説明

画像形成装置、及び画像形成プログラム

【課題】保存文書に予め設定されていた印刷設定条件を変更しない画像形成装置、及び画像形成プログラムを提供する。
【解決手段】蓄積された蓄積文書を格納する記憶手段と、前記蓄積文書に対して設定された印刷設定条件に基づき画像を描画する画像描画手段と、前記画像描画手段により描画した画像に基づき印刷処理を実行する画像形成装置であって、前記蓄積文書に対して設定された印刷設定条件を変更する印刷条件設定手段と、前記蓄積文書を複製する蓄積文書複製手段と、前記印刷条件設定手段により印刷設定条件が変更された場合に、前記蓄積文書複製手段により前記蓄積文書を複製するよう制御する印刷制御手段とを有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、及び画像形成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばプリンタ等の画像形成装置において、印刷文書の取り忘れや他人の文書との混在防止のため、プリンタデータを一旦装置内に蓄積しておき、操作パネル上から再度印刷指示を行うと、蓄積していたプリンタデータ(蓄積文書)を印刷することができる技術が知られている。また、再度印刷する際には、蓄積文書に設定されていた印刷設定条件(例えば部数、片面/両面、カラー/モノクロ印刷等)を変更して印刷する技術が知られている。なお、蓄積文書には、再度印刷すると装置内から削除される保留文書や、再度印刷しても装置内から削除されずに保存される保存文書等がある。
【0003】
ここで、上述した保存文書を複数のユーザで利用する場合に、あるユーザが印刷設定条件を変更して印刷すると、その文書に予め設定されていた印刷設定条件が書き換わってしまい、他のユーザが印刷する際のミスプリントの原因になる場合があった。
【0004】
そこで、従来では、例えば記憶手段に記憶されている複数の文書データの印刷において、予め設定済みの印刷条件がユーザにより設定変更された場合に、印刷を禁止する印刷システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の手法は、例えば保存データを再出力する際に、印刷しようとするデータの属性情報の変更可否を示し、変更が受け付けられる項目のみ実行するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1には、保存文書の印刷設定条件を変更して印刷する場合に、その保存文書に予め設定されていた印刷設定条件を書き換えないようにするための手法は開示されていない。したがって、上述した特許文献1の手法では、上述した保存文書の印刷設定条件を変更して印刷すると、保存文書に予め設定されていた印刷設定条件を書き換えて変更してしまうため、上述した課題は解決することができなかった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、保存文書に予め設定されていた印刷設定条件を変更しない画像形成装置、及び画像形成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、蓄積された蓄積文書を格納する記憶手段と、前記蓄積文書に対して設定された印刷設定条件に基づき画像を描画する画像描画手段と、前記画像描画手段により描画した画像に基づき印刷処理を実行する画像形成装置であって、前記蓄積文書に対して設定された印刷設定条件を変更する印刷条件設定手段と、前記蓄積文書を複製する蓄積文書複製手段と、前記印刷条件設定手段により印刷設定条件が変更された場合に、前記蓄積文書複製手段により前記蓄積文書を複製するよう制御する印刷制御手段とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、コンピュータを、上述した画像形成装置として機能させるための画像形成プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保存文書に予め設定された印刷設定条件を変更しないこと可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の機能ブロックの一例を示す図である。
【図2】ジョブ制御手段の機能ブロックの一例を示す図である。
【図3】画像形成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図4】本実施形態に係る蓄積文書の印刷設定条件変更処理の流れを説明するための図である。
