説明

画像形成装置、プログラム、および記憶媒体

【課題】長尺状の媒体に画像を形成する場合に、インクの乾燥不足による不都合が生じるのを抑制しやすい画像形成装置、プログラム、および記憶媒体を得る。
【解決手段】画像形成装置は、印刷部と、パラメータ算出部と、中断制御部と、を備える。印刷部は、インクジェット記録方式により媒体に印刷する。パラメータ算出部は、所定のタイミングで当該タイミングの所定時間前からの印刷部の印刷によるインクの吐出量に基づくパラメータを算出する(ステップS26)。中断制御部は、パラメータが所定の閾値を超えた場合に(ステップS27でYes)、印刷部による印刷を中断させる(ステップS28)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、プログラム、および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録紙のページの印刷が終了した後に待機時間が設定され、記録紙に吐出されたインクを乾燥させる画像形成装置が、知られている(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に開示される技術は、ページ(シート)毎に画像を形成する画像形成装置には適用されやすいが、長尺状の媒体に画像を形成する画像形成装置には適用されにくい。
【0004】
そこで、本発明は、一例として、長尺状の媒体に画像を形成する場合にも、インクの乾燥不足による不都合が生じるのを抑制しやすい画像形成装置、プログラム、および記憶媒体を得ることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる画像形成装置は、印刷部と、パラメータ算出部と、中断制御部と、を備える。印刷部は、インクジェット記録方式により媒体に印刷する。パラメータ算出部は、所定のタイミングで当該タイミングの所定時間前からの印刷部の印刷によるインクの吐出量に基づくパラメータを算出する。中断制御部は、パラメータが所定の閾値を超えた場合に、印刷部による印刷を中断させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、一例としては、長尺状の媒体に画像を形成する場合であっても、インクの乾燥不足による不都合が生じるのが抑制されやすい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる画像形成装置の概略構成の一例が示されたブロック図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかる画像形成装置の制御部の一例が示されたブロック図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態にかかる画像形成装置による印刷の中断制御の一例が示されたフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の第2実施形態にかかる画像形成装置による印刷の中断制御の一例が示されたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれる。よって、以下では、重複する説明が省略される。また、以下の実施形態にかかる画像形成装置1は、インクジェット方式による画像形成装置として構成される。インクジェット方式による印刷自体は公知であるため、以下では、その詳細な説明が省略される。
【0009】
<第1実施形態>
図1に示されるように、画像形成装置1は、CPU(central processing unit)10や、RAM(random access memory)11a、ROM(read only memory)11b、NVRAM(non-volatile RAM)11c、タイマ11d、ヘッド駆動部11e、モータコントローラ11f、モータコントローラ11g、入力部11h、出力部11i、通信インタフェース(I/F、interface)11j、温度センサ11k、湿度センサ11m等を、備えている。これら各構成要素は、バス11nを介して電気的に接続されている。また、ヘッド駆動部11eにはヘッド12が電気的に接続され、モータコントローラ11fにはキャリッジモータ13が電気的に接続され、モータコントローラ11gには搬送モータ14が電気的に接続されている。
【0010】
