説明

画像形成装置、及びプロセスカートリッジ

【課題】画像乱れ(画像ボケ)が抑制された画像形成装置が提供すること。
【解決手段】導電性基体、感光層、及び表面層を含み、前記導電性基体上に前記感光層及び表面層をこの順に有し、表面層の少なくとも最表面が、酸素及び13族元素を含み、最表面における酸素の含有量が15原子%を超える電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電手段により帯電された電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する潜像形成手段と、トナー及び破壊強度が100MPa以上200MPa以下のキャリアを含む現像剤を収納し、現像剤により、電子写真感光体に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、電子写真感光体に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
を備えた画像形成装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、及びプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真法は、複写機やプリンター等に幅広く利用されている。このような電子写真法を利用した画像形成装置に使用される電子写真感光体(以下、「感光体」と称す場合がある)に関して、例えば、有機感光層上に、触媒CVD法を利用してアモルファスシリコンカーバイド表面保護層を形成する方法(特許文献1参照)、耐湿性や耐刷性を改善することを目的としてアモルファス炭素中に微量のガリウム原子を含有させる技術(特許文献2参照)、ダイヤモンド結合を有するアモルファス窒化炭素を用いる技術(特許文献3参照)、非単結晶の水素化窒化物半導体を用いる技術(特許文献4参照)、フッ化マグネシウムを表面層に用いる技術(特許文献5参照)が提案がされている。
【0003】
また、表面層の少なくとも最表面が、酸素と、13族元素とを含み、前記最表面における前記酸素の含有量が15原子%を超える電子写真感光体(特許文献6参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−316053号公報
【特許文献2】特開2−110470号公報
【特許文献3】特開2003−27238号公報
【特許文献4】特開平11−186571号公報
【特許文献5】特開2003−29437号公報
【特許文献6】特開2006−267507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、下記特定の表面層を持つ電子写真感光体を備えた画像形成装置において、下記範囲の破壊強度のキャリアを含む現像剤を採用しない場合に比べ、画像乱れ(画像ボケ)が抑制された画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
導電性基体、感光層、及び表面層を含み、前記導電性基体上に前記感光層及び前記表面層をこの順に有し、前記表面層の少なくとも最表面が、酸素及び13族元素を含み、前記最表面における前記酸素の含有量が15原子%を超える電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と
前記帯電手段により帯電された前記電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する潜像形成手段と、
トナー及び破壊強度が100MPa以上200MPa以下のキャリアを含む現像剤を収納し、前記現像剤により、前記電子写真感光体に形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記電子写真感光体に形成された前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
を備えた画像形成装置。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記転写手段が、
前記電子写真感光体に形成された前記トナー像が転写される中間転写体と、
前記電子写真感光体に形成された前記トナー像を前記中間転写体に転写する一次転写手段と、
前記中間転写体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に転写する二次転写手段と、
を備える請求項1に記載の画像形成装置。
【0008】
請求項3に係る発明は、
前記帯電手段が、接触方式の帯電手段である請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【0009】
請求項4に係る発明は、
導電性基体、感光層、及び表面層を含み、前記導電性基体上に前記感光層及び前記表面層をこの順に有し、前記表面層の少なくとも最表面が、酸素及び13族元素を含み、前記最表面における前記酸素の含有量が15原子%を超える電子写真感光体と、
トナー及び破壊強度が100MPa以上200MPa以下のキャリアを含む現像剤を収納し、前記現像剤により、前記電子写真感光体に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
を備えたプロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、上記特定の表面層を持つ電子写真感光体を備えた画像形成装置において、上記範囲の破壊強度のキャリアを含む現像剤を採用しない場合に比べ、画像乱れ(画像ボケ)が抑制される。
請求項2に係る発明によれば、中間転写方式を採用しても、上記特定の表面層を持つ電子写真感光体を備えた画像形成装置において、上記範囲の破壊強度のキャリアを含む現像剤を採用しない場合に比べ、画像乱れ(画像ボケ)が抑制される。
請求項3に係る発明によれば、接触帯電方式の帯電手段を採用しても、上記特定の表面層を持つ電子写真感光体を備えた画像形成装置において、上記範囲の破壊強度のキャリアを含む現像剤を採用しない場合に比べ、画像乱れ(画像ボケ)が抑制される。
請求項4に係る発明によれば、上記特定の表面層を持つ電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジにおいて、上記範囲の破壊強度のキャリアを含む現像剤を採用しない場合に比べ、画像乱れ(画像ボケ)が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】電子写真感光体の層構成の一例を示す模式断面図である。
【図2】電子写真感光体の層構成の他の例を示す模式断面図である。
【図3】電子写真感光体の層構成の他の例を示す模式断面図である。
【図4】電子写真感光体の表面層の形成に用いる成膜装置の一例を示す概略模式図である。
【図5】図4に示す成膜装置において利用するプラズマ発生装置の他の例を示す概略模式図である。
【図6】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図7】他の本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
【0013】
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と帯電手段により帯電された電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する潜像形成手段と、現像剤を収納し、現像剤により、電子写真感光体に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、電子写真感光体に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を備える。
そして、電子写真感光体として、導電性基体、感光層、及び表面層を含み、導電性基体上に感光層及び表面層をこの順に有し、表面層の少なくとも最表面が、酸素と、13族元素とを含み、最表面における酸素の含有量が15原子%を超える電子写真感光体(以下、特定の感光体と称する場合がある)を採用し、現像剤として、トナー及び破壊強度が100MPa以上200MPa以下のキャリア(以下、特定のキャリアと称する場合がある)を含む現像剤を採用する。
なお、導電性とは、体積抵抗率が10Ω・cm未満のことを意味する。
【0014】
ここで、特定の感光体において、表面層の少なくとも最表面は、感光体の耐磨耗性や、傷の発生を防止する上で重要な部分である。そして、特定の感光体における最表面に含まれる上記2つの元素は、硬度及び透明性に優れた13族元素の酸化物を構成する。従って、感光体は、表面の耐磨耗性に優れ、傷の発生を抑制し、良好な感度を得ることが容易である。また、最表面が13族元素の酸化物を含むため、画像形成装置内で、帯電器によって発生するオゾンや窒素酸化物等による酸化雰囲気に対して、感光体表面自体が酸化され難いため、酸化による特定の感光体の劣化が防止される。加えて、最表面の放電生成物の付着も抑制するため、画像欠陥の発生も抑制される。また、上述したように機械的耐久性に優れることから、これらの特性を長期に渡って維持することも容易である。なお、最表面は13族元素の酸化物のみから構成されることがより望ましい。
なお、「表面層の少なくとも最表面」とは、表面からの深さが少なくとも数nmの範囲内(具体的には、表面から1nm以上50nm以下程度の範囲)の層を意味し、はXPS(X線光電子分光法)により固体表面を測定した際の、深さ方向の測定範囲に相当する部分の層を意味する。なお、13族元素と酸素と主たる構成元素として含む層は、表面層の表面から深さ方向に0.5nm以上の厚みを有していることが望ましく、10nm以上の厚みを有していることが更に望ましい。
【0015】
このように、特定の感光体は、表面の機械的耐久性や耐酸化性に優れ、放電生成物の付着に起因する画像欠陥も抑制されると共に感度にも優れ、さらに、これらの特性を経時的に高いレベルで維持することが容易なものである。
【0016】
一方で、特定の感光体と、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤と、を採用した画像形成装置により画像を形成すると、画像乱れ(画像ボケ)が発生することがある。特定の感光体は、上記のように機械的耐久性が優れるものであるが、「もろい」という性質を有すると考えられることから、現像の際、特定の感光体に移行するキャリアが、例えば、感光体とこれに接触する部材の間に介在したとき、当該間の圧力によって当該特定の感光体の表面に食い込んで凹部が形成されると考えられる。そして、この凹部に特定の感光体の帯電時に放電生成物が侵入し、画像乱れ(画像ボケ)を発生させていると推測される。
この現象は、高湿環境下(例えば80%RH)で連続して画像を出力(例えば100000枚以上)したときに、発生し易い。また、この現象は、感光体とする表面がもろく、表面層が薄い場合に、発生し易い。
【0017】
そこで、本実施形態に係る画像形成装置では、現像剤として、上記特定のキャリアを採用することで、特定のキャリアが上記破壊強度を有することから、例えば、感光体とこれに接触する部材の間に介在したとき、当該間の圧力によって当該間の圧力によって当該特定の感光体の表面に食い込む前に、当該キャリアが破壊され易くなると考えられる。
このため、本実施形態に係る画像形成装置では、キャリアにより特定の感光体の表面に凹部が形成され難くなることから、画像乱れ(画像ボケ)が抑制される。
【0018】
また、本実施形態に係る画像形成装置では、上記理由から、感光体に接触する部材として、接触帯電方式の帯電手段(特に、表面硬度がアスカーC硬度で30以上、望ましくは60以上の帯電手段)を備えた形態、中間転写体(特に、表面硬度がアスカーC硬度で40以上、望ましくは60以上の中間転写体)を備えた形態(即ち、転写手段として、感光体に形成されたトナー像が転写される中間転写体と、感光体に形成されたトナー像を中間転写体に転写する一次転写手段と、中間転写体に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写手段と、を備えた形態)であっても、キャリアにより特定の感光体の表面に凹部が形成され難くなることから、画像乱れ(画像ボケ)が抑制される。
【0019】
なお、アスカーC硬度とは、日本ゴム協会標準規格SRIS 0101に準拠し、アスカーC型硬度計を用いて測定した硬さをいい、アスカーC硬度の測定は、3mm厚の測定シート表面にアスカーC型硬度計(高分子計器社製)の測定針を押圧し、1000g荷重の条件で行った値である。
【0020】
以下、本実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図6は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【0021】
本実施形態に係る画像形成装置101は、図6に示すように、例えば、矢印aで示すように、時計回り方向に回転する電子写真感光体10と、電子写真感光体10の上方に、電子写真感光体10に相対して設けられ、電子写真感光体10の表面を帯電させる帯電装置20(帯電手段の一例)と、帯電装置20により帯電した電子写真感光体10の表面に露光して、静電潜像を形成する露光装置30(静電潜像形成手段の一例)と、露光装置30により形成された静電潜像に現像剤に含まれるトナーを付着させて電子写真感光体10の表面にトナー像を形成する現像装置40(現像手段の一例)と、電子写真感光体10に接触しつつ矢印bで示す方向に走行するとともに、電子写真感光体10の表面に形成されたトナー像を転写するベルト状の中間転写体50と、必要に応じて中間転写体50にトナー像を転写した後の電子写真感光体10の表面を除電して、表面に残った転写残トナーを除去し易くする除電装置60と、電子写真感光体10の表面を清掃して前記転写残トナーを除去するクリーニング装置70(クリーニング手段の一例)とを備える。
【0022】
