説明

画像形成装置、主走査方向濃度ムラ補正データ作成方法

【課題】測定用チャートの出力枚数を抑えるとともに、副走査方向に発生する濃度ムラの影響を軽減しつつ、主走査方向に発生する濃度ムラの補正値を算出することができる画像形成装置、および主走査方向濃度ムラ補正データ作成方法を提供する。
【解決手段】測定用チャートの濃度分布プロファイルにおいて、主走査方向におけるある特定位置の副走査方向の濃度ムラの影響を補正し、その補正値から該特定位置以外の位置の補正値を求め、これによって得られる副走査方向濃度ムラの影響が補正された濃度分布プロファイルから、主走査方向の濃度ムラの補正値を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主走査方向の濃度ムラを検出する画像形成装置、および主走査方向濃度ムラ補正データ作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置が印刷出力を行う際には、機器特性や経時変化等の様々な要因により、データ上で一定の階調の色を出力したとしても、印刷物においては濃度にムラ(濃度ムラ)が生じる。副走査方向の位置を少しずつ移動させながら主走査方向の画像形成を繰り返し行って二次元の画像を生成する印刷装置では、主走査方向に発生する濃度ムラ(以後、主走査方向濃度ムラと記述する)に再現性があるので、縦縞状の濃度ムラになり易い。
【0003】
そこで、この主走査方向濃度ムラを補正する為に、主走査方向に延びた均一濃度の帯状画像を異なる濃度について副走査方向に複数本並置した測定用チャートを出力し、その濃度分布の測定結果から、用紙上に形成された画像の濃度が均一となるような補正データを算出し、この補正データを用いて画像信号値を補正することが行われる。
【0004】
しかし、画像が形成される際の濃度は、主走査方向に発生する濃度ムラだけではなく、副走査方向に発生する濃度ムラ(以後、副走査方向濃度ムラと記述する)の影響も受ける。そのため、副走査方向濃度ムラの影響を受けている測定用チャートの測定結果から主走査方向濃度ムラの補正値を算出すると、不適切な補正値が算出されてしまう可能性がある。そこで、この副走査方向濃度ムラも考慮しつつ濃度ムラを補正する方法が提案されている。
【0005】
たとえば、主走査方向及び副走査方向に濃度が一定の1ページ分のテスト画像を、その濃度をページ毎に段階的に変化させて複数ページ作成し、それらの濃度分布を検出することで、主走査方向濃度ムラを補正するための補正データを、副走査方向濃度ムラの影響を受けることなく作成する方法(特許文献1参照)が提案されている。また、同色の同一濃度階調値のパッチを、副走査方向に所定の距離だけ離れた2位置に生成し、その2位置に生成された各パッチの濃度を測定し、その測定値から副走査方向濃度ムラが軽減されるように画像信号値の補正データを作成する方法(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−192896号公報
【特許文献2】特開2007−264364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示の方法は、濃度を測定する階調数に等しい枚数の測定用チャートを出力しなければならないため、多数の階調値について濃度検出を行うには測定用チャートの枚数が増えてしまう。
【0008】
また、特許文献2に開示の方法は、特定の主走査方向位置においてのみ濃度検出するものであり、その特定の主走査方向位置以外の主走査方向位置では濃度検出が行われないため、特定の主走査方向位置以外の主走査方向位置に発生する副走査方向濃度ムラの影響を補正することはできない。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、測定用チャートの出力枚数を抑えて、副走査方向の濃度ムラの影響の軽減された主走査方向の濃度ムラの補正データを算出することができる画像形成装置、および、主走査方向濃度ムラ補正データ作成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0011】
[1]画像データに基づいて画像形成する画像形成部と
前記画像形成部の主走査方向の濃度ムラを補正するための主走査方向濃度ムラ補正データを作成する補正データ生成部と、
前記画像形成部に出力する画像データを前記補正データ生成部の作成した主走査方向濃度ムラ補正データに基づいて補正する補正部と、
を備え、
前記補正データ生成部は、
前記画像形成部で画像形成された主走査方向濃度ムラの測定用チャートの濃度分布を測定して得た濃度分布データを取得すると共に、前記画像形成部で画像形成された所定のテスト画像の濃度測定結果に基づいて生成された、特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの影響の排除された第1濃度データと、前記特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの影響が排除されていない第2濃度データとを取得し、