CPU10は、ROM11bやNVRAM11c等の不揮発性の記憶部にインストールされてRAM11aの揮発性の記憶部等に読み出されたプログラムにしたがって動作し、ヘッド12等による印刷や、印刷中断等における各部の動作を制御する。RAM11aは、書き換え可能な揮発性の記憶部であって、プログラムを一時的に保持したり、当該プログラムの実行等に関わる所定のデータ等を記憶したりする。ROM11bは、書き換え不能な不揮発性の記憶部であって、画像形成装置1等に固有のデータや、制御やプログラムに関わる不変データ、プログラム等を記憶する。ROM11bは、プログラムを記憶する記憶媒体の一例である。NVRAM11cは、書き換え可能な不揮発性の記憶部であって、画像形成装置1の全体や部分の電源が遮断された際にあっても保持しておくのが望ましい可変設定可能なデータを記憶する。NVRAM11cは、プログラムを記憶する記憶媒体の一例であることができる。
【0011】
タイマ11dは、一例としては、CPU10から指令を受け所定時間が経過した時点でCPU10に応答を返信することができる。タイマ11dを用いることで、時間間隔を計測することができる。本実施形態では、タイマ11dを用いて複数の時間間隔(例えば、後述のA時間、B時間、C時間等)が計測される。
【0012】
ヘッド12は、CPU10からの指令に応じて動作するヘッド駆動部11eによって駆動され、媒体(図示されず)上にインクを吐出(噴射)する。ヘッド12としては、ピエゾ方式や、サーマル方式等、種々の方式のインクジェットヘッドを採用することができる。ヘッド駆動部11eは、例えば、波発生回路や、ヘッド駆動回路等を含む。
【0013】
キャリッジモータ13は、ヘッド12を支持して(搭載して)主走査方向に往復動作するキャリッジ(図示されず)の駆動源として機能する。キャリッジモータ13の回動は、一例としては、動作変換機構(例えばベルトやローラ等を含む機構、図示されず)によって、主走査方向に沿った動作に変換される。なお、一例としては、後述する印刷の中断制御時には、ヘッド12によるインクの吐出が停止されるとともに、キャリッジモータ13が停止され、搬送モータ14も停止される。
【0014】
入力部11hは、例えば、タッチパネルや、操作ボタン、キーボード、スイッチ、マイクロフォン等として構成することができる。操作者(ユーザ等)は、入力部11hを利用して、所定のデータの値やコマンド等を入力することができる。一方、出力部11iは、例えば、LCD(liquid crystal display)やOELD(organic electro-luminescent display)等の表示装置や、発光部、ランプ、スピーカ、ブザー等として構成することができる。この出力部11iで出力される画像や、光、音等により、操作者(ユーザ等)は、各種の情報の他、入力部11hで入力したデータの内容を認識することができる。通信I/F11jは、画像形成装置1の制御回路(例えば、CPU10等)と外部装置(例えば、パーソナルコンピュータ等の電子機器等)との間でのデータの授受に関わる処理を実行する。
【0015】
温度センサ11kは、環境温度として、例えば、画像形成装置1内のヘッド12近傍等の温度(空気の温度)を計測する。また、湿度センサ11mは、環境湿度として、例えば、画像形成装置1内の媒体の搬送経路の印字部分の下流側等の湿度を計測する。なお、必要に応じて、温度センサ11kや湿度センサ11mに対応してコントローラやアンプ等を設けることができる。環境温度および環境湿度は、環境情報の一例である。
【0016】
そして、本実施形態では、CPU10は、RAM11aに保持されたプログラムを実行することにより、図2に示されるように、印刷制御部10aや、中断制御部10b、吐出量取得部10c、吐出量蓄積部10d、パラメータ算出部10e、閾値可変部10f等として動作する。すなわち、少なくとも中断制御用のプログラムには、CPU10(コンピュータ)を、印刷制御部10aや、中断制御部10b、吐出量取得部10c、吐出量蓄積部10d、パラメータ算出部10e、および閾値可変部10fとして動作させる各モジュールが含まれている。
【0017】
操作者(ユーザ等)が電源を投入すると、CPU10は、ROM11bやNVRAM11c等の記憶部からRAM11aにOS(operating system)を読み込み、このOSを起動させる。起動されたOSは、ユーザの操作に応じてプログラム(アプリケーションプログラム)を起動したり、情報を読み込んだり、保存したりする。中断制御を実行するプログラムもそのプログラム(アプリケーションプログラム)の一部であることができる。なお、中断制御を実行するプログラムは、所定のOS上で動作するものには限られず、後述の各種処理の一部の実行をOSに肩代わりさせるものであってもよいし、所定のアプリケーションプログラムやOSなどを構成する一群のプログラムファイルの一部として含まれているものであることができる。