帯電装置20、露光装置30、現像装置40、中間転写体50、除電装置60、及びクリーニング装置70は、電子写真感光体10を囲む円周上に、時計周り方向に配設されている。
【0023】
中間転写体50は、内側から、支持ローラ50A、50B、背面ローラ50C、及び駆動ローラ50Dによって張力を付与されつつ保持されるとともに、駆動ローラ50Dの回転に伴い矢印bの方向に駆動される。中間転写体50の内側における電子写真感光体10に相対する位置には、中間転写体50をトナーの帯電極性とは異なる極性に帯電させて中間転写体50の外側の面に電子写真感光体10上のトナーを吸着させる一次転写装置51が設けられている。中間転写体50の下方における外側には、記録紙P(記録媒体の一例)をトナーの帯電極性とは異なる極性に帯電させて、中間転写体50に形成されたトナー像を記録紙P上に転写する二次転写装置52が背面ローラ50Cに対向して設けられている。なお、これら、電子写真感光体10に形成されたトナー像を記録紙Pへ転写するための部材が転写手段の一例に相当する。
【0024】
中間転写体50の下方には、さらに、二次転写装置52に記録紙Pを供給する記録紙供給装置53と、二次転写装置52においてトナー像が形成された記録紙Pを搬送しつつ、前記トナー像を定着させる定着装置80とが設けられている。
【0025】
記録紙供給装置53は、1対の搬送ローラ53Aと、搬送ローラ53Aで搬送される記録紙Pを二次転写装置52に向かって誘導する誘導スロープ53Bと、を備える。一方、定着装置80は、二次転写装置52によってトナー像が転写された記録紙Pを加熱・押圧することにより、前記トナー像の定着を行う1対の熱ローラである定着ローラ81と、定着ローラ81に向かって記録紙Pを搬送する搬送コンベア82とを有する。
【0026】
記録紙Pは、記録紙供給装置53と二次転写装置52と定着装置80とにより、矢印cで示す方向に搬送される。
【0027】
中間転写体50には、さらに、二次転写装置52において記録紙Pにトナー像を転写した後に中間転写体50に残ったトナーを除去するクリーニングブレードを有する中間転写体クリーニング装置54が設けられている。
【0028】
以下、本実施形態に係る画像形成装置101における主な構成部材の詳細について説明する。
【0029】
(電子写真感光体)
電子写真感光体10は、導電性基体と、感光層と、表面層とを含み、前記導電性基体上に前記感光層と前記表面層とがこの順に積層され、表面層の少なくとも最表面が、酸素と、13族元素とを含み、最表面における酸素の含有量が15原子%を超えるものである。
【0030】
電子写真感光体10は、表面層全体が、酸素と13族元素とのみからなるものであってもよいが、表面層にはこの他にも窒素や水素等の他の元素が必要に応じて含まれていてもよい。この第3の元素を用いることにより、表面層の組成・構造・諸物性がより容易且つ柔軟に制御されるため、上述した効果をより高水準で達成することが容易になる。
特に、第3の元素としては、表面層に窒素が含まれていることが望ましい。この場合、13族元素と窒素との結合により、硬度と透明性とを得られ、機械的耐久性が得られる。さらに、後述するように、表面層中の構造欠陥が抑制される点から表面層には水素が含まれていることも望ましい。
【0031】
また、表面層厚み方向の組成は、傾斜構造を持つものであっても2以上の多層構成からなるものであってもよい。
さらに、表面層厚み方向における酸素の濃度分布は、均一でも不均一でもよいが、感光層側に向かって減少(すなわち、電子写真感光体10の表面側に向かって増加)していることが望ましい。更に、電子写真感光体10の表面側では、酸素と、13族元素とからなり、電子写真感光体10の感光層側では、酸素以外の他の元素と、13族元素とからなる(すなわち、酸素を含まない)ことが望ましい。
この酸素濃度分布を有することにより、機械的耐久性、耐酸化性、放電生成物の付着に起因する画像欠陥及び感度をより高水準で両立させられる上に、これらの特性をより長期に渡って維持することが容易であり、特に酸素以外の他の元素が窒素である場合に、この効果がより一層発揮される。なお、表面層厚み方向の酸素濃度の分布プロファイルは特に限定されず、例えば、直線状、曲線状、階段状のいずれでもよい。
【0032】
なお、表面層に窒素が含まれる場合、その含有量は、60原子%以下が望ましく、50原子%以下がより望ましい。窒素の含有量が60原子%を超える場合には、表面層の耐水性が不充分となるため実用性に欠ける場合がある。また、表面層厚み方向における窒素の濃度分布は、均一でも不均一でもよいが、最表面には含まれないことが望ましい。
【0033】
表面層に含まれる13族元素としては、具体的には、B,Al,Ga,Inから選ばれる少なくとも一つ以上の元素が挙げられる。これらの原子の表面層中の含有量は、電子写真感光体10表面の露光に用いる光を吸収しないように選択するおとがよいが、一般的には以下の範囲内であることが望ましい。
すなわち、B,Al及びGa原子を用いる場合のこれら原子の表面層中の含有量は、0.1原子%以上50原子%以下の範囲内であることが望ましく、5原子%以上40原子%以下の範囲内であることがより望ましい。B,AlやGa原子の含有量が、0.1原子%未満の場合は、表面層の形成自体が困難となる場合がある。また、含有量が、50原子%を超える場合は、表面層の透明性が低下し、感光層に入射する光量が少なくなり、電子写真感光体10の感度の低下を招く場合がある。
13族元素としてIn原子を用いる場合の含有量は、0.1原子%以上50原子%以下が望ましく、5原子%以上40原子%以下がより望ましい。これらの範囲を外れた場合は、上述と同様の問題が発生する場合がある。
また、酸素の含有量は、15原子%を超えることが望ましく、20原子%以上60原子%以下が望ましく、25原子%以上50原子%以下がより望ましい。酸素の含有量が15原子%未満の場合には、電子写真感光体10表面の耐酸化性が不充分となり、画像形成装置内で使用した場合に、電子写真感光体10の特性が劣化したり、機械的特性が確保できない場合がある。
【0034】
なお、上述した各元素のうち、窒素を除く元素の含有量、特に13族元素及び酸素の含有量については、表面層の少なくとも最表面で満たされていることが望ましく、また、表面層の少なくとも最表面における酸素の含有量は15原子%を超えることが必要である。15原子%未満の場合には、電子写真感光体10表面の耐湿性、耐水性、耐酸化性が不充分となり、画像形成装置内で使用した場合に、電子写真感光体10の特性の劣化が避けられず、機械的特性も確保できなくなる。
表面層の最表面における、13族元素や酸素等の元素の含有量は、XPS(X線光電子分光法)により求める。
例えば、XPSの測定装置として日本電子社製JPS9010MXを用い、X線ソースにはMgKα線を用い、10kV,20mAで照射することにより測定する。この場合、光電子の測定は1eVのステップで行い、元素の含有量は、Ga元素に対しては3d5/2、Oは1s,Nは1sスペクトルを測定し、スペトクルの面積強度と感度因子により求める。なお、測定前にArイオンエッチングを500Vで10s程度行う。
また、表面層全体中における各元素の含有量については二次電子質量分析法やラザフォードバックスキャタリング法などを用いる。
【0035】
表面層は、微結晶、多結晶、あるいは、非晶質のいずれであってもよいが、電子写真感光体10表面の平滑性を向上させる点からは非晶質であることが特に望ましい。なお、結晶性/非晶質性は、RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像の点や線の有無により判別する。
また、詳細は後述するが、表面層は、気相成膜法を利用して感光層上に積層形成されるため、成膜条件等によっては、その断面が柱状構造となる場合もある。しかしながら、電子写真感光体10表面の滑り性の観点からは、この柱状構造を有さないことが望ましい。
【0036】
表面層中には、導電型の制御のために種々のドーパントを添加していもよい。導電性をn型に制御する場合には、例えば、Si,Ge,Snから選ばれる一つ以上の元素を用いられ、p型に制御する場合には、例えば、Be,Mg,Ca,Zn,Srから選ばれる一つ以上の元素を用いられる。
【0037】
表面層は、微結晶、多結晶あるいは非晶質のいずれの場合においても、その内部構造に結合欠陥や、転位欠陥、結晶粒界の欠陥などが多く含まれる傾向にある。このため、これらの欠陥の不活性化のために表面層中には、水素及び/又はハロゲン元素が含まれていてもよい。表面層中の水素やハロゲン元素は結晶内の結合欠陥や結晶粒界の欠陥などに取り込まれて、反応活性点を消失させ、電気的な補償を行う働きを有する。このため、電子写真感光体10に光が照射された際に、表面層中で光が吸収されてキャリアが発生したり、感光層で発生したキャリアの拡散や移動に関係するトラップが抑制されるため、電子写真感光体10表面の帯電特性がより安定化される
【0038】
なお、水素を用いる場合、表面層に含まれる水素量は、表面層を構成する主たる2つの元素(13族元素、酸素)全体に対して、0.1原子%以上60原子%以下の範囲が望ましく、1原子%以上50原子%以下の範囲であることがより望ましい。この水素量はHFS(ハイドロジェンフォワードスキャタリング)により絶対値が測定され、赤外吸収スペクトルによって推定してもよい。
【0039】
−電子写真感光体10の層構成−
次に、電子写真感光体10の層構成について説明する。
電子写真感光体10は、その層構成が導電性基体上に感光層と表面層とがこの順に積層されたものであれば特に限定されず、これら3つの層の間に必要に応じて下引層等の中間層を設けてもよい。また、感光層は、2層以上であってもよく、更に、機能分離型であってもよい。さらに、電子写真感光体10は、感光層がシリコン原子を含むいわゆるアモルファスシリコン感光体であってもよく、感光層が有機感光材料等の有機高分子を含むいわゆる有機感光体であってもよい。
【0040】
以下、電子写真感光体10の層構成の具体例について、図面を用いてより詳細に説明する。
【0041】
図1は、電子写真感光体の層構成の一例を示す模式断面図であり、図1中、1は導電性基体、2は感光層、2Aは電荷発生層、2Bは電荷輸送層、3は表面層を表す。
図1に示す電子写真感光体10は、導電性基体1上に、電荷発生層2A、電荷輸送層2B、表面層3がこの順に積層された層構成を有し、感光層2は電荷発生層2A及び電荷輸送層2Bの2層から構成される。
図2は、電子写真感光体10の層構成の他の例を示す模式断面図であり、図2中、4は下引層、5は中間層を表し、他は、図1中に示したものと同様である。
図2に示す電子写真感光体10は、導電性基体1上に、下引層4、電荷発生層2A、電荷輸送層2B、中間層5、表面層3がこの順に積層された層構成を有する。
図3は、電子写真感光体10の層構成の他の例を示す模式断面図であり、図3中、6は感光層を表し、他は、図1、図2中に示したものと同様である。
図3に示す電子写真感光体10は、導電性基体1上に、下引層4、感光層6、表面層3がこの順に積層された層構成を有し、感光層6は、図1や図2に示す電荷発生層2A及び電荷輸送層2Bの機能が一体となった層である。
なお、感光層2,6は、有機高分子から形成されたものでもよいし、無機材料から形成されたものでもよいし、それらが組み合わされたものでもよい。
【0042】
−有機感光体−
次に、電子写真感光体10が有機感光体である場合の望ましい構成について、その概要を説明する。
感光層を形成する有機高分子化合物は熱可塑性であっても熱硬化性のものであっても、また2種類の分子を反応させて形成するものでもよい。また、感光層と表面層との間に、硬度や膨張係数、弾力性の調整、密着性の向上などの観点から中間層を設けてもよい。中間層は、表面層の物性及び感光層(機能分離型の場合は電荷輸送層)の物性の両者に対して、中間的な特性を示すものが好適である。また、中間層を設ける場合には、中間層は、電荷をトラップする層として機能してもよい。
【0043】
有機感光体の場合には、感光層は、図1,2に示すように電荷発生層と電荷輸送層に分かれた機能分離型でもよいし、図3に示すように機能一体型であってもよい。機能分離型の場合には電子写真感光体10の表面側に電荷発生層を設けたものでもよいし、表面側に電荷輸送層を設けたものでもよい。
【0044】
感光層上に、後述する方法により表面層を形成する場合、熱以外の短波長電磁波の照射により感光層が分解したりすることを防ぐため、感光層表面には、表面層を形成する前に紫外線などの短波長光吸収層を予め設けてもよい。また、短波長光が感光層に照射されないように、表面層を形成する初期の段階で、バンドギャップの小さい層を最初に形成してもよい。この感光層側に設けられるバンドギャップの小さい層の組成としては、例えば、Inを含んだGaXIn(1-X)N(0≦X≦0.99)が好適である。
【0045】
また、紫外線吸収剤を含む層(例えば、高分子樹脂に分散させた層を塗布等を利用して形成される層を感光層表面に設けてもよい。
【0046】
−アモルファスシリコン感光体−
次に、電子写真感光体10がアモルファスシリコン感光体である場合の望ましい構成について、その概要を説明する。
アモルファスシリコン感光体は、正帯電用でも負帯電用の感光体でもよい。導電性基板の上に電荷注入阻止や接着性向上のための下引き層を形成し、ついで感光層と表面層を設けたものが使用され得る。表面層は感光層の表面に中間層を設け、さらにその表面に表面層を設けてもよいし、感光層の表面に直に表面層を設けてもよい。
また、感光層の最上層(表面層側の層)は、p型アモルファスシリコンであってもよくn型アモルファスシリコンであってもよく、感光層と表面層との間に中間層(電荷注入阻止層)として、例えば、SiXO(1−X):H,SiXN(1−X):H,SiXC(1−X):H,アモルファスカーボン層が形成されていてもよい。
【0047】
−表面層及びその形成方法−
次に、上述した組成等以外の表面層の望ましい特性や、表面層の形成方法についてより詳細に説明する。
表面層は、既述したように非晶性あるいは結晶性のいずれでもよいが、感光層(あるいは中間層)との密着性を高めかつ電子写真感光体10表面の滑りを良くするためには、表面層の下層(感光層側)が微結晶性であり、上層(電子写真感光体10表面側)が非晶質性であることが望ましい。
