説明

画像形成方法

【課題】普通紙や専用紙を用いて高速で画像形成する場合に、従来よりも優れた耐擦過性を有し、裏面へのインク抜けが抑制された画像が形成される画像形成方法を提供する。
【解決手段】顔料とピロリドン誘導体と下記構造式(I)で表される化合物と水とを含むインク組成物を、80m/min以上の搬送速度で搬送される記録媒体に付与し、画像を形成するインク付与工程を有している〔構造式(I)中、l、m、n:1以上の整数(l+m+n=3〜15)、AO:エチレンオキシ、プロピレンオキシ〕。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系のインク組成物を用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録技術の進歩により、写真やオフセット印刷の用途向けであった高精細画像を形成する方法として、インクジェット法を利用した画像形成技術が提案されており、当該インクジェット法には、高速で高品質な画像を形成可能であることが求められている。
【0003】
最近では、高速での画像形成に対する需要が益々増加する傾向がある。例えば、ロール紙を用いて高速で描画するシステムでは、描画後の耐擦性が重要となる。すなわち、画像の耐擦性が低い場合、描画後、短時間のうちに、描画後のロール紙が積み重ねられて、紙同士が接触して擦れた際に、画像にボケが生じてしまい、商品価値を失ってしまう場合がある。
【0004】
具体的には、描画された画像の耐擦性が悪いと、文字画像を描画したときには文字がぼやけたり、中抜け文字を描画したときには文字の判読ができない等の故障が発生し、またバーコードやQRコード(登録商標)画像を描画したときには、正常に読み込めなくなるといった故障が発生する場合がある。このような現象は、特に、紙表面にインクが保持されやすい用紙、例えば多孔質な受容層を持たないインクジェット専用紙などにおいて顕著に発生しやすい。
【0005】
一方、インク技術として、紙中へのインク浸透性を向上させる技術がある。この場合、インクが紙中に浸透しやすいため、画像の耐擦性自体は良化する一方で、光学濃度(OD)が低下し、紙中をインクが通過し裏面まで染み出てしまう現象(裏抜け)が顕著に現れる。そのため、単にインク浸透性を高めるのみでは、結果的に両面に描画できないという問題がある。また、レッド、グリーン、ブルーなどの多色で描画するときには、各色インクが紙中に拡がって混色し、二次色の色域が悪化するという問題もある。このような現象は、特に、紙中にインクが浸透しやすい用紙、例えば普通紙などにおいて顕著に発生しやすい。
【0006】
インクジェット方法に用いられるインクとしては、環境に配慮する等の点から、水系インクが注目されている。例えば、上記状況と関連する技術として、インクの吐出安定性や普通紙上で滲みが少ない等の印字品質などの観点から、グリセリンのエチレンオキシドやプロピレンオキシドの付加体を含有する水性のインクが開示されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−191135号公報
【特許文献2】特開2005−82613号公報
【特許文献3】国際公開第2001/048101号パンフレット
【特許文献4】特開平4−18465号公報
【特許文献5】特開2004−51779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の技術はいずれも、描画に際して生じやすいインクの吐出性能、画像の滲みなどを考慮したものであり、高速描画したときには、画像の耐擦性が不足する懸念がある。また、高速描画する記録系では、一般に紙中への浸透が速いインクが望まれるが、このようなインクでは、片面描画時の高速化は実現できても、上記のようなインクの裏抜け現象までは解消できず、両面描画するのが困難であるのが実情である。
【0009】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、普通紙やインクジェット専用紙など任意の記録媒体を用いて高速で画像形成する場合に、裏面へのインク抜けを抑制しながら、従来よりも優れた耐擦性(耐擦過性という場合もある。)を有する画像を形成する画像形成方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 顔料とピロリドン誘導体と下記構造式(I)で表される化合物と水とを含むインク組成物を、(副走査方向に)80m/min以上の搬送速度で搬送される記録媒体に付与するインク付与工程を有する画像形成方法である。インク組成物の付与により画像が形成される。
【0011】
【化1】

【0012】
前記構造式(I)において、l、m、及びnは、それぞれ独立に、1以上の整数で、かつ、l+m+n=3〜15を表す。AOは、エチレンオキシ及びプロピレンオキシの少なくとも一方を表す。
【0013】
<2> 前記構造式(I)で表される化合物(s)に対する前記ピロリドン誘導体(p)の含有比率(p/s;質量比)が、0.075以上4.0以下である前記<1>に記載の画像形成方法である。
<3> 前記ピロリドン誘導体が、2−ピロリドン及びN−メチル−2−ピロリドンの少なくとも一方である前記<1>又は前記<2>に記載の画像形成方法である。
<4> 前記構造式(I)中のAOが、プロピレンオキシである前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載の画像形成方法である。
<5> 前記顔料は、顔料表面の少なくとも一部が水溶性樹脂を架橋剤で架橋した架橋ポリマーで被覆された樹脂被覆顔料である前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載の画像形成方法である。
【0014】
<6> 前記水溶性樹脂は、分子内にカルボキシル基又はその塩を含み、前記架橋剤は、2官能以上のエポキシ化合物である前記<5>に記載の画像形成方法である。
<7> 前記構造式(I)で表される化合物の含有量が、前記インク組成物の全質量に対して、5.0〜40.0質量%である前記<1>〜前記<6>のいずれか1つに記載の画像形成方法である。
<8> 前記ピロリドン誘導体の含有量が、前記インク組成物の全質量に対して、3.0〜20.0質量%である前記<1>〜前記<7>のいずれか1つに記載の画像形成方法である。
<9> 前記インク組成物は、更に、樹脂粒子を含む前記<1>〜前記<8>のいずれか1つに記載の画像形成方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、普通紙やインクジェット専用紙など任意の記録媒体を用いて高速で画像形成する場合に、裏面へのインク抜けを抑制しながら、従来よりも優れた耐擦過性を有する画像を形成する画像形成方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の画像形成方法について詳細に説明する。
本発明の画像形成方法は、顔料と、ピロリドン誘導体と、以下に示す構造式(I)で表される化合物と、水とを含むインク組成物を、80m/min以上の搬送速度で搬送される記録媒体に付与するインク付与工程を設けて構成されている。本発明の画像形成方法は、必要に応じて、更に、形成された画像を加熱定着する等の他の工程が設けられていてもよい。
【0017】
