説明

画像形成装置、サーバ装置およびプログラム

【課題】消費電力量を低減可能な画像形成装置、サーバ装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】本発明に係る画像形成装置100は、少なくとも1つの印刷データを含む印刷ジョブを受け付ける受付部91と、記憶部40と、環境温度を取得する取得部92と、環境温度がしきい値未満であるか否かを判定する判定部93と、印刷データに基づく印刷を実行する印刷部2と、制御部94と、を備える。制御部94は、判定部93により環境温度がしきい値未満であると判定された場合は、所定の条件が成立するまで、印刷部2に印刷ジョブを実行させずに当該印刷ジョブを記憶部40に記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、サーバ装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、起動時に定着装置へ通電し、定着温度を印刷可能な状態まで上昇させる。省エネの観点からすれば、起動時の電力量(起動電力量)を含む、画像形成装置の消費電力量は可能な限り少ないことが望ましい。例えば特許文献1には、複数の複合機(画像形成装置)と、複数の複合機の各々と接続されたサーバ装置とを含む画像形成システムにおいて、サーバ装置は、ホストからの印刷ジョブを受信すると、複数の複合機のうち最も環境温度が高い複合機に当該印刷ジョブを実行させることにより、起動電力量の低減を図るという技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、印刷ジョブを受信したときは、必ず当該印刷ジョブが実行されるので、例えば早朝などの室内が十分に暖まっていない低温環境下で印刷ジョブが実行される場合の起動電力量は、高温環境下で印刷ジョブが実行される場合に比べて大きくなってしまう。すなわち、特許文献1に開示された技術では、画像形成装置の消費電力量を十分に低減することはできないという問題がある。
【0004】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、消費電力量を低減可能な画像形成装置、サーバ装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、少なくとも1つの印刷データを含む印刷ジョブを受け付ける受付部と、前記印刷ジョブを記憶する記憶部と、環境温度を取得する取得部と、前記環境温度がしきい値未満であるか否かを判定する判定部と、前記印刷データに基づく印刷を実行する印刷部と、前記印刷部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記判定部により前記環境温度が前記しきい値未満であると判定された場合は、所定の条件が成立するまで、前記印刷部に前記印刷ジョブを実行させずに当該印刷ジョブを前記記憶部に記憶することを特徴とする。
【0006】
また、本発明のサーバ装置は、印刷ジョブに含まれる少なくとも1つの印刷データに基づく印刷を実行する画像形成装置と接続されたサーバ装置であって、前記印刷ジョブを受け付ける受付部と、前記印刷ジョブを記憶する記憶部と、環境温度を取得する取得部と、前記環境温度がしきい値未満であるか否かを判定する判定部と、前記画像形成装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記判定部により前記環境温度が前記しきい値未満であると判定された場合は、所定の条件が成立するまで、前記画像形成装置に前記印刷ジョブを実行させずに当該印刷ジョブを前記記憶部に記憶することを特徴とする。
【0007】
また、本発明のプログラムは、少なくとも1つの印刷データを含む印刷ジョブを受け付ける第1ステップと、環境温度を取得する第2ステップと、前記環境温度がしきい値未満であるか否かを判定する第3ステップと、前記第3ステップで前記環境温度が前記しきい値未満であると判定した場合は、所定の条件が成立するまで、前記印刷データに基づく印刷を実行する印刷部に前記印刷ジョブを実行させずに当該印刷ジョブを記憶部に記憶する第4ステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、消費電力量を低減可能な画像形成装置、サーバ装置およびプログラムを提供できるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、カラー画像形成装置の概略構成例を示す図である。
【図2】図2は、印刷部の構成の一例を示す模式図である。
【図3】図3は、第1実施形態のカラー画像形成装置のハードウェア構成例を示す図である。
