説明

画像形成装置、その電源供給制御方法及びプログラム

【課題】構成部毎に独立して電源供給モードの制御が可能な画像形成装置において、待機状態への復帰に時間がかかる構成部を省エネモードへ移行させることができ、かつその構成部を使用するジョブを実行する際の待ち時間をなくす。
【解決手段】制御部5は、ジョブ要求を受けると、ROM10内のデータを参照して、そのジョブの実行に要する時間を算出するとともに、そのジョブに不要な構成部の予備動作時間(ウォームアップ時間)を取得する。ジョブを開始するとともに、予備動作時間がジョブの実行に要する時間より短い構成部の電源供給を遮断する。予備動作時間とジョブの実行に要する時間とが等しくなった時点で上記構成部に電源供給を開始する。ジョブが完了すると同時に上記構成部のウォームアップ(待機状態への復帰)が完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構成部毎に独立して電源供給モードの制御が可能な画像形成装置、その電源供給制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に画像形成装置は電源供給状態が異なる複数の電源供給モードを有している。特に、即座に各ジョブを実行できる「待機モード」、即座にはジョブを実行できないが、消費電力が小さくなる「省エネモード」を備えることが多い。一定時間ジョブを実行しなかった場合などに待機モードから省エネモードへ移行し、何らかのジョブ要求により、省エネモードから待機モードへ復帰し、ジョブを実行する。
【0003】
また、省エネモードとして、「スリープモード」と、「パワーオフモード」を備えた画像形成装置もある。前者のモードにおける装置の構成部の状態は、ジョブ要求に基づく動作が直ちに可能ではなく、一旦待機モードへ移行させた後、ジョブ要求に基づく動作が可能な状態であり、待機モードより消費電力が少ない状態である。例えば、レーザプリンタエンジンにおいては、定着手段などに待機モードほどの電源を供給していないが、ジョブ要求(画像形成の命令)に基づいて、直ちに必要な電源を供給可能な状態である。また、後者のモードにおける装置の構成部の状態は、電源供給を遮断した状態であり、構成部は全く電力を消費しない状態である。なお、パワーオフモードから電源供給を再開した際には、構成部の初期化が行われる。このように、後者は前者と比べると、消費電力は小さいが、直ちに動作が可能な状態(以下、待機状態と言う)に復帰するのにより長い時間がかかる。また、通常、待機モードで一定時間ジョブを実行しなかった場合にまずスリープモードへ移行し、スリープモードで一定時間ジョブを実行しなかった場合にパワーオフモードへ移行する。
【0004】
一般にこのような画像形成装置では、待機モード、省エネモードは装置全体に対してのみ設定可能であるため、待機モードへの復帰の際に、復帰要因となるジョブを実行するのに不要な構成部まで電源が再投入される。例えば、復帰要因がスキャンジョブであっても、プリンタ部まで再通電してしまうため、無駄な電力を消費することになる。
【0005】
この問題に対処した画像形成装置として、各構成部への電源供給モードを独立して制御可能にして、省エネモードから待機モードへの復帰時に、ジョブを実行するのに必要な構成部のみに電源を再投入する機能を設けることで、無駄な消費電力を低減し、省エネを促進する複合機がある(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、上記の複合機にも以下の問題がある。スキャナ部やプリンタ部などは、待機状態への復帰に時間を要するため、省エネモード中の画像形成装置に対し、スキャンを指示しても、すぐにはスキャン動作が始まらない。上記の複合機においてこの待ち時間を回避するためには、スキャナ部やプリンタ部などのような復帰に時間がかかる構成部が省エネモードへ移行しないように設定することになり、消費電力を低減できなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、構成部毎に独立して電源供給モードの制御が可能な画像形成装置において、待機状態への復帰に時間がかかる構成部を省エネモードへ移行させることができ、かつその構成部を使用するジョブを実行する際の待ち時間をなくすことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成装置は、