説明

画像形成装置、印刷システムおよび画像形成方法

【課題】簡便にユーザ認証を行えるようにする。
【解決手段】画像形成装置100は、記憶部202の保存情報のうち、第1の識別情報と関連付けられた第1の印刷ジョブの印刷指示がある場合、表示部204に第1の入力欄を表示させる表示制御部216と、第1の入力欄に入力された識別情報と第1の識別情報との合致の有無を判定する署名照合部203と、両識別情報同士が合致する場合に、第1の印刷ジョブの印刷を画像形成ユニット20に行わせる印刷制御部217とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部装置から受信した画像を印刷する画像形成装置、印刷システムおよび画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業界では、情報のセキュリティー強化が益々求められ、高価な情報セキュリティー技術が必要となっている。また、種々の情報を扱う画像形成装置では、不要な印刷を抑制して、使用電力量を削減すること、およびトナーや記録紙などの消耗品の使用量を削減することなど、画像形成装置の使用における経費削減のための様々な取り組みがなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、印刷した文書、例えば機密文書の回収に関し、ユーザによる回収対象となる印刷文書の回収を容易にし、さらに未回収の文書を持ち去った可能性のあるユーザを検索可能とする印刷システムについて開示されている。特許文献1には、具体的には次の事項が記載されている。
【0004】
(1)文書出力機器は、未回収印刷ジョブ情報の検索指示を受け付けた場合に、未回収印刷ジョブ情報の出力日時と操作日時とを取得するとともに、出力日時と操作日時との間に出力または回収が行われた印刷ジョブ情報に対応するユーザ情報を文書管理サーバから取得して表示すること。
【0005】
(2)文書管理サーバは、文書出力機器から受信したユーザ情報に対応する印刷ジョブのうち、未回収であることを示す未回収情報に対応する印刷ジョブ情報を文書出力機器に送信すること。また、文書出力機器から受信した回収済み情報に基づいて、未回収印刷ジョブ情報に含まれる未回収情報を回収済みに変更すること。
【0006】
(3)ユーザがIDカードをIDカードリーダにかざし、文書出力機器がIDカードリーダからIDカード内に記憶されているカードID(ユーザを特定するための特定情報)を取得すること。
【0007】
(4)文書出力機器は、IDカードリーダにて受け付けたカードIDを文書管理サーバへ送信し、文書管理サーバにおいて行われたユーザ認証が成功したか否かを判断すること。
【0008】
(5)特定情報をカードID以外の生体情報(例えば、指紋や掌形、網膜等)とすることも可能であり、この場合、IDカードリーダは生体情報を読み取る生体情報読取装置に置き換えること。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−90698号公報(2011年5月6日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の構成では、未回収の文書を持ち去った可能性のあるユーザを検索可能である。しかしながら、特許文献1に記載の構成では、IDカードや生体情報(例えば、指紋や掌形、網膜等)によりユーザ認証を行うので、ユーザ認証にはIDカードリーダ、あるいは生体情報を扱う特別な認証情報読取装置が必要となる。このため、それらのいずれかの装置を備えた印刷システムは高価なものとなってしまう。さらに、ほこりや粉じん、あるいは手油などでリーダ部が汚れてしまうと、読取時の誤動作が避けられないといった問題も招来する。
【0011】
したがって、本発明は簡便にユーザ認証を行うことができ、かつ印刷を指示した機密文書等の印刷物を確実に回収して印刷物からの情報漏洩を防止することができる画像形成装置、印刷システムおよび画像形成方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、用紙に画像を印刷する印刷手段と、第1の表示手段と、第1の通信手段と、第1の記憶手段と、前記第1の通信手段によって受信された情報を前記第1の記憶手段に格納する第1の記憶制御部と、前記第1の記憶手段に格納されている情報のうち、第1の識別情報と関連付けられている第1の印刷ジョブの印刷が指示されている場合に、前記第1の表示手段に識別情報の第1の入力欄を表示させる第1の表示制御部と、前記第1の入力欄に入力された識別情報と前記第1の識別情報とが合致するか否かを判定する照合部と、前記照合部により前記両識別情報同士が合致すると判定された場合に、前記第1の印刷ジョブの印刷を前記印刷手段に行わせる印刷制御部とを備えていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の画像形成方法は、受信した情報を第1の記憶手段に格納する記憶制御工程と、前記第1の記憶手段に格納されている情報のうち、第1の識別情報と関連付けられている第1の印刷ジョブの印刷が指示されている場合に、前記第1の表示手段に識別情報の第1の入力欄を表示させる表示制御工程と、前記第1の入力欄に入力された識別情報と前記第1の識別情報とが合致するか否かを判定する照合工程と、前記照合工程により前記両識別情報同士が合致すると判定された場合に、前記第1の印刷ジョブの印刷を印刷手段に行わせる印刷制御工程とを備えていることを特徴としている。
【0014】
上記の構成によれば、第1の表示制御部は(表示制御工程では)、第1の記憶手段に格納されている情報のうち、第1の識別情報と関連付けられている第1の印刷ジョブの印刷が指示されている場合に、第1の表示手段に識別情報の第1の入力欄を表示させる。照合部は(照合工程では)、第1の入力欄に入力された識別情報と第1の識別情報とが合致するか否かを判定し、印刷制御部は(印刷制御工程では)、照合部(照合工程)により両識別情報同士が合致すると判定された場合に、第1の印刷ジョブの印刷を前記印刷手段に行わせる。
【0015】
したがって、複数のユーザにて画像形成装置を使用する環境下であっても、第1の印刷ジョブと関連付けられている第1の識別情報と第1の表示手段の第1の入力欄に入力された識別情報とを照合することにより、第1の印刷ジョブについてのユーザ認証を容易に行って、第1の印刷ジョブの印刷を実行することができる。また、ユーザ認証においては、IDカードリーダや生体情報を扱う特別な認証情報読取装置を備える必要がなく、また、ユーザがIDカードを携行する必要がない。
【0016】
また、ユーザは、例えばユーザ端末装置から、互いに関連付けられた第1の印刷ジョブと第1の識別情報とをあらかじめ画像形成装置に送信しておき、その後、画像形成装置のところに移動して、画像形成装置の第1の表示手段に表示されている識別情報の第1の入力欄に対して識別情報を入力する。そして、照合部により第1の入力欄に入力された識別情報と第1の識別情報とが合致すると判定された場合に、第1の印刷ジョブの印刷が印刷手段にて行われる。したがって、ユーザは、印刷を指示した第1の印刷ジョブの印刷物を画像形成装置から容易かつ確実に回収することができる。これにより、機密書類等の印刷物の内容が他のユーザに漏れる事態、および印刷物を紛失して再印刷が必要となる事態を確実に防止することができる。
【0017】
上記の画像形成装置において、前記第1の記憶制御部は、前記照合部により前記両識別情報同士が合致しないと判定された場合に、前記第1の印刷ジョブを削除する構成としてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、照合部により両識別情報同士が合致しないと判定された場合に、第1の印刷ジョブが削除されるので、不要な印刷ジョブが第1の記憶手段に蓄積される事態を防止することができる。
【0019】
上記の画像形成装置において、前記第1の記憶手段に格納されている情報のうち、識別情報と関連付けられていない印刷ジョブの印刷が指示されている場合に、前記第1の表示制御部は、前記第1の表示手段に識別情報の前記第1の入力欄を表示させず、前記照合部は、前記判定動作を行わず、前記印刷制御部は、前記照合部の判定結果を要することなく、指示された印刷ジョブの印刷を前記印刷手段に行わせる構成としてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、識別情報と関連付けられていない印刷ジョブについては、迅速に印刷を開始することができる。
【0021】
本発明の印刷システムは、上記のいずれかの画像形成装置とユーザ端末装置とを備え、前記ユーザ端末装置は、第2の表示手段と、第2の通信手段と、第2の記憶手段と、前記第2の表示手段に識別情報の第2の入力欄を表示させる第2の表示制御部と、前記第2の記憶手段に格納されている第1の印刷ジョブについての第1の識別情報が識別情報の前記第2の入力欄に入力され、かつ前記第1の印刷ジョブについての印刷が指示された場合に、前記第1の印刷ジョブと前記第1の識別情報とを関連づけて前記第2の通信手段により前記画像形成装置に送信させる通信制御部とを備えていることを特徴としている。
【0022】
