説明

画像形成装置、及び、プロセスカートリッジ

【課題】電子写真感光体に摩擦帯電が生じ難い画像形成装置を提供する。
【解決手段】電荷輸送性骨格を有する硬化物を含有して構成される最表面層を有する電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像手段と、結晶性樹脂を含有し、形状係数SF1が100以上150以下、かつ体積平均粒子径が3μm以上6μm以下であるトナー粒子及び外添剤としてフッ素樹脂粒子を有するトナーを含有する現像剤を収容し、現像剤により電子写真感光体に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像手段と、トナー画像を被転写体に転写する転写手段と、ウレタンゴムを含有し、電子写真感光体表面への押し付け圧0.20mN/mm以上で配置されるブレードを有し、電子写真感光体の表面を清掃する清掃手段と、を備える画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、及び、プロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、一般的には、次の如き構成及びプロセスを有するものである。
即ち、電子写真感光体表面を帯電手段で所定の極性及び電位に帯電させ、帯電後の電子写真感光体表面を、像露光により選択的に除電することにより静電潜像を形成させた後、現像手段で該静電潜像にトナーを付着させることにより、潜像をトナー像として現像し、トナー像を転写手段で被転写媒体に転写させることにより、画像形成物として排出させるといったものである。
近年、有機光導電材料を用いた有機感光体が主流を占めるようになってきている。また、電子写真感光体の表面に保護層を設けることが提案されている。
【0003】
保護層を形成する材料系としては、以下のものが提案されている。
例えば、特許文献1には、光硬化型アクリル系モノマーを含有する液を硬化した膜が、特許文献2には、炭素−炭素二重結合を有するモノマー、炭素−炭素二重結合を有する電荷移動材、及びバインダー樹脂の混合物を、熱或いは光のエネルギーによって前記モノマーの炭素−炭素二重結合と前記電荷移動材の炭素−炭素二重結合とを反応させることにより形成された膜が、特許文献3には、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合した化合物からなる膜が、保護層として開示されている。
これらアクリル系材料は、硬化条件、硬化雰囲気等の影響を強く受けることから、例えば、特許文献4には、真空中、或いは不活性ガス中で放射線照射後に加熱されることによって形成された膜が、特許文献5には、不活性ガス中で加熱硬化された膜が開示されている。
更に、例えば、特許文献2および特許文献6には、電荷輸送材料自身をアクリル変性し、架橋可能とすると共に、電荷輸送性を有さない反応性モノマーを添加し、膜強度を向上させることも開示されている。
【0004】
更に、反応物、硬化膜による保護層としては以下のようなものも提案されている。
例えば、特許文献7には、電荷輸送材料自身を3官能以上の多官能に変性し、これを重合した化合物を含有する保護層が開示されている。また、特許文献8には、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合物を保護層に使用する技術が開示されており、また、摩擦特性を向上させるために、潤滑剤としてフッ素原子含有化合物を保護層中に含有する技術が開示されている。
また、特許文献9および特許文献10には、トナー外添剤として、疎水性シリカ粒子以外にも、ポリフッ化ビニリデン粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子などのフッ素樹脂粒子をブレードとの潤滑剤として添加してもよいことが開示されている。
【0005】
特許文献11には、同一分子内にトリフェニルアミン骨格と、4つメタクリロイル基を有する化合物が例示されており、機械的な強度と電気特性を両立させるためには電荷輸送性を持たない化合物との併用が必須で、かつ、機械的な強度は電荷輸送性を持たない化合物で可塑効果を低減し、向上させることが開示されている。
さらに、特許文献12には、架橋表面層中に残留するモノマー量を0.5質量%以下とすることでクリーニング特性、画像特性が向上することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−40360号公報
【特許文献2】特開平5−216249号公報
【特許文献3】特開2000−206715号公報
【特許文献4】特開2004−12986号公報
【特許文献5】特開平7−72640号公報
【特許文献6】特開2004−302450号公報
【特許文献7】特開2000−206717号公報
【特許文献8】特開2001−175016号公報
【特許文献9】特開2005−91457号公報
【特許文献10】特開2005−91500号公報
【特許文献11】特開2007−86522号公報
【特許文献12】特開2005−49736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、少なくとも電荷輸送性骨格を有する硬化物を含有して構成される最表面層を有する電子写真感光体と、ウレタンゴムを含有し、前記電子写真感光体表面への押し付け圧0.20mN/mm以上で配置されるブレードを有し、前記電子写真感光体の表面を清掃する清掃手段とを少なくとも備える画像形成装置で、結晶性樹脂を含有し、形状係数SF1が100以上150以下、かつ体積平均粒子径が3μm以上6μm以下であるトナー粒子及び外添剤としてフッ素樹脂粒子を有するトナーを用いない場合に比べ、画像ゴーストの発生しにくい画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、少なくとも電荷輸送性骨格を有する硬化物を含有して構成される最表面層を有する電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像手段と、
結晶性樹脂を含有し、形状係数SF1が100以上150以下、かつ体積平均粒子径が3μm以上6μm以下であるトナー粒子及び外添剤としてフッ素樹脂粒子を有するトナーを含有する現像剤を収容し、前記現像剤により前記電子写真感光体に形成された前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像手段と、
前記トナー画像を被転写体に転写する転写手段と、
ウレタンゴムを含有し、前記電子写真感光体表面への押し付け圧0.20mN/mm以上で配置されるブレードを有し、前記電子写真感光体の表面を清掃する清掃手段と、
を備える画像形成装置である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記硬化物が、同一分子内に電荷輸送性骨格及び連鎖重合性官能基を有する化合物の硬化物である請求項1に記載の画像形成装置である。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記連鎖重合性官能基が、4つ以上のメタクリロイル基である請求項2に記載の画像形成装置である。
【0011】
請求項4に係る発明は、少なくとも電荷輸送性骨格を有する硬化物を含有して構成される最表面層を有する電子写真感光体と、
結晶性樹脂を含有し、形状係数SF1が100以上150以下、かつ体積平均粒子径が3μm以上6μm以下であるトナー粒子及び外添剤としてフッ素樹脂粒子を有するトナーを含有する現像剤を収容し、前記現像剤により前記電子写真感光体に形成された前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像手段と、
ウレタンゴムを含有し、前記電子写真感光体表面への押し付け圧0.20mN/mm以上で配置されるブレードを有し、前記電子写真感光体の表面を清掃する清掃手段と、
を少なくとも備え、画像形成装置に着脱自在であるプロセスカートリッジである。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記硬化物が、同一分子内に電荷輸送性骨格及び連鎖重合性官能基を有する化合物の硬化物である請求項4に記載のプロセスカートリッジである。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記連鎖重合性官能基が、4つ以上のメタクリロイル基である請求項5に記載のプロセスカートリッジである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、少なくとも電荷輸送性骨格を有する硬化物を含有して構成される最表面層を有する電子写真感光体と、ウレタンゴムを含有し、前記電子写真感光体表面への押し付け圧0.20mN/mm以上で配置されるブレードを有し、前記電子写真感光体の表面を清掃する清掃手段とを少なくとも備える画像形成装置で、結晶性樹脂を含有し、形状係数SF1が100以上150以下、かつ体積平均粒子径が3μm以上6μm以下であるトナー粒子及び外添剤としてフッ素樹脂粒子を有するトナーを用いない場合に比べ、前記電子写真感光体に画像ゴーストの発生しにくい画像形成装置が提供される。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、電荷輸送性骨格を有する硬化物が、同一分子内に電荷輸送性骨格及び連鎖重合性官能基を有する化合物の硬化物でない場合に比べ、電子写真感光体の耐摩耗性が向上し長期にわたり画像ゴーストの発生しにくい画像形成装置が提供される。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、連鎖重合性官能基が、4つ以上のメタクリロイル基でない場合に比べ、電子写真感光体の耐摩耗性がさらに向上しより長期にわたり画像ゴーストの発生しにくい画像形成装置が提供される。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、少なくとも電荷輸送性骨格を有する硬化物を含有して構成される最表面層を有する電子写真感光体と、ウレタンゴムを含有し、前記電子写真感光体表面への押し付け圧0.20mN/mm以上で配置されるブレードを有し、前記電子写真感光体の表面を清掃する清掃手段とを少なくとも備えるプロセスカートリッジで、結晶性樹脂を含有し、形状係数SF1が100以上150以下、かつ体積平均粒子径が3μm以上6μm以下であるトナー粒子及び外添剤としてフッ素樹脂粒子を有するトナーを用いない場合に比べ、電子写真感光体に画像ゴーストの発生しにくいプロセスカートリッジが提供される。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、電荷輸送性骨格を有する硬化物が、同一分子内に電荷輸送性骨格及び連鎖重合性官能基を有する化合物の硬化物でない場合に比べ、電子写真感光体の耐摩耗性が向上し長期にわたり画像ゴーストの発生しにくいプロセスカートリッジが提供される。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、連鎖重合性官能基が、4つ以上のメタクリロイル基でない場合に比べ、電子写真感光体の耐摩耗性がさらに向上しより長期にわたり画像ゴーストの発生しにくいプロセスカートリッジが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図2】実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図3】実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図4】実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図5】ブレードの電子写真感光体表面への押し付け圧を説明するための模式図である。
【図6】ブレードの設定角度を説明するための模式図である。
【図7】ブレードの自由長を説明するための模式図である。
【図8】他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図9】(A)乃至(C)はそれぞれ画像評価に用いた画像パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔電子写真感光体〕
本実施形態に係る画像形成装置は、少なくとも電荷輸送性骨格を有する硬化物を含有して構成される最表面層を有する電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像手段と、結晶性樹脂を含有し、形状係数SF1が100以上150以下、かつ体積平均粒子径が3μm以上6μm以下であるトナー粒子及び外添剤としてフッ素樹脂粒子を有するトナーを含有する現像剤を収容し、前記現像剤により前記電子写真感光体に形成された前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像手段と、前記トナー画像を被転写体に転写する転写手段と、ウレタンゴムを含有し、前記電子写真感光体表面への押し付け圧0.20mN/mm以上で配置されるブレードを有し、前記電子写真感光体の表面を清掃する清掃手段と、を備える。
【0022】
本実施形態に係る画像形成装置では、上記構成とすることで、前記電子写真感光体に画像ゴーストが発生しにくくなる。
かかる効果を奏する機構については必ずしも明確ではないが、以下のように推定している。
【0023】
画像形成装置の運転により、トナーの現像および転写の後も電子写真感光体表面に残存したトナー等の残存物は、クリーニングブレードにより掻き取られ、回収される。ここで、トナーが結晶性樹脂を含有すると、非晶性樹脂に比べ溶融温度が低いことから、トナーは電子写真感光体表面に付着または融着し易いと考えられる。また、トナーが小さく(体積平均粒子径が3μm以上6μm以下)、球状(形状係数SF1が100以上150以下)であるほど、トナーはクリーニングブレードをすり抜け易く、クリーニングブレードで掻き取りにくいと考えられる。そのため、クリーニングブレードを、より一層強く電子写真感光体表面に押し付け、トナー等を回収し、電子写真感光体表面を清掃する傾向にある。このとき、クリーニングブレードの電子写真感光体表面への押し付け圧を0.20mN/mm以上とし、また、電子写真感光体の最表面層を、磨耗し難い電荷輸送性骨格を有する硬化物を含有して構成すると、クリーニングブレードとの間で摩擦が生じ易く、摩擦による帯電が生じ易いと考えられる。特に、電荷輸送性骨格を有する硬化物として、4つ以上のメタクリロイル基等の連鎖重合性官能基を有する化合物の硬化物を用いると、より電子写真感光体の表面(最表面層)は磨耗しにくくなり、より一層、摩擦による帯電が生じ易いと考えられる。
【0024】
かかる構成の画像形成装置において、トナーがフッ素樹脂粒子を含有することで、画像形成装置を運転したときに、トナーに含まれるフッ素樹脂粒子が電子写真感光体表面に付着すると考えられる。さらに画像形成装置を連続運転することにより、電子写真感光体表面は、フッ素樹脂膜が形成されると考えられる。
電子写真感光体表面にフッ素樹脂膜が形成されることで、電子写真感光体表面に新たに付着したトナー等は、フッ素樹脂膜が形成されていない電子写真感光体表面に比べクリーニングブレードで掻き取り易く、また、クリーニングブレードとの間の摩擦も減少すると考えられる。その結果、電子写真感光体表面に摩擦帯電が生じにくくなると考えられる。また、摩擦帯電を抑えることにより、画像部と非画像部とに電位履歴の差に起因する残像現象(以下、「ゴースト」とも称する)が抑えられる。
【0025】
また、電子写真感光体表面を構成する電荷輸送性骨格を有する硬化物として、連鎖重合性官能基を有する化合物の硬化物を用いた場合には、電子写真感光体表面は、連鎖重合性官能基を有する化合物の硬化物を用いない場合よりも摩耗しにくくなり、特に、連鎖重合性官能基が4つ以上のメタクリロイル基である場合に顕著である。しかし、かかる場合にも、電子写真感光体表面にフッ素樹脂膜が形成されることで、クリーニングブレードと電子写真感光体表面との摩擦を減少し得る。
さらに、電荷輸送性骨格を有する硬化物として、4つ以上のメタクリロイル基等の連鎖重合性官能基を有する化合物の硬化物を用いた場合には、電荷輸送性骨格を有する硬化物(硬化膜)には、重合、硬化の反応条件により未反応の連鎖重合性官能基が残留し得る。かかる未反応の連鎖重合性官能基はオゾン等による酸化を受けやすく、表面にカルボン酸などの極性基が生じやすく、硝酸イオンなどの放電生成物を吸着しやすい。これは結果としてクリーニングブレードとの摩擦係数が大きくなり、ゴーストを発生しやすくなる。しかし、電子写真感光体の表面に付着するフッ素樹脂粒子により未反応の連鎖重合性官能基が覆われ、硝酸イオンなどの放電生成物の吸着を抑制すると考えられる。
以下、本実施形態の画像形成装置について、詳細に説明する。まず、電子写真感光体について説明する。
【0026】
〔電子写真感光体〕
本実施形態の画像形成装置は、少なくとも電荷輸送性骨格を有する硬化物を含有して構成される最表面層を有する電子写真感光体を備える。
本実施形態の電子写真感光体は、更に、導電性基体と、該導電性基体上に設けられた感光層とを備えていてもよい。また、最表面層は、電子写真感光体自体の最上面を形成していればよく、保護層として機能する層、又は、電荷輸送層として機能する層として設けられる。
なお、最表面層が保護層として機能する層である場合、この保護層の下層には、電荷輸送層及び電荷発生層からなる感光層、又は、単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)を有することとなる。
【0027】
最表面層が保護層として機能する層の場合、導電性基体上に、感光層、及び最表面層として保護層を有し、該保護層が電荷輸送性骨格を有する硬化物を含有して構成される形態が挙げられる。
一方、最表面層が電荷輸送層として機能する層の場合、導電性基体上に、電荷発生層、及び最表面層として電荷輸送層を有し、該電荷輸送層が電荷輸送性骨格を有する硬化物を含有して構成される形態が挙げられる。
【0028】
以下、最表面層が保護層として機能する層の場合の、電子写真感光体について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
図1は、実施形態に係る電子写真用感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図2乃至図3はそれぞれ他の実施形態に係る電子写真感光体を示す模式断面図である。
【0029】
図1に示す電子写真感光体7Aは、いわゆる機能分離型感光体(又は積層型感光体)であり、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に電荷発生層2、電荷輸送層3、及び保護層5が順次形成された構造を有するものである。電子写真感光体7Aにおいては、電荷発生層2及び電荷輸送層3により感光層が構成されている。
【0030】
図2に示す電子写真感光体7Bは、図1に示す電子写真感光体7Aと同様に電荷発生層2と電荷輸送層3とに機能が分離された機能分離型感光体である。また、図3に示す電子写真感光体7Cは、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層))に含有するものである。
【0031】
図2に示す電子写真感光体7Bにおいては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に、電荷輸送層3、電荷発生層2、及び保護層5が順次形成された構造を有するものである。電子写真感光体7Bにおいては、電荷輸送層3及び電荷発生層2により感光層が構成されている。
また、図3に示す電子写真感光体7Cにおいては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に単層型感光層6、保護層5が順次形成された構造を有するものである。
【0032】
そして、上記図1乃至図3に示す電子写真感光体7A乃至7Cにおいて、保護層5が、導電性基体2から最も遠い側に配置される最表面層となっており、当該最表面層が、上記所定の構成となっている。
なお、図1乃至図3に示す電子写真感光体において、下引層1は設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0033】
以下、代表例として図1に示す電子写真感光体7Aに基づいて、各要素について説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0034】
<保護層>
保護層は、電子写真感光体における最表面層であり、電荷輸送性骨格を有する硬化物を含有して構成される。つまり、保護層は、電荷輸送性骨格を有する化合物を、熱重合、光重合、または放射線により硬化させた硬化物を用いて構成される。なお、当該硬化物は、電荷輸送性骨格を有する化合物の他、重合開始剤、バインダー樹脂、及びモノマーを含有する組成物の硬化物としてもよい。
【0035】
まず、電荷輸送性骨格を有する硬化物について説明する。
保護層(最表面層)に用いられる電荷輸送性骨格を有する硬化物は、分子内に電荷輸送性骨格を有する化合物を熱重合、光重合、または放射線により硬化させた硬化物であり、この構造上の条件を満たしていれば如何なるものでもかまわない。
ここで、電荷輸送性骨格としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が電荷輸送性骨格に相当する。
【0036】
電荷輸送性骨格を有する硬化物は、同一分子内に電荷輸送性骨格及び連鎖重合性官能基を有する化合物の硬化物であることが好ましい。この態様とすることで、架橋密度が高く、磨耗し難い最表面層を形成しうるため、電荷輸送性を有さない多官能モノマーを必ずしも添加する必要がなくなり、多官能モノマーの添加による電気特性の低下を起こさせることなく、最表面層の厚膜化が図れる。
以下、「同一分子内に電荷輸送性骨格及び連鎖重合性官能基を有する化合物」を特定の電荷輸送材料(a)とも称する。
【0037】
ここで、連鎖重合性官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイル基の誘導体、メタクリロイル基の誘導体、又はスチリル基等が挙げられ、特に、メタクリロイル基およびその誘導体であることが望ましい。
その理由は明確ではないが、以下のように推測される。
通常、硬化反応には反応性の高いアクリル基が用いられることが多いが、かさ高い電荷輸送性骨格に置換基として反応性の高いアクリロイル基を用いた場合、不均一な硬化反応がおきやすくなりミクロ(若しくはマクロ)的な海島構造ができやすくなると考えられる。このような海島構造は電子写真分野以外では特に問題となることは少ないが、電子写真感光体として用いた場合には、最表面層のムラ・シワを発生しやすく、電荷輸送性が異なる部分がマクロに生じ、結果として、画像ムラなどの問題を生じる。なお、このような海島構造の形成は一つの電荷輸送性骨格に複数の官能基がついている場合は、特に顕著になると考えられる。
【0038】
また、特定の電荷輸送材料(a)は、電荷輸送性骨格とアクリロイル基又はメタクリロイル基との間に炭素原子が1つ以上介在した構造であることが望ましい。つまり、特定の電荷輸送材料(a)としては、電荷輸送性骨格とアクリロイル基又はメタクリロイル基との間には炭素原子を1つ以上含む炭素鎖を連結基として有することが望ましい態様である。特に、かかる連結基がアルキレン基であることがもっとも望ましい態様である。
【0039】
上記の態様が望ましい理由としては、必ずしも明らかではないが、以下の理由が考えられる。
即ち、電子吸引性のアクリロイル基又はメタクリロイル基が電荷輸送性骨格に近すぎると、電荷輸送性骨格の電荷密度が低下し、イオン化ポテンシャルが上昇することにより、下層からのキャリア注入が円滑に進行しにくくなることがある。また、メタクリロイル基のようなラジカル重合性の置換基を重合させる場合、重合時に生成するラジカルが電荷輸送性骨格に移動しやすい構造であると、生成したラジカルが電荷輸送の機能を劣化させてしまうため、電気特性の悪化を招いてしまうと考えられる。更に、最表面層における機械強度については、かさ高い電荷輸送性骨格と連鎖重合性官能基(アクリロイル基又はメタクリロイル基)が近くリジッドであると重合部位同士が動きづらくなり、反応する確率が低下してしまうおそれがあるものと考えられる。
これらのことから、電荷輸送性骨格とアクリロイル基又はメタクリロイル基との間に柔軟性に富む炭素鎖を介在させる構造が望ましいものとなる。
【0040】
更に、特定の電荷輸送材料(a)は、同一分子内にトリフェニルアミン骨格と3つ以上、より望ましくは、4つ以上のメタクリロイル基と、を有する構造の化合物(a’)であることが望ましい態様である。この態様とすることで、合成における化合物の安定性が確保でき、工業的な規模で生産され得る。また、十分な強度を有する架橋膜とし得るために、電荷輸送性を有さない多官能モノマーを必ずしも添加する必要がなくなり、厚膜においても十分な電気特性が確保されるため、寿命を延ばし得る。さらに、電気特性と強度が確保されることにより、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物にバインダー樹脂やモノマーを添加し易くなり、かかる組成物を硬化して硬化物とすることでガスバリア性向上、接着性が向上し得る。
【0041】
同一分子内にトリフェニルアミン骨格と、3つ以上、より好ましくは、4つ以上のメタクリロイル基を有する構造を持つ化合物は、電荷輸送性を有さない多官能モノマーと異なり、電荷輸送性構造を有することから反応性基を持たない従来の電荷輸送材料との相溶性に優れるため、反応性基を持たない従来の電荷輸送材料のドーピングをし得る。そのため、より一層、電気特性が向上すると考えられる。
【0042】
特定の電荷輸送材料(a)の硬化物(重合開始剤やモノマー等を併用するときは、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物の硬化物)を得るには、特定の電荷輸送材料(a)(または、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物)を、公知の硬化方法で硬化すればよい。
硬化方法としては、熱、光、放射線などによるラジカル重合が挙げられるが、反応が早く進行しすぎると膜のムラやシワを発生しやすくなる。そのため、ラジカル発生が比較的ゆっくりと起こり、かつ、連鎖重合官能性基として反応性がアクリロイル基よりも低いメタクリロイル基を選択して熱重合を行うことで、熱による構造緩和促進が図れるため、安定して均一性の高い膜が得られる。
【0043】
本実施態様において、特定の電荷輸送材料(a)としては、下記一般式(A)で表される化合物であることが、電荷輸送性に優れることから、望ましい。
【0044】
【化1】



