説明

画像形成装置、及び画像形成方法

【課題】転写残トナー(感光体上に残ってしまうトナー)の発生を抑制させると共に、中間調の階調を落とすことなく、転写材に定着及び固化可能な画像形成装置を提供すること。
【解決手段】無端状のベルト体からなる回動可能な像担持体1に沿うように複数配設され、像担持体1に静電潜像を形成させると共にその静電潜像に基づいてトナー像を像担持体1に形成させるトナー像形成手段2と、その複数のトナー像形成手段2の下流側に像担持体1を挟むように対向配置され、ヒーター3を内装させた一対の定着ローラ4とを備え、複数のトナー像形成手段2によって像担持体1に形成されたフルカラートナー像と用紙搬送路から所定のタイミングでもって搬送された転写材Wとを、一対の定着ローラ4部分で加熱及び加圧させてフルカラートナー像を像担持体1から直接転写材Wに定着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、ファックス、複写機等の、所謂、電子写真方式によって画像形成を行う画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真方式によってカラー画像を出力する画像形成装置がある。
このカラー画像を出力する画像形成装置は、大別して、4連タンデム方式と、1ドラム方式とがある。
前者の4連タンデム方式の画像形成装置は、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像を形成させる4つの感光体と、その4つの感光体が並設され、それらの感光体に沿うように掛架された無端状の中間転写ベルトとを備えて構成されている。
この4連タンデム方式の画像形成装置は、それぞれの感光体に各色のトナー像を形成し、各色のトナー像を静電気力でもって中間転写ベルトに転写して中間転写ベルト上にフルカラートナー像を形成する。そして、静電気力でもってそのフルカラートナー像を転写材(紙体)に転写し、しかる後、その転写材を加圧及び加熱して、フルカラートナー像を転写材に定着する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
後者の1ドラム方式の画像形成装置は、例えば、一つの感光体の周囲に、トナー像を形成させるための帯電器や現像器等を、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像を形成する数だけ配設させて構成されている。
この1ドラム方式の画像形成装置は、一つの感光体に各色のトナー像を重ねるように順にトナー像を形成して、一つの感光体にフルカラートナー像を形成する。そして、静電気力でもってそのフルカラートナー像を中間転写ベルトに転写してフルカラートナー像を形成し、さらに、静電気力でもってそのフルカラートナー像を転写材(紙体)に転写する。しかる後、その転写材を加圧及び加熱して、フルカラートナー像を転写材に定着する(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−205563公報
【特許文献2】特許第3646278号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した先行の画像形成装置は以下の問題点があった。
すなわち、感光体にトナー像を形成させるトナーは、粒レベルにおいて、電荷の小さいトナーや、逆帯電したトナー等が混在して状態が一様ではなく、従来、そのトナーで形成されたトナー像を静電気力による転写を行っていたため、転写残トナー(感光体上に残ってしまうトナー)がある程度の割合で発生していた。
特に、この種の画像形成装置は、中間調の画像を表現させるのに、ドット、またはラインを形成させて表現させているが、静電気力による転写の際、上記したドット等を乱してしまい、結果的に、画像品質(中間調の再現性)を落とす要因になっていた。ちなみに、この中間調の階調を落とすことなく高レベルで再現(定着画像)できれば、画像品質を銀塩写真に近づけることができる。
このように、静電気力による転写は、均一なドット等を維持することは極めて難しく、特に、上記したような、感光体上に色重ねした4色のトナー像を一括して転写する場合、均一なドットを維持できるような転写条件の設定が非常に困難であった。なお、上記したカラー画像を出力する画像形成装置のほか、単色画像を出力する画像形成装置も、静電気力による転写を行っており、同じ問題点を抱えていた。
