説明

画像形成材料及び色素含有組成物、並びにそれらの製造方法

【課題】不可視性の優れた画像が形成される画像形成材料を提供する。
【解決手段】ペリミジン基を2個有するペリミジン系スクアリリウム色素を含有し、吸収スペクトルにおいて吸収波長が768nm以上798nm以下である範囲に吸収ピークを有する前記ペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が、前記ペリミジン系スクアリリウム色素全体に対して1モル%未満である、画像形成材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成材料及び色素含有組成物、並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の視覚条件では視認性がない不可視的な情報を文書等に記録する方法として、例えば、シリコンによる受光素子(CCD等)では検出されるが人間の目では判別できない750nm以上1000nm以下の近赤外領域に吸収を有する画像形成材料を使用する方法が挙げられる。
そして、その750nm以上1000nm以下の近赤外領域に吸収を有する画像形成材料としては、例えば、ナフタロシアニン色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素などを用いた画像形成材料が挙げられる(例えば、下記特許文献1から7を参照)。
【特許文献1】特開平09−090547号公報
【特許文献2】特開平09−119867号公報
【特許文献3】特表平09−509503号公報
【特許文献4】特開2000−207512号公報
【特許文献5】特開2001−294785号公報
【特許文献6】特開2002−278023号公報
【特許文献7】特開2009−209297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、下記範囲の吸収波長に吸収ピークを有するペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が下記範囲から外れる場合に比較して、視認されにくい画像が形成される画像形成材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち、請求項1に係る発明は、
下記式(1)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有し、
吸収スペクトルにおいて吸収波長が768nm以上798nm以下である範囲に吸収ピークを有する前記ペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が、前記ペリミジン系スクアリリウム色素全体に対して1モル%未満である、画像形成材料である。
【0005】
【化1】



【0006】
請求項2に係る発明は、
25℃における誘電率が16(単位:Fm−1)以下であるアルコールを含む溶媒を用いて下記式(2)で表されるペリミジン中間体と下記式(3)で表されるスクアリン酸とを反応させて得られた前記式(1)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する画像形成材料である。
【0007】
【化2】



【0008】
【化3】



【0009】
請求項3に係る発明は、
電子写真用トナー、インクジェットプリンター用インク、又は活版、オフセット、フレキソ、グラビア若しくはシルク印刷用のインクである、請求項1又は請求項2に記載の画像形成材料である。
【0010】
請求項4に係る発明は、
25℃における誘電率が16(単位:Fm−1)以下であるアルコールを含む溶媒を用い、前記式(2)で表されるペリミジン中間体と前記式(3)で表されるスクアリン酸とを反応させて、前記式(1)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を合成する合成工程を有する、画像形成材料の製造方法である。
【0011】
請求項5に係る発明は、
前記式(1)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有し、
吸収スペクトルにおいて吸収波長が768nm以上798nm以下である範囲に吸収ピークを有する前記ペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が、前記ペリミジン系スクアリリウム色素全体に対して1モル%未満である、色素含有組成物である。
【0012】
請求項6に係る発明は、
25℃における誘電率が16(単位:Fm−1)以下であるアルコールを含む溶媒を用いて前記式(2)で表されるペリミジン中間体と前記式(3)で表されるスクアリン酸とを反応させて得られた前記式(1)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する色素含有組成物である。
【0013】
請求項7に係る発明は、
25℃における誘電率が16(単位:Fm−1)以下であるアルコールを含む溶媒を用い、前記式(2)で表されるペリミジン中間体と前記式(3)で表されるスクアリン酸とを反応させて、前記式(1)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を合成する合成工程を有する、色素含有組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、上記範囲の吸収波長に吸収ピークを有するペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が上記範囲から外れる場合に比較して、視認されにくい画像が形成される。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、上記範囲から外れる誘電率を有するアルコールを含む溶媒を用いてペリミジン系スクアリリウム色素を得た場合に比較して、視認されにくい画像が形成される。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、電子写真用トナー、インクジェットプリンター用インク、又は活版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷若しくはシルク印刷用のインクの各用途において、視認されにくい画像が形成される。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、視認されにくい画像が形成される画像形成材料が得られる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、上記範囲の吸収波長に吸収ピークを有するペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が上記範囲から外れる場合に比較して、視認されにくい画像が形成される。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、上記範囲から外れる誘電率を有するアルコールを含む溶媒を用いてペリミジン系スクアリリウム色素を得た場合に比較して、視認されにくい画像が形成される。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、視認されにくい画像が形成される色素含有組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ペリミジン系スクアリリウム色素を逆相系高速液体クロマトグラフィー法により分析した結果を示すグラフである。
【図2】図1のピークA(保持時間11.956分のピーク)を示すペリミジン系スクアリリウム色素の吸収スペクトルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[画像形成材料]
本実施形態に係る画像形成材料は、下記式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素(以下、「ペリミジン系スクアリリウム色素」と称する場合がある)を含有する。
【0023】
【化4】