上記の構成によれば、ユーザ端末装置の第2の表示制御部は、第2の表示手段に識別情報の第2の入力欄を表示させ、通信制御部は、第2の記憶手段に格納されている第1の印刷ジョブについての第1の識別情報が識別情報の第2の入力欄に入力され、かつ第1の印刷ジョブについての印刷が指示された場合に、第1の印刷ジョブと第1の識別情報とを関連づけて第2の通信手段により画像形成装置に送信させる。
【0023】
したがって、複数のユーザにて画像形成装置を使用する環境下であっても、第1の印刷ジョブと関連付けられている第1の識別情報と第1の表示手段の第1の入力欄に入力された識別情報とを照合することにより、第1の印刷ジョブについてのユーザ認証を容易に行って、第1の印刷ジョブの印刷を実行することができる。また、ユーザ認証においては、IDカードリーダや生体情報を扱う特別な認証情報読取装置を備える必要がなく、また、ユーザがIDカードを携行する必要がない。
【0024】
また、ユーザは、ユーザ端末装置からは、互いに関連付けられた第1の印刷ジョブと第1の識別情報とをあらかじめ画像形成装置に送信しておき、その後、画像形成装置のところに移動して、画像形成装置の第1の表示手段に表示されている識別情報の第1の入力欄に対して識別情報を入力する。そして、照合部により第1の入力欄に入力された識別情報と第1の識別情報とが合致すると判定された場合に、第1の印刷ジョブの印刷が印刷手段にて行われる。したがって、ユーザは、印刷を指示した第1の印刷ジョブの印刷物を画像形成装置から容易かつ確実に回収することができる。これにより、機密書類等の印刷物の内容が他のユーザに漏れる事態、および印刷物を紛失して再印刷が必要となる事態を確実に防止することができる。
【0025】
さらに、ユーザ端末装置における識別情報の第2の入力欄に入力された識別情報(第1の識別情報)、および画像形成装置における識別情報の第1の入力欄に入力された識別情報を使用して、画像形成装置において印刷ジョブの印刷の可否を判定している(照合部および印刷制御部)。したがって、識別情報(例えば署名)を例えば印刷ジョブ毎に、容易に適宜変更できるので、識別情報の漏洩、さらには印刷物の情報の漏洩について、高い防止機能を備えることができる。
【0026】
上記の印刷システムにおいて、前記ユーザ端末装置の前記第2の表示制御部は、前記第2の表示手段に前記第2の入力欄と関連づけて設定時間の入力欄を表示させ、前記ユーザ端末装置の前記通信制御部は、前記設定時間の入力欄に設定された設定時間を示す情報を前記第2の通信手段により前記画像形成装置に送信させ、前記画像形成装置の前記第1の記憶制御部は、前記ユーザ端末装置において前記第1の印刷ジョブについての印刷が指示されてから、前記設定時間内に前記画像形成装置に対して前記第1の印刷ジョブの印刷を開始させるための入力が行われない場合に、前記第1の印刷ジョブを削除する構成としてもよい。
【0027】
上記の構成によれば、ユーザ端末装置において第1の印刷ジョブについての印刷が指示されてから、設定時間内に画像形成装置に対して第1の印刷ジョブの印刷を開始させるための入力が行われない場合に第1の印刷ジョブが削除される。
【0028】
これにより、画像形成装置において、識別情報とともに単にユーザ端末装置から送信されただけの印刷ジョブが印刷待機情報として多量に蓄積されていく事態を回避することができる。したがって、画像形成装置の記憶部としては、印刷待機情報として多量の印刷ジョブを格納できる大容量のものを用意する必要がなく、画像形成装置のコストアップを防止することができる。
【0029】
上記の印刷システムにおいて、前記画像形成装置の前記第1の記憶制御部は、前記ユーザ端末装置において前記第1の印刷ジョブについての印刷が指示されてから、前記設定時間内に前記画像形成装置の前記第1の表示手段に表示された第1の入力欄への識別情報の入力が開始されない場合に、前記第1の印刷ジョブを削除する構成としてもよい。
【0030】
上記の構成において、前記ユーザ端末装置において前記第1の印刷ジョブについての印刷が指示されてから、前記設定時間内に前記画像形成装置の前記第1の表示手段に表示された第1の入力欄への識別情報の入力が開始されない場合については、前記ユーザ端末装置において前記第1の印刷ジョブについての印刷が指示されてから、前記設定時間内に前記画像形成装置に対して前記第1の印刷ジョブの印刷を開始させるための入力が行われない場合に含まれる。
【0031】
上記の構成によれば、ユーザ端末装置において第1の印刷ジョブについての印刷が指示されてから、設定時間内に画像形成装置の第1の表示手段に表示された第1の入力欄への識別情報の入力が開始されない場合に第1の印刷ジョブが削除される。
【0032】
したがって、例えば機密書類についての印刷ジョブを設定時間内に開始したいというユーザの明確な意思、および印刷物をすぐに回収するというユーザの明確な意思が存在する状況下にて、印刷ジョブの印刷を開始することができる。これにより、例えば機密書類の印刷物の回収漏れをさらに確実に防止することができる。
【0033】
上記の印刷システムにおいて、前記ユーザ端末装置は、識別情報の前記第2の入力欄に入力された識別情報を前記第2の記憶手段に逐次上書き保存させる第2の記憶制御部を備え、前記第2の表示制御部は、識別情報の前記第2の入力欄を前記第2の表示手段に表示させる場合に、前記第2の記憶手段に上書き保存されている直近の識別情報を識別情報の前記第2の入力欄に表示させる構成としてもよい。
【0034】
上記の構成によれば、識別情報の第2の入力欄が第2の表示手段に表示される場合には、第2の記憶手段に上書き保存されている直近の識別情報が第2の入力欄に表示される。
【0035】
したがって、ユーザが識別情報の第2の入力欄に前回と同じ識別情報を入力する場合には、識別情報の入力が不要となる。これにより、ユーザ端末装置を操作する場合のユーザの負担を軽減することができる。
【0036】
上記の印刷システムにおいて、前記ユーザ端末装置は、識別情報の前記第2の入力欄に入力された識別情報を前記第2の記憶手段に保存させる第3の記憶制御部と、識別情報使用回数制限部とを備え、前記ユーザ端末装置の前記第2の表示制御部は、前記第2の表示手段に識別情報の前記第2の入力欄と関連づけて使用回数制限値の入力欄を表示させ、前記識別情報使用回数制限部は、識別情報の前記第2の入力欄に入力された識別情報を前記第2の記憶手段に前記第3の記憶制御部により保存されている識別情報と比較して、同一の識別情報の使用回数をカウントするとともに、識別情報の前記第2の入力欄に入力される識別情報として、同一の識別情報が前記使用回数制限値を超えて使用された場合に、その識別情報の受け付けを拒否する構成としてもよい。
【0037】
上記の構成によれば、識別情報の第2の入力欄に入力される識別情報として、同一の識別情報が使用回数制限値の入力欄に設定された使用回数制限値を超えて使用された場合に、その識別情報の受け付けが拒否される。
【0038】
したがって、同一の識別情報は使用回数制限値を超えて使用するができない。これにより、識別情報が第三者に漏れてしまった場合であっても、例えば機密情報を含む印刷ジョブの情報漏洩を最小限に抑制することができる。
【0039】
上記の印刷システムにおいて、前記識別情報使用回数制限部は、前記使用回数制限値の上限値を備え、前記使用回数制限値の入力欄に入力された使用回数制限値が前記上限値を超える場合に、前記使用回数制限値を前記上限値に設定する構成としてもよい。
【0040】
上記の構成によれば、使用回数制限値の入力欄に入力された使用回数制限値が、識別情報使用回数制限部が備える上限値を超える場合には、使用回数制限値が上限値に設定される。
【0041】
したがって、ユーザにより不適切に多い使用回数制限値が設定される事態を防止することができる。これにより、識別情報が第三者に漏れてしまった場合であっても、例えば機密情報を含む印刷ジョブの情報漏洩を最小限に抑制する機能をさらに確実なものとすることができる。
【0042】
上記の印刷システムにおいて、前記識別情報は、ユーザの手書きによる署名であり、識別情報の前記第1の入力欄および識別情報の前記第2の入力欄は、ユーザの手書きによる署名を受け付けるものであり、前記照合部は、前記第1の入力欄に入力された前記識別情報としての署名と前記第1の識別情報としての署名とが合致するか否かを判定するものである構成としてもよい。
【0043】
上記の構成によれば、識別情報としてユーザの手書きによる署名が使用されるので、ユーザは識別情報を任意の文字列により高い自由度によって入力することができる。これにより、第三者のいわゆるなりすましにより、例えば機密情報に関する印刷ジョブの情報が漏洩する事態をさらに確実に防止することができる。
【0044】
上記の印刷システムにおいて、前記識別情報と関連付けられている前記印刷ジョブは、少なくともカーボンオフセットクレジットのプログラム認証申請書または登録依頼書の印刷に関するものである構成としてもよい。
【0045】