本発明においては、吐出ヘッドからみて記録媒体の搬送速度が80m/min以上となる高速でインクジェット記録する場合、例えばロール紙を用いて高速に順次描画する場合等に、用いるインク組成物を、ピロリドン誘導体と特定構造を有するグリセリン系化合物とを用いて構成することで、画像を高速形成する際にはインクの紙中への浸透を抑える一方で、画像形成後は傷等の画像欠陥が生じにくい画像強度を保つ。これにより、80m/min以上で高速搬送される記録媒体に高速描画する場合に、インクが記録媒体の裏面まで染み出る裏抜け現象を防止しながら、インクジェット法で高速描画された従来のインク画像に比べ、耐擦性により優れ、画像中の傷等の画像欠陥の発生が防止された画像が得られる。
【0018】
以下、本発明の画像形成方法を構成するインク付与工程及び必要に応じて設けることができる他の工程について詳述する。
【0019】
−インク付与工程−
本発明におけるインク付与工程は、画像形成にあたり、顔料とピロリドン誘導体と下記構造式(I)で表される化合物と水とを含むインク組成物を、80m/min以上の搬送速度で搬送される記録媒体に付与する。
【0020】
本発明におけるインク付与工程では、搬送される記録媒体の搬送速度を80m/min以上とし、高速で多数枚の画像を形成する。一般に搬送速度が速い場合、着滴したインク組成物が迅速に記録媒体中に浸透するか若しくは画像が短時間である程度の強度を保持できないときには記録媒体同士が擦過して画像品質が低下しやすくなる。この現象は、搬送速度80m/min以上の範囲で特に生じやすい。
画像形成の高速化の観点からは、搬送速度はより速いことが好ましく、該搬送速度としては、100m/min以上がより好ましく、150m/min以上が更に好ましい。搬送速度の上限については、特に制限されるものではないが、記録媒体を安定に搬送する必要性の観点から、350m/minが望ましい。
【0021】
インクジェット法を利用した画像の形成は、エネルギーを供与することで所望の記録媒体にインク組成物を吐出することにより行なえる。なお、本発明の好ましい画像形成方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
インクジェット法には、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、電圧の印加により機械的歪を発生する圧電素子を利用してインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。
なお、インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0022】
本発明におけるインクジェット法としては、ピエゾインクジェット方式が好適である。本発明のインク組成物又はこれを含むインクセットとピエゾインクジェット方式とを組み合わせることで、インクの連続吐出性及び吐出安定性がより向上する。ピエゾインクジェット方式において、圧電素子の歪形態は、撓みモード、縦モード、シアモードのいずれでもよい。圧電素子の構成及びピエゾヘッドの構造は、特に制限なく公知の技術を採用できる。
【0023】
インクジェット法により記録を行なう際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明に適用可能なインクジェット法としては、搬送速度を上記のように80m/min以上に保てる限りは、短尺のシリアルヘッドを用いてヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式であってもよいが、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式を適用した態様が好ましい。ライン方式の場合、記録素子の配列方向(主走査方向)と直交する方向(以下、副走査方向と称する場合がある。)に記録媒体を走査させることで、記録媒体の全面に画像記録を行なうことができる。なお、本発明において、80m/min以上の搬送速度とは、記録媒体が80m/min以上の搬送速度で副走査方向に搬送されることを表す。すなわち、本発明の画像形成方法は、80m/min以上の搬送速度で副走査方向に搬送される記録媒体にインク組成物を付与するインク付与工程を有する。
【0024】
吐出するインク組成物の液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、0.5〜6pl(ピコリットル)が好ましく、1〜5plがより好ましく、更に好ましくは2〜4plである。
【0025】
次に、本発明におけるインク組成物の詳細について説明する。
(顔料)
本発明におけるインク組成物は、顔料の少なくとも一種を含有する。顔料は、目的に応じて適宜選択することができ、有機顔料又は無機顔料のいずれであってもよい。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。これら顔料の中では、水分散性顔料が好ましい。
【0026】
水分散性顔料の具体例として、下記(1)〜(4)の顔料を挙げることができる。
(1)カプセル化顔料、即ち、ポリマー微粒子に顔料を含有させてなるポリマー分散物であり、より詳しくは、親水性水不溶性の樹脂で顔料を被覆し、顔料表面の樹脂層にて親水化することで顔料を水に分散可能にしたもの
(2)自己分散顔料、即ち、表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性及び水溶性の少なくともいずれかを示す顔料、より詳しくは、主にカーボンブラックなどを表面酸化処理して親水化し、顔料単体が水に分散するようにしたもの
(3)樹脂分散顔料、即ち、重量平均分子量50,000以下の水溶性高分子化合物により分散された顔料
(4)界面活性剤分散顔料、即ち、界面活性剤により分散された顔料
【0027】
ここで、(1)カプセル化顔料について詳述する。
カプセル化顔料の樹脂は、限定されるものではないが、水と水溶性有機溶剤の混合溶媒中で自己分散能又は溶解能を有し、かつアニオン性基(酸性)を有する高分子化合物であるのが好ましい。この樹脂は、通常は数平均分子量が1,000〜100,000の範囲程度のものが好ましく、3,000〜50,000の範囲程度のものが特に好ましい。また、この樹脂は、有機溶剤に溶解して溶液となるものが好ましい。樹脂の数平均分子量が上記範囲内であると、顔料における被覆膜として又はインクとした際の塗膜としての機能を発揮することができる。樹脂は、アルカリ金属や有機アミンの塩の形で用いられるのが好ましい。
【0028】
カプセル化顔料の樹脂の具体例としては、熱可塑性、熱硬化性あるいは変性のアクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、不飽和ポリエステル系、フェノール系、シリコーン系、又はフッ素系の樹脂;塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、又はポリビニルブチラール等のポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、フタル酸樹脂等のポリエステル系樹脂;メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキド共縮合樹脂、ユリア樹脂、尿素樹脂等のアミノ系材料;あるいはそれらの共重合体又は混合物などのアニオン性基を有する材料などが挙げられる。