前記第1濃度データと前記第2濃度データとから前記特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データを求め、
前記補正データに基づいて前記特定主走査方向位置以外の各主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データを推定し、
前記濃度分布データの各主走査方向位置における濃度値をそれぞれの主走査方向位置に対応する前記補正データで補正して副走査方向の濃度ムラの影響が排除された第2濃度分布データを求め、該第2濃度分布データから前記主走査方向濃度ムラ補正データを求める
ことを特徴とする画像形成装置。
【0012】
上記[1]および下記[5]のいずれかに係る発明では、主走査方向濃度ムラの測定用チャートの濃度分布を測定して得た濃度分布データを、副走査方向に発生する濃度ムラの影響を受けていない第2濃度分布データに補正し、その補正後の第2濃度分布データから、主走査方向に発生する濃度ムラの影響を補正するための主走査方向濃度ムラ補正データを作成する。測定によって得た濃度分布データを副走査方向に発生する濃度ムラの影響を受けていない第2濃度分布データに補正する際には、特定主走査方向位置における副走査方向に発生する濃度ムラの影響を補正する補正値を算出し、その算出した補正値から他の主走査方向位置以外の位置における副走査方向の濃度ムラを補正する補正値を決定する。これにより、副走査方向に発生する濃度ムラの影響を受けることなく主走査方向に発生する濃度ムラの影響を補正する補正データを作成することができる。
【0013】
[2]前記補正データ生成部は、前記特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データと同一の補正データを、前記特定主走査方向位置以外の各主走査方向位置の補正データとして前記推定する
ことを特徴とする[1]に記載の画像形成装置。
【0014】
上記[2]および下記[6]のいずれかに係る発明では、測定によって得た濃度分布データを副走査方向に発生する濃度ムラの影響を受けていない第2濃度分布データに補正する際には、特定主走査方向位置における副走査方向に発生する濃度ムラの影響を補正する補正データを算出し、その補正データと同一の補正データを、前記特定主走査方向位置以外の各主走査方向位置の補正データとして推定する。
【0015】
[3]前記測定用チャートの濃度分布を測定して得た前記濃度分布データは、複数の階調値のそれぞれに係る主走査方向の濃度分布データで構成され、
前記補正データ生成部は、第1の階調値に係る前記濃度分布データの中の前記特定主走査方向位置における濃度値と第2の階調値に係る前記濃度分布データの中の前記特定主走査方向位置における濃度値との差分と、前記特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データとの比率を求め、
任意の主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データを、前記第1の階調値に係る前記濃度分布データの中の前記任意の主走査方向位置における濃度値と前記第2の階調値に係る前記濃度分布データの中の前記任意の主走査方向位置における濃度値との差分と、前記比率とに基づいて推定する
ことを特徴とする[1]に記載の画像形成装置。
【0016】
上記[3]および下記[7]のいずれかに係る発明では、測定によって得た濃度分布データを副走査方向に発生する濃度ムラの影響を受けていない第2濃度分布データに補正する際には、特定主走査方向位置における副走査方向に発生する濃度ムラの影響を補正する補正データを算出し、第1の階調値に係る濃度分布データの中の特定主走査方向位置での濃度と、前記第1の階調値とは別の第2の階調値に係る濃度分布データの中の特定主走査方向位置での濃度との濃度差と、先ほど算出した補正データとの比率を求める。そして、特定主走査方向位置以外の主走査方向位置での補正データと、第1の階調値に係る濃度分布データの中のその位置での濃度値と第2の階調に係る濃度分布データの中のその位置での濃度値との濃度差との比率が先ほど求めた比率と同じになるように、特定主走査方向位置以外の主走査方向位置での補正データを決定する。
【0017】
[4]前記第1の階調値は前記測定用チャートにおいて最も濃度が高い階調値であり、前記第2の階調値は前記測定用チャートにおいて最も濃度の低い階調値である
ことを特徴とする[3]に記載の画像形成装置。
【0018】