そこで本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決できる画像形成装置及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術課題を達成するために、本発明にかかる画像形成装置は、下記の技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1にかかる画像形成装置は、静電潜像が形成されると共に該静電潜像に基づいて形成されたトナー像を担持させる像担持体と、該像担持体に形成された前記トナー像を加熱溶融させる加熱手段と、前記像担持体に転写材を圧接させて加熱溶融された前記トナー像を前記転写材に定着させる加圧手段とを備えることを特徴とする。
請求項2にかかる画像形成装置は、請求項1において、前記加熱手段は、前記加圧手段を加熱させるように配設され、前記加圧手段は、前記像担持体に前記転写材を圧接させると同時に前記像担持体に形成された前記トナー像を加熱溶融させて、前記像担持体に形成された前記トナー像を前記転写材に転写させると同時に定着させることを特徴とする。
請求項3にかかる画像形成装置は、請求項1または2において、前記像担持体は、複数のローラに掛架された無端状のベルト体からなり、前記静電潜像及び前記トナー像を形成させる面が、光沢面であることを特徴とする。
請求項4にかかる画像形成装置は、請求項1乃至3の何れか1項において、前記加熱手段は、ヒーターからなり、前記加圧手段は、前記ヒーターを内装させるローラであることを特徴とする。
【0006】
請求項5にかかる画像形成装置は、請求項1乃至4の何れか1項において、加熱溶融された前記トナー像の固化後に前記像担持体から前記転写材を剥離させる剥離手段を備えていることを特徴とする。
請求項6にかかる画像形成装置は、請求項1乃至5の何れか1項において、前記加圧手段で前記転写材に定着された前記トナー像を冷却させて固化させる冷却手段を備えていることを特徴とする。
請求項7にかかる画像形成装置は、請求項1乃至6の何れか1項において、前記転写材が、その表面に熱可塑性樹脂を主成分とした受像層を設けてなる場合において、前記加熱手段は、前記受像層をも加熱溶融可能に構成され、前記加熱手段と前記加圧手段とで、加熱溶融された前記トナー像を加熱溶融された前記受像層に埋入させることを特徴とする。
請求項8にかかる画像形成装置は、請求項1乃至7の何れか1項において、前記像担持体に前記静電潜像及び前記トナー像を形成させるトナー像形成手段を備え、前記トナー像形成手段は、複数色のトナー像を前記像担持体に重ね合わせ可能に複数設けられていることを特徴とする。
請求項9にかかる画像形成装置は、請求項1乃至8の何れか1項において、前記トナー像形成手段は、前記像担持体と非接触に、かつ、前記像担持体と対向するように配置され、トナーの浮遊状態を形成させて前記静電潜像が形成された現像領域に前記トナーを搬送させるトナー担持体を備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項10にかかる画像形成装置は、請求項9において、前記トナー担持体は、移動可能に構成されると共に、その表面部に複数の電極が所定の間隔をおいて並設されてなり、夫々の前記電極に電圧を印加させて電極間に振動電界を形成させ、該振動電界によって前記トナーの浮遊状態を形成させると共に、当該トナー担持体の移動によって前記現像領域に前記トナーを搬送させることを特徴とする。
請求項11にかかる画像形成装置は、請求項9において、前記トナー担持体は、その表面部に複数の電極が所定の間隔をおいて並設されてなり、夫々の前記電極に多相の電圧を印加させて電極間に進行波電界を形成させ、該進行波電界によって前記トナーを浮遊させながら前記現像領域に前記トナーを搬送させることを特徴とする。
請求項12にかかる画像形成装置は、請求項1乃至11の何れか1項において、前記像担持体の、前記静電潜像及び前記トナー像を形成させる面は、100μm四方での算術表面粗さRaが概ね0.4μm以下の平滑性を備えていることを特徴とする。