【0018】
また、一般的には、インストールされるプログラムは、CD−ROM(図示されず)などの記憶媒体に記録されうる。このため、CD−ROM等の可搬型の記憶媒体も、プログラムを記憶する記憶媒体であることができる。さらには、プログラムは、例えば通信I/F11jを介して外部装置から取り込まれ、NVRAM11cにインストールされても良い。
【0019】
なお、本実施形態では、プログラムや、OS、各種データ等はROM11bやNVRAM11cに格納されるが、これに替えて、ハードディスク装置(HDD,hard disk drive)や半導体記憶装置(SSD,solid state drive)等(図示されず)のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されることができる。
【0020】
印刷制御部10aは、ヘッド駆動部11eを介してヘッド12のインクの吐出を制御する。また、中断制御部10bは、ヘッド駆動部11eを介してヘッド12のインクの吐出を一時的に停止させる(中断させる)。なお、停止時間を示すデータは、一例としては、NVRAM11c等の記憶部に記憶される。
【0021】
吐出量取得部10cは、例えば、印刷制御部10aによるヘッド12に対するインクの吐出量の制御値や、ヘッド駆動部11eの駆動電圧、電流の波形等のインク吐出量に応じて変化する物理量等から、インクの吐出量に応じた第一パラメータを取得する。吐出量蓄積部10dは、取得されたインクの吐出量を表すデータ(第一パラメータ)を、RAM11aやNVRAM11c等の記憶部に記憶する。この際、記憶部には、インクの吐出量を表すデータ(第一パラメータ)が、タイミング(データの古さ、新しさ、取得順、蓄積順)がわかる状態で、あるいは、インクが吐出されたタイミング(時刻)を表すデータと対応付けられた状態で、記憶される。なお、記憶部には、所定期間内でヘッド12から吐出された全液滴に対応したインクの吐出量を表すデータ(第一パラメータ)が記憶されてもよいし、所定の時間間隔でサンプリングされた(間引きされた)インクの吐出量を表すデータ(第一パラメータ)が間欠的に記憶されてもよいし、所定時間(一例としては、後述のC時間より短い時間)内における平均値等の代表値が記憶されてもよい。また、本実施形態では、中断制御には、中断制御を実行するタイミング(中断制御を実行するか否かを判断するタイミング、カレントタイム)より所定時間(一例としては、後述のC時間)を超えて前のタイミングでのインクの吐出量を表すデータ(第一パラメータ)は用いられない。よって、インクの吐出量を表すデータ(第一パラメータ)の記憶領域は、所定時間(一例としては、後述のC時間、またはC時間より長い時間)内で最も古い(前の)データに最も新しい(後の)データが上書きされる所謂リングバッファのように用いられることができる。なお、インクの吐出量は、インクの消費量でもある。
【0022】
パラメータ算出部10eは、印刷の中断を行うか否かの判断に用いる第二パラメータを算出する。第二パラメータは、一例としては、中断制御を実行するタイミングより所定時間(後述のB時間、B<C)前のタイミングから直前のタイミングまでの間の(取得され蓄積されていた)第一パラメータの積算値とすることができる。インクが吐出されてからの時間が長いほどインクは乾燥し、インクが不本意に他の部位(例えば、画像形成装置1を載せる台(図示されず)等)に付着する等の不都合が生じにくくなる。よって、所定時間より前に媒体上に吐出されたインクについてのデータを対象外とすることで、一例としては、より効率良くかつより精度良く中断制御を実行することができる。
【0023】
中断制御部10bは、パラメータ算出部10eで算出された第二パラメータと、所定の閾値とを比較し、第二パラメータが閾値と同じかあるいは大きい場合に、印刷を中断する。閾値可変部10fは、この閾値を可変設定することができる。閾値を可変設定することで、一例としては、より効率良くかつより精度良く中断制御を実行することができる。具体的には、例えば、閾値可変部10fは、媒体(一例としては紙)の属性に応じて、閾値を変更することができる。媒体の属性としては、媒体の幅や、厚さ、種類(紙質、面粗度等)がある。
【0024】