【図5】本実施形態に係るデータ蓄積領域を説明するための図である。
【図6】本実施形態に係るジョブの印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本実施形態に係る蓄積文書の印刷設定条件変更処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】再描画の必要又は不必要を判断するためのテーブルを示す図である。
【図9】本実施形態に係る文書複製処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】蓄積文書の印刷設定条件を変更するための画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
<画像形成装置の機能ブロック例>
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の機能ブロックの一例を示している。図1に示す画像形成装置100は、例えばコピー機能、スキャン機能、FAX機能、印刷機能等の複数の機能を有するMFP(Multi Function Printer)等の複合機やLP(Line Printer)等である。なお、画像形成装置100は、例えばLAN(Local Area Network)等に代表される通信ネットワークを介してホストコンピュータ110と接続されている。
【0013】
画像形成装置100は、データ受信制御手段10と、プリンタ制御手段20と、画像描画手段30と、メモリ制御手段40と、エンジン制御手段50と、記憶手段60と、印刷条件設定手段70と、エンジン手段80とを有するように構成される。
【0014】
データ受信制御手段10は、データ受信手段11を有し、データ受信手段11によりホストコンピュータ110からジョブを受信して、受信したジョブを記憶手段60に格納する。なお、ジョブとは、印刷ジョブを含むがこれに限定されるものではない。
【0015】
プリンタ制御手段20は、ジョブ制御手段21と、ページ制御手段22と、データ管理手段23とを有するように構成される。
【0016】
ジョブ制御手段21は、本実施形態におけるジョブ処理全体を制御する。なお、ジョブ制御手段21における具体的な処理については後述する。
【0017】
ページ制御手段22は、例えばジョブを構成する印刷データの各ページを制御し、例えば画像描画手段30により各ページの画像データが描画されるよう制御する。
【0018】
データ管理手段23は、各ジョブに対して設定された印刷設定条件(印刷条件パラメータ)を管理する。また、データ管理手段23は、例えば再印刷時に印刷条件設定手段70等により変更された印刷設定条件についても管理する。
【0019】
画像描画手段30は、データ受信手段11により受信したジョブから画像データを構築する。画像描画手段30は、受信したジョブ(例えばPDL(Page Description Language)フォーマット等の印刷データ)を、例えばRIP(Raster Imege Processor)処理によりビットマップ画像に展開する。
【0020】
ここで、上述したRIPとは、例えばPDL等の印刷データからラスターイメージ(例えば、ビットマップ画像)を生成するプリンタシステムのコンポーネントを示す。すなわち、本実施形態において、ジョブをRIPするとは、例えばPDL等で記述された印刷データからラスターイメージを生成するプロセスそのものを示している。
【0021】
また、RIP前データとは、例えば印刷設定条件等が記述されている上述の印刷データを示し、RIP後データとは、このRIP前データに例えばモノクロやトレイの指定等の設定された印刷設定条件を上書きして、RIPされたデータを示す。
【0022】
メモリ制御手段40は、例えばHDD(Hard Disk Drive)等のデータ蓄積領域62の残容量を判断する。
【0023】
エンジン制御手段50は、印刷対象の画像データ(例えばRIP後データ)をエンジン手段80に送信するよう制御する。
【0024】
記憶手段60は、受信データ格納領域61と、データ蓄積領域62と、ユーザ情報保持領域63とを有するように構成される。受信データ格納領域61は、データ受信手段11により受信されたジョブが格納される。
【0025】
データ蓄積領域62は、例えばHDD等により構成され、データ格納領域61に格納されたジョブが複製され、RIP前データ(蓄積文書)として蓄積される。RIP前データ等はジョブ単位で蓄積される。なお、データ蓄積領域62に蓄積されるRIP前データ等の格納領域については後述する。