【0048】
表面層は、感光層から拡散・移動してきた電荷を、表面層の表面にトラップしても、また、表面層の内部にトラップする特性を有するものでもよい。また、この電荷を積極的に注入させるものでもよい。表面層の内部に注入する場合には、感光層と表面層との界面に、電荷がトラップする構成が必要である。例えば、感光層が図1、2に示すように機能分離型である場合、負帯電で表面層が電子を注入する場合には電荷輸送層の表面層側の面が電荷トラップの機能を果たしてもよいし、電荷の注入阻止とトラップのために、電荷輸送層と表面層との間に中間層を設けてもよい。正帯電性の場合にも同様にしてもよい。
【0049】
また、表面層は電荷注入阻止層、あるいは、電荷注入層としての機能を兼ねてもよい。この場合、既述したように表面層の導電型をn型やp型に調整することによって、表面層を電荷注入阻止層、あるいは、電荷注入層としても機能させてもよい。
表面層が電荷注入層としても機能する場合には、中間層や感光層の表面(表面層側の面)で電荷がトラップされる。負帯電の場合にn型の表面層は電荷注入層として機能し、p型の表面層は電荷注入阻止層として機能する。正帯電の場合にはn型の表面層は電荷注入阻止層として機能し、p型の表面層は電荷注入層として機能する。
【0050】
次に、表面層の形成方法について説明する。表面層の形成に際しては、少なくとも最表面が、酸素と13族元素とを含むように形成することができれば特に限定されず、感光層上に直接、表面層全体が、酸素と13族元素とを含むように形成してもよい。またここで、感光層上に組成の異なる2つ以上の層を積層して表面層を形成する場合には、少なくとも最上層の形成に際して、酸素と13族元素とを含む層が少なくとも形成される。例えば、感光層上に、13族元素と窒素とを含む層と、13族元素と酸素とを含む層とをこの順に積層形成してもよい。
【0051】
また、一旦、13族元素と、酸素以外の他の元素とを主成分に含む膜を感光層上に形成した後、この膜を表面から酸化処理して、表面層を形成してもよい。この場合、特に13族元素と、窒素とを主成分として含む膜を感光層上に形成し、この膜を酸化処理することによって、少なくとも最表面に酸素と13族元素とを含む表面層を形成してもよい。
この場合の酸化処理方法としては、大気中に放置することによる自然酸化や、オゾン等を利用した強制酸化のいずれの方法を利用してもよいが、電子写真感光体10として画像形成装置に組み込んで使用する前に酸化処理を実施しておくことがよい。なお、酸化処理は、意図的且つ制御された条件で実施すること電子写真感光体10表面面内の表面層の特性バラツキや、電子写真感光体10間の品質バラツキを抑制する上で特に望ましい。
【0052】
例えば、自然酸化を利用する場合、湿度の高い環境下の方が、酸化がより進みやすいので自然酸化を行う場合の放置環境は、湿度が40%以上であることが望ましく、50%以上であることがより望ましく、70%以上であることが更に望ましい。
また、自然酸化の時間が短い場合には、最表面側の層が酸化されないまま、電子写真感光体10として使用されてしまうと、本来の性能が発揮できないまま、表面層の顕著な摩滅等が発生してしまい、実用に耐えない場合がある。この観点からは、自然酸化処理を行う時間は、3時間以上であることが望ましく、10時間以上であることが望ましく、24時間以上であることが更に望ましい。
【0053】
また、酸化処理方法としては自然酸化以外にも、例えば、オゾンや、酸素雰囲気中でのプラズマを利用した強制酸化を利用してもよい。この酸化処理は、自然酸化に比べて短時間で処理が行える上に、酸化条件を選択することにより膜厚の深さ方向に対して、自然酸化よりも深い位置(より感光層側の位置)まで強制的な酸化を行うことも容易である。また、酸化処理が短時間で済むため、13族元素と窒素とを主成分として含む膜が、大気中の水分と反応して変質しやすい場合にも有用である。
【0054】
次に、表面層の形成方法についてより具体的に説明する。表面層の形成に際しては、プラズマCVD法、有機金属気相成長法、分子線エピタキシー法等の公知の気相成膜方法を利用してもよい。以下、表面層の形成に用いる装置の図面を示しつつ具体例を挙げて説明する。
図4は、電子写真感光体10の表面層の形成に用いる成膜装置の一例を示す概略模式図であり、図4(A)は、成膜装置を側面から見た場合の模式断面図を表し、図4(B)は、図4(A)に示す成膜装置のA1−A2間における模式断面図を表す。図4中、210は成膜室、211は排気口、212は基体回転部、213は基体ホルダー、214は基体、215はガス導入部、216はシャワーノズル、217はプラズマ拡散部、218は高周波電力供給部、219は平板電極、220はガス導入管、221は高周波放電部である。
【0055】
図4に示す成膜装置において、成膜室210の一端には、不図示の真空排気装置に接続された排気口211が設けられており、成膜室210の排気口211が設けられた側と反対側に、高周波電力供給部218、平板電極219及び高周波放電部221からなるプラズマ発生装置が設けられている。
このプラズマ発生装置は、高周波放電部221と、高周波放電部221内に配置され、放電面が排気口211側に設けられた平板電極219と、高周波放電部221外に配置され、平板電極219の放電面と反対側の面に接続された高周波電力供給部218とから構成されたものである。なお、高周波放電部221には、高周波放電部221内にガスを供給するためのガス導入管220が接続されており、このガス導入管220のもう一方の端は、不図示の第1のガス供給源に接続されている。
【0056】
なお、図4に示す成膜装置に設けられたプラズマ発生装置の代わりに、図5に示すプラズマ発生装置を用いてもよい。図5は、図4に示す成膜装置において利用するプラズマ発生装置の他の例を示す概略模式図であり、プラズマ発生装置の側面図である。図5中、222が高周波コイル、223が石英管を表し、220は、図4中に示すものと同様である。このプラズマ発生装置は、石英管223と、石英管223の外周面沿って設けられた高周波コイル222とからなり、石英管223の一方の端は成膜室210(図5中、不図示)と接続されている。また、石英管223のもう一方の端には、石英管223内にガスを導入するためのガス導入管220が接続されている。
【0057】
平板電極219の放電面側には、放電面に沿った棒状のシャワーノズル216が接続されており、シャワーノズル216の一端は、ガス導入管215と接続されており、このガス導入管215は成膜室210外に設けられた不図示の第2のガス供給源と接続されている。
また、成膜室210内には、基体回転部212が設けられており、円筒状の基体214が、シャワーノズル216の長手方向と基体214の軸方向とが互いに沿って対面するように基体ホルダー213を介して基体回転部212に取りつけられるようになっている。成膜に際しては、基体回転部212が回転することによって、基体214が周方向に回転させる。なお、基体214としては、予め感光層まで積層された電子写真感光体10、あるいは、感光層上に中間層までが積層された電子写真感光体10が用いられる。
【0058】
表面層の形成は、例えば以下のように実施する。まず、N2をガス導入管220から高周波放電部221内に導入すると共に、高周波電力供給部218から平板電極219に、13.56MHzのラジオ波を供給する。この際、平板電極219の放電面側から排気口211側へと放射状に広がるようにプラズマ拡散部217が形成される。
次に、水素をキャリアガスとして用いて水素希釈したトリメチルガリウムガスをガス導入管215、シャワーノズル216を介して成膜室210に導入することによって、基体214表面に水素とチッ素とガリウムとを含む膜を成膜する。
【0059】
ここで、膜中に酸素を導入するためには、成膜中に酸素原子を取り込ませる方法、あるいは、成膜後に酸素による酸化する方法を利用する。
前者の場合には、窒素ガスに酸素ガスやN2OやH2Oなどの酸素を含有するガスを混合することよって酸素と窒素と13族元素とを含む表面層を成膜する。またHeやArなどの希ガスに酸素ガスやN2OやH2Oなどの酸素を含有するガスを混合してプラズマを発生し、トリメチルガリウムガスなどの有機金属ガスと反応させ、酸素とガリウムとを含む表面層を形成してもよい。
一方、後者の場合には、真空中で行ってもよいし、大気中で行ってもよい。真空中で行う場合には、例えば希ガスなどで希釈した酸素ガスを用いて高周波放電を行い膜中に酸素を取り込ませる。さらに酸素を膜中に取り込ませる他の方法としては、熱拡散法、イオン注入法等の公知の方法が採用される。あるいは、水素を含みチッ素とガリウムからなる膜が表面に形成された基体214を、単に大気中の空気に曝したり、大気圧下で酸素雰囲気に晒すことによっても酸化を行ってもよい。
【0060】
成膜時の表面層の形成温度は特に限定されないが、アモルファスシリコン感光体を作製する場合には50℃から350℃で形成することが望ましく、有機感光体を作製する場合には、20℃から100℃で形成することが望ましい。
有機感光体を作製する場合において、表面層の成膜時の基体温度は、150℃以下が望ましく、100℃以下がより望ましい。基体温度が150℃以下であっても、プラズマの影響で150℃より高くなる場合には感光層が熱で損傷を受ける場合があるため、この影響を考慮して基体温度を設定することが望ましい。
基体温度は図示していない方法で制御してもよいし、放電時の自然な温度の上昇に任せてもよい。基体214を加熱する場合にはヒータを基体214の外側や内側に設置してもよい。基体214を冷却する場合には基体214の内側に冷却用の気体又は液体を循環させてもよい。
放電による基体温度の上昇を避けたい場合には、基体214表面に当たる高エネルギーの気体流を調節することが効果的である。この場合、ガス流量や放電出力、圧力などの条件を所要温度となるように調整する。
【0061】
また、表面層中に水素を添加する場合には、ガス導入管215,220から、水素ガスを導入してもよい。この場合、窒素やトリメチルガリウムガス等の表面層を構成する必須の構成成分を含むガスと共に混合して導入してもよい。
13族元素を含むガスとしてはトリメチルガリウムガスの代わりにインジウム、アルミニウムを含む有機金属化合物やジボランのような水素化物を用いてもよく、これらを2種類以上混合してもよい。
例えば、表面層の形成の初期において、トリメチルインジウムをガス導入管215、シャワーノズル216を介して成膜室210内に導入することにより、基体214上にチッ素とインジウムとを含む膜を成膜すれば、この膜が、継続して成膜する場合に発生し、感光層を劣化させる紫外線が吸収される。このため、成膜時の紫外線の発生による感光層へのダメージが抑制される。
【0062】
また、表面層には、導電型を制御するためにドーパントを添加してもよい。 成膜時におけるドーパントのドーピングの方法としてはn型用としてはSiH3,SnH4を、p型用としては、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム、ジメチルカルシウム、ジメチルストロンチウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、などをガス状態で使用する。また、ドーパント元素を表面層中にドーピングするには、熱拡散法、イオン注入法等の公知の方法を採用してもよい。
具体的には、少なくとも一つ以上のドーパント元素を含むガスをガス導入管215、シャワーノズル216を介して成膜室210内に導入することによってn型、p型等任意の導電型の表面層が得られる。
【0063】
なお、13族原子の供給材料として水素原子を含む有機金属化合物を用い、13族原子と水素原子と窒素原子と主に含む膜を形成する場合、プラズマにより活性化された活性水素や活性窒素は、以下に説明するようにして得られる。
例えば、図4に示す成膜装置において、水素ガスと窒素ガスと別々の位置から成膜装置内に導入する場合には、水素ガスの活性化状態と、窒素ガスの活性化状態とを各々独立して制御するように、複数のプラズマ発生装置を設けてもよい。また、これに対して、水素及び窒素の供給材料としてNH3のようなチッ素原子と水素原子とを同時に含むガスを用いたり、窒素ガスと水素ガスとを混合したガスを用いて、これをプラズマにより活性化してもよい。
さらに、プラズマにより活性化される水素の水素源としては、成膜装置内に一旦導入された水素原子を含む有機金属化合物を活性化して、遊離生成した水素を利用してもよい。
【0064】
上述した方法により、活性化された水素、窒素、及び、13族原子が基体上に存在し、さらに、活性化された水素が、有機金属化合物を構成するメチル基やエチル基等の炭化水素基の水素を分子として脱離させる効果を有する。それゆえ、基体表面には、水素、窒素及び13族元素が三次元的な結合を構成する硬質膜からなる表面層が形成される。
この硬質膜は、シリコンカーバイトに含まれるsp2結合性の炭素原子とは異なり、タイヤモンドを構成する炭素原子のように、GaとNとがsp3結合を形成するため透明である。また、この硬質膜を、自然酸化や、成膜後に酸素やオゾンなどの酸化処理によって酸素を含んだ膜となり、この膜は透明且つ硬質であり、膜の表面は撥水性やすべり性が高く低摩擦である。
【0065】
図4に示す成膜装置のプラズマ発生手段は、高周波発振装置を用いたものであるが、これに限定されるものではなく、例えば、マイクロ波発振装置を用いたり、エレクトロサイクロトロン共鳴方式やヘリコンプラズマ方式の装置を用いてもよい。また、高周波発振装置の場合は、誘導型でも容量型でもよい。
さらに、これらの装置を2種類以上組み合わせて用いてもよく、あるいは、同種の装置を2つ以上用いてもよい。
【0066】
2種類以上の異なるプラズマ発生装置(プラズマ発生手段)を用いる場合には、同じ圧力で同時に放電が生起することがよい。また、放電する領域と、成膜する領域(基体が設置された部分)とに圧力差を設けてもよい。これらの装置は、成膜装置内をガスが導入される部分から排出される部分へと形成されるガス流に対して直列に配置してもよいし、いずれの装置も基体の成膜面に対向するように配置してもよい。