【0045】
上記一般式(A)中、Ar乃至Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは、末端に、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイル基の誘導体、メタクリロイル基の誘導体、及びスチリル基からなる群より選択される少なくとも1つを含有する基を表し、c1乃至c5はそれぞれ独立に0、1又は2を表し、kは0又は1を表し、Dの総数は1以上である。
【0046】
一般式(A)のDは、−(CH−(O−CH−CH−O−CO−C(CH)=CH、−CH=CH、または、−(CH−(C=O)−O−C−CH=CHであることが好ましい。このとき、dは1以上5以下の整数を表し、eは0又は1を表し、fは0又は1を表し、Dの総数は4以上である。
【0047】
以下、一般式(A)の詳細について説明する。
一般式(A)において、Ar乃至Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示す。Ar乃至Arは、それぞれ、同一でもあってもよいし、異なっていてもよい。
ここで、置換アリール基における置換基としては、D以外のものとして、炭素数1乃至4のアルキル基若しくはアルコキシ基、炭素数6乃至10の置換若しくは未置換のアリール基等が挙げられる。
Ar乃至Arとしては、下記式(1)乃至(7)のうちのいずれかであることが望ましい。なお、下記式(1)乃至(7)は、Ar乃至Arの各々に連結され得る「−(D)C1」乃至「−(D)C4」を総括的に示した「−(D)」と共に示す。
【0048】
【化2】



【0049】
上記式(1)乃至(7)中、Rは、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、及び炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表し、R乃至Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表す。Arは置換又は未置換のアリーレン基を表す。Dは−(CH−(O−CH−CH−O−CO−C(CH)=CH、−CH=CH、または、−(CH−(C=O)−O−C−CH=CHを表し、dは1以上5以下の整数を表し、eは0又は1を表し、fは0又は1を表す。cは1又は2を表し、sは0又は1を表し、tは0以上3以下の整数を表す。
【0050】
ここで、式(7)中のArとしては、下記式(8)又は(9)で表されるものが望ましい。
【0051】
【化3】



【0052】
上記式(8)及び(9)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、tはそれぞれ0以上3以下の整数を表す。
【0053】
また、前記式(7)中、Z’は2価の有機連結基を示すが、下記式(10)乃至(17)のうちのいずれかで表されるものが望ましい。また、前記式(7)中、sは0又は1を表す。
【0054】
【化4】



【0055】
上記式(10)乃至(17)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ独立に1以上10以下の整数を表し、t”はそれぞれ0以上3以下の整数を表す。
【0056】
前記式(16)乃至(17)中のWとしては、下記(18)乃至(26)で表される2価の基のうちのいずれかであることが望ましい。但し、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。
【0057】
【化5】



【0058】
また、一般式(A)中、Arは、kが0のときは置換若しくは未置換のアリール基であり、このアリール基としては、Ar乃至Arの説明で例示されたアリール基と同様のものが挙げられる。また、Arは、kが1のときは置換若しくは未置換のアリーレン基であり、このアリーレン基としては、Ar乃至Arの説明で例示されたアリール基から所定の位置の水素原子を1つ除いたアリーレン基が挙げられる。
【0059】
以下に、一般式(A)で示される化合物の具体例を示す。なお、一般式(A)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。
【0060】
【化6】



【0061】
【化7】



【0062】
【化8】



【0063】
【化9】



【0064】
【化10】



【0065】
【化11】



【0066】
【化12】



【0067】
【化13】



【0068】
【化14】



【0069】
【化15】



【0070】
【化16】



【0071】
一般式(A)で表される化合物は、以下のようにして合成される。
即ち、一般式(A)で表される化合物は、前駆体であるアルコールを、対応するメタクリル酸、或いはメタクリル酸ハロゲン化物と縮合させるか、前駆体であるアルコールがベンジルアルコール構造の場合には、ヒドロキシエチルメタクリレートのような水酸基を有するメタクリル酸誘導体との脱水エーテル化などにより合成すればよい。
【0072】
本実施形態で用いる化合物A−4及び化合物A−27の合成経路を一例として以下に示す。
【0073】
【化17】



【0074】
【化18】



【0075】
特定の電荷輸送材料(a)〔同一分子内に電荷輸送性骨格及び連鎖重合性官能基を有する化合物〕の総含有量は、保護層(最表面層)を形成する際に用いられる組成物の全固形分質量に対して、30質量%以上100質量%以下が望ましく、より望ましくは40質量%以上100質量%以下、更に望ましくは50質量%以上100質量%以下である。
この範囲とすることで、特定の電荷輸送材料(a)が硬化して、電子写真感光体の表面上に硬化膜(最表面層)を形成したとき、硬化膜の電気特性に優れ、硬化膜を厚膜化し得る。
【0076】
既述のとおり、特定の電荷輸送材料(a)は、連鎖重合性官能基であるアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイル基の誘導体、メタクリロイル基の誘導体、又はスチリル基等を、同一分子内に2つ以上もつものが高い強度を得るために好ましい。さらに、同一分子内にトリフェニルアミン骨格と、3つのメタクリロイル基、より好ましくは4つ以上のメタクリロイル基を有する化合物を用いることがより好ましい。
特定の電荷輸送材料(a)が、同一分子内にトリフェニルアミン骨格と、4つ以上のメタクリロイル基を有する化合物である場合は、当該化合物の総含有量は、強度の観点から、保護層(最表面層)を形成する際に用いられる組成物の全固形分質量に対して、5質量%以上100質量%以下が望ましく、より望ましくは10質量%以上100質量%以下、更に望ましくは15質量%以上100質量%以下である。上記範囲とすることで、より一層磨耗し難い表面の保護層とし得る。
【0077】
(その他の電荷輸送材料)
また、保護層(最表面層)を構成する硬化膜は、前述した特定の電荷輸送材料(a)の他に、反応性基を有さない公知の電荷輸送材料、分子内に1個以上3以下の反応性基を有する電荷輸送材料を、必要に応じて用いた硬化膜であってもよい。ここで、反応性基とは、アクリロイル基、または、メタクリロイル基を意味する。
反応性基を有さない公知の電荷輸送材料は、電荷輸送を担わない反応性基を有さないため、例えば、この公知の電荷輸送材料を併用すると、実質的に電荷輸送成分の濃度を高め、硬化膜(最表面層)の電気特性を更に改善しうる。また、反応性基を有さない公知の電荷輸送材料は、硬化膜(最表面層)の強度の調整に寄与しうる。更に、特定の電荷輸送材料(a)は、電荷輸送骨格を有することから、反応性基を持たない公知の電荷輸送材料との相溶性に優れるため、反応性基を持たない従来の電荷輸送材料のドーピングが行われ、より一層、電気特性を向上し得る。
一方、分子内に1個以上3以下の反応性基を有する電荷輸送材料を併用する場合には、電荷輸送骨格の存在量を低下させることなく、4つ以上のメタクリロイル基(反応性基)を有する特定の電荷輸送材料(a)に対して架橋密度を減じさせられることから、電気特性を維持しつつ、硬化膜(最表面層)の強度の調整が行われる。
以下、特定の電荷輸送材料(a)と併用し得る電荷輸送材料について説明する。
【0078】
反応性基を有さない公知の電荷輸送材料としては、例えば、後述の電荷輸送層3を構成する電荷輸送材料が用いられる。中でも、電荷移動度、相溶性など点から、トリフェニルアミン骨格を有するものが望ましい。
【0079】
また、分子内に1個以上3以下の反応性基を有する電荷輸送材料としては、公知の電荷輸送材料に1個以上3以下の反応性基を導入したものが挙げられるが、中でも、モビリティー、相溶性などの点から、同一分子内にトリフェニルアミン骨格と1個以上3個以下のアクリル基又はメタクリロイル基とを有する化合物が望ましい。特に、一般式(A)において、Dが−(CH−(O−CH−CH−O−CO−C(R)=CHを示し、fは0乃至5の整数、gは0又は1を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Dの総数が1以上3以下の化合物が望ましく、中でも、Dにおいて、fが1乃至5の整数であり、Rがメチル基である化合物が望ましい。
以下、分子内に1個以上3以下の反応性基を有する電荷輸送材料の具体例を示す。
【0080】
分子内に1個の反応性基を有する電荷輸送材料の具体例としては、化合物I−1乃至I−13が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0081】
【化19】