上記の構成によれば、カーボンオフセットクレジットのプログラム認証申請書または登録依頼書には、プログラム運営主体の担当者名やメールアドレス、電話番号などの個人情報が含まれている。したがって、上記書類は、地球温暖化防止活動に本格的に取り組み、社会貢献しようとする事業者にとっては機密書類であり、上記書類の印刷ジョブは、識別情報と関連付けられている印刷ジョブとして扱われることが好ましい。なお、事業者に競合業者がいる場合、いち早く社会貢献活動を世間にアピールすることができ、事業活動を優位に進めることができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明の構成によれば、複数のユーザにて画像形成装置を使用する環境下であっても、第1の印刷ジョブと関連付けられている第1の識別情報と第1の表示手段の第1の入力欄に入力された識別情報とを照合することにより、第1の印刷ジョブについてのユーザ認証を容易に行って、第1の印刷ジョブの印刷を実行することができる。また、ユーザ認証においては、IDカードリーダや生体情報を扱う特別な認証情報読取装置を備える必要がなく、また、ユーザがIDカードを携行する必要がない。
【0047】
また、ユーザは、例えばユーザ端末装置から、互いに関連付けられた第1の印刷ジョブと第1の識別情報とをあらかじめ画像形成装置に送信しておき、その後、画像形成装置のところに移動して、画像形成装置の第1の表示手段に表示されている識別情報の第1の入力欄に対して識別情報を入力する。そして、照合部により第1の入力欄に入力された識別情報と第1の識別情報とが合致すると判定された場合に、第1の印刷ジョブの印刷が印刷手段にて行われる。したがって、ユーザは、印刷を指示した第1の印刷ジョブの印刷物を画像形成装置から容易かつ確実に回収することができる。これにより、機密書類等の印刷物の内容が他のユーザに漏れる事態、および印刷物を紛失して再印刷が必要となる事態を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】複数のユーザ毎に構築された本実施の形態の印刷システムを含む通信システムの構成を示す説明図である。
【図2】図1に示した画像形成装置の概略の構造を示す縦断面図である。
【図3】図2に示した画像形成装置が備える操作パネルを示す平面図である。
【図4】図2に示した画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示したユーザ端末装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図2に示した画像形成装置にて印刷を行う場合のユーザ端末装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】図5に示したユーザ端末装置の指示を受けて印刷を行う場合の画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】図5に示したユーザ端末装置の表示部において、印刷設定画面の初期画面を表示した状態を示す説明図である。
【図9】図5に示したユーザ端末装置の表示部に表示される、印刷設定画面の機密書類印刷設定画面を示す説明図である。
【図10】図5に示したユーザ端末装置の表示部に表示される、印刷設定画面の署名入力画面を示す説明図である。
【図11】図11(a)は、JIS記号選択部において使用するJIS記号の記述記号の例を示す説明図、図11(b)は上記JIS記号の学術記号の例を示す説明図、図11(c)は上記JIS記号の単位記号の例を示す説明図、図11(d)は上記JIS記号の一般記号の例を示す説明図である。
【図12】図4に示した画像形成装置の操作パネルの表示部に表示される印刷待機情報を示す説明図である。
【図13】上記表示部に表示される署名入力指示画面を示す説明図である。
【図14】上記表示部に表示される署名認証完了画面を示す説明図である。
【図15】図7に示したS49の動作を示すものであって、ユーザ端末装置から受信した署名と操作パネルの表示部に表示された署名入力指示画面の署名欄に入力された署名とが合致するか否かを判定する動作の一例を示す説明図である。
【図16】本発明の実施の形態において扱われる機密書類の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の実施の形態を図面に基づいて以下に説明する。
図1は、複数のユーザ毎に構築された本実施の形態の印刷システムを含む通信システムの構成を示す説明図である。
【0050】
図1に示すように、通信システム1において、各ユーザ(ユーザA〜C)の画像形成装置100は、ネットワーク102およびネットワーク104を介して、本社の管理サーバ101と通信可能となっている。本社は、各ユーザの画像形成装置100を管理している。ネットワーク102はユーザ毎に設けられた狭域のネットワークであり、ネットワーク104は広域のネットワークである。これらネットワーク102,104による通信形態は、有線または無線を問わない。
【0051】
本実施の形態において、印刷システム105は、画像形成装置100に対する外部装置としてのユーザ端末装置110、ネットワーク102および画像形成装置100を備えている(第1の構成)。なお、印刷システム105は、ネットワーク102を介さずに、ユーザ端末装置110と画像形成装置100が直接通信する構成(第2の構成)であってもよい。また、印刷システム105は、ユーザ端末装置110、画像形成装置100および管理サーバ101を備えた構成(第3の構成)、あるいはユーザ端末装置110、画像形成装置100、管理サーバ101、ネットワーク102,104を備えた構成(第4の構成)であってもよい。さらには、第4の構成に通信シンフラ(インフラストラクチャー)103を備えた構成(第5の構成)であってもよい。
【0052】
また、ネットワーク102,104の種類は特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網あるいは衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、画像形成装置100と管理サーバ101との通信は、通信衛星を含む衛星通信インフラ103を利用して行ってもよい。
【0053】
本実施の形態において、各ユーザの画像形成装置100は、画像形成装置100、ネットワーク102およびユーザ端末装置110(110A〜110C)を備えた、ユーザ毎の印刷システム105に含まれている。したがって、画像形成装置100はネットワーク102を介してユーザ端末装置110と通信可能である。ユーザ端末装置は、ユーザAでは携帯端末装置であり、ユーザBではパーソナルコンピュータ(以下、単にパソコンと称する)であり、ユーザCでは携帯電話である。また、ユーザ端末装置110には、画像形成装置100にて印刷する際に印刷設定を行うためのプリンタドライバが格納されている。このプリンタドライバにより表示部111には、ユーザインターフェースとなる印刷に関する各種画面が表示される。
【0054】
図2は、本実施の形態における画像形成装置100の概略構造を示す縦断面図である。
図2に示すように、画像形成装置100は、画像形成ユニット(印刷手段)20と原稿読取ユニット30とを備えている。
【0055】
画像形成ユニット20は、4つの画像形成ステーションP1〜P4を備えている。これら4つの画像形成ステーションP1〜P4は、それぞれ、現像装置2、感光体ドラム3、帯電装置5およびクリーナユニット4を備えており、基本的に同一の構成である。画像形成装置100は、これら4つの画像形成ステーションP1〜P4を備えることで、4色のトナー(現像剤)を用いて画像を形成することができる。
【0056】
画像形成装置100は、画像形成ステーションP1〜P4の下方に露光ユニット8を備え、露光ユニット8の下方に給紙カセット81を備え、感光体ドラム3の上方に中間転写ベルトユニット6を備えている。また、中間転写ベルトユニット6の上にトナーカートリッジ98を備え、トナーカートリッジ98の上に排紙トレイ91を有している。また、給紙カセット81から排紙トレイ91に達する用紙搬送路Sを備え、この用紙搬送路Sの途中に、転写ローラ10および定着ユニット7を備えている。
【0057】
転写ローラ10は中間転写ベルト61を介して中間転写ベルト駆動ローラ62に圧接されている。また、中間転写ベルトユニット6に対する転写ローラ10側とは反対側の位置には、中間転写ベルトクリーニングユニット65が配置されている。
【0058】
帯電装置5は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させる。帯電装置5としては、非接触型の他、ローラ型やブラシ型等の接触型の帯電器を用いることができる。
【0059】
露光ユニット8は、帯電された感光体ドラム3の表面を、入力された画像データに応じて露光することにより、感光体ドラム3の表面に画像データに応じた静電潜像を形成する。なお、露光ユニット8は、レーザ出射部および反射ミラー等を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)として構成する他、発光素子をアレイ状に並べた、例えばELやLED書込みヘッドを用いることもできる。
【0060】
現像装置2は、各感光体ドラム3上に形成された静電潜像を、トナーを用いて顕在化することにより現像するものである。4つの現像装置2には、それぞれ、黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の4種類のいずれかのトナーが収容されている。各感光体ドラム3上の静電潜像は、画像データに含まれる各色成分ごとに形成され、各現像装置2により現像される。
【0061】