また、インクの吐出量(消費量、第二パラメータ)が同じであっても、媒体上のインクの状態は、媒体の幅によって異なる。すなわち、第二パラメータの値が同じであっても、媒体の幅が狭い場合にはインクがより濃く吐出された状態(すなわち、媒体の面の単位面積あたりのインクの吐出量がより多い状態、密度がより高い状態)であり、媒体の幅が広い場合にはインクがより薄く吐出された状態(すなわち、媒体の面の単位面積あたりのインクの吐出量がより少ない状態、密度がより低い状態)である。ここで、媒体上では、インクが濃いほど乾きにくく、他の部位に付着する等の不都合が生じやすくなる。この点、本実施形態では、閾値可変部10fは、一例としては、媒体の幅が狭い(小さい)ほど閾値をより大きく設定し、媒体の幅が広い(大きい)ほど閾値をより小さく設定することができる。よって、一例としては、印刷の中断(によるインクの乾燥)が必要になりやすい状況を、より精度良く反映し、中断制御をより効率良く行うことができる。また、閾値可変部10fは、画像形成装置1が媒体の幅を検出するセンサ(図示されず)を有する場合には、このセンサの検出値に基づいて媒体の幅を表すデータを取得することができる。また、閾値可変部10fは、入力部11hや、通信I/F11j等を介して、他の制御回路や外部装置等から、媒体の幅を表すデータを取得することもできる。そして、いずれの場合も、一例としては、ROM11bやNVRAM11c等の不揮発性の記憶部に、演算に使われる閾値の候補となる値が複数格納され、閾値可変部10fが、幅の検出値や取得されたデータに対応する値を選択して、演算に使われる閾値を設定することができる。また、閾値は、媒体の幅の値に対して線形的に変化してもよいし、ステップ的に変化してもよい。後者の場合、閾値は、例えば、1(mm)単位で変化したり、幅の範囲毎に、例えば、300(mm)未満、300(mm)以上500(mm)未満、および500(mm)以上、のような複数段階(この例では3段階)毎に異なったりすることができる。また、媒体の幅に替えて、媒体中の印刷範囲(印刷可能範囲)の幅に応じて、閾値を変化させることもできる。
【0025】
また、媒体の厚さや種類により、インクの乾燥しやすさが異なる場合がある。よって、本実施形態では、一例としては、ROM11bやNVRAM11c等の不揮発性の記憶部に、媒体の厚さや種類を表すデータに対応付けて閾値が格納される。そして、閾値可変部10fが、入力部11hや、通信I/F11j等を介して他の制御回路や外部装置等から媒体の厚さや種類を表すデータを取得し、ROM11bやNVRAM11c等の不揮発性の記憶部を参照して、当該データに対応した閾値を取得して設定することができる。
【0026】
また、温度や、湿度、気圧等の環境により、インクの乾燥しやすさが異なる場合がある。よって、本実施形態では、閾値可変部10fは、環境情報(例えば、温度や、湿度、気圧等)に応じて、閾値を変更することができる。具体的には、一例としては、ROM11bやNVRAM11c等の不揮発性の記憶部に、温度あるいは湿度等に対応した閾値を表すデータが格納され、閾値可変部10fが、温度センサ11kから取得された温度を表すデータや、湿度センサ11mから取得された湿度を表すデータに対応した、閾値を表すデータを取得する。この場合も、閾値は、温度や湿度の値に対応して線形的に変化してもよいし、所定の範囲毎にステップ的に変化してもよい。また、記憶部には、閾値を表すデータを、温度および湿度に対応したデータとして格納することができるし、温度および湿度のうちいずれか一方に対応したデータとして格納することもできる。
【0027】
具体的には、例えば、温度については、閾値を、20℃未満、20℃以上25℃未満、25℃以上30℃未満、30℃以上の四つに分けて設定することができる。また、湿度については、閾値を、30%未満、30%以上50%未満、50%以上80%未満、80%以上の四つに分けて設定することができる。ただし、これらはあくまで一例であって、閾値の区分は種々に変更することができる。例えば、閾値の区分の数や、各区分での温度や湿度の範囲は、種々に変更することができる。また、温度と湿度の組み合わせによって、閾値を設定することも可能である。
【0028】
次に、図3を参照して、本実施形態にかかる印刷の中断制御の一例について説明する。なお、図3に表されるフローに基づく制御は、CPU10の印刷制御部10aに制御されたヘッド駆動部11eおよびヘッド12が動作して媒体に対して印刷が実行されている状態で実行される。また、本実施形態では、一例として、中断制御部10bは、中断制御を行うか否かの判断を、所定時間(A時間、例えば1秒)毎に反復して実行する。また、一例として、閾値可変部10fは、印刷制御部10aが印刷制御を開始する前に、閾値を設定することができる。