これら樹脂のうち、アニオン性のアクリル系樹脂は、例えば、アニオン性基を有するアクリルモノマー(以下、「アニオン性基含有アクリルモノマー」という。)及び必要に応じて該アニオン性基含有アクリルモノマーと共重合可能な他のモノマーを溶媒中で重合して得られる。アニオン性基含有アクリルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、及びホスホン基からなる群より選ばれる1個以上のアニオン性基を有するアクリルモノマーが挙げられ、中でもカルボキシル基を有するアクリルモノマーが特に好ましい。カルボキシル基を有するアクリルモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
【0029】
カプセル化顔料は、上記の成分を用いて、従来の物理的、化学的方法により製造することができる。例えば、特開平9−151342号、特開平10−140065号、特開平11−209672号、特開平11−172180号、特開平10−25440号、又は特開平11−43636号の各公報に記載の方法により製造することができる。具体的には、特開平9−151342号及び特開平10−140065号の各公報に記載の転相乳化法と酸析法等が挙げられ、中でも、分散安定性の点で転相乳化法が好ましい。転相乳化法については後述する。
【0030】
また、前記自己分散顔料も好ましい例の1つである。自己分散顔料とは、多数の親水性官能基及び/又はその塩(以下、「分散性付与基」という。)を、顔料表面に直接又はアルキル基、アルキルエーテル基、アリール基等を介して間接的に結合させたもので、顔料分散用の分散剤を用いずに水性媒体中に分散可能な顔料である。ここで、「分散剤を用いずに水性媒体中に分散」とは、顔料を分散させるための分散剤を用いなくても水性媒体中に分散可能なことをいう。
自己分散顔料を着色剤として含有するインクは、通常、顔料を分散させるために含有させる分散剤を含む必要がないため、分散剤に起因する消泡性の低下による発泡がほとんどなく、吐出安定性に優れるインクを調製しやすい。自己分散顔料の表面に結合される分散性付与基には、−COOH、−CO、−OH、−SOH、−PO及び第4級アンモニウム並びにそれらの塩が例示でき、分散性付与基は、顔料に物理的処理又は化学的処理を施して、分散性付与基又は分散性付与基を有する活性種を顔料表面に結合(グラフト)させることにより結合される。前記物理的処理としては、例えば、真空プラズマ処理等が例示できる。また、前記化学的処理としては、例えば、水中で酸化剤により顔料表面を酸化する湿式酸化法や、p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法、等が例示できる。
本発明においては、例えば、次亜ハロゲン酸及び/又は次亜ハロゲン酸塩による酸化処理、あるいはオゾンによる酸化処理により表面処理される自己分散顔料を好ましい例として挙げることができる。自己分散顔料として市販品を使用してもよく、具体的には、マイクロジェットCW−1(商品名;オリヱント化学工業(株)製)、CAB−O−JET200、CAB−O−JET300(商品名;キャボット社製)等が挙げられる。
【0031】
顔料としては、顔料分散剤のうち水不溶性樹脂を用い、顔料の表面の少なくとも一部が水不溶性樹脂で被覆されたカプセル化顔料、例えば水不溶性樹脂粒子に顔料が含有されているポリマーエマルジョンが好ましく、より詳しくは、水不溶性樹脂で顔料の少なくとも一部を被覆し、顔料表面に樹脂層を形成して水に分散させ得る水分散性顔料が好ましい。このような水不溶性樹脂で被覆されたカプセル化顔料を使用することが、顔料の凝集性の観点で好ましく、また高速記録する場合に高解像度な画像を形成できる点で好ましい。
【0032】
ここで、転相乳化法について説明する。
転相乳化法は、基本的には、自己分散能又は溶解能を有する樹脂と顔料との混合溶融物を水に分散させる自己分散(転相乳化)方法である。また、この混合溶融物には、上記の高分子化合物や硬化剤を含んでなるものであってもよい。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、溶解して混合した状態、又はこれら両者の状態のいずれの状態を含むものをいう。「転相乳化法」のより具体的な製造方法は、特開平10−140065号に記載の方法が挙げられる。
なお、上記の転相乳化法及び酸析法のより具体的な方法については、特開平9−151342号、特開平10−140065号の各公報に記載を参照することができる。
【0033】
〜顔料分散剤〜
顔料分散剤は、前記顔料を分散させた際の易分散化及び分散後の分散安定化を図ることができる。顔料分散剤としては、ノニオン性化合物、アニオン性化合物、カチオン性化合物、両性化合物等が挙げられる。例えば、α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの共重合体等が挙げられる。α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、酢酸ビニル、酢酸アリル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、クロトン酸エステル、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、芳香族基を置換してもよいアクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、芳香族基を置換してもよいメタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、並びに上記化合物の誘導体等が挙げられる。
【0034】
前記α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの単独もしくは複数を共重合して得られる共重合体を高分子分散剤として用いることができる。具体例として、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0035】
顔料分散剤は、重量平均分子量で2,000〜60,000のものが好ましい。
顔料分散剤の顔料に対する添加量としては、質量基準で顔料の10%以上100%以下の範囲が好ましく、顔料の20%以上70%以下がより好ましく、更に好ましくは顔料の40%以上50%以下である。
【0036】
また、本発明における顔料は、顔料表面の少なくとも一部が水溶性樹脂を架橋剤で架橋した架橋ポリマーで被覆された樹脂被覆顔料が好ましい。前記水溶性樹脂は、顔料を分散させる分散剤として作用する。顔料が架橋ポリマーで被覆されていることにより、顔料分散物、又は該顔料分散物を用いてインク組成物としたときに、優れた安定性(pH変動に対する安定性、温度変動に対する安定性)を付与することができる。
【0037】
前記水溶性樹脂としては、ポリビニル類、ポリウレタン類、ポリエステル類等が挙げられ、中でもポリビニル類が好ましい。
【0038】
水溶性樹脂は、分子内に架橋剤により架橋反応を起こす基を有している。このような基としては、特に限定されないが、カルボキシル基又はその塩、イソシアナート基、エポキシ基等が挙げられる。本発明においては、分散性向上の観点から、カルボキシル基又はその塩を有していることが好ましい。
【0039】