各現像装置2の上方には、対応する色の補給トナーを収容したトナーカートリッジ98がそれぞれ配置されている。本実施の形態の画像形成装置100では、使用頻度の多い黒のトナーのトナーカートリッジを2つ(K1、K2)備えている。この場合、K1のトナーカートリッジがトナー切れになると、K2のトナーカートリッジに切り替わる構成となっている。この構成により、トナー切れにより印刷が中断される事態を回避している。各現像装置2には、図示しない補給経路を通って、対応するトナーカートリッジ98からトナーが適宜補給される。
【0062】
クリーナユニット4は、現像にて形成されたトナー像が感光体ドラム3から中間転写ベルト61に転写された後に、感光体ドラム3の表面に残留しているトナーを除去し回収する。
【0063】
中間転写ベルトユニット6は、中間転写ベルト61、中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ベルト従動ローラ63、中間転写ローラ64および中間転写ベルトクリーニングユニット65を備えている。中間転写ローラ64は、4つの画像形成ステーションP1〜P4に対応して4本設けられている。
【0064】
中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ベルト従動ローラ63および中間転写ローラ64は、中間転写ベルト61を張架して回転する。各中間転写ローラ64は、感光体ドラム3のトナー像を、中間転写ベルト61上に転写するための転写バイアスを与える。
【0065】
中間転写ベルト61は、各感光体ドラム3に接触するように設けられている。中間転写ベルト61には、感光体ドラム3に形成された各色のトナー像が順次重ねて転写される。これにより、中間転写ベルト61上には多色のトナー像が形成される。中間転写ベルト61は、例えば厚さ100〜150μm程度のフィルムを用いて無端状に形成されている。
【0066】
感光体ドラム3から中間転写ベルト61へのトナー像の転写は、中間転写ベルト61の裏側に接触している中間転写ローラ64によって行われる。中間転写ローラ64には、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加される。
【0067】
中間転写ローラ64は、直径8〜10mmの金属(例えばステンレス)軸をベースとし、その表面が導電性の弾性材(例えばEPDM,発泡ウレタン等)により覆われているローラである。この導電性の弾性材により、中間転写ベルト61に対して均一に高電圧を印加することができる。本実施の形態では転写電極としてローラ形状のものを使用しているが、それ以外にブラシ形状のものなども用いることができる。
【0068】
上記のようにして、中間転写ベルト61上に転写された多色のトナー像は、中間転写ベルト61と転写ローラ10との間に供給された用紙上に、転写ローラ10によって転写される。
【0069】
このとき、中間転写ベルト61と転写ローラ10とは所定ニップで圧接され、転写ローラ10には中間転写ベルト61上のトナーを用紙に転写させるための電圧が印加される(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)。
【0070】
なお、上記ニップを定常的に得るために、転写ローラ10もしくは中間転写ベルト駆動ローラ62のいずれか一方は硬質材料(金属等)にて形成され、他方は弾性ローラ等の軟質材料(弾性ゴムローラ、または発泡性樹脂ローラ等々)にて形成されている。
【0071】
また、感光体ドラム3に接触することにより中間転写ベルト61に付着したトナー、および用紙上に転写されず中間転写ベルト61上に残存したトナーは、次工程でトナーの混色を発生させる原因となる。そこで、それらトナーは、中間転写ベルトクリーニングユニット65によって除去し回収される。中間転写ベルトクリーニングユニット65は、中間転写ベルト61に接触する、例えばクリーニング部材としてクリーニングブレードを備えている。クリーニングブレードが接触する位置の中間転写ベルト61は、裏側から中間転写ベルト従動ローラ63にて支持されている。
【0072】
給紙カセット81は、画像形成に使用する用紙を収容している。給紙カセット81の用紙は、用紙搬送路Sを通って転写ローラ10、定着ユニット7および排紙トレイ91に搬送される。用紙搬送路Sには手差し給紙カセット82からも用紙を供給することができる。用紙搬送路Sには、上記の転写ローラ10および定着ユニット7の他、ピックアップローラ11a,11b、複数の搬送ローラ12a〜12dおよびレジストローラ13等が配されている。排紙トレイ91には、印刷済みの用紙がフェイスダウンにて排出される。
【0073】
搬送ローラ12a〜12dは、用紙の搬送を促進し補助するための小型のローラである。ピックアップローラ11aは、給紙カセット81の端部近傍に備えられ、給紙カセット81から用紙を1枚ずつピックアップして用紙搬送路Sに供給する。同様にピックアップローラ11bは、手差し給紙カセット82の端部近傍に備えられ、手差し給紙カセット82から用紙を1枚ずつピックアップして用紙搬送路Sに供給する。
【0074】
レジストローラ13は、用紙搬送路Sを搬送されている用紙を一旦保持し、感光体ドラム3上のトナー像の先端と用紙の先端を合わせるタイミングにて用紙を転写ローラ10に搬送する。
【0075】
定着ユニット7は、ヒートローラ71および加圧ローラ72を備えている。これらヒートローラ71および加圧ローラ72は、用紙を挟んで回転する。ヒートローラ71は、所定の定着温度となるように制御され、加圧ローラ72とともに、用紙に転写されたトナー像を溶融して熱定着させる。また、ヒートローラ71を外部から定着するための外部定着ベルト73が設けられている。
【0076】
原稿読取ユニット30は、主として、原稿読取部90、原稿載置台92および原稿搬送装置29を備えている。原稿載置台92に載置された原稿は、原稿読取部90により画像が読み取られる。原稿搬送装置29の載置台に載置された複数の原稿は、順次、原稿読取部90へ搬送され、画像が読み取られる。
【0077】
画像形成装置100は、さらに図3に示す操作パネル50を備えている。図3は画像形成装置100が備える操作パネル50を示す平面図である。
【0078】
操作パネル50は、図3に示すように、表示部(第1の表示手段)204と入力部205とを備えている。表示部204は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、プラズマチューブアレイディスプレイ、電気泳動を始めとする電子ペーパーディスプレイ、あるいは電子放出素子を用いた電子放出ディスプレイ等からなる表示装置である。表示部204には、ユーザに対する各種設定画面や取得した画像データに関する情報を含む画面が表示される。
【0079】
入力部205は、複数のキーを備え、それらキーへのユーザの操作により、各種の指示、または文字あるいは数字などのデータの入力を受け付ける。入力部205が備える複数のキーは、スイッチを備えたハードキーである。なお、入力部205は、キーの一部としてタッチパネルを含んでいても、あるいはタッチパネルそのもので構成されていてもよい。
【0080】
入力部205がタッチパネルを含む場合、あるいはタッチパネルから構成されている場合、タッチパネルは、表示部204上に設けられる。なお、入力部205は、Ubi−Fingerデバイス等を用いたジェスチャー入力装置であってもよい。本実施の形態において、操作パネル50はタッチパネルを備えたものとなっている。
【0081】
次に、画像形成装置100の構成をブロック図により説明する。図4は、画像形成装置100の構成を示すブロック図である。
【0082】
図4に示すように、画像形成装置100は、画像形成ユニット20、原稿読取ユニット30および周辺装置40を備えている。
【0083】
画像形成ユニット20は、制御部201、記憶部(第1の記憶手段)202、署名照合部(照合部)203、操作パネル50の表示部204、操作パネル50の入力部205、通信部(第1の通信手段)206、画像処理部208、画像形成部209および定着部210を備えている。原稿読取ユニット30は、画像読取部207を備えている。周辺装置40は、制御部211を備えている。
【0084】
制御部201は、画像形成装置100全体の動作、原稿読取ユニット30の動作、および周辺装置40の動作を制御する。このために、制御部201は、記憶部202、署名照合部203、操作パネル50の表示部204、操作パネル50の入力部205、通信部206、原稿読取ユニット30の画像読取部207、画像処理部208、画像形成部209、定着部210、および周辺装置40の制御部211と接続されている。
【0085】
また、制御部201は、記憶制御部(第1の記憶制御部)215、表示制御部(第1の表示制御部)216および印刷制御部217としての機能を備えている。表示制御部216は、記憶部202における各種データの記憶動作を制御する。表示制御部216は操作パネル50の表示部204の表示動作を制御し、各種情報を表示させる。例えば、図12に示す印刷待機情報、図13に示す署名入力指示画面および図14に示す署名認証完了画面を表示部204に表示させる。印刷制御部217は、画像形成ユニット20における印刷動作を制御する。
【0086】
記憶部202は、制御部201が実行するプログラム、画像形成装置100に入力される各種データ、および画像形成装置100にておいて作成される各種データを記憶する。記憶部202は、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R/Blu−ray等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0087】