構成部毎に独立して電源供給モードの制御が可能な電源制御部と、ジョブ要求を受けたとき、前記ジョブの実行に要する時間を示す情報を取得するジョブ実行時間情報取得手段と、前記ジョブの実行に不要な構成部が省エネモードから待機モードに設定変更されてから待機状態へ復帰するまでの時間を示す情報を取得する復帰時間情報取得手段と、前記ジョブの実行に要する時間と前記待機状態へ復帰するまでの時間との長短関係を比較する手段と、前記ジョブが実行されるとき、前記電源制御部に対して、前記ジョブの実行に不要な構成部のうち、前記待機状態へ復帰するまでの時間が前記ジョブの実行に要する時間より短い構成部を省エネモードに設定させた後、前記両時間が等しくなる時点までに当該構成部を待機モードに設定させる手段とを有する画像形成装置である。
本発明の画像形成装置の電源供給制御方法は、構成部毎に独立して電源供給モードの制御が可能な画像形成装置の電源供給制御方法であって、要求されたジョブの実行に要する時間を示す情報を取得する工程と、前記ジョブの実行に不要な構成部が省エネモードから待機モードに設定変更されてから待機状態へ復帰するまでの時間を示す情報を取得する工程と、前記ジョブの実行に要する時間と前記待機状態へ復帰するまでの時間との長短関係を比較する工程と、前記ジョブが実行されるとき、前記ジョブの実行に不要な構成部のうち、前記待機状態へ復帰するまでの時間が前記ジョブの実行に要する時間より短い構成部を省エネモードに設定する工程と、前記両時間が等しくなる時点までに当該構成部を待機モードに設定する工程とを有する画像形成装置の電源供給制御方法である。
本発明のプログラムは、コンピュータを、本発明の画像形成装置の各手段として機能させるためのプログラムである。
【0009】
[作用]
本発明によれば、ジョブ要求を受けたとき、そのジョブの実行に要する時間と、そのジョブの実行に不要な構成部が省エネモードから待機モードに設定変更されてから待機状態へ復帰するまでの時間とを比較し、後者の時間が前者の時間より短い構成部を一旦省エネモードに設定した後、両時間が等しくなる時点までに当該構成部を待機モードに設定する。従って、待機状態への復帰に時間がかかる構成部であっても、待機状態への復帰に要する時間が、要求されたジョブの実行に要する時間より短ければ、省エネモードに設定される。また、省エネモードに設定された後、前記要求を受けたジョブが完了するまでに待機状態へ復帰する。つまり、ジョブを実行する際、そのジョブの終了までに待機状態へ復帰させることのできる時間的範囲内で、そのジョブに不要な構成部を省エネモードに設定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、構成部毎に独立して電源供給モードの制御が可能な画像形成装置において、待機状態への復帰に時間がかかる構成部を省エネモードへ移行させることができ、かつその構成部を使用するジョブを実行する際の待ち時間をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態の画像形成装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の画像形成装置がジョブ要求を受けたときの動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態の画像形成装置がジョブ要求を受けたときの動作の具体例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態の画像形成装置の要部構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の画像形成装置がジョブ要求を受けたときの動作の具体例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施形態の画像形成装置の全体構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第3の実施形態の画像形成装置におけるマルチタスク処理のフローチャートである。
【図8】本発明の第3の実施形態の画像形成装置がジョブ要求を受けたときの動作の具体例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
〈画像形成装置の全体構成〉
本発明の第1の実施形態の画像形成装置であるMFP(Multi Function Peripheral)の全体構成を図1に示す。