本発明で用いることができる水溶性樹脂は、共重合成分としてカルボキシル基含有モノマーを用いて得られる共重合体が好ましい。カルボキシル基含有モノマーとしては、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、中でも、架橋性及び分散安定性の観点から、メタクリル酸やβ−カルボキシエチルアクリレートが好ましい。
また、カルボキシル基含有モノマーのほか、任意に選択した親水性モノマー、疎水性モノマーを共重合成分として用いてもよい。親水性モノマーは、イオン性でもノニオン性でもよい。疎水性モノマーは、特に制限されないが、炭素数1〜20のアルキルメタクリレート又は炭素数1〜20のアルキルアクリレートが好ましい。
【0040】
水溶性樹脂は、ランダムポリマーでもブロック又はグラフトポリマーのいずれでもよい。
水溶性樹脂の酸価(水溶性樹脂1gを中和するに必要なKOHのmg数)は、顔料の分散性、分散安定性の観点から、135〜250mgKOH/gであることが好ましく、135〜200mgKOH/gであることがより好ましく、135〜180mgKOH/gが特に好ましい。
【0041】
水溶性樹脂としてのポリマーの合成法は特に限定されないが、ビニルモノマーのランダム重合が分散安定性の点で好ましい。
【0042】
架橋剤は、架橋反応を起こす部位を2つ以上有する化合物を用いることができ、中でもカルボキシル基との反応性に優れる点で、2官能以上のエポキシ化合物が好ましい。2官能以上のエポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられ、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルやジエチレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0043】
架橋剤の架橋部位と水溶性樹脂の被架橋部位のモル比としては、架橋反応速度、架橋後の分散液の安定性の観点から、1:1.1〜1:10が好ましく、1:1.1〜1:5がより好ましく、1:1.1〜1:3が最も好ましい。
【0044】
水溶性樹脂の顔料に対する量としては、10〜250質量%が好ましく、10〜200質量%がより好ましく、20〜150質量%がさらに好ましく、30〜100質量%が特に好ましい。
【0045】
顔料表面が水溶性樹脂を架橋剤で架橋した架橋ポリマーで被覆された樹脂被覆顔料は、顔料を水溶性樹脂を用いて分散した後に架橋剤により架橋する工程を経て得ることができる。好ましい調製方法の一例として、下記工程(1)〜(3)を経て行なう方法を示す。
(1)顔料及び水溶性樹脂を、水又は極性溶媒の水溶液中に分散して顔料分散液を得る分散工程
(2)前記(1)で得られた顔料分散液に架橋剤を加えて加熱し、架橋反応させて顔料表面を架橋されたポリマーで被覆する架橋工程
(3)架橋されたポリマーで被覆された樹脂被覆顔料を精製する工程
これら工程のほか、他の工程を必要に応じて適宜設けてもよい。前記工程(1)において、極性溶媒等は公知のものを適宜用いることができる。
【0046】
顔料は、1種単独で使用してもよく、上記した各群内もしくは各群間より複数種を選択して組み合わせて使用してもよい。
顔料のインク組成物中における含有量としては、色濃度、粒状性、インク安定性、吐出信頼性の観点から、インクの全質量に対して、0.1〜15質量%となる量が好ましく、0.5〜12質量%となる量がより好ましく、1〜10質量%となる量が特に好ましい。
【0047】
(ピロリドン誘導体)
本発明におけるインク組成物は、ピロリドン誘導体の少なくとも一種を含有する。後述する構造式(I)で表される化合物を含む組成に、さらにピロリドン誘導体が含有されることにより、インクの裏抜け現象を防ぎつつ画像の擦過耐性が向上し、高速で多数枚処理するような場合に画像に傷が付く等の擦過故障が防止される。
【0048】
本発明におけるピロリドン誘導体は、ラクタム構造を含む5員環を有する化合物であれば限定なく用いることができる。ラクタム構造とは、環の一部に−CO−NR−を含む構造であり、構造中のRは1価の基を表す。
【0049】
前記1価の基としては、水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基等が挙げられる。中でも、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
前記アルキル基、アリール基、及びアルケニル基は、置換基を有していても置換基を有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
【0050】
前記Rがアルキル基である場合、前記アルキル基の炭素数は1〜10であることが好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが特に好ましい。前記アルキル基は、直鎖構造であっても、分岐構造であっても、環状構造であってもよい。前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
前記アルキル基が置換基を有する場合の置換基としては、例えば、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数6〜14のアリール基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等)等が挙げられる。
【0051】
前記Rがアリール基である場合、前記アリール基の炭素数は6〜20であることが好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であることが特に好ましい。前記アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
前記アリール基が置換基を有する場合の置換基としては、例えば、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等)等が挙げられる。
【0052】
前記Rがアルケニル基である場合、前記アルケニル基の炭素数は2〜10であることが好ましく、2〜6であることがさらに好ましく、2〜4であることが特に好ましい。前記アルケニル基は、直鎖構造であっても、分岐構造であっても、環状構造であってもよい。前記アルケニル基の具体例としては、エテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、4−メチル−3−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、1−オクテニル基等が挙げられる。
前記アルケニル基が置換基を有する場合の置換基としては、例えば、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数6〜14のアリール基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等)等が挙げられる。
【0053】
前記ピロリドン誘導体としては、下記一般式(P−1)で表される化合物が好ましい。
【化2】

【0054】
前記一般式(P−1)において、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアルケニル基を表す。Rで表されるアルキル基、アリール基、アルケニル基は、前記「−CO−NR−を含む構造」中のRで表されるアルキル基、アリール基、アルケニル基と同義であり、各々の好ましい態様も同様である。