【0024】
また、本実施形態に係る画像形成材料は、吸収スペクトルにおいて吸収波長が768nm以上798nm以下である範囲(以下、「特定波長」と称する場合がある)に吸収ピークを有する前記ペリミジン系スクアリリウム色素(以下「特定波長吸収ペリミジン系スクアリリウム色素」と称する場合がある)の含有量が、ペリミジン系スクアリリウム色素全体に対して1モル%未満である。
すなわち、ペリミジン系スクアリリウム色素には複数の異性体が存在し、それらの異性体のうち、上記特定波長に吸収ピークを有する異性体の含有量が1モル%未満である。
【0025】
ここで、上記ペリミジン系スクアリリウム色素の異性体を説明するために、ペリミジン系スクアリリウム色素を高速液体クロマトグラフィー法(以下、「HPLC」と称する場合がある)により分析した結果を図1に示す。なお、図1に示すグラフの横軸は保持時間(分)である。また図1に示すグラフの縦軸は検出強度であり、具体的には検出波長254nmにおける吸光度(mAbs)である。
【0026】
図1に示すグラフから分かるように、前記ペリミジン系スクアリリウム色素をHPLCにより分析すると、ペリミジン系スクアリリウム色素に由来するピークが複数表れる。
その複数のピークは、具体的には、保持時間が12±1分に現れるピーク(以下、「ピークA」と称する場合がある)、保持時間が42±1分に現れるピーク(以下、「ピークB」と称する場合がある)、保持時間が46±2分に現れるピーク(以下、「ピークC」と称する場合がある)、保持時間が50±2分に現れるピーク(以下、「ピークD」と称する場合がある)、及び保持時間が57±2分に現れるピーク(以下、「ピークE」と称する場合がある)によって構成されている。なお、上記保持時間は、小数点第1位を四捨五入して得られた値である。
【0027】
上記複数のピーク(すなわち上記ピークAからピークE)を示す化合物は、上記式(1)で表される化合物の異性体であると考えられる。すなわち、上記式(1)で表される化合物には、少なくとも5種類の異性体が存在すると考えられる。
そして上記複数のピークのうち、ピークAを示すペリミジン系スクアリリウム色素の吸収スペクトルを図2に示す。図2に示すように、ピークAを示すペリミジン系スクアリリウム色素は、788nm付近(すなわち上記特定波長)に吸収ピークを有する。そして、ピークBからピークEを示すペリミジン系スクアリリウム色素はいずれも、上記特定波長には吸収ピークを有さず、吸収波長800nm以上において吸収ピークを有する。
【0028】
すなわち本実施形態においては、上記HPLCによる分析において、ピークAからピークEにおけるピーク面積の合計に対し、ピークAにおけるピーク面積が1%未満(すなわち、ピークAが検出されないか、又は検出された場合においてもピーク面積が1%未満)である。
そして本実施形態の画像形成材料では、上記のように特定波長吸収ペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が上記範囲であることにより、視認されにくい画像(すなわち、不可視性の優れた画像)が形成される。
【0029】
本実施形態の画像形成材料を用いると視認されにくい画像が形成される理由は定かではないが、以下のように推測される。
ペリミジン系スクアリリウム色素は400nm以上750nm以下の可視光波長領域における吸光度が低く、かつ、750nm以上1000nm以下の近赤外光波長領域における吸光度が高いという性質を有する。そのため、ペリミジン系スクアリリウム色素を含む画像形成材料を用いて不可視情報を形成すると、情報の不可視性と不可視情報の読み取りやすさとが両立される。
【0030】
しかしペリミジン系スクアリリウム色素の異性体の1つである上記特定波長吸収ペリミジン系スクアリリウム色素は、上記特定波長に吸収ピークを有している。そのため、その他の異性体(上記特定波長に吸収ピークを有さないペリミジン系スクアリリウム色素)と比較すると、相対的に上記可視光波長領域における吸光度は高くなる。すなわち、特定波長吸収ペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が上記範囲であれば、相対的に可視光波長領域における吸光度が高い異性体の含有量が少ないため、ペリミジン系スクアリリウム色素全体における可視光波長領域の吸光度も低くなる。よって、そのようなペリミジン系スクアリリウム色素を用いた本実施形態の画像形成材料では、より視認されにくい画像が形成されると考えられる。
なお、本明細書において、「不可視」とは、可視光において、目視により認識されにくい(即ち、理想的には不可視である)ことを意味する。
【0031】
ここで、上記HPLCによる分析方法は以下の通りである。
まず、ペリミジン系スクアリリウム色素をTHFに溶解させ、1×10−4mol/L以下のTHF溶液を調整する。なお溶媒のTHFとしては、例えばHPLC用THFが用いられる。また上記THF溶液の調整においては、ペリミジン系スクアリリウム色素が溶解するように、例えばTHF溶液に超音波を30分照射してもよい。
【0032】
分析装置としては、例えば、高速液体クロマトグラフィー装置(HPLC装置、製造元:島津製作所、型番:LC−10A)が用いられる。
HPLC用カラムとしてはオクタデシルシリルカラム(ODSカラム)が用いられ、具体的には、例えば製造元:株式会社ケムコ、商品名:CHEMCOSORB、品番:5−ODS−H、内径:4.6mm、長さ:150mmのものが挙げられる。ここで、オクタデシルシリルカラムとは、オクタデシルシリル基で表面が修飾された化学結合型多孔性球状シリカゲルが固定相として充填されているカラムである。
また測定条件としては、例えば、カラム温度:45℃、測定サンプルの注入量:10μl、測定サンプルの流量:1ml/min、検出波長:254nm、移動相:アセトニトリルと水との混合溶液(体積比は、アセトニトリル:水=8:2)の条件が挙げられる。
【0033】
また、上記吸収スペクトルの測定方法は、以下の通りである。具体的には、上記高速液体クロマトグラフィー装置(HPLC装置、製造元:島津製作所、型番:LC−10A)に接続されたダイオードアレイ検出器(島津製作所製、型番:SPD−M10AV)を用い、室温(25℃)の条件において、HPLCで分離されたそれぞれの異性体における吸収スペクトルの測定を行う。
【0034】
本実施形態においては、上記の通りペリミジン系スクアリリウム色素全体に対する特定波長吸収ペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が1モル%未満であり、0.1モル%以下であることが好ましく、上記HPLC分析における検出限界量(すなわち0.01モル%)以下であることがより好ましい。すなわち上記HPLCによる分析において、ピークAからピークEにおけるピーク面積の合計に対し、ピークAにおけるピーク面積が1%未満であり、0.1%以下が好ましく、ピークAが検出されないことがより好ましい。
【0035】
本実施形態の画像形成材料では、ペリミジン系スクアリリウム色素が粒子として含有されることが好ましい。画像形成材料中にペリミジン系スクアリリウム色素が粒子として含有される場合、粒子の体積平均粒径としては、例えば、10nm以上300nm以下の範囲が挙げられ、20nm以上200nm以下の範囲が好ましく挙げられる。