【0029】
CPU10が、印刷実行中に、タイマ11dから、前のタイミング(印刷あるいは中断制御のスタート時点か、あるいは前に中断制御を行うか否かの判断を実行したタイミング)から所定時間(A時間、例えば1秒)が経過したことを表す信号を受け取ると(ステップS11でYes)、パラメータ算出部10eは、その直前の所定時間(一例としてはB時間、例えば3秒)におけるインクの吐出量を表すデータ(一例としては複数のタイミングでの第一パラメータ)を取得して、閾値と比較する第二パラメータを算出する。第二パラメータは、一例としては、中断制御を実行するタイミングより所定時間(B時間)前のタイミングから直前のタイミングまでの間の(取得され蓄積されていた)第一パラメータの積算値とすることができる。本実施形態では、一例として、吐出された全てのインク(液滴)の吐出量が第一パラメータとして蓄積されているため、第二パラメータは、この時間における(B時間前から直前までの)インクの吐出量に相当する(ステップS12)。
【0030】
次に、中断制御部10bは、インクの吐出量を表す第二パラメータと閾値とを比較する(ステップS13)。このステップS13でインクの吐出量が閾値と同じかあるいは閾値を超えている場合(ステップS13でYes)、中断制御部10bは、印刷制御部10aに、印刷制御の中断を指示する信号を送る。これにより、印刷制御部10aは、媒体への印刷を、所定時間(C時間、例えば2秒)、一時的に停止する(ステップS14)。ステップS13でインクの吐出量が閾値より小さい場合には(ステップS13でNo)、中断制御部10bおよび印刷制御部10aによる一時停止は実行されない。印刷制御部10aは、媒体への印刷が完了すると(ステップS15でYes)、上述の制御を終了する。印刷制御部10aは、媒体への印刷が完了していない場合には(ステップS15でNo)、ステップS11に戻る。
【0031】
以上のように、本実施形態では、中断制御部10bは、インクの吐出量(第二パラメータ)が、閾値を超えた場合に、印刷部としてのヘッド12による印刷を中断させる。すなわち、中断制御部10bは、インクの吐出量が所定の閾値と同じかあるいは超えた場合に、印刷部としてのヘッド12による印刷を中断させる。すなわち、本実施形態では、ヘッド12による(直近の)印刷におけるインクの吐出量が多いほど、中断制御部10bによる印刷中断の頻度が高まる。よって、本実施形態によれば、一例としては、インクの乾燥不足による不都合が抑制されやすい。また、一例としては、長尺状の媒体に印刷される場合にも、インクの乾燥不足による不都合が生じるのを抑制することができる。なお、本実施形態にかかる中断制御は、シート状の媒体に印刷される場合にも適用することができる。
【0032】
また、本実施形態では、中断制御部10bによる印刷を中断させるか否かの決定が、所定の時間間隔で(本実施形態では、一例として、A時間毎に)行われる。よって、一例としては、インクの乾燥が必要な状況が生じた場合に、より迅速に中断制御を実行することができる。よって、一例としては、インクの乾燥不足による不都合が生じるのをより抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態では、閾値可変部10fは、閾値を可変設定する。すなわち、状況に応じて、中断制御部10bによる中断の頻度が変化する。よって、一例としては、インクの乾燥の要否をより精度良くあるいはより効率良く判断することができる。よって、一例としては、インクの乾燥不足による不都合が生じるのをより抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態では、閾値可変部10fは、媒体の属性情報に応じて閾値を可変設定する。すなわち、媒体の属性(媒体の幅、厚さ、および種類のうち少なくとも一つ)に応じて、中断制御部10bによる中断の頻度が変化する。よって、一例としては、媒体の属性に応じて、インクの乾燥の要否をより精度良くあるいはより効率良く判断することができる。よって、一例としては、インクの乾燥不足による不都合が生じるのをより抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態では、閾値可変部10fは、温度検出部としての温度センサ11kによって検出された温度が低いほど、閾値を低く設定する。