前記逆クラウン部を接触させて配設した場合に、対応させて配設した前記クラウン部と前記逆クラウン部との間に隙間が生じないように構成したことを特徴とする前記1に記載の画像形成方法である。
3.前記定着ローラと前記加圧ローラのそれぞれの前記クラウン部と前記逆クラウン部を、軸方向に連続して形成したことを特徴とする前記1又は2に記載の画像形成方法である。
4.前記定着ローラ及び前記加圧ローラは弾性層を有するものであって、前記定着ローラと前記加圧ローラとを無負荷状態で互いの前記クラウン部と前記逆クラウン部を接触させて配設した場合に、軸方向の任意の断面における前記定着ローラ及び前記加圧ローラの前記弾性層の厚みの和が一定となるように設定したことを特徴とする前記1ないし3のいずれかに記載の画像形成方法である。
5.前記クラウン部及び前記逆クラウン部を、前記定着ローラ及び前記加圧ローラの少なくとも記録媒体の最大通過幅全体に対応する部分に渡って配設したことを特徴とする前記1ないし4のいずれかに記載の画像形成方法である。
6.前記クラウン部及び前記逆クラウン部を、前記定着ローラ及び前記加圧ローラの記録媒体の最大通過幅の一部に対応する部分に配設したことを特徴とする前記1ないし5のいずれかに記載の画像形成方法である。
7.前記定着ローラの前記クラウン部及び前記逆クラウン部の少なくとも一方と、前記加圧ローラの前記クラウン部及び前記逆クラウン部の少なくとも一方に、直線部を形成したことを特徴とする前記1ないし3のいずれかに記載の画像形成方法である。
【0006】
8.前記定着ローラと前記加圧ローラを互いに圧接させた負荷状態において、前記定着ニップにおける前記クラウン部の頂部と前記逆クラウン部の底部との高低差を、0.16mm以上であって0.8mm以下に設定したことを特徴とする前記1ないし7のいずれかに記載の画像形成方法である。
9.前記定着ローラ及び前記加圧ローラは、金属製の芯材の外周面に弾性層を被覆して構成されたものであって、前記芯材及び前記弾性層の少なくとも一方の厚さを軸方向に渡って変化させて前記クラウン部及び逆クラウン部を形成したことを特徴とする前記1ないし8のいずれかに記載の画像形成方法である。
10.前記定着ローラを、芯材の外周面に弾性層を有しないローラで構成すると共に、当該定着ローラの前記芯材の外周面を軸方向に渡って湾曲させることにより、前記クラウン部と前記逆クラウン部を形成したことを特徴とする前記1ないし3のいずれかに記載の画像形成方法である。
11.前記加圧ローラは、芯材の外周面に弾性層を被覆して構成されたものであって、当該加圧ローラの前記芯材の外周面を軸方向に渡って湾曲させることにより、前記クラウン部と前記逆クラウン部を形成したことを特徴とする前記10に記載の画像形成方法である。
12.前記定着ローラと前記加圧ローラのそれぞれの軸方向の同じ側の端部を、軸方向に位置決めすると共に、前記定着ローラと前記加圧ローラのそれぞれの前記位置決めされた端部と反対側の端部を軸方向に変位可能に構成したことを特徴とする前記1ないし11のいずれかに記載の画像形成方法である。
13.少なくとも樹脂と着色剤を含有するトナーを用いて形成されたトナー画像を接触加熱方式の定着装置を用いて記録媒体上に定着する工程を有する画像形成方法において、前記トナーの100℃における損失弾性率〔G’’(100)〕と150℃における損失弾性率〔G’’(150)〕との比G’’(100)/G’’(150)の値が1〜20であり、かつ100℃における損失弾性率〔G’’(100)〕が80000Pa・s未満であり、前記定着装置が、加熱源によって加熱される定着ローラと、無端状の加圧ベルトと、当該加圧ベルトの内周面を押圧して加圧ベルトを前記定着ローラに圧接させる押圧部材を備え、前記定着ローラと前記加圧ベルトが互いに圧接して形成された定着ニップに記録媒体を通過させることにより、当該記録媒体上の未定着画像を記録媒体に定着させる定着装置であって、前記定着ローラは、外周面がクラウン状に形成されたクラウン部と、外周面が逆クラウン状に形成された逆クラウン部を、それぞれ少なくとも1つずつ有し、前記押圧部材の前記加圧ベルトを押圧する押圧面に、凸状に形成した凸面部と、凹状に形成した凹面部を、それぞれ少なくとも1つずつ有し、前記定着ローラの前記クラウン部と前記押圧部材の前記凹面部を対応させて配設すると共に、前記定着ローラの前記逆クラウン部と前記押圧部材の前記凸面部を対応させて配設して、前記押圧部材によって前記加圧ベルトを押圧し、前記定着ローラと前記加圧ベルトを互いに圧接させた定着装置であることを特徴とする画像形成方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、記録媒体の曲げ剛性を向上させることにより、記録媒体の分離性を向上させることが可能な定着装置と、特定のトナーを組み合わせることにより、定着分離性が改善され、高品位の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るカラー画像形成装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る定着装置の概略図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る定着ローラの断面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る加圧ローラの断面図である。
【図5】前記定着ローラと前記加圧ローラの断面図である。
【図6】クラウン部と逆クラウン部の振幅及び高低差を説明するための模式図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る定着ローラと加圧ローラの断面図である。
【図8】本発明の実施形態3に係る定着ローラと加圧ローラの断面図である。
【図9】本発明の実施形態3に係る定着ローラと加圧ローラの変形例の断面図である。
【図10】本発明の実施形態4に係る定着ローラと加圧ローラの断面図である。
【図11】本発明の実施形態5に係る定着装置の概略図である。
【図12】本発明の実施形態5に係る定着ローラと加圧ベルトと押圧部材の断面図である。
【図13】記録用紙の見かけ上の剛性の測定方法を説明するための図である。
【図14】定着ニップの湾曲数と記録用紙の見かけ上の剛性との関係を示すグラフである。
【図15】記録用紙の分離性を比較する試験結果を示すグラフであって、(A)はクラウン部と逆クラウン部をいずれか1つのみ有する場合の試験結果を示し、(B)はクラウン部と逆クラウン部をそれぞれ1つずつ有する場合の試験結果を示す
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における実施の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
図1は、本発明に係るカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図1に示す本発明の画像形成装置1は、タンデム型のカラープリンタである。この画像形成装置1の本体の上方にあるボトル収容部2には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つのトナーボトル2Y、2M、2C、2Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。ボトル収容部2の下方には中間転写ユニット3が配設されている。その中間転写ユニット3の中間転写ベルト30に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。
【0010】
各作像部4Y、4M、4C、4Kには、それぞれ、像担持体としての感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kが配設されている。また、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの周囲には、それぞれ、帯電部6、現像部7、クリーニング部8、除電部(図示省略)等が配設されている。そして、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)がおこなわれて、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に各色の画像が形成されることになる。
【0011】
感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、図示しない駆動モータによって図1中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電部6の位置で、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が一様に帯電される(帯電工程)。その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部から発せられたレーザ光の照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程)。
【0012】
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、現像部7との対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、各色のトナー像が形成される(現像工程)。その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト30及び第1転写バイアスローラ31Y、31M、31C、31Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト30上に転写される(1次転写工程)。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
【0013】
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、クリーニング部8との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に残存した未転写トナーがクリーニング部8のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程)。最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、図示しない除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で行われる一連の作像プロセスが終了する。
【0014】
その後、現像工程を経て各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト30上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト30上にカラー画像が形成される。ここで、中間転写ユニット3は、中間転写ベルト30、4つの1次転写バイアスローラ31Y、31M、31C、31K、2次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33、テンションローラ34、中間転写クリーニング部35等で構成される。中間転写ベルト30は、3つのローラ32〜34によって張架・支持されると共に、1つのローラ32の回転駆動によって図1中の矢印方向に無端移動される。
【0015】
4つの1次転写バイアスローラ31Y、31M、31C、31Kは、それぞれ、中間転写ベルト30を感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写バイアスローラ31Y、31M、31C、31Kに、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。そして、中間転写ベルト30は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ31Y、31M、31C、31Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト30上に重ねて1次転写される。
【0016】
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト30は、2次転写ローラ36との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラ32が、2次転写ローラ36との間に中間転写ベルト30を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト30上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体としての記録用紙P上に転写される。このとき、中間転写ベルト30には、記録用紙Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。その後、中間転写ベルト30は、中間転写クリーニング部35の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト30上の未転写トナーが回収される。こうして、中間転写ベルト30上で行われる一連の転写プロセスが終了する。
【0017】
ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録用紙Pは、画像形成装置1の本体の下方に配設された給紙部10から、給紙ローラ11やレジストローラ対12等を経由して搬送されたものである。詳しくは、給紙部10には、記録用紙Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ11が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録用紙Pがレジストローラ対12のローラ間に向けて給送される。