【0036】
<その他の成分>
本実施形態の画像形成材料は、後述するようにペリミジン系スクアリリウム色素以外の成分を更に含有してもよいが、画像形成材料全体に対するペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が0.05重量%以上3重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上2重量%以下がより好ましい。
【0037】
本実施形態における画像形成材料の用途は特に制限されないが、例えば、電子写真用トナー、インクジェットプリンター用インク、又は活版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、若しくはシルク印刷用のインクなどの用途が挙げられる。
【0038】
本実施形態の画像形成材料が電子写真用トナーである場合、画像形成材料を1成分現像剤として単独で用いてもよいし、キャリアと組み合わせた2成分現像剤として用いてもよい。キャリアとしては、例えば、芯材上に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリアが挙げられ、この樹脂被覆層には導電粉等が分散されていてもよい。
【0039】
また、本実施形態の画像形成材料が電子写真用トナーである場合、当該画像形成材料は結着樹脂を含有してもよい。結着樹脂としては、例えば、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類の単独重合体又は共重合体が挙げられる。その中でも特に代表的な結着樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等も結着樹脂として使用してもよい。
【0040】
また、本実施形態の画像形成材料が電子写真用トナーである場合、当該画像形成材料は、必要に応じて帯電制御剤、オフセット防止剤等を更に含有してもよい。
帯電制御剤としては正帯電用のものと負帯電用のものがあり、正帯電用の帯電制御剤としては、例えば、第4級アンモニウム系化合物が挙げられる。また、負帯電用の帯電制御剤としては、例えば、アルキルサリチル酸の金属錯体、極性基を含有したレジンタイプの帯電制御剤等が挙げられる。オフセット防止剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等が挙げられる。
【0041】
また、本実施形態の画像形成材料が電子写真用トナーである場合、無機粒子又は有機粒子を外添剤としてトナー表面に添加してもよい。無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化セリウム等が挙げられる。無機粒子には、目的に応じて表面処理を施してもよい。有機粒子としては、例えば、フッ化ビニリデン、メチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート等を構成成分とする乳化重合体又はソープフリー重合体等が挙げられる。
【0042】
本実施形態の画像形成材料がインクジェットプリンター用インクである場合、画像形成材料は、水を含有する水性インクの態様をとってもよい。また画像形成材料が水性インクである場合、インクの乾燥防止及び浸透性の向上のために、水溶性の有機溶剤を更に含有してもよい。
水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、純水等が挙げられる。
【0043】
また、有機溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、N−アルキルピロリドン類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール類、メタノール、ブタノール、フェノールのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物等のグリコールエーテル類等が挙げられる。使用される有機溶媒は1種類でも2種類以上でもよい。
有機溶媒は、吸湿性、保湿性、ペリミジン系スクアリリウム色素の溶解度、浸透性、インクの粘度、氷点等を考慮して選択される。インクジェットプリンター用インク中の有機溶媒の含有率としては、例えば、1重量%以上60重量%以下の範囲が挙げられる。
【0044】
また、本実施形態の画像形成材料がインクジェットプリンター用インクである場合、画像形成材料は必要に応じて添加物を含有してもよい。上記添加物としては、例えば、pH調製剤、比抵抗調製剤、酸化防止剤、防腐剤、防カビ剤、金属封鎖剤等が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、アルコールアミン類、アンモニウム塩類、金属水酸化物等が挙げられる。また、比抵抗調製剤としては、例えば、有機塩類、無機塩類が挙げられる。金属封鎖剤としては、例えば、キレート剤等が挙げられる。
【0045】
また、本実施形態の画像形成材料がインクジェットプリンター用インクである場合、噴封ノズル部の閉塞やインク吐出方向の変化等が生じない程度に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂等の水溶性樹脂を画像形成材料に含有させてもよい。
【0046】
本実施形態の画像形成材料が活版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷又はシルク印刷用のインクである場合、当該画像形成材料はポリマーや有機溶剤を含有する油性インクの態様をとってもよい。
ポリマーとしては、例えば、蛋白質、ゴム、セルロース類、シエラック、コパル、でん粉、ロジン等の天然樹脂;ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等の熱可塑性樹脂;レゾール型フェノール樹脂尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
また、有機溶媒としては、例えば、上記インクジェットプリンター用インクの説明において例示された有機溶媒が挙げられる。
【0047】
また、本実施形態の画像形成材料が活版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷又はシルク印刷用のインクである場合、当該画像形成材料は印刷皮膜の柔軟性や強度を向上させるための可塑剤、粘度調整、乾燥性向上のための溶剤、乾燥剤、粘度調整剤、分散剤、各種反応剤等の添加剤を更に含有してもよい。
【0048】
また本実施形態の画像形成材料は、安定化剤を更に含有してもよい。安定化剤は、励起状態の有機近赤外吸収色素からエネルギーを受け取るものであり、有機近赤外吸収色素の吸収帯よりも長波長側に吸収帯を有するものであることが好ましい。また、安定化剤は、一重項酸素による分解が起こり難く、ペリミジン系スクアリリウム色素と相溶性が高いことが好ましい。このような安定化剤としては、例えば、有機金属錯体化合物が挙げられる。好ましい安定化剤としては、例えば、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0049】
【化5】