[5]所定の画像形成部で画像形成された主走査方向濃度ムラの測定用チャートの濃度分布を測定して得た濃度分布データを取得すると共に、前記画像形成部で画像形成された所定のテスト画像の濃度測定結果に基づいて生成された、特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの影響の排除された第1濃度データと、前記特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの影響が排除されていない第2濃度データとを取得し、
前記第1濃度データと前記第2濃度データとから前記特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データを求め、
前記補正データに基づいて前記特定主走査方向位置以外の各主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データを推定し、
前記濃度分布データの各主走査方向位置における濃度値をそれぞれの主走査方向位置に対応する前記補正データで補正して副走査方向の濃度ムラの影響が排除された第2濃度分布データを求め、該第2濃度分布データから前記主走査方向濃度ムラ補正データを求める
ことを特徴とする主走査方向濃度ムラ補正データ作成方法。
【0019】
[6]前記特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データと同一の補正データを、前記特定主走査方向位置以外の各主走査方向位置の補正データとして前記推定する
ことを特徴とする[5]に記載の主走査方向濃度ムラ補正データ作成方法。
【0020】
[7]前記測定用チャートの濃度分布を測定して得た前記濃度分布データは、複数の階調値のそれぞれに係る主走査方向の濃度分布データで構成されており、
第1の階調値に係る前記濃度分布データの中の前記特定主走査方向位置における濃度値と第2の階調値に係る前記濃度分布データの中の前記特定主走査方向位置における濃度値との差分と、前記特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データとの比率を求め、
任意の主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データを、前記第1の階調値に係る前記濃度分布データの中の前記任意の主走査方向位置における濃度値と前記第2の階調値に係る前記濃度分布データの中の前記任意の主走査方向位置における濃度値との差分と、前記比率とに基づいて推定する
ことを特徴とする[5]に記載の主走査方向濃度ムラ補正データ作成方法。
【0021】
[8]前記第1の階調値は前記測定用チャートにおいて最も濃度が高い階調値であり、前記第2の階調値は前記測定用チャートにおいて最も濃度の低い階調値である
ことを特徴とする[7]に記載の主走査方向濃度ムラ補正データ作成方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る画像形成装置および主走査方向濃度ムラ補正データ作成方法によれば、測定用チャートの出力枚数を抑えて、主走査方向に発生する濃度ムラの補正値を、副走査方向に発生する濃度ムラからの影響を軽減しつつ算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置と測定用チャートを示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るテスト画像と、テスト画像を測定して得た濃度分布プロファイルを示す説明図である。
【図4】副走査方向濃度ムラの影響を受けてない濃度分布プロファイルと影響を受けた濃度分布プロファイルを示す説明図である。
【図5】副走査方向濃度ムラの影響を受けてない濃度分布プロファイルと影響を受けた濃度分布プロファイルに各階調の平均濃度を示す線を加えた状態を示す説明図である。
【図6】テスト画像を測定して得た濃度分布プロファイルを副走査方向濃度ムラの影響が軽減するように補正する流れを示す流れ図である。
【図7】特定主走査方向位置での副走査方向濃度ムラの補正量から、他の主走査方向位置での補正量を決定する具体例を示す説明図である。
【図8】比率の基準となる階調間の2つの例を示す説明図である。
【図9】第2の算出方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置10と、この画像形成装置10の濃度調整に使用される測定用チャート50とを示している。
【0026】
測定用チャート50は、画像形成装置10がデータ上で出力した濃度と、実際に画像形成したものとの濃度差を調べるための測定用の濃度サンプルシートである。
【0027】