例えば、2種類のプラズマ発生手段をガス流に対して直列に設置する場合、図4に示す成膜装置を例に上げれば、シャワーノズル216を電極として成膜室210内に放電を起こさせる第2のプラズマ発生装置として利用する。この場合、ガス導入管215を介して、シャワーノズル216に高周波電圧を印加して、シャワーノズル216を電極として成膜室210内に放電を起こさせる。
あるいは、シャワーノズル216を電極として利用する代わりに、成膜室210内の基体214とプラズマ拡散部217との間に円筒状の電極を設けて、この円筒状電極を利用して、成膜室210内に放電を起こさせてもよい。
また、異なる2種類のプラズマ発生装置を同一の圧力下で利用する場合、例えば、マイクロ波発振装置と高周波発振装置とを用いる場合、励起種の励起エネルギーを大きく変えることができ、膜質の制御に有効である。また、放電は大気圧で行ってもよい。
【0067】
なお、表面層の形成に際しては、上述した方法以外にも、通常の有機金属気相成長法や分子線エピタキシー法を使用することができるが、これらの方法による成膜に際しても、活性窒素及び/又は活性水素を使用することは有効である。この場合、チッ素原料としてはN2,NH3,NF3,N24、メチルヒドラジンなどの気体、液体を気化したり、又は、キャリアガスでバブリングしたものが利用される。
【0068】
表面層の厚みは、例えば、0.1μm以上がよく、望ましくは0.1μm以上2.0μm以下、より望ましくは0.5μm以上2.0μm以下である。
【0069】
−導電性基体及び感光層−
次に、電子写真感光体10を構成する導電性基体及び感光層の詳細や、必要に応じて設けられる下引層や中間層の詳細について、電子写真感光体10が機能分離型の感光層を有する有機感光体用である場合について説明する。
【0070】
−導電性基体−
導電性基体としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケル等の金属ドラム;シート、紙、プラスチック、ガラス等の基材上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着したもの;酸化インジウム、酸化スズ等の導電性金属化合物を上記基材に蒸着したもの;金属箔を上記基材にラミネートしたもの;カーボンブラック、酸化インジウム、酸化スズ−酸化アンチモン粉、金属粉、ヨウ化銅等を結着樹脂に分散し、上記基材に塗布することによって導電処理したもの等が挙げられる。また、導電性基体の形状は、ドラム状、シート状、プレート状のいずれであってもよい。
【0071】
また、導電性基体として金属製パイプ基体を用いる場合、当該金属製パイプ基体の表面は素管のままのものであってもよいが、予め表面処理により基体表面を粗面化してもよい。表面処理の方法としては、鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング等が挙げられる。
【0072】
特に、感光層との密着性向上や成膜性向上の点で、以下のようにアルミニウム基体の表面に陽極酸化処理を施したものを導電性基体として用いることが望ましい。
【0073】
以下、表面に陽極酸化処理を施した導電性基体の製造方法について説明する。まず、基体として純アルミ系あるいはアルミニウム合金(例えば、JIS1000番台、3000番台、6000番台のアルミニウムあるいはアルミニウム合金)を用意する。次に陽極酸化処理を行う。陽極酸化処理は、クロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸などの酸性浴中において行うが、硫酸浴による処理がよく用いられる。陽極酸化処理は、例えば、硫酸濃度:10質量%以上20質量%以下、浴温:5℃以上25℃以下、電流密度:1A/dm2以上4A/dm2以下、電解電圧:5V以上30V以下、処理時間:5分以上60分以下程度の条件で行われるが、これに限定するものではない。
【0074】
このようにしてアルミニウム基体上に成膜された陽極酸化皮膜は、多孔質であり、又絶縁性が高く、表面が非常に不安定であるため、皮膜形成後にその物性値が経時的に変化しやすくなっている。この物性値の変化を防止するため、陽極酸化皮膜を更に封孔処理することが行われる。封孔処理の方法には、フッ化ニッケルや酢酸ニッケルを含有する水溶液に陽極酸化皮膜を浸漬する方法、陽極酸化皮膜を沸騰水に浸漬する方法、加圧水蒸気により処理する方法などがある。これらの方法のうち、酢酸ニッケルを含有する水溶液に浸漬する方法がよく用いられる。
【0075】
このようにして封孔処理が行われた陽極酸化皮膜の表面には、封孔処理により付着した金属塩等が過剰に残留している。この金属塩等が基体の陽極酸化皮膜上に過剰に残存すると、陽極酸化皮膜上に形成する塗膜の品質に悪影響を与えるだけでなく、一般的に低抵抗成分が残ってしまう傾向にあるため、この基体を電子写真感光体10に用いて画像を形成した場合に地汚れの発生原因になる。
【0076】
そこで、封孔処理に引き続き、封孔処理により付着した金属塩等を除去するために陽極酸化皮膜の洗浄処理が行われる。洗浄処理は純水により基体の洗浄を1回行うことでも構わないが、多段階の洗浄工程により基体の洗浄を行うのが望ましい。この際、最終の洗浄工程における洗浄液としては、きれいな(脱イオンされた)洗浄液が用いられる。また、多段階の洗浄工程のうち、いずれか1工程において、ブラシ等の接触部材を用いた物理的なこすり洗浄を施すことがよりさらに望ましい。
【0077】
以上のようにして形成される導電性基体表面の陽極酸化皮膜の膜厚は、3μm以上15μm以下程度の範囲内であることが望ましい。陽極酸化皮膜上には多孔質陽極酸化膜のポーラスな形状の極表面に沿ってバリア層といわれる層が存在する。バリア層の膜厚は本発明に用いられる電子写真感光体10においては1nm以上100nm以下の範囲内であることが望ましい。以上のようにして、陽極酸化処理された導電性基体が得られる。
【0078】
このように得られた導電性基体は、陽極酸化処理により基体上に成膜された陽極酸化皮膜が高いキャリアブロッキング性を有している。そのため、この導電性基体を用いた電子写真感光体10を画像形成装置に装着して反転現像(ネガ・ポジ現像)を行う場合に発生する点欠陥(黒ポチ、地汚れ)が抑制されるとともに、接触帯電時に生じやすい接触帯電器からの電流リーク現象が抑制される。また、陽極酸化皮膜に封孔処理を施すことにより、陽極酸化皮膜の作製後における物性値の経時変化が抑制される。また、封孔処理後に導電性基体の洗浄を行うことにより、封孔処理により導電性基体表面に付着した金属塩等を除去することができ、この導電性基体を用いて作製した電子写真感光体10を備えた画像形成装置により画像を形成した場合に地汚れの発生が抑制される。
【0079】
−下引層−
次に、下引層について説明する。下引層を構成する材料としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素原子などを含有する有機金属化合物などが挙げられる。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いる。これらの中でも、ジルコニウムもしくはケイ素を含有する有機金属化合物は、残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないため望ましく使用される。また、有機金属化合物は、これを単独又は2種以上を混合したり、さらに上述の結着樹脂と混合して用いてもよい。
【0080】
また、下引層を形成するための下引層形成用塗布液に用いる溶媒としては、公知の有機溶剤が挙げられる。また、溶剤は単独あるいは2種以上を混合して用いてもよい。なお、2種以上の溶媒を混合する場合に使用する溶媒としては、混合溶媒として結着樹脂を溶かす溶媒であれば、いかなるものでも使用してよい。
【0081】
下引層の形成は、まず、下引層用塗布剤及び溶媒を分散及び混合して調合された下引層形成用塗布液を用意し、導電性基体表面に塗布することにより行う。下引層形成用塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布法、リング塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いる。
下引層を形成する場合には、その膜厚は0.1μm以上3μm以下の範囲内となるように形成することがよい。
【0082】
上記により形成された下引層の表面粗さは、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)倍(但し、nは下引層よりも外周側に設けられる層の屈折率)以上1倍以下程度の範囲内の粗度を有するように調整してもよい。表面粗さの調整は、例えば、下引層形成用塗布液中に樹脂粒子を添加することにより行われる。これにより下引層の表面粗さを調整して作製した電子写真感光体10を画像形成装置に用いた場合に、レーザ光源による干渉縞像が抑制される。
【0083】
また、下引層形成用塗布液に、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を加えてもよい。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
また、下引層形成用塗布液には、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させてもよい。
これらの添加物は、単独で用いてもよいが、複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いてもよい。
【0084】
また、下引層用塗布液の代わりに下記のような分散型下引層用塗布液を用いてもよい。 この分散型下引層用塗布液としては、アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの金属粉体や、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの導電性金属酸化物や、カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末などの導電性物質等を結着樹脂に分散したものが挙げられる。
分散型下引層用塗布剤に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが挙げられる。
【0085】
上述した方法により表面処理された金属酸化物粒子を結着樹脂に分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が用いた方法が挙げられる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
この分散型下引層用塗布液により下引層を形成する方法は、上述した下引層用塗布液を用いて下引層を形成する方法と同様に行う。
【0086】
−感光層:電荷輸送層−
次に、感光層について、電荷輸送層と電荷発生層とに分けてこの順に以下に説明する。
電荷輸送層は、電荷輸送材料、結着樹脂、及び有機溶剤を含む溶液を塗布することにより形成される。
【0087】
電荷輸送層に用いられる電荷輸送材料としては、下記に示すものが例示される。即ち2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリンなどのピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(P−メチル)フェニルアミン、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミンなどの芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジンなどの1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾン、1−ピレンジフェニルヒドラゾン、9−エチル−3−[(2メチル−1−インドリニルイミノ)メチル]カルバゾール、4−(2−メチル−1−インドリニルイミノメチル)トリフェニルアミン、9−メチル−3−カルバゾールジフェニルヒドラゾン、1,1−ジ−(4,4’−メトキシフェニル)アクリルアルデヒドジフェニルヒドラゾン、β,β−ビス(メトキシフェニル)ビニルジフェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリンなどのキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフランなどのベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体などの正孔輸送物質が用いられる。あるいは、上記化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、単独又は2種以上を組み合せて使用する。
【0088】
電荷輸送層に用いられる結着樹脂には任意のものを用いるが、結着樹脂は、特に電荷輸送材料と相溶性を有し適当な強度を有するものであることが望ましい。
【0089】
この結着樹脂の例として、ビスフェノールAやビスフェノールZ,ビスフェノールC,ビスフェノールTPなどからなる各種のポリカーボネート樹脂やその共重合体、ポリアリレート樹脂やその共重合体、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノールーホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、アチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独あるいは2種以上の混合物として使用する。
【0090】
電荷輸送層に用いられる結着樹脂の分子量は、感光層の膜厚や溶剤などの成膜条件によって選択されるが、通常は粘度平均分子量で3000以上30万以下の範囲内が望ましく、2万以上20万以下の範囲内がより望ましい。
【0091】