【0026】
ユーザ情報保持領域63は、画像形成装置100を利用するユーザ情報を保持し、例えば印刷条件設定手段70により設定される印刷設定条件をユーザごとに保持する。
【0027】
印刷条件設定手段70は、例えば操作パネル等のユーザインタフェースを介してユーザにより指示された印刷設定条件を受け付ける。印刷条件設定手段70は、例えばデータ蓄積領域62に格納された蓄積文書を選択し、選択した蓄積文書に対して予め設定された印刷設定条件の変更等を行う。
【0028】
エンジン手段80は、例えばプロッタエンジン等であり、エンジン制御手段50からの制御信号により、例えばRIP後データである画像データを用紙等の各種印刷媒体に印刷するための動作を行う。
【0029】
ホストコンピュータ110は、例えばクライアントPC(Personal Computer)やサーバ等であり、ユーザから入力されるジョブ(データ)等を受け付ける。
【0030】
<ジョブ制御手段の機能ブロック例>
次に、図2を用いて上述したジョブ制御手段21の機能ブロックの一例について、具体的に説明する。図2は、ジョブ制御手段の機能ブロックの一例を示している。図2に示すジョブ制御手段21は、蓄積文書複製手段211と、印刷設定条件判断手段212と、文書判断手段213と、プリンタ言語判断手段214と、印刷制御手段215とを有するよう構成されている。
【0031】
蓄積文書複製手段211は、データ蓄積領域62に格納された蓄積文書(RIP前データ)を複製する。
【0032】
印刷設定条件判断手段212は、印刷条件設定手段70により変更された印刷設定条件が、画像描画手段30による再描画が必要な印刷設定条件か否か判断する。なお、印刷設定条件判断手段212による再描画の必要又は不必要の判断に用いられるテーブルについては後述する。
【0033】
文書判断手段213は、データ蓄積領域62に格納された蓄積文書が印刷により削除される保留文書か、又は印刷により削除されない保存文書か判断する。
【0034】
プリンタ言語判断手段214は、蓄積文書複製手段211により複製される蓄積文書のプリンタ言語の種類を判断する。プリンタ言語判断手段214は、複製される蓄積文書が例えばPCL(Printer Control Language)等のストリーミング形式で描画処理を行えるプリンタ言語の文書か又は例えばPDF(Portable Document Format)等の全て複製が完了するまで描画処理が行えないプリンタ言語の文書か否か判断する。
【0035】
印刷制御手段215は、本実施形態における印刷処理全体を制御する。印刷制御手段215は、印刷条件設定手段70により印刷設定条件が変更された場合、印刷設定条件判断手段212により蓄積文書に対して再描画が必要な印刷設定条件が変更されたか否か判断させる。
【0036】
印刷制御手段215は、印刷設定条件判断手段212により再描画が必要な印刷設定条件が変更されたと判断された場合、蓄積文書複製手段211により蓄積文書を複製するように制御する。また、印刷制御手段215は、印刷設定条件判断手段212により再描画が不要な印刷設定条件が変更されたと判断された場合、蓄積文書を複製しないように制御する。これにより、無駄な複製処理を行わず、プリンタの速度性能を通常の再印刷時と同様に保つことが可能となる。
【0037】
また、印刷制御手段215は、印刷設定条件が変更された蓄積文書が文書判断手段213により保存文書と判断された場合、蓄積文書複製手段211により蓄積文書を複製するように制御する。また、印刷制御手段215は、文書判断手段213により保留文書であると判断された場合、蓄積文書を複製しないように制御する。これにより、無駄な複製処理を行わず、プリンタの速度性能を通常の再印刷時と同様に保つことが可能となる。
【0038】
また、印刷制御手段215は、蓄積文書複製手段211により蓄積文書を複製する場合に、プリンタ言語判断手段214により蓄積文書のプリンタ言語の種類を判断させる。印刷制御手段215は、プリンタ言語判断手段214により蓄積文書がストリーミング形式で描画処理を行えるプリンタ言語の文書と判断された場合、蓄積文書複製手段211による複製しながら、画像描画手段30による描画処理を行うように制御する。このように、複製処理を行いながら描画処理を実行するため、プリンタの速度性能が向上する。
【0039】