画像形成装置10は、原稿を光学的に読み取ってその複製画像を記録紙に印刷するコピージョブ、読み取った原稿の画像データをファイルにして保存したり外部装置へ送信したりするスキャンジョブ、PCから送出されたデータに係る画像を記録紙に印刷して出力するプリントジョブなどのジョブを実行する機能を備えた、所謂、複合機である。本発明では、画像形成装置10は、測定用チャート50の濃度を測定し、それによって得た実測値と、データ上で出力した濃度との濃度差(濃度ムラ)を算出し、その濃度ムラのうち、主走査方向濃度ムラを補正するための補正値を求める。なお、画像形成を行う際に記録紙が通紙経路を移動する方向を副走査方向とし、副走査方向に直交する方向を主走査方向とする。
【0028】
図2は、画像形成装置10の概略構成を示している。画像形成装置10は、当該画像形成装置10の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)11と、このCPU11に接続されたROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、不揮発メモリ14と、ハードディスク装置15と、表示部16と、操作部17と、ネットワークI/F部19と、スキャナ部20と、画像処理部21と、プリンタ部22と、ファクシミリ通信部23と、濃度センサ部18とを備えて構成されている。
【0029】
CPU11はOS(Operating System)プログラムをベースとし、その上で、ミドルウェアやアプリケーションプログラムなどが実行される。ROM12には各種のプログラムが格納されており、これらのプログラムに従ってCPU11が処理を実行することでジョブの実行など画像形成装置10の各機能が実現される。RAM13はCPU11がプログラムを実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリや画像データを格納する画像メモリなどとして使用される。本発明では、CPU11は、主走査方向濃度ムラを補正するための補正値を求め、その求めた補正値に基づいて画像形成の際に出力される画像信号値を補正する。
【0030】
不揮発メモリ14は、電源がオフにされても記憶が保持できる書き換え可能なメモリ(フラッシュメモリ)である。不揮発メモリ14には、装置固有の情報や各種の設定情報などが記憶される。ハードディスク装置15は、大容量の不揮発の記憶装置であり、OSプログラムや各種アプリケーションプログラム、印刷データや画像データ、ジョブに係る情報履歴、などが保存される。
【0031】
表示部16は、液晶ディスプレイ(LCD…Liquid Crystal Display)などで構成され、各種の操作、設定に係る内容を表示する機能を果たす。操作部17は、ユーザからのジョブの投入や設定の変更など、各種の操作を受け付ける機能を果たす。操作部17は、表示部16の画面上に設けられて押下された座標位置を検出するタッチパネルのほか、画面外にテンキーや文字入力キー、スタートキーなどを備えて構成される。
【0032】
ネットワークI/F部19は、LANなどのネットワークを通じて接続されている他の外部装置などと通信を行う。
【0033】
スキャナ部20は、原稿を光学的に読み取って画像データを取得する機能を果たす。スキャナ部20は、たとえば、原稿に光を照射する光源と、その反射光を受けて原稿を幅方向に1ライン分読み取るラインイメージセンサと、ライン単位の読取位置を原稿の長さ方向に順次移動させる移動手段と、原稿からの反射光をラインイメージセンサに導いて結像させるレンズやミラーなどからなる光学経路、ラインイメージセンサの出力するアナログ画像信号をデジタルの画像データに変換する変換部などを備えて構成される。
【0034】
画像処理部21は、画像の拡大縮小、回転などの処理のほか、印刷データをイメージデータに変換するラスタライズ処理、画像データの圧縮、伸張処理を行う。
【0035】
プリンタ部22は、画像データに応じた画像を記録紙上に画像形成する機能を果たす。ここでは、記録紙の搬送装置と、感光体ドラムと、帯電装置と、レーザーユニットと、現像装置と、転写分離装置と、クリーニング装置と、定着装置などを有し、電子写真プロセスによって画像形成を行う、所謂、レーザープリンタとして構成されている。画像形成出力(印刷)を行う際は、主走査方向への1ライン分の画像形成を繰り返しつつ、画像形成の対象物(記録紙)を副走査方向に移動させることによって、記録紙上に2次元の画像が形成される。
【0036】
ファクシミリ通信部23は、ファクシミリ送信および受信に係る動作を制御する。
【0037】
濃度センサ部18は、プリンタ部22が出力した測定用チャート50の濃度分布を測定する。ここでは赤、緑、青のLED(Light Emitting Diode)光源からの発射光をセンサで読み取り、センサ(フォトダイオード)の電圧をLab表色系に変換する。このデータについては、測色計との相関に基づき校正してある。本発明の実施の形態では、測定用チャート50の濃度を測定する際には、たとえば、スキャナ部20で画像をスキャンする時と同じくユーザが測定用チャート50を画像形成装置10にセットし、スキャンすることによって行う。