【0018】
レジストローラ対12に搬送された記録用紙Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対12のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト30上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対12が回転駆動されて、記録用紙Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録用紙P上に、所望のカラー画像が転写される。
【0019】
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録用紙Pは、定着装置27の位置に搬送される。定着装置27は、例えば定着ローラ61と加圧ローラ62を有しており、定着ローラ61と加圧ローラ62が圧接した定着ニップに記録用紙Pが搬入されることによって、表面に転写されたカラー画像が記録用紙P上に定着される。その後、記録用紙Pは、排紙ローラ対13のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対13によって装置外に排出された記録用紙Pは、出力画像として、スタック部14上に順次スタックされる。こうして、画像形成装置における一連の画像形成プロセスが完了する。
【0020】
以下、本発明の特徴部分である上記定着装置27の構成について説明する。
【0021】
(実施形態1)
図2に本発明の実施形態1に係る定着装置の構成を示す。図2に示すように、定着装置27は、定着ローラ61と、その定着ローラ61に圧接して配設された加圧ローラ62を備える。定着ローラ61と加圧ローラ62が互いに圧接された箇所には定着ニップNが形成されている。
【0022】
定着ローラ61は、円筒状に形成された金属製の芯材611と、その芯材611の外周面を被覆する弾性層612と、その弾性層612の外周面を被覆する離型層613を有する。芯材611の内部には、ヒータランプ等の加熱源63が軸方向に渡って配設されており、加熱源63が発熱することによって定着ローラ61が加熱されるようになっている。また、定着ローラ61の周囲には、定着ローラ61の表面温度を検知する温度検知装置64が配設してある。図示しない制御装置が、温度検知装置64が検知した定着ローラ61の表面温度に基づいて加熱源63の発熱量を制御することにより、定着ローラ61の表面温度が所定の定着温度となるように構成されている。加圧ローラ62は、円筒状に形成された金属製の芯材621と、その芯材621の外周面を被覆する弾性層622と、その弾性層622の外周面を被覆する離型層623を有する。
【0023】
図3は、定着ローラ61を軸方向に切断した断面図である。なお、図3において、図2に示す符号と同一の符号は、図2に示す部材と同一の部材を示す。図3に示すように、定着ローラ61は、外周面がクラウン状に形成されたクラウン部61aと、外周面が逆クラウン状に形成された逆クラウン部61bを、それぞれ少なくとも1つずつ有している。この場合、定着ローラ61には、複数のクラウン部61aと複数の逆クラウン部61bが軸方向に交互に連続して配設されており、定着ローラ61の外周面は、全体として軸方向に波打つように形成されている。なお、上記「クラウン状」とは軸方向の両端へ向かってローラの径が小さくなる形状のことをいい、上記「逆クラウン状」とは軸方向の両端へ向かってローラの径が大きくなる形状のことをいう。
【0024】
また、図3に示すように、定着ローラ61の弾性層612及び離型層613は、それぞれ軸方向に均一な厚さに形成されている。一方、芯材611の厚さは軸方向に渡って変化するように形成されている。このように、軸方向に厚さが変化した芯材611に、均一な厚さの弾性層612及び離型層613を被覆させることによって、定着ローラ61にクラウン部61aと逆クラウン部61bを構成している。
【0025】
上記のように外周面が波打った芯材611に、弾性層612を被覆させる方法としては、円筒状チューブで構成した弾性層612を芯材611に外嵌する方法や、芯材611の外周面に弾性材を塗布して弾性層612を構成する方法などを採用することができる。また、弾性層612に離型層613を被覆させる方法は、前記弾性層612の被覆方法と同様の方法を採用可能である。
【0026】
図4は、加圧ローラ62を軸方向に切断した断面図である。なお、図4において、図2に示す符号と同一の符号は、図2に示す部材と同一の部材を示す。図4に示すように、加圧ローラ62は、外周面がクラウン状に形成されたクラウン部62aと、外周面が逆クラウン状に形成された逆クラウン部62bを、それぞれ少なくとも1つずつ有している。また、加圧ローラ62においても、複数のクラウン部62aと複数の逆クラウン部62bは軸方向に交互に連続して配設されており、加圧ローラ62の外周面は、全体として軸方向に波打つように形成されている。なお、ここでいう「クラウン状」及び「逆クラウン状」は、上記と同様のことをいう。
【0027】
また、図4に示すように、加圧ローラ62の弾性層622及び離型層623は、それぞれ軸方向に均一な厚さに形成されている。一方、芯材621の厚さは軸方向に渡って変化するように形成されている。このように、軸方向に厚さが変化した芯材621に、均一な厚さの弾性層622及び離型層623を被覆させることによって、加圧ローラ62にクラウン部62aと逆クラウン部62bを構成している。
【0028】
なお、加圧ローラ62の外周面が波打った芯材621に、弾性層622を被覆する方法、及びその弾性層622に離型層623を被覆する方法としては、上記定着ローラ61において説明した方法と同様の方法を採用可能であるので説明を省略する。
【0029】
また、図3及び図4において、クラウン部61a,62a及び逆クラウン部61b,62bは、定着ローラ61及び加圧ローラ62の少なくとも記録媒体(記録用紙)の最大通過幅Wの全体に対応する部分に渡って配設されているが、クラウン部61a,62a及び逆クラウン部61b,62bを、記録媒体の最大通過幅Wの一部に対応する部分にのみ配設してもよい。
【0030】
図5は、実施形態1に係る定着ローラ61と加圧ローラ62を圧接させた状態の軸方向の断面図である。なお、この図において加圧ローラ62を定着ローラ61へ押圧する手段は図示していない。図5に示すように、定着ローラ61のクラウン部61aと加圧ローラ62の逆クラウン部62bを対応させると共に、定着ローラ61の逆クラウン部61bと加圧ローラ62のクラウン部62aを対応させて、定着ローラ61と加圧ローラ62を圧接させている。
【0031】
なお、定着ローラ61と加圧ローラ62が有するクラウン部61a,62a及び逆クラウン部61b,62bの個数は、それぞれ1つ以上であれば特に限定しない。ただし、定着ローラ61と加圧ローラ62を圧接させた状態で、全てのクラウン部61a,62aに対して全ての逆クラウン部61b,62bを対応させることができるように、それぞれの個数を合わせている。
【0032】
また、定着ローラ61と加圧ローラ62の対応させるクラウン部61a,62aと逆クラウン部61b,62bは、互いに一致する形状に形成されていることが好ましい。言い換えれば、定着ローラ61と加圧ローラ62に押圧力を付与しないで(無負荷状態で)互いに接触させた場合に、対応するクラウン部と逆クラウン部との間に隙間が生じないように構成することが好ましい。仮に、定着ローラ61と加圧ローラ62を無負荷状態で接触させた場合に、対応するクラウン部と逆クラウン部との間に隙間が生じていると、各ローラ61,62を圧接して負荷状態とした際に、軸方向に渡って定着ニップNに圧力ムラが生じ、画像ノイズの発生する虞があるからである。具体的には、定着ローラ61と加圧ローラ62の一方における外周面の軸方向断面がsin曲線形状(正弦曲線形状)となっている場合、他方の外周面の軸方向断面を前記sin曲線形状と同振幅・同周期長であるが逆位相のsin曲線形状(逆正弦曲線形状)に形成する。なお、上記隙間が生じない範囲は、少なくとも記録媒体の最大通過幅に渡っていればよい。また、各ローラ61,62をsin曲線形状以外の曲線形状に形成することも可能である。
【0033】
また、定着ローラ61と加圧ローラ62とを無負荷状態で互いのクラウン部と逆クラウン部を接触させて配設した状態において、軸方向の任意の位置におけるそれぞれの弾性層の厚みの和は、一定となるように設定することが望ましい。これら弾性層の厚みの和が一定でない場合は、各ローラ61,62の回転方向における圧力ピーク値が軸方向に渡って異なるため、定着ニップにおいて圧力ムラが生じ、画像ノイズの発生原因となるからである。
【0034】
図6は、定着ローラ61又は加圧ローラ62のクラウン部61a,62aと逆クラウン部61b,62bを拡大した図である。図6において、符号S1はクラウン部61a,62aの頂部Qにおける高さ(振幅)を示し、符号S2は逆クラウン部61b,62bの底部Uにおける高さ(振幅)を示す。また、同図における符号Hは、クラウン部61a,62aの頂部Qと逆クラウン部61b,62bの底部Uとの高低差を示している。
【0035】
本発明では、定着ローラ61と加圧ローラ62を互いに圧接させた負荷状態において、定着ニップNにおけるクラウン部と逆クラウン部の上記高低差Hは、0.16mm以上であって0.8mm以下に設定されることが望ましい。なお、高低差Hをこのように設定した方が望ましい理由については、下記の本発明の作用・効果の説明において詳しく述べる。
【0036】
上記負荷状態においては、各ローラ61,62の弾性層が圧縮されるため、各ローラ61,62を圧接させない無負荷状態に比べて、上記高低差は小さくなる。一般に、定着ローラ61と加圧ローラ62において、弾性層の圧縮率が20%を越えると弾性層に塑性変形が生じ、これが画像ノイズや異音の発生原因となるため、弾性層の圧縮率は通常20%以下となるように設定している。本発明の実施形態では、弾性層の圧縮率を20%と設定しているため、各ローラ61,62を圧接した状態での上記高低差Hは、無負荷状態での高低差Hの80%となる。従って、圧接しない無負荷状態における高低差Hは、圧接する負荷状態における高低差Hよりも大きく設定されている。具体的には、弾性層の圧縮率を20%に設定した本発明において、無負荷状態での高低差Hは負荷状態の高低差(0.16mm〜0.8mm)の1.25倍になるため、0.2mm以上であって1mm以下の範囲内で設定される。
【0037】
また、この実施形態では、定着ローラ61と加圧ローラ62における、クラウン部61a,62aの高さ(振幅)S1と、逆クラウン部61b,62bの高さ(振幅)S2は、同じ値に設定されているため、無負荷状態における各高さS1,S2は、上記無負荷状態における高低差H(0.2mm〜1mm)の2分の1の範囲内に設定される。従って、無負荷状態における各高さS1,S2は、それぞれ0.1mm以上であって0.5mm以下の範囲内で設定されている。
【0038】
また、図5に示すように、定着ローラ61と加圧ローラ62は、画像形成装置内に所定間隔をあけて配設された2つの側板71,72の間に、ボールベアリング等の複数の軸受73を介して回転可能に取り付けられている。また、各軸受73は側板71,72に対して固定されている。
【0039】
定着ローラ61の図の左端部に配設された軸受73は、定着ローラ61の外周に形成された段部74と抜け止め輪75によって挟まれて取り付けられている。すなわち、定着ローラ61の図の左端部は、軸方向に移動しないように位置決めされている。一方、定着ローラ61の図の右端部に配設された軸受73は、定着ローラ61に対して軸方向に移動可能に取り付けられている。従って、定着ローラ61の図の右端部は、軸方向に変位可能となっている。
【0040】
また、加圧ローラ62の図の左端部に配設された軸受73は、加圧ローラ62の外周に形成された段部76と抜け止め輪77によって挟まれて取り付けられている。すなわち、加圧ローラ62の図の左端部は、上記定着ローラ61と同様に、軸方向に移動しないように位置決めされている。一方、加圧ローラ62の図の右端部に配設された軸受73は、加圧ローラ62に対して軸方向に移動可能に取り付けられている。従って、加圧ローラ62の図の右端部も、上記定着ローラ61と同様に、軸方向に変位可能に構成されている。
【0041】
このように、定着ローラ61と加圧ローラ62は、それぞれの軸方向の同じ側の端部を、軸方向に位置決めし、その位置決めした端部と反対側の端部を軸方向に変位可能となるように構成されている。なお、位置決めする端部又は変位可能な端部は、定着ローラ61と加圧ローラ62の同じ側の端部であれば、どちらの端部であってもよい。
【0042】
(実施形態2)
図7に、本発明の実施形態2に係る定着ローラ61と加圧ローラ62を示す。図7に示すように、実施形態2に係る定着ローラ61及び加圧ローラ62は、実施形態1の定着ローラ61及び加圧ローラ62と異なり、それぞれの弾性層612,622の厚さを、軸方向に渡って変化させている。一方、定着ローラ61及び加圧ローラ62の芯材611,621及び離型層613,623は、それぞれ均一な厚さに形成されている。すなわち、実施形態2では、弾性層612,622の厚さを軸方向に渡って変化させることによって、定着ローラ61及び加圧ローラ62に、クラウン部61a,62aと逆クラウン部61b,62bを構成している。
【0043】