更に、印刷制御手段215は、画像描画手段30により蓄積文書が描画される前のRIP前データと画像描画手段30により描画された後のRIP後データとを対応づけて格納し、印刷設定条件が変更された場合、RIP前データを複製して印刷設定条件の書き換えを行い、印刷設定条件が変更されていない場合、RIP後データを用いて印刷処理を実行する。
【0040】
また、印刷制御手段215は、印刷設定条件が変更された場合、メモリ制御手段40によりデータ蓄積領域62の残容量を判断し、残容量が少ないと判断された場合、蓄積文書(RIP前データ)をそのまま用いて印刷設定条件を書き換え、画像描画手段30により描画させても良い。
【0041】
<画像形成装置100のハードウェア構成>
次に、図3を用いて、画像形成装置100のハードウェア構成の一例について説明する。図3は、画像形成装置のハードウェア構成の一例を示している。
【0042】
図3に示す画像形成装置100は、バスBで相互に接続されているスキャン装置90と、プロッタ装置91と、ドライブ装置92と、補助記憶装置93と、メモリ装置94と、演算処理装置95と、インタフェース装置96と、操作パネル97とを有するように構成される。
【0043】
スキャン装置90は、スキャナエンジンと、スキャナエンジンを制御するエンジン制御部等から構成されており、例えば紙原稿を画像データとするために用いられる。プロッタ装置91は、エンジン手段80を制御するエンジン制御手段50等から構成され、画像データを出力するために用いられる。
【0044】
インタフェース装置96は、モデム、LANカード等で構成されており、ネットワークに接続する為に用いられる。
【0045】
画像形成装置100は、インタフェース装置96を介してネットワーク上のPC等の他の装置との情報の送受信を行う。操作パネル97は、タッチパネル等で構成され、画像形成装置100の操作キーや処理の進捗状況等が表示される。
【0046】
本発明の画像形成プログラムは、画像形成装置100を制御する各種プログラムの少なくとも一部である。画像形成プログラムは、例えば記録媒体98の配布やネットワークからのダウンロード等によって提供される。
【0047】
画像形成プログラムを記録した記録媒体98は、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の様に情報を光学的、電気的或いは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリ等の様に情報を電気的に記録する半導体メモリ等、様々なタイプの記録媒体を用いることができる。
【0048】
また、画像形成プログラムを記録した記録媒体98がドライブ装置92にセットされると、画像形成プログラムは記録媒体98からドライブ装置92を介して補助記憶装置93にインストールされる。ネットワークからダウンロードされた画像形成プログラムは、インタフェース装置96を介して補助記憶装置93にインストールされる。
【0049】
補助記憶装置93は、インストールされた画像形成プログラムを格納すると共に、必要なファイル、データ等を格納する。メモリ装置94は、コンピュータの起動時に補助記憶装置93から画像形成プログラムを読み出して格納する。演算処理装置95は、メモリ装置94に格納された画像形成プログラムに従って、本実施形態の各種処理を実現する。
【0050】
<蓄積文書の印刷設定条件変更処理の流れ>
次に、図4を用いて、蓄積文書に設定された印刷設定条件(印刷条件パラメータ)を変更する印刷設定条件変更処理の流れについて説明する。図4は、本実施形態に係る蓄積文書の印刷設定条件変更処理の流れを説明するための図である。
【0051】
図4に示すように、データ受信制御手段10は、ホストコンピュータ110からジョブ(例えばPDLフォーマット等で記述された印刷データ)を入力すると、起動してデータ受信手段11によりジョブを受信する。データ受信制御手段10は、データ受信手段11により受信したジョブを記憶手段60の受信データ格納領域61に格納する。
【0052】
ジョブ制御手段21は、受信データ格納領域61に格納されたジョブに対して、データキャプチャを行い、画像描画手段30によるRIP前の状態であるRIP前データA(蓄積文書)をデータ蓄積領域62の蓄積ジョブ管理領域622に格納する。
【0053】