【0038】
画像形成装置10は、測定用チャート50を画像形成出力し(図1(1))、その出力した測定用チャート50の濃度分布を測定し(図1(2))、その測定した濃度と測定用チャート50を出力する際にデータ上で出力した濃度との差から、測定用チャート50上に発生した濃度ムラを検出し、以降に画像形成(印刷)出力を行う際には、濃度ムラのうち、主走査方向濃度ムラの影響が軽減されるように画像信号値を補正する補正データを算出する(図1(3))「濃度ムラ補正データ算出機能」を果たす。画像形成装置10は、この補正データを算出する際には、測定した濃度分布データ(濃度分布プロファイル)から、副走査方向濃度ムラによる影響を除いた補正後濃度分布データを作成し、その補正後濃度分布データから主走査方向濃度ムラに対する補正データを算出する。
【0039】
図3は、測定用チャート50を画像形成するための画像データが表しているテスト画像30と、その画像データに基づいてプリンタ部22で画像形成された測定用チャート50の濃度分布を測定して得た濃度分布をグラフで示した濃度分布プロファイル40の一例を示す。
【0040】
テスト画像30は、主走査方向に伸びた複数本の濃度が異なる単色の帯が、副走査方向にその濃度順で隣接して並んで配置された画像である。帯の色は最も濃度の濃い濃度の色を黒、最も濃度の薄い濃度の色を白とし、その間の帯は濃度差が均等になるように順次濃くなる色にされている。帯は、プリンタ部22が主走査方向において画像形成可能な幅にほぼ等しい長さであり、副走査方向における帯の幅は、濃度が測定できる範囲で適宜設定する。本実施の形態では、白から黒までの9段階の濃度の色の帯が副走査方向にその濃度順に並んでいる(図3参照)。
【0041】
濃度分布プロファイル40は、テスト画像30の画像データに基づいて記録紙上に画像形成された測定用チャート50の主走査方向位置における、各帯の濃度分布を示すグラフである。図3のテスト画像30は帯が9本あるので、濃度分布プロファイル40でも9本の各帯について、主走査方向位置ごとの濃度が示されている。画像データ上での各帯の濃度は均一なので、その濃度がそのまま記録紙上に再現されれば、濃度分布プロファイル40においての各帯の主走査方向位置ごとの濃度を示す線は直線となる。しかし、画像形成される際に主走査方向濃度ムラ、及び副走査方向濃度ムラが発生すると、図3に示す濃度分布プロファイル40のように、濃度が変動してしまう。
【0042】
図4、図5は、副走査方向濃度ムラの影響が軽減されていない状態の濃度分布プロファイル40と、濃度分布プロファイル40から副走査方向濃度ムラの影響を除いた場合の濃度分布プロファイル40Aとを示す。図中(図4、図5)では濃度分布プロファイル40A、濃度分布プロファイル40は並べて(左が濃度分布プロファイル40A、右が濃度分布プロファイル40)配置(同じ尺度で)されている。図5では、2つの濃度分布プロファイルにおいて、各帯の濃度分布の平均濃度を示す直線(灰色実線)が更に引かれている。副走査方向濃度ムラは、主走査方向において均一に影響が発生するとは限らないので、各帯の濃度分布の平均を示すことで、副走査方向濃度ムラの影響の確認を容易にする。図5で濃度分布プロファイル40Aと濃度分布プロファイル40を比較すると、測定用チャート50上で同じ帯の濃度分布を示す線であるにもかかわらず平均濃度が異なる部分があることから、その部分に対応する帯が画像形成された箇所に副走査方向濃度ムラが発生したことを確認することができる。図中の破線楕円43の部分では、濃度分布プロファイル40Aと濃度分布プロファイル40における平均濃度の違いが顕著に表れている。
【0043】
図6は、画像形成装置10が、測定用チャート50から測定して得た濃度分布プロファイル40を副走査方向濃度ムラの影響を受けていない濃度分布プロファイル40Aへ補正するまでの処理の流れを示す。
【0044】
以下の処理は、測定用チャート50上の全帯のそれぞれについて行われる処理であるが、ここでは所定の帯に注目して説明する。まず、公知技術(特許文献2)により、画像形成装置10が画像形成を行う際の特定主走査方向位置において、副走査方向濃度ムラの影響を取り除いた濃度測定情報を取得する(ステップS601)。この濃度測定情報とは、テスト画像30の画像データに基づいて記録紙上に画像形成された測定用チャート50上の特定主走査方向位置における注目する帯の濃度について、副走査方向濃度ムラの影響を取り除いた状態での濃度を予め調べたものである。
【0045】
次に測定用チャート50を印刷出力し、その出力された測定用チャート50上の注目する帯の主走査方向の濃度分布を測定する(ステップS602)。この測定結果から濃度分布プロファイル(図3、4、5の濃度分布プロファイル40参照)を作成する。ここで作成された濃度分布プロファイルは副走査方向濃度ムラ及び主走査方向濃度ムラの影響を受けている状態の濃度分布を示す。