また、図7において、定着ローラ61及び加圧ローラ62の画像形成装置への取付構造は図示省略している。この実施形態2に係る各ローラ61,62の取付構造、及びその他の実施形態2に係る構成については、上記本発明の実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0044】
また、本発明の実施形態1及び実施形態2では、芯材611,621と弾性層612,622のいずれか一方の厚さを軸方向に渡って変化させるようにしているが、芯材611,621と弾性層612,622の両方の厚さを軸方向に渡って変化させて、定着ローラ61及び加圧ローラ62に、クラウン部61a,62aと逆クラウン部61b,62bを構成してもよい(図示省略)。
【0045】
(実施形態3)
図8に、本発明の実施形態3に係る定着ローラ61と加圧ローラ62を示す。実施形態3は、上記本発明の実施形態1及び実施形態2と異なり、定着ローラ61及び加圧ローラ62のそれぞれの外周面に、直線部61c,62cが形成されている。この場合、直線部61c,62cは、定着ローラ61のクラウン部61aと加圧ローラ62の逆クラウン部62bのそれぞれの一部に形成されている。詳しくは、定着ローラ61に形成された直線部61cは、クラウン部61aの頂部を構成するように配設され、加圧ローラ62に形成された直線部62cは、逆クラウン部62bの底部を構成するように配設されている。さらに、これら直線部61c,62cは、定着ローラ61又は加圧ローラ62の軸方向に対して平行を成すように配設されている。
【0046】
また、上記直線部61c,62cの配設位置や向き等は、図8に示す実施形態に限らず、様々な配設位置や向き等に設定することが可能である。例えば、図9に示すように、定着ローラ61と加圧ローラ62において、直線部61c,62cを、クラウン部61a,62aの曲線部と逆クラウン部61b,62bの曲線部との間に配設し、直線部61c,62cによってそれら曲線部同士を滑らかに連結するように構成してもよい。
【0047】
また、図8及び図9に示す実施形態においても、上記本発明の実施形態1又は実施形態2と同様に、芯材611,621及び弾性層612,622の少なくとも一方の厚さを軸方向に渡って変化させることによって、クラウン部61a,62a及び逆クラウン部61b,62bを構成することが可能である。
【0048】
また、図8及び図9に示す実施形態において、定着ローラ61及び加圧ローラ62の画像形成装置への取付構造は、図示省略している。この実施形態3に係る各ローラ61,62の取付構造、及びその他の構成については、上記本発明の実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0049】
(実施形態4)
図10に、本発明の実施形態4に係る定着ローラ61と加圧ローラ62を示す。実施形態4は、上記本発明の各実施形態と異なり、定着ローラ61は弾性層を有していない。すなわち、定着ローラ61は、円筒状に形成された金属製の芯材611と、その芯材611の外周面を被覆する離型層613によって構成されている。また、この場合、定着ローラ61の芯材611の外周面を軸方向に渡って湾曲させて、クラウン部61aと逆クラウン部61bを形成している。
【0050】
一方、加圧ローラ62は、定着ローラ61に圧接した際に定着ニップNを十分に確保するため弾性層622を有している。なお、図10に示す加圧ローラ62は、上記各実施形態と同様に、芯材621と弾性層622と離型層623とを有するローラによって構成されている。また、この場合、加圧ローラ62の芯材621の外周面を軸方向に渡って湾曲させて、クラウン部62aと逆クラウン部62bを形成している。なお、芯材621をストレートに形成し、弾性層622の厚さを軸方向に異ならせることによってもクラウン部62aと逆クラウン部62bを形成することは可能である。しかし、この場合、弾性層622の厚みが一定でないため、各ローラ61,62の回転方向における圧力ピーク値が軸方向に渡って異なり、定着ニップにおいて圧力ムラが生じ、画像ノイズの発生原因となる虞がある。そのため、図10に示すように、弾性層622の厚さを軸方向に渡って一定にすることが好ましい。
【0051】
また、図10において、定着ローラ61及び加圧ローラ62の画像形成装置への取付構造は図示省略している。この実施形態4に係る各ローラ61,62の取付構造、及びその他の実施形態4に係る構成については、上記本発明の実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0052】
(実施形態5)
図11に本発明の実施形態5に係る定着装置の構成を示す。図11に示す定着装置27は、定着ローラ61と、加圧ベルト65と、その加圧ベルト65の内周面を押圧して加圧ベルト65を定着ローラ61に圧接させる押圧部材66を備える。また、定着ローラ61と加圧ベルト65が互いに圧接された箇所には定着ニップNが形成されている。
【0053】
定着ローラ61は、図2において説明した本発明の実施形態1と同様に、円筒状に形成された金属製の芯材611と、その芯材611の外周面を被覆する弾性層612と、その弾性層612の外周面を被覆する離型層613を有する。また、定着ローラ61の内部には、ヒータランプ等の加熱源63が配設してあり、定着ローラ61の周囲には、定着ローラ61の表面温度を検知する温度検知装置64が配設してある。
【0054】
加圧ベルト65はポリイミドフィルム等から成る無端状のベルト部材によって構成されている。加圧ベルト65は、押圧部材66に張力を作用させない状態で掛け渡され、定着ローラ61に従動回転するように構成されている。押圧部材66は、シリコンゴム等によって構成された弾性層661と、その弾性層661を保持するホルダ662を有する。ホルダ662は、図示しないバネ等の付勢手段によって定着ローラ61側へ付勢されている。
【0055】
図12は、実施形態5に係る定着ローラ61と加圧ベルト65の軸方向の断面図である。図12に示すように、実施形態5に係る定着ローラ61は、本発明の実施形態1の定着ローラ61と同様に構成されている。従って、図12に示す定着ローラ61は、外周面がクラウン状に形成されたクラウン部61aと、外周面が逆クラウン状に形成された逆クラウン部61bを、それぞれ少なくとも1つずつ有している。また、実施形態5に係る定着ローラ61においても、芯材611及び弾性層612の少なくとも一方の厚さを軸方向に渡って変化させることにより、クラウン部61aと逆クラウン部61bを構成することが可能である。
【0056】
一方、押圧部材66は、加圧ベルト65を押圧する押圧面660に、凸状に形成した凸面部66aと、凹状に形成した凹面部66bを、それぞれ少なくとも1つずつ有している。この場合、押圧面660には、複数の凸面部66aと複数の凹面部66bが長手方向に交互に連続して配設されており、押圧面660は、全体として長手方向に波打つように形成されている。
【0057】
また、図12に示すように、押圧部材66は、ホルダ662の厚さを長手方向に変化させて、押圧部材66の押圧面660に凸面部66aと凹面部66bを構成している。これ以外に、弾性層661の厚さを長手方向に変化させて、あるいは、弾性層661とホルダ662の両方の厚さを長手方向に変化させて、凸面部66aと凹面部66bを構成することも可能である。
【0058】
また、図12において、凸面部66aと凹面部66bは、押圧部材66の少なくとも記録媒体の最大通過幅Wの全体に対応する部分に渡って配設されているが、凸面部66aと凹面部66bを、記録媒体の最大通過幅Wの一部に対応する部分にのみ配設してもよい。
【0059】
押圧部材66によって加圧ベルト65を定着ローラ61へ圧接させた状態で、定着ローラ61のクラウン部61aと押圧部材66の凹面部66bを対応させて配設すると共に、定着ローラ61の逆クラウン部61bと押圧部材66の凸面部66aを対応させて配設している。また、対応するクラウン部61aと凹面部66b、逆クラウン部61bと凸面部66aは、互いに一致する形状に形成されている。このように配設された定着ローラ61及び押圧部材66によって加圧ベルト65が挟まれることにより、その挟まれた箇所において、加圧ベルト65は波打つように形成される。ただし、加圧ベルト65が定着ローラ61と押圧部材66との挟持から解放された箇所においては、加圧ベルト65は平坦面状となっている。
【0060】
なお、定着ローラ61が有するクラウン部61a及び逆クラウン部61bの個数、押圧部材66が有する凸面部66a及び凹面部66bの個数は、それぞれ1つ以上であれば特に限定しない。ただし、押圧部材66によって加圧ベルト65を定着ローラ61へ圧接させた状態で、全てのクラウン部61a及び逆クラウン部61bに対して全ての凸面部66a及び凹面部66bを対応させることができるように、それぞれの個数を合わせている。
【0061】
また、本発明の実施形態5において、定着ローラ61のクラウン部61a及び逆クラウン部61b、押圧部材66の凸面部66a及び凹面部66bのそれぞれの形状は、sin曲線状や、図8又は図9に示すような一部に直線部を有する形状などに形成することが可能である。
【0062】
また、対応させるクラウン部61aと凹面部66b、及び対応させる逆クラウン部61bと凸面部66aは、互いに一致する形状に形成されていることが好ましい。言い換えれば、定着ローラ61と押圧部材66に押圧力を付与しないで(無負荷状態で)互いに接触させた場合に、対応するクラウン部と凹面部との間、対応する逆クラウン部と凸面部との間に隙間が生じないように構成することが好ましい。具体的には、定着ローラ61と押圧部材66の一方における外周面の軸方向断面(又は長手方向断面)がsin曲線形状(正弦曲線形状)となっている場合、他方の外周面の軸方向(又は長手方向断面)を前記sin曲線形状と同振幅・同周期長であるが逆位相のsin曲線形状(逆正弦曲線形状)に形成する。なお、上記隙間が生じない範囲は、少なくとも記録媒体の最大通過幅に渡っていればよい。
【0063】
また、この実施形態においても、定着ローラ61と押圧部材66とを無負荷状態で互いの凸と凹とを接触させて配設した状態において、軸方向の任意の位置におけるそれぞれの弾性層の厚みの和は、一定となるように設定することが望ましい。
【0064】
また、上記各実施形態と同様に、定着ローラ61と押圧部材66とを加圧ベルト65を介して互いに圧接させた負荷状態において、定着ニップNにおける凹凸の高低差は、0.16mm以上であって0.8mm以下に設定されることが望ましい。なお、上記実施形態と同様に、押圧部材66と定着ローラ21を圧接した負荷状態において弾性層の圧縮率を20%と設定している場合は、無負荷状態での高低差は負荷状態の高低差(0.16mm〜0.8mm)の1.25倍になるため、0.2mm以上であって1mm以下の範囲内で設定される。
【0065】
なお、図12において、定着ローラ61と押圧部材66の画像形成装置に対する取付構造は図示省略しているが、定着ローラ61と押圧部材66は、それぞれの同じ側の端部が軸方向又は長手方向に位置決めされ、それぞれの位置決めされた端部と反対側の端部が軸方向又は長手方向に変位可能に構成されている。
【0066】
以下、本発明の各実施形態の作用・効果を説明する。
本発明の実施形態1〜4に係る定着装置は、図2に示すように、定着ローラ61と加圧ローラ62を有する。この定着装置によって画像の定着を行う場合は、加熱源63を発熱させて、図示しない制御装置が温度検知装置46の検知温度に基づいて加熱源63の発熱量を制御し、定着ローラ61の表面温度が所定の温度となるようにする。そして、矢印X方向に回転する定着ローラ61と、矢印Y方向に回転する加圧ローラ62との間に、未定着のトナー画像Tが形成された記録用紙Pを矢印A方向に侵入させる。記録用紙Pを定着ローラ61と加圧ローラ62の間に侵入させることによって、定着ニップNにおいて記録用紙Pが加熱及び加圧され、記録用紙P上の未定着トナー画像Tが記録用紙Pに定着される。
【0067】
本発明の実施形態1〜4は、クラウン部と逆クラウン部を対応させて定着ローラ61と加圧ローラ62を圧接させているため、定着ニップNは波打つように湾曲して形成されている(図5、図7〜図10参照)。その湾曲した定着ニップNに記録用紙Pが侵入することによって、記録用紙Pは湾曲する。このように記録用紙Pを湾曲させることにより、記録用紙Pの見かけ上の剛性を向上させて定着ニップNから搬出することができる。これにより、本発明の定着装置は、記録用紙Pを定着ニップNから搬出する際に、記録用紙Pが定着ローラ61に巻き付くことを抑制することができ、記録用紙Pを良好に搬出することが可能となる。
【0068】
また、図11に示す本発明の実施形態5に係る定着装置によって画像の定着を行う場合は、上記と同様に、定着ローラ61を所定の表面温度となるように加熱する。そして、矢印X方向に回転する定着ローラ61と、矢印Y方向に従動回転する加圧ベルト65との間に、未定着のトナー画像Tが形成された記録用紙Pを矢印A方向に侵入させ、定着ニップNにおいて記録用紙Pを加熱及び加圧して、記録用紙P上の未定着トナー画像Tを記録用紙Pに定着させる。
【0069】
本発明の実施形態5では、定着ローラ61のクラウン部61aと押圧部材66の凹面部66bを対応させて配設すると共に、定着ローラ61の逆クラウン部61bと押圧部材66の凸面部66aを対応させて配設して、定着ローラ61と加圧ベルト65を互いに圧接させているため、定着ニップNは波打つように湾曲して形成される(図12参照)。従って、この場合も上記と同様に、記録用紙Pを定着ニップNに侵入させることによって、記録用紙Pを湾曲させることができ、記録用紙Pの見かけ上の剛性を向上させて定着ニップNから搬出することができる。これにより、記録用紙Pを定着ニップNから搬出させる際に、記録用紙Pが定着ローラ61に巻き付くことを抑制することができる。
【0070】