【図4】図4は、第1実施形態のCPUが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、室温の経時的変化の一例を示す図である。
【図6】図6は、ウォームアップ動作による消費電力量の一例を示す図である。
【図7】図7は、ウォームアップ動作による消費電力量の一例を示す図である。
【図8】図8は、印刷動作による消費電力の一例を示す図である。
【図9】図9は、第2実施形態のカラー画像形成装置のハードウェア構成例を示す図である。
【図10】図10は、第2実施形態のCPUが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、設定画面の一例を示す図である。
【図12】図12は、変形例のカラー画像形成装置のハードウェア構成例を示す図である。
【図13】図13は、変形例のCPUが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【図14】図14は、CPUが搭載されたサーバ装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る画像形成装置、サーバ装置およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の各実施形態では、画像形成装置として、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも何れかの機能を有する複合機を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。
【0011】
<A:第1実施形態>
図1は、電子写真方式のカラー画像形成装置100の概略構成例を示す図である。図1に示すように、カラー画像形成装置100は、画像読取装置であるスキャナ部1と、印刷部(画像形成部)2とを有する。また、印刷部2の下部には、本体給紙トレイ7、バンク給紙トレイ8が設けられている。さらに、カラー画像形成装置100の本体部には、手差しトレイ9が設けられている。
【0012】
スキャナ部1は、読み取り対象の原稿の画像データを読み取る。より具体的には、スキャナ部1は、光源で原稿を照射しながら原稿を走査し、原稿からの反射光をCCDセンサで光電変換することにより、原稿の画像データを生成する。スキャナ部1で読み取られた画像データは、不図示の画像処理ユニットに供給される。画像処理ユニットは、スキャナ部1から送られた画像データに対して、ガンマ補正、色変換処理、画像分離処理、階調処理(ハーフトーン処理)等の画像処理を実行する。画像処理後の画像データは、印刷部2に含まれる後述の露光装置(書き込みユニット)15へ供給される。
【0013】
図2は、印刷部2の構成の一例を示す模式図である。印刷部2は、4つの感光体ドラム10Y,10M,10C,10Kと、その各感光体ドラムの表面上に形成された潜像を互いに異なる色のトナー像にそれぞれ現像する複数の現像装置11Y,11M,11C,11Kと、露光装置15と、異なる色のトナー像がそれぞれ重ね合わされて転写(一次転写)される中間転写ベルト16とを有する。
【0014】
中間転写ベルト16は、無端状のベルトであり、駆動ローラ17とテンションローラ19の2軸によって支持されている。中間転写ベルト16の上部側には、ブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各色用の4個の感光体ドラム10が、中間転写ベルト16の回動方向Aに沿って順番に配置される。感光体ドラム10の周囲には、上述の現像装置11、帯電装置12、クリーニング装置13、および、一次転写装置を構成する一次転写ローラ14が配置される。また、感光体ドラム10の上方には、露光装置15が配置される。露光装置15は、レーザ光を出射するレーザーダイオードを備え、不図示の画像処理ユニットから供給される画像データ(画像処理後の画像データ)に応じて、レーザーダイオードの駆動を変調する。
【0015】
感光体ドラム10は、図2のB方向に回転するように駆動される。帯電装置12は、感光体ドラム10の表面を所定の極性に帯電する。そして、その帯電面には、露光装置15から出射されるレーザ光が照射される。これにより、感光体ドラム10の表面に静電潜像が形成される。現像装置11は、不図示のトナー容器から搬出されるトナーを、感光体ドラム10の表面に形成された静電潜像に可視像化する。これにより、感光体ドラム10の表面にトナー像が形成される。
【0016】
各感光体ドラム10には、一次転写ローラ14がそれぞれ対向配置されている。中間転写ベルト16は、各一次転写ローラ14と感光体ドラム10との間に挟まれた状態で回動する。そして、一次転写ローラ14の作用によって、各感光体ドラム10の表面に形成されたトナー像が、中間転写ベルト16に転写(一次転写)される。このようにして、ブラック,シアン,マゼンタ,イエローのトナー像が、中間転写ベルト16上で正確に重ね合わされるように順次に転写されていき、フルカラーの合成カラー画像が形成される。一次転写後、中間転写ベルト16に転写されずに感光体ドラム10の表面に残留する未転写トナーは、クリーニング装置13で回収される。