署名照合部203は、表示部204に表示された図13に示す署名入力画面の署名欄(識別情報の第1の入力欄)401に入力された署名と、ユーザ端末装置110から受信した、印刷ジョブと関連づけられている署名とを照合し、両署名が合致するか否かを判定する。
【0088】
通信部206は、ネットワーク102およびネットワーク104を介して、外部の装置と通信する。
【0089】
画像処理部208は、画像読取部207から入力される画像データに対して、シェーディング補正などの各種の処理を施す。
【0090】
画像形成部209は、図2に示した画像形成ステーションP1〜P4、中間転写ベルトユニット6、トナーカートリッジ98および露光ユニット8を含む構成に相当する。画像形成部209は、画像処理部208にて処理された画像データに基づいて、例えば給紙カセット81から供給される用紙上にトナーの画像を形成する。
【0091】
また、画像形成部209は検出部209aを備えている。検出部209aは、着脱自在に設けられているトナーカートリッジ98の有無や、トナーカートリッジ98におけるトナーの残量を検出する。
【0092】
定着部210は、図2に示した定着ユニット7に相当し、画像形成部209に形成されたトナー画像を用紙に定着させる。
【0093】
画像読取部207は、原稿読取ユニット30に相当し、原稿の画像を読み取って画像データを作成する。
【0094】
制御部211は周辺装置40の動作を制御する。周辺装置40は、例えば、画像形成ユニット20から出力された印刷物を仕分けしたりステイプルしたりする後処理装置である。
【0095】
次に、ユーザ端末装置110の構成をブロック図により説明する。図5は、ユーザ端末装置110の構成を示すブロック図である。
【0096】
図5に示すように、ユーザ端末装置110は、表示部(第2の表示手段)111、入力部112、制御部121、記憶部(第2の記憶手段)122および通信部(第2の通信手段)123を備えている。
【0097】
表示部111は、画像形成装置100の操作パネル50と同様、各種の表示装置のいずれかによって構成されている。本実施の形態において、表示部111は、ペン入力が可能なタッチパネルとなっている。入力部112は、ユーザによってキー入力が行われる入力部である。なお、ユーザ端末装置110への各種入力は、タッチパネルに対するペン入力に限定されず、タッチパネルに対するユーザの指による入力、入力部112の操作キーによる入力、マウスによる入力であってもよい。
【0098】
制御部121は、ユーザ端末装置110の各種動作を制御する。記憶部122は、RAMおよびROM等からなり、制御部121が制御動作を行うためのプログラム、インストールされているプリンタドライバ、および各種情報を記憶する。通信部123は、例えばネットワーク102を介して画像形成装置100と通信する情報の送信部および受信部である。
【0099】
制御部121は、表示制御部131を備えている。表示制御部131は、表示部111における各種データの表示を制御する。例えば、プリンタドライバの機能により、印刷指示画面における各種画面を表示部111に表示させる。
【0100】
また、制御部121は、同一署名使用制限動作を行うために、同一署名判定部132、同一署名カウント部133および署名可否判定部134を備えている。同一署名使用制限動作では、制御部121は、図10に示した印刷指示画面の署名入力画面において、署名欄(識別情報の第2の入力欄)306に入力された署名が同一署名の使用回数制限設定部(使用回数制限値の入力欄)309において設定されている使用回数制限値を超えた場合、その署名の使用(受け付け)を拒否する。
【0101】
具体的には、同一署名判定部132は、署名欄306に入力された署名と、署名欄306において先に使用され、記憶部122に記憶されている署名との一致および不一致を判定する。同一署名カウント部133は、上記の両署名が一致した場合、カウント値を1プラスすることにより、上記の両署名が一致した回数をカウントする。署名可否判定部134は、同一署名カウント部133でのカウント数と同一署名の使用回数制限設定部309に設定されている使用回数制限値と比較する。この比較の結果、カウント数が使用回数制限値以下であれば、署名欄306に入力された署名の使用を許可する。一方、カウント数が使用回数制限値を超えていれば、署名欄306に入力された署名の使用を拒否する。
【0102】
なお、使用回数制限値は、ユーザが設定可能であるものの、設定可能な上限値はユーザ端末装置110での設定において例えば5回となっている。また、使用回数制限値は、1回に設定されると、機密書類を印刷する度に署名が必要となり、印刷に手間がかかってしまう。したがって、使用回数制限値は複数回に設定されることが好ましい。
【0103】
また、同一署名使用制限動作を行うための機能(同一署名判定部132、同一署名カウント部133および使用回数制限値134)は、ユーザ端末装置110の制御部121ではなく、画像形成装置100の制御部201が備えていてもよい。すなわち、画像形成装置100の制御部201は、制御部201が備えているユーザ端末装置110から署名欄306の署名を受信した場合に同一署名判定部132、同一署名カウント部133および使用回数制限値134によって、上記の同一署名使用制限動作と同様の動作を行う。この場合、画像形成装置100での同一署名使用制限動作の結果は、画像形成装置100からユーザ端末装置110に送信され、ユーザ端末装置110では署名欄306への署名の再入力(異なる他の署名の入力)をユーザに要求する。
【0104】
ただし、迅速な印刷動作の実行の点から、同一署名使用制限動作はユーザ端末装置110において行うのが好ましい。
【0105】
また、制御部121は、記憶制御部(第2の記憶制御部、第3の記憶制御部)135および通信制御部136を備えている。記憶制御部135は、表示部111のタッチパネルや入力部112から入力されたデータを記憶部122に記憶させ、また記憶部122に保存されているデータを読み出して表示部111に表示させる。通信制御部136は通信部123によるデータの送受信を制御する。例えば、印刷ジョブの印刷が指示された場合に、記憶部122に格納されている、印刷が指示されている印刷ジョブと、その印刷ジョブの印刷実行を指示するために入力された署名とを関連付けて、通信部123により画像形成装置に送信させる。
【0106】
上記の構成において、本発明の実施の形態における印刷システム105の動作について、以下に説明する。なお、ここでは、ユーザ端末装置110が例えばパソコンである場合について説明する。
【0107】
まず、ユーザ端末装置110の動作について説明する。図6は、画像形成装置100にて印刷を行う場合のユーザ端末装置110の動作を示すフローチャートである。図7は、ユーザ端末装置110の指示を受けて印刷を行う場合の画像形成装置100の動作を示すフローチャートである。図8は、ユーザ端末装置110の表示部111において、印刷設定画面の初期画面を表示した状態を示す説明図である。図9は、ユーザ端末装置110の表示部111に表示される、印刷設定画面の機密書類印刷設定画面を示す説明図である。図10は、ユーザ端末装置110の表示部111に表示される、印刷設定画面の署名入力画面を示す説明図である。
【0108】
ユーザ端末装置110から画像形成装置100に画像データ(印刷ジョブ)を送信し、その画像データを画像形成装置100にて印刷する場合には、ユーザによりユーザ端末装置110および画像形成装置100の電源がオンにされる。
【0109】
その後、例えば、ユーザによりユーザ端末装置110に格納されている画像データのうちから印刷する画像データが選択され、その画像データがユーザ端末装置110の表示部111に表示される。
【0110】
次に、図6に示すように、ユーザによりユーザ端末装置110に対して印刷動作の指示入力が行われると(S11)、ユーザ端末装置110の制御部121(表示制御部131)は、プリンタドライバを起動させて、図8に示すように、印刷指示画面の初期画面を表示部111に表示させる(S12)。
【0111】
次に、印刷指示画面の初期画面において、機密書類の印刷が選択されると、すなわち機密書類印刷設定タブ301が選択されると(S13)、制御部121(表示制御部131)は、表示部111に表示されている印刷指示画面を初期画面から図9に示す機密書類印刷設定画面に遷移させる(S14)。なお、機密書類には、部外秘書類や社外秘書類の他、個人情報が記された書類なども含まれる。
【0112】
機密書類印刷設定画面には、図9に示すように、画像調整領域302と印刷対象となる画像のプレビュー画像303とが左右に表示され、画像調整領域302の下に署名入力画面選択ボタン304が表示される。
【0113】
図9に示す画像調整領域302では、画像濃度調整、画像ドット密度調整、画像コントラスト調整および明度調整が可能となっている。これら調整は、タッチパネルに対する操作、入力部112に対する操作、あるいはマウスによる操作によって行うことができる。
【0114】