【0055】
前記Rは、水素原子又はアルキル基を表す。Rで表されるアルキル基は、炭素数は1〜10であることが好ましく、直鎖構造、分岐構造、環状構造のいずれであってもよい。アルキル基の具体例としては、前記「−CO−NR−を含む構造」中のRで表されるアルキル基と同様のものを例示することができる。
前記Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0056】
前記一般式(P−1)で表される化合物の中でも、特に、Rが水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Rが水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である態様が好ましく、R及びRがともに水素原子である態様が特に好ましい。
【0057】
本発明におけるピロリドン誘導体としては、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、N−フェニル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらの中でも、画像の耐擦性の向上の観点から、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンが好ましく、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンがより好ましく、2−ピロリドンが特に好ましい。
【0058】
本発明におけるピロリドン誘導体のインク組成物中における含有量としては、インク組成物の全質量に対して、3.0〜20.0質量%であることが好ましく、5〜16質量%であることがより好ましく、6〜15質量%であることが特に好ましい。
ピロリドン誘導体の含有量が3.0質量%以上であることで、画像の耐擦性をより向上させることができる。また、ピロリドン誘導体の含有量が20.0質量%以下であると、インク組成物の安定に保持するのに有利である。
【0059】
本発明においては、ピロリドン誘導体(p)の、後述する構造式(I)で表される化合物(s)に対する含有比率(p/s;質量比)としては、0.075以上4.0以下であることが好ましい。該含有比率p/sが0.075以上であることで、画像の耐擦性をより向上させることができる。また、含有比率p/sが4.0以下であると、記録媒体に付与されたインク組成物が裏面側に浸透して生じる裏抜け現象の防止効果が高く、またカール抑制に有利である。
前記含有比率p/sとしては、前記同様の理由から、0.09以上3.5以下の範囲がより好ましく、0.11以上3.2以下の範囲が特に好ましい。
【0060】
(構造式(I)で表される化合物)
本発明におけるインク組成物は、構造式(I)で表される化合物の少なくとも一種を含有する。構造式(I)で表される化合物は、下記構造で表されるグリセリンのアルキレンオキシド付加体である。この化合物をインク組成物に含有することによって、インクの記録媒体への浸透を、画像の擦過性を大きく損なわない程度に抑制することができる。
【0061】
【化3】

【0062】
構造式(I)において、l、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表し、かつl+m+n=3〜15を満たす。l+m+nの値は、3以上であるとカール抑制効果が良好であり、15以下であると良好な吐出性が保てる。中でも、l+m+nは3〜12の範囲が好ましく、3〜10の範囲がより好ましい。構造式(I)中のAOは、エチレンオキシ(EOと略記することがある)及び/又はプロピレンオキシ(POと略記することがある)を表し、中でも、プロピレンオキシ基が好ましい。(AO)、(AO)、及び(AO)の各AOは、それぞれ同一でも異なってもよい。
【0063】
以下、前記構造式(I)で表される化合物の例を示す。なお、括弧内の値はSP値である。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0064】
【化4】

【0065】
・nCO(AO)−H
(AO=EO又はPO(EO:PO=1:1)、SP値=20.1)
・nCO(AO)10−H
(AO=EO又はPO(EO:PO=1:1)、SP値=18.8)
・HO(A'O)40−H
(A'O=EO又はPO(EO:PO=1:3)、SP値=18.7)
・HO(A''O)55−H
(A''O=EO又はPO(EO:PO=5:6)、SP値=18.8)
・HO(PO)−H(SP値=24.7)
・HO(PO)−H(SP値=21.2)
・1,2−ヘキサンジオール(SP値=27.4)
なお、EO、POは各々、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基を表す。
【0066】
グリセリンのアルキレンオキシド付加物は、上市されている市販品を用いてもよい。例えば、ポリオキシプロピル化グリセリン(ポリプロピレングリコールとグリセリンとのエーテル)として、サンニックスGP−250(平均分子量250)、同GP−400(平均分子量400)、同GP−600(平均分子量600)〔以上、三洋化成工業(株)製〕、レオコンGP−250(平均分子量250),同GP−300(平均分子量300、同GP−400(平均分子量400)、同GP−700(平均分子量700)〔以上、ライオン(株)製〕、ポリプロピレントリオールグリコール・トリオール型(平均分子量300、平均分子量700)〔以上、和光純薬工業(株)製〕などが挙げられる。
【0067】
なお、SP値(溶解度パラメーター/単位:(cal/cm1/2)は、分子凝集エネルギーの平方根で表される値であり、R. F. Fedors, Polymer Engineering Science,14, p.147〜154 (1974)に記載の方法で算出されるものである。
【0068】
前記SP値は、27.5以下の範囲であることが好ましい。
また、インク組成物は、構造式(I)で表される化合物以外の他の水溶性有機溶剤を更に含んでもよい。この場合、インク組成物中に含まれる前記構造式(I)で表される化合物及び前記他の水溶性有機溶剤の総量の70質量%以上は、SP値が27.5以下であることが好ましい。SP値が27.5以下であることで、画像形成後の様々な環境湿度下でのカールの発生がより抑制される。また、後述する樹脂粒子を含むときには、樹脂粒子と相互作用して定着性が向上し、特に上記のようにSP値の比較的低い(≦27.5)成分が多いことで、画像の耐擦性をより向上させることができる。また、オフセットの抑制にも効果的である。
【0069】
前記構造式(I)で表される化合物の含有量としては、インク組成物の全質量に対して、5.0〜40.0質量%であることが好ましく、7.0〜35.0質量%であることがより好ましく、8.0〜30.0質量%であることが特に好ましい。
構造式(I)で表される化合物の含有量が5.0質量%以上であることで、インク組成物の記録媒体に対する浸透性を緩和し、インクの裏抜けがより防止される。
【0070】
前記他の水溶性有機溶剤としては、特開2009−190379号公報の段落番号[0036]〜[0039]に記載の水溶性有機溶剤を挙げることができ、これらより適宜選択して用いてもよい。
【0071】
(樹脂粒子)