【0082】
【化20】



【0083】
【化21】



【0084】
分子内に2個の反応性基を有する電荷輸送材料の具体例としては、化合物II−1乃至II−22が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0085】
【化22】



【0086】
【化23】



【0087】
【化24】



【0088】
【化25】

【0089】
【化26】

【0090】
【化27】

【0091】
【化28】

【0092】
分子内に3個の反応性基を有する電荷輸送材料の具体例としては、化合物III−1乃至II−13が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0093】
【化29】



【0094】
【化30】



【0095】
【化31】

【0096】
【化32】

【0097】
以上説明した、その他の電荷輸送材料は、特定の電荷輸送材料(a)に対して0質量%以上70質量%以下で用いられることが望ましく、より望ましくは0質量%以上65質量%以下であり、更に望ましくは0質量%以上60質量%以下である。
【0098】
本実施態様においては、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物中、特定の電荷輸送材料(a)と反応する化合物(e)が併用されている場合、その化合物(e)の全てが電荷輸送性を有する化合物であることが望ましい態様である。
具体的には、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物中に、特定の電荷輸送材料(a)と反応する化合物(e)が含まれている場合、この化合物(e)の全てが、前述したような、反応性基を有する電荷輸送材料からなることが望ましく、特に、分子内に1個以上3以下の反応性基を有する電荷輸送材料からなることが望ましい。
この態様とすると、電気特性を低下させることなく、保護層(最表面層)の機械的強度を調整し、保護層の表面を磨耗し難い表面とし得る。
【0099】
(触媒)
電荷輸送性骨格を有する硬化物は、特定の電荷輸送材料(a)等の電荷輸送性骨格を有する化合物または電荷輸送性骨格を有する化合物を含有する組成物を、光、電子線、又は熱により重合、硬化することにより得る。この重合、硬化反応には、硬化触媒(重合開始剤)を使用しなくてもよいが、以下に例示するような硬化触媒を用いることで反応が効率的に進行する。
【0100】
光硬化触媒としては、分子内開列型、水素引抜型の硬化触媒などが挙げられる。
分子内開列型の硬化触媒としては、ベンジルケタール系、アルキルフェノン系、アミノアルキルフェノン系、ホスフィンオキサイド系、チタノセン系、及びオキシム系の硬化触媒が挙げられる。
【0101】
具体的には、ベンジルケタール系の硬化触媒としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンが挙げられる。
アルキルフェノン系の光硬化触媒としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、アセトフェノン、2−フェニル−2−(p−トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノンが挙げられる。
【0102】
アミノアルキルフェノン系の硬化触媒としては、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。
【0103】
ホスフィンオキサイド系の硬化触媒としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
チタノセン系としては、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。
【0104】
オキシム系の硬化触媒としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(0−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)などが挙げられる。
【0105】
水素引抜型の硬化触媒としては、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンジル系、ミヒラーケトン系などが挙げられる。
水素引抜型の硬化触媒として具体的には、ベンゾフェノン系としては、2−ベンゾイル安息香酸、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル 4’−メチルジフェニル スルフィド、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
チオキサントン系としては、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
ベンジル系としては、ベンジル、(±)−カンファーキノン、p−アニシルなどが挙げられる。
これらの光硬化触媒は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
また、熱硬化に用いられる硬化触媒としては、公知の熱重合開始剤を用いることができ、具体的には、下記に示すような市販の硬化触媒(熱重合開始剤)を用いることが望ましい。
即ち、熱重合開始剤の市販品としては、例えば、V−30、V−40、V−59、V601、V65、V−70、VF−096、Vam−110、Vam−111(和光純薬製)、OTAZO−15、OTAZO−30、AIBN、AMBN、ADVN、ACVA(大塚化学)等のアゾ系開始剤が挙げられる。
また、パーテトラA、パーヘキサHC、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22、パーヘキサMC、パーブチルH,パークミルH、パークミルP、パーメンタH、パーオクタH、パーブチルC、パーブチルD、パーヘキシルD、パーロイル IB、パーロイル 355、パーロイル L、パーロイル SA、ナイパー BW、ナイパー BMT−K40/M、パーロイル IPP、パーロイル NPP、パーロイル TCP、パーロイル OPP、パーロイル SBP、パークミル ND、パーオクタ ND、パーヘキシル ND、パーブチル ND、パーブチル NHP、パーヘキシル PV、パーブチル PV、パーヘキサ 250、パーオクタ O、パーヘキシル O、パーブチル O、パーブチル L、パーブチル 355、パーヘキシル I、パーブチル I、パーブチル E、パーヘキサ 25Z、パーブチル A、パーへヘキシル Z、パーブチル ZT、パーブチル Z(以上、日油化学社製)、
【0107】
カヤケタール AM−C55、トリゴノックス 36−C75、ラウロックス、パーカドックス L−W75、パーカドックス CH−50L、トリゴノックス TMBH、カヤクメン H、カヤブチル H−70、ペルカドックス BC−FF、カヤヘキサ AD、パーカドックス 14、カヤブチル C、カヤブチル D、カヤヘキサ YD−E85、パーカドックス 12−XL25、パーカドックス 12−EB20、トリゴノックス 22−N70、トリゴノックス 22−70E、トリゴノックス D−T50、トリゴノックス 423−C70、カヤエステル CND−C70、カヤエステル CND−W50、トリゴノックス 23−C70、トリゴノックス 23−W50N、トリゴノックス 257−C70、カヤエステル P−70、カヤエステル TMPO−70、トリゴノックス 121、カヤエステル O、カヤエステル HTP−65W、カヤエステル AN、トリゴノックス 42、トリゴノックス F−C50、カヤブチル B、カヤカルボン EH−C70、カヤカルボン EH−W60、カヤカルボン I−20、カヤカルボン BIC−75、トリゴノックス 117、カヤレン 6−70(以上、化薬アクゾ社製)、
【0108】
ルペロックス610、ルペロックス188、ルペロックス844、ルペロックス259、ルペロックス10、ルペロックス701、ルペロックス11、ルペロックス26、ルペロックス80、ルペロックス7、ルペロックス270、ルペロックスP、ルペロックス546、ルペロックス554、ルペロックス575、ルペロックスTANPO、ルペロックス555、ルペロックス570、ルペロックスTAP、ルペロックスTBIC、ルペロックスTBEC、ルペロックスJW、ルペロックスTAIC、ルペロックスTAEC、ルペロックスDC、ルペロックス101、ルペロックスF、ルペロックスDI、ルペロックス130、ルペロックス220、ルペロックス230、ルペロックス233、ルペロックス531(以上、アルケマ吉富社製)などが挙げられる。
【0109】
これら硬化触媒は、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物中の固形分全量に対して、望ましくは0.2質量%以上10質量%以下、より望ましく0.5質量%以上8質量%以下、更に望ましくは0.7質量%以上5質量%範囲で添加される。
【0110】
本実施形態に係る特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物は、電荷輸送性を有さない反応性化合物(b)を含んでいてもよい。特定の電荷輸送材料(a)を用いることで、電気特性と機械的強度が十分に確保された保護層(最表面層)が得られることから、この電荷輸送性を有さない反応性化合物(b)を併用することで、保護層(最表面層)の機械的強度を調整してもよい。
ここで、「電荷輸送性を有さない」とは、Time of Flight法によりキャリア輸送が観測されないことを意味する。
かかる反応性化合物としては、1官能若しくは多官能の、重合性モノマー、オリゴマー、及びポリマーが挙げられ、例えば、アクリレート若しくはメタクリレートのモノマー、オリゴマー、及びポリマーが挙げられる。
【0111】
具体的には、1官能のモノマーとしては、例えば、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルo−フェニルフェノールアクリレート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレート、などが挙げられる。
【0112】
2官能のモノマー、オリゴマー、及びポリマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0113】
3官能モノマー、オリゴマー、及びポリマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、脂肪族トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0114】
4官能のモノマー、オリゴマー、ポリマーとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0115】
また、5官能以上のモノマー、オリゴマー、ポリマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の他、ポリエステル骨格、ウレタン骨格、フォスファゼン骨格を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0116】
上述したモノマー、オリゴマー、及びポリマーは、単独又は2種以上の混合物として使用し得る。
また、上述したモノマー、オリゴマー、及びポリマーは、特定の電荷輸送材料を含有する組成物中の電荷輸送性を持つ化合物(前述の特定の電荷輸送材料とその他の電荷輸送材料)の全量に対し、100質量%以下、望ましくは50質量%以下、より望ましくは30質量%以下で用いられる。
【0117】
また、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物には、粒子分散性、粘度コントロールの目的で、また、硬化膜(最表面層)の放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などの目的で、特定の電荷輸送材料(a)と反応するポリマー(c)、或いは、反応しないポリマー(d)を混合してもよい。
【0118】
特定の電荷輸送材料(a)と反応するポリマー(c)としては、反応性基としてラジカル重合性の不飽和結合を有するポリマーであればよく、上述のアクリレート若しくはメタクリレートのポリマーに加え、例えば、特開平5−216249号公報の段落〔0026〕乃至〔0059〕、特開平5−323630号公報の段落〔0027〕乃至〔0029〕、特開平11−52603号公報の段落〔0089〕乃至〔0100〕、特開2000−264961号公報の段落〔0107〕乃至〔0128〕などに開示されたものが挙げられる。
また、特定の電荷輸送材料(a)と反応しないポリマー(d)としては、ラジカル重合性の不飽和結合を有さないポリマーであればよく、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂など公知のものが挙げられる。
これらポリマーは、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物中の電荷輸送性を持つ化合物(前述の特定の電荷輸送材料(a)とその他の電荷輸送材料)の全量に対し、100質量%以下、望ましくは50質量%以下、より望ましくは30質量%以下で用いられる。
【0119】
また、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物には、更に、膜の成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、カップリング剤、ハードコート剤、含フッ素化合物を添加してもよい。これらの添加剤として具体的には、各種シランカップリング剤、及び市販のシリコーン系ハードコート剤が用いられる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等が用いられる。
また、市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−8239(以上、信越シリコーン社製)、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等が用いられる。
更に、撥水性等の付与のために、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン等の含フッ素化合物を加えてもよい。更に、特開2001−166510号公報などに開示されている反応性の含フッ素化合物などを混合してもよい。
シランカップリング剤は任意の量で使用されるが、含フッ素化合物の量は、フッ素を含まない化合物に対して質量で0.25倍以下とすることが望ましい。この使用量を超えると、架橋膜の成膜性に問題が生じる場合がある。
【0120】
特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物には、さらに、特開2001−166510号公報などに開示されている反応性のフッ素化合物などを混合してもよい。
【0121】
また、保護層(最表面層)には、該保護層の放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などや、粒子分散性、粘度コントロールの目的で、アルコールに溶解する樹脂を加えてもよい。
【0122】
保護層(最表面層)には、該保護層の帯電装置で発生するオゾン等の酸化性ガスによる劣化を抑制する目的で、酸化抑制剤を添加することが望ましい。感光体表面の機械的強度を高め、感光体が長寿命になると、感光体が酸化性ガスに長い時間接触することになるため、従来より強い酸化耐性が要求される。
酸化抑制剤としては、ヒンダードフェノール系又はヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化抑制剤、フォスファイト系酸化抑制剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化抑制剤、チオウレア系酸化抑制剤、ベンズイミダゾール系酸化抑制剤、などの公知の酸化抑制剤を用いてもよい。酸化抑制剤の添加量としては、保護層形成のための塗布液(組成物)中の全固形分に対して、20質量%以下が望ましく、10質量%以下がより望ましい。
【0123】
ヒンダードフェノール系酸化抑制剤としては、「イルガノックス1076」、「イルガノックス1010」、「イルガノックス1098」、「イルガノックス245」、「イルガノックス1330」、「イルガノックス3114」、「イルガノックス1076」以上、チバ・ジャパン社製、「3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル」等が挙げられる。
ヒンダードアミン系酸化抑制剤としては、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」以上三共ライフテック社製、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」以上、チバ・ジャパン社製、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」以上アデカ社製が挙げられ、チオエーテル系として「スミライザ−TPS」、「スミライザーTP−D」以上住友化学社製が挙げられ、ホスファイト系として「マーク2112」、「マークPEP−8」、「マークPEP−24G」、「マークPEP−36」、「マーク329K」、「マークHP−10」以上アデカ社製等が挙げられる。
【0124】
更に、保護層(最表面層)には、該保護層の残留電位を下げる目的、又は強度を向上させる目的で、各種粒子を添加してもよい。
粒子の一例として、ケイ素含有粒子が挙げられる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、体積平均粒子径1nm以上100nm以下、望ましくは10nm以上30nm以下のシリカを、酸性若しくはアルカリ性の水分散液、アルコール、ケトン、又はエステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用してもよい。
保護層中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、製膜性、電気特性、強度の面から、保護層の全固形分全量を基準として、0.1質量%以上50質量%以下、望ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲で用いられる。
【0125】
ケイ素含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものが使用される。これらのシリコーン粒子は球状で、その体積平均粒子径は望ましくは1nm以上500nm以下、より望ましくは10nm以上100nm以下である。シリコーン粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、更に十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状が改善される。すなわち、強固な架橋構造中にバラツキが生じることなく取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期にわたって良好な耐磨耗性、耐汚染物付着性が維持される。
保護層中のシリコーン粒子の含有量は、保護層の全固形分全量を基準として、望ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より望ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0126】
また、その他の粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系粒子や“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89-90”に示される如く、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる粒子、ZnO−Al、SnO−Sb、In−SnO、ZnO−TIO、ZnO−TIO、MgO−Al、FeO−TIO、TIO、SnO、In、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。
【0127】
また、同様な目的で、保護層(最表面層)には、シリコーンオイル等のオイルを添加してもよい。シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類;1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類;ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類;(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類;メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類;ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等が挙げられる。
【0128】
また、保護層(最表面層)には、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等を添加してもよい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、又はこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の体積平均粒子径は保護層の透明性の点で0.3μm以下、特に0.1μm以下が望ましい。
【0129】
保護層を形成するために用いる、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物は、保護層形成用塗布液として調製されることが望ましい。
この保護層形成用塗布液は、無溶媒であってもよいし、必要に応じて、トルエン、キシレンなどの芳香族、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのセロソルブ系、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール系等の溶媒などの単独又は混合溶媒を用いて調製される。
【0130】
また、前述の成分を反応させて塗布液を得るときには、各成分を単純に混合、溶解させるだけでもよいが、望ましくは室温以上100℃以下、より望ましくは30℃以上80℃以下で、望ましくは10分以上100時間以下、より望ましくは1時間以上50時間以下の条件で加温してもよい。また、この際に超音波を照射することも望ましい。
これにより、塗布液中で恐らく部分的な反応が進行し、塗布液の均一性が高まり、塗膜欠陥のない均一な膜が得られやすくなる。
【0131】
特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物からなる保護層形成用塗布液は、被塗布面を形成する電荷輸送層3の上に、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法により塗布される。
その後、得られた塗膜に対して、光、電子線、又は熱などを付与して、該塗膜を重合、硬化させる。
ここで、光により塗膜を重合、硬化させる際には、水銀灯、メタルハライドなどの公知の光源が用いられる。
また、熱により塗膜を重合、硬化させる際、加熱条件は50℃以上であることが望ましい。この温度以下であると硬化膜の寿命が短く望ましくない。特に、加熱温度としては、100℃以上170℃以下が、反応率、強度と製造した感光体の電気特性の点から望ましい。
更に、電子線により塗膜を重合、硬化させる際には、電子線照射装置が用いられる。また、反応を加速させるために、あわせて加熱を行ってもよい。
【0132】
電子線照射をする場合、加速器としてはスキャニング型、エレクトロカーテン型、ブロードビーム型及びパルス型及びラミナー型等いずれの形式も使用し得る。電子線を照射する場合に、加速電圧は250kV以下が好ましく、最適には150kV以下である。また、線量は、1Mrad以上100Mrad以下が好ましく、3Mrad以上50Mrad以下がより好ましい。
加速電圧が250kVを超えると電子写真感光体特性に対する電子線照射のダメージが増加する傾向にある。また、線量が1Mradよりも少ない場合には硬化が不十分となり易く、線量が100Mradを超えた場合には電子写真感光体特性の劣化が起こり易いので注意が必要である。
【0133】
上記のような、重合、硬化反応の際には、光、電子線、又は熱によって発生したラジカルが失活することなく連鎖反応を行えるよう、真空、或いは、不活性ガス雰囲気下など酸素濃度が望ましくは10%以下、より望ましくは5%以下、更に望ましくは2%以下、最も望ましくは500ppm以下の低酸素濃度で行われる。
【0134】
本実施態様では、前述のように、塗膜の硬化方法としては、熱、光、放射線などを付与してラジカル重合を生起させる方法が用いられるが、反応が早く進行しすぎると架橋により塗膜の構造緩和ができ難くなり、膜のムラやシワを発生しやすくなるため、ラジカルの発生が比較的ゆっくりと起こる熱による硬化を用いることが望ましい。特に、特定の電荷輸送材料(a)は、反応性がアクリロイル基よりも低いメタクリロイル基を有しており、このメタクリロイル基と熱による硬化とを組み合わせることで、塗膜の構造緩和の促進が図られ、表面性状に優れ、均一性の高い保護層(最表面層)が得られる。
一方、光や電子線にて塗膜を硬化し、硬化膜とした場合には、反応速度が速いため、分子運動が短時間で凍結されやすく、硬化膜中に未反応の官能基が残留し得る。また、構造緩和が起こる前に架橋反応が生じるため、残留ひずみの多い膜となり、表面の塗膜均一性、及び、内部の組成均一性に不十分な膜となりやすい。
【0135】
硬化膜中に残留する未反応の官能基を有する残留モノマー量は、硬化膜をはがし、テトラヒドロフラン中に50℃、3時間程度浸漬し、溶け出した残留モノマーを、GPCや、GPLC等で定量することで、測定される。特に、残留モノマー量が、硬化膜全質量中の0.5質量%以上となると、保護層(最表面層)表面とブレードとの摩擦が大きくなり、摩擦帯電を生じる傾向がある。当該摩擦帯電や、摩擦帯電に起因するゴーストは、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物にフッ素元素を有する粒子を加えることで減少し得る。
【0136】
保護層(最表面層)の膜厚は5μm以上40μm以下が好ましく、7μm以上30μm以下とするのがさらに好ましい。
【0137】
以上、図1に示される電子写真感光体7Aを参照し、機能分離型の感光層の例を説明したが、図3に示される電子写真感光体7Cの単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層)の場合、以下の態様であることが望ましい。
即ち、単層型感光層中の電荷発生材料の含有量は10質量%以上85質量%以下程度、望ましくは20質量%以上50質量%以下である。また、電荷輸送材料の含有量は5質量%以上50質量%以下とすることが望ましい。単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)の形成方法は、電荷発生層や電荷輸送層の形成方法と同様である。単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)の膜厚は5μm以上50μm以下程度が望ましく、10μm以上40μm以下とするのが更に望ましい。