電荷輸送層及び/又は後述する電荷発生層は、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光、熱による電子写真感光体の劣化を抑制する目的で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤などの添加剤を含んでもよい。
【0092】
電荷輸送層は、上記に示した電荷輸送材料及び結着樹脂を溶媒に溶解させた溶液を塗布し、乾燥させることによって形成する。
電荷輸送層形成用塗布液には、塗布形成される塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを添加してもよい。
【0093】
電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1乃至1:5であることが望ましい。
電荷輸送層の膜厚は一般には5μm以上50μm以下の範囲内とすることが望ましく、10μm以上30μm以下の範囲内がより望ましい。
【0094】
電荷輸送層形成用塗布液の塗布は、電子写真感光体10の形状や用途に応じて、浸漬塗布法、リング塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラー塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法などの塗布法を用いて行う。乾燥は、室温(例えば25℃)での指触乾燥の後に加熱乾燥することが望ましい。加熱乾燥は、30℃以上200℃以下の温度域で5分以上2時間以下の範囲の時間で行うことが望ましい。
【0095】
−感光層:電荷発生層−
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料を真空蒸着法により蒸着させて形成するか、電荷発生材料、有機溶剤及び結着樹脂を含む溶液を塗布することにより形成される。
【0096】
電荷発生材料としては、非晶質セレン、結晶性セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他のセレン化合物;セレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機系光導電体;又はこれらを色素増感したもの、無金属フタロシアニン,チタニルフタロシアニン,銅フタロシアニン,錫フタロシアニン,ガリウムフタロシアニンなどの各種フタロシアニン化合物;スクエアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の各種有機顔料;又は染料が用いられる。
また、これらの有機顔料は一般に数種の結晶型を有しており、特にフタロシアニン化合物ではα型、β型などをはじめとしてさまざまな結晶型が知られているが、目的にあった感度その他の特性が得られる顔料であるならば、これらのいずれの結晶型を用いてもよい。
【0097】
なお、上述した電荷発生材料の中でも、フタロシアニン化合物が望ましい。
フタロシアニン化合物の中でも、下記(1)乃至(3)に示すようなフタロシアニンがより望ましい。すなわち、
(1)電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.6°,10.0°,25.2°,28.0°の位置に回折ピークを有する結晶型のヒドロキシガリウムフタロシアニン。
(2)電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.3°,16.5°,25.4°,28.1°の位置に回折ピークを有する結晶型のクロルガリウムフタロシアニン、
(3)電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも9.5°,24.2°,27.3°の位置に回折ピークを有する結晶型のチタニルフタロシアニン。
【0098】
なお、結晶の形状や測定方法によりこれらのピーク強度や位置が微妙にこれらの値から外れることも有るが、X線回折パターンが基本的に一致しているものであれば同じ結晶型であると判断される。
【0099】
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、以下のものが例示される。即ちビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプなどのポリカーボネート樹脂及びその共重合体、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコン−アルキド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾールなどである。
これらの結着樹脂は、単独であるいは2種以上混合して用いてもよい。
【0100】
電荷発生層は、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として少なくとも1種の電子受容性物質を含有してもよい。
【0101】
電荷発生材料を樹脂中に分散させる方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、ダイノーミル、サンドミル、コロイドミルなどの方法を用いる。
電荷発生層を形成する為の塗布液の溶媒として公知の有機溶剤が挙げられる。
また、溶媒は単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。2種類以上の溶媒を混合して用いる場合には、混合溶媒として結着樹脂を溶かす溶媒であれば使用していもよい。但し、感光層が、導電性基体側から、電荷輸送層と電荷発生層とをこの順に形成した層構成を有する場合に、浸漬塗布のように下層を溶解しやすい塗布方法を利用して電荷発生層を形成する際には、電荷輸送層等の下層を溶解しない溶媒を用いることがよい。
【0102】
電荷発生材料と結着樹脂との配合比(電荷発生材料:結着樹脂)は、質量比で、10:1乃至1:10の範囲が望ましい。
電荷発生層の厚みは、一般には0.01μm以上5μm以下の範囲内であることが望ましく0.05μm以上2.0μm以下の範囲内であることがより望ましい。
【0103】
−中間層−
中間層としては、例えば、帯電装置により電子写真感光体10表面を帯電させる際に、帯電電荷が電子写真感光体10表面から対抗電極である電子写真感光体10の導電性基体にまで注入して帯電電位が得られなくなることを抑制するためにM必要に応じて表面層と電荷発生層との間に電荷注入阻止層を形成してもよい。
電荷注入阻止層の材料としてはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、その他の有機金属化合物、ポリエステル、ポリビニルブチラールなどの汎用樹脂を用いる。電荷注入阻止層の膜厚は0.001μm以上5μm以下程度の範囲内で成膜性及びキャリアブロッキング性を考慮して設定される。
【0104】
(帯電装置)
帯電装置20としては、例えば、導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が挙げられる。また、帯電装置20としては、例えば、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も挙げられる。帯電装置20としては、接触型帯電器がよい。
【0105】
(露光装置)
露光装置30としては、例えば、電子写真感光体10表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体10の分光感度領域にあるものがよい。半導体レーザの波長としては、例えば、780nm前後に発振波長を有する近赤外がよい。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、露光装置30としては、例えばカラー画像形成のためにはマルチビーム出力するタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0106】
(現像装置)
現像装置40は、例えば、現像領域で電子写真感光体10に対向して配置されており、例えば、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を収容する現像容器41(現像装置本体)と、補給用現像剤収納容器(トナーカートリッジ)47と、を有している。現像容器41は、現像容器本体41Aとその上端を塞ぐ現像容器カバー41Bとを有している。
【0107】
現像容器本体41Aは、例えば、その内側に、現像ロール42を収容する現像ロール室42Aを有しており、現像ロール室42Aに隣接して、第1攪拌室43Aと第1攪拌室43Aに隣接する第2攪拌室44Aとを有している。また、現像ロール室42A内には、例えば、現像容器カバー41Bが現像容器本体41Aに装着された時に現像ロール42表面の現像剤の層厚を規制するための層厚規制部材45が設けられている。
【0108】
第1攪拌室43Aと第2攪拌室44Aとの間は例えば仕切り壁41Cにより仕切られており、図示しないが、第1攪拌室43A及び第2攪拌室44Aは仕切り壁41Cの長手方向(現像装置長手方向)両端部に開口部が設けられて通じており、第1攪拌室43A及び第2攪拌室44Aによって循環攪拌室(43A+44A)を構成している。
【0109】
そして、現像ロール室42Aには、電子写真感光体10と対向するように現像ロール42が配置されている。現像ロール42は、図示しないが磁性を有する磁性ロール(固定磁石)の外側にスリーブを設けたものである。第1攪拌室43Aの現像剤は磁性ロールの磁力によって現像ロール42の表面上に吸着されて、現像領域に搬送される。また、現像ロール42はそのロール軸が現像容器本体41Aに回転自由に支持されている。ここで、現像ロール42と電子写真感光体10とは、同方向に回転し、対向部において、現像ロール42の表面上に吸着された現像剤は、電子写真感光体10の進行方向とは逆方向から現像領域に搬送するようにしている。
【0110】
また、現像ロール42のスリーブには、不図示のバイアス電源が接続され、現像バイアスが印加されるようになっている(本実施形態では、現像領域に交番電界が印加されるように、直流成分(AC)に交流成分(DC)を重畳したバイアスを印加)。
【0111】
第1攪拌室43A及び第2攪拌室44Aには現像剤を攪拌しながら搬送する第1攪拌部材43(攪拌・搬送部材)及び第2攪拌部材44(攪拌・搬送部材)が配置されている。第1攪拌部材43は、現像ロール42の軸方向に伸びる第1回転軸と、回転軸の外周に螺旋状に固定された攪拌搬送羽根(突起部)とで構成されている。また、第2攪拌部材44も、同様に、第2回転軸及び攪拌搬送羽根(突起部)とで構成されている。なお、攪拌部材は現像容器本体41Aに回転自由に支持されている。そして、第1攪拌部材43及び第2攪拌部材44は、その回転によって、第1攪拌室43A及び第2攪拌室44Aの中の現像剤は互いに逆方向に搬送されるように配設されている。
【0112】
そして、第2攪拌室44Aの長手方向一端側には、補給用トナー及び補給用キャリアを含む補給用現像剤を第2攪拌室44Aへ供給するための補給搬送路46の一端が連結されており、補給搬送路46の他端には、補給用現像剤を収容している補給用現像剤収納容器47が連結されている。
【0113】
このように現像装置40は、補給用現像剤収納容器(トナーカートリッジ)47から補給搬送路46を経て補給用現像剤を現像装置40(第2攪拌室44A)へ供給する。
【0114】
ここで、現像装置40に使用される現像剤について説明する。
現像剤は、トナーとキャリアを含む二成分系現像剤が採用される。
【0115】
まず、トナーについて説明する。
トナーは、例えば、結着樹脂、着色剤、及び必要に応じて離型剤等の他の添加剤を含むトナー粒子と、必要に応じて外添剤と、を含んで構成される。但し、トナーは、上述のように、外添剤として潤滑剤成分(例えば、ステアリン酸金属塩、フッ素樹脂粒子等)を含まない、又は含んでも少量(例えばトナー粒子に対して0.1質量%以上1.0質量%以下)であることがよい。
【0116】
トナー粒子は、平均形状係数((ML/A)×(π/4)×100で表される形状係数の個数平均、ここでMLは粒子の最大長を表し、Aは粒子の投影面積を表す)が100以上150以下であることが望ましく、105以上145以下であることがより望ましく、110以上140以下であることがさらに望ましい。さらに、トナーとしては、体積平均粒子径が3μm以上12μm以下であることが望ましく、3.5μm以上10μm以下であることがより望ましく、4μm以上9μm以下であることがさらに望ましい。
【0117】
トナー粒子は、特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナー粒子が使用される。
【0118】
また上記方法で得られたトナー粒子をコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法が使用される。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が望ましく、乳化重合凝集法が特に望ましい。
【0119】
そして、トナーは、上記トナー粒子及び上記外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造される。また、トナー粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添してもよい。
【0120】
次に、キャリアについて説明する。
キャリアは、破壊強度が100MPa以上200MPa以下であり、望ましくは100MPa以上180MPa以下、より望ましくは100MPa以上150MPa以下である。破壊強度が上記範囲であると、キャリアしての機能を発揮させつつ、過度の圧力が加わると破壊され易くなる。その結果、電子写真感光体10の表面に食い込み難くなり、凹部の形成が抑制される。
【0121】
ここで、破壊強度は、島津微小圧縮試験機(MCT−Wシリーズ)で測定し、下記式から算出される値であり、キャリア10個のサンプルの平均値とする。なお、下記キャリアの直径も島津微小圧縮試験機(MCT−Wシリーズ)で測定した値を採用する。
式:St=2.8×P÷(π×d×d)