本発明におけるインク組成物は、更に、樹脂粒子の少なくとも一種を含有することが好ましい。樹脂粒子を含有すると、画像形成後に熱処理する等により画像の耐擦性をより向上させることができる。
【0072】
樹脂粒子としては、親水性構成単位(親水性モノマー由来の繰り返し単位)と疎水性構成単位(疎水性モノマー由来の繰り返し単位)とを有する自己分散性樹脂粒子であることが好ましく、親水性構成単位と疎水性構成単位とを含み、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上である自己分散性樹脂粒子を含有することが、耐擦性をより高める点でさらに好ましい。Tgが80℃以上であることは、疎水的であることを示す。含有される樹脂粒子のTgが80℃以上であることで、インク組成物の記録媒体への定着性、耐擦過性が良化する。
【0073】
また、樹脂粒子のTgは、100℃〜300℃がより好ましく、130℃〜250℃が更に好ましく、160℃〜200℃が特に好ましい。樹脂粒子のガラス転移温度が300℃以下であると、記録画像の耐擦過性がより効果的に向上する。
【0074】
なお、Tgは、示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)を用いて通常の測定条件で測定された値である。但し、樹脂の分解等により測定が困難な場合には、下記の計算式で算出される計算Tgを適用する。計算Tgは、下記の式(1)で計算される。
1/Tg=Σ(X/Tg) ・・・(1)
ここで、計算対象となるポリマーはi=1からnまでのn種のモノマー成分が共重合しているとする。Xはi番目のモノマーの質量分率(ΣX=1)、Tgはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。但し、Σはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tg)は、Polymer Handbook(3rd Edition)(J. Brandrup, E. H. Immergut著(Wiley-Interscience、1989))の値を採用する。
【0075】
樹脂粒子としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素系樹脂等のラテックスなどを挙げることができる。中でも、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂の粒子が好ましい例として挙げられる。
【0076】
樹脂粒子の重量平均分子量は、インク組成物の安定性の観点から、1万以上20万以下が好ましく、より好ましくは10万以上20万以下である。
樹脂粒子の平均粒径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜200nmがより好ましく、20〜100nmが更に好ましく、20〜50nmが特に好ましい。
【0077】
樹脂粒子は、ラテックスなどの分散状態で用いることができる。
樹脂粒子を含有する場合、樹脂粒子のインク組成物中における量は、定着性、耐擦過性、インク組成物の粘度の観点から、インク組成物の全質量に対して、固形分で0.5〜20質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%が更に好ましい。
【0078】
(水)
本発明におけるインク組成物は、水を含有するものであるが、水の量には特に制限はない。中でも、水の量は、安定性及び吐出信頼性確保の点から、インク組成物の全質量に対して、好ましくは10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上80質量%以下であり、更に好ましくは、30質量%以上70質量%以下であり、40質量%以上60質量%以下であることが特に好ましい。
【0079】
水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、顔料分散液及びこれを用いたインク組成物を長期保存する場合に、カビやバクテリアの発生が防止される点で好適である。
【0080】
(その他成分)
本発明におけるインク組成物は、上記した成分のほか、更に他の成分として、必要に応じて、浸透溶剤、保湿剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、キレート化剤等の添加剤を含有することができる。これら添加剤の詳細については、特開2010−90266号公報の[0067]〜[0076]の記載を参照することができる。
【0081】
(記録媒体)
本発明の画像形成方法に用いられる記録媒体は、特に制限されるものではなく、普通紙、インクジェット専用紙のいずれであってもよい。
【0082】
−乾燥工程−
本発明の画像形成方法は、前記インク付与工程で付与されたインクを乾燥する乾燥工程が設けられてもよい。乾燥により、記録媒体上に付着されたインク組成物中に含有される液媒体、具体的には水、ピロリドン誘導体、他の水溶性有機溶剤が蒸発、飛散し、着色された樹脂皮膜が形成される。これにより、記録媒体上に傷や剥れ等の画像欠陥の少ない高画質な画像を高速に形成することができる。
【0083】
加熱乾燥は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行なえる。加熱方法としては、例えば、記録媒体のインク付与面と、その反対側とからヒータ等で熱を与える方法(具体的には、例えば、インク付与面には温風を与え、インク付与面の反対面はヒータードラムで加熱する方法)や、記録媒体のインク付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられる。加熱方法としては、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
【0084】
加熱乾燥時の温度としては、特に制限はなく、乾燥可能な温度領域を選択すればよい。例えば、送風により記録媒体の温度が40〜80℃になるように加熱する、あるいは50〜110℃の乾燥ドラムに接触させて記録媒体の温度が40〜80℃になるように乾燥させる形態でもよい。また、これらを併用して乾燥させてもよい。
【0085】
−冷却工程−
本発明の画像形成方法は、前記乾燥工程で一旦加熱して乾燥させた後、記録媒体を冷却する冷却工程を設けてもよい。
冷却方法としては、記録媒体の温度を積極的に下げることができる冷却工程であればいずれの方法であってもよい。冷却方法の例としては、冷却ゾーンに記録媒体を通過させる方法、冷風を記録媒体にあてる方法、冷却した物体に記録媒体を接触させる方法などが挙げられる。
【0086】
−加熱定着工程−
本発明の画像形成方法は、必要に応じて、前記インク付与工程の後に記録媒体上のインク組成物を加熱定着する加熱定着工程を更に設けてもよい。加熱定着工程は、インク組成物の付与により形成された画像を加熱し、記録媒体に定着させる。加熱定着処理により、記録媒体上の画像の定着が施され、画像の耐擦過性をより向上させることができる。
【0087】
加熱は、例えば画像中の樹脂粒子の最低造膜温度(MFT)以上の温度で行なうことが好ましい。MFT以上に加熱されることで、粒子が皮膜化して画像が強化される。加熱と共に加圧してもよい。加熱を加圧下で行なう場合、加圧時における圧力は、表面平滑化の点で、0.1〜3.0MPaの範囲が好ましい。
【0088】