すなわち、温度が低いほど、中断制御部10bによる中断の頻度が高くなり、温度が高いほど、中断制御部10bによる中断の頻度が低くなる。よって、一例としては、温度に応じて、インクの乾燥の要否をより精度良くあるいはより効率良く判断することができる。よって、一例としては、インクの乾燥不足による不都合が生じるのをより抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態では、閾値可変部10fは、湿度検出部としての湿度センサ11mによって検出された湿度が高いほど、閾値を低く設定する。すなわち、湿度が高いほど、中断制御部10bによる中断の頻度が高くなり、湿度が低いほど、中断制御部10bによる中断の頻度が低くなる。よって、一例としては、湿度に応じて、インクの乾燥の要否をより精度良くあるいはより効率良く判断することができる。よって、一例としては、インクの乾燥不足による不都合が生じるのをより抑制することができる。
【0037】
<第2実施形態>
本実施形態にかかる画像形成装置1は、上記第1実施形態と同様の構成を備えている。ただし、本実施形態では、図4に示された手順で、中断制御が行われる。相違点の一つとして、第1実施形態では、印刷制御(中断制御)が開始される前に閾値が設定されたのに対し、本実施形態では、中断制御が実行される各タイミングで閾値が設定される。すなわち、本実施形態では、閾値は、環境等の状況の変化に応じて、可変設定される。相違点のもう一つとして、第1実施形態では、閾値と比較される第二パラメータがインクの吐出量(第一パラメータ)の積算値(すなわち、インクの吐出量)として算出されたのに対し、本実施形態では、第二パラメータがインクの吐出量に応じて増大するもののインクの吐出量とは異なる値として算出される。
【0038】
まず、CPU10(例えば閾値可変部10f)は、媒体の属性情報を取得し、取得した属性情報を、RAM11aやNVRAM11c等の書き換え可能な記憶部に格納する(ステップS21)。次に、CPU10は、印刷実行中に、タイマ11dから、前のタイミング(印刷あるいは中断制御のスタート時点か、あるいは前に中断制御を行うか否かの判断を実行したタイミング)から所定時間(A時間、例えば1秒)が経過したことを表す信号を受け取ると(ステップS22でYes)、閾値可変部10fは、温度センサ11kで測定された温度の測定データや、湿度センサ11mで測定された湿度の測定データ等の環境情報を取得する(ステップS23)。そして、閾値可変部10fは、媒体の属性情報および環境情報に基づいて、閾値を設定する(ステップS24)。このステップS24では、環境情報に応じて、すなわち、温度や湿度等に応じて、閾値が可変設定される。なお、図4では、中断制御を行うか否かの判断を実行した全タイミングで閾値が設定されるが、これはあくまでも一例であって、別の一例としては閾値を数回に一回変更するなど、全タイミングで閾値を変更することは必須ではない。
【0039】
次に、パラメータ算出部10eは、その直前の所定時間(一例としてはB時間、例えば3秒)におけるインクの吐出量を表すデータ(一例としては複数のタイミングでの第一パラメータ)を取得し(ステップS25)、取得した第一パラメータに基づいて、閾値と比較する第二パラメータを算出する(ステップS26)。第二パラメータは、一例としては、中断制御を実行するタイミングより所定時間(B時間)前のタイミングから直前のタイミングまでの間の(取得され蓄積されていた)各第一パラメータを、当該第一パラメータ(インクの吐出量、消費量)が取得されてからの経過時間(または経過時間に応じた係数)で除した値の積算値とすることができる。インクは、媒体に吐出されてからの経過時間が長くなるほど乾燥するため、吐出されてからの経過時間が長くなるほど、インクによる不都合が生じにくくなる。
【0040】
ここで、一例として、第一パラメータをp1(p11,p12,p13)、第二パラメータをp2、係数をαとし、B時間の一例としての3秒間を1秒間ずつ三つの期間に分けて、第二パラメータp2を次の式(1)で算出することができる。
p2=p11×α/3+p12×α/2+p13×α/1 ・・・(1)