【0138】
単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)の中においても、特定の電荷輸送材料(a)、特に、同一分子内にトリフェニルアミン骨格と、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイル基の誘導体、メタクリロイル基の誘導体、及びスチリル基からなる群より選択される少なくとも1つの連鎖重合性官能基とを有する化合物である場合、さらに望ましくは、同一分子内にトリフェニルアミン骨格と、4つ以上のメタクリロイル基とを有する化合物の含有量は、単層型感光層を形成するための組成物の全固形分質量に対して、強度の観点から、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましい。
【0139】
また、上述の実施形態では、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物の硬化物を含有して構成される最表面層が保護層である形態を説明したが、保護層がない層構成の場合には、その層構成において最表面に位置する電荷輸送層が該最表面層となる。
最表面層が電荷輸送層である場合、この層の厚みは、7μm以上60μm以下が望ましく、8μm以上55μm以下がより望ましい。
符号は省略して説明する。
【0140】
<導電性基体>
導電性基体としては、従来から使用されているものであれば、如何なるものを使用してもよい。例えば、薄膜(例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、及びアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)等の膜)を設けたプラスチックフィルム等、導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙、導電性付与剤を塗布又は含浸させたプラスチックフィルム等が挙げられる。基体の形状は円筒状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
【0141】
導電性基体として金属パイプを用いる場合、表面は素管のままであってもよいし、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
【0142】
<下引層>
下引層は、導電性基体表面における光反射の防止、導電性基体から感光層への不要なキャリアの流入の防止などの目的で、必要に応じて設けられる。
【0143】
下引層は、例えば、結着樹脂と、必要に応じてその他添加物とを含んで構成される。
下引層に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが望ましく用いられる。
【0144】
下引層には、シリコン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物等の金属化合物等を含有してもよい。
【0145】
金属化合物と結着樹脂との比率は、特に制限されず、所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定される。
【0146】
下引層には、表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子を添加してもよい。樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂粒子等が挙げられる。なお、表面粗さ調整のために下引層を形成後、その表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等が用いられる。
【0147】
ここで、下引層の構成として、結着樹脂と導電性粒子とを少なくとも含有する構成が挙げられる。なお、導電性粒子は、例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満の導電性を有するものがよい。
【0148】
導電性粒子としては、例えば、金属粒子(アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの粒子)、導電性金属酸化物粒子(酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの粒子)、導電性物質粒子(カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末の粒子)等が挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物粒子が好適である。導電性粒子は、2種以上混合して用いてもよい。
また、導電性粒子は、疎水化処理剤(例えばカップリング剤)等により表面処理を施して、抵抗調整して用いてもよい。
導電性粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが望ましく、より望ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0149】
下引層の形成の際には、上記成分を溶媒に加えた下引層形成用塗布液が使用される。
また、下引層形成用塗布液中に粒子を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。ここで、高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0150】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0151】
下引層の膜厚は、15μm以上が望ましく、20μm以上50μm以下がより望ましい。
【0152】
ここで、図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。中間層に用いられる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などが挙げられる。これらの化合物は、単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いてもよい。中でも、ジルコニウムもしくはシリコンを含有する有機金属化合物は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど点から好適である。
【0153】
中間層の形成の際には、上記成分を溶媒に加えた中間層形成用塗布液が使用される。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0154】
なお、中間層は上層の塗布性改善の他に、電気的なブロッキング層の役割も果たすが、膜厚が大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こすことがある。したがって、中間層を形成する場合には、0.1μm以上3μm以下の膜厚範囲に設定することがよい。また、この場合の中間層を下引層として使用してもよい。
【0155】
<電荷発生層>
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂中とを含んで構成される。かかる電荷発生材料としては、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が挙げられ、特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶が挙げられる。その他、電荷発生材料としては、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等が挙げられる。また、これらの電荷発生材料は、単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0156】
電荷発生層を構成する結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、例えば10:1乃至1:10の範囲が望ましい。
【0157】
電荷発生層の形成の際には、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液が使用される。
【0158】
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0159】
電荷発生層形成用塗布液を下引層上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0160】
電荷発生層の膜厚は、望ましくは0.01μm以上5μm以下、より望ましくは0.05μm以上2.0μm以下の範囲に設定される。
【0161】
<電荷輸送層>
電荷輸送層は、電荷輸送材料と、必要に応じて結着樹脂と、を含んで構成される。そして、電荷輸送層が最表面層に該当する場合、上記如く、電荷輸送層は、上記比表面積を持つフッ素樹脂粒子を含む。
【0162】
電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、及び上記した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0163】
電荷輸送層を構成する結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、及びポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等があげられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
なお、電荷輸送材料と上記結着樹脂との配合比は、例えば10:1乃至1:5が望ましい。
【0164】
電荷輸送層は、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液を用いて形成される。
【0165】
電荷輸送層形成用塗布液中に粒子(例えばフッ素樹脂粒子)を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0166】
電荷輸送層層形成用塗布液を電荷発生層上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いられる。
電荷輸送層の膜厚は、望ましくは5μm以上50μm以下、より望ましくは10μm以上40μm以下の範囲に設定される。
【0167】
〔画像形成装置/プロセスカートリッジ〕
本実施形態に係る画像形成装置は、少なくとも電荷輸送性骨格を有する硬化物を含有して構成される最表面層を有する電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像手段と、結晶性樹脂を含有し、形状係数SF1が100以上150以下、かつ体積平均粒子径が3μm以上6μm以下であるトナー粒子及び外添剤としてフッ素樹脂粒子を有するトナーを含有する現像剤を収容し、前記現像剤により前記電子写真感光体に形成された前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像手段と、前記トナー画像を被転写体に転写する転写手段と、ウレタンゴムを含有し、前記電子写真感光体表面への押し付け圧0.20mN/mm以上で配置されるブレードを有し、前記電子写真感光体の表面を清掃する清掃手段と、を備える。
【0168】
また、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、少なくとも電荷輸送性骨格を有する硬化物を含有して構成される最表面層を有する電子写真感光体と、結晶性樹脂を含有し、形状係数SF1が100以上150以下、かつ体積平均粒子径が3μm以上6μm以下であるトナー粒子及び外添剤としてフッ素樹脂粒子を有するトナーを含有する現像剤を収容し、前記現像剤により前記電子写真感光体に形成された前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像手段と、ウレタンゴムを含有し、前記電子写真感光体表面への押し付け圧0.20mN/mm以上で配置されるブレードを有し、前記電子写真感光体の表面を清掃する清掃手段と、を少なくとも備え、画像形成装置に着脱自在である。
【0169】
図4は、実施形態に係る画像形成装置100を示す概略構成図である。
図4に示される画像形成装置100は、既述の電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置(静電潜像形成手段)9と、転写装置(転写手段)40と、中間転写体50と、を備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光可能な位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。
【0170】
図4におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置(帯電手段)8、現像装置(現像手段)11、及びクリーニング装置(清掃手段)13を一体に支持している。
現像装置11は、結晶性樹脂を含有し、形状係数SF1が100以上150以下、かつ体積平均粒子径が3μm以上6μm以下であるトナー粒子及び外添剤としてフッ素樹脂粒子を有するトナーを含有する現像剤(図示せず)を収容する。
クリーニング装置13は、ブレード(クリーニングブレード)131を有しており、ブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように、押し付け圧0.20mN/mm以上で配置されている。なお、ブレードは、導電性或いは絶縁性の繊維状部材と併用してもよい。
【0171】
また、図4では、クリーニング装置13として、潤滑材14を感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)を備え、また、クリーニングをアシストする繊維状部材133(平ブラシ状)を用いた例を示してあるが、これらは必要に応じて使用される。
【0172】
以下、各部材について説明する。なお、符号は省略して説明する。
帯電装置としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ロール、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のロール帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0173】
なお、図示しないが、画像の安定性を高める目的で、電子写真感光体の周囲には、電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための感光体加熱部材を設けてもよい。
【0174】
露光装置としては、例えば、電子写真感光体表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、所望の像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は感光体の分光感度領域にあるものが使用される。半導体レーザーの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下近傍に発振波長を有するレーザーも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビーム出力が可能なタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
【0175】
現像装置としては、例えば、磁性若しくは非磁性の一成分系現像剤又は二成分系現像剤等を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行ってもよい。その現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、上記一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ロール等を用いて電子写真感光体に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ロールを用いるものが望ましい。
【0176】
以下、現像装置に収容されるトナーについて説明する。
現像装置に収容されるトナーは、結晶性樹脂を含有し、形状係数SF1が100以上150以下、かつ体積平均粒子径が3μm以上6μm以下であるトナー粒子及び外添剤としてフッ素樹脂粒子を有する。
【0177】
形状係数(SF1)は、主に、顕微鏡画像又は走査電子顕微鏡画像を画像解析装置によって解析することによって数値化され、例えば、次のようにして求められる。形状係数(SF1)の測定は、まず、スライドグラス上に散布したトナーの光学顕微鏡像を、ビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個以上の粒子について下記式のSF1を計算し、平均値を求めることにより得られる。
【0178】
SF1=(ML/A)×(π/4)×100
ここでMLは粒子の絶対最大長、Aは粒子の投影面積である。
【0179】
トナー粒子の形状係数SF1は、110以上145以下が好ましく、110以上140以下がより好ましい。
【0180】
更に、トナーは、体積平均粒子径D50vが3μm以上6μm以下であるが、より高い現像性及び転写性並びに高画質を得る観点から、3.5μm以上5.8μm以下であることがより望ましい。上記範囲内であることで、付着力が強く、現像性に優れたトナーとし得る。また、画像の解像性が向上される。
上記範囲の形状係数SF1及び体積平均粒子径を満たすトナーを用いることにより、他のトナーと比べ、高い現像、転写性、及び高画質の画像が得られる。
【0181】
ここで、体積平均粒子径D50vは、コールターマルチサイザーII(コールター社製)測定器で測定される。粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒子径を体積D16v、数D16p、累積50%となる粒子径を体積D50v、数D50p、累積84%となる粒子径を体積D84v、数D84pと定義する。これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0182】
次にトナーを構成し得る成分について具体的に説明する。
本実施形態に係るトナーは、結着樹脂として結晶性樹脂を含有するトナー粒子と、外添剤としてフッ素樹脂粒子と、を含む。
必要に応じて、トナー粒子は、離型剤、着色剤等の内添剤を含有していてもよいし、外添剤は、フッ素樹脂粒子以外の外添剤を用いてもよい。
【0183】
−結着樹脂−
結着樹脂としては、結晶性樹脂が用いられるが、無定形高分子樹脂と併用することが望ましい。
結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂を指し、具体的には、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークの半値幅が6℃以内である樹脂を意味する。
結晶性樹脂としては、上述の物性を有する樹脂であれば特に制限はなく、具体的には、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ビニル系樹脂が挙げられる。紙等の記録材への定着性や帯電性、及び好ましい範囲での溶融温度調整の観点から結晶性ポリエステルが好ましい。また更に適度な溶融温度をもつ脂肪族系の結晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0184】
結晶性ポリエステル樹脂は多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とから合成される。結晶性ポリエステル樹脂は、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0185】
多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸、などが挙げられ、さらに、これらの無水物やこれらの低級アルキルエステルも挙げられるがこの限りではない。
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0186】
また、酸成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸成分が含まれていることが好ましい。前記スルホン酸基を持つジカルボン酸は、顔料等の色材の分散を良好にする点で有効である。また、樹脂全体を水に乳化或いは懸濁して、粒子を作成する際に、スルホン酸基があれば、後述するように、界面活性剤を使用しないで、乳化或いは懸濁が可能である。
【0187】
このようにスルホン基を持つジカルボン酸としては、例えば、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらスルホン酸基を有する2価以上のカルボン酸成分は、ポリエステルを構成する全カルボン酸成分に対して0モル%以上20モル%以下含有することが好ましく、0.5モル%以上10モル%以下含有することがより好ましい。スルホン酸基を有する2価以上のカルボン酸成分を上記範囲で含有することで、乳化粒子の経時安定性が保たれ、ポリエステル樹脂の結晶性の低下が抑制され、トナー粒子の平均粒径が調整される。
【0188】
さらに、前述の脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、2重結合を持つジカルボン酸成分を含有することがより好ましい。2重結合を持つジカルボン酸は、2重結合を介して、ラジカル的に架橋結合させ得る点で定着時のホットオフセットを防ぐ為に好適に用いられる。前記ジカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級エステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でもコストの点で、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0189】
多価アルコール成分としては、脂肪族ジオールが好ましく、主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオールがより好ましい。前記脂肪族ジオールが分岐型では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、溶融温度が降下してしまう為、耐トナーブロッキング性、画像保存性、及び低温定着性が悪化してしまう場合がある。また、炭素数が7未満であると、芳香族ジカルボン酸と縮重合させる場合、溶融温度が高くなり、低温定着が困難となることがある一方、20を超えると実用上の材料の入手が困難となり易い。炭素数としては14以下であることがより好ましい。
【0190】
脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、入手容易性を考慮すると1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
【0191】
3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0192】
多価アルコール成分のうち、前記脂肪族ジオール成の含有量が80モル%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。前記脂肪族ジオール成の含有量が80モル%未満では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、溶融温度が降下する為、耐トナーブロッキング性、画像保存性及び、低温定着性が悪化してしまう場合がある。
【0193】
なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調整等の目的で、酢酸、安息香酸等の1価の酸や、シクロヘキサノールベンジルアルコール等の1価のアルコールを使用してもよい。
【0194】
また、結晶性ポリエステルは下式で規定されるエステル濃度が、0.01以上0.12以下の範囲内であることが好ましい。
M=K/A
但し、上記式中、Mはエステル濃度を、Kは結晶性ポリエステル中のエステル基数を、Aは結晶性ポリエステルの高分子鎖を構成する原子数を、それぞれ表す。
【0195】
結晶性ポリエステルのエステル濃度を0.01以上0.12以下に抑えることで、耐トナーブロッキング性、画像の保存性、および、低温での定着性に優れると共に、さらに帯電性を向上し得る。
【0196】
結晶性ポリエステルのエステル濃度が0.01未満では、帯電性は良好であるものの、結晶性ポリエステルの溶融温度が高くなりすぎるために低温定着性が低下してしまう場合がある。エステル濃度の下限としては、0.04以上であることがより好ましい。
【0197】
一方、エステル濃度が0.12を超えると、帯電性が低下してしまうほか、結晶性ポリエステルの溶融温度が低くなりすぎるために、定着画像の安定性や粉体ブロッキング性が低下してしまう場合がある。エステル濃度の上限としては、0.10以下であることがより好ましい。
【0198】
なお、「エステル濃度」とは、結晶性ポリエステル樹脂のポリマーにおけるエステル基の含有割合を示す一つの指標である。上記式(M=K/A)中のKで表される「ポリマー中のエステル基数」は、言い換えれば、ポリマー全体に含まれるエステル結合の数を指す。
【0199】
上記式(M=K/A)中のAで表される「ポリマーの高分子鎖を構成する原子数」は、ポリマーの高分子鎖を構成する原子の合計であり、エステル結合に関与する原子数は全て含むが、その他の構成部位における枝分かれした部分の原子数は含まない。
すなわち、エステル結合に関与するカルボキシル基やアルコール基に由来する炭素原子および酸素原子(1つのエステル結合中酸素原子は2個)や、高分子鎖を構成する、例えば芳香環における6つの炭素は、前記原子数の計算に含まれるが、高分子鎖を構成する、例えば芳香環やアルキル基における水素原子、その置換体の原子ないし原子群は、前記原子数の計算に含まれない。
【0200】
一方、無定形高分子樹脂−
無定形高分子樹脂としては、例えば、従来公知の熱可塑性結着樹脂などが挙げられ、具体的には、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類の単独重合体又は共重合体(スチレン系樹脂);アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類の単独重合体又は共重合体(オレフィン系樹脂);エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等の非ビニル縮合系樹脂、及びこれらの非ビニル縮合系樹脂とビニル系モノマーとのグラフト重合体などが挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの樹脂の中でもビニル系樹脂やポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0201】