【0017】
図2に示すように、中間転写ベルト16を挟んで、駆動ローラ17(二次転写対向ローラ)に対向して二次転写ローラ18が配置される。給紙トレイから記録媒体である記録紙Pが給紙されると、それがレジストローラ対22の回転によって所定のタイミングで、駆動ローラ17と二次転写ローラ18の間に送り込まれる。そして、二次転写ローラ18の作用によって、中間転写ベルト16に担持されている合成カラー画像が一括して記録紙Pに転写される。記録紙Pに転写されたトナー像は、定着装置23により熱と圧力で定着され、図示しない排紙トレイ上に排出される。
【0018】
なお、ここでは、二次転写ローラを介して転写紙に転写する方式の例を示したが、これに限らず、記録紙Pに直接転写する方式の画像形成装置を用いてもよい。
【0019】
図3は、第1実施形態に係るカラー画像形成装置100のハードウェア構成例を示す図である。図3に示すように、カラー画像形成装置100は、ネットワーク200を介して、ホスト装置である複数のPC(Personal Computer)300と接続され、各PC300から、少なくとも1つの印刷データを含む印刷ジョブを受信可能である。印刷ジョブは、当該印刷ジョブに含まれる印刷データの印刷を要求する命令信号であり、印刷ジョブに含まれる印刷データの数(印刷枚数)は任意に設定され得る。印刷データは、PDL(Page Description Language)などの言語で記述される。
【0020】
図3に示すように、画像形成装置100は、通信I/F部30と、記憶部40と、画像処理部50と、上述の印刷部2と、操作表示部60と、その他I/F部70と、測定部80と、CPU(Central Processing Unit)90とを備え、それぞれがバスB1で相互に接続されている。
【0021】
通信I/F部30は、画像形成装置100をネットワーク200に接続するための手段であり、各PC300からの印刷ジョブを受信することができる。
【0022】
記憶部40は、HDD(Hard Disk Drive)42と、ROM(Read Only Memory)44と、RAM(Random Access Memory)46とを含む。記憶部40は、通信I/F部30で受信した印刷ジョブを記憶することができる。HDD42およびROM44は、不揮発性の半導体メモリであり、画像形成装置100で実行される各種のプログラムや各種のデータ(通信I/F部30で受信した印刷ジョブ等)を記憶する。RAM46は、HDD42やROM44に記憶された各種プログラムを実行する際に各種データを一時的に保持する揮発性の半導体メモリである。
【0023】
画像処理部50は、印刷ジョブに含まれる印刷データの画像処理を実行する。より具体的には、画像処理部50は、PDLなどのページ記述言語で記述された印刷データを、印刷部2が印刷可能な形式(例えばビットマップ形式)で描画された画像データに変換し、その画像データを印刷部2へ供給する。印刷部2は、CPU90の制御の下、画像処理部50から供給される画像データに基づいて、画像を記録紙Pに形成する。言い換えれば、印刷部2は、CPU90の制御の下、印刷ジョブに含まれる印刷データに基づく印刷を実行する。
【0024】
操作表示部60は、各種画面や画像形成装置100に関する情報を表示するとともに、ユーザーが各種の操作入力を行うための手段である。詳細な図示は省略するが、操作表示部60は、各種画面や画像形成装置100に関する情報を表示するとともにユーザーからのタッチ入力を受け付ける表示パネルと、キーなどの操作デバイスとを備える。
【0025】
その他I/F部70には、スキャナ部1、記録紙Pにステープルやパンチ穴をあける機能等を有する周辺機、大量の記録紙Pをスタック可能な周辺機等が含まれる。要するに、その他I/F部70には、画像形成に必要なインタフェースが含まれる。
【0026】
測定部80は、環境温度を測定する手段であり、例えば温度センサなどで構成される。
【0027】
CPU90は、画像形成装置100の各部を制御する手段である。CPU90が有する機能には、受付部91、取得部92、判定部93、制御部94が含まれる。これらの機能は、CPU90がROM44に記憶された制御プログラムをRAM46に読み出して実行することにより実現される。なお、これに限らず、これらの機能を個別の回路(ハードウェア)で実現することもできる。
【0028】
