説明

画像形成装置、その制御方法及び制御プログラム

【課題】管理者の作業負担を軽減しつつ、不正な印刷を防止することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置101は、印刷を許可するホストコンピュータ103のIPアドレスを印刷許可リスト401に登録しておき、印刷ジョブを受信した際、この印刷ジョブを送信したホストコンピュータが印刷許可リストに存在するか否かを判定する。判定の結果、印刷許可リストに存在しないと判定された場合、画像形成装置101は、受信した印刷ジョブを印刷せずに蓄積しておく。その後、印刷ジョブが選択され、印刷ボタン501の押下により印刷指示が行われると、画像形成装置101は印刷を行う。蓄積された印刷ジョブに対して一度印刷指示が行われると、そのホストコンピュータは印刷許可リストに追加される。その後、印刷ジョブの送信後に印刷指示が無くても印刷が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置から送信される印刷ジョブを印刷する画像形成装置、その制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置等のデバイスがネットワークに接続され、クライアントPCからネットワークを介して印刷することが可能になっている。
【0003】
また、これまでオフィス内のみで使用されていた画像形成装置が、インターネットに接続され、オフィスの外から画像形成装置に印刷を行わせるようなことも可能になっている。これにより、画像形成装置をファクシミリ装置(FAX)の代わりに使用するような、新しい利用方法が出てきており、利便性が高まっている。
【0004】
しかし、その一方で、このようにインターネット上の誰でも印刷が可能になったため、その匿名性を悪用し、いたずら等の悪意を持って不正に印刷を行うことができてしまうという問題が生じている。具体的に、不正な印刷として、例えば大量ページの印刷や広告データ等の印刷が挙げられる。その結果、画像形成装置の管理者や正規ユーザにとっては、印刷用紙やトナー等の消耗品が無駄に浪費され、通常の印刷業務に支障が出てしまう。
【0005】
従来、このような不正印刷を防止するために、ジョブを送信したユーザを特定し、正規ユーザのみ印刷を許可するような認証の仕組みを持つことが一般的である。例えば、RFC2911等で規定されるIPP(Internet Printing Protocol)が挙げられる(非特許文献1参照)。IPPはそのトランスポート層としてRFC2616で規定されるHTTP(HyperText Transfer Protocol)を使用している。このため、HTTPのプロトコル自体が持つBASIC認証、Digest認証等により、印刷を行ったユーザを認証することができる。
【0006】
また別の方法として、専用のプリンタドライバを使用して印刷データ自体に認証情報を含ませ、画像形成装置が印刷データの解析時にデータに含まれた認証情報を抽出し、認証を行うことも可能である。
【0007】
また、不要な印刷を防止するために、受信した印刷データをストレージデバイスに一時蓄積し、プリンタ機種に対応した印刷データのみ実際に印刷するという技術が存在している(特許文献1参照)。本技術によると、プリンタに対して不正な印刷データが勝手に送られてきたとしても、印刷データに含まれる機種情報がプリンタと一致(マッチ)しなければ、印刷せずにデータを削除するので、無駄に用紙を出力してしまうことは無くなる。
【特許文献1】特開2004−164233号公報
【非特許文献1】PWG IPP Work Group、Last updated July 1, 2005. All IPP and IPP releated pages are maintained by Gail (Songer) Giansiracusa. Technical assistance for the site should be directed to PWG Webmaster、[平成20年9月3日検索]、インターネット<URL:http://www.pwg.org/ipp/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の画像形成装置には、つぎのような問題があった。前述した認証方法においては、画像形成装置の内部に、認証を行うためのユーザ名/パスワードのような認証情報をあらかじめ設定しておく必要があった。このため、管理者にとっては、認証情報のメンテナンスや、複数台の画像形成装置が存在する場合に各機器内の認証情報を同一に揃えるなどの煩雑な作業を行わなければならなかった。
【0009】
また、特許文献1で記載した技術においては、印刷データのサイズが規定値を越えた場合、ユーザが蓄積された印刷データを選択して印刷指示を行うまで印刷しないという制御が可能である。しかし、正規のユーザからの印刷であってもサイズが規定値を越えてしまうと、毎回印刷データを選択して印刷指示を行う必要があり、使い勝手が良くなかった。
【0010】
そこで、本発明は、管理者の作業負担を軽減しつつ、不正な印刷を防止することができる画像形成装置、その制御方法及び制御プログラムを提供することを目的とする。また、本発明は、ユーザの使い勝手を維持したままセキュリティを向上させることができる画像形成装置、その制御方法及び制御プログラムを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、情報処理装置から送信される印刷ジョブを印刷する画像形成装置であって、情報処理装置を特定する情報が登録されたリストを保持するリスト保持手段と、前記印刷ジョブを受信した際、前記印刷ジョブを送信した情報処理装置の情報が前記リストに存在するか否かを判定する判定手段と、前記判定の結果、前記リストに存在しないと判定された場合、前記受信した印刷ジョブを保持するジョブ保持手段と、前記保持された印刷ジョブの印刷指示を受け付ける印刷指示受付手段と、前記印刷指示受付手段が前記印刷指示を受け付けたことに基づいて、前記保持された印刷ジョブを印刷する印刷手段と、前記印刷指示が行われた印刷ジョブを送信した情報処理装置を前記リストに追加する追加手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の画像形成装置の制御方法は、情報処理装置から送信される印刷ジョブを印刷する画像形成装置の制御方法にであって、前記画像形成装置が、前記印刷ジョブを受信した際、情報処理装置を特定する情報が登録されたリストに、前記印刷ジョブを送信した情報処理装置の情報が存在するか否かを判定する判定ステップと、前記画像形成装置が、前記判定の結果、前記リストに存在しないと判定された場合、前記受信した印刷ジョブを保持するジョブ保持ステップと、前記画像形成装置が、前記保持された印刷ジョブの印刷指示を受け付ける印刷指示受付ステップと、前記画像形成装置が、前記印刷指示を受け付けたことに基づいて、前記保持されていた印刷ジョブを印刷する印刷ステップと、前