ビニル系樹脂の場合、イオン性界面活性剤などを用いて乳化重合やシード重合により樹脂粒子分散液を容易に調製し得る点で有利である。前記ビニル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸、ビニルスルフォン酸、エチレンイミン、ビニルピリジン、ビニルアミンなどのビニル系高分子酸やビニル系高分子塩基の原料となるモノマー挙げられる。
【0202】
樹脂粒子は、前記ビニル系モノマーをモノマー成分として含有していることが好ましい。これらのビニル系モノマーの中でも、ビニル系樹脂の形成反応の容易性等の点でビニル系高分子酸がより好ましく、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸などのカルボキシル基を解離基として有する解離性ビニル系モノマーが、重合度やガラス転移温度の制御の点で特に好ましい。
【0203】
−離型剤−
離型剤としては、ASTMD3418−8に準拠して測定された主体極大ピークが50℃以上140℃以下の範囲内にある物質が好ましい。主体極大ピーク50℃以上であれば定着するときにオフセットを生じにくく、140℃以下であれば定着温度抑えられるため、画像表面に凹凸が生じにくく光沢性を損なわない。
【0204】
主体極大ピークの測定には、例えばパーキンエルマー社製のDSC−7を用いられる。この装置の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行う。
【0205】
離型剤の具体的な例としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、ミツロウのごとき動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物を使用してもよい。
これらの離型剤は、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融点以上に加熱するとともに強い剪断をかけられるホモジナイザーや圧力吐出型分散機により粒子化し、粒子径が1μm以下の離型剤粒子を含む離型剤分散液を作製される。
【0206】
−着色剤−
着色剤としては、種々の顔料が用いられる。
黒顔料としては、カーボンブラック、磁性粉等が使用される。
黄色顔料としては、例えば、ハンザイエロー、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントイエローNCG等が挙げられる。
赤色顔料としては、ベンガラ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、エオキシンレッド、アリザリンレーキ等があげられる。
青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレートなどがあげられる。また、これらを混合し、更には固溶体の状態で使用される。
【0207】
−その他の内添剤−
また、トナー粒子には、必要に応じて帯電制御剤が添加されてもよい。帯電制御剤としては、公知のものを使用してもよいが、例えば、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いられる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用するのが望ましい。
【0208】
−外添剤−
外添剤としてのフッ素樹脂としては、特に制限はなくそれ自体公知のものの中から選択されるが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビフェニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などが挙げられる。
フッ素樹脂は、上記の中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることが好ましい。
また、フッ素樹脂の分子量は、3,000以上250,000以下であることが好ましく、6,000以上200,000以下であることがより好ましい。
フッ素樹脂は、合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0209】
フッ素樹脂粒子の体積平均粒子径としては、0.1μm以上4μm以下が好ましい。フッ素樹脂粒子を粉砕して、粒径をそろえてもよい。
フッ素樹脂粒子の体積平均粒子径、フッ素樹脂粒子を、走査型電子顕微鏡(FE−SEM、日立製:S−5500)を用い、倍率×10万倍にて撮像した画像を画像解析装置(ニレコ製:ルーゼックスAP)によって、画像解析することにより求められる。なお、画像解析に際してサンプリングしたフッ素樹脂粒子数は100個である。平均粒径は、面積から換算した円相当径を用いた。
【0210】
フッ素樹脂粒子の添加量は、トナー全質量に対し、0.05質量%以上2.0質量%以下となる量が好ましく、0.1質量%以上1.5質量%以下がより好ましい。0.05質量%未満であると、電子写真感光体と、クリーニング装置のブレードとの摩擦において、摩擦係数が高くなり、ゴーストを発生しやすい。2.0質量%を超えるとトナーの帯電特性に影響を与え、逆極性トナーを生成しやすくなる。
【0211】
−その他の外添剤−
フッ素樹脂粒子以外の外添剤としては、例えば、帯電特性、粉体特性、転写特性、クリーニング特性を改善する目的で、無機粒子、帯電制御剤、滑剤、研磨剤、クリーニング助剤等の公知の無機粒子および/または樹脂粒子からなる外添剤をトナー粒子に外添できる。
滑剤としては、例えば、エチレンビスステアリル酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩が挙げられる。
【0212】
−トナーの製法−
次にトナーの製造方法について説明する。
トナーは、例えば、トナー粒子を製造した後、得られたトナー粒子に外添剤を外添することで得られる。
トナー粒子は、凝集・合一法、懸濁重合法、溶解懸濁造粒法、溶解懸濁法、溶解乳化凝集合一法などの、酸性やアルカリ性の水系媒体中でトナー粒子を生成する湿式製法で製造されることが好適であるが、特に凝集合一法が好ましい。
【0213】
具体的には、例えば、トナー粒子に、結晶性樹脂、無定形高分子樹脂、着色剤及び離型剤を含有する場合、例えば、結晶性樹脂を分散した樹脂分散液と、着色剤を分散した着色剤分散液と、離型剤を分散した離型剤散液とを混合し結晶性樹脂と着色剤粒子と離型剤とを含むコア凝集粒子を形成する第1の凝集工程と、コア凝集粒子の表面に無定形高分子樹脂を含むシェル層を形成しコア/シェル凝集粒子を得る第2の凝集工程と、コア/シェル凝集粒子を結晶性樹脂または前記無定形高分子樹脂のガラス転移温度以上に加熱し融合・合一する融合・合一工程を含む方法によりトナー粒子が製造される。
【0214】
次に、得られたトナー粒子表面に、フッ素樹脂粒子を付着することにより、トナーが製造される。
トナー粒子への外添剤の外添方法としては、トナー粒子に外添剤を添加し、例えば、V型ブレンダーやヘンシェルミキサーやレディゲミキサー等の公知の混合機によって混合する方法が挙げられる。また、トナー粒子とフッ素樹脂粒子とを粉体状態で混合することで、フッ素樹脂粒子がトナー粒子表面に強く付着される。
【0215】
特に、せん断力を利用してフッ素樹脂粒子をトナー粒子表面に付着させる方法は、トナー粒子へのストレスが少なく、フッ素樹脂粒子が強く付着されるため好ましい。当該方法に使用される装置として、ノビルター(例えば、ノビルタNOB130:ホソカワミクロン社製など)が挙げられる。
ノビルターは、粒子を入れる自由空間(クリアランス)を狭くすることで、粒子に高い圧力をかけながら攪拌する攪拌装置である。
【0216】
また、トナーがキャリアと混合して使用される場合、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉、又はそれらの表面に樹脂被覆を施したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、任意に設定される。
【0217】
次にクリーニング装置(清掃手段)について説明する。
クリーニング装置は、ブレード方式が用いられている。ブレードは、電子写真感光体表面への押し付け圧0.20mN/mm(2.0gf/mm)以上で配置され、電子写真感光体の表面を清掃する。
ここで「電子写真感光体表面への押し付け圧」は、ブレードを電子写真感光体表面に押し付ける圧力であり、下記式で計算される値(N)である。
【0218】
N=dEt/4L
上記式中、d、E、t、及びLは次のとおりである。
d・・・ブレード干渉量(電子写真感光体表面への食い込み量)〔mm〕
E・・・ブレードヤング率〔(Pa)〕
t・・・ブレード厚み〔mm〕
L・・・ブレード自由長〔mm〕
【0219】
電子写真感光体表面への押し付け圧の計算式(N=dEt/4L)に基づく計算方法を、図5乃至図7を用いて説明する。図5は、ブレードの電子写真感光体表面への押し付け圧を説明するための模式図である。図6は、ブレードの設定角度を説明するための模式図である。図7は、ブレードの自由長を説明するための模式図である。
【0220】
ブレード72の食い込み量(d)とは、図5に示すように、電子写真感光体10がなかったと仮定した場合において、ブレード72の先端Tが電子写真感光体10外周の仮想線Iに対し内側に入り込んだときの、前記先端Tと前記仮想線Iとの距離(前記先端Tと電子写真感光体10回転軸中心Oとを結ぶ方向についての距離)である。
なお、図5では、電子写真感光体10がなかったと仮定した場合のブレード72を実線で表し、ブレード72及び電子写真感光体10の装置内での実際の配置状態を二点鎖線で表している。また、先端Tにおける荷重の方向は、電子写真感光体回転中心Oに向かう方向(図5中矢印で表す)である。
【0221】
ブレード72の設定角度θは、例えば電子写真感光体10の直径が30mmの場合は14.5度以上22.5度以下であることがよく、望ましくは16.5度以上20.5度以下、より望ましくは17.5度以上19.5度以下である。
この設定角度θとは、図6に示すように、電子写真感光体10の軸方向から見たとき、当該電子写真感光体10表面に対してブレード72(その先端)を圧接し、その先端が屈曲した状態において、当該ブレード72の非屈曲部の厚み方向の対向面に沿った仮想線Pと、当該仮想線Pが電子写真感光体10表面と接する点の接線Qとが交差する角度(鋭角)を意味する。
【0222】
ブレード72の自由長Lは、例えば5mm以上16mm以下であることがよく、望ましくは6mm以上15mm以下、より望ましくは7mm以上14mm以下である。
この自由長とは、図7に示すように、ブレード72の自由端の先端からブレード72の支持部(筐体71(又は別途設けた支持部材)による支持領域と非支持領域との境界)までの距離Lを示す。
【0223】
ブレード72のヤング率Eは、例えば5MPa以上12MPa以下であるこがよく、望ましくは6MPa以上10MPa以下、より望ましくは6MPa以上9MPa以下である。
このヤング率Eは、単位断面積にかかる力ΔSと単位長さでの伸びΔaを測定することにより下記式より算出する。
・式:E=ΔS/Δa
ここで、ΔSは、負荷Fとブレード72の厚みの膜厚t、ブレード72の幅wより、また、Δaは、サンプル基準長さL、負荷印加時のサンプル伸びΔLより、それぞれ下記のようにして算出される。
・式:ΔS=F/(w×t)
・式:Δa=ΔL/L
ヤング率の測定には、市販の引張り試験機を使用すればよい。例えば、アイコーエンジニアリング社製引張り試験機MODEL−1605Nが使用される。
【0224】
ブレード72の厚みtは、例えば1mm以上3mm以下であることがよく、望ましくは1.5mm以上2.5mm以下、より望ましくは1.8mm以上2.2mm以下である。
【0225】
電子写真感光体に対するブレードの押し付け圧は、0.20mN/mm以上0.66mN/mm(6.5gf/mm)以下であることが好ましく、0.20mN/mm以上0.61mN/mm(6.0gf/mm)以下であることが好ましい。押し付け圧が0.20mN/mm未満であると、特に高硬度ブレードを用いた場合にトナーのクリーニング不良を発生しやすく、押し付け圧が高すぎると感光体との摩擦が高くなり、トルク上昇、感光体磨耗、ブレード角の欠けによるスジの発生、感光体との摩擦によるゴーストの発生などが生じやすくなる。
【0226】
ブレードは、ウレタンゴムを含有する。
ウレタンゴムを含有することで、電子写真感光体表面やトナー等との接触および摩擦に対し、耐磨耗性のあるブレードとし得る。特に、電子写真感光体表面(保護層)が、4つ以上のメタクリロイル基等の連鎖重合性官能基を有する摩耗し難い表面である場合にも、耐磨耗性を発現し得る。
【0227】
ブレードの耐磨耗性を向上させるために、電子写真感光体に接触する部分の材料として、高硬度や高モジュラスな材料を採用することが好ましい。この高モジュラスな材料を用いて単層のウレタンゴムブレードとしても使用されるが、一般的には耐性は向上するが弾性が低下する。弾性が低下するとは、ゴムらしさが無くなり伸び難くなることである。
【0228】
また、弾性が低下すると、現像剤として、トナーとキャリアとを混合する現像剤を用いたときには、磁性キャリアの一部が静電吸引力によって電子写真感光体表面に転移してしまうという所謂BCO(Bead Carry Over)と呼ばれる現象の発生に伴い電子写真感光体表面に埋没したキャリア片などの異物が、ブレードの角と電子写真感光体表面との接触部を通過する際、異物が角を変形させる力に追従して、角先端が変形することが出来ずにブレード角が欠け易くなってしまうこともある。
【0229】
上記のような、4つ以上のメタクリロイル基等の連鎖重合性官能基を有する摩耗し難い表面を備えた電子写真感光体表面との摩擦に対する耐磨耗性を向上するため、ブレードとしては、感光体表面と接触する第一層と、感光体表面と接触しない背面層と、から構成され、前記第一層の材料が、下式(A)乃至(C)を満たすことが好ましい。
かかる構成とすることで、ブレード角が欠けも抑制し得る。
【0230】
・式(A) 3.92≦M≦29.42
・式(B) 0<α≦0.294
・式(C) S≧250
〔但し、式(A)乃至(C)中、Mは100%モジュラス(MPa)を表し、αは、応力−歪曲線において、歪量が100%以上200%以下における歪量変化(Δ歪量)に対する応力変化(Δ応力)の割合{Δ応力/Δ歪量=(歪量200%における応力−歪量100%における応力)/(200−100)}(MPa/%)を表し、Sは、JIS K6251(ダンベル状3号形試験片使用)に基づいて測定された破断伸び(%)を表す。〕
【0231】
ここで、ブレードは、被クリーニング部材表面に接触する第一層の背面に、背面層としての第二層が設けられた2層構成であってもよいし、また、第一層の背面に第二層、第三層など複数の層からなる背面層を設けた構成であってもよい。尚、以下においては、第一層と背面層としての第二層とからなる2層構成のブレードを取り上げて、詳細に説明する。
【0232】
ブレードは、被クリーニング部材表面と接触する第一層の材料が、式(A)を満たすことで、良好なクリーニング性を発揮しつつ、耐磨耗性にも優れる。
100%モジュラスMが、3.92MPa(40kgf/cm)未満の場合には、耐磨耗性が不充分となり、長期に渡るクリーニング性を維持しにくい。また、29.42MPa(300kgf/cm)を超える場合には、第一層材料が硬過ぎるため、被クリーニング部材に対する追従性が悪化し易く、良好なクリーニング性を発揮しにくい。加えて、被クリーニング部材表面を傷つけることがある。
なお、100%モジュラスMは、5MPa以上20MPa以下の範囲内であることが好ましく、6.5MPa以上15MPa以下の範囲内であることがより好ましい。
【0233】
また、第一層材料が、式(B)および式(C)を満たすことで、耐欠け性に優れる。
式(B)に示されるαが0.294を超える場合、第一層材料の柔軟性に欠ける。それゆえ、BCOの発生に伴い、電子写真感光体表面に埋没・固着した異物等のように、被クリーニング部材表面に存在する異物、特に表面に埋没・固着した異物が、被クリーニング部材とブレードとの接触部を繰り返し通過することにより、ブレードの第一層先端に大きな応力が繰り返し加わった際に、この応力を効率的に分散するように変形されないため、比較的短期間の内に角欠けが発生してしまう。従って、早期に欠けが発生するため、長期に渡る良好なクリーニング性を維持しにくい。
なお、αは0.2以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましく、物性上の限界下限値である0に近ければ近いほどよい。
【0234】
さらに、式(C)に示される破断伸びSが250%未満である場合、上述したような被クリーニング部材表面の異物と第一層先端が強い力で衝突した際に、第一層先端が伸びて追従変形されなくなるため比較的短期間の内に角欠けが発生してしまう。従って、早期に欠けが発生するため、長期に渡る良好なクリーニング性を維持しにくい。
なお、破断伸びSは300%以上であることが好ましく、350%以上であることがより好ましく、角欠けに対しては大きい程好ましい反面、破断伸びSが500%より大きい場合は被クリーニング部材に対する追従性(密着性)が増し、被クリーニング部材との摩擦力が増大し、結果として第一層先端の磨耗(角磨耗)が増大し易くなる場合がある。それゆえ、角磨耗の観点から破断伸びSは500%以下であることが好ましく、450%以下であることがより好ましく、400%以下であることが更に好ましい。
【0235】
また、画像形成装置のブレード周辺温度つまり使用環境温度は10℃以上60℃の範囲であると考えられる。従って、被クリーニング部材表面と接触する第一層の材料のガラス転移温度Tgが使用環境温度を上回ると、ゴムらしさが無くなりブレードの接触圧が安定しなくなる場合がある。それゆえ、第一層の材料のガラス転移温度Tgは使用環境温度の下限値(10℃)以下であることが好ましい。
【0236】
一方、被クリーニング部材表面と接触する第一層の材料の反発弾性Rは、当該材料のガラス転移温度Tgが10℃以下である場合、低温程反発弾性は小さくなる傾向にある。特に、反発弾性Rが10%未満では第一層先端のスティック&スリップ挙動が鈍くなり、ある接触姿勢で変形した状態で摺擦する部分が発生し易くなる場合がある。
スティック&スリップ挙動により接触姿勢が解放されない場合には、第一層先端の姿勢が保たれたまま摺擦が起こるため、局所的な塑性変形が発生しやすくなる。このような局所的な塑性変形が発生すると、第一層先端と被クリーニング部材との密着性が低下し、クリーニング不良が発生し易くなる場合がある。このような局所的な塑性変形を抑制する為には第一層先端は常にスティック&スリップ挙動が行われている事が好ましく、そのためには、使用環境温度の実質的な下限値である温度10℃以上の環境下において、反発弾性Rは、10%以上であることが好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましい。
反発弾性Rは、JISK6255(1996年)に基づいて測定される。
【0237】
式(A)に示す100%モジュラスMは、JISK6251(1993年)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を用い、引張速度500mm/minで計測し、100%歪み時の応力より求めた。尚、測定装置は、東洋精機(株)製、ストログラフAEエラストマを用いた。
また、式(B)に示すαは、応力−歪曲線から求められるものであるが、ここで、応力および歪量は以下に説明する手順・方法により求めたものである。すなわち、JISK6251(1993年)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を用い、引張速度500mm/minで計測し、100%歪み時の応力と200%歪み時の応力より求めた。尚、測定装置は、東洋精機(株)製、ストログラフAEエラストマを用いた。
【0238】
さらに、被クリーニング部材表面と接触する第一層の材料のガラス転移温度や、ソフトセグメント材料やハードセグメント材料のガラス転移温度は、粘弾性測定装置により温度分散を測定し、tanδ(損失正接)のピーク温度として求めた。
【0239】
ここで、tanδ値は、以下に説明する貯蔵及び損失弾性率から導かれるものである。 線形弾性体に、正弦波の歪みを定常振動的に与えたとき、応力は式(D)で表される。|E*|は複素弾性率と呼ばれる。また、レオロジー学の理論より、弾性体成分は式(E)、及び粘性体成分は式(F)で表される。ここで、E’は貯蔵弾性率、E''は損失弾性率と呼ばれる。δは応力と歪みとの位相差角を表し、“力学的損失角”と呼ばれるものである。
tanδ値は、式(G)の様にE''/E’で表され、“損失正弦”と呼ばれるものであり、その値が大きい程、その線形弾性体は、ゴム弾性を有するものとなる。
【0240】
式(D) σ=|E*|γcos(ωt)
式(E) E’=|E*|cosδ
式(F) E”=|E*|sinδ
式(G) tanδ=E”/E’
tanδ値は、レオペクトラ−DVE−V4(レオロジー(株)製)によって静止歪み5%、10Hz、正弦波引張加振を温度範囲−60℃以上100℃以下で測定した。
【0241】
以上に説明したように本実施形態に係るブレード(クリーニングブレード)に用いられる第一層用材料は、耐磨耗性および耐欠け性の双方に優れる。
このため、BCOの発生に伴い、電子写真感光体表面に埋没・固着した異物等のように、被クリーニング部材表面に存在する異物、特に表面に埋没・固着した異物に対応するために、従来のように画像形成装置内に別途耐磨耗性や耐欠け性を向上させるための装置を新たに設ける必要が無いため、装置の大型化・高コスト化を抑制し得る。
【0242】
加えて、ブレードの寿命が長くなるため、本実施形態に係るブレードを具備したプロセスカートリッジ、クリーニング装置、及び画像形成装置の長寿命化や、メンテナンスコストの低減が容易である。特に、表面の耐磨耗性を向上させた電子写真感光体および本実施形態に係るブレードの双方を具備したプロセスカートリッジや、画像形成装置であれば、上述したメリットをより一層享受し得る。
【0243】
式(A)乃至(C)を満たす材料は、ウレタンゴムであれば特に限定されないが、ハードセグメントおよびソフトセグメントを含むウレタンゴムであることが特に好ましい。ウレタンゴムが、ハードセグメントおよびソフトセグメントの双方を含むことにより、式(A)乃至(C)に示す物性を満たすことが容易となり、耐磨耗性および耐欠け性の双方を、より高いレベルで両立させ得る。
なお、「ハードセグメント」および「ソフトセグメント」とは、ウレタンゴム中で、前者を構成する材料の方が、後者を構成する材料よりも相対的に硬い材料からなり、後者を構成する材料の方が前者を構成する材料よりも相対的に柔らかい材料からなるセグメントを意味する。
【0244】
ここで、ハードセグメントおよびソフトセグメントを含むウレタンゴムのガラス転移温度は、−50℃以上30℃以下であることが好ましく、−30℃以上10℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が30℃を超えると、ブレードを使用する実用温度域において脆化が起こる場合がある。また、ガラス転移温度が−30℃未満では、実使用領域において十分な硬度、応力が得られない場合がある。
従って、上述したガラス転移温度を実現するためには、ウレタンゴムのハードセグメントを構成する材料(以下、「ハードセグメント材料」と称す場合がある)のガラス転移温度は、30℃以上100℃以下であることが好ましく、35℃以上60℃以下であることがより好ましく、ソフトセグメントを構成する材料(以下、「ソフトセグメント材料」と称す場合がある)のガラス転移温度は、−100℃以上−50℃以下であることが好ましく、−90℃以上−60℃以下であることがより好ましい。
【0245】
また、上述したようなガラス転移温度を有するハードセグメント材料およびソフトセグメント材料を用いる場合、ハードセグメント材料およびソフトセグメント材料の総量に対するハードセグメントを構成する材料の質量比(以下、「ハードセグメント材料比」と称す場合がある)が46質量%以上96質量%以下であることが好ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上85質量%以下であることが更に好ましい。
ハードセグメント材料比が、46質量%未満の場合には、第一層先端の耐磨耗性が不充分となり、早期に磨耗が起こることにより、長期に渡って良好なクリーニング性が維持できなくなる場合がある。また、ハードセグメント材料比が96質量%を超える場合には、第一層先端が硬くなり過ぎて、柔軟性や伸張性が不充分となり、早期に欠けが発生することにより、長期に渡って良好なクリーニング性が維持できなくなる場合がある。
【0246】
ハードセグメント材料とソフトセグメント材料との組み合わせとしては、特に限定されず、一方が他方に対して相対的に硬く、他方が一方に対して相対的に柔らかい組み合わせとなるように、ガラス転移温度または重量平均分子量の異なるウレタンゴムを組み合わせてもよい。
例えば、ハードセグメント材料としては、重量平均分子量が1000以上4000以下のウレタンゴムを用いることが好ましく、重量平均分子量は、1500以上3500以下であることがより好ましい。
重量平均分子量が1000未満の場合は、ブレードが低温環境下で使用される場合にハードセグメントを構成するウレタンゴムの弾性が失われるために、クリーニング不良が生じやすくなる場合がある。また、重量平均分子量が4000を超える場合は、ハードセグメントを構成するポリウレタン樹脂の永久歪みが大きくなり、第一層先端が、被クリーニング部材に対して接触圧力を保持することができなくなり、クリーニング不良が生じる場合がある。
なお、上述したようなハードセグメント材料として用いられるウレタンゴムとしては、例えば、ダイセル化学社製、プラクセル205やプラクセル240などが挙げられる。
【0247】
クリーニング装置は、ブレードの耐磨耗性を向上させる目的で放電生成物を除去する手段を付加したり、BCOの発生に伴い電子写真感光体表面に付着し、ブレードの端(角)の欠けの原因ともなる粉末キャリアを捕集する目的でキャリア捕集手段を付加してもよい。
【0248】
転写装置としては、例えば、ベルト、ロール、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0249】
中間転写体としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いられる。
【0250】
画像形成装置は、上述した各装置の他に、例えば、感光体に対して光除電を行う光除電装置を備えていてもよい。
【0251】
図8は、他の実施形態に係る画像形成装置120を示す概略断面図である。
図8に示される画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。
画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【実施例】
【0252】
以下実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0253】
カラー現像剤製造例
−結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)の調製−