また、ジョブ制御手段21は、画像描画手段30によりRIP前データAに対して予め設定された印刷設定条件に基づく設定を施してRIPし、RIP後の状態であるRIP後データBを蓄積ジョブ管理領域622に蓄積する。このとき、ジョブ制御手段21は、RIP前データAとRIP後データBとを対応づけて格納すると良い。また、ページ制御手段22は、ジョブのページごとにRIP前データAとRIP後データBとを対応づけて格納するよう制御する。
【0054】
ジョブ制御手段21は、印刷時に、ページ制御手段22により蓄積ジョブ管理領域622に格納されたRIP後データBをページごとに取得し、取得したRIP後データBをエンジン制御手段50に送信して、エンジン手段80により排紙する。なお、ジョブ制御手段21は、ユーザから印刷を一時停止する指示を受けた場合、ページ制御手段22によりページごとにRIP後データBを一時停止させる。
【0055】
ジョブ制御手段21は、ユーザによる再印刷指示を受けると、データ管理手段23に管理された印刷設定条件(印刷条件パラメータ)を参照して、再印刷指示において印刷設定条件が変更されたか否か、再印刷指示された印刷対象文書が所定の文書であるか否か等について判断する。なお、ジョブ制御手段21により所定の文書か否か判断する具体的な処理内容については後述する。
【0056】
ジョブ制御手段21は、印刷対象文書が所定の文書である場合、蓄積文書複製手段211により蓄積ジョブ管理領域622に格納されたRIP前データAを複製し、データ蓄積領域62の印刷ジョブ管理領域621に複製したRIP前データA′を格納する。
【0057】
次に、ジョブ制御手段21は、複製したRIP前データA′にユーザにより変更された印刷設定条件を上書きして画像描画手段30によりRIPし、RIP後のデータであるRIP後データB′をRIP前データA′に対応づけて格納する。また、ジョブ制御手段21は、AJP(自動再開)後に、RIP後データB′を用いてエンジン制御手段50に送信して同様に排紙させる。
【0058】
なお、ジョブ制御手段21は、再印刷指示された印刷対象文章が、再描画が必要ない印刷設定条件が変更された文書であったり、保留文書等であったりした場合には、蓄積ジョブ管理領域622に格納されたRIP後データBをそのまま用いて印刷処理を実行する。
【0059】
<データ蓄積領域について>
次に、図5を用いて、上述した蓄積文書を蓄積するデータ蓄積領域について説明する。図5は、本実施形態に係るデータ蓄積領域を説明するための図である。図5に示すデータ蓄積領域62は、印刷ジョブ管理領域621と、蓄積ジョブ管理領域622とを有するように構成される。
【0060】
印刷ジョブ管理領域621には、ユーザによる再印刷指示を受けて蓄積文書複製手段211により複製されたRIP前データA′と、再印刷指示において変更された印刷設定条件を上書きして画像描画手段30によりRIPされたRIP後データB′が管理されている。
【0061】
蓄積ジョブ管理領域622には、ジョブ制御手段21によりデータキャプチャされたRIP前データAと、RIP前データAに予め設定された印刷設定条件に基づき画像描画手段30によりRIPされたRIP後データBが管理されている。なお、ジョブ制御手段21は、蓄積ジョブ管理領域62においてジョブ単位ごと(例えばジョブ1、ジョブ2)に管理領域を設けて管理すると良い。
【0062】
上述したように、ジョブ制御手段21は、ユーザの再印刷指示により印刷設定条件が変更された場合には、蓄積ジョブ管理領域622に管理されているRIP前データAを複製し、複製したRIP前データA′に変更された印刷設定条件を上書きしてRIP後データB′を生成して印刷ジョブ管理領域621に格納する。また、ジョブ制御手段21は、印刷設定条件が変更されていない場合には、蓄積ジョブ管理領域622に管理されているRIP後データBをそのまま使用することが可能である。
【0063】
<ジョブ印刷処理の流れ>
次に、図6を用いて、受信したジョブを印刷するまでのジョブ印刷処理の流れについて説明する。図6は、本実施形態に係るジョブの印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【0064】
図6に示すように、データ受信制御手段10は、データ受信手段11によりホストコンピュータ110から送られてきたジョブ1を受信すると(S10)、記憶手段60の受信データ格納領域61に格納するように制御する。
【0065】
次に、ジョブ制御手段21は、受信データ格納領域61に格納されたジョブ1を複製し、RIP前データAとしてデータ蓄積領域62の蓄積ジョブ管理領域622に蓄積する(S11)。蓄積ジョブ管理領域622のRIP前データAは、上述したようにジョブ単位で蓄積すると良い。