記画像形成装置が、前記印刷指示が行われた印刷ジョブを送信した情報処理装置を前記リストに追加する追加ステップとを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の制御プログラムは、情報処理装置から送信される印刷ジョブを印刷する画像形成装置の制御方法を画像形成装置に実行させるための制御プログラムであって、前記制御方法は、前記画像形成装置が、前記印刷ジョブを受信した際、情報処理装置を特定する情報が登録されたリストに、前記印刷ジョブを送信した情報処理装置の情報が存在するか否かを判定する判定ステップと、前記画像形成装置が、前記判定の結果、前記リストに存在しないと判定された場合、前記受信した印刷ジョブを保持するジョブ保持ステップと、前記画像形成装置が、前記保持された印刷ジョブの印刷指示を受け付ける印刷指示受付ステップと、前記画像形成装置が、前記印刷指示を受け付けたことに基づいて、前記保持されていた印刷ジョブを印刷する印刷ステップと、前記画像形成装置が、前記印刷指示が行われた印刷ジョブを送信した情報処理装置を前記リストに追加する追加ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に係る画像形成装置によれば、画像形成装置の管理者の作業負担を軽減しつつ、不正な印刷を防止することが可能となる。
【0015】
また、ユーザが画像形成装置に保持された印刷ジョブに対し、一度、印刷指示を行うと、それ以降の印刷においては通常通りすぐに印刷が行われる。これにより、ユーザの使い勝手を維持したままセキュリティを向上させることが可能となる。なお、請求項9に係る画像形成装置の制御方法および請求項10に係る制御プログラムにおいても同様である。
【0016】
請求項2に係る画像形成装置によれば、印刷が許可されていない情報処理装置から大量に印刷ジョブが送信されたとしても、ジョブ保持手段の記憶領域を不要に消費してしまうという事態を回避することができる。
【0017】
請求項3に係る画像形成装置によれば、複数の画像形成装置が接続されている場合、いずれか1台の画像形成装置でリストに印刷を許可する情報処理装置の情報が追加された際、その情報は他の画像形成装置に通知される。これにより、いずれか1台の画像形成装置で一度保持された印刷ジョブに対する印刷指示が行われると、その他の画像形成装置においても自動的に印刷が許可され、ユーザの負荷が軽減する。
【0018】
請求項5に係る画像形成装置によれば、ジョブ保持手段に保持された印刷ジョブの印刷指示を、情報処理装置から受け付けることも可能にする。これにより、ユーザは、画像形成装置に対する1回目の印刷時、自分の情報処理装置から印刷指示を行った上で印刷物を取りに行くことが可能となる。従って、操作パネルから印刷指示を行う場合に比べ、待ち時間が短縮される。
【0019】
請求項6、7に係る画像形成装置によれば、情報処理装置ごとに単位時間あたりの印刷上限枚数情報を保持し、同じ情報処理装置から上限枚数を越える印刷ジョブを受信した場合、一度印刷を停止させる。これにより、一度印刷が許可された情報処理装置がウィルス等により画像形成装置に不正な印刷ジョブを送信してしまったような状況においても、保持している印刷上限枚数で印刷を停止させることが可能となる。
【0020】
請求項8に係る画像形成装置によれば、ユーザは画像形成装置の画面に表示された印刷ジョブを選択することで、印刷指示が行えるので、印刷指示を行う際の操作性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の画像形成装置、その制御方法及び制御プログラムの実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態の画像形成装置は、複数の画像形成装置および複数のホストコンピュータがネットワーク介して接続された印刷システムに適用される。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態における画像形成装置を使用した印刷システムの構成を示す図である。この印刷システムでは、画像形成装置101、102およびホストコンピュータ103、104がネットワーク105を介して接続され、相互に通信可能である。
【0023】
情報処理装置の一例であるホストコンピュータ103、104は、ネットワーク105を介して画像形成装置101、102に対して印刷ジョブを送信し、印刷を行わせる。なお、画像形成装置101、102はほぼ同様の構成を有するので、主として画像形成装置101について説明するが、画像形成装置102についても同様である。また、ホストコンピュータ103、104は汎用のコンピュータからなる。
【0024】
図2は画像形成装置101のハードウェア構成を示すブロック図である。画像形成装置として、本実施形態では、複写機を例に挙げて説明する。画像形成装置101内のCPU201は、ROM203のプログラム用ROMまたは外部記憶装置211に記憶された制御プログラムに従って、システムバス204に接続される各種のデバイスとのアクセスを総括的に制御する。
【0025】
また、CPU201は、印刷インターフェース207を介して接続される印刷部(プリンタエンジン)210に出力情報としての画像信号を出力し、また読取インターフェース212を介して接続される読取部(スキャナ)213から画像信号を入力する。
【0026】
ROM203のプログラム用ROMには、CPU201が実行可能な制御プログラム等が記憶される。また、ROM203のフォント用ROMには、上記出力情報を生成する際に使用するフォントデータ(アウトラインフォントデータを含む)等が記憶される。また、ROM203のデータ用ROMには、ホストコンピュータで利用される情報等が記憶される。
【0027】
CPU201は、LANコントローラ部206を介してネットワーク上のホストコンピュータや画像形成装置と通信処理を行うことが可能である。RAM202は、主としてCPU201の主メモリ、ワークエリア等として機能し、図示しない増設ポートに接続されるオプションRAMによりメモリ容量を拡張することができるように構成されている。なお、RAM202は、出力情報展開領域、環境データ格納領域等に用いられる。
【0028】
外部記憶装置211は、ハードディスク(HDD)からなる。HDD211へのアクセスはディスクコントローラ(DKC)208により制御される。なお、ハードディスクの代わりにICカード等を用いてもよい。
【0029】
ハードディスクは、フォントデータ、エミュレーションプログラム、フォームデータ等を記憶し、プリント(印刷)ジョブを一時的にスプールし、スプールされた印刷ジョブを外部から制御するためのジョブ格納領域として使用される。
【0030】
また、ハードディスクは、スキャナ213から読み取った画像データやプリントジョブの画像データをBOXデータとして保持し、ネットワークから参照されたり、印刷を行うBOXデータ格納領域としても使用される。
【0031】