以上のように、本発明の構成によれば、従来と異なり定着ニップを湾曲させることにより、記録用紙の見かけ上の剛性を大きくして搬出することができ、記録用紙の分離性を向上させることが可能である。また、本発明者は、定着ニップの湾曲数と、定着ニップから搬出される記録用紙の見かけ上の剛性との関係を調べる試験をした。以下、その試験について詳しく説明する。
【0071】
試験に使用する定着装置として、クラウン部及び逆クラウン部を有する定着ローラと加圧ローラを備えた本発明の定着装置と、クラウン部及び逆クラウン部を有しない定着ローラと加圧ローラを備えた従来の定着装置を適用した。また、本発明の試験装置は、クラウン部と逆クラウン部をそれぞれ3個ずつ有するタイプと、それぞれ7個ずつ有するタイプの2タイプを用意し、本発明の各タイプの試験装置においてクラウン部及び逆クラウン部の無負荷状態での振幅(高さ)を0.2mmとした。また、試験に使用する全ての定着装置において、定着ローラの弾性層と加圧ローラの弾性層のそれぞれの厚さを1.7mmに設定した。そして、各定着装置において、坪量(単位面積当たりの重量)が64g/m2、69g/m2、90g/m2である各種用紙を搬出したときの各種用紙の見かけ上の剛性を測定した。
【0072】
前記各種用紙の見かけ上の剛性の測定方法について簡単に説明する。まず、図13に示すように、記録用紙Pを定着ローラ61と加圧ローラ62の間の定着ニップNを通過させ、記録用紙Pの前方の端部に変位測定装置70からのレーザ光Lが照射されたら記録用紙Pの搬送を停止する。停止した記録用紙Pの振動が無くなってから、撓んだ記録用紙Pに変位測定装置70からレーザ光Lを照射し、その記録用紙Pの変位を測定する。その後、記録用紙Pを所定距離だけ進行させて、再び記録用紙Pにレーザ光Lを照射し、その変位を測定する。そして、得られた記録用紙Pの変位から記録用紙Pの見かけ上の剛性を算出する。
【0073】
図14に、定着ニップの湾曲数と各種用紙の見かけ上の剛性との関係を示すグラフを図示する。図14において、縦軸は記録用紙の見かけ上の剛性を表し、横軸は定着ニップの湾曲数を表している。ここでは、定着ニップの湾曲数を、クラウン部と逆クラウン部の個数で表している。具体的には、クラウン部及び逆クラウン部が無い場合は定着ニップの湾曲数は0、クラウン部と逆クラウン部を3個ずつ有する場合は定着ニップの湾曲数は3と表している。また、同図において、▲でプロットしたのは坪量が90g/m2の記録用紙の測定値、■でプロットしたのは坪量が69g/m2の記録用紙の測定値、●でプロットしたのは坪量が64g/m2の記録用紙の測定値である。
【0074】
図14のグラフを見れば、定着ニップの湾曲が0である従来の定着装置を使用した場合に比べて、定着ニップの湾曲数が3又は7である本発明の定着装置を使用した場合は、各種用紙の見かけ上の剛性が大きくなっていることが分かる。さらに、定着ニップの湾曲数が3の場合より7の場合の方が記録用紙の見かけ上の剛性が大きいことから、定着ニップの湾曲数が多いほど各種用紙の見かけ上の剛性を大きくする効果があると推察される。なお、図14に示す試験結果は、本発明の一実施形態における記録用紙の見かけ上の剛性の向上効果を示すものであるが、それ以外の本発明の実施形態においても同様の効果を得られる。
【0075】
上述したように、クラウン部(又は凸面部)の頂部と、逆クラウン部(又は凹面部)の底部との高低差は、負荷状態において、0.16mm以上であって0.8mm以下となるように設定することが好ましい。この高低差を0.16mm以上とするのが好ましいのは、高低差が0.16mm未満となると、定着ニップにおいて記録用紙の湾曲量が少なくなり、記録用紙を良好に分離させるために必要な記録用紙の見かけ上の剛性が得られなくなるからである。また、高低差を0.8mm以下とするのが好ましいのは、高低差が0.8mmを越えると、クラウン部と逆クラウン部(又は凸面部と凹面部)における回転速度差が大きくなり記録用紙にシワが発生する虞があるからである。従って、クラウン部(又は凸面部)と逆クラウン部(又は凹面部)との高低差を上記の範囲に設定することによって、記録用紙の見かけ上の剛性を十分に確保して記録用紙の定着ローラへの巻き付きを確実に抑制することができると共に、記録用紙にシワが発生するのを抑制して良好な画像形成を行うことが可能となる。
【0076】
また、記録用紙にシワを発生させることなく、記録用紙の分離性を確保するには、定着ローラ61と加圧ローラ62のそれぞれのクラウン部と逆クラウン部を軸方向に連続して形成することが好ましい。クラウン部と逆クラウン部とが互いに離れた位置に配設した場合など、クラウン部と逆クラウン部を連続して形成していない場合は、記録用紙を搬送する際にシワが発生する虞がある。なお、同様の理由で、図11及び図12に示す加圧ベルトを用いた定着装置の実施形態においても、定着ローラ61のクラウン部と逆クラウン部を軸方向に連続して配設すると共に、押圧部材66の凸面部と凹面部を長手方向に連続して配設することが好ましい。
【0077】
また、定着ローラ及び加圧ローラが、クラウン部と逆クラウン部をいずれか1つのみ有する場合と、クラウン部と逆クラウン部をそれぞれ1つずつ有する場合において、記録用紙の分離性を比較する試験を行った。その結果を図15に示す。
【0078】
図15において、(A)はクラウン部と逆クラウン部をいずれか1つのみ有する場合の試験結果を示し、(B)はクラウン部と逆クラウン部をそれぞれ1つずつ有する場合の試験結果を示す。また、図15(A)(B)において、縦軸は記録用紙の見かけ上の剛性を表し、横軸は定着ローラと加圧ローラとを圧接した状態(負荷状態)の定着ニップにおけるクラウン部及び逆クラウン部の高低差を表している。また、同図の(A)(B)において、一点鎖線αは、記録用紙を定着ローラに対して良好に分離することができる場合とできない場合を分ける記録用紙の見かけ上の剛性の境界線を示し、一点鎖線βは、記録用紙にシワが発生する虞がある場合とその虞がない場合を分けるクラウン部と逆クラウン部の高低差の境界線を示す。詳しくは、記録用紙の見かけ上の剛性が境界線αより大きい場合、記録用紙は良好に分離することができ、反対に見かけ上の剛性が境界線αより小さい場合は、記録用紙を良好に分離することができない。また、クラウン部及び逆クラウン部の高低差が境界線βより大きい場合は、記録用紙にシワが発生し、反対に高低差が境界線βより小さい場合は、記録用紙にシワが発生しない。
【0079】
図15(A)に示すように、クラウン部と逆クラウン部をいずれか1つのみ有する場合は、記録用紙の見かけ上の剛性を境界線αより大きくして記録用紙を良好に分離するためには、上記高低差を約1.6mmより大きく設定しなければならず、記録用紙にシワが発生することが危惧される。これに対し、図15(B)に示すクラウン部と逆クラウン部をそれぞれ1つずつ有する場合は、図15(A)と同じ高低差の値であっても、記録用紙の見かけ上の剛性が大幅に向上していることが分かる。そのため、クラウン部と逆クラウン部をそれぞれ1つずつ有する場合は、図15(B)に示すように、記録用紙の見かけ上の剛性を境界線αより大きく設定しつつ、かつ、クラウン部と逆クラウン部の高低差を記録用紙にシワの発生しない約0.72mm〜約0.8mmの範囲内で設定することが可能となる。従って、クラウン部と逆クラウン部をそれぞれ1つずつ有する場合は、記録用紙の良好な分離性と、記録用紙にシワを発生させない良好な画像形成の両方を実現することができる。
【0080】
以上のように、クラウン部と逆クラウン部をそれぞれ1つずつ有する場合は、クラウン部と逆クラウン部をいずれか1つのみ有する場合に比べて、記録用紙の見かけ上の剛性を向上させる効果が著しく大きくなる。そのため、本発明は、定着ローラ及び加圧ローラが、クラウン部と逆クラウン部をそれぞれ少なくとも1つずつ有していることを特徴としている。また、上述したように、クラウン部と逆クラウン部の個数を増やすことにより、記録用紙の見かけ上の剛性を一層高めることができ、分離性をさらに向上させることが可能である。
【0081】
なお、図15に示す試験結果は、本発明の一実施形態における記録用紙の見かけ上の剛性の向上効果を示すものであるが、それ以外の本発明の実施形態においても同様の効果を奏することが可能である。
【0082】
ところで、既に開示されている特開2005−352297号公報、特公平7−104636号公報、特許3119405号公報、特許3267416号公報等に記載された定着ローラと加圧ローラは、一方がクラウン部又は逆クラウン部を有するローラで構成され、他方はストレート状のローラで構成されている。この場合、定着ローラと加圧ローラを圧接させると、ストレート状の面に、クラウン形状又は逆クラウン形状の曲面が圧接されるため、定着ニップにおいて接触圧の高い部分と低い部分が生じ、軸方向に渡って接触圧のばらつきが大きくなる。このように定着ニップにおいて接触圧のばらつきが大きいと、画像を定着する際、接触圧が大きい箇所を通過した画像部分は光沢度が高くなり、接触圧が小さい箇所を通過した画像部分は光沢度が低くなる傾向にあるため、画像の光沢度ムラが生じ良好な画像形成ができなくなる不具合が生じる。
【0083】
これに対し、本発明の実施形態1〜4に係る定着装置は、クラウン部と逆クラウン部を対応させて、定着ローラと加圧ローラを配設している。また、本発明の実施形態5に係る定着装置は、クラウン部と凹面部を対応させると共に逆クラウン部と凸面部を対応させて、定着ローラと押圧部材を配設している。このように、本発明は、クラウン部又は凸面部から成る凸形状と、逆クラウン部又は凹面部から成る凹形状を、対応させて定着ニップを形成しているため、定着ニップにおける接触圧のばらつきを抑制して、接触圧を均一にすることが可能である。これにより、画像の光沢度ムラを抑制して良好な画像形成を実現することが可能である。
【0084】
また、上述のように、定着ローラ61と加圧ローラ62を無負荷状態で互いに接触させた場合に、対応するクラウン部と逆クラウン部との間に隙間が生じないように構成することにより、各ローラ61,62を圧接して負荷状態とした際に、軸方向に渡って定着ニップに圧力ムラが生じるのを抑制することができる。これにより、画像ノイズの発生を抑制することができると共に、記録用紙の分離性を確保することが可能である。また、このことは、図11及び図12に記載の加圧ベルトを用いた定着装置の実施形態においても同様である。従って、この実施形態例においても、定着ローラ61と押圧部材66を無負荷状態で互いに接触させた場合に、対応するクラウン部と凹面部との間、対応する逆クラウン部と凸面部との間に隙間が生じないように構成することが好ましい。
【0085】
さらに、定着ローラ61と加圧ローラ62とを無負荷状態で互いのクラウン部と逆クラウン部を接触させて配設した状態において、軸方向の任意の位置におけるそれぞれの弾性層の厚みの和を、一定に設定することによって、各ローラ61,62の回転方向における圧力ピーク値を軸方向に渡って一定にすることが可能である。これによっても、定着ニップにおいて圧力ムラの発生を抑えることができ、画像ノイズの発生を抑制することが可能となる。なお、同様の理由で、加圧ベルトを用いた定着装置の実施形態においても、定着ローラ61と押圧部材66とを無負荷状態で互いの凸と凹を接触させて配設した状態で、軸方向の任意の位置におけるそれぞれの弾性層の厚みの和は、一定となるように設定することが好ましい。
【0086】
また、本発明の実施形態1〜4に係る定着装置において、定着ローラを定着温度まで上昇させると、定着ローラは熱膨張によって軸方向に伸長する。この定着ローラの伸長によって互いに対応して配設したクラウン部と逆クラウン部が位置ずれすると、定着ニップにおいて接触圧のばらつきが大きくなる虞がある。その虞を解消するため、本発明は、定着ローラと加圧ローラのそれぞれの同じ側の端部を軸方向に位置決めすると共に、それぞれの位置決めされた端部と反対側の端部を軸方向に変位可能に構成している(図5参照)。これにより、定着ローラに熱膨張による伸長が生じても、定着ローラと加圧ローラを軸方向の同じ端部側に伸長(変位)させて、クラウン部と逆クラウン部との間の位置ずれを抑制することができ、定着ニップにおける接触圧にばらつきが生じるのを抑制することが可能である。
【0087】
また、同様に、本発明の実施形態5に係る定着装置においても、定着ローラと押圧部材のそれぞれの同じ側の端部を位置決めすると共に、それと反対側の端部を変位可能に構成することによって、定着ローラの熱膨張による定着ニップの接触圧のばらつきを抑制することが可能である。
【0088】
(トナーの損失弾性率について)
本発明において使用されるトナーについて説明する。
本発明に係る定着装置を通過するとき、トナーは加熱され溶融するが、通過は数十〜数百msの短時間であるため、トナーは定着ローラ上と同じ温度まで加熱されることは無く、本発明に係る定着装置においては低い部分で100℃程度、高い部分で150℃程度であると考えられる。従って、100〜150℃の温度範囲において損失弾性率が大きく変化する場合は、通紙方向に沿って縞模様のように光沢差を生じるという、本発明に係る定着装置に特有の画像ノイズが目立ち、損失弾性率の変化が小さい場合にはこのような画像ノイズが抑えられる。具体的には、100℃における損失弾性率〔G’’(100)〕と150℃における損失弾性率〔G’’(150)〕との比(G’’(100)/G’’(150))の値が1〜20であれば、本発明に係る定着装置に特有の画像ノイズを抑えることができる。G’’(100)/G’’(150)は、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜16である。