受付部91は、通信I/F部30や操作表示部60からの各種入力を受け付ける。例えば受付部91は、通信I/F部30で受信した印刷ジョブを受け付ける。取得部92は、測定部80の測定結果である環境温度を取得する。判定部93は、取得部92で取得した環境温度の値が目標値(しきい値)未満であるか否かを判定する。詳細な内容については後述する。制御部94は、受付部91で受け付けた各種の入力や判定部93による判定結果などを用いて各種の制御を実行する。詳細な内容については後述する。
【0029】
図4は、CPU90が実行する処理の一例を示すフローチャートである。まず、受付部91は印刷ジョブを受け付けたか否かを判定する(ステップS1)。受付部91が印刷ジョブを受け付けたと判定した場合、制御部94は、受付部91で受け付けた印刷ジョブを記憶部40に登録(記憶)する(ステップS2)。ステップS2の後、取得部92は、測定部80の測定結果、つまりは環境温度を取得する(ステップS3)。
【0030】
ステップS3の後、判定部93は、上述のステップS3で取得した環境温度が目標値(しきい値)以上であるか否かを判定する(ステップS4)。環境温度が目標値未満であると判定された場合、制御部94は、予め設定された設定時間に到達したか否かを判定する(ステップS5)。ここで、設定時間は、当該設定時間に到達した後に印刷ジョブを実行した場合における消費電力量が、上述のステップS4において環境温度が目標値未満であると判定された時点で印刷ジョブを実行した場合における消費電力量に比べて小さくなるような値に設定されることが好ましい。以下、具体的に説明する。
【0031】
図5は、冬場におけるオフィス内の環境温度(室温)の経時的変化の一例を示す図である。図5に示すように、業務開始前の8時における室温は10度程度であり、12時〜19時における室温(約20度)に比べて温度が低いので、ウォームアップ動作で、定着温度を上昇させるための消費電力量が増加する。なお、ウォームアップ動作とは、トナー画像の定着のために定着装置23へ通電し、印刷可能な状態まで定着装置23の温度(定着温度)を上昇させる動作である。そして、印刷ジョブの実行とは、ウォームアップ動作および印刷動作の両方を実行することである。
【0032】
図6および図7は、図5に示す朝の8時の環境温度である10度で、ウォームアップ動作を実行した場合の消費電力量の例と、図5に示す12時〜19時の環境温度(一定温度まで上昇したときの環境温度)である20度で、ウォームアップ動作を実行した場合の消費電力量の例とを示す図である。図6および図7の例では、環境温度が20度の下では、1500Wの電力により1分でウォームアップ動作が完了する機種を想定している。この例では、環境温度が1度下がるごとに、ウォームアップ動作が完了するまでの時間長を示すウォームアップ時間は5%ずつ増加するので、環境温度が20度の場合に比べて環境温度が10度下がる場合は、ウォームアップ時間は50%の増加となる。つまり、図6に示すように、環境温度が10度の場合は、ウォームアップ時間として1分30秒が必要になる。したがって、図6および図7に示すように、電力量としては、環境温度が10度の場合は37.5Wh、環境温度が20度の場合は25Whとなる。
【0033】
図8は、環境温度が10度のときに、印刷動作を実行する場合に必要な電力の例と、環境温度が20度のときに、印刷動作を実行する場合に必要な電力の例とを示す図である。上記機種は、環境温度が20度の下で、標準的な普通紙、A4サイズの印刷動作を実行した場合は、1200Wの電力を必要とする。この例では、環境温度が1度下がるごとに、必要な電力は2%ずつ増加するので、環境温度が20度の場合に比べて環境温度が10度下がる場合は、必要な電力は20%の増加となる。したがって、図8に示すように、環境温度が10度のときに、印刷動作を実行する場合に必要な電力は1440W、環境温度が20度のときに、印刷動作を実行する場合に必要な電力は1200Wとなる。ここでは、普通紙を例に挙げて説明したが、厚紙の場合には、普通紙に比べて必要な熱量が大きいので、温度の低下による電力の増加係数は、普通紙に比べて大きくなる。
【0034】
以上の例では、上述の設定時間は、当該設定時間に到達したときの環境温度が20度に到達するような値に設定されることが好ましい。例えば設定時間を12時に設定することもできるし、15時に設定することもできる。要するに、設定時間は、当該設定時間に到達した時点で印刷ジョブ(ウォームアップ動作および印刷動作)を実行した場合における消費電力量が、上述のステップS4において環境温度が目標値未満であると判定された時点で印刷ジョブを実行した場合における消費電力量に比べて小さくなるような値に設定されるものであればよい。なお、設定時間は、時刻として設定することもできるし、時間長として設定することもできる。
【0035】