ここに、p11:B時間のうち最初の期間(3秒前〜2秒前)における第一パラメータ、p12:B時間のうちp11の次の期間(2秒前〜1秒前)における第一パラメータ、p13:B時間のうちp12の次で最後の期間(1秒前〜0秒前)における第一パラメータ、α:係数(正の数、一例として実験データ等を参考に予め設定しておく、可変設定も可)である。式(1)は、第二パラメータを、加重移動平均として算出していることになる。また、上記式(1)では、第二パラメータp2は、各第一パラメータ(p11,p12,p13)を、それぞれの経過時間(その代表値としての、3秒、2秒、1秒)に応じた係数(3/α、2/α、1/α、経過時間に比例する係数)で除した値(右辺の各項)の、積算値に相当している。また、上記式(1)では、第二パラメータp2は、各第一パラメータ(p11,p12,p13)に、それぞれの経過時間(その代表値としての、3秒、2秒、1秒)に反比例する係数(α/3、α/2、α/1)を乗じた値(右辺の各項)の、積算値にも相当している。なお、この式(1)はあくまで一例に過ぎず、種々の変更が可能である。例えば、第一パラメータをより細かく分けてもよいし、経過時間の代表値として異なる値を用いてもよい。
【0041】
このような設定により、一例としては、インクの乾燥不足による不都合が生じるのをより抑制することができる。なお、第二パラメータは、インクの吐出量(消費量)が多いほど大きい値であり、かつインクが吐出されてからの経過時間が長いほど小さい値であればよい。よって、一例としては、各第一パラメータを経過時間で除するとともに時間に応じた係数を乗じた値の積算値として第二パラメータを算出するなど、第二パラメータは、種々に設定することができる。
【0042】
次に、中断制御部10bは、インクの吐出量に応じた第二パラメータと閾値とを比較する(ステップS27)。このステップS27で第二パラメータが閾値と同じかあるいは閾値を超えている場合(ステップS27でYes)、中断制御部10bは、印刷制御部10aに、印刷制御の中断を指示する信号を送る。これにより、印刷制御部10aは、媒体への印刷を、所定時間(C時間、例えば2秒)、一時的に停止する(ステップS28)。ステップS27で第二パラメータが閾値より小さい場合には(ステップS27でNo)、中断制御部10bおよび印刷制御部10aによる一時停止は実行されない。印刷制御部10aは、媒体への印刷が完了すると(ステップS29でYes)、上述の制御を終了する。印刷制御部10aは、媒体への印刷が完了していない場合には(ステップS29でNo)、ステップS22に戻る。
【0043】
以上のように、本実施形態では、中断制御部10bは、インクの吐出量に応じて変動する第二パラメータが、閾値を超えた場合に、印刷部としてのヘッド12による印刷を中断させる。よって、本実施形態でも、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態では、中断制御部10bが印刷の中断を行うか否かを判断するタイミングで、閾値可変部10fが閾値を可変設定する。よって、一例としては、環境の変化に応じて、インクの乾燥の要否をより精度良くあるいはより効率良く判断することができる。よって、一例としては、インクの乾燥不足による不都合が生じるのをより抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、パラメータ算出部10eは、インクの吐出量を当該インクが吐出されてからの経過時間で除した値に応じたパラメータを算出する。すなわち、本実施形態では、媒体上に吐出された新しいインクが多いほど、中断の頻度が高くなる。よって、経過時間に応じたインクの乾燥度を反映させることができるので、一例としては、インクの乾燥不足による不都合が生じるのを、より精度良くあるいはより効率良く抑制することができる。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上記実施形態はあくまで一例であって、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変更が可能である。例えば、各実施形態を組み合わせたり、各実施形態を部分的に変更して組み合わせたり、一の実施形態に他の実施形態の演算処理を部分的に付加したり、各実施形態から部分的に演算処理を削除したり変更したりして、実施することも、可能である。
【0046】
また、例えば、第二パラメータを温度や湿度等に応じて算出することができる。具体的には、例えば、第一パラメータをp1、第二パラメータをp2、温度をT、係数をβとして、第二パラメータp2を次の式(2)で算出することができる。
p2=p1×β/T ・・・(2)
また、例えば、第一パラメータをp1、第二パラメータをp2、湿度をH、係数をγとして、第二パラメータp2を次の式(3)で算出することができる。