さらに、定着後の画像は紙などにしっかりと固定されることが必要であり、そのためには、100℃における損失弾性率〔G’’(100)〕が80000Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは75000Pa・s以下、さらに好ましくは70000Pa・s以下である。80000Pa・sを超えると定着時にトナーが変形しにくく画像表面が平滑にならないため、光沢が著しく低くなり、印字品位が悪くなることがある。ここで、印字品位が悪くなるとは、記録用紙などへのトナーの含浸が不十分になり、また画像を形成するトナー同士の融着も不十分になるため、その結果定着強度が低く紙同士が擦れたり、印字部分の上からシャープペンシルなどの鋭利な筆記具で書き込んだときに印字部分が剥がれ落ち、印字信頼性を損なうことをいう。
【0089】
一方、定着時に紙などへトナーの含浸が進みすぎると、ベタ画像印字部に紙の地肌が現われ、画像濃度が低くなったり、紙の繊維が見えることによる濃度ムラとなったりして印字品位が低下するため、150℃における損失弾性率〔G’’(150)〕は2000Pa・s以上であることが好ましく、より好ましくは3000Pa・s以上、さらに好ましくは4000Pa・s以上である。
【0090】
(トナーの製造方法ついて)
上記のようなトナーを得るためには、つまり広い温度域に対してトナーの損失弾性率の変化が小さく、ある範囲の損失弾性率を有するためには、トナーを構成する結着樹脂に、架橋点間距離の長い架橋成分を十分に多く存在させることが必要になる。
トナー中に架橋構造を持たせる方法としては、トナー粒子を得る過程で結着樹脂中に架橋構造を形成するのがよく、具体的には、溶解懸濁法において、懸濁液的中で分岐構造を有する樹脂を伸長させていく方法(例えばエステル伸長法)、懸濁重合法において、架橋点間距離のある程度長い多官能モノマーやマクロモノマーを導入して架橋構造を形成する方法、乳化凝集法においても、架橋点間距離のある程度長い多官能モノマーやマクロモノマーを導入して架橋構造を形成する方法や、凝集させるのに多価のイオンを用い金属架橋を積極的に導入する方法、などが考えられる。
【0091】
(溶解懸濁法)
溶解懸濁法を用いてトナーを製造する方法としては、少なくとも、樹脂及び着色剤からなるトナー組成物を、有機溶媒に溶解又は分散させることにより得られる溶解液又は分散液を、分散剤の存在する水性溶媒中で、通常の撹拌機、ホモミキサー、ホモジナイザー等を用いて、所望の粒度分布を有するトナーが得られるように分散させた後、有機溶媒を除去することによりトナースラリーを得る方法が挙げられる。トナーは、公知の方法に従い、洗浄・濾過により回収し、乾燥させることにより単離することができる。
【0092】
<使用される樹脂について>
溶解懸濁法では、溶媒に溶解させることができる樹脂であれば製造上利用することができる。具体的には、従来よりトナーに用いられている樹脂が挙げられ、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリオール樹脂、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂などがある。定着性の観点から、ポリエステル樹脂が好適に用いられる。
また、本発明の範囲の粘弾性特性を有するトナーを得るためには、ポリエステル樹脂の末端にイソシアネート基を有するイソシアネート変性ポリエステル樹脂を用い、トナーの製造過程でイソシアネート基同士を反応させて伸長させてトナー中に適度な架橋構造を持たせることが好ましい。
【0093】
<イソシアネート変性ポリエステル>
イソシアネート変性ポリエステルとしては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させたものなどが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
【0094】
<ポリオール>
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)と3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独、または(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。
ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコール及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、及びこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。
3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0095】
<ポリカルボン酸>
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)と3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、(2−1)単独、または(2−1)と少量の(2−2)の混合物が好ましい。
ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸及び炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。
3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
【0096】
<ポリオールとポリカルボン酸の比>
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0097】
<ポリイソシアネート>
ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;及びこれら2種以上の併用が挙げられる。
【0098】
<イソシアネート基と水酸基の比>
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると残留するポリイソシアネート化合物がトナーの帯電性に悪影響を及ぼす。
【0099】
<伸長剤>
イソシアネート変性ポリエステルを伸長させるために、伸長剤としてアミン類(B)を用いてもよい。
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、及びB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4′ジアミノジフェニルメタン、テトラフルオロ−p−キシリレンジアミン、テトラフルオロ−p−フェニレンジアミンなど)、脂環式ジアミン(4,4′−ジアミノ−3,3′ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど)及び脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカフルオロヘキシレンジアミン、テトラコサフルオロドデシレンジアミンなど)などが挙げられる。
3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。
B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1及びB1と少量のB2の混合物である。
【0100】
<アミノ基とイソシアネート基の比率>
アミン類(B)の比率は、イソシアネート変性ポリエステル中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり、1/2未満では、イソシアネート変性ポリエステルの伸長反応が十分に進行せず、本発明の粘弾性特性が得られないおそれがある。
【0101】
<イソシアネート変性ポリエステルの併用に関して>
イソシアネート変性ポリエステルは、1種類のみ用いてもよいが、例えば1種類以上の直鎖上のイソシアネート変性ポリエステルと、1種類以上の分岐構造を有するイソシアネート変性ポリエステルを組み合わせて使用することにより、トナーの粘弾性設計を好ましく行うことができる。特にトナー中に架橋点間距離を広く取った架橋構造を均一に存在させるためには、分岐構造を有するイソシアネート変性ポリエステルは比較的低分子量に設計し、それとともに直鎖上のイソシアネート変性ポリエステルを併用するのが好ましい。イソシアネート変性ポリエステルの分子鎖を長く設計すると、トナーの熱特性が悪化することがあるからである。その原因としては、トナー製造過程の油相中において分子鎖がランダムコイル状に収縮し、局所的に架橋構造を形成するか、分子内でイソシアネート基が反応を完結してしまい、トナー全体にわたって架橋構造を持たせることができないためであると考えられる。
<未変性ポリエステル>
本発明においては、イソシアネート変性ポリエステルとともに、イソシアネート変性されていないポリエステル(未変性ポリエステル)を用いてもよい。未変性ポリエステルを用いることにより、トナーの粘弾性の設計がより行いやすくなる。未変性ポリエステルとしては、前述のポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられる。
【0102】
<有機溶媒>
有機溶媒は、容易に除去することを可能とするため、沸点が100℃未満であるものを用いることが好ましい。このような有機溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、単独又は2種以上を組合せて用いることができる。
水性溶媒は、水単独でもよいが、水と混和可能な溶媒を併用することもできる。混和可能な溶媒としては、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類等が挙げられる。トナー材料100質量部に対する水性溶媒の使用量は、通常、50〜2000質量部であり、100〜1000質量部が好ましい。水性溶媒の使用量が50質量部未満では、トナー材料の分散状態が悪くなるおそれがある。また、2000質量部を超えると経済的でない。
<無機分散剤>
無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ及びヒドロキシアパタイト等を用いることができる。
【0103】
(乳化凝集法)
乳化凝集法を用いてトナーを製造する方法としては、少なくとも樹脂微粒子を水系媒体中に分散してなる樹脂分散体を、着色剤の分散体、少なくともワックスを有するワックスの分散体等と凝集、融着させることによりトナースラリーを得る方法が挙げられる。トナーは、公知の方法に従い、洗浄・濾過により回収し、乾燥することにより単離することができる。
樹脂分散体中の樹脂微粒子に用いられる樹脂は、トナー用結着樹脂として公知のものが使用でき、具体的にはポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオール樹脂などが挙げられる。分散体としての樹脂の設計のしやすさという観点から、重合反応の制御が容易な乳化重合を行うことができるスチレン−アクリル樹脂が好ましい。
乳化重合による樹脂分散体を得る方法としては、少なくとも、モノマーを乳化剤を用いて水性溶媒中で乳化させ、重合開始剤を用いて重合すればよい。
【0104】
乳化重合で使用されるモノマーとしては、ビニル系モノマーを挙げることができる。ビニル系モノマーとしては、スチレン、p−メチルスチレン、p−スチレンスルホン酸、p−クロロスチレン、p−カルボキシスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン及びその誘導体、ビニルナフタレン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等の(メタ)アクリル酸及びそのエステル、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、イタコン酸及びそのエステル、各種ビニルエステル等が挙げられる。この中で反応形態上、水にある程度の溶解性を有するものが好ましい。さらに、後述の凝集過程において金属カチオンとのイオン架橋部位を形成させるためには、アニオン性官能基を有するモノマーを用いるのが好ましく、その具体例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、p−スチレンスルホン酸が挙げられる。
また、樹脂中に共有結合による架橋構造を形成させるためには、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート等の多官能モノマーを併用するとよく、架橋点間距離がある程度長い1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレートがこの中では好ましい。
【0105】
乳化剤としては、公知のものを用いることができ、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアニオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシプロピルアルキルエーテル、ゾルビタン脂肪酸エステル等のノニオン性乳化剤、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド等のカチオン性乳化剤、アルキルベタイン等の両性乳化剤等が挙げられる。中でも、アニオン性乳化剤が乳化安定性に優れるため好ましい。また、親水基及び重合可能な官能基の両方を有する反応性乳化剤を用いることにより、重合された分散体の分散状態を安定にすることもできる。
【0106】
重合開始剤としては、公知のものを用いることができ、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)及びその塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等の水溶性の重合開始剤、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、過酸化ラウロイル等の油溶性の重合開始剤等が挙げられる。