操作パネル(操作部)205は、ユーザが各種情報を入力することが可能であるソフトウェアキーを備え、ユーザからの画像形成装置への操作指示を受け付ける。外部記憶装置は、少なくとも1つ備えられ、内蔵フォントに加えてオプションフォントを格納したオプションフォントカードや、言語系の異なるプリンタ制御言語を解釈するプログラムを格納した外部メモリを複数接続できるように構成されてもよい。
【0032】
不揮発性メモリ209は操作パネル205から設定される各種設定情報を記憶する。また、画像形成装置101には、オプションで、ステイプルやソート機能を行うフィニッシャや、両面印刷機能を実現するための両面装置などの各種拡張装置を装着することが可能である。これらの動作はCPU201によって制御される。
【0033】
図3は画像形成装置101のソフトウェアによる機能的構成を示すブロック図である。ジョブ受信部301はホストコンピュータ103から印刷ジョブを受信し、印刷許可判断部302に送信する。印刷許可判断部302は、リスト保持部303に保持されている印刷許可リスト(図4参照)を基に、受信した印刷ジョブの印刷可否を判断する。印刷が許可されなかった印刷ジョブはジョブ保持部304に蓄積される。
【0034】
印刷指示部305は、ジョブの一覧を確認したり、印刷指示を行う。印刷部306は、印刷ジョブをビットマップに展開し、用紙への印刷を行う。リスト管理部307はリスト保持部303に保持されている印刷許可リストの管理を行う。
【0035】
なお、図3で示した各機能ブロックを実現するソフトウェアは、すべてHDD211またはROM203に記憶されており、画像形成装置が起動する際にRAM202に実行可能プログラムとしてロードされる。その後、各機能ブロックを実現するソフトウェアはCPU201により並行して実行される。また、ジョブ保持部304は印刷ジョブをHDD211に蓄積する。また、リスト保持部303はリストを不揮発性メモリ209に格納する。
【0036】
図4は印刷許可リストの例を示すテーブルである。このテーブルには、受信した印刷ジョブを、ユーザからの印刷開始指示を待たずに印刷開始する(即時印刷)ことを許可するホストコンピュータのIPアドレスがリスト(印刷許可リスト)401として保持(登録)されている。そして、後述する方法により、IPアドレスの追加/削除が行われる。
【0037】
図5は画像形成装置101が印刷ジョブを受信した際の印刷処理手順を示すフローチャートである。画像形成装置101は、ジョブ受信部301によりホストコンピュータ103から印刷ジョブを受信する(ステップS1)。そして、画像形成装置101は、ジョブ受信部301により印刷ジョブを送信してきたホストコンピュータのIPアドレスを取得し、受信した印刷ジョブおよび取得したIPアドレスを印刷許可判断部302に送信する。
【0038】
画像形成装置101は、印刷許可判断部302により、リスト保持部303から印刷許可リストを取得し、受信したIPアドレスが印刷許可リスト401に含まれるか否かを判定する(ステップS2)。判定の結果、受信したIPアドレスが印刷許可リストに含まれていなかった場合、画像形成装置101は、印刷許可判断部302により、受信した印刷ジョブおよびIPアドレスをジョブ保持部304に送信する(ステップS3)。
【0039】
画像形成装置101は、ジョブ保持部304により、受信した印刷ジョブおよびIPアドレスをHDD211に蓄積する(ステップS4)。そして、画像形成装置101は、ジョブ保持部304によりタイマの計時を開始する(ステップS5)。このタイマの設定値は、例えば1日や12時間などの時間があらかじめ設定されており、画像形成装置の管理者によって任意の時間に変更可能である。
【0040】
画像形成装置101は、ジョブ保持部304により、タイマの計時が設定値(所定時間)に達してタイマが切れたか否かを判定する(ステップS6)。タイマが切れていない場合、画像形成装置101は、印刷指示部305により、印刷ボタン501(図6参照)が押下されたか否かを判定する(ステップS7)。このステップS7における印刷ボタン501の押下は印刷指示受付手段の一例である。印刷ボタン501が押下されていない場合、画像形成装置101は、このタイマが切れるまでの間、印刷指示部305によるステップS6の処理に戻る。
【0041】
一方、タイマが切れる前に、印刷ボタン501が押下された場合、画像形成装置101は、印刷指示部305により印刷ジョブとともに蓄積されていたIPアドレスをリスト保持部303に送信する。そして、画像形成装置101は、リスト保持部303により、受信したIPアドレスを印刷許可リストに追加する(ステップS8)。
【0042】
画像形成装置101は、印刷指示部305によりジョブ保持部304に印刷指示を送信する(ステップS9)。画像形成装置101は、印刷指示を受信すると、ジョブ保持部304により、指定された印刷ジョブを印刷部306に送信する(ステップS10)。
【0043】
その後、画像形成装置101は、印刷部306により、受信した印刷ジョブをビットマップに展開し、用紙への印刷を行う(ステップS11)。この後、画像形成装置101は本処理を終了する。
【0044】
一方、ステップS2において、受信したIPアドレスが印刷許可リストにあると判定された場合、画像形成装置101は、印刷許可判断部302により、受信した印刷ジョブを印刷部306に送信する(ステップS12)。そして、画像形成装置101は、ステップS11において、印刷部306により、受信した印刷ジョブをビットマップに展開し、用紙への印刷を行う。
【0045】
また一方、ステップS6において、タイマが切れた場合、つまり所定時間が経過した(印刷指示を所定時間受け付けなかった)場合、画像形成装置101は、ジョブ保持部304により、蓄積(保持)していた印刷ジョブを削除する(ステップS13)。この後、画像形成装置101は本処理を終了する。
【0046】
なお、ステップS13において、印刷ジョブを削除する際、画像形成装置101は、あらかじめ設定された画像形成装置の管理者の電子メールアドレスに、タイマ切れのため印刷ジョブを削除する旨の電子メールを送信するようにしてもよい。
【0047】
また、ステップS3において、画像形成装置101は、印刷許可判断部302により、印刷データをジョブ保持部304に送信する際、IPアドレスごとに印刷ジョブの数およびサイズを記憶しておく。そして、この印刷ジョブの数およびサイズが既定の数またはサイズを越えた場合、画像形成装置101は、直ちに印刷ジョブを削除するようにしてもよい。これにより、印刷が許可されていないホストコンピュータから大量に印刷ジョブが送信されたとしても、HDD211の記憶領域を不要に消費してしまうという事態を回避することができる。
【0048】
図6は印刷指示部305の画面例を示す図である。印刷指示部305はジョブ保持部304から蓄積されている印刷ジョブのリストを取得し、操作パネル205に表示を行う。操作パネル205では、図6に示すように、ジョブ保持部304に蓄積されている印刷ジョブの一覧が表示され、ジョブ受付番号、ジョブ名、ユーザ名、ジョブを送信したホストコンピュータのIPアドレス、およびジョブ状況の情報を確認することができる。ユーザがこの画面から印刷ジョブを選択し、印刷ボタン501を押下すると、印刷指示が行われる。印刷ボタン501を押下したか否かが図5のステップS7で判断されることになる。また、ユーザが削除ボタン502を押下すると、選択された印刷ジョブは印刷されずに削除される。