p2=p1×H/γ ・・・(3)
さらに、温度Tおよび湿度Hの双方を考慮し、第一パラメータをp1、第二パラメータをp2、温度をT、湿度をH、係数をδとして、第二パラメータp2を、次の式(4)で算出することができる。
p2=p1×δ×H/T ・・・(4)
なお、上記式(2)〜(4)において、係数β,γ,δは、実験データ等を参考に予め設定しておく。また、上記式(2)〜(4)と同様に、第二パラメータを、媒体の属性情報に応じた値として算出することもできる。
【0047】
また、上記実施形態の画像形成装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供されうる。
【0048】
さらに、上記実施形態の画像形成装置1で実行されるプログラムが、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータに格納され、ネットワーク経由でダウンロードされてインストールされてもよい。また、上記実施形態の画像形成装置で実行されるプログラムは、インターネット等のネットワーク経由で提供または配信されうる。
【符号の説明】
【0049】
1…画像形成装置
10a…印刷制御部
10b…中断制御部
10e…パラメータ算出部
10f…閾値可変部
11k…温度センサ
11m…湿度センサ
12…ヘッド(印刷部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2007−069530号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録方式により媒体に印刷する印刷部と、
所定のタイミングで当該タイミングの所定時間前からの前記印刷部の印刷によるインクの吐出量に基づくパラメータを算出するパラメータ算出部と、
前記パラメータが前記所定の閾値と同じかあるいは超えた場合に、前記印刷部による印刷を中断させる中断制御部と、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記中断制御部による印刷を中断させるか否かの決定が、所定の時間間隔で行われる、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記パラメータ算出部は、前記吐出量を前記インクが吐出されてからの経過時間で除した値、に応じた前記パラメータを算出する、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
さらに、前記閾値を可変設定する閾値可変部を備えた、請求項1〜3のうちいずれか一つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記閾値可変部は、前記媒体の属性情報に応じて前記閾値を可変設定する、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記属性情報は、前記媒体の幅、厚さ、および種類のうち少なくとも一つである、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
さらに、温度を検出する温度検出部を備え、
前記閾値可変部は、前記温度検出部によって検出された温度が低いほど、前記閾値を低く設定する、請求項4〜6のうちいずれか一つに記載の画像形成装置。
【請求項8】
さらに、温度を検出する湿度検出部を備え、
前記閾値可変部は、前記湿度検出部によって検出された湿度が高いほど、前記閾値を低く設定する、請求項4〜7のうちいずれか一つに記載の画像形成装置。
【請求項9】
コンピュータを、
インクジェット記録方式により媒体に印刷する印刷部を制御して当該印刷部に印刷させる印刷制御部、
所定のタイミングで当該タイミングの所定時間前からの前記印刷部の印刷によるインクの吐出量に基づくパラメータを算出するパラメータ算出部、および、
前記パラメータが前記所定の閾値と同じかあるいは超えた場合に、前記印刷部による印刷を中断させる中断制御部、
として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−240368(P2012−240368A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114838(P2011−114838)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】