この中で、水溶性の重合開始剤、もしくは水溶性の重合開始剤と油溶性の重合開始剤の併用が好ましい。
【0107】
樹脂微粒子を水系媒体中に分散してなる樹脂分散体、着色剤の分散体、少なくともワックスを有するワックスの分散体等を凝集させる過程では、金属塩を凝集剤として用いる。この凝集過程で金属塩中の金属カチオンは樹脂微粒子のアニオン性官能基と塩を形成するが、多価の金属カチオンの金属塩を用いると金属カチオンは複数のアニオン性官能基と塩を形成して金属架橋点を形成することができ、本発明における好適な粘弾性特性のトナーを得ることができる。多価の金属カチオンの金属塩としては、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等の2価の金属塩、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化鉄等の3価の金属塩が挙げられる。この中で、3価の金属塩を用いるのが好ましい。
金属架橋点を多く導入する場合、トナーの強靭性が高まりすぎ、定着時に十分に溶融できず紙などへの定着強度が十分ではなくなる。その場合には、金属架橋構造をとりにくい樹脂を共存させることにより、定着時にはその樹脂が溶融、紙へ含浸してアンカリングすることにより定着機能も同時に持たせることが可能となる。金属架橋構造をとりにくい樹脂としては、具体的にはアニオン性官能基を有さない、もしくはアニオン性官能基の少ない樹脂などが挙げられる。アニオン性官能基は、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などに由来するカルボキシル基、p−スチレンスルホン酸塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのモノマーや過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの開始剤に由来するスルホニル基があるが、これらのモノマーや開始剤を使用しない、もしくは使用量を抑えることにより、金属架橋構造をとりにくい樹脂を得ることができる。
【0108】
(懸濁重合法)
懸濁重合法を用いてトナーを製造する方法としては、モノマー中に着色剤、重合開始剤、その他の添加剤を加え、ホモジナイザー、超音波分散機等を用いて均一に溶解又は分散させた溶解液又は分散液を、通常の撹拌機、ホモミキサー、ホモジナイザー等を用いて、分散安定剤を含有する水性溶媒中で分散させ、重合する方法が挙げられる。モノマーの液滴が所望のトナーの粒子径を有するように撹拌速度及び時間を調整し、造粒することが好ましい。その後は、分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、粒子が沈降しないように撹拌すればよい。重合温度は、通常、40℃以上であり、50〜90℃が好ましい。また、重合反応の後半に昇温してもよい。さらに、トナーを定着させる際の臭気の原因等となる未反応のモノマー、副生成物等を除去するために、重合反応の後半又は終了後に、水性溶媒を留去してもよい。重合反応の終了後に、生成したトナーは、洗浄・濾過により回収し、乾燥させる。
【0109】
懸濁重合法に用いられるモノマーとしては、乳化重合法と同様のものが挙げられるほか、懸濁重合では水相を経由するモノマーの移動は必要ないため、水溶性の低い、若しくは水溶性のないモノマーも使用できる。さらに、分子量の大きいモノマー、いわゆるマクロモノマーも使用可能である。
さらに、架橋構造を形成させるために用いる多官能モノマーも乳化重合法と同様のものが使用できるが、前述の理由と同じく分子量の大きい多官能モノマーも使用できる。より具体的には、末端残基として水酸基が残るようにモノマー比率を調整して重合したポリエステルに、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボン酸を有するビニルモノマーを反応させてできる、末端が(メタ)アクリロイル基のポリエステルを多官能ポリエステルとして使用してもよい。
【0110】
分散安定剤としては、無機化合物として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。有機化合物としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、デンプン等が挙げられる。これらは、水性溶媒に分散させて用いることができる。なお、分散安定剤は、モノマーに対して、0.2〜20質量%を添加することが好ましい。分散安定剤として、無機化合物を用いる場合、市販のものをそのまま用いてもよいが、細かい粒子を得るために、分散媒体中で無機化合物の微粒子を生成してもよい。例えば、リン酸三カルシウムの場合、高速撹拌下において、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合するとよい。
重合開始剤も乳化重合法と同様のものが使用できるが、好ましいものは油溶性の重合開始剤、もしくは油溶性の重合開始剤と水溶性の重合開始剤の併用である。
【実施例】
【0111】
(実施例1)
(イソシアネート変性ポリエステル1の合成)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682質量部(以下、「部」と記す)、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部及びジブチルスズオキシド2部を仕込み、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、1.3〜2.0kPa(10〜15mmHg)の減圧下で5時間反応させて、[中間体ポリエステル1]を合成した。
得られた[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量が2200、重量平均分子量が9700、ガラス転移温度が54℃、酸価が0.5mgKOH/g、水酸基価が52mgKOH/gであった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1]410部、イソホロンジイソシアネート89部、酢酸エチル500部を入れ100℃で5時間反応し、[イソシアネート変性ポリエステル1]を得た。
(イソシアネート変性ポリエステル2の合成)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物660部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物72部、テレフタル酸290部、無水トリメリット酸33部及びジブチルスズオキシド2部を仕込み、常圧下、230℃で9時間反応させた。次に、1.3〜2.0kPa(10〜15mmHg)の減圧下で、7時間反応させて、[中間体ポリエステル2]を合成した。
得られた[中間体ポリエステル2]は、数平均分子量が3800、重量平均分子量が15000、酸価が0.5mgKOH/g、水酸基価が51mgKOH/gであった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル2]410部、イソホロンジイソシアネート88部、酢酸エチル500部を入れ100℃で5時間反応させ、[イソシアネート変性ポリエステル2]を得た。
【0112】
(未変性ポリエステル1の合成)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物241部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物514部、テレフタル酸106部、イソフタル酸102部、アジピン酸46部及びジブチルスズオキシド2部を仕込み、常圧下、230℃で9時間反応させた。
次に、1.3〜2.3kPa(10〜18mmHg)の減圧下で6時間反応させた後、反応容器中に無水トリメリット酸41部を添加し、常圧下、180℃で2時間反応させて、[未変性ポリエステル1]を合成した。
得られた[未変性ポリエステル1]は、数平均分子量が2600、重量平均分子量が7100、酸価が22mgKOH/gであった。
(マスターバッチ1)
シアン顔料であるピグメントブルー15:3 40部、[未変性ポリエステル1]60部、水30部をヘンシェルミキサーにて混合し、顔料凝集体中に水が染み込んだ混合物を得た。これをロ−ル表面温度130℃に設定した2本ロールにより45分間混練を行い、パルベライザーで1mmの大きさに粉砕し、[マスターバッチ1]を得た。
【0113】
<顔料・WAX分散液(油相)の調製>
撹拌棒及び温度計をセットした容器に、[未変性ポリエステル1]504部、パラフィンワックス(融点74℃)55部、酢酸エチル920部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで、容器に[マスターバッチ1]326部、酢酸エチル100部を仕込み、1時間混合し[原料溶解液1]を得た。
[原料溶解液1]1800部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、顔料、ワックスの分散を行った。次いで、[未変性ポリエステル1]の60質量%酢酸エチル溶液1200部、酢酸エチル90部を加え、上記条件のビーズミルで1パスし、[顔料・WAX分散液1]を得た。[顔料・WAX分散液1]の固形分濃度(130℃、30分)が50質量%となるように酢酸エチルを加えて調整した。
<水相の調製>
イオン交換水970部、分散安定用の有機樹脂微粒子(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の25質量%水性分散液40部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%水溶液140部、酢酸エチル90部を混合撹拌し、[水相1]を得た。
【0114】
<乳化工程>
[顔料・WAX分散液1]975部、イソホロンジアミン7.5部をTKホモミキサー(特殊機化社製)で5,000rpmにて1分間混合した後、[イソシアネート変性ポリエステル1]231部、[イソシアネート変性ポリエステル2]58部を加えTKホモミキサー(特殊機化社製)で5,000rpmにて1分間混合した後、[水相1]1200部を加え、TKホモミキサーで、回転数8,000〜13,000rpmで調整しながら20分間混合し[乳化スラリー1]を得た。
<脱溶剤>
撹拌機及び温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃で8時間脱溶剤を行い、[分散スラリー1]を得た。
【0115】
<洗浄及び乾燥>
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、以下の操作を行った。
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキにイオン交換水900部を加え、超音波振動を付与してTKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μS/cm以下となるようにこの操作を繰り返した。
(3):(2)のリスラリー液のpHが4となるように10質量%塩酸を加え、そのままスリーワンモーターで攪拌30分後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μS/cm以下となるようにこの操作を繰り返し[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて42℃で48時間乾燥させ、目開き75μmメッシュで篩い、[トナー母体1]を得た。次いで、この母体トナー100部に疎水性シリカ0.8部と、疎水化酸化チタン0.2部をヘンシェルミキサーにて混合して、[トナー1]を得た。
リコー社製ipsio C220を用いて、A4縦通紙(リコー社製 タイプ6200Y目紙)で先端5mmに、[トナー1]による幅36mmのべた帯画像(付着量10g/m)を印字した未定着画像を作製し、先端6mmで切断して、先端に余白の無いベタ帯の未定着画像を得た。この未定着画像を、リコー社製ipsio C220の定着装置の定着ローラを図3に示すようなローラ(金属製の芯材611として内径29.0mm、クラウン部61aにおける厚みが1.7mm、逆クラウン部61bにおける厚みが1.4mm、クラウン部61aの周期が60mmのsin曲線で形成されるアルミニウム製の芯材、弾性層612として厚みが1.7mmのシリコーンゴム、離型層613としてPFAからなる)に、加圧ローラを図4に示すようなローラ(金属製の芯材621として内径29.0mm、クラウン部62aにおける厚みが1.7mm、逆クラウン部62bにおける厚みが1.4mm、クラウン部62aの周期が60mmのsin曲線で形成されるアルミニウム製の芯材、弾性層622として厚みが1.7mmのシリコーンゴム、離型層623としてPFAからなる)に取り替えた定着装置を用いて、定着装置の定着ローラの回転速度を6.8rad/s、定着ローラの表面温度が160±2℃の状態で通紙を行ったところ、定着ローラに巻き付くことなく定着することができた。
定着後の画像に帯状の顕著な光沢ムラノイズは見られなかった。また光沢も良好で落ち着いた良質な印字品位であった。
【0116】
(実施例2)