請求項13にかかる画像形成装置は、請求項3乃至12の何れか1項において、前記像担持体の、前記静電潜像及び前記トナー像を形成させる面を研磨させて、前記光沢面、または、前記平滑性を維持させる研磨手段を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項14にかかる画像形成方法は、像担持体に静電潜像を形成し、該静電潜像に基づいてトナー像を前記像担持体に形成し、前記像担持体に形成した前記トナー像を加熱溶融し、前記像担持体に転写材を圧接して加熱溶融した前記トナー像を前記転写材に定着することを特徴とする。
請求項15にかかる画像形成方法は、像担持体に静電潜像を形成し、該静電潜像に基づいてトナー像を前記像担持体に形成し、前記像担持体に転写材を圧接すると同時に前記トナー像を加熱溶融して、前記転写材に前記トナー像を転写すると同時に定着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、像担持体に静電潜像を形成し、その静電潜像に基づいてトナー像を像担持体に形成し、加熱手段が、像担持体に形成したトナー像を加熱溶融し、加圧手段が、像担持体に転写材を圧接して加熱溶融したトナー像を直接転写材に定着して、静電潜像の形成からトナー像の定着(転写材への)に至るまで、静電気力を利用したトナー像の転写を行わないから、画像品質を向上することができる。特に、中間調を表現するドットやラインの乱れが生じないから、画像品質を銀塩写真に近づけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明にかかる画像形成装置の実施の形態を、添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態にかかる画像形成装置は、図1に示すように、像担持体1と、トナー像形成手段2と、ヒーター3(加熱手段)と、定着ローラ4(加圧手段)と、冷却手段5と、剥離ローラ6(剥離手段)と、研磨手段7と、クリーニング手段8とを備えて構成されている。なお、本実施の形態にかかる画像形成装置は、所望の画像データに基づいてトナー像を形成させ、そのトナー像を転写材Wに定着・固化させて、所望の画像を転写材Wに形成させるもので、画像データの生成に関する構成部は省略する。
像担持体1は、耐熱性を有する所要幅の無端ベルト状に形成された、アモルファスシリコン等の無機感光体または有機感光体からなり、略長方形状の掛架形状となるように配設された4箇所のローラに掛架されている。なお、本実施の形態では、この像担持体1は反時計方向に回動するようになっている。
この像担持体1は、後述するトナー像形成手段2によって、ベルト表面に静電潜像と、その静電潜像に基づいてトナー像が形成される構成部材であると共に、後述する定着ローラ4で加熱及び加圧されて、トナー像を転写材Wに転写と同時に定着させる構成部材にもなっている。
また、この像担持体1は、静電潜像及びトナー像を形成させる面、すなわちベルト表面が研磨処理によって光沢面になっており、その平滑性は、100μm四方での算術表面粗さRaが概ね0.4μm以下になっている。なお、本実施の形態では、算術表面粗さRaを算出するにあたり、100μm四方を用いているが、算術表面粗さRa値は、測定範囲によって変化するため、これに限定されない。
なお、後述する研磨手段7によって、この平滑性は維持されるようになっている。
【0011】
トナー像形成手段2は、帯電部21Y…と、露光部22Y…と、現像部23Y…とを備えて構成されている。このトナー像形成手段2は、CMYK色分解された4つの画像データに基づいて各色のトナー像を形成させるために、略長方形状に掛架された像担持体1の一方の長辺側に沿うように、4つ並設されている。
なお、像担持体1を掛架させた4箇所のローラのうち、トナー像形成手段2配設側の2個所のローラは、像担持体1を張架させるローラであり、このローラと対向した2個所のローラのうち、像担持体1の回動方向上流側のローラが後述する定着ローラ4となっており、像担持体1の回動方向下流側のローラが後述する剥離ローラ6になっている。その詳細は後述する。
なお、本実施の形態では、像担持体1の回動方向上流側(図1において上方)から下流側に向かって順に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、クロ(K)のトナー像を形成させるトナー像形成手段2が配設されているが、この配設順は特に限定されない。
【0012】