画像調整領域302においてユーザにより印刷画像の調整(印刷設定)が行われると、制御部121(表示制御部131)は、その結果をプレビュー画像303に反映させる(S15)。したがって、ユーザは、プレビュー画像303を確認しながら印刷設定を行うことができる。なお、図9には、プレビュー画像303として、ISO/IEC 19798の標準原稿を示している。
【0115】
次に、図9に示した機密書類印刷設定画面において、ユーザにより署名入力画面選択ボタン304が操作されると(S16)、制御部121(表示制御部131)は、表示部111に表示されている印刷指示画面を機密書類印刷設定画面から図10に示すに署名入力画面に遷移させる(S17)。
【0116】
署名入力画面には、図10に示すように、上から順番に、署名の上書き保存選択部305および署名欄306が表示されている。また、署名欄306の左下に、JIS記号選択部307、保存した署名の再表示選択部308、同一署名の使用回数制限設定部309および印刷開始までの時間設定部(設定時間の入力欄)310が表示されている。また、署名欄306の右下に、印刷実行ボタン311および前画面選択ボタン312が表示されている。
【0117】
同一署名の使用回数制限設定部309には、ユーザにより、同一署名について使用できる回数(使用回数制限値)が設定される。図10の例では、署名欄306に署名された「TaRoh」の使用回数制限値は3回に設定されている。
【0118】
印刷開始までの時間設定部310は、下記のS23において、ユーザが印刷実行ボタン311を操作してから、ユーザが画像形成装置100の印刷指示画面500に表示された署名欄401に何らかの入力を行うまでの設定時間、すなわち猶予時間の入力部である。署名欄401に何らかの入力が行われることなく上記設定時間が経過した場合には、ユーザ端末装置110から画像形成装置100に送信された印刷ジョブが画像形成装置100から削除される。なお、図10の例では、印刷開始までの時間設定は30秒となっている。
【0119】
次に、ユーザにより、署名入力画面の署名欄306に対して、タッチペンを使って例えば「TaRoh」という署名が行われると(S18)、制御部121は、「TaRoh」とう署名が使用回数制限値以下か否かを判定する(S19)。この判定の結果、「TaRoh」が使用回数制限値以下であれば、「TaRoh」の使用を許可して、S20の処理に進む。一方、「TaRoh」が使用回数制限値を超えていれば、「TaRoh」の使用を拒否し(S24)、S18に戻って他の署名の入力を待つ。
【0120】
S19の処理では、制御部121の同一署名判定部132は、署名欄306に入力された署名と、署名欄306において先に使用され、記憶部122に記憶されている署名(履歴情報として保存されている署名や上書き保存されている署名)との一致および不一致を判定する。同一署名カウント部133は、上記の両署名が一致した場合、カウント値を1プラスすることにより、上記の両署名が一致した回数をカウントする。同一署名使用制限動作134は、「TaRoh」についての同一署名カウント部133でのカウント数を参照し、カウント数が使用回数制限設定部309に設定されている使用回数制限値以下であれば、「TaRoh」の使用を許可する。一方、カウント数が使用回数制限値を超えていれば、「TaRoh」の使用を拒否する。
【0121】
次に、制御部121は、S19の判定の結果、署名欄306に入力された署名が使用回数制限値以下であれば、署名の上書き保存選択部305において署名の上書き保存が選択されているか否かを判定する(S20)。この判定の結果、署名の上書き保存が選択されていれば、制御部121(記憶制御部135)は、署名欄306の署名を印刷指示画面(プリンタドライバ)と関連付けて記憶部122に記憶させる(S21)。
【0122】
なお、制御部121(表示制御部131)は、記憶部122に保存した署名に対し、保存した署名の再表示選択部308において再表示が選択されると、その署名を図10に示した署名欄306に再表示させる。また、保存した署名の再表示選択部308における再表示の選択は、保存した署名の再表示選択部308においてチェックマーク(レ点)を入れることにより行われる。
【0123】
また、署名欄306への署名は、タッチペンにて入力する以外に、JIS記号選択部307によりJIS記号を使用して行ってもよい。JIS記号としては図11に示すものを使用でき、署名はそれらJIS記号を適宜組み合せて行うことができる。図11(a)は、JIS記号選択部307において使用するJIS記号の記述記号の例を示す説明図、図11(b)は上記JIS記号の学術記号の例を示す説明図、図11(c)は上記JIS記号の単位記号の例を示す説明図、図11(d)は上記JIS記号の一般記号の例を示す説明図である。なお、JIS記号のデータはユーザ端末装置110が備えている構成、あるいは管理サーバ101から取得する構成であってもよい。
【0124】
署名欄306への入力は、タッチペンや指によるタッチ入力の他、マウス、操作キーあるいはポインタなどによるデバイス入力にて行ってもよい。署名としては、ユーザの好みに応じて、種々の文字やイラスト、あるいは画像を使用することができる。これにより、署名が第三者に容易に真似される事態を防止し、機密書類の情報の漏洩を阻止することができる。
【0125】
次に、印刷指示画面の署名入力画面において、ユーザにより印刷実行ボタン311が操作され、印刷の実行が指示されると(S22)、制御部121(通信制御部136)は、印刷ジョブ(印刷すべき画像データ)と受け付けた署名とを関連付けて、通信部123により画像形成装置100に送信させる(S23)。なお、上記印刷ジョブには、図10の印刷指示画面の機密書類印刷設定画面において行われた印刷設定の内容も含まれている。
【0126】
また、S20において、署名の上書き保存が選択されていなければ、制御部121(記憶制御部135)は、署名欄306において行われた署名を署名の履歴情報として記憶部122に保存する(S26)。なお、署名が上書き保存される場合には、更新前の署名も同様に署名の履歴情報として記憶部122に保存する。これらの処理は、署名をS19での同一署名使用制限動作において使用するためのものである。
【0127】
また、S13において、印刷指示画面の初期画面にて機密書類の印刷が選択されなかった場合、およびS16において、印刷指示画面の署名入力画面が選択されなかった場合には、一般の書類に対する印刷設定(例えば印刷指示画面の初期画面での印刷設定)が行われる(S26)。
【0128】
その後、印刷の実行が指示されると(S27)、制御部121(通信制御部136)は通信部123により印刷ジョブを画像形成装置100に送信させる(S28)。
【0129】
次に、画像形成装置100の動作について説明する。図12は、画像形成装置100の操作パネル50の表示部204に表示される印刷待機情報を示す説明図である。図13は、上記表示部204に表示される署名入力指示画面を示す説明図である。図14は、上記表示部204に表示される署名認証完了画面を示す説明図である。
【0130】
画像形成装置100では、図7に示すように、ユーザ端末装置110から送信された印刷ジョブを受信すると、制御部201(記憶制御部215)は、受信した印刷ジョブを記憶部202に保存する(S41)。
【0131】
次に、画像形成装置100の制御部201は、その印刷ジョブが署名と関連付けられた印刷ジョブか否か、すなわち機密書類についての印刷ジョブか機密書類以外の一般書類についての印刷ジョブかを判定する(S42)。
【0132】
S42の判定の結果、印刷ジョブが署名と関連付けられた印刷ジョブ(機密書類についての印刷ジョブ)であれば、制御部201(表示制御部216)は、操作パネル50の表示部204に、図12に示す印刷ジョブ待機情報を表示させる(S43)。
【0133】
この印刷ジョブ待機情報は、ユーザ端末装置110から受信して印刷待機状態となっている機密書類についての印刷ジョブを一覧表示したものである。印刷ジョブ待機情報には、例えば、ユーザ端末装置110に設定されているユーザ名、印刷枚数および受付け時間が含まれている。
【0134】
次に、表示部204に表示されている印刷ジョブ待機情報のうちのいずれかがユーザにより選択されると(S44)、制御部201(表示制御部216)は、表示部204に、図13に示す署名入力指示画面を表示(ポップアップ表示)させる(S45)。なお、印刷ジョブ待機情報の選択は、例えば、表示部204に対するユーザのタッチ操作にて行われる。
【0135】
署名入力指示画面には、図13に示すように、署名欄401、署名認証実行ボタン402および印刷取消ボタン403が表示されている。
【0136】
次に、制御部201は、ユーザ端末装置110の印刷開始までの時間設定部310において設定された時間内に、署名欄401に対してユーザにより署名(何らかの入力)が行われたか否かを判定する(S46)。
【0137】
S46の判定の結果、設定時間内に署名欄401に署名が行われていれば、制御部201は、署名認証実行ボタン402が操作されたか否かを判定する(S47)。
【0138】
S47の判定の結果、署名認証実行ボタン402が操作されていれば、制御部201は、S44にて選択された印刷ジョブ待機情報が示す印刷ジョブと関連付けられている署名を記憶部202から読み出す。次に、署名照合部203は、記憶部202から読み出した署名(ユーザ端末装置110から受信した署名)と署名入力指示画面の署名欄401に入力された署名とを照合し(S48)、両者が合致するか否かを判定する(S49)。