・ドデカンジオイック酸〔酸性分〕:92.5mol%
・イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム〔酸性分〕:3mol%
・5−t−ブチルイソフタル酸〔酸性分〕:4.5mol%
・1,10デカンジオール:100mol%
・Ti(OBu)〔触媒〕:酸成分全質量に対し、0.014質量%
【0254】
上記成分を加熱乾燥した三口フラスコに入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で6時間還流を行った。その後、減圧蒸留にて220℃まで徐々に昇温を行い2.5時間攪拌し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量11,000になったところで、減圧蒸留を停止、空冷し、結晶性ポリエステル(1)を得た。
【0255】
得られた結晶性ポリエステル(1)に溶融温度を示差走査熱量計(マックサイエンス社製:DSC3110、熱分析システム001)(以下、「DSC」と略記する。)の熱分析装置を用いて測定した。測定は、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で行い、溶融温度をJIS規格(JIS K−7121参照)により解析して得た。この方法で測定したところ、明確なピークを有し、溶融温度は80℃であった。またエステル濃度は0.078であった。
【0256】
次いで、この結晶性ポリエステル(1)80g及び脱イオン水587gをステンレスビーカーに入れ、温浴につけ、95℃に加熱した。結晶性ポリエステル樹脂(1)が溶融した後、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで攪拌すると共に希アンモニア水を添加しPHを7.0に調整した。次いでアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)0.8gを希釈した水溶液20gを滴下しながら、乳化分散を行ない、体積平均粒子径が0.21μmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)〔樹脂粒子濃度:12質量%〕を調製した。
【0257】
−結晶性ポリエステル樹脂分散液(2)の調製−
・セバシン酸〔酸性分〕:92.5mol%
・イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム〔酸性分〕:3mol%
・5−t−ブチルイソフタル酸〔酸性分〕:5.5mol%
・1,10デカンジオール:100mol%
・Ti(OBu)〔触媒〕:酸成分全質量に対し、0.014質量%
【0258】
上記成分を、加熱乾燥した三口フラスコに入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で6時間還流を行った。その後、減圧蒸留にて220℃まで徐々に昇温を行い2.5時間攪拌し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量12,000になったところで、減圧蒸留を停止、空冷し結晶性ポリエステル(2)を得た。
【0259】
得られた結晶性ポリエステル(2)に溶融温度を前述の方法(DSC)で測定したところ、明確なピークを有し、溶融温度は73℃であった。またエステル濃度は0.084であった。
【0260】
ついで結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)の調製と同様にして乳化分散を行い、体積平均粒子径が0.20μmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(2)〔樹脂粒子濃度:12質量%〕を調製した。
【0261】
−無定形高分子分散液(1)の調製−
・非イオン性界面活性剤(三洋化成(株)製:ノニポール400)6g
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)10g
・イオン交換水560g
【0262】
上記成分を混合し界面活性剤水溶液を得た。次いで、下記成分を混合し、溶解して溶解物を得た。
【0263】
・スチレン:370g
・nブチルアクリレート:30g
・アクリル酸:4g
・ドデカンチオール:24g
・四臭化炭素:4g
【0264】
得られた溶解物を、予め用意した界面活性剤水溶液中に入れ、フラスコ中で分散し、乳化した。10分間ゆっくりと混合しながら、フラスコ中に過硫酸アンモニウム4gを溶解したイオン交換水50gを投入し、窒素置換を行った。その後、フラスコ内を攪拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、6時間そのまま乳化重合を継続した。こうして、体積平均粒子径が0.11μm、ガラス転移温度が58℃、重量平均分子量(Mw)が21,000である樹脂粒子を分散させてなる無定形高分子分散液(1)(樹脂粒子濃度:40質量%)を調製した。
【0265】
−無定形高分子分散液(2)の調製−
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数2.2):386g
・トリメチロールプロパン:428g
・テレフタル酸:1392g
【0266】
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイド(1.2g)を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに3時間脱水縮合反応を継続し、酸価が6.0mgKOH/g、軟化点が105℃になるまで、反応をさせた。次いで、温度を190℃まで下げ無水フタル酸の497部を徐々に投入し、同温度で1時間反応を継続し、酸価が51mgKOH/g、ガラス転移温度が67℃、重量平均分子量が29,000である無定形ポリエステル樹脂を得た。
【0267】
ついで、これを溶融状態のまま、キャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)に毎分100gの速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクには試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37質量%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で、上記ポリエステル樹脂熔融体と共に上記キャビトロン(株式会社ユーロテック製)に移送した。
【0268】
回転子の回転速度が60Hz、圧力が5Kg/cmの条件でキャビトロンを運転し、体積平均粒子径0.10μmのポリエステル樹脂からなる無定形高分子分散液(2)(樹脂粒子濃度:30質量%)を得た。
【0269】
−離型剤分散液(1)の調製−
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製:HNP−9、融点75℃):50g
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK):0.5g
・イオン交換水:200g
【0270】
以上の成分を95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で分散処理し、体積平均粒子径が230nmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液(1)(離型剤濃度:20質量%)を調製した。
【0271】
−離型剤分散液(2)の調製−
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製:HNP−0190、融点90℃):50g
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK):0.5g
・イオン交換水:200g
【0272】
以上の成分を95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で分散処理し、体積平均粒子径が250nmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液(2)(離型剤濃度:20質量%)を調製した。
【0273】
−着色剤分散液の調製−
・シアン顔料
(大日精化社製、PigmentBlue15:3(銅フタロシアニン)):1kg
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンR):15g
・イオン交換水:9kg
【0274】
以上の成分を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて1時間分散して着色剤(シアン顔料)を分散させてなる着色剤分散液を調製した。
【0275】
シアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン)):1kgに変えてMagenta顔料(C.I.ピグメントレッド57:1)1kg、Yellow顔料(C.I.ピグメントイエロー17)1.3Kg、カーボンブラック(キャボット社製:リーガル330)0.8Kgを用いた以外はシアン顔料分散液と同様にして、Magenta顔料分散液、Yellow顔料分散液、Black顔料分散液を調製した。
【0276】
(カラー現像剤(1))
−トナー粒子(1)の製造−
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(1):833g
・シアン顔料分散液:27.17g
・離型剤分散液(1):50g
・離型剤分散液(2):25g
・ノニオン性界面活性剤(IGEPAL CA897):1.25g
【0277】
上記原料を5Lの円筒ステンレス容器に入れ、Ultraturraxにより4000rpmでせん断力を加えながら10分間分散混合した。ついで、凝集剤としてポリ塩化アルミニウムの10%硝酸水溶液1.75gを徐々に滴下して、Ultraturraxの回転数を5000rpmにして15分間分散混合して原料分散液とした。
【0278】
その後、攪拌装置、温度計を備えた重合釜に原料分散液を移し、マントルヒーターにて加熱し始め、45℃にて凝集粒子の成長を促進させた。またこの際、原料分散液のpHは2.2以上3.5以下の範囲に制御するのが好ましく、必要に応じて、0.3Nの硝酸や1Nの水酸化ナトリウム水溶液でpH調整を行なった。上記pH範囲で2時間保持し、コア凝集粒子を形成した。コールターマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm;コールター社製)を用いて測定したコア凝集粒子の体積平均粒子径D50vは5.0μmであった。
【0279】
次に、無定形高分子分散液(1)50gを追添加し、コア凝集粒子表面に無定形高分子粒子(1)を付着させた。さらに60℃に昇温し、光学顕微鏡及びコールターマルチサイザーIIで粒子の大きさ及び形態を確認しながら凝集粒子を整えた。その後、凝集粒子を融合させるために、pHを8.0に上げた後、90℃まで昇温させた。顕微鏡で粒子が融合したのを確認した後90℃で保持したまま、pHを6.0まで下げて、1時間後に加熱を止め、氷水を投入して100℃/分の降温速度で急冷した。その後20μmメッシュで篩分し、水洗を繰り返した後、真空乾燥機で乾燥した。以上のように造粒したトナー粒子(1)の体積平均粒子径D50vは5.8μmであった。
【0280】
シアン顔料分散液の変わりにMagenta顔料分散液、Yellow顔料分散液、Black顔料分散液を用いた以外は同様にして体積平均粒子径D50vは5.8μmの各色のトナー粒子(1)を得た。各色のトナー粒子に外添剤としてチタニア粉末をトナー100質量部に対して1.2質量部、PTFE(ルブロンL2)1.0質量部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して静電荷像現像用カラートナー(1)を得た。
ついで、これらトナーそれぞれ50質量部と樹脂被覆されたフェライト粒子(体積平均粒子径35μm)1000質量部を混合して二成分現像剤を調製した。
【0281】
(カラー現像剤(2))
−トナー粒子(2)の製造−
トナー粒子(1)と同様の条件でコア凝集粒子の形成を行った。コア凝集粒子の体積平均粒子径D50vは5.1μmであった。次に、pHを4.0に上げ、無定形高分子分散液(2)66.7gを追添加し、コア凝集粒子表面に無定形高分子粒子(2)を付着させた。さらに64℃に昇温し、光学顕微鏡及びコールターマルチサイザーIIで粒子の大きさ及び形態を確認しながら凝集粒子を整えた。その後、凝集粒子を融合させるために、pHを8.0に調整してから温度を90℃まで昇温させた。顕微鏡で付着凝集粒子が融合したのを確認した後90℃で保持したまま再度pHを6.5まで下げて1時間後に加熱を止め、氷水を投入して100℃/分の降温速度で急冷した。その後実施例1と同様の条件で、篩分、洗浄、乾燥し、体積平均粒子径D50vが5.5μmのトナー粒子(2)を得た。
これを用いて、(カラー現像剤(1))と同様にして(カラー現像剤(2))を得た。
【0282】
(カラー現像剤(3))
−トナー粒子(3)の製造−
結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を結晶性ポリエステル樹脂分散液(2)に代えた以外は実施例1と同様にしてコア凝集粒子の形成を行った。コア凝集粒子の体積平均粒子径D50vは4.7μmであった。次に、無定形高分子分散液(1)50gを追添加し、コア凝集粒子表面に無定形高分子粒子(1)を付着させた。その後実施例1と同様の条件で、篩分、洗浄、乾燥し、体積平均粒子径D50vが4.9μmのトナー粒子(3)を得た。これを用いて、(カラー現像剤(1))と同様にして(カラー現像剤(3))を得た。
【0283】
(カラー現像剤(4))
−トナー粒子(4)の製造−
トナー粒子(3)の凝集粒子の成長・融合工程を目視にて観察しながら制御した以外は同様にして体積平均粒子径D50vが3.5μmのトナー粒子(4)を得た。これを用いて、(カラー現像剤(3))と同様にして(カラー現像剤(4))を得た。
【0284】
(カラー現像剤(5))
−トナー粒子(4)の製造−
トナー粒子(3)の凝集粒子の成長・融合工程を目視にて観察しながら制御した以外は同様にして体積平均粒子径D50vが2.8μmのトナー粒子(5)を得た。これを用いて、(カラー現像剤(3))と同様にして(カラー現像剤(5))を得た。
【0285】
(カラー現像剤(6))
−トナー粒子(6)の製造−
トナー粒子(3)の凝集粒子の成長・融合工程を目視にて観察しながら制御した以外は同様にして体積平均粒子径D50vが7.0μmのトナー粒子(6)を得た。これを用いて、(カラー現像剤(3))と同様にして(カラー現像剤(6))を得た。
【0286】
(カラー現像剤(7))
カラー現像剤(1)のPTFEを0.3質量部とした以外はカラー現像剤(1)と同様にしてカラー現像剤(7)を得た。
【0287】
(カラー現像剤(8))
カラー現像剤(1)のPTFEを加えなかった以外はカラー現像剤(1)と同様にしてカラー現像剤(8)を得た。
【0288】
(カラー現像剤(9))
カラー現像剤(1)のPTFEを2.5質量部とした以外はカラー現像剤(1)と同様にしてカラー現像剤(9)を得た。
【0289】
(カラー現像剤(10))
・線状ポリエステル樹脂 100質量部 (テレフタル酸/ビスフェノールA エチレンオキサイド付加物/シ クロヘキサンジメタノールから得られた線状ポリエステル;Tg=62°C、M n=4,000、Mw=35,000、酸価=12、水酸価=25)
・マゼンタ顔料(C.I.ピグメント レッド57) 3質量部
【0290】
上記原料の混合物をエクストルーダーで混練し、表面粉砕方式の粉砕機で粉砕した。その後、風力式分級機(ターボクラシファイアー−(TC−15N)、日清エンジニアリング社製)で細粒、粗粒を分級し、その中間サイズの、体積平均粒子径D50v=8μmのマゼンタトナー粒子を得た。このトナーのイメージアナライザーによる形状係数SF1は165であった。
マゼンタ顔料をシアン顔料(β型フタロン シアニン:C.I.ピグメント・ブルー15:3 )、 イエロー顔料(ジスアゾイエロー:C.I.ピグメント・イエロー12)にそれぞれ変えて同様にシアントナー粒子、イエロートナー粒子を得た。形状係数SF1は、それぞれ165、165であった。
【0291】
カラー現像剤(1)の製造において用いた各色のトナー粒子に代えて、上記の各色トナー粒子を用い、PTFEを加えない以外はカラー現像剤(1)と同様にしてカラー現像剤(10)を得た。
【0292】
ブレード製造例
<クリーニングブレード(A1)>
はじめに、第一層用の部材を以下のようにして形成した。
まず、ポリオール成分として、ポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学社製、プラクセル205、平均分子量529、水酸基価212KOHmg/g)及びポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学社製、プラクセル240、平均分子量4155、水酸基価27KOHmg/g)とからなるハードセグメント材料と、2つ以上のヒドロキシル基を含むアクリル樹脂(綜研化学社製、アクトフローUMB−2005B)からなるソフトセグメント材料とを、8:2(質量比)の割合で混合した。
【0293】
次に、このハードセグメント材料とソフトセグメント材料との混合物100部に対して、イソシアネート化合物として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMT、以下「MDI」という)を6.26部加えて、窒素雰囲気下で、70℃で3時間反応させた。
なお、この反応で使用したイソシアネート化合物量は、反応系に含まれる水酸基に対するイソシアネート基の比(イソシアネート基/水酸基)が0.5となるように選択したものである。
【0294】
続いて、上記イソシアネート化合物を更に34.3部加え、窒素雰囲気下で、70℃で3時間反応させて、プレポリマーを得た。
なお、プレポリマーの使用に際して利用したイソシアネート化合物の全量は40.56部である。
【0295】
次に、このプレポリマーを100℃に昇温し、減圧下で1時間脱泡した後、プレポリマー100部に対して、1,4−ブタンジオールとトリメチロールプロパンとの混合物(質量比=60/40)を7.14部加え、3分間泡をかまないように充分に混合し、第一層形成用組成物A1を調製した。
【0296】
次いで、140℃に金型を調整した遠心成形機に上記第一層形成用組成物A1を流し込み、1時間硬化反応させ、平板状の第一層を形成した。
【0297】
また、第二層用の部材として以下の方法により調製した第二層形成用組成物A1を準備した。
脱水処理したポリテトラメチルエーテルグリコールに、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネートを混入し120℃で15分反応させ、生成したプレポリマーに硬化剤として1,4−ブタジオールおよびトリメチロールプロパンを併用したものを用いた。
【0298】
尚、上記第一層と第二層との接着は、前述の通り第一層を平板状に形成した後の遠心成形機に、第二層形成用の組成物を流し込み硬化させることによって行い、第一層の背面に第二層を形成した。
また、第一層単層での物性を測定したところ、次のとおりであった。
・100%モジュラス=10.8MPa
・α=0.059(MPa/%)
・破断伸び=420%
・反発弾性=20%
・ガラス転移温度=−10℃
【0299】
この平板を110℃で24時間架橋後冷却し、所定の寸法にカットして、第一層厚さ0.5mm、第二層厚さ1.5mm(全体の厚さに対するの厚さ割合25%)のクリーニングブレード(A1)を得た。
また、第一層単層での物性を測定したところ、次のとおりであった。
・100%モジュラス=7.4MPa
・α=0.09(MPa/%)
・破断伸び=535%
・反発弾性=35%
・ガラス転移温度=−8℃であった。
【0300】
<クリーニングブレード(A2)>
ハードセグメント材料としてはクリーニングブレード(A1)の作製に用いたのと同様のハードセグメント材料を用い、ソフトセグメント材料としては2つ以上のヒドロキシル基を含むポリブタジエン樹脂(出光興産社製、R−45HT)を用い、ハードセグメント材料とソフトセグメント材料とを8:2の割合で混合した。
この混合物を用いて第一層形成用組成物を調製した以外は、上記クリーニングブレードA1と同様にして第一層および第二層を形成し、クリーニングブレード(A2)を得た。
また、第一層単層での物性を測定したところ、次のとおりであった。
・100%モジュラス=7.4MPa
・α=0.09(MPa/%)
・破断伸び=535%
・反発弾性=35%
・ガラス転移温度−8℃
【0301】
<電子写真感光体(B1)>
(下引層の作製)
酸化亜鉛:(体積平均粒子径70nm:テイカ社製:比表面積値15m/g)100質量部をテトラヒドロフラン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM503:信越化学社製)1.3質量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間)焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
前記表面処理を施した酸化亜鉛110質量部を500質量部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、アリザリン0.6質量部を50質量部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、さらに60℃で減圧乾燥を行い、アリザリン付与酸化亜鉛を得た。
【0302】
・得られたアリザリン付与酸化亜鉛:60質量部
・硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製):13.5質量部
・ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製):15質量部
【0303】
上記成分をメチルエチルケトン85質量部に溶解して溶液を得た。
得られた溶液(38質量部)と、メチルエチルケトン(25質量部)とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。
【0304】
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製):40質量部を添加し、下引層塗布用液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径84mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ18μmの下引層を得た。
【0305】
(電荷発生層の作製)
電荷発生物質としてのCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15質量部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10質量部、n−酢酸ブチル200質量部からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液にn−酢酸ブチル175質量部、メチルエチルケトン180質量部を添加し、攪拌して電荷発生層用の塗布液を得た。この電荷発生層用塗布液を下引層上に浸漬塗布し、常温で乾燥して、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0306】
(電荷輸送層の作製)
電子写真感光体1の電荷輸送層をN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン45質量部及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5.5万)55質量部をクロルベンゼン800質量部に加えて溶解し,電荷輸送層用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布し、130℃、45分の乾燥を行って膜厚が15μmの電荷輸送層を形成した。
【0307】
(表面層の作製)
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン20質量部及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5.5万)20質量部、化合物A−16を60質量部、OTazo−15(大塚化学、分子量354.4)1質量部をシクロペンタノン500質量部に溶解し、スプレーコートにて電荷輸送層上に塗布した。室温で30分風乾した後、酸素濃度200ppmの窒素下で、150℃で1時間加熱処理して硬化させ、膜厚15μmの保護層を形成して感光体(B1)を作製した。この電子写真感光体の表面層(保護層)を剥離し、テトラヒドロフラン中に50℃で3時間浸漬し、溶出した化合物A−16の量をGPCにて測定したところ、硬化膜である保護層全質量に対し、0.3質量%であった。
【0308】
<電子写真感光体(B2)>
化合物A−16を50質量部として表面層を形成した以外は電子写真感光体(B1)と同様にして電子写真感光体(B2)を作製した。この電子写真感光体の表面層(保護層)を剥離し、テトラヒドロフラン中に50℃で3時間浸漬し、溶出した化合物A−16の量をGPCにて測定したところ、硬化膜である保護層全質量に対し、0.6質量%であった。
【0309】
<電子写真感光体(B3)>
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン20質量部及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5.5万)20質量部、化合物A−16を60質量部の代わりに、化合物II−10を80質量部、ポリプロピレングリコールジアクリレートを20質量部として表面層を形成した以外は電子写真感光体(B1)と同様にして電子写真感光体(B3)を作製した。この電子写真感光体の表面層(保護層)を剥離し、テトラヒドロフラン中に50℃で3時間浸漬し、溶出した化合物II−10の量をGPCにて測定したところ、硬化膜硬化膜である保護層全質量に対し、4.6質量%であった。
【0310】
<電子写真感光体(B4)>
電荷輸送層までは電子写真感光体(B1)の作製と同様にして作製した。この電荷輸送層上に、ニカラックMW−30HM(メチル化メラミン樹脂、三和ケミカル社製):0.5質量部に、下記化合物(B)を9.5質量部、1−メトキシ−2−プロパノール:25質量部、並びに3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT):0.2質量部、p−トルエンスルホン酸:0.01質量部を加えて保護層用塗布液を調製し、この塗布液を電荷輸送層の上に浸漬塗布法により塗布し、室温で30分乾燥した後、150℃で1時間加熱処理して硬化させ、保護層の膜厚が7μmの電子写真感光体(B4)を作製した。この電子写真感光体の表面層(保護層)を剥離し、テトラヒドロフラン中に50℃で3時間浸漬し、溶出した化合物(B)の量をGPCにて測定したところ、硬化膜硬化膜である保護層全質量に対し、0.1質量%であった。
【0311】
【化33】