【0050】
一般式(4)中、RからRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換又は未置換のフェニル基を示す。RからRで示されるフェニル基が置換基を有する場合、当該置換基としては、H、NH、OH、N(C2h+1、OC2h+1、C2h−1、C2h+1、C2hOH又はC2hOC2i+1(hは1から18の整数を示し、iは1から6の整数を示す)などが挙げられる。また、XからXは同一でも異なっていてもよく、それぞれO、S、Seを示し、YはNi、Co、Mn、Pd、Cu、Pt等の遷移金属を示す。
【0051】
上記一般式(4)で表される化合物の中でも、下記式(5)で表される化合物が特に好ましい。
【0052】
【化6】




【0053】
安定化剤の添加量としては、例えば、ペリミジン系スクアリリウム色素の質量に対して1/10以上2倍以下の範囲が挙げられる。
【0054】
<画像形成材料の製造方法>
以下、上記本実施形態に係る画像形成材料の製造方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成材料の製造方法は、25℃における誘電率(以下、単に「誘電率」と称する場合がある)が16(単位:Fm−1)以下であるアルコールを含む溶媒を用い、前記式(2)で表されるペリミジン中間体と前記式(3)で表されるスクアリン酸とを反応させて、前記式(1)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を合成する合成工程を有する。
本実施形態においては、上記工程を経て画像形成材料を製造することにより、視認されにくい画像が形成される画像形成材料が得られる。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0055】
上記反応を行うためには、アルコールを含む溶媒を用いることが必要であると考えられるが、溶媒中に含まれるアルコールの極性や含有量は、上記反応の速度に影響を与えると考えられる。そして、極性を示す数値である上記誘電率が上記範囲のアルコールを含む溶媒を用いると、上記特定波長吸収ペリミジン系スクアリリウム色素が形成されにくくなると考えられる。よってその結果、上記特定波長吸収ペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が上記範囲になり、視認されにくい画像が形成される画像形成材料が得られると推測される。
【0056】
上記誘電率が上記範囲であるアルコールとしては、例えば、1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、1−ペンタノール、イソペンチルアルコール、シクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−オクタノール等が挙げられ、1種でもよく、2種以上用いられてもよい。
また、上記アルコールの誘電率は、16(単位:Fm−1)以下であってもよく、15(単位:Fm−1)以下であることが好ましく、14(単位:Fm−1)以下であることがより好ましい。
【0057】
上記溶媒は、誘電率が上記範囲のアルコールからなるものであってもよいが、アルコール以外の成分を含む混合液であってもよい。上記混合液に含まれるアルコール以外の成分としては、例えば上記誘電率が3(単位:Fm−1)以下である低極性化合物又は無極性化合物が挙げられる。
上記低極性化合物又は無極性化合物としては、例えば、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、キシレン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、オクタン、ノナン等が挙げられ、1種でもよく、2種以上用いられてもよい。
【0058】
さらに、上記混合液における上記アルコールの含有量は、1質量%以上40質量%以下であってもよく、4質量%以上30質量%以下であってもよい。また混合液は、上記誘電率が上記範囲から外れるアルコール(すなわち極性の高いアルコール)を含まないことがよく、仮に含んでいても10質量%以下であることがよい。
また上記低極性化合物又は無極性化合物の上記誘電率は、3(単位:Fm−1)以下であってもよく、2(単位:Fm−1)以下であってもよい。
【0059】
本実施形態における画像形成材料の製造方法は、上記合成工程を含んでいればよく、その他の工程については特に限定されない。
以下、本実施形態における画像形成材料に用いられるペリミジン系スクアリリウム色素の合成方法について説明する。
【0060】
−ペリミジン系スクアリリウム色素の合成方法−
ペリミジン系スクアリリウム色素は、例えば以下の反応スキームに従って得られる。
【0061】
【化7】