【0139】
S49の判定の結果、両署名が合致すれば、制御部201(表示制御部216)は、操作パネル50の表示部204に、図14に示す署名認証完了画面を表示させる(S50)。そして、制御部201(印刷制御部217)は、対応する印刷ジョブについての印刷を画像形成部209に実行させる(S51)。
【0140】
また、S42の判定の結果、印刷ジョブが署名と関連付けられた印刷ジョブ(機密書類についての印刷ジョブ)でなければ、制御部201(印刷制御部217)は、S43に進んでその印刷ジョブについての印刷を画像形成部209に実行させる。
【0141】
一方、S46の判定の結果、印刷開始までの時間設定部310において設定された時間内に署名欄401に署名が行われていない場合、およびS49の判定の結果、両署名が合致しない場合には、選択されている印刷ジョブを削除して(S52)、処理を終了する。
【0142】
また、S44の判定の結果、表示部204に表示されている印刷ジョブ待機情報のうちのいずれかがユーザにより選択されない場合、およびS47の判定の結果、署名認証実行ボタン402がユーザにて操作されない場合には、処理を終了する。
【0143】
次に、S49にて行われる、記憶部202から読み出した署名と署名入力指示画面の署名欄401に入力された署名とが合致するか否かの判定動作について説明する。
【0144】
署名認証完了画面203では、例えば、次のような手法により、上記両署名が合致するか否かを判定する。例えば、(A)両署名を図形とみなし、両署名が相似形であれば合致すると判定する。または、(B)両署名について文字認識を行い、その結果、両署名の全ての文字が一致すれば両署名が合致すると判定する。または、(C)両署名の書順が同一であり、かつ両署名が相似形であれば合致すると判断する。または、(D)ユーザ端末装置110の署名欄306と操作パネル50の表示部204の署名欄401とを座標に分割し、両署名を図形とみなし、両図形が存在する座標、座標から求められる両図形の傾き、署名の書順(図形を構成する部品の各座標位置の通過順序)、もしくは図形を構成する部品の各座標位置の通過時間などから、両署名が同じ合致するか否かを判定する。
【0145】
ここで、上記両署名が合致するか否かを判定する場合の上記(D)の手法について説明する。図15は、ユーザ端末装置110から受信した署名と操作パネル50の表示部204に表示された署名入力指示画面の署名欄401に入力された署名とが合致するか否かを判定する動作(図7に示したS49の動作)の一例を示す説明図である。
【0146】
図15に示すように、「TaRoh」という署名の「T」をY座標軸−X座標軸にて分解すると、まずY座標(4)−X座標(1)からスタートし、順次、Y座標(3)−X座標(1)、Y座標(3)−X座標(2)、Y座標(2)−X座標(2)、Y座標(2)−X座標(3)……と移動し、最後は、Y座標(11)−X座標(2)で終わる。このような、署名を図形とみなした場合の図形を構成する部品の各座標位置の通過順序、および図形を構成する部品の各座標位置の通過時間から、上記両署名が合致するか否かを判定した場合、精度の高い判定が可能となる。
【0147】
また、図15に示した各座標位置の1枡をより小さくすると、上記両署名が合致するか否かの判定において、さらに判定精度を高めることができる。一方、誤判定の頻度を低下させる上においては、上記1枡の大きさを単に小さくするばかりでなく、適当な大きさに設定するのが好ましい。
【0148】
また、上記両署名が合致すると判定する基準については、署名の大きさは相似形であれば可とし、署名の座標位置が合致する基準を1枡に限定せず、2枡から4枡の範囲でずれている場合も合致すると見なすようにしてもよい。
【0149】
次に、本発明の実施の形態において扱われる機密書類の例について説明する。図16は、本発明の実施の形態において扱われる機密書類の一例を示す説明図である。
【0150】
図16に示す機密書類は、オフセットクレジット登録申請である。このオフセットクレジット登録申請は、個人を特定できる情報が記載されているため、機密書類にと見なすことができる。なお、このオフセットクレジット登録申請を気候変動対策認証センターへ申請し、登録されると、例えば、事業活動にて排出される温室効果ガスのカーボンオフセットが可能となり、それによって地球温暖化防止に寄与することができる。
【0151】
上記のように、本実施の形態の印刷システム105において、ユーザ端末装置110から画像形成装置100に機密書類の印刷を指示して印刷を行う場合には、まずユーザ端末装置110の表示部111に表示された印刷指示画面の署名入力指示画面においてユーザが署名する。次に、ユーザ端末装置110から画像形成装置100に対して印刷ジョブを送信して印刷の実行を指示する。その後、ユーザが、画像形成装置100のところに移動し、操作パネル50の表示部204に表示された署名入力指示画面において、ユーザ端末装置110の署名入力指示画面において行った署名と同一の署名を行う。次に、画像形成装置100では、上記の両署名が合致するか否かを判定し、合致する場合に機密書類の印刷を実行する。
【0152】
したがって、本実施の形態の印刷システム105では、IDカードリーダや生体情報を扱う特別な認証情報読取装置を備える必要がなく、また、ユーザがIDカードを携行する必要がなく、簡便にユーザ認証を行って機密書類の印刷を行うことができる。
【0153】
また、ユーザが画像形成装置100のところに移動して画像形成装置100において署名を行い、署名照合部203での署名認証が完了した時点にて画像形成装置100により機密書類の印刷が実行される。したがって、画像形成装置100を複数のユーザにて使用する環境下であっても、印刷システム105において複雑な処理を行うことなく、印刷を指示したユーザが画像形成装置100から容易かつ確実に機密書類の印刷物を回収することができる。これにより、機密書類の内容が他のユーザに漏れる事態、および印刷物を紛失して再印刷が必要となる事態を確実に防止することができる。
【0154】
上記のように、印刷システム105では、簡便にユーザ認証を行って機密書類の印刷を行うことができ、かつ容易かつ確実に機密書類の印刷物を回収できるので、このような印刷システム105の構成は、イベント会場など、多数のユーザが一つの画像形成装置100を使用する環境下において特に有効である。
【0155】
また、印刷システム105では、ユーザにて同一署名の使用回数制限設定部309に設定された使用回数制限値により、同一の署名についての使用回数が制限される。また、同一署名の使用回数制限設定部309に使用回数制限値が設定されない場合であっても、同一の署名についての使用回数の上限値(例えば5回)が予め設けられている。これにより、ユーザ端末装置110の署名欄306に入力された署名が他のユーザに漏れた場合であっても、情報の漏洩を最小限に抑制することができる。
【0156】
また、印刷開始までの時間設定部310への時間設定は任意であるものの、時間設定がされた場合には、ユーザ端末装置110により印刷実行が指示されてから、設定された時間内に画像形成装置100においてユーザにより署名が入力されなければ(署名の入力が開始されなければ)、画像形成装置100においてユーザ端末装置110から送信された印刷ジョブが削除される。したがって、画像形成装置100において、署名とともに単にユーザ端末装置110から送信されただけの印刷ジョブが印刷待機情報として多量に蓄積されていく事態を回避することができる。これにより、画像形成装置100の記憶部202は、印刷待機情報として多量の印刷ジョブを格納できる大容量のものとする必要がなく、画像形成装置100のコストアップを防止することができる。
【0157】
また、印刷開始までの時間設定部310に設定された設定時間は、ユーザ端末装置110により印刷実行が指示されてから、画像形成装置100においてユーザにより署名が入力されるまでの時間(署名の入力が開始されるまでの時間)に限定されない。すなわち、ユーザ端末装置110により印刷実行が指示されてから、画像形成装置100において印刷ジョブの印刷を開始させるための何らかの入力(印刷ジョブの印刷の開始につながる何らかの入力)が開始されるまでの時間であればよい。
【0158】
また、印刷システム105が備える画像形成装置100としては、表示部を備えたインクジェット記録装置や民生用機器(映像、音響、通信などに関連した電子機器や装置において、一般消費者による使用、一般家庭での使用を目的としているもの、または、そのことを前提に開発、設計された製品、規格を指す)や業務用機器(法人(企業や学校、官公庁)など、一般家庭以外の用途を前提として開発された製品)も適用可能である。
【0159】
最後に、印刷システム105の各ブロック、特にユーザ端末装置110および画像形成装置100は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0160】
すなわち、ユーザ端末装置110および画像形成装置100は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるユーザ端末装置110および画像形成装置100の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記ユーザ端末装置110および画像形成装置100に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0161】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0162】