【0013】
図示のように、MFP本体1は、スキャナ部2、FAX部3、プリンタ部4と、それらを制御する制御部5から構成される。制御部5は、システムを制御するCPU(Central Processing Unit)6と、各部への電源供給モード(待機モード、省エネモード(スリープモード、パワーオフモード))を独立して設定することが可能な電源制御回路7と、各種データやプログラムを保持するROM(Read Only Memory)10から構成される。
【0014】
外部装置であるPC(パーソナルコンピュータ)8、又は操作部9からMFP本体1へジョブ要求が入力されると、ジョブに応じて制御部5は、スキャナ部2、FAX部3、プリンタ部4を制御する。また、CPU6は、電源制御回路7によるスキャナ部2、FAX部3、プリンタ部4に対する電源供給モードの設定を制御することができる。さらに、CPU6はROM10内のデータを参照し、要求されたジョブを実行するのに要する時間を算出できる。また、ROM10は、各構成部の予備動作時間情報を保持しており、CPU6はこの時間情報を取得できる。ここで、予備動作時間とは、構成部のウォームアップに要する時間、即ち、パワーオフモードから待機モードに設定を変更して電源を投入してから待機状態に復帰するまでの時間である。
【0015】
〈ジョブ要求を受けたときの動作〉
図1に示すMFP本体1がPC8又は操作部9からジョブ要求を受けたときの制御部5の動作のフローチャートを図2に示す。
【0016】
PC8もしくは操作部9から、待機状態のMFP本体1へジョブが要求されると、CPU6はジョブの種類を判別し、ROM10内のデータを参照し、ジョブの種類などから要求されたジョブを実行するのに要する時間を算出する(ステップS1)。さらに、CPU6は、要求されたジョブを実行する際に、動作不要な構成部を判別し、その構成部の予備動作時間情報をROM10より取得する(ステップS2)。
【0017】
次に、CPU6は、ステップS1及びS2の結果を用いて、要求されたジョブの所要時間と、そのジョブに不要な構成部の予備動作時間を比較する(ステップS3)。その結果、ジョブの所要時間の方が長い場合は、CPU6がジョブを開始した後、CPU6の制御に従って電源制御回路7がジョブに不要な構成部の電源を遮断する。即ち、その構成部に対する電源供給モードを待機モードからパワーオフモードに変更する(ステップS4)。
【0018】
次いで、CPU6は、ジョブが完了するまでに、電源を遮断した構成部に電源を再投入し、待機モードに復帰させるため、ジョブ実行中、「ジョブ完了までの時間」と「電源を遮断した構成部の予備動作に要する時間」が等しくなったら、電源制御回路7へその旨を通知する(ステップS5)。
【0019】
電源制御回路7は、この通知を受けると、電源を遮断した構成部に電源を再投入する。即ち、その構成部に対する電源供給モードをパワーオフモードから待機モードに変更する。電源が再投入された構成部は予備動作を行う。予備動作はジョブが完了するまでに完了する。即ち、待機状態への復帰が完了する(ステップS6)。予備動作の完了時点以降にジョブが完了し(ステップS7)、この図のフローが終わる。
【0020】
ステップS3で、ジョブの所要時間の方が短いと判定した場合、通常通りにジョブを開始する(ステップS8)。ジョブに不要な構成部の電源を遮断してしまうと、ジョブ完了時までに待機状態へ復帰させられないためである。
【0021】
〈ジョブ要求を受けたときの動作の具体例〉
図1に示すMFP本体1がPC8からジョブ要求を受けたときの制御部5の動作の具体例のフローチャートを図3に示す。
【0022】
PC8より、待機状態のMFP本体1へプリントジョブ(カラー20枚,片面,A4)が要求される。CPU6は、ROM10内のデータを参照し、MFP本体1の動作特性(印刷速度スペックなど)より、要求されたプリントジョブの所要時間を「1分」と算出する(ステップS11)。
【0023】
次に、CPU6は、要求されたプリントジョブでは、スキャナ部2とFAX部3は動作不要であると判断する。そして、ROM10内のデータを参照し、それぞれの予備動作時間として、「スキャナ部2:2分、FAX部3:30秒」を得る(ステップS12)。
【0024】
次いで、CPU6は、要求されたプリントジョブの所要時間「1分」と、そのプリントジョブに不要な構成部の予備動作時間「スキャナ部2:2分、FAX部3:30秒」を比較する(ステップS13)。