【0062】
より具体的には、触媒の存在下で、1,8−ジアミノナフタレンと、3,5−ジメチルシクロヘキサノンとを、溶媒中で共沸還流の条件で反応させることにより、ペリミジン中間体(a)が得られる((A−1)工程)。
【0063】
前記(A−1)工程に使用する触媒としては、p−トルエンスルホン酸一水和物、ベンゼンスルホン酸一水和物、4−クロロベンゼンスルホン酸水和物、ピリジン−3−スルホン酸、エタンスルホン酸、硫酸、硝酸、酢酸などが挙げられる。また、前記(A−1)工程に使用する溶媒としては、アルコール、芳香族炭化水素などが挙げられる。ペリミジン中間体(a)は高速カラムクロマトグラフィーまたは再結晶により精製される。
【0064】
次に、ペリミジン中間体(a)と、3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオン(「スクアリン酸」又は「四角酸」とも呼ばれる。)とを、溶媒中で共沸還流の条件で反応させることにより、前記ペリミジン系スクアリリウム色素が得られる((A−2)工程)。該(A−2)工程は、窒素ガス雰囲気で行うことが好ましい。
前記(A−2)工程に使用する溶媒としては、例えば上記誘電率が上記範囲のアルコールを含む溶媒が挙げられる。
【0065】
また、前記(A−2)工程において、3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオンに対するペリミジン誘導体(a)のモル比(ペリミジン誘導体(a)のモル数/3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオンのモル数)は、1以上4以下であることが好ましく、1.5以上3以下であることがより好ましい。
【0066】
更に、前記(A−2)工程は、脱水剤を用いると反応時間が短縮し、また、前記構造式(1)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の収率が向上する傾向にある。脱水剤としては、ペリミジン中間体(a)及び3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオンと反応しないものであれば特に制限されないが、オルト蟻酸トリメチル、オルト蟻酸トリエチル、オルト蟻酸トリプロピル、オルト蟻酸トリブチルなどのオルト蟻酸エステル、モレキュラーシーブ等が好適である。
【0067】
前記(A−2)工程における反応温度は使用する溶媒の種類によって異なるが、反応液の温度が60℃以上であることが好ましく、75℃以上であることが特に好ましい。例えば、1−ヘキサノールとトルエンの混合溶媒を用いる場合は、反応液の温度が75℃以上121℃であることが好ましい。
【0068】
また、前記(A−2)工程における反応時間は、溶媒の種類又は反応液の温度によって異なるが、例えば1−ヘキサノールとトルエンの混合溶媒を用いて反応液の温度を100℃以上121℃以下として反応させる場合、反応時間は2時間以上4時間以下であることが好ましい。
以上のようにして、ペリミジン系スクアリリウム色素が合成される。
【0069】
本実施形態における画像形成材料の製造方法は、上記合成工程を経て得られたペリミジン系スクアリリウム色素を洗浄する洗浄工程を含んでもよく、また含まなくてもよい。洗浄工程を含む場合、洗浄に用いる溶媒は特に限定されず、具体的には、例えば、アルコール、アセトン、アセトニトリル、THF、テトラヒドロピラン、ジイソプロピルエーテル、クロロホルム、クロロベンゼン、蟻酸エチル、酢酸エチル等が挙げられる。
【0070】
なお、洗浄に用いる溶媒として、例えば上記誘電率が4(単位:Fm−1)以上9(単位:Fm−1)以下である溶媒を用いることにより、上記HPLC分析における上記ピークDが現れないペリミジン系スクアリリウム色素が得られる。ここで、ピークDが現れないことは、ピークDを示すペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が上記HPLCによる分析の検出限界量以下(0.01モル%以下)であること示す。このように、ピークAを示す異性体の含有量が上記範囲であり、かつピークDを示す異性体の含有量が検出限界量以下であるペリミジン系スクアリリウム色素は、存在する異性体の種類が少ないため、異性体が画像形成材料の特性等に与える影響が小さくなり、画像形成材料の品質安定性が向上すると考えられる。
【0071】
上記誘電率が4(単位:Fm−1)以上9(単位:Fm−1)以下である溶媒としては、具体的には、例えば、THF、クロロホルム、テトラヒドロピラン、ジイソプロピルエーテル、クロロベンゼン、蟻酸エチル、酢酸エチル等が挙げられる。
上記洗浄に用いる溶媒の誘電率としては、4(単位:Fm−1)以上9(単位:Fm−1)以下であってもよく、5(単位:Fm−1)以上8(単位:Fm−1)以下であってもよい。
【0072】
また、上記洗浄によってピークDが現れないようにするためには、上記溶媒を用い、ピークDを示すペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が上記HPLCによる分析の検出限界量以下になるまで洗浄を行う方法が挙げられる。なお、上記溶媒を用いて洗浄を行うことによりピークDが現れないペリミジン系スクアリリウム色素が得られる理由は定かではないが、ピークDを示すペリミジン系スクアリリウム色素の極性と上記溶媒の極性とが近く、上記溶媒に対するピークDを示すペリミジン系スクアリリウム色素の溶解度が高いためであると推測される。
【0073】
本実施形態の画像形成材料は、例えば、以上のようにして得られたペリミジン系スクアリリウム色素と、上述したその他の成分とを混合することによって得られる。
【0074】
<画像形成材料の特性>
本実施形態に係る画像形成材料は、下記式(6)及び(7)で表される条件を満たすことが好ましい。下記式(6)及び(7)で表される条件を満たすことで、画像形成材料の色味によらず、情報の不可視性と不可視情報の読み取りやすさとが両立され、不可視情報が記録された記録媒体における長期信頼性が実現される。
式(6):0≦ΔE≦11
式(7):(100−R)≧85
ただし、上記式(6)中、ΔEは下記式(8)で表されるCIE1976L*a*b*表色系における色差を示し、式(7)中、R(単位:%)は前記画像部における波長850nmの赤外線反射率を示す。
【0075】
【数1】