【0046】
ステップS601で得た濃度測定情報の示す濃度値と、ステップS602で得た濃度分布プロファイルの特定主走査方向位置における濃度値との差分を副走査方向濃度ムラの影響を補正するための補正値として求める(ステップS603)。
【0047】
濃度分布プロファイル上の該特定主走査方向位置における最も濃度が薄い帯の濃度値(階調値)と最も濃度が濃い帯の濃度値(階調値)との濃度差と、ステップS603で求めた補正値(移動量)との比率を求める(ステップS604)。
【0048】
そして、特定主走査方向位置以外の各主走査方向位置では、その主走査方向位置での最も濃度が薄い帯の濃度値と最も濃度が濃い帯の濃度値との濃度差とステップS605で求めた比率から、その主走査方向位置での副走査方向濃度ムラの影響を補正するための補正値を算出する(ステップS605)。算出式は((特定位置での補正値/特定位置での最大最小濃度差)×任意位置での最大最小濃度差)である。この方法によって特定位置以外の全ての位置での補正値を求める。
【0049】
最後に、ステップS603、ステップS605で得た補正値によって、注目する帯の全主走査方向位置の濃度値に副走査方向濃度ムラの影響を軽減する補正を行い(ステップS606)、処理を終了する。
【0050】
この処理が全帯に対して行われると、副走査方向濃度ムラの影響が補正された濃度分布プロファイルが得られる。画像形成装置10は、この補正後の濃度分布プロファイルから、主走査方向濃度ムラを補正する補正データを作成する。この補正データは、補正後の濃度分布プロファイルの各帯の濃度値とテスト画像30の各帯の濃度値との差分から作成される。画像形成装置10は、以降の画像形成出力の際に、この補正データを使用して、主走査方向濃度ムラの影響が軽減されるように画像信号値の表す濃度値を補正する。
【0051】
ここで、図6のステップS604とステップS605の具体例(特定主走査方向位置以外の位置での補正値の算出方法)を2つ示す。
【0052】
<第1の算出方法>
図7は、濃度分布プロファイル40上の特定主走査方向位置41および、特定主走査方向位置41以外の第2主走査方向位置42において、濃度線F(図7参照、図中の濃度分布プロファイル40において上から3番目の帯の濃度を示す濃度線)における各主走査方向位置の濃度値から副走査方向濃度ムラの影響を軽減するための補正値を求める様子を示す。図7には同一の濃度分布プロファイル40が上下に並んでおり、上側の図7(A)では濃度線Fの特定主走査方向位置41における副走査方向濃度ムラの補正値を求め、下側の図7(B)では濃度線Fの第2主走査方向位置における副走査方向濃度ムラの補正値を求めている。
【0053】
図7(A)では濃度線Fの特定主走査方向位置41における副走査方向濃度ムラの影響を補正しており、濃度0.5から濃度0.6への補正が行われている(補正値=0.1)。濃度分布プロファイル40において特定主走査方向位置41での濃度が最も濃い帯の濃度値と最も薄い帯の濃度値との濃度差は2.0である。この特定主走査方向位置41での補正値(補正による移動量)0.1と濃度差2.0の比率(0.1:2.0)を使用して、図7(B)では、濃度線Fの第2主走査方向位置42における副走査方向濃度ムラの影響を補正する補正値Xを算出する。
【0054】
図7(B)では、第2主走査方向位置42における濃度が最も濃い帯の濃度値と最も薄い帯の濃度値との濃度差(濃度差Yとする)は2.2である。第2主走査方向位置42における補正値Xと濃度差Y(Y=2.2)の比率が、先ほど求めた特定主走査方向位置41での比率と、同じ比率になるように補正値Xを決定する。({0.1:2.0}={X:2.2})でX=0.11となる(図7(B)参照)。
【0055】
図8には、上記第1の算出方法における変形例を示す。図8では、図7と同じく同一の濃度分布プロファイル40が上下に並んで配置されている。上側の図8(A)は、図7と同じ算出方法を、下側の図8(B)は変形例を示している。図8(A)の濃度分布プロファイル40では、図7と同じく特定主走査方向位置41において濃度が最も濃い帯の濃度値と最も薄い帯の濃度値との濃度差Yaと、濃度線Fにおける補正値Xaとの比率を、他の主走査方向位置での補正値を算出する基準(比率基準A)として採用している。しかし、図8(B)の濃度分布プロファイル40では、特定主走査方向位置41において濃度が最も濃い帯の濃度値と白紙部分(濃度0)との濃度差Ybと、濃度線Fにおける補正値Xbとの比率を、他の主走査方向位置での補正値を算出する基準(比率基準B)として採用している。画像形成装置10は第1の算出方法を使用する際には、比率基準Aもしくは比率基準Bのどちらかを採用する。
【0056】
<第2の算出方法>