【0025】
次に、CPU6は、プリントジョブを開始する。このとき、ジョブ所要時間「1分」に対して、スキャナ部2は復帰に2分かかるため、ジョブ実行中にスキャナ部2へは電源を供給しつづける。つまり、スキャナ部2に対する電源供給モードを待機モードのままとする。一方、FAX部3は復帰に30秒しかからないため、ジョブを開始したら、FAX部3の電源を一旦遮断する。つまり、FAX部3に対する電源供給モードを待機モードからパワーオフモードに変更する(ステップS14)。
【0026】
プリントジョブ完了までの残り時間が30秒となり、FAX部3の予備動作時間と等しくなったら、CPU6は電源制御回路7へその旨を通知する(ステップS15)。電源制御回路7は、通知を受け取ると、直ちにFAX部3に対する電源供給モードをパワーオフモードから待機モードに変更し、電源を再投入する。電源再投入後30秒でFAX部3の予備動作が完了し、待機状態へ復帰する(ステップS16)。
【0027】
FAX部3の再起動が終了すると同時にプリントジョブが完了する(ステップS17)。これにより、次なるジョブの要求が来たとき、そのジョブがFAX部3を必要とするジョブであっても、待ち時間無しで即座にジョブを実行できる。
【0028】
このように、本発明の第1の実施形態の画像形成装置によれば、ジョブ要求を受けたとき、そのジョブの実行に不要な構成部のうち、パワーオフモードから待機モードへの設定変更から待機状態への復帰までの時間が前記ジョブの実行に要する時間より短い構成部を一旦省エネモードに設定した後、両時間が等しくなった時点で当該構成部を待機モードに設定することにより、要求を受けたジョブが完了するまでに、そのジョブの実行に不要な構成部を待機状態に復帰させるので、待機状態への復帰に時間がかかる構成部をパワーオフモードへ移行させることによりジョブ実行中の無駄な消費電力を削減することができ、かつその構成部を使用するジョブを実行する際の待ち時間をなくすことができる。
【0029】
なお、以上の実施形態では、待機モードからパワーオフモードへ移行させ、復帰させているが、待機モードからスリープモードへ移行させ、復帰させる場合も同様に制御することができる。また、以上の実施形態では、ジョブ完了までの時間と待機状態への復帰時間とが等しくなった時点でそのジョブの実行に不要な構成部に対する電源供給を再開しているが、その時点より前に電源供給を再開してもよい。
【0030】
[第2の実施形態]
第1の実施形態はMFP本体全体の電源供給制御に関するものであるが、本発明は、MFP本体の一部に対しても適用可能である。本実施形態は、MFP本体の一部である制御部に対する電源供給制御に関するものである。
【0031】
〈画像形成装置の要部構成〉
本実施形態の画像形成装置の要部であるMFP本体内の第1制御部のブロック図を図4に示す。図示のように、第1制御部51は、システムを制御するCPU52、各種データやプログラムを保持するROM53、図示しないスキャナモータを制御するスキャナモータ制御IC55、図示しないLD(レーザダイオード)を制御するLD制御IC56、これらの制御ICへの電源供給モード(待機モード、省エネモード(スリープモード、パワーオフモード))を独立して設定することが可能な電源制御回路54から構成されている。
【0032】
PC8からのジョブ要求に応じて、CPU52は、スキャナモータ制御IC55及びLD制御IC56を制御する。また、CPU52は、MFP本体の情報を保持するROM53内のデータを参照し、要求されたジョブを実行する際に各制御ICを制御する時間を算出できる。また、ROM53は、各制御ICの予備動作時間情報を保持しており、CPU52はこの時間情報を取得できる。
【0033】
〈ジョブ要求を受けたときの動作の具体例〉
図4に示す第1制御部51がPC8からジョブ要求を受けたときの第1制御部51の動作の具体例のフローチャートを図5に示す。
【0034】
MFP本体が待機モードのときに、PC8より、MFP本体へスキャンジョブ(カラー20枚,A4)が要求される。CPU52は、ROM53内のデータを参照し、MFP本体の動作特性より、要求されたスキャンジョブの所要時間を「1分」と算出する(ステップS21)。
【0035】
次に、CPU52は、要求されたスキャンジョブではLD制御IC56は動作不要であると判断する。そして、ROM53内のデータを参照し、LD制御IC56の予備動作時間(ウォームアップ時間)として、「10秒」を得る(ステップS22)。