再び、図4に戻って説明を続ける。上述のステップS5で、設定時間に到達したと判定された場合は、処理はステップS6に移行する。一方、上述のステップS5で、設定時間に到達していないと判定された場合は、処理は上述のステップS3に戻される。
【0036】
ステップS6では、制御部94は、記憶部40に記憶された印刷ジョブを実行するように印刷部2を制御する(ステップS6)。より具体的には以下のとおりである。まず制御部94は、ウォームアップ動作を実行するように印刷部2を制御する。ウォームアップ動作が完了した後、制御部94は、記憶部40に記憶された印刷ジョブに含まれる印刷データに基づく印刷を実行するように印刷部2を制御する。記憶部40に複数の印刷ジョブが記憶されていた場合は、これらの印刷ジョブがまとめて実行されるという具合である。
【0037】
以上に説明したように、本実施形態のCPU90(制御部94)は、環境温度が目標値未満の場合は、所定の条件(ここでは、一例として、環境温度が目標値以上になったこと、または、設定時間に到達したこと)が成立するまでの間は、印刷部2に印刷ジョブを実行させないので、環境温度が目標値未満であっても、印刷ジョブを受け付けたときは、無条件に当該印刷ジョブを実行する構成に比べて、画像形成装置100の消費電力量(特に起動電力量)を低減できるという有利な効果を奏する。
【0038】
<B:第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る画像形成装置は、環境温度が目標値未満であっても、CO排出量が目標値(しきい値)以下の場合は、印刷ジョブを実行する点で第1実施形態と異なる。以下では、上述の第1実施形態と相違する部分を中心に説明し、第1実施形態と重複する部分については適宜に説明を省略する。
【0039】
図9は、第2実施形態に係るカラー画像形成装置100のハードウェア構成例を示す図である。図9に示すカラー画像形成装置100のハードウェア構成は、基本的には図3に例示した構成と同じであるが、CPU90が有する機能の中に、CO排出量を算出するCO排出量算出部95が含まれる点が異なる。本実施形態では、CO排出量算出部95は、記憶部40に記憶された印刷ジョブが実行された場合における所定枚数当たりのCO排出量を算出する。
【0040】
図10は、第2実施形態のCPU90が実行する処理の一例を示すフローチャートである。図10のステップS11〜ステップS14の内容は、図4のステップS1〜ステップS4の内容と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0041】
図10のステップS14において、環境温度が目標値未満であると判定された場合、処理はステップS15に移行する。ステップS15において、CO排出量算出部95は、所定枚数当たりのCO排出量を算出する。より具体的には、CO排出量算出部95は、記憶部40に記憶された印刷ジョブが実行された場合における所定枚数当たりのCO排出量を算出する。以下、CO排出量の算出方法の具体例を説明する。なお、ここでは、CO排出量算出部95は、1枚当たりのCO排出量を算出するものとする。
【0042】
CO排出量の算出方法の一例を挙げると、CO排出量は、以下の式(1)を用いて求めることができる。
X=α+β+γ+ζ ・・・(1)
【0043】
上記式(1)におけるXは、記憶部40に記憶された印刷ジョブを実行した場合における総CO排出量である。式(1)におけるαは、電力の消費により発生するCO排出量であり、ウォームアップ動作および印刷動作で消費される電力量から算出される。ここでは、CO排出量算出部95は、ステップS13で取得した環境温度を考慮して算出した消費電力量から、CO発生量を求める。より具体的には、CO排出量算出部95は、環境温度、記録紙Pの種類およびサイズ等のパラメータと、当該パラメータに対応する消費電力量との関係が記録されたデータテーブルから、ステップS13で取得した環境温度、記録紙Pの種類およびサイズ等に対応する消費電力量を読み出す。そして、CO排出量算出部95は、その読み出した消費電力量からCO排出量を算出する。例えば、CO排出量算出部95は、消費電力量とCO排出量との関係が記録されたデータテーブルを用いて、読み出した消費電力量に対応するCO排出量を求めてもよい。
【0044】
上記式(1)におけるβは、記録紙Pの消費により発生するCO排出量である。CO排出量算出部95は、記録紙Pの種類(重量、サイズおよび再生紙率等)、印刷枚数などから、上記βを算出する。上記式(1)におけるγは、トナーの消費により発生するCO排出量である。CO排出量算出部95は、印刷時に消費されるトナーの量や種類等から、上記γを算出する。さらに、式(1)におけるζは、その他の資源の消費により発生するCO排出量である。CO排出量算出部95は、ステープル、定着オイル等の消費量(その他の資源の消費量)から、上記ζを算出する。そして、αとβとγとζとを加算することで、総CO排出量Xが求められる。