図9では、図7とは別の方法で特定主走査方向位置41以外の他の主走査方向位置での補正値を決定する際の例を示す。図9では、濃度線Fの特定主走査方向位置41においての補正値Xcが、濃度線Fの他の主走査方向位置での補正値としてそのまま採用されている。つまり、第2の算出方法では、所定の濃度線の特定主走査方向位置41における補正値が、同じ濃度線上の全主走査方向位置にそのまま適用される。第2の算出方法は、第1の算出方法と比べて画像形成装置10での処理量が少なくて済む。
【0057】
このように、本発明では、測定用チャート50を測定して得た濃度分布プロファイル40(グラフ)の副走査方向の濃度ムラの影響を補正する(濃度分布プロファイル40から濃度分布プロファイル40Aに補正する)。そして、この補正後の濃度分布プロファイル40Aから、主走査方向の濃度ムラを補正する補正データを算出する。濃度分布プロファイル40Aは、副走査方向濃度ムラの影響が補正されている、副走査方向濃度ムラが発生していないと仮定した場合の主走査方向濃度ムラを適切に補正する補正データである。そして、この補正データを使用して以降の画像形成の際には主走査方向濃度ムラの影響を補正する。
【0058】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0059】
本発明の実施の形態において、濃度分布プロファイルによる補正は、濃度が濃くなる方向への補正を例にして説明してきたが、濃度が薄くなる方向への補正であってもよい。
【0060】
本発明の実施の形態では、測定用チャート50をスキャナ部20によってスキャンすることによりその濃度分布を測定したが、内部装置の濃度センサ部18によって測定用チャート50の濃度分布を測定しても良い。また、測定用チャート50の濃度分布測定は、画像形成装置10の外部に設けられた濃度測定装置で行ってもよい。この場合、画像形成装置10が画像形成出力した測定用チャート50を、その外部の濃度測定装置で測定し、その結果を画像形成装置10に送信する。画像形成装置10はこの測定結果を受信し、その測定結果に対して副走査方向濃度ムラの影響を軽減する補正を行う。
【符号の説明】
【0061】
10…画像形成装置
11…CPU
12…ROM
13…RAM
14…不揮発メモリ
15…ハードディスク装置
16…表示部
17…操作部
18…濃度センサ部
19…ネットワークI/F部
20…スキャナ部
21…画像処理部
22…プリンタ部
23…ファクシミリ通信部
30…テスト画像
40…濃度分布プロファイル
40A…副走査方向濃度ムラが無い状態の濃度分布プロファイル
41…特定主走査方向位置
42…第2主走査方向位置
43…破線楕円
50…測定用チャート
X(Xa、Xb、Xc)…補正値
Y(Ya、Yb)…濃度差
F…濃度線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて画像形成する画像形成部と
前記画像形成部の主走査方向の濃度ムラを補正するための主走査方向濃度ムラ補正データを作成する補正データ生成部と、
前記画像形成部に出力する画像データを前記補正データ生成部の作成した主走査方向濃度ムラ補正データに基づいて補正する補正部と、
を備え、
前記補正データ生成部は、
前記画像形成部で画像形成された主走査方向濃度ムラの測定用チャートの濃度分布を測定して得た濃度分布データを取得すると共に、前記画像形成部で画像形成された所定のテスト画像の濃度測定結果に基づいて生成された、特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの影響の排除された第1濃度データと、前記特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの影響が排除されていない第2濃度データとを取得し、
前記第1濃度データと前記第2濃度データとから前記特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データを求め、
前記補正データに基づいて前記特定主走査方向位置以外の各主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データを推定し、
前記濃度分布データの各主走査方向位置における濃度値をそれぞれの主走査方向位置に対応する前記補正データで補正して副走査方向の濃度ムラの影響が排除された第2濃度分布データを求め、該第2濃度分布データから前記主走査方向濃度ムラ補正データを求める
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記補正データ生成部は、前記特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データと同一の補正データを、前記特定主走査方向位置以外の各主走査方向位置の補正データとして前記推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記測定用チャートの濃度分布を測定して得た前記濃度分布データは、複数の階調値のそれぞれに係る主走査方向の濃度分布データで構成され、