【0036】
次いで、CPU52は、要求されたスキャンジョブの所要時間「1分」とLD制御IC56の予備動作時間「10秒」を比較する(ステップS23)。
【0037】
次に、CPU52はスキャンジョブを開始する。このとき、スキャンジョブの所要時間「1分」に対して、LD制御IC56は復帰に10秒しかからないため、スキャンジョブが開始されたら、電源制御回路54はLD制御IC56の電源を一旦遮断する。つまり、LD制御IC56に対する電源供給モードを待機モードからパワーオフモードに変更する(ステップS24)。
【0038】
スキャンジョブ完了までの残り時間が10秒となり、LD制御IC56の予備動作時間と等しくなったら、CPU52は電源制御回路54へ通知する(ステップS25)。電源制御回路54は通知を受け取ると、直ちにLD制御IC56に対する電源供給モードをパワーオフモードから待機モードに変更し、電源を再投入する。電源再投入後10秒でLD制御IC56は予備動作が完了し、待機状態へ復帰する(ステップS26)。
【0039】
LD制御IC56の再起動が終了すると同時にスキャンジョブが完了する(ステップS27)。これにより、次なるジョブの要求が来たときに、そのジョブがLD制御IC56を必要とするジョブであっても、待ち時間無しで即座にジョブを実行できる。
【0040】
なお、図5のフローチャートは、要求されたジョブがLD制御IC56を必要としないジョブに関する処理であるが、要求されたジョブがスキャナモータ制御IC55を必要としないジョブに関する処理も同様になる。
【0041】
[第3の実施形態]
〈画像形成装置の全体構成〉
本発明の第3の実施形態の画像形成装置であるMFPの全体構成を図6に示す。この図において、図1(第1の実施形態)と同じ構成要素には図1と同じ参照符号を付した。
【0042】
本実施形態のMFPの基本構成は第1の実施形態と同じであり、用紙の有無を検知する用紙有無センサ11、及びトナーエンドを検知するトナーエンドセンサ12を搭載している点が異なる。
【0043】
また、本実施形態のMFP本体1は、あるジョブを実行中であっても、追加でジョブを実行できるマルチタスクに対応している。即ち、例えばスキャンジョブを実行中であっても、追加してプリントジョブを実行できる。この場合、第1の実施形態では、スキャンジョブ実行中にプリンタ部4の電源を遮断していると、プリントジョブを追加したとき、プリンタ部4の予備動作が完了するまでの待ち時間が発生してしまう。これに対して、本実施形態では、マルチタスクを実現するため、あるジョブの実行中に追加ジョブが要求されるか否かを判定し、その結果に応じて省エネモードの設定を制御する。
【0044】
〈マルチタスク処理〉
上述したマルチタスク処理のフローチャートを図7に示す。PC8もしくは操作部9から、MFP本体1へジョブが要求される(ステップS31)。CPU6は、ジョブ実行中にジョブ要求が追加されるか否か判断する(ステップS32)。この判断例については図8を用いて後述する。
【0045】
ジョブ要求が追加されると判断した場合(ステップS32:Yes)は、通常どおり、即ち各構成部の電源供給モードを待機モードに維持したまま、ジョブを実行する(ステップS33)。ジョブ要求が追加されないと判断した場合(ステップS32:No)は、必要に応じて不要な構成部の電源を遮断する。即ち、図2(第1の実施形態)のフローを実行する(ステップS34)。
【0046】
〈ジョブ要求を受けたときの動作の具体例〉
本実施形態のMFP本体1が操作部9からジョブ要求を受けたときの制御部5の動作の具体例のフローチャートを図8に示す。
【0047】
操作部9より、MFP本体1へスキャンジョブ(カラー40枚,A4)が要求される。CPU6は、ROM10内のデータを参照し、MFP本体1の動作特性より、要求されたスキャンジョブの所要時間を「2分」と算出する(ステップS41)。
【0048】
次に、CPU6は、用紙有無センサ11より、給紙トレイに用紙が入っていないことを検出する。このとき、用紙が無い状態でスキャンジョブが要求されていることから、プリンタ機能を使うジョブ(プリントジョブ)は要求されないと判断する(ステップS42)。
【0049】
次に、CPU6は、要求されたスキャンジョブでは、プリンタ部4は動作不要であると判断する。そして、ROM10内のデータを参照し、プリンタ部4の予備動作時間「1分」を得る(ステップS43)。