【0049】
なお、操作パネル205に表示される印刷指示部305の画面には、試し印刷ボタンを追加することも可能である。試し印刷ボタンを押下すると、印刷指示は行われるが、1ページ目のみが印刷され、IPアドレスの印刷許可リストへの追加は行われない。これにより、蓄積されている印刷ジョブが確かに自分が送信したジョブであるか否かを、全てのページを出力せずに確認することができる。
【0050】
図7はリスト管理部307の画面例を示す図である。リスト管理部307は、リスト保持部303によって保持される印刷許可リストを取得し、操作パネル205に表示を行う。画像形成装置の管理者は、この画面から、印刷許可リストにIPアドレスを追加したり、すでに保持されているIPアドレスを削除することができる。
【0051】
操作パネル205には、図7に示すように、現在印刷が許可されているIPアドレスの一覧が表示される。管理者は、この画面からIPアドレスを選択し、削除ボタン601を押下すると、選択されたIPアドレスが印刷許可リストから削除される。また、管理者が追加ボタン602を押下すると、IPアドレス入力画面(図示せず)が表示され、その画面に管理者が任意のIPアドレスを入力すると、入力されたIPアドレスが印刷許可リストに追加される。これにより、一度許可されてしまったIPアドレスを無効にしたり、あらかじめ許可したいIPアドレスを印刷許可リストに入れておく等の運用が可能になる。
【0052】
なお、図7では印刷を許可するホストコンピュータをIPアドレスにより特定したリストの例を示したが、ホストコンピュータを特定する情報であればIPアドレス以外の情報を用いてもよい。例えば、ホストコンピュータのホスト名や、ホストコンピュータのMACアドレスや、ホストコンピュータのシリアル番号や、予めホストコンピュータに設定した、ホストコンピュータにユニークな識別情報であってもよい。
【0053】
このように、第1の実施形態の画像形成装置は、画像形成装置に対して印刷データを送信したホストコンピュータが、それまで一度もその画像形成装置で印刷をしたことがなかった場合、すぐに印刷せずにその印刷ジョブを蓄積する。従って、管理者が画像形成装置に認証情報を設定する必要が無くなる。これにより、管理者の作業負担を軽減しつつ、不正な印刷を防止することが可能となる。また、ユーザが画像形成装置に蓄積された印刷データ(印刷ジョブ)に対し、一度、印刷指示を行うと、それ以降の印刷においては通常通りすぐに印刷が行われるので、ユーザの使い勝手を維持したままセキュリティを向上させることが可能となる。
【0054】
[第2の実施形態]
第2の実施形態においては、ネットワーク上に複数の画像形成装置が存在する場合、いずれか1台の画像形成装置で印刷許可リストにIPアドレスが追加された際、その情報は他の画像形成装置に通知される。これにより、ネットワーク上のいずれか1台の画像形成装置で一度蓄積された印刷ジョブに対して印刷指示を行うと、その他の画像形成装置においても自動的に印刷が許可され、ユーザの負荷が軽減する。
【0055】
第2の実施形態における印刷システムの構成および画像形成装置のハードウェア構成は前記第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。また、第2の実施形態での画像処理装置は、第1の実施形態における図5のフローチャートの処理を行うことが可能であるものとする。図8は第2の実施形態における画像形成装置のソフトウェアによる機能的構成を示すブロック図である。前記第1の実施形態と同じ機能ブロックには、同一の符号を付すことで、その説明を省略する。
【0056】
アドレス送信部701は、リスト保持部303によって保持される印刷許可リストに新規にIPアドレスが追加された際、そのアドレス情報をネットワークに送信する。アドレス受信部702は、ネットワークからアドレス情報を受信し、受信したIPアドレスをリスト保持部303に通知する。
【0057】
前記第1の実施形態と同様、図8で示した各機能ブロックを実現するソフトウェアは、全てHDD211またはROM203に記憶されており、画像形成装置が起動する際にRAM202に実行可能プログラムとしてロードされる。その後、各機能ブロックを実現するソフトウェアはCPU201により並行して実行される。
【0058】
図9は1台の画像形成装置のリスト保持部303に新規にIPアドレスが追加された際における2台の画像形成装置の処理手順を示すフローチャートである。ここでは、画像形成装置101にIPアドレスが追加され、それを画像形成装置102が受け取る場合を示す。同図(A)は画像形成装置101の処理を示し、同図(B)は画像形成装置102の処理を示す。
【0059】
まず、画像形成装置101は、リスト保持部303により、印刷指示部305やリスト管理部307から追加すべきIPアドレスを受信し、受信したIPアドレスを印刷許可リストに追加する(ステップS21)。この処理は、図5のフローチャートのステップS8に相当する。画像形成装置101は、リスト保持部303により、追加したIPアドレスをアドレス送信部701に送信する(ステップS22)。画像形成装置101は、アドレス送信部701により、受信したIPアドレスを含むアドレス情報を図10に示すフォーマットでネットワーク105にブロードキャストで送信する(ステップS23)。アドレス送信部701によるS23の処理は許可情報送信手段の一例である。
【0060】
この後、画像形成装置101は本処理を終了する。
【0061】
一方、画像形成装置102は、アドレス受信部702により、画像形成装置101から送信されたアドレス情報を受信する(ステップS31)。アドレス受信部702によるS31の処理は許可情報受信手段の一例である。画像形成装置102は、アドレス受信部702により、受信したアドレス情報からIPアドレスを抽出し、そのIPアドレスをリスト保持部303に送信する(ステップS32)。画像形成装置102は、リスト保持部303により、受信したIPアドレスを印刷許可リストに追加する(ステップS33)。この後、画像形成装置102は本処理を終了する。
【0062】
図10はアドレス送信部701によってネットワークに送信されるアドレス情報のフォーマットの例を示す図である。このフォーマットでは、<DeviceAddress>として画像形成装置自身のIPアドレスが設定され、<AllowedAddress>の<Address>として印刷許可リストに追加されたホストコンピュータのIPアドレスが設定される。
【0063】