前記補正データ生成部は、第1の階調値に係る前記濃度分布データの中の前記特定主走査方向位置における濃度値と第2の階調値に係る前記濃度分布データの中の前記特定主走査方向位置における濃度値との差分と、前記特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データとの比率を求め、
任意の主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データを、前記第1の階調値に係る前記濃度分布データの中の前記任意の主走査方向位置における濃度値と前記第2の階調値に係る前記濃度分布データの中の前記任意の主走査方向位置における濃度値との差分と、前記比率とに基づいて推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の階調値は前記測定用チャートにおいて最も濃度が高い階調値であり、前記第2の階調値は前記測定用チャートにおいて最も濃度の低い階調値である
ことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
所定の画像形成部で画像形成された主走査方向濃度ムラの測定用チャートの濃度分布を測定して得た濃度分布データを取得すると共に、前記画像形成部で画像形成された所定のテスト画像の濃度測定結果に基づいて生成された、特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの影響の排除された第1濃度データと、前記特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの影響が排除されていない第2濃度データとを取得し、
前記第1濃度データと前記第2濃度データとから前記特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データを求め、
前記補正データに基づいて前記特定主走査方向位置以外の各主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データを推定し、
前記濃度分布データの各主走査方向位置における濃度値をそれぞれの主走査方向位置に対応する前記補正データで補正して副走査方向の濃度ムラの影響が排除された第2濃度分布データを求め、該第2濃度分布データから前記主走査方向濃度ムラ補正データを求める
ことを特徴とする主走査方向濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項6】
前記特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データと同一の補正データを、前記特定主走査方向位置以外の各主走査方向位置の補正データとして前記推定する
ことを特徴とする請求項5に記載の主走査方向濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項7】
前記測定用チャートの濃度分布を測定して得た前記濃度分布データは、複数の階調値のそれぞれに係る主走査方向の濃度分布データで構成されており、
第1の階調値に係る前記濃度分布データの中の前記特定主走査方向位置における濃度値と第2の階調値に係る前記濃度分布データの中の前記特定主走査方向位置における濃度値との差分と、前記特定主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データとの比率を求め、
任意の主走査方向位置における副走査方向の濃度ムラの補正データを、前記第1の階調値に係る前記濃度分布データの中の前記任意の主走査方向位置における濃度値と前記第2の階調値に係る前記濃度分布データの中の前記任意の主走査方向位置における濃度値との差分と、前記比率とに基づいて推定する
ことを特徴とする請求項5に記載の主走査方向濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項8】
前記第1の階調値は前記測定用チャートにおいて最も濃度が高い階調値であり、前記第2の階調値は前記測定用チャートにおいて最も濃度の低い階調値である
ことを特徴とする請求項7に記載の主走査方向濃度ムラ補正データ作成方法。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−115762(P2013−115762A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262742(P2011−262742)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】