【0066】
また、ジョブ制御手段21は、受信データ格納領域61に格納されたジョブ1のRIP前データAを画像描画手段30によりRIPする(S12)。RIPにより生成されたRIP後データBは、エンジン制御手段50に送られ、エンジン手段80からRIP後データBが紙に印刷され、排紙するよう制御される(S13)。
【0067】
次に、ジョブ制御手段21は、データ蓄積領域62に格納されていたRIP前データAを廃棄し(S14)、処理を終了する。上述したように、データ蓄積領域62に格納されたRIP前の状態のデータAは、S13の処理で排紙完了となるまで保持される。
【0068】
<印刷設定条件変更処理の流れ>
次に、図7を用いて、ユーザにより蓄積文書の印刷設定条件が変更された場合の印刷設定条件変更処理の流れについて説明する。図7は、本実施形態に係る蓄積文書の印刷設定条件変更処理の流れを示すフローチャートである。
【0069】
なお、図7の示すフローチャートは、例えばユーザにより操作パネル97を介して蓄積文書が選択され、選択された蓄積文書に対して印刷設定条件を変更して印刷する指示ボタンが押されてからスタートする。
【0070】
図7に示すように、印刷条件設定手段70によりユーザにより選択された蓄積文書に対して変更が指示された印刷設定条件を受信すると(S20)、ジョブ制御手段21における印刷制御手段215は、印刷設定条件判断手段212により受信した印刷設定条件の項目が、再描画が必要な項目か否か判断する(S21)。
【0071】
ここで、再描画が必要な項目とは、例えばカラー印刷からモノクロ印刷への変換等であり、再描画を必要としない項目とはステープル処理の「あり」から「なし」の変更等である。再描画を必要としない項目と判断された場合(S21において、NO)、印刷制御手段215は、装置に設定された印刷設定条件を変更し(S22)、通常印刷と同様に、ユーザにより選択された蓄積文書のRIP後データBを紙に印刷し、排紙する(S23)。
【0072】
すなわち、再描画を必要としない項目は、例えばステープル処理等の装置の印刷設定条件を変更するものであるため、装置の周辺機器等への指示を変更することにより印刷設定条件を変更し、ユーザにより選択された蓄積文書のデータ(RIP前データA)に対する変更はない。
【0073】
一方、再描画が必要な項目と判断された場合(S21において、YES)、印刷制御手段215は、文書判断手段213によりユーザにより選択された蓄積文書が保存文書か否か判断する(S24)。上述したように、蓄積文書のうち、印刷しても削除されずに残る保存文書の場合には、印刷しても文書が残り、残った文書が更に利用されるため、保存している蓄積文書に対して印刷設定条件を変更してしまうとミスプリント等の原因になる。
【0074】
一方、蓄積文書のうち、印刷すると削除される保留文書の場合には、蓄積文書のデータ(RIP前データA)そのものに対して印刷設定条件を変更したとしても印刷後にデータは削除されるため、処理に時間を要する複製処理を行う必要がない。
【0075】
したがって、保存文書ではない(保留文書)と判断された場合には(S24において、NO)印刷制御手段215は、選択された蓄積文書(RIP前データA)にユーザにより変更された印刷設定条件を上書きする(S25)。
【0076】
一方、ユーザにより選択された蓄積文書が保存文書であると判断された場合(S24において、YES)、印刷制御手段215は、メモリ制御手段40により例えばHDDであるデータ蓄積領域62の残容量が所定以上か否か判断する(S26)。すなわち、ユーザにより選択された蓄積文書の印刷設定条件を変更しないように蓄積文書を複製しようとしても、残容量がなければ複製できないからである。
【0077】
上述した残容量が所定以上でないと判断された場合(S26において、NO)、S25の処理に進み、印刷制御手段215は、選択された蓄積文書のRIP前データAにユーザにより変更された印刷設定条件を上書きする。
【0078】
一方、上述した残容量が所定以上であると判断された場合(S26において、YES)、印刷制御手段215は、ユーザにより選択された蓄積文書(印刷対象)のRIP前データAを蓄積文書複製手段211により複製し(S27)、複製したRIP前データA′にユーザにより変更された印刷設定条件を上書きする(S28)。なお、複製前のRIP前データAと複製後のRIP前データA′とは紐付けしておくと良い。
【0079】