このように、第2の実施形態の画像形成装置によれば、ネットワーク上に複数の画像形成装置が存在する場合、いずれか1台の画像形成装置で印刷許可リストにIPアドレスが追加された際、その情報は他の画像形成装置に通知される。これにより、ネットワーク上のいずれか1台の画像形成装置で一度蓄積された印刷ジョブに対する印刷指示を行うと、その他の画像形成装置においても自動的に印刷が許可され、ユーザの負荷が軽減する。
【0064】
なお、第2の実施形態において、画像処理装置101、102間で印刷を許可するホストコンピュータのIPアドレスを通知するのみでなく、即時印刷を許可すべきでないホストコンピュータのIPアドレスを通知するようにしてもよい。例えば、図5のフローチャートで、ジョブを受信したものの、ステップS6でタイマが所定時間経過してしまったとする。そのようなジョブを送信してきたホストコンピュータは、コンピュータウィルスなどが原因で、ユーザの意図によらない不正な印刷ジョブを送信している可能性がある。ネットワーク上の他の画像処理装置において当該ホストコンピュータが印刷許可リストに記録されているのであれば、その記録は削除するのが安全である。
【0065】
従って、図9(A)において、タイマが所定時間経過してしまったジョブを送信してきたホストコンピュータのIPアドレスを、印刷許可リストから削除すべきIPアドレスとしてステップS22で通知し、ステップS23でブロードキャストするようにしてもよい。そして、図9(B)において、印刷許可リストから削除すべきIPを受信した画像形成装置102は、自身の印刷許可リスト中に通知されたIPアドレスが存在した場合には、当該IPアドレスを削除する。
【0066】
印刷許可リストから削除すべきIPアドレスを通知するためのフォーマットも、図10のようなXMLによるフォーマットを用いるものとする。ただし、印刷許可リストから削除すべきフォーマットを示すタグとして、<AllowedAddressNotification>の代わりに、<RestrictedAddressNotification>タグを用いる。また、<AllowedAddress>の代わりに<RestrictedAddress>タグを用いることで、印刷を許可するIPアドレスと区別する。
【0067】
このようにすることで、印刷システム内における不正な印刷による被害を未然に防ぐことが可能になる。
【0068】
[第3の実施形態]
第3の実施形態においては、ジョブ保持部304に蓄積された印刷ジョブの印刷指示を、画像形成装置の操作パネルからだけではなく、ホストコンピュータから行うことも可能にする。これにより、ユーザは、画像形成装置に対する1回目の印刷時、自分のPC上で印刷指示を行った上で印刷物を取りに行くことが可能となる。従って、操作パネルから印刷指示を行う場合に比べ、待ち時間が短縮される。
【0069】
なお、第3の実施形態では、前記第1の実施形態の構成に対し、ホストコンピュータからの印刷指示を可能にするための処理が追加されるので、前記第1の実施形態の動作が実行可能である上、第3の実施形態で説明する動作が実行可能となる。また、第3の実施形態における印刷システムの構成および画像形成装置のハードウェア構成は、前記第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。なお、第2の実施形態の画像形成装置に適用されてもよいことは勿論である。
【0070】
図11は第3の実施形態における画像形成装置101のソフトウェアによる機能的構成を示すブロック図である。前記第1の実施形態と同一の機能ブロックには、同一の符号を付すことで、その説明を省略する。
【0071】
ジョブ識別情報生成部1001は、ジョブ保持部304に蓄積された印刷ジョブを一意に識別するための情報(ジョブ識別情報)を生成する。ジョブ情報送信部1002は、生成されたジョブ識別情報を含むジョブ情報をホストコンピュータに送信する。印刷指示受信部1003は、ホストコンピュータから印刷指示を受信する。
【0072】
なお、図11に示す各機能ブロックを実現するソフトウェアは、全てHDD211またはROM203に記憶されており、画像形成装置が起動する際にRAM202に実行可能プログラムとしてロードされる。その後、各機能ブロックを実現するソフトウェアはCPU201により並行して実行される。
【0073】
図12はジョブ保持部304に印刷ジョブが蓄積された際に画像形成装置101が行う印刷処理手順を示すフローチャートである。図12のフローチャートは、図5のフローチャートの一部の処理を追加したものになる。図12のフローチャートにおいて、図5のフローチャートと同じ処理を行うステップについては同じ符号を付し、説明は省略する。
図5のステップS4から本フローチャートの処理を開始する。ステップS5を実行後、画像形成装置101は、ジョブ保持部304により、印刷ジョブを蓄積したことをジョブ識別情報生成部1001に通知し、ジョブ識別情報生成部1001により、印刷ジョブを一意に識別するジョブ識別情報を生成する(ステップS42)。ジョブ識別情報として、例えば、乱数の値や、印刷ジョブが蓄積された時刻を元に生成したUUID(Universally Unique Identifier)等が使用される。
【0074】
画像形成装置101は、ジョブ保持部304により、生成されたジョブ識別情報をジョブ識別情報生成部1001から受信し、HDD211に保持する(ステップS43)。その後、ユーザがホストコンピュータ上でWebブラウザから画像形成装置101のジョブ画面を開くと、画像形成装置101は、ジョブ情報送信部1002により、Webブラウザからジョブ情報取得要求を受信する(ステップS44)。
【0075】
画像形成装置101は、このジョブ情報取得要求に応じ、ジョブ情報送信部1002により、ジョブ保持部304に蓄積されている印刷ジョブの情報を取得し、Webブラウザに表示可能な形式に変換してジョブ情報を生成する(ステップS45)。
【0076】
その後、画像形成装置101は、ジョブ情報送信部1002により、変換されたジョブ情報(ジョブ識別情報を含む)をWebブラウザに送信する(ステップS46)。ジョブ情報送信部1002によるS46の処理は識別情報送信手段の一例である。その結果、Webブラウザには図13に示す画面が表示される。図13はWebブラウザに表示された画像形成装置101のジョブリスト画面を示す図である。
【0077】
ユーザは、図13のジョブリスト画面から、チェックボックス1201にチェックを入れることにより印刷を行うジョブを選択し、ジョブ識別子1202として表示されているジョブ識別情報を領域1203に入力し、ジョブ印刷ボタン1204を押下する。この操作により、Webブラウザから印刷指示受信部1003に印刷指示が送信される。
【0078】
画像処理装置101は、ジョブ情報を送信した後にタイマが所定時間経過したか否かを判定し(ステップS6)、経過したと判定した場合には図5のステップS13へ進みジョブを削除する。タイマが所定時間を経過していない場合には、画像処理装置101は、ステップS47でホストコンピュータからの印刷指示があるか否かを判定する印刷指示がなければステップS6へ進み、印刷指示があればステップS48へ進む。
【0079】