ここで、Stは破壊強度(MPa)、Pは試験力(N)、dはキャリア(粒子)の直径(mm)を示す。
【0122】
なお、上記破壊強度の調整手法としては、例えば、キャリア中の磁性粉の量を調整する手法等が挙げられる。
【0123】
キャリアとしては、上記破壊強度を満たせば、特に制限はないが、例えば、磁性粉を樹脂中に分散せしめた磁性粒子の表面に被覆樹脂層を形成してなるキャリアが挙げられる。
【0124】
磁性粉としては、従来公知のいずれのものも使用してもよいが、特に望ましくはフェライトやマグネタイト、マグヘマタイトが選ばれる。特に、強磁性の磁性粉としては、マグネタイト、マグヘマタイトが選択され、他の磁性粉として、例えば鉄粉が知られている。鉄粉の場合は比重が大きいためトナーを劣化させやすいので、フェライトやマグネタイト、マグヘマタイトの方が安定性に優れている。フェライトの例としては、一般的に下記式で表される。
【0125】
(MO)X (FeY
(式中、Mは、Cu、Zn、Fe、Mg、Mn、Ca、Li、Ti、Ni、Sn、Sr、Al、Ba、Co、Mo等から選ばれる少なくとも1種を含有する:またX、Yは質量mol比を示し、かつ条件X+Y=100を満たす)
【0126】
上記Mは、Li、Mg、Ca、Mn、Sr、Snの1種もしくは数種の組み合わせで、それら以外の成分の含有量が1質量%以下であるフェライト粒子であることが望ましい。Cu、Zn、Ni元素は添加することにより低抵抗になり易く、電荷リークが起こり易い。また、被覆樹脂し難い傾向にあり、また環境依存性も悪くなる傾向にある。さらに、重金属であり、比重が大きいためかキャリアに与えられるストレスが強くなり、ライフ性に対し悪影響を与えることがある。
【0127】
磁性粉の原料としては、Feを必須成分として用いられるフェライト芯材が好適であり、磁性粉分散型樹脂コアに含有される磁性粉としては、マグネタイト、マグヘマイトなどの強磁性酸化鉄粒子粉末、鉄以外の金属(Mn、Ni、Zn、Mg、Cu等)を1種又は2種以上含有するスピネルフェライト粒子粉末、バリウムフェライトなどのマグネットプランバイト型フェライト粒子粉末、表面に酸化被膜を有する鉄や鉄合金の粒子粉末が挙げられる。
【0128】
磁性粉として、具体的には、例えばマグネタイト、γ−酸化鉄、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Li系フェライト、Cu−Zn系フェライトなどの鉄系酸化物が挙げられる。中でも安価なマグネタイトが望ましい。
【0129】
磁性粉の粒径は、0.03μm以上0.5μm以下の範囲にすることが望ましく、0.05μm以上0.4μm以下の範囲がより望ましい。
【0130】
磁性粉(複合磁性粉)の磁化率σは、1kOeの磁場中で、VSM(バイブレーションサンプルメソッド)測定器を用いてBHトレーサー法で測定され、その磁化値σ1000は50Am/kg(emu/g)以上90Am/kg(emu/g)以下、望ましくは70Am/kg(emu/g)以上85Am/kg(emu/g)以下の範囲が適当である。
【0131】
キャリアの体積平均粒径は、10μm以上100μm以下、望ましくは20μm以上50μm以下が適当である。
【0132】
キャリアは、磁性粉(複合磁性粉)の表面に被覆された被覆樹脂層中に導電性粉末が含有されていることがよい。これにより、磁性粒子表面を被覆樹脂層により隠蔽し、キャリア表面の凹凸を小さくすることにより、摩擦エネルギーが低減されるだけでなく、また、電気抵抗特性を維持しながら、磁性粒子による被覆樹脂層のアンカー効果がより効果的に機能し、被覆樹脂層の脱離が改善される。
【0133】
キャリアにおいて、上述した複合磁性粒子上に被覆される被覆樹脂層は、帯電制御、抵抗制御の観点から導電性粉末をバインダー樹脂に分散している。該導電性粉末の材質としては、所望の形状及び動的電気抵抗を有するものであれば特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム等の微粒子の表面を導電性の金属酸化物で被覆した複合系のものや、カーボンブラック、マグネタイト、導電性の金属酸化物の単体系のものが望ましい。ここで、導電性の金属酸化物としては、アンチモン等でドープした金属酸化物(例えばアンチモンドープ型酸化スズ)や、酸素欠損型の金属酸化物(例えば酸素欠損型酸化スズ)等が挙げられる。
【0134】
導電性粉末としては、形状が針状及び球状のものが望ましく用いられが、より望ましくは針状のものである。ここでいう「針状」とは、長軸(繊維長)と短軸(繊維径)の比(長軸/短軸;以下、「アスペクト比」という。)であり、このアスペクト比は3以上であることが望ましく、より望ましくは5以上である。針状導電性粉末は、その長軸が0.05μm以上20μm以下のものが望ましい。針状無機粉の短軸は0.01μm以上1μm以下が望ましい。この範囲を外れると分散性が悪くなり、キャリアの特性が不均一になることがある。球状導電性粉末は、平均粒径が0.01μm以上1μm以下が望ましい。
【0135】
導電性粉末は、カーボンブラックであることがより望ましい。導電性粉末としてカーボンブラックを用いることにより、磁気ブラシ中のトナーが現像された時に発生する残留電荷の消滅速度が促進される。このとき、カーボンブラックの分散径は0.3μm以上1.5μm以下の範囲にするのが望ましい。導電性粉末の分散径は、0.4μm以上1.0μm以下であると、残留電荷の消滅促進実効効果が発揮されるだけでなく、logA/logBの比が一定の範囲内になり易くなるため、より望ましい。また、必要に応じて、導電性粉末を予め分散又は壊砕させてから使用してもよいが、導電性粉末の分散径が小さすぎると残留電荷消滅促進場の実行面積が小さくなり抵抗の高い絶縁樹脂層部により効果が発揮されなくなるおそれがある。
【0136】
導電性粉末の静的電気抵抗としては、1Ω・cm以上1×10Ω・cm以下が望ましい。導電性粉末の静的電気抵抗を望ましい範囲とすることで、目的とする抵抗を得やすくなる。
【0137】
導電性粉末の被覆樹脂層中の含有量は20体積%以上40体積%以下が望ましく、望ましくは30体積%以上40体積%以下である。
【0138】
キャリアにおいて、磁性粒子上に形成する被覆樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン;ポリビニル及びポリビニリデン系樹脂、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン樹脂又はその変性品;フッ素樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート、アミノ樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂;エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、複数の樹脂を混合して使用してもよい。
【0139】
被覆樹脂層の厚みは、0.1μm以上5μm以下、望ましくは0.3μm以上3μm以下の範囲が適当である。
【0140】
被覆樹脂層を磁性粒子上に形成する方法は、被覆樹脂層形成用溶液中に磁性粒子を浸漬する浸漬法、被覆樹脂層形成用溶液を磁性粒子表面に噴霧するスプレー法、磁性粒子を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆樹脂層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中で磁性粒子と被覆樹脂層形成用溶液を混合し溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0141】
被覆樹脂層形成用溶液に使用する溶剤は、前記の被覆樹脂を溶解するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類を使用する。また、導電性粉末の分散方法としては、サンドミル、ダイノミル、ホモミキサー等がある。
【0142】
キャリアの電気抵抗は測定電界が104V/cmの電界の時に1×10Ω・cm以上1×1014Ω・cm以下、望ましくは1×10Ω・cm以上1×1012Ω・cm以下の範囲が適当である。
キャリアの帯電性は15μC/g以上50μC/g以下が望ましい。
キャリアの磁気ブラシの形にして測定した時の動的電気抵抗は、10V/cmの電界の下で1×10Ω・cm以上1×10Ω・cm以下、望ましくは1×10Ω・cm以上1×10Ω・cm以下の範囲が適当である。
キャリアとトナーが混合された時の動的電気抵抗は10V/cmの電界の下で1×10Ω・cm以上1×10Ω・cm以下の範囲が適当である。
【0143】
なお、キャリアの動的電気抵抗は次のようにして求める。現像ロール(現像ロールのスリ−ブ表面の磁場が1kOe発生する。)上に30cmのキャリアをのせて磁気ブラシを形成し、面積3cmの平板電極を2.5mmの間隔で現像ロールに対向させる。120rpmの回転速度で現像ロールを回転しながら現像ロールと平板電極の間に電圧を印加して、その時に流れる電流を測定する。得られた電流−電圧特性からオームの法則の式を用いて動的電気抵抗を求める。なお、この時の印加電圧Vと電流Iとの間には一般的にln(I/V)∝V×1/2 の関係があることはよく知られている。キャリアの動的電気抵抗がかなり低い場合には、10V/cm以上の高電界では大電流が流れて測定できないことがある。そのような場合は低電界で3点以上測定し、最小2乗法により10V/cmの電界まで外挿して求める。
【0144】
また、キャリアとトナーとの混合割合は、特に制限はなく、周知の範囲で設定される。
【0145】
(転写装置)
一次転写装置51、及び二次転写装置52としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0146】
中間転写体50としては、導電剤を含んだポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外に円筒状のものが用いられる。
【0147】
(クリーニング装置)
クリーニング装置70は、筐体71と、筐体71から突出するように配設されるクリーニングブレード72を含んで構成されている。クリーニングブレード72は、電子写真感光体10の回転軸に沿った方向に延びた板状のものであって、電子写真感光体10における除電装置60によって除電される位置より電子写真感光体10の回転方向(矢印a)の上流側に、先端部が圧力を掛けつつ接触されるように設けられている。
【0148】
クリーニングブレード72は、電子写真感光体10が矢印a方向に回転することによって、一次転写装置51により記録紙Pに転写されずに電子写真感光体10上に残った未転写残留トナーを除去する。
【0149】
ここで、クリーニングブレード72の材質としては公知の材質が挙げられ、例えばウレタンゴム、シリコンゴム、フッソゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。その中でも、特にポリウレタンゴムがよい。
【0150】
次に、本実施形態に係る画像形成装置101の動作について説明する。まず、電子写真感光体10が矢印aで示される方向に沿って回転すると同時に、帯電装置20により負に帯電する。
【0151】
帯電装置20によって表面が負に帯電した電子写真感光体10は、露光装置30により露光され、表面に潜像が形成される。
【0152】
電子写真感光体10における前記潜像の形成された部分が現像装置40に近づくと、現像装置40(現像ロール42)により、前記潜像にトナーが付着し、トナー像が形成される。
【0153】
トナー像が形成された電子写真感光体10が矢印aに方向にさらに回転すると、トナー像は中間転写体50の外側の面に転写する。
【0154】
トナー像が中間転写体50に転写されたら、記録紙供給装置53により、二次転写装置52に記録紙Pが供給され、中間転写体50に転写されたトナー像が二次転写装置52により、記録紙P上に転写される。これにより、記録紙Pにトナー像が形成される。
【0155】
画像が形成された記録紙Pは、定着装置80でトナー像が定着される。
【0156】
ここで、トナー像が中間転写体50に転写された後、電子写真感光体10は、転写後、除電装置60により除電され、クリーニング装置70のクリーニングブレード72により、表面に残ったトナーが除去される。そして、クリーニング装置70において、転写残のトナーが除去された電子写真感光体10は、帯電装置20により、再び帯電せられ、露光装置30において露光されて潜像が形成される。
【0157】
なお、本実施形態に係る画像形成装置101は、例えば、図7に示すように、筐体11内に、電子写真感光体10、帯電装置20、現像装置40、除電装置60、クリーニング装置70を一体に収容させたプロセスカートリッジ101Aを備えた形態であってもよい。このプロセスカートリッジ101Aは、複数の部材を一体的に収容し、画像形成装置101に脱着させるものである。なお、図7に示す画像形成装置101では、現像装置40には、補給用現像剤収納容器47を設けない形態が示されている。
プロセスカートリッジ101Aの構成は、これに限られず、例えば、少なくとも、電子写真感光体10と現像装置40を備えてえればよく、その他、例えば、帯電装置20、露光装置30、一次転写装置51、及びクリーニング装置70から選択される少なくとも一つを備えていてもよい。
【0158】
また、本実施形態に係る画像形成装置101は、上記構成に限れず、周知の構成、例えば、電子写真感光体10に形成したトナー像を直接、記録紙Pに転写する方式を採用してもよいし、タンデム方式の画像形成装置を採用してもよい。
【実施例】
【0159】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例
に制限されるものではない。
【0160】
(電子写真感光体1の作製・評価)
まず、以下に説明する手順により、Al基体上に、下引層と電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に積層形成した有機感光体を作製した。
−下引層の形成−