【0050】
次いで、CPU6は、要求されたスキャンジョブの所要時間「2分」とプリンタ部4の予備動作時間「1分」を比較する(ステップS44)。
【0051】
次に、CPU6は、スキャンジョブを開始する。このとき、スキャンジョブの所要時間「2分」に対して、プリンタ部4は復帰に1分しかからないため、スキャンジョブが開始されたら、電源制御回路7はプリンタ部4の電源を一旦遮断する。つまり、プリンタ部4に対する電源供給モードを待機モードからパワーオフモードに変更する(ステップS45)。
【0052】
スキャンジョブ完了までの残り時間が1分となり、プリンタ部4の予備動作時間と等しくなったら、CPU6は電源制御回路7へ通知する(ステップS46)。電源制御回路7は、通知を受け取ると、直ちにプリンタ部4に対する電源供給モードをパワーオフモードから待機モードに変更し、電源を再投入する。電源再投入後1分でプリンタ部4の予備動作が完了し、待機状態へ復帰する(ステップS47)。
【0053】
プリンタ部4の再起動が終了すると同時にスキャンジョブが完了する(ステップS48)。これにより、次なるジョブの要求が来たときに、そのジョブがプリンタ部4を必要とするジョブであっても、待ち時間無しで即座にジョブを実行できる。
【0054】
トナーエンドセンサ12により、トナーエンドを検知した状態でスキャンジョブが要求された場合も、図8と同様のフローとなる。即ち、トナーエンド状態でスキャンジョブが要求された場合、CPU6は、プリントジョブは追加されないと判断する。
【0055】
また、ROM10にジョブ履歴を保持し、ジョブ履歴によって、マルチタスクを実行しないと判断した場合も、図8と同様のフローとなる。即ち、ジョブ履歴上マルチタスクを使用していないユーザに対しては、あるジョブを実行した場合、その他のジョブを追加して実行しないと判断する。
【0056】
また、各実施形態において、各構成部の予備動作時間を計測し、予備動作時間の実測値を制御部内の図示しないRAM(Random Access Memory)に保存し、予備動作時間を使用する際はRAM内のデータを参照するように構成することもできる。ここで、RAMに保存する予備動作時間の実測値に対して、統計処理を加えてもよい。即ち、予備動作時間を複数回計測した場合、その「平均値」、「最頻値」、「中央値」を算出し、RAMの保存値を更新する。
【0057】
また、MFP本体周囲の温度及び湿度を検知する温湿度センサを設けるとともに、予め温湿度センサの検知データと、各構成部の予備動作時間との対応関係を示すテーブルを作成してROMに格納しておけば、周囲の温度及び湿度に応じた予備動作時間情報を取得することができるので、周囲の温度や湿度の変化にかかわらず、正確に電源供給モードを設定することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…MFP本体、2…スキャナ部、3…FAX部、4…プリンタ部、5…制御部、6,52…CPU、7,54…電源制御回路、8…PC、9…操作部、10,53…ROM、11…用紙有無センサ、12…トナーエンドセンサ、51…第1制御部、55…スキャナモータ制御IC、56…LD制御IC。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開平11−146103号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成部毎に独立して電源供給モードの制御が可能な電源制御部と、
ジョブ要求を受けたとき、前記ジョブの実行に要する時間を示す情報を取得するジョブ実行時間情報取得手段と、
前記ジョブの実行に不要な構成部が省エネモードから待機モードに設定変更されてから待機状態へ復帰するまでの時間を示す情報を取得する復帰時間情報取得手段と、
前記ジョブの実行に要する時間と前記待機状態へ復帰するまでの時間との長短関係を比較する手段と、
前記ジョブが実行されるとき、前記電源制御部に対して、前記ジョブの実行に不要な構成部のうち、前記待機状態へ復帰するまでの時間が前記ジョブの実行に要する時間より短い構成部を省エネモードに設定させた後、前記両時間が等しくなる時点までに当該構成部を待機モードに設定させる手段と
を有する画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載された画像形成装置において、