【0312】
<電子写真感光体(B5)>
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン20質量部、及び、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5.5万)20質量部、化合物A−16を60質量部の代わりに、III−1を60質量部用いて形成した以外は電子写真感光体(1)と同様にして保護層の膜厚が5μmの電子写真感光体(5)を作製した。この電子写真感光体の表面層(保護層)を剥離し、テトラヒドロフラン中に50℃で3時間浸漬し、溶出したIII−1の量をGPCにて測定したところ、硬化膜硬化膜である保護層全質量に対し、0.6質量%であった。
【0313】
[実施例1乃至実施例14、比較例1乃至比較例8]
[画質評価]
上述のようにして作製したカラー現像剤、クリーニングブレード、電子写真感光体を表1の組み合わせで市販の電子写真複写機(富士ゼロックス社製DocuColor 1257GA)を用いて画像出しを行い、常温常湿(20℃、50%RH)及び高温高湿(28℃、85%RH)において、以下の評価を連続して行なった。
すなわち、常温常湿(20℃、50%RH)の環境下にて10,000枚の画像形成テストを行ない、10,000枚目の画質、及び、10,000枚画像形成テストを実施した後、低温低湿(8℃、20%RH)環境下で24時間放置した後の最初の画質について以下のゴースト、カブリ、スジ、画像流れを評価した。
その結果を表1に示した。
【0314】
この低温低湿環境下での画質評価に続いて、高温高湿(28℃、85%RH) の環境下にて100,000枚の画像形成テストを行なった100,000枚目の画質、及び、10,000枚画像形成テストを実施した後、高温高湿(28℃、85%RH)環境下で24時間放置した後の最初の画質について以下のゴースト、カブリ、スジ、画像流れを評価した。さらに全てのプリントテスト終了後の感光体表面層の磨耗量を測定した。
その結果を表1に示した。
【0315】
<ゴースト評価>
ゴーストは、図9(A)に示したGと黒領域を有するパターンのチャートをプリントし、黒領域部分にGの文字の現れ具合を目視にて評価した。
A:図9(A)のように良好である。
B:図9(A)より若干目立つ軽微なレベルである。
C:図9(B)のように若干目立つ程度である。
D:図9(B)と図9(C)との中間程度である。
E:図9(C)のようにはっきり確認されることを示す。
【0316】
<カブリ評価>
カブリ評価は上述のゴースト評価と同じサンプルを用いて白地部のトナー付着程度を目視にて観察し判断した。
A:良好。
B:うっすらとカブリあり。
C:画質上問題となるカブリあり。
【0317】
<スジ評価>
スジ評価は上述のゴースト評価と同じサンプルを用いて目視にて判断した。
A:良好。
B:部分的にスジの発生あり。
C:画質上問題となるスジ発生。
【0318】
<粒状性評価>
粒状性は、図9(A)に示したGと黒領域を有するパターンのチャートをプリントし、黒領域部分の画像の均一性を目視にて行った。
A:良好。
B:軽微。
C:はっきりと観察される。
D:目立つ。
E:非常に目立つ。
【0319】
<画像流れ評価>
画像流れは上述のゴースト評価と同じサンプルを用いて目視にて判断した。
A:良好。
B:連続的にプリントテストしている時は問題ないが、1日(24時間)放置後に発生。
C:連続的にプリントテストしている時にも発生。
【0320】
【表1】