【0045】
CO排出量算出部95は、上記式(1)を用いて算出した総CO排出量Xを、印刷枚数(印刷ジョブに含まれる印刷データの数)で割ることにより、1枚当たりのCO排出量を算出することができる。以上がステップS15の具体的な内容の一例である。
【0046】
なお、本実施形態では、上述のステップS15でCO排出量算出部95によって算出される所定枚数当たりのCO排出量の一例として、1枚当たりのCO排出量が算出される例を説明したが、これに限らず、上記所定枚数は任意である。例えばユーザーは、画面のタッチ操作やデバイスの操作を行うことにより、所定枚数の値を可変に設定できる。なお、これに限らず、ユーザーが、所定枚数の値をPCなどの端末装置に入力し、その入力情報がネットワーク経由で画像形成装置100に送信されることにより、所定枚数の値が、ユーザーによる入力値に設定されてもよい。
【0047】
上述のステップS15の後、制御部94は、ステップS15で算出された1枚当たりのCO排出量が目標値(しきい値)以下であるか否かを判定する(ステップS16)。1枚当たりのCO排出量が目標値以下であると判定された場合、処理はステップS17に移行する。ステップS17の内容は、図4のステップS6の内容と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0048】
一方、上述のステップS16において、1枚当たりのCO排出量が目標値を上回ると判定された場合、処理はステップS18に移行する。ステップS18の内容は、図4のステップS5の内容と同じであるので、詳細な説明は省略する。ステップS18において、設定時間に到達していないと判定された場合、処理はステップS13に戻される。そして、上述の処理が繰り返される。
【0049】
以上に説明したように、本実施形態においても、CPU90(制御部94)は、環境温度が目標値未満の場合は、所定の条件(ここでは、第1実施形態での条件に加えて、CO排出量が目標値以下であること)が成立するまでの間は、印刷部2に印刷ジョブを実行させないので、画像形成装置100の消費電力量(特に起動電力量)を低減できるという有利な効果を奏する。
【0050】
<C:変形例>
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形が可能である。以下に変形例を記載する。なお、以下の変形例を任意に組み合わせることも可能である。
【0051】
(変形例1)
上述の各実施形態における環境温度の目標値、設定時間、CO排出量の目標値は任意に設定(変更)が可能である。図11は、操作表示部60に表示された設定画面の一例を示す図である。例えばユーザーは、画面のタッチ操作やデバイスの操作を行うことにより、環境温度の目標値、設定時間、CO排出量の目標値のそれぞれの値を可変に設定できる。なお、これに限らず、ユーザーが、所定枚数の値をPCなどの端末装置に入力し、その入力情報がネットワーク経由で画像形成装置100に送信されることにより、所定枚数の値が、ユーザーによる入力値に設定されてもよい。
【0052】
図11の例では、環境温度の目標値は20度に設定されているので、環境温度が20度未満の場合は、所定の条件が成立するまで、記憶部40に記憶された印刷ジョブは実行されないという具合である。また、図11の例では、CO排出量(ここでは1枚当たりの排出量)の目標値が400gに設定されているので、環境温度が20度未満であっても、CO排出量が400g以下の場合は、記憶部40に記憶された印刷ジョブが実行されるという具合である。
【0053】
さらに、図11の例では、設定時間として、印刷ジョブの開始時刻を設定することもできるし、印刷ジョブを開始するまでの時間長を設定することもできる。さらに、図11の例では、印刷ジョブが完了する時刻を設定することもできるし、設定を行ってから、印刷ジョブが完了するまでの時間長を設定することもできる。図11の例において、「12時までに印刷ジョブ完了」が選択された場合、CPU90(制御部94)は、印刷ジョブに含まれる情報から、ウォームアップ動作に要する時間、および、印刷動作に要する時間を算出する。そして、その算出結果が例えば5分の場合、CPU90は、11時55分に印刷ジョブを開始するように印刷部2を制御するという具合である。また、図11の例において、「1時間後までに印刷ジョブ完了」が選択された場合、CPU90(制御部94)は、設定が行われてから、55分を経過したときに、印刷ジョブを開始するように印刷部2を制御するという具合である。
【0054】
(変形例2)
上述の第2実施形態では、環境温度が目標値未満であっても、CO排出量が目標値以下の場合は、印刷ジョブが実行される例を挙げて説明したが、これに限らず、例えば消費電力量が目標値以下の場合は、印刷ジョブが実行される構成であってもよい。