【0076】
上記式(8)中、L、a、bはそれぞれ画像形成前における記録媒体表面のL値、a値、及びb値を示し、L、a、bはそれぞれ前記画像形成材料を用いて付着量4g/mの定着画像を記録媒体表面に形成した時の画像部におけるL値、a値、及びb値を示す。
上記L、a、b、L、a、bは反射分光濃度計を用いて得られる。本実施形態においては、反射分光濃度計として、例えばエックスライト株式会社製、x−rite939を用いて測定される。
【0077】
本実施形態に係る画像形成材料を用いて記録された不可視情報は、例えば750nm以上1000nm以下のいずれかの波長で発光する半導体レーザーまたは発光ダイオードを光学読み取り用の光源として用い、近赤外光に高い分光感度を有する汎用の受光素子を使用することにより読み出される。受光素子としては、例えば、シリコンによる受光素子(CCD等)が挙げられる。
【0078】
[色素含有組成物]
上述した特定波長吸収ペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が1モル%未満であるペリミジン系スクアリリウム色素は、上記画像形成材料に限られず、例えば、赤外光の吸収により発熱する発熱体や赤外線フィルター等に用いる色素含有組成物に適用しても、優れた耐光性が得られる。
【実施例】
【0079】
以下に本実施形態を、実施例を挙げてより具体的に説明する。但し、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】
[実施例1]
<ペリミジン系スクアリリウム色素の調製:二段階合成>
1,8−ジアミノナフタレン4.843g(98%,30.0mmol)、3,5−ジメチルシクロヘキサノン3.886g(98%,30.2mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物10mg(0.053mmol)とトルエン45mlの混合液を窒素ガスの雰囲気中に攪拌しながら加熱し、5時間還流させた。反応中にできた水を共沸蒸留により除去した。反応終了後、トルエンを蒸留して得られた暗茶色固体はアセトンで抽出し、アセトンとエタノールの混合溶媒から再結晶することにより精製し、乾燥してから、茶色固体7.48g(収率93.6%)を得た。得られた茶色固体のH−NMRスペクトル(CDCl)による分析結果を以下に示す。
【0081】
H−NMRスペクトル(CDCl)−
δ=7.25、7.23、7.22、7.20、7.17、7.15(m,4H,Harom);6.54(d×d,J=23.05Hz,J=7.19Hz,2H,Harom);4.62(br s,2H,2×NH);2.11(d,J=12.68Hz,2H,CH);1.75、1.71、1.70、1.69、1.67、1.66(m,3H,2×CH、CH);1.03(t,J=12.68Hz,2H,CH);0.89(d,J=6.34Hz,6H,2×CH);0.63(d,J=11.71Hz,1H,CH
【0082】
上記の茶色固体7.99g(30.0mmol)、3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオン1.551g(13.6mmol)、1−ヘキサノール14.7g(18ml)とトルエン23.4g(27ml)の混合液を窒素ガスの雰囲気中に攪拌しながら加熱し、5時間還流反応させた。反応中にできた水を共沸蒸留により除去した。反応終了後、12mlのトルエンを窒素ガスの雰囲気中に蒸留してから、反応混合物を室温まで冷却した。得られた黒茶色沈殿物を吸引濾過し、2−プロパノールおよびアセトンで洗浄し、乾燥後色素化合物A(黒青色粉末)を6.48g(収率78%)得た。
【0083】
得られた色素化合物Aを、赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)、H−NMR(DMSO‐d)、FD−MS、元素分析、可視近赤外吸収スペクトルなどの分光法により同定した。同定データを以下に示す。同定の結果、得られた化合物が上記式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素であることが確認された。
【0084】
−赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)−
νmax=3487、3429、3336(NH),3053(=C−H),2947(CH),2914、2902(CH),2864(CH),2360,1618、1599、1558、1541(C=C ring),1450、1421、1363(CH、CH),1315、1223、1201(C−N),1163、1119(C−O−),941,924,822,783,715cm−1
【0085】
H−NMRスペクトル(DMSO−d)−
δ=10.52(m,2H,NH);7.80、7.78(d,2H,Harom);7.35、7.33(m,2H,Harom);7.25(m,2H,NH);6.82、6.80、6.78(m,4H,Harom);6.74、6.72、6.52、6.50(m,2H,Harom);2.17(m,5H,CH);1.91(m,3H,CH);1.71(m,2H,CH、CH);1.15、1.12(m,4H,CH);0.92、0.91(m,12H,4×CH);0.66(m,2H,CH
【0086】
−マススペクトル(FD)−
m/z=610(M,100%),611(M+1,47.5%)
【0087】
−元素分析−
C:78.6%(実測値)、78.66%(計算値)
H:6.96%(実測値)、6.93%(計算値)
N:9.02%(実測値)、9.17%(計算値)
O:5.42%(実測値)、5.24%(計算値)
【0088】
−可視近赤外吸収スペクトル−
λmax=811nm(テトラヒドロフラン溶液中)
εmax=1.76×10−1cm−1(テトラヒドロフラン溶液中)
【0089】
<画像形成材料1の調整>
得られた色素化合物Aを蒸留水(溶媒)中に分散させた分散液(試料濃度0.165質量%)40.4μlと、ポリスチレンアクリル酸n−ブチルを蒸留水(溶媒)中に分散させた分散液(試料濃度40質量%)15μlと、蒸留水5gと、を混合した混合液を、ウルトラタラックスで分散化処理して、混合スラリーとした。得られた混合スラリーにPAC凝集剤(ポリ塩化アルミニウム)を加えて顔料ラテックス複合体の分散液を調整し、220nmフィルターでろ過して画像形成材料1(顔料ラテックス複合体)を得た。なお、画像形成材料1はトナーと同様な色特性を示す複合体である。
【0090】
−HPLC測定−
得られた画像形成材料1のHPLC測定を以下のようにして行った。