帯電部21Y…は、像担持体1(のベルト表面)を一様に帯電させる、例えば、スコロトロン帯電装置からなる。なお、1色目(イエロー)の帯電部21Yは、像担持体1のベルト表面に接触・非接触を問わないが、少なくとも、2色目以降の帯電部21M…は、1色目のトナー像形成手段2によって像担持体1上に形成されたイエローのトナー像を乱さないように、非接触の帯電装置が配設されている。
露光部22Y…は、波長780nmのレーザーダイオード素子からなる発光体を備え、一様に帯電された像担持体1上に、画像形状に合わせた露光を行って、光電効果による静電潜像を形成させるようになっている。
現像部23Y…は、図2に示すように、攪拌スクリュ231と、マグローラ232と、トナー担持ローラ233(トナー担持体)とを備えて構成されている。
【0013】
攪拌スクリュ231は、磁性キャリア粉にトナーを重量比で約6wt%となるように混合させてなる2成分現像剤Dを貯溜させるケース234内に、回動可能に並設された螺旋状の一対の軸体からなる。
マグローラ232は、永久磁石が内装された円筒軸状に形成され、開口されたケース234の上部に、攪拌スクリュ231と並設されるように、かつ、回動可能に設けられている。そして、このマグローラ232は、攪拌スクリュ231で攪拌された2成分現像剤Dを吸着させて、後述するトナー担持ローラ233までトナーを搬送させるようになっている。
トナー担持ローラ233は、図3に示すように、丸軸状に形成された支持基体235と、その支持基体235の外周にアルミニウムを蒸着させてなる複数の電極236と、支持基体235と電極236とを覆った樹脂コート237とを備えて構成され、図1に示すように、マグローラ232と像担持体1との間に、これらの構成部材と接触しないように回動可能に設けられている。なお、図3(図4、図6、図7も同じ)は、トナー担持ローラ233の円形側から見た表層部分の模式的な拡大図を示している(なお、便宜上、凸湾曲状ではなく平坦状に図示している)。
【0014】
さらに、電極236は、図3に示すように、所定の間隔をおいて隣接された電極236同士が同極とならないように交互に電気的接続がなされ、図5に示すように、周期的に交互に異なる波形(位相が180度ずれている)の電圧Vaと電圧Vbとが印加されることで、電圧Vaが印加された電極236と電圧Vbが印加された電極236との間に、振動電界が形成されるようになっている。
トナーは、図5に示す印加によって形成された振動電界によって、図4に示すように、ホッピング(トナーが浮遊している状態、すなわち、クラウド状態が形成)され、トナー担持ローラ233上にクラウド状態Aとして担持される。なお、図5では、電圧Vaと電圧Vbはパルス電圧として示しているが、正弦波で形成される通常の交流電圧であってもよい。
また、本実施の形態では、電極236を2分割させ交互に配置させて、交互に異なる波形の電圧を印加させているが、電極236を3分割以上に分割させ、それぞれに異なる波形の電圧を印加させるように構成して、トナーをホッピングさせる振動電界を形成させても良い。
【0015】
マグローラ232によってトナー担持ローラ233に搬送されたトナーは、このようにして、クラウド状態A(トナーが浮遊している状態)が形成され、トナー担持ローラ233の回動によって、現像領域(像担持体1に形成された静電潜像部分)へと搬送されるようになっている。
そして、現像領域に搬送されたトナーは、静電潜像部分に吸着してトナー像を形成させる。一方、現像に要しなかったトナーは再びマグローラ232に戻り、マグローラ232の回動に追随した2成分現像剤Dの穂によって、容易に掻き取られ、または、均される。
これを繰り返すことによって、トナー担持ローラ233上には常にほぼ一定量のトナーがクラウド状態Aとして担持される。なお、トナー担持ローラ233へのトナー供給法として2成分現像方式を採用したが、現像装置の構成としてはこれに限定されるわけではない。
【0016】
トナー担持ローラ233の他の態様を図6〜図8に示す。なお、他の態様のトナー担持ローラの各構成部材は、上記したトナー担持ローラ233の各構成部材と実質的に同じ(電極が3分割となるように配線)であるため、各構成部材の符号は同一符号を付す。