【0055】
図12は、この変形例に係るカラー画像形成装置100のハードウェア構成例を示す図である。図12に示すカラー画像形成装置100のハードウェア構成は、基本的には図9に例示した構成と同じであるが、上述のCO排出量算出部95の代わりに、カラー画像形成装置100の消費電力量を算出する消費電力量算出部96が、CPU90の機能に含まれる点が異なる。その他は、上述の第2実施形態と同じである。
【0056】
図13は、変形例のCPU90が実行する処理の一例を示すフローチャートである。ステップS21〜ステップS24の内容は、図10のステップS11〜ステップS14の内容と同じであるので、詳細な説明は省略する。図13のステップS25において、消費電力量算出部96は、記憶部40に記憶された印刷ジョブを実行した場合における所定枚数当たりの消費電力量を算出する。より具体的には、消費電力量算出部96は、ステップS23で取得した環境温度、記憶部40に記憶された印刷ジョブに含まれる印刷データの数(印刷枚数に相当)などを用いて、所定枚数当たりの消費電力量を算出する。
【0057】
消費電力量算出部96が、所定枚数当たりの消費電力量を算出した後(上述のステップS25の後)、制御部94は、当該所定枚数当たりの消費電力量が目標値(しきい値)以下であるか否かを判定する(ステップS26)。所定枚数当たりの消費電力量が目標値以下であると判定された場合、処理はステップS27に移行する。ステップS27の内容は、図10のステップS17の内容と同じであるので、詳細な説明は省略する。一方、所定枚数当たりの消費電力量が目標値を上回ると判定した場合、処理はステップS28に移行する。ステップS28の内容は、図10のステップS18の内容と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0058】
要するに、判定部93により環境温度が目標値未満であると判定されても、印刷ジョブを実行した場合における環境負荷情報(環境に与える負荷を示す情報)が目標値以下の場合は、印刷ジョブが実行されるものであればよい。そして、環境負荷情報としては、上述の第2実施形態のようにCO排出量を採用することもできるし、消費電力量を採用することもできる。
【0059】
(変形例3)
例えば、上述のCPU90は、画像形成装置と接続されたサーバ装置に搭載されてもよい。図14は、上述のCPU90が搭載されたサーバ装置400のハードウェア構成例を示す図である。図14に示すように、サーバ装置400は、上述の通信I/F部30と、上述の記憶部40と、上述の画像処理部50と、上述のCPU90と、I/F部410とを備え、それぞれがバスB2で相互に接続されている。図14の例では、サーバ装置400は専用線600を介して画像形成装置500と接続される。I/F部410は、サーバ装置400を画像形成装置500に接続するための手段であり、I/F部410には専用線600が接続される。
【0060】
また、図14に示すように、画像形成装置500は、I/F部510と、上述の印刷部2と、上述の操作表示部60と、上述のその他I/F部70と、上述の測定部80とを備え、それぞれがバスB3で接続されている。I/F部510は、画像形成装置500をサーバ装置400に接続するための手段であり、I/F部510には専用線600が接続される。画像形成装置500は、サーバ装置400のCPU90の制御の下、印刷ジョブを実行する。図14の例では、サーバ装置400に搭載されたCPU90が、上述の各実施形態で説明した処理を実行するという具合である。
【0061】
図14の例では、画像形成装置500が測定部80を備えているが、これに限らず、画像形成装置500の代わりに、サーバ装置400が測定部80を備えてもよい。
【0062】
なお、上述の画像形成装置100やサーバ装置400で実行される制御プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0063】
さらに、上述の画像形成装置100やサーバ装置400で実行される制御プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、画像形成装置100やサーバ装置400で実行される制御プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 スキャナ部
2 印刷部
10 感光体ドラム
11 現像装置
12 帯電装置
13 クリーニング装置
15 露光装置
16 中間転写ベルト
23 定着装置
30 通信I/F部
40 記憶部
42 HDD
44 ROM
46 RAM
50 画像処理部
60 操作表示部
70 その他I/F部
80 測定部
90 CPU
91 受付部
92 取得部
93 判定部
94 制御部