まず、画像形成材料1から以下のようにして色素化合物Aを分離した。具体的には、5gの画像形成材料1を1Lのアセトンに加えて超音波を30分照射し、室温(25℃)に戻るまで静置する。この溶液を、220nmフィルターを用いてろ過し、色素化合物Aを得た。
得られた色素化合物A6.1mgを100mlのメスフラスコに入れ、HPLC用THFを加えて超音波を30分照射して溶解させ、100mlのTHF溶液を調整した。この溶液を用いて、上記装置及び上記条件により色素化合物AのHPLC測定を行った。その結果、上記ピークAが検出されず、上記ピークBからピークEが検出された。すなわちピークAのピーク面積は全体の0%であった。
【0091】
[実施例2]
<ペリミジン系スクアリリウム色素の調製>
1−ヘキサノール14.7g(18ml)とトルエン23.4g(27ml)の混合液を用いる代わりに、1−ヘキサノール6.5g(8ml)とトルエン34.7g(40ml)の混合液を用いた以外は、色素化合物Aと同様にして、色素化合物Bを得た。
【0092】
<画像形成材料2の調整>
色素化合物Aの代わりに色素化合物Bを用いた以外は、画像形成材料1と同様にして画像形成材料2を得た。
【0093】
−HPLC測定−
得られた画像形成材料2についてのHPLC測定を、画像形成材料1と同様にして行った。
その結果、上記ピークAが検出されず、上記ピークBからピークEが検出された。すなわちピークAのピーク面積は全体の0%であった。
【0094】
[実施例3]
<洗浄工程>
上記色素化合物Aを以下のようにして洗浄した。
具体的には、色素化合物A5gに対してTHFを75ml加え、超音波を30分照射し、溶液が室温に戻ったら不溶物を吸引ろ過により、ろ別した。
上記洗浄工程を、7回繰り返して行い、色素化合物Cを得た。
【0095】
<画像形成材料3の調整>
色素化合物Aの代わりに色素化合物Cを用いた以外は、画像形成材料1と同様にして画像形成材料3を得た。
【0096】
−HPLC測定−
得られた画像形成材料3についてのHPLC測定を、画像形成材料1と同様にして行った。
その結果、上記ピークA及びピークDは現れず、ピークB、ピークC、及びピークEのみが検出された。すなわち、ピークA及びピークDのピーク面積は、全体の0%である。
【0097】
[比較例1]
<ペリミジン系スクアリリウム色素の調製>
1−ヘキサノール14.7g(18ml)とトルエン23.4g(27ml)の混合液を用いる代わりに、1−ブタノール12.1g(15ml)とトルエン26.0g(30ml)の混合液を用いた以外は、色素化合物Aと同様にして、色素化合物Dを得た。
【0098】
<画像形成材料4の調整>
色素化合物Aの代わりに色素化合物Dを用いた以外は、画像形成材料1と同様にして画像形成材料4を得た。
【0099】
−HPLC測定−
得られた画像形成材料4についてのHPLC測定を、画像形成材料1と同様にして行った。
その結果、上記ピークAからピークEが検出され、ピークAのピーク面積の割合は、ピークAからピークEのピーク面積の合計の1.1%であった。
【0100】
[比較例2]
<ペリミジン系スクアリリウム色素の調製>
1−ヘキサノール14.7g(18ml)とトルエン23.4g(27ml)の混合液を用いる代わりに、1−ブタノール14.6g(18ml)とトルエン23.4g(27ml)の混合液を用いた以外は、色素化合物Aと同様にして、色素化合物Eを得た。
【0101】
<画像形成材料5の調整>
色素化合物Aの代わりに色素化合物Eを用いた以外は、画像形成材料1と同様にして画像形成材料5を得た。
【0102】
−HPLC測定−
得られた画像形成材料5についてのHPLC測定を、画像形成材料1と同様にして行った。
その結果、上記ピークAからピークEが検出され、ピークAのピーク面積の割合は、ピークAからピークEのピーク面積の合計の1.6%であった。
【0103】
[比較例3]
<ペリミジン系スクアリリウム色素の調製>
1−ヘキサノール14.7g(18ml)とトルエン23.4g(27ml)の混合液を用いる代わりに、1−ブタノール18.2g(22.5ml)とトルエン19.5g(22.5ml)の混合液を用いた以外は、色素化合物Aと同様にして、色素化合物Fを得た。
【0104】
<画像形成材料6の調整>
色素化合物Aの代わりに色素化合物Fを用いた以外は、画像形成材料1と同様にして画像形成材料6を得た。
【0105】
−HPLC測定−
得られた画像形成材料6についてのHPLC測定を、画像形成材料1と同様にして行った。
その結果、上記ピークAからピークEが検出され、ピークAのピーク面積の割合は、ピークAからピークEのピーク面積の合計の3.0%であった。
【0106】
[比較例4]
<ペリミジン系スクアリリウム色素の調製>
1−ヘキサノール14.7g(18ml)とトルエン23.4g(27ml)の混合液を用いる代わりに、1−ブタノール24.3g(30ml)とトルエン13.0g(15ml)の混合液を用いた以外は、色素化合物Aと同様にして、色素化合物Gを得た。
【0107】
<画像形成材料7の調整>
色素化合物Aの代わりに色素化合物Gを用いた以外は、画像形成材料1と同様にして画像形成材料7を得た。
【0108】
−HPLC測定−
得られた画像形成材料7についてのHPLC測定を、画像形成材料1と同様にして行った。
その結果、上記ピークAからピークEが検出され、ピークAのピーク面積の割合は、ピークAからピークEのピーク面積の合計の5.6%であった。
【0109】
[比較例5]
<ペリミジン系スクアリリウム色素の調製>
1−ヘキサノール14.7g(18ml)とトルエン23.4g(27ml)の混合液を用いる代わりに、1−ブタノール24.3g(30ml)を用いた以外は、色素化合物Aと同様にして、色素化合物Hを得た。
【0110】
<画像形成材料8の調整>
色素化合物Aの代わりに色素化合物Hを用いた以外は、画像形成材料1と同様にして画像形成材料8を得た。
【0111】
−HPLC測定−
得られた画像形成材料8についてのHPLC測定を、画像形成材料1と同様にして行った。
その結果、上記ピークAからピークEが検出され、ピークAのピーク面積の割合は、ピークAからピークEのピーク面積の合計の3.9%であった。
【0112】
<画像形成材料の評価>
得られたフィルター上の画像形成材料を、120℃で熱圧着を行い、単位面積あたりの顔料量が0.045g/mの評価用画像を作製した。
【0113】
−不可視性の評価−
得られた評価用画像について、反射分光濃度計(エックスライト株式会社製、x−rite939)を用いて測定し、上記式(8)で表されるCIE1976L*a*b*表色系における色差(ΔE)及び画像部における波長850nmの赤外線反射率(R)を求めた。結果を表1に示す。
【0114】
【表1】