加熱の方法は、特に制限されないが、ニクロム線ヒーター等の発熱体で加熱する方法、温風又は熱風を供給する方法、ハロゲンランプ、赤外線ランプ等で加熱する方法など、非接触で乾燥させる方法を好適に挙げることができる。また、加熱加圧の方法は、特に制限はないが、例えば、熱板を記録媒体の画像形成面に押圧する方法や、一対の加熱加圧ローラ、一対の加熱加圧ベルト、あるいは記録媒体の画像記録面側に配された加熱加圧ベルトとその反対側に配された保持ローラとを備えた加熱加圧装置を用い、対をなすローラ等を通過させる方法など、接触させて加熱定着を行なう方法が好適に挙げられる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0090】
−水溶性樹脂(分散剤)Pの合成−
イソプロパノール187.5部を窒素雰囲気下、80℃に加温した中に、メタクリル酸メチル478部とメタクリル酸172部と2−エチルヘキシルメタクリレート350部と2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)22.05部とを混合した混合液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に4時間、80℃に保った後に、25℃まで冷却した。溶媒を減圧除去することにより、平均重量分子量:約30,000、酸価:154mgKOH/gの水溶性樹脂(分散剤)Pの水溶液を得た。
【0091】
なお、本発明における他の水溶性樹脂についても、上記と同様に合成することが可能である。
【0092】
−未架橋の樹脂被覆顔料の分散物Nの調製−
上記で得られた水溶性樹脂P150部を水に溶解し、水酸化カリウム水溶液を用いて、中和した後のpHが10.1、水溶性樹脂濃度が30.6質量%となるように、水溶性樹脂の水溶液を調製した。
得られた水溶性樹脂の水溶液147部に対し、ピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製、フタロシアニンブルーA220)90部と水362部とを混合し、ビーズミル(0.1mmφのジルコニアビーズ)を用いて3時間分散し、顔料濃度15質量%の未架橋の樹脂被覆顔料の分散物Nを得た。
【0093】
−架橋された樹脂被覆顔料の分散物1の調製−
次に、上記のように得た未架橋の樹脂被覆顔料の分散物N70部に対し、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル0.35部を添加し、50℃にて6.5時間反応させた後、25℃に冷却した。このようにして、顔料濃度14.9質量%の、架橋された樹脂被覆顔料の分散物1を得た。
【0094】
[実施例1]
−試料101の調製−
上記で得られた「架橋された樹脂被覆顔料の分散物1」と下記成分とを下記量で混合した後、5μmメンブランフィルタで濾過し、試料101(インク組成物)を調製した。
<組成>
(1)架橋された樹脂被覆顔料の分散物1 ・・・27.0部
(2)グリセリンのアルキレンオキシド付加体〔前記構造式(I)で表される化合物(AO:プロピレンオキシ、l+m+n≒9)、SP値:21.7〕 ・・・18.0部
(3)2−ピロリドン(ISP(株)製)・・・8.0部
(4)オルフィン E1010(日信化学工業(株)製)・・・1.0部
(5)イオン交換水 ・・・残量(総量が100となる量)
【0095】
−試料102〜110の調製−
前記試料101の調製において、組成を下記表1に示すように変更したこと以外は、試料101と同様にして、試料102〜110(インク組成物)を調製した。
【0096】
−試料111の調製−
前記試料101の調製において、組成を下記表1に示すように変更したこと以外は、試料101と同様にして、比較用の試料111(インク組成物)を調製した。
【0097】
−試料112の調製−
前記試料101の調製において、組成を下記表1に示すように変更したこと以外は、試料101と同様にして、比較用の試料112(インク組成物)を調製した。
【0098】
−画像形成−
富士フイルムダイマティックス社製のダイマティクス・マテリアル・プリンターDMP−2831を用い、カートリッジに上記のように調製した各試料(インク組成物)を順次装填し、副走査方向への搬送速度100m/minで画像形成した。形成された画像に対して、以下の評価を行なった。
なお、カートリッジには10pl吐出用カートリッジ(DMC−11610)を用い、当該カートリッジに外部から液供給でき、また、搬送速度100m/minで描画できるようにプリンターを改造して画像形成を行なった。描画には、インクジェット専用紙として、三菱製紙社製のIJ−PDW70、日本製紙社製のNpiフォームNEXT−IJ 70を用い、また普通紙として、日本製紙社製のNpiフォーム55を用いた。
【0099】
−評価−
(1)耐擦性
インク塗設量が6g/mとなる量にて、「優、並、劣」の通常の文字と、「優、並、劣」の中抜き文字からなる画像とを、インクジェット専用紙であるIJ−PDW70(三菱製紙社製)、NpiフォームNEXT−IJ70(日本製紙社製)の各用紙に描画した。描画後1時間経過した後、経過後の記録媒体を、描画面を内側にして折り返し、これを0.09kg/cmの圧力で押し付けながら描画面同士を20回擦った。この操作を各用紙に対して各々10回実施し、5人の評価者により下記の評価基準にしたがって官能評価を行ない、5人の平均点を求めて評価指標とした。評価結果は、下記表1に示す。
<評価基準>
5:通常の文字及び中抜け文字のいずれにも画像のボケや滲みがなく、良好な画像品質が得られた。
4:通常の文字及び中抜け文字ともに画像のボケや滲みが僅かに発生していたが、画像品質上許容できる程度であった。
3:通常の文字及び中抜け文字ともに画像のボケや滲みが時折発生していたが、文字の判別が可能で実用上許容できる品質であった。
2:通常の文字及び中抜け文字ともに画像のボケや滲みが発生しており、特に滲みの影響で中抜け文字の判別が不可能である等、実用上支障を来たす品質であった。
1:通常の文字及び中抜け文字ともに画像のボケや滲みが発生しており、通常の文字及び中抜け文字ともに滲みの影響で判別が不可能である等、実用上支障を来たす品質であった。
【0100】
(2)カール特性
帳票分野で実際に使用されるデータ画像を想定し、ベタ画像と文字画像とを含む画像を、インクジェット用のフォーム用紙であるNpiフォームNEXT−IJ70と普通紙であるNpiフォーム55(日本製紙社製)の各用紙に描画した。描画後、254×127mmに裁断し、温度25℃、湿度55%RHの条件下で24時間放置した後、5人の評価者によりカール挙動を下記の評価基準にしたがって官能評価し、5人の平均点を求めて評価指標とした。評価結果は、下記表1に示す。
<評価基準>
5:カールをほとんど認識できないレベルであり、支障なく使用できる状態であった。
4:カールを僅かに認識できるレベルであり、支障なく使用できる状態であった。
3:カールを認識できるレベルであるが、実用上許容できる範囲であった。
2:カールを認識できるレベルであり、実用上支障をきたす品質であった。
1:カールをはっきりと認識できるレベルであり、実用上支障をきたす品質であった。
【0101】
(3)裏抜け
普通紙であるNpiフォーム55(日本製紙社製)に、濃度が1.0となるようにベタ画像を形成した。この画像を裏面から目視観察し、5人の評価者により下記の評価基準にしたがって評価を行ない、5人の平均点を求めて評価指標とした。評価結果は、下記表1に示す。なお。濃度は、反射型カラー分光濃度計(X−rite社製、X−rite530)を用いて測定した。