【0321】
表1中、「%」は『質量%』を表す。「平均粒径」は、トナー粒子の体積平均粒子径D50vを表し、SF1は、トナーの形状係数SF1を表す。
「モノマー溶出量」は、電子写真感光体B1乃至B5の保護層全質量に対する溶出化合物の量〔質量%〕を表す。電子写真感光体B1とB2においては前記例示化合物A−16の溶出量〔質量%〕であり、電子写真感光体B3においては前記例示化合物II−10の溶出量〔質量%〕である。電子写真感光体B4においては化合物(B)の溶出量〔質量%〕であり、電子写真感光体B5においては前記例示化合物III−1の溶出量〔質量%〕である。
【0322】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、低温低湿条件下においても、高温高湿条件下においてもゴーストに代表される画像欠陥が抑えられていることがわかった。これは、本実施例では、比較例に比べ、クリーニングブレードと電子写真感光体表面との摩擦が抑制され、摩擦帯電の発生が抑えられているためと考えられる。
【符号の説明】
【0323】
1 下引層
2 電荷発生層
3 電荷輸送層
4 導電性基体
5 保護層
6 単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)
7A、7B、7C、7 電子写真感光体
8 帯電装置
9 露光装置
10 電子写真感光体
11 現像装置
13 クリーニング装置
14 潤滑材
40 転写装置
50 中間転写体
71 筐体
72 ブレード
100、120 画像形成装置
300 プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも電荷輸送性骨格を有する硬化物を含有して構成される最表面層を有する電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像手段と、
結晶性樹脂を含有し、形状係数SF1が100以上150以下、かつ体積平均粒子径が3μm以上6μm以下であるトナー粒子及び外添剤としてフッ素樹脂粒子を有するトナーを含有する現像剤を収容し、前記現像剤により前記電子写真感光体に形成された前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像手段と、
前記トナー画像を被転写体に転写する転写手段と、
ウレタンゴムを含有し、前記電子写真感光体表面への押し付け圧0.20mN/mm以上で配されるブレードを有し、前記電子写真感光体の表面を清掃する清掃手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記硬化物が、同一分子内に電荷輸送性骨格及び連鎖重合性官能基を有する化合物の硬化物である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記連鎖重合性官能基が、4つ以上のメタクリロイル基である請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
少なくとも電荷輸送性骨格を有する硬化物を含有して構成される最表面層を有する電子写真感光体と、
結晶性樹脂を含有し、形状係数SF1が100以上150以下、かつ体積平均粒子径が3μm以上6μm以下であるトナー粒子及び外添剤としてフッ素樹脂粒子を有するトナーを含有する現像剤を収容し、前記現像剤により前記電子写真感光体に形成された前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像手段と、
ウレタンゴムを含有し、前記電子写真感光体表面への押し付け圧0.20mN/mm以上で配されるブレードを有し、前記電子写真感光体の表面を清掃する清掃手段と、
を少なくとも備え、画像形成装置に着脱自在であるプロセスカートリッジ。
【請求項5】
前記硬化物が、同一分子内に電荷輸送性骨格及び連鎖重合性官能基を有する化合物の硬化物である請求項4に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項6】
前記連鎖重合性官能基が、4つ以上のメタクリロイル基である請求項5に記載のプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−197131(P2011−197131A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61360(P2010−61360)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】