95 CO排出量算出部
96 消費電力量算出部
100 カラー画像形成装置
200 ネットワーク
400 サーバ装置
410 I/F部
500 画像形成装置
510 I/F部
600 専用線
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特開2007−180906号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの印刷データを含む印刷ジョブを受け付ける受付部と、
前記印刷ジョブを記憶する記憶部と、
環境温度を取得する取得部と、
前記環境温度がしきい値未満であるか否かを判定する判定部と、
前記印刷データに基づく印刷を実行する印刷部と、
前記印刷部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記判定部により前記環境温度が前記しきい値未満であると判定された場合は、所定の条件が成立するまで、前記印刷部に前記印刷ジョブを実行させずに当該印刷ジョブを前記記憶部に記憶する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記所定の条件は、前記環境温度が前記しきい値以上になることである、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記所定の条件は、所定の時間に到達したことである、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記所定の時間は、当該所定の時間に到達した後に前記印刷ジョブを実行した場合における消費電力量が、前記判定部により前記環境温度が前記しきい値未満であると判定されたときに前記印刷ジョブを実行した場合における消費電力量に比べて小さくなるような値に設定される、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
環境に与える負荷を示す環境負荷情報を算出する算出部をさらに備え、
前記所定の条件は、前記環境負荷情報が目標値以下になることである、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちの何れか1つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記環境負荷情報は、前記印刷ジョブが実行された場合における所定枚数当たりのCO排出量を示す情報である、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記環境温度を用いて前記CO排出量を算出する、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記環境負荷情報は、前記印刷ジョブが実行された場合における所定枚数当たりの消費電力量を示す情報である、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記算出部は、前記環境温度を用いて前記消費電力量を算出する、
ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
印刷ジョブに含まれる少なくとも1つの印刷データに基づく印刷を実行する画像形成装置と接続されたサーバ装置であって、
前記印刷ジョブを受け付ける受付部と、
前記印刷ジョブを記憶する記憶部と、
環境温度を取得する取得部と、
前記環境温度がしきい値未満であるか否かを判定する判定部と、
前記画像形成装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記判定部により前記環境温度が前記しきい値未満であると判定された場合は、所定の条件が成立するまで、前記画像形成装置に前記印刷ジョブを実行させずに当該印刷ジョブを前記記憶部に記憶する、
ことを特徴とするサーバ装置。
【請求項11】
少なくとも1つの印刷データを含む印刷ジョブを受け付ける第1ステップと、
環境温度を取得する第2ステップと、
前記環境温度がしきい値未満であるか否かを判定する第3ステップと、
前記第3ステップで前記環境温度が前記しきい値未満であると判定した場合は、所定の条件が成立するまで、前記印刷データに基づく印刷を実行する印刷部に前記印刷ジョブを実行させずに当該印刷ジョブを記憶部に記憶する第4ステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−192557(P2012−192557A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56663(P2011−56663)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】