ステップS48で、画像形成装置101は、印刷指示受信部1003により、印刷指示を受信する。画像形成装置101は、印刷指示受信部1003により、受信した印刷指示に含まれるジョブ番号およびジョブ識別情報がジョブ保持部304に蓄積されているものと一致しているか否かを判定する(ステップS49)。一致していない場合、画像形成装置101は、ステップS6の処理に戻る。
【0080】
一方、一致していた場合、画像形成装置101は、印刷指示受信部1003により、印刷ジョブと共に蓄積されたIPアドレスをリスト保持部303に送信し、リスト保持部303により、受信したIPアドレスを印刷許可リストに追加する(ステップS8)。そしてステップS9の処理へ進む。
【0081】
なお、本実施形態では、ジョブ識別情報生成部1001によって生成されたジョブ識別情報は、テキスト情報としてホストコンピュータに送信されている。ジョブ識別情報は、人間は読み取れるがコンピュータにとっては識別が困難な画像情報として送信することも可能である。例えば、CAPTCHA(Completely Automated Turing Test To Tell Computers and Humans Apart)技術などを適用することも可能である。この技術は、「CAPTCHA: Telling Humans and Computers Apart Automatically」(http://www.captcha.net/)で公開されている。このようにすることで、不正に印刷を行おうとするプログラムがあったとしても、人間の手を介さずに印刷指示を行うことは困難になる。
【0082】
このように、第3の実施形態の画像形成装置は、ジョブ保持部304に蓄積された印刷ジョブの印刷指示を、画像形成装置の操作パネルからだけではなく、ホストコンピュータから行うことも可能にする。これにより、ユーザは、画像形成装置に対する1回目の印刷時、自分のPC上で印刷指示を行った上で印刷物を取りに行くことが可能となる。従って、操作パネルから印刷指示を行う場合に比べ、待ち時間が短縮される。
【0083】
[第4の実施形態]
第4の実施形態においては、画像形成装置は、ホストコンピュータごとに単位時間あたりの印刷上限枚数情報を保持し、同じホストコンピュータから印刷上限枚数を越える印刷ジョブを受信した場合、一度印刷を停止させる。これにより、一度印刷が許可されたホストコンピュータがウィルス等により画像形成装置に不正な印刷ジョブを送信してしまったような状況においても、保持している印刷上限枚数で印刷を停止させることが可能となる。
【0084】
第4の実施形態における印刷システムの構成、画像形成装置のハードウェア構成およびソフトウェアによる機能的構成は前記第1の実施形態と同様であるので、それらの説明を省略する。なお、第2および第3の実施形態の画像形成装置に適用されてもよいことは勿論である。
【0085】
図14、図15および図16は第4の実施形態の画像形成装置101における印刷ジョブを受信した際の印刷処理手順を示すフローチャートである。画像形成装置101は、ジョブ受信部301により、ホストコンピュータ103から印刷ジョブを受信する(ステップS71)。そして、画像形成装置101は、印刷ジョブを送信してきたホストコンピュータのIPアドレスを取得し、受信した印刷ジョブおよび取得したIPアドレスを印刷許可判断部302に送信する。
【0086】
画像形成装置101は、印刷許可判断部302により、リスト保持部303から印刷許可リスト1401(図18参照)を取得し、受信したIPアドレスが印刷許可リストに含まれるか否かを判定する(ステップS72)。判定の結果、受信したIPアドレスが印刷許可リストに含まれていなかった場合、画像形成装置101は、印刷許可判断部302により、印刷停止情報、受信した印刷ジョブおよびIPアドレスをジョブ保持部304に送信する(ステップS95)。この後のステップS96〜S104の処理は、前記第1の実施形態における図5のフローチャートのステップS4〜S13の処理と同様であるので、これらの処理の説明を省略する。
【0087】
一方、ステップS72の判定の結果、受信したIPアドレスが印刷許可リスト1401に含まれていた場合、画像形成装置101は、印刷許可判断部302により、つぎのようなジョブ情報をジョブ保持部304に送信する(ステップS73)。このジョブ情報には、印刷開始情報、印刷上限枚数情報、受信した印刷ジョブおよびIPアドレスが含まれる。
【0088】
画像形成装置101は、ジョブ保持部304により、受信した印刷ジョブ、IPアドレスおよび印刷上限枚数情報をHDD211に蓄積する(ステップS74)。その後、画像形成装置101は、ジョブ保持部304により、印刷ジョブ、IPアドレスおよび印刷上限枚数情報を印刷部306に送信する(ステップS75)。
【0089】
画像形成装置101は、印刷部306により、タイマが開始済であるか否かを判定する(ステップS76)。まだ開始していない場合、画像形成装置101は、印刷部306により、所定時間(たとえば5分)のタイマを開始するとともに、受信した印刷ジョブをビットマップに展開し、用紙への印刷を行う(ステップS77)。
【0090】
画像形成装置101は、印刷部306により、タイマが切れたか否かを判定する(ステップS78)。タイマが切れていない場合、画像形成装置101は、印刷部306により、用紙に印刷した枚数をカウントアップし、受信した印刷上限枚数を越えるか否かの判定を行う(ステップS79)。印刷部306によるS79の処理は上限判定手段の一例である。印刷上限枚数を越えていない場合、画像形成装置101は、印刷部306により、印刷ジョブが終了したか否かの判定を行う(ステップS80)。印刷ジョブが終了した場合、画像形成装置101は本処理を終了する。一方、印刷ジョブが終了していない場合、画像形成装置101はステップS78の処理に戻る。このように、このタイマが切れるまでの間、ステップS79、S80の判定処理が繰り返される。
【0091】
一方、ステップS78の判定において、タイマが切れたと判定された場合、画像形成装置101は、印刷部306により、カウントアップした枚数カウンタをクリアし(ステップS81)、ステップS77の処理に戻る。
【0092】
また一方、ステップS79の判定において印刷上限枚数を越えると判定された場合、画像形成装置101は、印刷部306により、印刷を一時停止し(ステップS82)、印刷部306により、ジョブ保持部304にジョブ停止要求を送信する(ステップS83)。
【0093】
画像形成装置101は、ジョブ保持部304により、ジョブ停止要求を受信すると、印刷ジョブを印刷部306に送信することを停止し(ステップS84)、ジョブ保持部304により、タイマを開始する(ステップS85)。このタイマの設定値は、例えば1日の時間にあらかじめ決められており、画像形成装置の管理者によって任意の時間に変更可能である。
【0094】
画像形成装置101は、タイマの時間が設定値を越えたか否か、つまりタイマが切れたか否かを判別する(ステップS86)。このタイマが切れるまでの間、画像形成装置101は、印刷指示部305により、印刷ボタン501(図17参照)が押下されたか否かを判定する(ステップS87)。