次に、印刷制御手段215は、印刷設定条件を変更したRIP前データA又はRIP前データA′を画像描画手段30により再描画して画像を展開し、RIP後のデータB又はデータB′を紙に印刷し、排紙する(S29)。
【0080】
<再描画が必要となる印刷設定条件の項目について>
次に、図8を用いて、上述した印刷設定条件判断手段212により再描画の必要又は不必要を判断するためのテーブルについて説明する。図8は、再描画の必要又は不必要を判断するためのテーブルを示す図である。
【0081】
図8に示すように、ユーザにより指示される「印刷設定条件の項目」には、例えば「両面/片面」、「ソート」、「ステープル」、「パンチ」、「トナーセーブ(モノクロ)」、「トナーセーブ(カラー)」、「集約」、「カラー/白黒(モノクロ)」、「180度展開」等、操作パネル97により指示可能な印刷設定条件が示されている。
【0082】
上述した「印刷設定条件の項目」のうち、蓄積文書に設定された印刷設定条件を変更した場合に再描画が必要になる項目には「要」、再描画が必要ない項目には「不要」が示されている。再描画が必要になる項目は、例えば「カラー/白黒」、「集約」等であり、これらの項目は蓄積文書のデータそのものに対して変更する必要がある。一方、再描画が必要ない項目は、例えば「両面」、「ステープル」、「パンチ」等であり、これらの項目は装置自体の設定を変更すれば良く、蓄積文書のデータそのものを変更する必要がない。
【0083】
上述したように、印刷制御手段215は、ユーザにより印刷設定条件が変更された場合には、印刷設定条件判断手段212により変更された印刷設定条件の項目ごとに蓄積文書を再描画する必要がある項目か又は再描画する必要ない項目かを判断し、再描画が必要な項目が変更された場合に、蓄積文書を複製処理するよう制御する。
【0084】
<文書複製処理の流れ>
次に、図9を用いて、例えば図8のS27の処理において蓄積文書複製手段211により蓄積文書が複製処理される文書複製処理の流れについて説明する。図9は、本実施形態に係る文書複製処理の流れを示すフローチャートである。
【0085】
図9に示すように、印刷制御手段215は、印刷対象の蓄積文書のプリンタ言語の種類により蓄積文書複製手段211による複製処理を待つか否か判断する(S30)。
【0086】
上述したように、プリンタ言語の中には、例えばPCL等のようにストリーミング形式で描画処理を行えるものと、例えばPDF等のように最初から最後まで全てのデータが揃わなければ描画処理を行えないものがある。そこで、印刷制御手段215は、プリンタ言語判断手段214によりプリンタ言語の種類を判断して、蓄積文書複製手段211による複製処理を待つか否か判断する。
【0087】
例えばPDF等のプリンタ言語であり、複製処理を待つ必要があると判断された場合(S30において、YES)、印刷制御手段215は、データが揃うまで複製処理を待ち、複製処理が完了すると(S32)、画像描画手段30により描画処理を行う(S33)。
【0088】
一方、例えばPCL等のプリンタ言語であり、複製処理を待つ必要がないと判断された場合(S30において、NO)、印刷制御手段215は、例えばストリーミング形式により複製処理をしながら描画処理を行い(S33)、処理を終了する。
【0089】
<印刷設定条件を変更する操作画面>
次に、図10を用いて、ユーザにより選択された蓄積文書に対して印刷設定条件を変更するか否か指示する画面の一例について説明する。図10は、蓄積文書の印刷設定条件を変更するための画面を示している。
【0090】
図10に示す操作画面971は、例えば操作パネル97に表示される画面である。図10に示すように、操作画面971には、蓄積文書の印刷設定条件を変えるためのボタンC(「変える」)と、変えないためのボタンD(「変えない」)が表示されている。
【0091】
ユーザは、蓄積文書に対して印刷設定条件を変更する場合にはボタンCを押し、変更を行わない場合にはボタンDを押す。このように、ユーザは操作パネル97上で指示を切り替えるためのモードを選択することが可能である。
【0092】
上述したように本発明の実施形態によれば、蓄積文書の印刷設定条件を変更して再印刷を行う場合に、印刷対象の文書を複製し、複製文書に対して印刷条件を変更してから再印刷を行う。これにより、蓄積文書が保存文書であっても、予め設定されていた印刷設定条件を変更しない画像形成装置、及び画像形成プログラムを提供することを可能とする。