ジルコニウム化合物(商品名:マツモト製薬社製オルガノチックスZC540)20質量部、シラン化合物(商品名:日本ユニカー社製A1100)2.5質量部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:積水化学社製エスレックBM−S)10質量部及びブタノール45質量部を攪拌混合して得た溶液を、外径84mmのAl製基体表面に塗布し、150℃10分間加熱乾燥することにより、膜厚1.0μmの下引層を形成した。
【0161】
−電荷発生層の形成−
次に、電荷発生材料としてクロロガリウムフタロシアニン1質量部を、ポリビニルブチラール(商品名:積水化学社製エスレックBM−S)1質量部及び酢酸n−ブチル100質量部と混合して得られた混合物をガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間分散し、電荷発生層形成用分散液を得た。
この分散液を浸漬法により下引層の上に塗布した後、100℃で10分間乾燥させ、膜厚0.15μmの電荷発生層を形成した。
【0162】
−電荷輸送層の形成−
次に、下記構造式(1)で表される化合物を2質量部、及び、下記構造式(2)で表される高分子化合物(重量平均分子量 39000)3質量部をクロロベンゼン20質量部に溶解させて電荷輸送層形成用塗布液を得た。
【0163】
【化1】

【0164】
【化2】

【0165】
この塗布液を、浸漬法により電荷発生層上に塗布し、110℃で40分間加熱して膜厚20μmの電荷輸送層を形成し、Al基体上に、下引層と電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に積層形成した有機感光体(以下、「ノンコート感光体」と称す場合がある)を得た。
【0166】
−表面層の形成−
ノンコート感光体表面への表面層の形成は、図4に示す構成を有する成膜装置を用いて行った。
まず、ノンコート感光体を、成膜装置の成膜室210内の基体ホルダー213に載せ、排気口211を介して成膜室210内を、圧力が0.1Pa程度になるまで真空排気した。次に、窒素ガスとH2ガスとを1:1の割合で混合したガスをガス導入管220から、直径50mmの平板電極219が設けられた高周波放電部221内に1000sccm(窒素ガス500sccm、水素ガス500sccm)導入し、高周波電力供給部218及びマッチング回路(図1中不図示)により、13.56MHzのラジオ波を出力100Wにセットしチューナでマッチングを取り平板電極219から放電を行った。この時の反射波は0Wであった。
次に、水素ガスをキャリアガスとしたトリメチルガリウムガスを含む混合ガスを、ガス導入管215を介してシャワーノズル216から成膜室210内のプラズマ拡散部217に、トリメチルガリウムガスの流量が0.3sccmとなるように導入した。この時、バラトロン真空計で測定した成膜室210内の反応圧力は40Paであった。
【0167】
この状態で、ノンコート感光体を5rpmの速度で回転させながら60分間成膜し、膜厚0.2μmの膜を形成した。なお、成膜に際しては、ノンコート感光体の加熱処理は行わなかった。また、成膜前に予めノンコート感光体の内周面に貼り付けておいたサーモテープの色を、成膜後に確認したところ、35℃であった。
続いて、成膜後のノンコート感光体を、通常の常温常湿環境(温度25℃、湿度50%程度)に24時間放置して、自然酸化による酸化処理を実施し、電荷輸送層表面に表面層が設けられた有機感光体を得た。
【0168】
−表面層の分析・評価−
ノンコート感光体表面への成膜に際し、同時にSi基板に成膜した膜の赤外線吸収スペクトル測定を、成膜直後の膜について実施したところ、Ga−H結合、Ga−N結合及びN−H結合に起因するピークが確認された。なお、Si基板に成膜した膜を、上記と同様に酸化処理した後の膜について測定しても、これら3つの結合に起因するピーク強度はGa−H結合が1/2に減少したが他のピークは同程度の強度で確認された。これらのことから、表面層中には、ガリウムと窒素と水素とが含まれていることがわかった。
また、Si基板上に形成された膜の表面について、上記と同様の常温常湿環境且つコンタミが付着し難い環境下で成膜から24時間放置後に、XPS(X線光電子分光法)により測定したところ、酸素が60原子%,Gaが40原子%であり、窒素は認められなかった。この結果に加えて、XPS測定による深さ方向の分解能は最表面数nm程度であることや、表面層全体が測定対象となる赤外線吸収スペクトルの結果から、少なくとも表面層の最表面は、酸素が多く、窒素が少ない状態になっており、表面層膜厚方向に対する酸素原子の濃度が、電荷輸送層側に向かって減少(窒素原子の濃度が電荷輸送層側に向かって増加)していることがわかった。
【0169】
さらに、XPS測定後のサンプルについて、HFS(ハイドロジェン・フォワード・スキャタリング)にて、膜中の水素含有量を測定したところ35原子%であり、RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像にはまったく点や線がみられず、膜は非晶質であることがわかった。
また、成膜直後のSi基板上に形成された膜は、水に浸すと溶解したが、通常の常温常湿環境に1週間放置した後の膜は水に浸しても溶解しない上に、ステンレス鋼で擦っても傷が付かなかった。
以上の分析・評価結果から、成膜、酸化処理を経て形成された表面層は、非晶質で、水素、窒素、ガリウムに加えて酸素も含む組成を有し、酸素については表面層膜厚方向に対する酸素原子の濃度が、最表面で最も高く、電荷輸送層側に向かって減少する分布を有している膜であることがわかった。
【0170】
−評価−
次に、この表面層を設けた有機感光体の電子写真特性を評価した。まず、上述の表面層形成前のノンコート感光体と、表面層を設けた感光体とに対して、露光用の光(光源:半導体レーザ、波長780nm、出力5mW)を、スコロトロン帯電器により−700Vに帯電させた状態で40rpmで回転させている感光体の表面に走査しながら照射した後の感光体表面の残留電位を測定した。その結果、ノンコート感光体が−20Vであるの対し、表面層を設けた有機感光体は−50V以下で、実用上問題ないレベルであることがわかった。
また、感度に対する影響については、光源の波長を赤外領域から可視領域全体にわたって評価したが、ノンコート感光体と、表面層を設けた感光体とでは殆ど差異は見られず、表面層を設けたことによる感度の低下が無いことがわかった。
さらに、表面層を設けた感光体の表面に対して、貼りつけた粘着テープを剥がす剥離試験を行ったが、表面層は全く剥離せず、接着性は良好であることがわかった。
【0171】
(電子写真感光体2の作製・評価)
電子写真感光体1と同様にして作製したノンコート感光体に対して、電子写真感光体1と同様の図4に示す構成を有する装置を用いて、以下に示す手順にて表面層を形成した。
まず、ノンコート感光体を、成膜装置の成膜室210内の基体ホルダー213に載せ、排気口211を介して成膜室210内を、圧力が0.1Pa程度になるまで真空排気した。次に、窒素ガスとH2ガスとが3:1の割合で混合でガスをガス導入管220から、直径50mmの平板電極219が設けられた高周波放電部221内に1000sccm(窒素ガス750sccm、水素ガス250sccm)導入し、高周波電力供給部218及びマッチング回路(図1中不図示)により、13.56MHzのラジオ波を出力100Wにセットしチューナでマッチングを取り平板電極219から放電を行った。この時の反射波は0Wであった。
次に、水素ガスをキャリアガスとしたトリメチルアルミニウムガスを含む混合ガスを、ガス導入管215を介してシャワーノズル216から成膜室210内のプラズマ拡散部217に、トリメチルアルミニウムガスの流量が1.0sccmとなるように導入した。プラズマはスリット状に17の拡散部を通して整えられる。この時、バラトロン真空計で測定した成膜室210内の反応圧力は40Paであった。
【0172】
この状態で、ノンコート感光体を10rpmの速度で回転をさせながら20間成膜し、膜厚0.2μmの膜を形成した。なお、成膜に際しては、電子写真感光体1と同様に加熱処理は行わなかった。
続いて、成膜後のノンコート感光体に対して、ヘリウム及び酸素の混合ガス(ヘリウム100sccm、酸素10sccm)を、ガス導入管220から、高周波放電部221内に導入し、高周波電力供給部218及びマッチング回路(図1中不図示)により、13.56MHzのラジオ波を出力100Wにセットしチューナでマッチングを取り平板電極219から放電を行い、酸化処理を10分間行った。その後、酸化処理を終えた表面層が形成された感光体を、成膜室210から取り出した。
【0173】
−表面層の分析・評価−
ノンコート感光体表面への成膜・酸化処理に際し、同時にSi基板に成膜・酸化処理した膜の赤外線吸収スペクトル測定を実施したところ、Al−H結合、Al−N結合及びN−H結合に起因するピークが確認された。これらのことから、表面層中には、AlとNと水素とが含まれていることがわかった。
また、Si基板上に形成された膜の表面について、XPS(X線光電子分光法)により測定したところ、酸素が70原子%,Alが30原子%であり、窒素は認められず、膜の最表面は酸化アルミニウムが形成されていることがわかった。この結果に加えて、XPS測定による深さ方向の分解能は最表面数nm程度であることや、表面層全体が測定対象となる赤外線吸収スペクトルの結果から、少なくとも表面層の最表面は、酸素リッチ、窒素プアーな状態になっており、表面層膜厚方向に対する酸素原子の濃度が、電荷輸送層側に向かって減少(窒素原子の濃度が電荷輸送層側に向かって増加)していることがわかった。
【0174】
さらに、XPS測定後のサンプルについて、HFS(ハイドロジェン・フォワード・スキャタリング)にて、膜中の水素含有量を測定したところ40原子%であり、RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像にはまったく点や線がみられず、膜は非晶質であることがわかった。また、Si基板上に形成された膜は、透明であり、ステンレス鋼で擦っても傷が付かなかった。
以上の分析・評価結果から、成膜、酸化処理を経て形成された表面層は、非晶質で、水素、窒素、アルミニウムに加えて酸素も含む組成を有し、酸素については表面層膜厚方向に対する酸素原子の濃度が、最表面で最もリッチであり、電荷輸送層側に向かって減少する分布を有している膜であることがわかった。
【0175】
次に、この表面層を設けた有機感光体の電子写真特性を評価した。まず、上述の表面層形成前のノンコート感光体と、表面層を設けた感光体とに対して、電子写真感光体1と同様にして露光用の光をこれら感光体の表面に照射した後の、表面の残留電位を測定した。その結果、ノンコート感光体が−20Vであるの対し、表面層を設けた有機感光体は−30V以下で、実用上問題ないレベルであることがわかった。
また、感度に対する影響についても、光源の波長を赤外領域から可視領域全体にわたって評価したが、表面層形成前のノンコート感光体と、表面層を設けた感光体とでは殆ど差異は見られず、表面層を設けたことによる感度の低下が無いことがわかった。
さらに、表面層を設けた感光体の表面に対して、貼りつけた粘着テープを剥がす剥離試験を行ったが、表面層は全く剥離せず、接着性は良好であることがわかった。
【0176】
次に、この表面層を設けた感光体を、富士ゼロックス社製DocuCentre Colar 500に取り付けて、電子写真感光体1と同様にしてプリント評価を行った。
その結果プリントテスト初期及びプリントテスト終了後のいずれにおいてもノンコート感光体を用いて形成されたプリントテスト初期の画像と同様の鮮明で10本/mmの解像度であり、画像ボケの無い画像を得ることができた。またプリントテスト後の感光体表面を目視により観察したところ傷の発生は無く磨耗は0μmであった。放電生成物の付着も確認されなかった。これに対し、ノンコート感光体では、プリントテスト後の感光体表面に傷が発生し、また、放電生成物の付着もみられた。
以上の結果から、表面層を設けた感光体は、耐久性が向上すると共に、感度や画像ボケのように画質の点では実用上問題ないレベルであることがわかった。
【0177】
(電子写真感光体3の作製・評価)
−表面層の形成−
電子写真感光体1で用いたのと同様のAl基体上に、n型のSi3Nからなる膜厚3μm厚の電荷注入阻止層と、膜厚20μmのi型のアモルファスシリコン感光層と、p型のSi2Cからなる膜厚0.5μmの電荷注入阻止表面層とをこの順に積層形成した負帯電型のアモルファスシリコン感光体の表面に、電子写真感光体1と同様の図4に示す構成を有する装置を用い、電子写真感光体1と同じ条件で、水素と窒素とガリウムとを含む膜を形成した。
続いて、この成膜処理を行ったアモルファスシリコン感光体を、コロトロン帯電器を備えた回転装置に取り付けて40rpmで回転させた。明所で室内空気雰囲気下(温度25℃、湿度50%)で、コロトロン帯電器に−6kVの電圧を印加して、一時間オゾン雰囲気に曝して表面を酸化させ、表面層を形成した。
なお、アモルファスシリコン感光体への成膜・酸化処理に際しては、同時にSiウェハー基板を用いて、同様の膜(表面層)のみを形成したサンプルも作製した。
【0178】
Si基板に成膜・酸化処理して得られた膜の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、Ga−H結合、Ga−N結合及びN−H結合に起因するピークが確認され、表面層中には、ガリウムと窒素と水素とが含まれていることがわかった。
また、XPS(X線光電子分光法)により測定したところ、酸素が70原子%,Gaが30原子%であり、窒素は認められず、また最表面は酸化ガリウムが形成されていることがわかった。この結果に加えて、XPS測定による深さ方向の分解能は最表面数nm程度であることや、表面層全体が測定対象となる赤外線吸収スペクトルの結果から、少なくとも表面層の最表面は、酸素リッチ、窒素プアーな状態になっており、表面層膜厚方向に対する酸素原子の濃度が、電荷輸送層側に向かって減少(窒素原子の濃度が電荷輸送層側に向かって増加)していることがわかった。
【0179】