前記省エネモードが電源供給を遮断するモードである画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された画像形成装置において、
あるジョブの実行中に追加されたジョブを実行可能なマルチタスクに対応するとともに、
ジョブ要求を受けたとき、追加要求されないジョブを示す情報を取得するジョブ情報取得手段を有し、当該追加要求されないジョブの実行に必要な構成部を前記ジョブの実行に不要な構成部として扱う画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載された画像形成装置において、
プリンタ部で印刷される用紙の有無を検知する用紙有無センサを有し、前記ジョブ情報取得手段は、前記用紙有無センサが用紙無しを検知しているときにスキャンジョブが要求された場合、プリントジョブを示す情報を取得する画像形成装置。
【請求項5】
請求項3に記載された画像形成装置において、
トナーエンドを検知するトナーエンドセンサを有し、前記ジョブ情報取得手段は、前記トナーエンドセンサがトナーエンドを検知しているときにスキャンジョブが要求された場合、プリントジョブを示す情報を取得する画像形成装置。
【請求項6】
請求項3に記載された画像形成装置において、
ジョブ履歴を記憶するジョブ履歴記憶部を有し、前記ジョブ情報取得手段は、前記ジョブ履歴を参照して、前記追加要求されないジョブを示す情報を取得する画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された画像形成装置において、
各構成部が省エネモードから待機モードに設定変更されてから待機状態へ復帰するまでの時間を示す情報を記憶する復帰時間情報記憶部を有し、
前記復帰時間情報取得手段は、前記復帰時間情報記憶部から、当該情報を取得する画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載された画像形成装置において、
各構成部が省エネモードから待機モードへ復帰するのに要する時間を計測する復帰時間計測手段と、
前記復帰時間情報記憶部の記憶値を前記計測された時間により更新する復帰時間情報更新手段と
を有する画像形成装置。
【請求項9】
請求項8に記載された画像形成装置において、
前記復帰時間計測手段は、複数回の計測値を統計処理し、その統計処理結果を出力する画像形成装置。
【請求項10】
請求項9に記載された画像形成装置において、
前記統計処理は、平均値の算出、又は中央値の算出、又は最頻値の算出である画像形成装置。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれかに記載された画像形成装置において、
周囲の温度及び湿度を検知する温湿度センサを有するとともに、
前記復帰時間情報記憶部は、予め作成された前記温湿度センサの検知データと各構成部の復帰時間との対応関係を示す情報を記憶する画像形成装置。
【請求項12】
構成部毎に独立して電源供給モードの制御が可能な画像形成装置の電源供給制御方法であって、
要求されたジョブの実行に要する時間を示す情報を取得する工程と、
前記ジョブの実行に不要な構成部が省エネモードから待機モードに設定変更されてから待機状態へ復帰するまでの時間を示す情報を取得する工程と、
前記ジョブの実行に要する時間と前記待機状態へ復帰するまでの時間との長短関係を比較する工程と、
前記ジョブが実行されるとき、前記ジョブの実行に不要な構成部のうち、前記待機状態へ復帰するまでの時間が前記ジョブの実行に要する時間より短い構成部を省エネモードに設定する工程と、
前記両時間が等しくなる時点までに当該構成部を待機モードに設定する工程と
を有する画像形成装置の電源供給制御方法。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1乃至11のいずれかに記載された画像形成装置の各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−85218(P2012−85218A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231714(P2010−231714)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】