<評価基準>
5:裏面においてベタ画像部分と白地部分との境界が完全に認識できないレベルであり、両面描画を支障なく行なえる状態であった。
4:裏面においてベタ画像部分と白地部分との境界がほとんど認識できないレベルであり、両面描画を支障なく行なえる状態であった。
3:裏面においてベタ画像部分と白地部分との境界が認識できるレベルであるが、両面描画しても実用上許容できる範囲であった。
2:裏面においてベタ画像部分の所々で顔料が裏面まで浸透しており、両面描画に供した場合に支障を来たす品質であった。
1:裏面においてベタ画像部分の大部分で顔料が裏面まで浸透しており、両面描画に不適であり、実用上支障を来たす品質であった。
【0102】
【表1】

【0103】
[実施例2]
実施例1において、試料101の組成中の2−ピロリドンを下記表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、試料201〜205を作製した。
【0104】
【表2】

【0105】
前記表2中の各試料について、実施例1と同様に耐擦性、カール特性、裏抜けを評価したところ、試料201〜205でも実施例1の試料101と同様の耐擦性、カール特性、裏抜けの改善効果が認められた。試料101を含めた対比では、試料201〜205に比べて僅かに試料101が優れていた。
【0106】
[実施例3]
実施例1において、試料101の組成中の架橋顔料(架橋された樹脂被覆顔料の分散物1)を、未架橋の樹脂被覆顔料の分散物Nに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、試料301を作製した。
得られた試料301について、実施例1と同様に耐擦性、カール特性、裏抜けを評価した。その結果、試料301においても、実施例1の試料101と同様の耐擦性、カール特性、裏抜けの改善効果が認められた。試料101を含めた対比では、インク組成物としての分散安定性の観点から、試料101が優れていた。
【0107】
〜分散安定性〜
なお、分散安定性は、作製した試料101等のインク組成物を60℃の恒温槽中に14日間保存し、保存終了後の粒子径、粘度を測定し、保存前後での粒子径変化、粘度変化の幅が少ないものほど良好であるとして評価した。粒子径については、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用い、粘度については、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて、25℃の条件下で測定した。特に、粘度の測定結果を下記表3に示す。
【0108】
【表3】

【0109】
[実施例4]
実施例1において、試料101の組成中にさらに下記のラテックスPL−01を加え、下記組成とし、各成分を混合後、5μmメンブランフィルタで濾過して試料401を作製した。
<組成>
(1)前記架橋された樹脂被覆顔料の分散物1 ・・・27.0部
(2)グリセリンのアルキレンオキシド付加体〔前記構造式(I)で表される化合物(AO:プロピレンオキシ、l+m+n≒9)〕 ・・・18部
(3)2−ピロリドン(ISP(株)製) ・・・8.0部
(4)下記ラテックスPL−01 ・・・20.0部
(5)オルフィン E1010(日信化学工業(株)製) ・・・1.0部
(6)イオン交換水 ・・・残量(総量が100となる量)
【0110】
〜ラテックスの調製〜
水120gに、ラテムルASK((株)花王製、カルボン酸塩系乳化剤)19.8g、5mol/L水酸化ナトリウム水溶液6g、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.3gを加え、均一に溶解させた。これを70℃に加熱して窒素気流下、スチレン25.9gとブチルアクリレート26.3gとアクリル酸5.1gとのモノマー混合物を2時間かけて添加した。その後、70℃で2時間、80℃で3時間加熱した。室温に冷却後、pHが9前後になるように、攪拌しながら1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加え、ラテックスPL−01を調製した。
得られたラテックス中の樹脂粒子の体積平均粒子径は、115nmであった。また、ラテックスPL−01の固形分は、33質量%であった。
【0111】
得られた試料401について、実施例1と同様に耐擦性、カール特性、裏抜けを評価した。その結果、試料401においても、実施例1の試料101と同様の耐擦性、カール特性、裏抜けの改善効果が認められた。
【0112】
なお、試料401では、記録媒体上に付与した後に加熱を行なった場合、さらに耐擦性の向上が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料とピロリドン誘導体と下記構造式(I)で表される化合物と水とを含むインク組成物を、80m/min以上の搬送速度で搬送される記録媒体に付与するインク付与工程を有する画像形成方法。
【化1】


〔式中、l、m、及びnは、それぞれ独立に、1以上の整数で、かつ、l+m+n=3〜15を表す。AOは、エチレンオキシ及びプロピレンオキシの少なくとも一方を表す。〕
【請求項2】
前記構造式(I)で表される化合物(s)に対する前記ピロリドン誘導体(p)の含有比率(p/s;質量比)が、0.075以上4.0以下である請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記ピロリドン誘導体が、2−ピロリドン及びN−メチル−2−ピロリドンの少なくとも一方である請求項1又は請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記構造式(I)中のAOが、プロピレンオキシである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記顔料は、顔料表面の少なくとも一部が水溶性樹脂を架橋剤で架橋した架橋ポリマーで被覆された樹脂被覆顔料である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記水溶性樹脂は、分子内にカルボキシル基又はその塩を含み、前記架橋剤は、2官能以上のエポキシ化合物である請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記構造式(I)で表される化合物の含有量が、前記インク組成物の全質量に対して、5.0〜40.0質量%である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記ピロリドン誘導体の含有量が、前記インク組成物の全質量に対して、3.0〜20.0質量%である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記インク組成物は、更に、樹脂粒子を含む請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の画像形成方法。

【公開番号】特開2013−18282(P2013−18282A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−111767(P2012−111767)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】