実施例1と同様にして[顔料・WAX分散液1]、[水相1]を調製した後、[顔料・WAX分散液1]975部、イソホロンジアミン7.5部をTKホモミキサー(特殊機化社製)で5,000rpmにて1分間混合した後、[イソシアネート変性ポリエステル1]173部[イソシアネート変性ポリエステル2]116部を加えTKホモミキサー(特殊機化社製)で5,000rpmにて1分間混合した後、[水相1]1200部を加え、TKホモミキサーで、回転数8,000〜13,000rpmで調整しながら20分間混合し[乳化スラリー2]を得た。
以下、実施例1と同様に脱溶剤、洗浄、乾燥、無機微粒子の混合を行い、[トナー2]を得た。
[トナー2]について実施例1と同様の評価を行ったところ、定着後の画像に帯状の光沢ムラノイズは実施例1よりもさらに目立たなくなった。光沢は若干低く感じられるが、印字品位としては特に問題なかった。
【0117】
(実施例3)
<顔料・WAX分散液(油相)の調製>
撹拌棒及び温度計をセットした容器に、[未変性ポリエステル1]540部、パラフィンワックス(融点74℃)49部、酢酸エチル920部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで容器に[マスターバッチ1]293部、酢酸エチル100部を仕込み、1時間混合し[原料溶解液3]を得た。
[原料溶解液3]1800部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、顔料、ワックスの分散を行った。次いで、[未変性ポリエステル1]の60質量%酢酸エチル溶液1200部、酢酸エチル90部を加え、上記条件のビーズミルで1パスし、[顔料・WAX分散液3]を得た。[顔料・WAX分散液3]の固形分濃度(130℃、30分)が50質量%となるように酢酸エチルを加えて調整した。
<水相の調製>
イオン交換水970部、分散安定用の有機樹脂微粒子(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の25質量%水性分散液40部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%水溶液140部、酢酸エチル90部を混合撹拌し、[水相1]を得た。
<乳化工程>
[顔料・WAX分散液3]975部、イソホロンジアミン7.5部をTKホモミキサー(特殊機化製)で5,000rpmにて1分間混合した後、[イソシアネート変性ポリエステル1]124部[イソシアネート変性ポリエステル2]31部を加えTKホモミキサー(特殊機化製)で5,000rpmにて1分間混合した後、[水相1]1200部を加え、TKホモミキサーで、回転数8,000〜13,000rpmで調整しながら20分間混合し[乳化スラリー3]を得た。
以下、実施例1と同様に脱溶剤、洗浄、乾燥、無機微粒子の混合を行い、[トナー3]を得た。
[トナー3]について実施例1と同様の評価を行ったところ、定着後の画像に帯状の光沢ムラノイズは若干見られるものの、通常使う文書としてならば許容されるレベルであった。光沢は適度に有しており、印字品位としては特に問題なかった。
【0118】
(実施例4)
<シアン着色剤分散液>
シアン顔料であるC.I.ピグメントブルー15:3 50部及びドデシル硫酸ナトリウム10部をイオン交換水200部にサンドグラインダーミルで分散させ、体積平均粒子径(D50)が170nmのシアン着色剤分散液を得た。
<ラテックスの調製>
(ラテックス1HMLの調製)
(1)核粒子の調製(第一段重合)
(単量体溶液1)
スチレン568.00部、n−ブチルアクリレート162.00部、メタクリル酸68.00部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート2.00部及びn−オクチルメルカプタン16.51部を混合して単量体溶液1を調製した。
(分散媒1)
ドデシル硫酸ナトリウム4.05部をイオン交換水2500.00部に溶解させて分散媒1を調製した。
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000m1のセパラブルフラスコに、上記分散媒1を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、フラスコ内の温度を80℃に昇温させ、活性剤溶液を調製した。
この活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム)9.62部をイオン交換水200部に溶解させた開始剤溶液を添加し、上記単量体溶液1を90分間かけて滴下し、この系を80℃にて2時間にわたり加熱し、撹拌することにより重合(第一段重合)を行い、ラテックスを調製した。これを[ラテックス(1H)]とする。[ラテックス(1H)]の重量平均粒径は68nmであった。
【0119】
(2)第二段重合
(単量体溶液2)
スチレン123.81部、n−ブチルアクリレート39.00部、メタクリル酸12.29部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート0.70部、n−オクチルメルカプタン0.72部、エステルワツクス(日本油脂社製 エレクトールWEP−2)5.0部及びパラフィンワックス(日本精鑞社製 HNP−9)10.0部を、撹拌装置を取り付けたフラスコ内に仕込み、80℃に加熱し溶解させて単量体溶液2を調製した。
(分散媒2)
構造式C1021(OCHCHOSONaで表される界面活性剤0.60部をイオン交換水2700.00部に溶解させて分散媒2を調製した。
上記分散媒2を98℃に加熱し、この分散媒に、核粒子の分散媒である前記[ラテックス(1H)]を固形分換算で32部添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミツクス(CLEARMIX)」(エム・テクニック社製)により、単量体溶液2を8時間かけて混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。
次いで、この分散液(乳化液)に、重合開始剤(過硫酸カリウム)6.12部をイオン交換水250部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を82℃にて12時間にわたり加熱撹拌することにより重合(第二段重合)を行い、ラテックスを得た。これを[ラテックス(1HM)]とする。
【0120】
(3)第三段重合
上記のようにして得られた[ラテックス(1HM)]に、82℃の温度条件下、スチレン355部、n―ブチルアクリレート95部、及び上記単量体の1.2モル%に相当する量のn−オクチルメルカプタンを加えて均一に撹拌した単量体溶液と、8質量%過酸化水素水溶液40部と8質量%アスコルビン酸水溶液40部を混合した開始剤水溶液とを、6時間かけて滴下した。滴下終了後、82℃において2時間にわたり加熱撹拌することにより重合(第三段重合)を行った後、28℃まで冷却しラテックスを得た。このラテックスを[ラテックス(1HML)]とする。
この第三段重合で重合される樹脂はアニオン性官能基を有さない単量体及び開始剤によって重合されている。
<トナー粒子の調製>
[ラテックス(1HML)]420.0部(固形分換算)、イオン交換水900部及び上記シアン着色剤分散液150部を、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を取り付けた反応容器(四つ口フラスコ)に仕込み、撹拌した。容器内の温度を30℃に調整した後、この溶液に5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8〜10.0に調整した。
次いで、硫酸アルミニウム9.0部をイオン交換水900部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に92℃まで昇温し、凝集粒子の生成を行った。その状態で、コールターカウンターTA−II(ベックマン・コールター社製)にて凝集粒子の粒径を測定し、個数平均粒径が6.1μmになった時点で、塩化ナトリウム80.4部をイオン交換水1000部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、さらに、熟成処理として液温度94℃にて加熱撹拌することにより、粒子の融着及び結晶性物質の相分離を継続させた(熟成工程)。その状態で、測定器FPIA−2000(シスメックス社製)にて融着粒子の形状を測定し、形状係数が0.960になった時点で30℃まで冷却し、撹拌を停止した。
生成した融着粒子を濾過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄を行い、その後、40℃の温風で乾燥させることにより、シアントナー粒子を得た。シアントナー粒子の個数平均粒径と形状係数を再度測定したところ、それぞれ6.0μm、0.962であった。
以下、実施例1と同様に脱溶剤、洗浄、乾燥、無機微粒子の混合を行い、[トナー4]を得た。
[トナー4]について実施例1と同様の評価を行ったところ、定着後の画像に帯状の顕著な光沢ムラノイズは見られなかった。また光沢も良好で落ち着いた良質な印字品位であった。
【0121】
(比較例1)
実施例3と同様にして[顔料・WAX分散液3]、[水相1]を調製した後、[顔料・WAX分散液3]977部、イソホロンジアミン7.5部をTKホモミキサー(特殊機化製)で5,000rpmにて1分間混合した後、[イソシアネート変性ポリエステル1]155部を加えTKホモミキサー(特殊機化製)で5,000rpmにて1分間混合した後、[水相1]1200部を加え、TKホモミキサーで、回転数8,000〜13,000rpmで調整しながら20分間混合し[乳化スラリー101]を得た。
以下、実施例1と同様に無機微粒子の混合を行い、[トナー101]を得た。
[トナー101]について実施例1と同様の評価を行ったところ、定着後の画像に顕著な帯状の光沢ムラノイズが発生した。
【0122】
(比較例2)
実施例1と同様にして[顔料・WAX分散液1]、[水相1]を調製した後、[顔料・WAX分散液1]975部、イソホロンジアミン7.5部をTKホモミキサー(特殊機化社製)で5,000rpmにて1分間混合した後、[イソシアネート変性ポリエステル1]115部[イソシアネート変性ポリエステル2]173部を加え、TKホモミキサー(特殊機化社製)で5,000rpmにて1分間混合した後、[水相1]1200部を加え、TKホモミキサーで、回転数8,000〜13,000rpmで調整しながら20分間混合し[乳化スラリー102]を得た。
以下、実施例1と同様に脱溶剤、洗浄、乾燥、無機微粒子の混合を行い、[トナー102]を得た。
[トナー102]について実施例1と同様の評価を行ったところ、定着後の画像に帯状の光沢ムラノイズ見られないものの光沢が非常に低く実使用上問題があるレベルであった。さらに、定着ローラに一部トナーが付着し画像欠損も見られた。また、定着後の画像を指で擦るとトナーが指につくなど、定着が不十分である傾向も見られた。
【0123】
実施例及び比較例で得られたトナーについて下記の方法により評価を行った。結果を表1に示す。
(1)損失弾性率〔G’’(100)〕及び損失弾性率〔G’’(150)〕
本発明におけるトナーの損失弾性率〔G''(100)〕及び損失弾性率〔G''(150)〕は通常の動的粘弾性測定により求められる。
粘弾性測定装置としては、回転平板型レオメーター(Anton Paa社製、Rheoplus)を用いた。測定試料としては、錠剤成型器で、トナーを直径1.0mm、厚さ2.5±0.3mmの円板状に加圧成型した試料を用いた。加圧成型条件は、温度:25℃、加圧:30MPa、時間:30secとした。
測定装置のパラレルプレートに試料を装着し、100℃に設定して、ペレットの厚み+0.1mmに測定位置を設定し、ノーマルフォースが徐々に下がるまで待ち、ノーマルフォースが一定になった後、温度を140℃に上昇させた。ペレットの厚みの値に測定位置を設定し、円板の形を整えた後、粘弾性の測定開始温度(50℃)まで冷却し、測定を行った。
測定条件は、上記粘弾性測定装置の自動測定モードにおいて、周波数を1Hz、初期歪みを0.1%とし、温度Tを50〜220℃の範囲で、毎分2℃の割合で昇温させつつ、100℃及び150℃のときの損失弾性率(〔G’’(100)〕及び〔G’’(150)〕)を測定した。
(2)光沢ノイズ
光沢ノイズは、定着後の画像における帯状の光沢ムラノイズについて、目視にて判断しランク付けを行った。
顕著な光沢ムラノイズが見られないものを○、若干光沢ムラノイズが見られるが、通常使用する文書としてならば許容できる程度であるものを△、顕著に光沢ムラノイズが見られ、通常使用する文書として明らかに問題があるようなものを×とした。
(3)光沢
光沢についても目視にて判断しランク付けを行った。
適度な光沢を有しているものを○、若干光沢が低くマットな感じを受けるが印字品位としては許容できるものを△、光沢が非常に低く実使用上問題があると感じられるものを×とした。
【0124】
【表1】

【0125】
以上説明したように、定着装置において、定着ローラのクラウン、逆クラウン部分を加圧部材の逆クラウン、クラウン部分と合わせることで、定着後の記録用紙を湾曲させて搬出させることでき、これにより定着分離性を高めることができ、さらにこの定着装置特有の画像ノイズを抑制できるトナーを使用することで、高品位の画像を形成することが可能となる。