さらに、HFS(ハイドロジェン・フォワード・スキャタリング)にて、膜中の水素含有量を測定したところ35原子%であり、RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像にはまったく点や線がみられず、膜は非晶質であることがわかった。
以上の分析・評価結果から、成膜、酸化処理を経て形成された表面層は、非晶質で、水素、窒素、ガリウムに加えて酸素も含む組成を有し、酸素については表面層膜厚方向に対する酸素原子の濃度が、最表面で最もリッチであり、電荷輸送層側に向かって減少する分布を有している膜であることがわかった。
【0180】
−評価−
次に、この表面層を設けたアモルファス感光体の電子写真特性を評価した。まず、上述の表面層形成前のアモルファス感光体(以下、「ノンコートアモルファス感光体」と称す場合がある)と、表面層を設けたアモルファス感光体とに対して、露光用の光(光源:半導体レーザ、波長650nm、出力5mW)を、スコロトロン帯電器により−500Vに帯電させた状態で40rpmで回転させている感光体の表面に走査しながら照射した後の感光体表面の残留電位を測定した。その結果、ノンコートアモルファス感光体が−20Vであるの対し、表面層を設けたアモルファスシリコン感光体は−60V以下で、実用上問題ないレベルであることがわかった。
また、感度に対する影響については、光源の波長を赤外領域から可視領域全体にわたって評価したが、ノンコートアモルファス感光体と、表面層を設けたアモルファスシリコン感光体とでは殆ど差異は見られず、表面層を設けたことによる感度の低下が無いことがわかった。
さらに、表面層を設けた感光体の表面に対して、貼りつけた粘着テープを剥がす剥離試験を行ったが、表面層は全く剥離せず、接着性は良好であることがわかった。さらに表面性もノンコートアモルファスシリコン感光体よりも平滑で且つすべりも良かった。
【0181】
次に、この表面層を設けた感光体を、アモルファスシリコン感光体用に調整した富士ゼロックス社製DocuCentre Colar 500に取り付けて、高温高湿環境(28℃85%)下で、連続2000枚のプリント評価を行った。なお、画質評価を行うためのリファレンスとして、ノンコートアモルファスシリコン感光体についても上記のアモルファスシリコン感光体用に調整したDocuCentre Colar 500に取り付けて、同様の画像を形成した。
その結果プリントテスト初期及びプリントテスト終了後のいずれにおいてもノンコートアモルファスシリコン感光体を用いて形成されたプリントテスト初期の画像と同様の鮮明で画像ボケの無い10本/mmの解像度の画像を得ることができた。またプリントテスト後の表面層を設けたアモルファスシリコン感光体表面を目視により観察したところ傷の発生は無く、放電生成物の付着も確認されず、また、初期のすべりを維持していた。これに対し、ノンコートアモルファスシリコン感光体では、プリントテスト後の感光体表面に放電生成物の付着がみられるとともに、これに伴う1本/mm以下の解像度の画像ぼけが発生した。
以上の結果から、表面層を設けたアモルファスシリコン感光体は、ノンコートアモルファスシリコン感光体と比較した場合、硬度においてもノンコートアモルファスシリコン感光体と同等であり、感度の点でも同等である上に、放電生成物の付着による画像ボケの発生が防止でき、長期の使用に耐え得ることがわかった。
【0182】
(比較電子写真感光体1の作製・評価)
電子写真感光体1と同様にして作製したノンコート感光体に対して、電子写真感光体1と同様の図4に示す構成を有する装置を用いて、以下に示す手順にて表面層を形成した。
まず、ノンコート感光体を、成膜装置の成膜室210内の基体ホルダー213に載せ、排気口211を介して成膜室210内を、圧力が0.1Pa程度になるまで真空排気した。次に、メタンガスをガス導入管220から、直径50mmの平板電極219が設けられた高周波放電部221内に100sccm導入し、高周波電力供給部218及びマッチング回路(図1中不図示)により、13.56MHzのラジオ波を出力300Wにセットしチューナでマッチングを取り平板電極219から放電を行った。この時の反射波は0Wであった。
この時、バラトロン真空計で測定した成膜室210内の反応圧力は13Paであった。
【0183】
この状態で、ノンコート感光体を10rpmの速度で回転をさせながら60分間成膜し、膜厚0.2μmのダイヤモンドライクカーボン膜を形成した。なお、成膜に際しては、電子写真感光体1と同様に加熱処理は行わなかった。その後、ダイヤモンドライクカーボン膜が表面層として設けられた感光体を、成膜室210から取り出した。
感光体表面はこげ茶色であった。
【0184】
次に、この表面層を設けた有機感光体の電子写真特性を評価した。まず、上述の表面層形成前のノンコート感光体と、表面層を設けた感光体とに対して、電子写真感光体1と同様にして露光用の光をこれら感光体の表面に照射した後の、感光体表面の残留電位を測定した。その結果、ノンコート感光体が−20Vであるの対し、表面層を設けた有機感光体は−100Vで、残留電位が上昇していた。
また、感度に対する影響は、光源の波長を赤外領域から可視領域全体にわたって評価したが、表面層形成前のノンコート感光体と、表面層を設けた感光体とでは短波長から長波長にかけて全体に感度の低下が大きく、短波長では1/10,780nmの長波長でも1/3の減感があつた。
【0185】
次に、この表面層を設けた感光体を、富士ゼロックス社製DocuCentre Colar 500に取り付けて、電子写真感光体1と同様にしてプリント評価を行った。
その結果プリント画像はコントラストが低く画像濃度が不十分であり、またプリントテスト終了後に画像ぼけがみられ画質の点で実用上問題あることがわかった。
【0186】
(キャリア1の作製)
−磁性粒子(1)の調製−
フェノール40質量部、ホルマリン60質量部、マグネタイト(体積平均粒径0.10μmの球形マグネタイト粒子粉末、1質量%KBM403処理品(戸田工業社製))430質量部、30%アンモニア水12質量部、イオン交換水60質量部を加え、混合攪拌しながら、85℃まで徐々に昇温させ、5時間反応、硬化させた後、冷却、ろ過、洗浄、乾燥し、粒径35μmの球状の磁性粒子(1)を得た。この磁性粒子の絶縁破壊電界はlog4.2V/cmであった。
【0187】
−樹脂コート溶液(1)の調製−
トルエン100部、スチレンーメタクリレート共重合体(成分比30:70)2.7部、カーボンブラック(Regal330;キャボット社製)0.6部を60分間スターラーにて攪拌/分散し、被覆樹脂層を形成するために用いられる樹脂コート溶液(1)を調製した。
【0188】
−キャリア1の作製−
磁性粒子(1)100部と樹脂コート溶液(1)とを真空脱気型ニーダに入れ、常温、回転速度30rpmで15分間攪拌した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、トルエンを留去した後冷却し、75μmの篩を用いて分粒することにより、キャリア1を作製した。
得られたキャリアの破壊強度は127MPaであった。
【0189】
(キャリア2の作製)
磁性粒子(1)の調製でマグネタイト450質量部に変えた以外は全て同様に磁性粒子を作製し、キャリア1の作製と同様にキャリアを調整した。得られたキャリアの破壊強度は190MPaであった。
【0190】
(キャリア3の作製)
磁性粒子(1)の調製でマグネタイト400質量部に変えた以外は全て同様に磁性粒子を作製し、キャリア1の作製と同様にキャリアを調整した。得られたキャリアの破壊強度は105MPaであった。
【0191】
(キャリア4の作製)
磁性粒子(1)の調製でマグネタイト440質量部に変えた以外は全て同様に磁性粒子を作製し、キャリア1の作製と同様にキャリアを調整した。得られたキャリアの破壊強度は152MPaであった。
【0192】
(比較キャリア1の作製)
DocuCentre Colar 500(富士ゼロックス社製)用の現像剤のキャリアを準備した。
キャリアの破壊強度は、222MPaであった。
【0193】
(比較キャリア2の作製)
磁性粒子(1)の調製でマグネタイト380質量部に変えた以外は全て同様に磁性粒子を作製し、キャリア1の作製と同様にキャリアを調整した。得られたキャリアの破壊強度は95MPaであった。
【0194】
(現像剤1〜4、比較現像剤1〜2の作製)
DocuCentre Colar 500(富士ゼロックス社製)用の現像剤のキャリアを、それぞれ上記キャリア1〜4、比較キャリア1〜2に変更した現像剤を得た。なお、現像剤のトナー濃度は8質量%とした。
【0195】
(実施例1〜12、比較例1〜7)
表1に従って、上記得られた電子写真感光体及び現像剤を富士ゼロックス社製DocuCenter Colar 500に適用して、高温高湿環境(28℃80%)下で、連続200000枚のプリント評価を行った。結果を表1に示す。
なお、DocuCenter Colar 500は、表面がアスカーC硬度60の接触帯電方式の帯電ロール、表面がアスカーC硬度80の中間転写ベルトを備える中間転写方式の画像形成装置である。
【0196】
プリント評価は、10本/mmの解像度の画像を出力し、1枚面の初期画像と、連続200000枚後の画像と、その双方につき、以下の評価基準で行った。
◎:画像乱れ(画像ボケ)が全く見られず、10本/mmの解像度の画像が得られた。
○:解像している部分が半分以上の画像が得られた。
△:解像している部分が半分以下の画像が得られた。
×:まったく解像していない画像が得られた。
【0197】
また、200000枚のプリント評価後の画像均一性を調べた。キャリアが柔らかなものほど現像機内ストレスにより破壊され、あるいは凝集して画像均一性を悪化させた。評価基準は以下の通りである。
○:画像が均一
△:画像がやや均一
×:画像が不均一
【0198】
【表1】

【0199】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、プリント評価(画像ぼけ)、表面観察、磨耗量について良好な結果が得られた。
【符号の説明】
【0200】
1 導電性基体、2 感光層、2A 電荷発生層、2B 電荷輸送層、3 表面層、4 下引層、5 中間層、6 感光層、10 電子写真感光体、10A 電子写真感光体、10B 電子写真感光体、20 帯電装置、30 露光装置、40 現像装置、41 現像容器、41A 現像容器本体、41B 現像容器カバー、41C 壁、42 現像ロール、42A 現像ロール室、43 攪拌部材、43A 攪拌室、44 攪拌部材、44A 攪拌室、45 層厚規制部材、46 補給搬送路、47 補給用現像剤収納容器、50 中間転写体、50A 支持ローラ、50B 支持ローラ、50C 背面ローラ、50D 駆動ローラ、51 一次転写装置、52 二次転写装置、53 記録紙供給装置、53A 搬送ローラ、53B 誘導スロープ、54 中間転写体クリーニング装置、60 除電装置、70 クリーニング装置、71 筐体、72 クリーニングブレード、80 定着装置、81 定着ローラ、82 搬送コンベア、101 画像形成装置、101A プロセスカートリッジ、210 成膜室、211 排気口、212 基体回転部、213 基体ホルダー、214 基体、215 ガス導入管、216 シャワーノズル、217 プラズマ拡散部、218 高周波電力供給部、219 平板電極、220 ガス導入管、221 高周波放電部、222 高周波コイル、223 石英管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体、感光層、及び表面層を含み、前記導電性基体上に前記感光層及び前記表面層をこの順に有し、前記表面層の少なくとも最表面が、酸素及び13族元素を含み、前記最表面における前記酸素の含有量が15原子%を超える電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と
前記帯電手段により帯電された前記電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する潜像形成手段と、
トナー及び破壊強度が100MPa以上200MPa以下のキャリアを含む現像剤を収納し、前記現像剤により、前記電子写真感光体に形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記電子写真感光体に形成された前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記転写手段が、
前記電子写真感光体に形成された前記トナー像が転写される中間転写体と、
前記電子写真感光体に形成された前記トナー像を前記中間転写体に転写する一次転写手段と、
前記中間転写体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に転写する二次転写手段と、
を備える請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記帯電手段が、接触方式の帯電手段である請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
導電性基体、感光層、及び表面層を含み、前記導電性基体上に前記感光層及び前記表面層をこの順に有し、前記表面層の少なくとも最表面が、酸素及び13族元素を含み、前記最表面における前記酸素の含有量が15原子%を超える電子写真感光体と、
トナー及び破壊強度が100MPa以上200MPa以下のキャリアを含む現像剤を収納し、前記現像剤により、前記電子写真感光体に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
を備えたプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−118308(P2011−118308A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277945(P2009−277945)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】