【0093】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施例に基づき具体的に説明したが、本
発明は上記実施例で説明したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲
で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0094】
10 データ受信制御手段
11 データ受信手段
20 プリンタ制御手段
21 ジョブ制御手段
22 ページ制御手段
23 データ管理手段
30 画像描画手段
40 メモリ制御手段
50 エンジン制御手段
60 記憶手段
61 受信データ格納領域
62 データ蓄積領域
63 ユーザ情報保持領域
70 印刷条件設定手段
80 エンジン手段
90 スキャン装置
91 プロッタ装置
92 ドライブ装置
93 補助記憶装置
94 メモリ装置
95 演算処理装置
96 インタフェース装置
97 操作パネル
100 画像形成装置
110 ホストコンピュータ
211 蓄積文書複製手段
212 印刷設定条件判断手段
213 文書判断手段
214 プリンタ言語判断手段
215 印刷制御手段
621 印刷ジョブ管理領域
622 蓄積ジョブ管理領域
971 操作画面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】
【特許文献1】特開2007−135222号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄積された蓄積文書を格納する記憶手段と、前記蓄積文書に対して設定された印刷設定条件に基づき画像を描画する画像描画手段と、前記画像描画手段により描画した画像に基づき印刷処理を実行する画像形成装置であって、
前記蓄積文書に対して設定された印刷設定条件を変更する印刷条件設定手段と、
前記蓄積文書を複製する蓄積文書複製手段と、
前記印刷条件設定手段により印刷設定条件が変更された場合に、前記蓄積文書複製手段により前記蓄積文書を複製するよう制御する印刷制御手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記印刷条件設定手段により変更された印刷設定条件が、前記画像描画手段により前記蓄積文書に対して再描画が必要な印刷設定条件か否か判断する印刷設定条件判断手段を有し、
前記印刷制御手段は、前記印刷設定条件判断手段により前記蓄積文書に対して再描画が必要な印刷設定条件が変更されたと判断された場合に、前記蓄積文書複製手段により前記蓄積文書を複製するよう制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記蓄積文書が印刷により削除される保留文書か、又は印刷により削除されない保存文書か判断する文書判断手段を有し、
前記印刷制御手段は、前記文書判断手段により前記保存文書として判断された場合に、前記蓄積文書複製手段により前記蓄積文書を複製するよう制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記蓄積文書のプリンタ言語の種類を判断するプリンタ言語判断手段を有し、
前記印刷制御手段は、前記プリンタ言語判断手段により前記蓄積文書がストリーミング形式で描画処理を行えるプリンタ言語の文書と判断された場合に、前記蓄積文書複製手段により複製しながら描画処理を行うよう制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記印刷制御手段は、前記画像描画手段により前記蓄積文書が描画される前のデータと描画された後のデータとを対応づけて格納し、
前記印刷設定条件が変更された場合に、前記描画される前のデータを用いて複製した後、前記印刷設定条件の書き換えを行い、
前記印刷設定条件が変更されていない場合に、前記描画された後のデータを用いて、印刷処理を実行することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置として機能させるための画像形成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−192693(P2012−192693A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59856(P2011−59856)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】