本発明の画像形成方法は、定着装置において、前記定着ローラと前記加圧ローラとを無負荷状態で互いの前記クラウン部と前記逆クラウン部を接触させて配設した場合に、対応させて配設した前記クラウン部と前記逆クラウン部との間に隙間が生じないように構成することにより、対応するクラウン部と逆クラウン部との間に隙間が生じていると、定着ローラと加圧ローラを圧接して負荷状態とした際に、軸方向に渡って定着ニップに圧力ムラが生じ、画像ノイズの発生する虞がある。そこで、上記のように、定着ローラと加圧ローラを無負荷状態で互いに接触させた場合に、対応するクラウン部と逆クラウン部との間に隙間が生じないようにすることによって、画像ノイズの発生を抑制することができると共に、記録用紙の分離性を確保することが可能である。 本発明の画像形成方法は、定着装置において、クラウン部と逆クラウン部を軸方向に連続して形成することにより、記録媒体にシワの発生を抑制することができると共に、記録用紙の分離性を確保することができる。 本発明の画像形成方法は、定着装置において、定着ローラと加圧ローラを無負荷状態で接触させた場合に、各ローラの弾性層の厚みの和を一定にすることによって、定着ローラ及び加圧ローラの回転方向における圧力ピーク値を軸方向に渡って一定にすることができる。これにより、定着ニップにおける圧力ムラを抑制することができ、画像ノイズの発生を抑制することが可能である。 本発明の画像形成方法は、定着装置において、クラウン部及び逆クラウン部を、定着ローラ及び加圧ローラの少なくとも記録媒体の最大通過幅全体に対応する部分に渡って配設することにより、記録媒体を湾曲させて定着ニップから搬出することができ、記録媒体の定着ローラへの巻き付きを抑制することができる。 本発明の画像形成方法は、定着装置において、クラウン部及び逆クラウン部を、定着ローラ及び加圧ローラの記録媒体の最大通過幅の一部に対応する部分に配設することにより、記録媒体を湾曲させて定着ニップから搬出することができ、記録媒体の定着ローラへの巻き付きを抑制することができる。 本発明の画像形成方法は、定着装置において、クラウン部及び逆クラウン部の少なくとも一方に直線部を形成することが可能である。
【0126】
本発明の画像形成方法は、定着装置において、定着ローラと前記加圧ローラを互いに圧接させた負荷状態において、前記定着ニップにおける前記クラウン部の頂部と前記逆クラウン部の底部との高低差を、0.16mm以上であって0.8mm以下に設定したものであり、定着ローラと加圧ローラを互いに圧接させた上記負荷状態において、定着ニップにおけるクラウン部の頂部と逆クラウン部の底部との高低差が0.16mm未満となると、定着ニップにおいて記録媒体の湾曲量が少なくなり、記録媒体を良好に分離させるために必要な記録媒体の見かけ上の剛性が得られなくなる虞がある。そのため、クラウン部の頂部と逆クラウン部の底部との高低差を0.16mm以上に設定することによって、記録媒体の見かけ上の剛性を十分に確保し、記録媒体の定着ローラへの巻き付きを確実に抑制することができる。一方、上記負荷状態において、定着ニップにおけるクラウン部の頂部と逆クラウン部の底部との高低差が0.8mmを越えると、クラウン部と逆クラウン部における回転速度差が大きくなり記録媒体にシワが発生する虞がある。そのため、クラウン部の頂部と逆クラウン部の底部との高低差を0.8mm以下に設定することによって、記録媒体にシワを発生させずに搬出することができ、良好な画像形成を行うことができる。 本発明の画像形成方法は、定着装置において、芯材及び弾性層の少なくとも一方の厚さを軸方向に渡って変化させることにより、定着ローラと加圧ローラの外周面にクラウン部及び逆クラウン部を形成することが可能である。 本発明の画像形成方法は、定着装置において、前記定着ローラを、芯材の外周面に弾性層を有しないローラで構成すると共に、当該定着ローラの前記芯材の外周面を軸方向に渡って湾曲させることにより、上記のような定着ローラを適用した場合も、定着ニップを湾曲させることができるので、記録用紙の分離性を確保することが可能である。 本発明の画像形成方法は、定着装置において、前記加圧ローラは、芯材の外周面に弾性層を被覆して構成されたものであって、当該加圧ローラの前記芯材の外周面を軸方向に渡って湾曲させることにより、前記クラウン部と前記逆クラウン部を形成したものであり、上記弾性層を有する加圧ローラを上記弾性層を有さない定着ローラに圧接することによって、定着ニップを十分に形成することができる。これにより、画像ノイズの発生を抑制することができると共に、記録用紙の分離性を確保することが可能である。また、上記加圧ローラにおいて、芯材の外周面を湾曲させてクラウン部と逆クラウン部を形成することにより、弾性層の厚さを軸方向に渡って一定にすることが可能であるので、定着ローラ及び加圧ローラの回転方向における圧力ピーク値を軸方向に渡って一定にすることができる。これにより、定着ニップにおける圧力ムラを抑制することができ、画像ノイズの発生を抑制することが可能である。 本発明の画像形成方法は、定着装置において、前記定着ローラと前記加圧ローラのそれぞれの軸方向の同じ側の端部を、軸方向に位置決めすると共に、前記定着ローラと前記加圧ローラのそれぞれの前記位置決めされた端部と反対側の端部を軸方向に変位可能に構成成することにより、定着ローラに熱膨張による伸長が生じても、定着ローラと加圧ローラを軸方向の同じ端部側に伸長(変位)させることが可能となる。これにより、クラウン部と逆クラウン部との間の位置ずれを抑制することができ、定着ニップにおける接触圧にばらつきが生じるのを抑制できる。 本発明の画像形成方法は、定着装置において、定着ローラのクラウン部と押圧部材の凹面部を対応させて配設すると共に、定着ローラの逆クラウン部と押圧部材の凸面部を対応させて配設して、定着ローラと加圧ベルトを互いに圧接させているため、定着ニップは湾曲して形成される。この場合も、上記請求項1の発明と同様に、記録媒体を定着ニップに侵入させることによって、記録媒体を湾曲させることができ、記録媒体の見かけ上の剛性を向上させて定着ニップから搬出することができる。これにより、記録媒体を定着ニップから搬出させる際に、記録媒体が定着ローラに巻き付くことを抑制することができる。また、クラウン部と凹面部を対応させ、逆クラウン部と凸面部を対応させて、定着ローラと加圧ベルトを圧接させるため、請求項1の発明と同様に、定着ニップにおける接触圧のばらつきを抑制することが可能である。これにより、定着した画像に光沢度ムラが発生するなどの不具合を抑制することができ、良好な画像形成を実現することができる。
【符号の説明】
【0127】
27 定着装置
61 定着ローラ
61a クラウン部
61b 逆クラウン部
61c 直線部
62 加圧ローラ
62a クラウン部
62b 逆クラウン部
62c 直線部
63 加熱源
65 加圧ベルト
66 押圧部材
66a 凸面部
66b 凹面部
660 押圧面
611 芯材
612 弾性層
621 芯材
622 弾性層
H 高低差
N 定着ニップ
P 記録用紙
Q 頂部
U 底部
W 記録媒体の最大通過幅
【先行技術文献】
【特許文献】
【0128】
【特許文献1】特開2008−20821号公報
【特許文献2】特開2005−284089号公報
【特許文献3】特開2001−265146号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂と着色剤を含有するトナーを用いて形成されたトナー画像を接触加熱方式の定着装置を用いて記録媒体上に定着する工程を有する画像形成方法において、
前記トナーの100℃における損失弾性率〔G’’(100)〕と150℃における損失弾性率〔G’’(150)〕との比G’’(100)/G’’(150)の値が1〜20であり、
かつ100℃における損失弾性率〔G’’(100)〕が80000Pa・s未満であり、
前記定着装置が、
加熱源によって加熱される定着ローラと、当該定着ローラに圧接して配設された加圧ローラを備え、前記定着ローラと前記加圧ローラが互いに圧接して形成された定着ニップに記録媒体を通過させることにより、当該記録媒体上の未定着画像を記録媒体に定着させる定着装置であって、
前記定着ローラは、外周面がクラウン状に形成されたクラウン部と、外周面が逆クラウン状に形成された逆クラウン部を、それぞれ少なくとも1つずつ有し、
前記加圧ローラは、外周面がクラウン状に形成されたクラウン部と、外周面が逆クラウン状に形成された逆クラウン部を、それぞれ少なくとも1つずつ有し、
前記定着ローラの前記クラウン部と前記加圧ローラの前記逆クラウン部を対応させると共に、前記定着ローラの前記逆クラウン部と前記加圧ローラの前記クラウン部を対応させて、前記定着ローラと前記加圧ローラを互いに圧接させた定着装置である
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記定着ローラと前記加圧ローラとを無負荷状態で互いの前記クラウン部と前記逆クラウン部を接触させて配設した場合に、対応させて配設した前記クラウン部と前記逆クラウン部との間に隙間が生じないように構成した
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記定着ローラと前記加圧ローラのそれぞれの前記クラウン部と前記逆クラウン部を、軸方向に連続して形成した
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記定着ローラ及び前記加圧ローラは弾性層を有するものであって、前記定着ローラと前記加圧ローラとを無負荷状態で互いの前記クラウン部と前記逆クラウン部を接触させて配設した場合に、軸方向の任意の断面における前記定着ローラ及び前記加圧ローラの前記弾性層の厚みの和が一定となるように設定した
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記クラウン部及び前記逆クラウン部を、前記定着ローラ及び前記加圧ローラの少なくとも記録媒体の最大通過幅全体に対応する部分に渡って配設した
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記クラウン部及び前記逆クラウン部を、前記定着ローラ及び前記加圧ローラの記録媒体の最大通過幅の一部に対応する部分に配設した
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記定着ローラの前記クラウン部及び前記逆クラウン部の少なくとも一方と、前記加圧ローラの前記クラウン部及び前記逆クラウン部の少なくとも一方に、直線部を形成した
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記定着ローラと前記加圧ローラを互いに圧接させた負荷状態において、前記定着ニップにおける前記クラウン部の頂部と前記逆クラウン部の底部との高低差を、0.16mm以上であって0.8mm以下に設定した
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記定着ローラ及び前記加圧ローラは、金属製の芯材の外周面に弾性層を被覆して構成されたものであって、前記芯材及び前記弾性層の少なくとも一方の厚さを軸方向に渡って変化させて前記クラウン部及び逆クラウン部を形成した
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記定着ローラを、芯材の外周面に弾性層を有しないローラで構成すると共に、当該定着ローラの前記芯材の外周面を軸方向に渡って湾曲させることにより、前記クラウン部と前記逆クラウン部を形成した
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記加圧ローラは、芯材の外周面に弾性層を被覆して構成されたものであって、当該加圧ローラの前記芯材の外周面を軸方向に渡って湾曲させることにより、前記クラウン部と前記逆クラウン部を形成した
ことを特徴とする請求項10に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記定着ローラと前記加圧ローラのそれぞれの軸方向の同じ側の端部を、軸方向に位置決めすると共に、前記定着ローラと前記加圧ローラのそれぞれの前記位置決めされた端部と反対側の端部を軸方向に変位可能に構成した
ことを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項13】
少なくとも樹脂と着色剤を含有するトナーを用いて形成されたトナー画像を接触加熱方式の定着装置を用いて記録媒体上に定着する工程を有する画像形成方法において、
前記トナーの100℃における損失弾性率〔G’’(100)〕と150℃における損失弾性率〔G’’(150)〕との比G’’(100)/G’’(150)の値が1〜20であり、
かつ100℃における損失弾性率〔G’’(100)〕が80000Pa・s未満であり、
前記定着装置が、
加熱源によって加熱される定着ローラと、無端状の加圧ベルトと、当該加圧ベルトの内周面を押圧して加圧ベルトを前記定着ローラに圧接させる押圧部材を備え、前記定着ローラと前記加圧ベルトが互いに圧接して形成された定着ニップに記録媒体を通過させることにより、当該記録媒体上の未定着画像を記録媒体に定着させる定着装置であって、
前記定着ローラは、外周面がクラウン状に形成されたクラウン部と、外周面が逆クラウン状に形成された逆クラウン部を、それぞれ少なくとも1つずつ有し、
前記押圧部材の前記加圧ベルトを押圧する押圧面に、凸状に形成した凸面部と、凹状に形成した凹面部を、それぞれ少なくとも1つずつ有し、
前記定着ローラの前記クラウン部と前記押圧部材の前記凹面部を対応させて配設すると共に、前記定着ローラの前記逆クラウン部と前記押圧部材の前記凸面部を対応させて配設して、前記押圧部材によって前記加圧ベルトを押圧し、前記定着ローラと前記加圧ベルトを互いに圧接させた定着装置である
ことを特徴とする画像形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−256533(P2010−256533A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105123(P2009−105123)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】