【0115】
表1に示された評価結果から分かるように、実施例においては、比較例に比べてΔE値が低く、不可視性に優れた画像が形成されることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有し、
吸収スペクトルにおいて吸収波長が768nm以上798nm以下である範囲に吸収ピークを有する前記ペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が、前記ペリミジン系スクアリリウム色素全体に対して1モル%未満である、画像形成材料。
【化1】



【請求項2】
25℃における誘電率が16(単位:Fm−1)以下であるアルコールを含む溶媒を用いて下記式(2)で表されるペリミジン中間体と下記式(3)で表されるスクアリン酸とを反応させて得られた前記式(1)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する画像形成材料。

【化2】



【化3】



【請求項3】
電子写真用トナー、インクジェットプリンター用インク、又は活版、オフセット、フレキソ、グラビア若しくはシルク印刷用のインクである、請求項1又は請求項2に記載の画像形成材料。
【請求項4】
25℃における誘電率が16(単位:Fm−1)以下であるアルコールを含む溶媒を用い、前記式(2)で表されるペリミジン中間体と前記式(3)で表されるスクアリン酸とを反応させて、前記式(1)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を合成する合成工程を有する、画像形成材料の製造方法。
【請求項5】
前記式(1)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有し、
吸収スペクトルにおいて吸収波長が768nm以上798nm以下である範囲に吸収ピークを有する前記ペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が、前記ペリミジン系スクアリリウム色素全体に対して1モル%未満である、色素含有組成物。
【請求項6】
25℃における誘電率が16(単位:Fm−1)以下であるアルコールを含む溶媒を用いて前記式(2)で表されるペリミジン中間体と前記式(3)で表されるスクアリン酸とを反応させて得られた前記式(1)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する色素含有組成物。
【請求項7】
25℃における誘電率が16(単位:Fm−1)以下であるアルコールを含む溶媒を用い、前記式(2)で表されるペリミジン中間体と前記式(3)で表されるスクアリン酸とを反応させて、前記式(1)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を合成する合成工程を有する、色素含有組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−132361(P2011−132361A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292821(P2009−292821)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】