【0095】
印刷ボタン501が押下された場合、画像形成装置101は、印刷指示部305により、リスト保持部303に対し、IPアドレス、および印刷上限枚数情報として「無制限」を通知する(ステップS88)。
【0096】
画像形成装置101は、リスト保持部303により、受信したIPアドレスの印刷上限枚数を「無制限」に設定する(ステップS89)。その後、画像形成装置101は、印刷指示部305により、ジョブ保持部304に印刷指示を送信する(ステップS90)。
【0097】
画像形成装置101は、ジョブ保持部304により、印刷指示を受信すると、停止していた印刷ジョブを印刷部306に送信する(ステップS91)。その後、画像形成装置101は、印刷部306により、受信した印刷ジョブをビットマップに展開し、用紙への印刷を再開する(ステップS92)。この後、画像形成装置101は本処理を終了する。
【0098】
一方、ステップS86において、タイマが切れた場合、画像形成装置101は、ジョブ保持部304により、一時停止していた印刷ジョブを削除し、IPアドレスをリスト保持部303に送信する(ステップS93)。そして、画像形成装置101は、リスト保持部303により、受信したIPアドレスを印刷許可リストから削除する(ステップS94)。この後、画像形成装置101は本処理を終了する。
【0099】
なお、本実施形態においては、1回の印刷指示で印刷上限枚数を無制限に更新しているが、ジョブ終了時の実際の印刷枚数を新たな印刷上限枚数として更新するようにすることも可能である。また、一度、印刷上限枚数が無制限に更新されたIPアドレスについて、一定期間印刷がない場合、印刷上限枚数を初期値に戻すようにしてもよい。
【0100】
図17は印刷指示部305の画面例を示す図である。図17の印刷指示部305の画面では、一時停止されている印刷ジョブの一覧が表示され、ジョブ受付番号、ジョブ名、ユーザ名、ジョブを送信したホストコンピュータのIPアドレス、およびジョブ状況の情報を確認することができる。ユーザがこの画面から印刷ジョブを選択し、印刷ボタン501を押下すると、印刷指示が行われる。また、ユーザが削除ボタン502を押下すると、選択されたジョブは印刷されずに削除される。
【0101】
図18はリスト保持部303によって保持される印刷許可リストの例を示すテーブルである。このテーブルには、印刷を許可するホストコンピュータのIPアドレスおよび印刷上限枚数がリスト(印刷許可リスト)1401として保持(登録)されている。各IPアドレスに対応する印刷上限枚数は、最初に決められた値であるが、ステップS89の処理により自動的に更新される。また、本実施形態では、印刷上限枚数は、所定時間当たり(ここでは5分当たり)の印刷上限枚数である。印刷上限枚数を含む印刷許可リスト1401を保持するリスト保持部303は印刷上限枚数保持手段の一例である。
【0102】
このように、第4の画像形成装置は、ホストコンピュータごとに単位時間あたりの印刷上限枚数情報を保持し、同じホストコンピュータから印刷上限枚数を越える印刷ジョブを受信した場合、一度印刷を停止させる。これにより、一度印刷が許可されたホストコンピュータがウィルス等により画像形成装置に不正な印刷ジョブを送信してしまったような状況においても、保持している印刷上限枚数で印刷を停止させることが可能となる。
【0103】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、特許請求の範囲で示した機能、または本実施形態の構成が持つ機能が達成できる構成であればどのようなものであっても適用可能である。
【0104】
例えば、画像形成装置としては、複写機に限らず、印刷装置、印刷機能を有するファクシミリ装置、印刷機能、コピー機能、スキャナ機能等を有する複合機(MFP)であってもよいことは勿論である。
【0105】
また、電子写真方式に限定されるものではなく、インクジェット方式、熱転写方式、感熱方式、静電方式、放電破壊方式など各種印刷方式に適用することができる。
【0106】
また、シートとしては、紙媒体、OHPシート、厚紙用紙など、特に限定されない。
【0107】
また、本発明の目的は、以下の処理を実行することによって達成される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す処理である。
【0108】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0109】
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、次のものを用いることができる。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等である。または、プログラムコードをネットワークを介してダウンロードしてもよい。
【0110】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記実施の形態の機能が実現される場合も本発明に含まれる。加えて、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0111】
更に、前述した実施形態の機能が以下の処理によって実現される場合も本発明に含まれる。即ち、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行う場合である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】第1の実施形態における画像形成装置を使用した印刷システムの構成を示す図である。
【図2】画像形成装置101のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】画像形成装置101のソフトウェアによる機能的構成を示すブロック図である。
【図4】印刷許可リストの例を示すテーブルである。
【図5】画像形成装置101が印刷ジョブを受信した際の印刷処理手順を示すフローチャートである。
【図6】印刷指示部305の画面例を示す図である。
【図7】リスト管理部307の画面例を示す図である。
【図8】第2の実施形態における画像形成装置のソフトウェアによる機能的構成を示すブロック図である。
【図9】1台の画像形成装置のリスト保持部303に新規にIPアドレスが追加された際における2台の画像形成装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】アドレス送信部701によってネットワークに送信されるアドレス情報のフォーマットの例を示す図である。
【図11】第3の実施形態における画像形成装置101のソフトウェアによる機能的構成を示すブロック図である。
【図12】ジョブ保持部304に印刷ジョブが蓄積された際に画像形成装置101が行う印刷処理手順を示すフローチャートである。