また、ユーザ端末装置110および画像形成装置100を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0163】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0164】
1 通信システム
20 画像形成ユニット(印刷手段)
30 原稿読取ユニット
50 操作パネル
100 画像形成装置
101 管理サーバ
102 ネットワーク
104 ネットワーク
105 印刷システム
110 ユーザ端末装置
111 表示部(第2の表示手段)
112 入力部
121 制御部
122 記憶部(第2の記憶手段)
123 通信部(第2の通信手段)
131 表示制御部(第2の表示制御部)
132 同一署名判定部(識別情報使用回数制限部)
133 同一署名カウント部(識別情報使用回数制限部)
134 署名可否判定部(識別情報使用回数制限部)
135 記憶制御部(第2の記憶制御部、第3の記憶制御部)
136 通信制御部
201 制御部
202 記憶部(第1の記憶手段)
203 署名照合部(照合部)
204 表示部(第1の表示手段)
205 入力部
206 通信部(第1の通信手段)
208 画像処理部
209 画像形成部
210 定着部
206 通信部
215 記憶制御部(第1の記憶制御部)
216 表示制御部(第1の表示制御部)
217 印刷制御部
301 機密書類印刷設定タブ
302 画像調整領域
303 プレビュー画像
304 署名入力画面選択ボタン
305 署名の上書き保存選択部
306 署名欄(識別情報の第2の入力欄)
307 JIS記号選択部
308 保存した署名の再表示選択部
309 同一署名の使用回数制限設定部(使用回数制限値の入力欄)
310 印刷開始までの時間設定部(設定時間の入力欄)
401 署名欄(識別情報の第1の入力欄)
402 署名認証実行ボタン
402 署名認証実行ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に画像を印刷する印刷手段と、
第1の表示手段と、
第1の通信手段と、
第1の記憶手段と、
前記第1の通信手段によって受信された情報を前記第1の記憶手段に格納する第1の記憶制御部と、
前記第1の記憶手段に格納されている情報のうち、第1の識別情報と関連付けられている第1の印刷ジョブの印刷が指示されている場合に、前記第1の表示手段に識別情報の第1の入力欄を表示させる第1の表示制御部と、
前記第1の入力欄に入力された識別情報と前記第1の識別情報とが合致するか否かを判定する照合部と、
前記照合部により前記両識別情報同士が合致すると判定された場合に、前記第1の印刷ジョブの印刷を前記印刷手段に行わせる印刷制御部とを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の記憶制御部は、前記照合部により前記両識別情報同士が合致しないと判定された場合に、前記第1の印刷ジョブを削除することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の記憶手段に格納されている情報のうち、識別情報と関連付けられていない印刷ジョブの印刷が指示されている場合に、前記第1の表示制御部は、前記第1の表示手段に識別情報の前記第1の入力欄を表示させず、前記照合部は、前記判定動作を行わず、前記印刷制御部は、前記照合部の判定結果を要することなく、指示された印刷ジョブの印刷を前記印刷手段に行わせることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置とユーザ端末装置とを備え、
前記ユーザ端末装置は、
第2の表示手段と、
第2の通信手段と、
第2の記憶手段と、
前記第2の表示手段に識別情報の第2の入力欄を表示させる第2の表示制御部と、
前記第2の記憶手段に格納されている第1の印刷ジョブについての第1の識別情報が識別情報の前記第2の入力欄に入力され、かつ前記第1の印刷ジョブについての印刷が指示された場合に、前記第1の印刷ジョブと前記第1の識別情報とを関連づけて前記第2の通信手段により前記画像形成装置に送信させる通信制御部とを備えていることを特徴とする印刷システム。
【請求項5】
前記ユーザ端末装置の前記第2の表示制御部は、前記第2の表示手段に前記第2の入力欄と関連づけて設定時間の入力欄を表示させ、
前記ユーザ端末装置の前記通信制御部は、前記設定時間の入力欄に設定された設定時間を示す情報を前記第2の通信手段により前記画像形成装置に送信させ、
前記画像形成装置の前記第1の記憶制御部は、前記ユーザ端末装置において前記第1の印刷ジョブについての印刷が指示されてから、前記設定時間内に前記画像形成装置に対して前記第1の印刷ジョブの印刷を開始させるための入力が行われない場合に、前記第1の印刷ジョブを削除することを特徴とする請求項4に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記画像形成装置の前記第1の記憶制御部は、前記ユーザ端末装置において前記第1の印刷ジョブについての印刷が指示されてから、前記設定時間内に前記画像形成装置の前記第1の表示手段に表示された第1の入力欄への識別情報の入力が開始されない場合に、前記第1の印刷ジョブを削除することを特徴とする請求項5に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記ユーザ端末装置は、識別情報の前記第2の入力欄に入力された識別情報を前記第2の記憶手段に逐次上書き保存させる第2の記憶制御部を備え、
前記第2の表示制御部は、識別情報の前記第2の入力欄を前記第2の表示手段に表示させる場合に、前記第2の記憶手段に上書き保存されている直近の識別情報を識別情報の前記第2の入力欄に表示させることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記ユーザ端末装置は、識別情報の前記第2の入力欄に入力された識別情報を前記第2の記憶手段に保存させる第3の記憶制御部と、
識別情報使用回数制限部とを備え、
前記ユーザ端末装置の前記第2の表示制御部は、前記第2の表示手段に識別情報の前記第2の入力欄と関連づけて使用回数制限値の入力欄を表示させ、
前記識別情報使用回数制限部は、識別情報の前記第2の入力欄に入力された識別情報を前記第2の記憶手段に前記第3の記憶制御部により保存されている識別情報と比較して、同一の識別情報の使用回数をカウントするとともに、識別情報の前記第2の入力欄に入力される識別情報として、同一の識別情報が前記使用回数制限値を超えて使用された場合に、その識別情報の受け付けを拒否することを特徴とする請求項4から7のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項9】
前記識別情報使用回数制限部は、前記使用回数制限値の上限値を備え、前記使用回数制限値の入力欄に入力された使用回数制限値が前記上限値を超える場合に、前記使用回数制限値を前記上限値に設定することを特徴とする請求項8に記載の印刷システム。
【請求項10】
前記識別情報は、ユーザの手書きによる署名であり、
識別情報の前記第1の入力欄および識別情報の前記第2の入力欄は、ユーザの手書きによる署名を受け付けるものであり、
前記照合部は、前記第1の入力欄に入力された前記識別情報としての署名と前記第1の識別情報としての署名とが合致するか否かを判定するものであることを特徴とする請求項4から9のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項11】
前記識別情報と関連付けられている前記印刷ジョブは、少なくともカーボンオフセットクレジットのプログラム認証申請書または登録依頼書の印刷に関するものであることを特徴とする請求項4から10のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項12】
受信した情報を第1の記憶手段に格納する記憶制御工程と、
前記第1の記憶手段に格納されている情報のうち、第1の識別情報と関連付けられている第1の印刷ジョブの印刷が指示されている場合に、前記第1の表示手段に識別情報の第1の入力欄を表示させる表示制御工程と、
前記第1の入力欄に入力された識別情報と前記第1の識別情報とが合致するか否かを判定する照合工程と、
前記照合工程により前記両識別情報同士が合致すると判定された場合に、前記第1の印刷ジョブの印刷を印刷手段に行わせる印刷制御工程とを備えていることを特徴とする画像形成方法。
【請求項13】
請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置の前記の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−75378(P2013−75378A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215471(P2011−215471)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】