【図13】Webブラウザに表示された画像形成装置101のジョブリスト画面を示す図である。
【図14】第4の実施形態の画像形成装置101における印刷ジョブを受信した際の印刷処理手順を示すフローチャートである。
【図15】図14につづく画像形成装置101における印刷ジョブを受信した際の印刷処理手順を示すフローチャートである。
【図16】図14および図15につづく画像形成装置101における印刷ジョブを受信した際の印刷処理手順を示すフローチャートである。
【図17】印刷指示部305の画面例を示す図である。
【図18】リスト保持部303によって保持される印刷許可リストの例を示すテーブルである。
【符号の説明】
【0113】
101、102 画像形成装置
103、104 ホストコンピュータ
302 印刷許可判断部
303 リスト保持部
304 ジョブ保持部
305 印刷指示部
306 印刷部
307 リスト管理部
401、1401 印刷許可リスト
701 アドレス送信部
702 アドレス受信部
1001 ジョブ識別情報生成部
1002 ジョブ情報送信部
1003 印刷指示受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置から送信される印刷ジョブを印刷する画像形成装置において、
情報処理装置を特定する情報が登録されたリストを保持するリスト保持手段と、
前記印刷ジョブを受信した際、前記印刷ジョブを送信した情報処理装置の情報が前記リストに存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定の結果、前記リストに存在しないと判定された場合、前記受信した印刷ジョブを保持するジョブ保持手段と、
前記保持された印刷ジョブの印刷指示を受け付ける印刷指示受付手段と、
前記印刷指示受付手段が前記印刷指示を受け付けたことに基づいて、前記保持された印刷ジョブを印刷する印刷手段と、
前記印刷指示が行われた印刷ジョブを送信した情報処理装置を前記リストに追加する追加手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ジョブ保持手段は、前記印刷指示受付手段が前記印刷指示を所定時間受け付けない場合に前記印刷ジョブを削除することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記印刷を許可する情報処理装置の情報を他の画像形成装置に送信する許可情報送信手段と、
他の画像形成装置から前記印刷を許可する情報処理装置の情報を受信する許可情報受信手段とを備え、
前記追加手段は、前記許可情報受信手段によって受信した情報処理装置の情報を前記リストに追加することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記印刷ジョブを識別するジョブ識別情報を生成する識別情報生成手段と、
前記生成されたジョブ識別情報を、当該ジョブ識別情報によって識別された印刷ジョブを送信した情報処理装置に送信する識別情報送信手段と、を更に備え、
前記印刷指示受付手段は、情報処理装置から前記ジョブ識別情報を含む印刷指示を受信することで印刷指示を受け付け、
前記印刷手段は、前記ジョブ識別情報で識別される印刷ジョブを印刷することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成装置に対する操作指示を受け付ける操作部を更に備え、
前記印刷指示受付手段は前記操作部を介して前記保持された印刷ジョブの印刷指示を受け付けることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記印刷を許可する情報処理装置ごとに印刷上限枚数を保持する上限枚数保持手段と、
前記印刷ジョブが前記印刷上限枚数を越えるか否かを判定する上限判定手段と、
前記判定の結果、前記印刷上限枚数を越えると判定された場合、前記印刷ジョブの印刷を一時停止する停止手段と、
前記停止した印刷ジョブの印刷を再開する再開手段と、
前記再開した印刷ジョブを送信した情報処理装置の前記印刷上限枚数を更新する更新手段とを備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記上限枚数保持手段は、所定時間当たりの前記印刷上限枚数を保持することを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記印刷指示受付手段は、前記ジョブ保持手段によって保持されている前記印刷ジョブを画面に表示し、前記画面に表示された印刷ジョブが選択されることに応じて、当該印刷ジョブの印刷指示を受け付けることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項9】
情報処理装置から送信される印刷ジョブを印刷する画像形成装置の制御方法において、
前記画像形成装置が、前記印刷ジョブを受信した際、情報処理装置を特定する情報が登録されたリストに、前記印刷ジョブを送信した情報処理装置の情報が存在するか否かを判定する判定ステップと、
前記画像形成装置が、前記判定の結果、前記リストに存在しないと判定された場合、前記受信した印刷ジョブを保持するジョブ保持ステップと、
前記画像形成装置が、前記保持された印刷ジョブの印刷指示を受け付ける印刷指示受付ステップと、
前記画像形成装置が、前記印刷指示を受け付けたことに基づいて、前記保持されていた印刷ジョブを印刷する印刷ステップと、
前記画像形成装置が、前記印刷指示が行われた印刷ジョブを送信した情報処理装置を前記リストに追加する追加ステップとを有することを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項10】
情報処理装置から送信される印刷ジョブを印刷する画像形成装置の制御方法を画像形成装置に実行させるための制御プログラムであって、
前記制御方法は、
前記画像形成装置が、前記印刷ジョブを受信した際、情報処理装置を特定する情報が登録されたリストに、前記印刷ジョブを送信した情報処理装置の情報が存在するか否かを判定する判定ステップと、
前記画像形成装置が、前記判定の結果、前記リストに存在しないと判定された場合、前記受信した印刷ジョブを保持するジョブ保持ステップと、
前記画像形成装置が、前記保持された印刷ジョブの印刷指示を受け付ける印刷指示受付ステップと、
前記画像形成装置が、前記印刷指示を受け付けたことに基づいて、前記保持されていた印刷ジョブを印刷する印刷ステップと、
前記画像形成装置が、前記印刷指示が行われた印刷ジョブを送信した情報処理装置を前記リストに追加する追加ステップと、を有することを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−122961(P2010−122961A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296732(P2008−296732)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】