他の態様のトナー担持ローラは、図6に示すように、上記したトナー担持ローラ233と同様に、丸軸状に形成された支持基体235と、その支持基体235の外周にアルミニウムを蒸着させてなる複数の電極236と、支持基体235と電極236とを覆った樹脂コート237とを備えて構成されているが、その電極236が、所定の間隔をおいて隣接された電極236同士が同極とならないように交互に電気的接続がなされた3分割(それ以上の分割も可)されている。そして、その3分割された電極236に印加させる電圧が、図8に示したように、位相がずらされて、進行波電界が生じるようになっている。
すなわち、夫々の電極236に異なる波形の電圧Va、Vb、Vcを印加すると、上記と同様に、トナーは、電圧Vaを印加した電極236と電圧Vbを印加した電極236と電圧Vcを印加した電極236との間をホッピングして、クラウド状態A(トナーが浮遊している状態)が形成される。
さらに、図8で示すように、Va、Vb、Vcの位相を適切にずらすことによって、トナーを搬送する進行波電界が生じ、これによってトナーを搬送することができる。なお、図7において、図面右方に向かってトナーが搬送される。
したがって、トナー担持ローラ233自体を機械的に回転させることなく、現像部23Y(像担持体1との対向部)へクラウド状態Aのトナーを運ぶことができる。
【0017】
ヒーター3(加熱手段)は、像担持体1上に重ね合わせ形成されたフルカラートナー像を加熱溶融させる熱源にとなっており、図示しない制御部と接続されて、その温度がコントロールされるようになっている。
定着ローラ4(加圧手段)は、アルミ芯金上にシリコーンゴムの弾性層が形成された中空状に形成されている。そして、この定着ローラ4は、図1に示すように、トナー像形成手段2配設側の2個所のローラと対向配置されたローラのうち、像担持体1の回動方向上流側に回動可能に配置されたローラと、像担持体1を挟んでそのローラと対向配置されたローラとで一対で構成されている。
この一対の定着ローラ4は、上記したヒーター3が内装されて、定着ローラ4の外周面が所要の温度まで昇温されるようになっており、さらに、図示しない制御部によって、その所要温度が維持されるようになっている。
この一対の定着ローラ4は、用紙搬送路から所定のタイミングでもって搬送されてきた転写材Wと、像担持体1に形成されたフルカラートナー像とを、所定の温度、所定の圧力でもって、重ね合わせながら移動させるようになっている。すなわち、像担持体1に転写材Wを圧接させると同時に像担持体1に形成されたフルカラートナー像を加熱溶融させて、トナー像を転写材Wに転写させると同時に定着させるようになっている。
【0018】
冷却手段5は、外面に冷却面を備えた筐体と、その冷却面を水冷または空冷によって冷却させる冷却部とを備えてなり、図1に示すように、定着ローラ4より像担持体1の回動方向下流側に、冷却面が像担持体1のベルト裏面と摺接されるように配設されている。
この冷却手段5は、加圧手段で転写材Wに定着された溶融状態(または多少冷却されて半溶融状態)のトナー像を像担持体1のベルト裏面から冷却させて完全に固化させるものであるが、その機能上、後述する剥離ローラ6においてトナー像が自然冷却されて固化していれば必ずしも必要ではない。
しかしながら、そのような自然冷却を期待する場合、像担持体1の回動速度や、定着ローラ4から後述する剥離ローラ6に至る距離等を特に考慮する必要が生じ、装置の小型化やタクトタイムの短縮化に繋がらないことから、上記した冷却手段5を備えることは好適である。
【0019】
剥離ローラ6(剥離手段)は、丸軸状に形成され、図1に示すように、トナー像形成手段2配設側の2個所のローラと対向配置されたローラのうち、像担持体1の回動方向下流側に回動可能に配置されたローラであり、転写材Wの剛性(転写材Wのコシ)を利用して、像担持体1から転写材Wを剥離させるようになっている。
なお、本実施の形態では、剥離手段をローラにして像担持体1を掛架させているが、このものに替えて、像担持体1に近接させたブレード状の部材で、搬送された転写材Wを捲り起こすようにしても良い。さらに、剥離ローラ6で剥離されなかった転写材Wを、そのブレード状の部材で捲り起こすように2段階で剥離手段を構成しても良い。
【0020】
研磨手段7は、トナー像形成手段2配設側に配設された2個所のローラのうち、像担持体1の回動方向上流側(図1において上方)に配設されたローラと、剥離ローラ6との間に、像担持体1を挟むように対向配置された回動可能な一対のローラからなる。
すなわち、研磨手段7は、像担持体1のベルト表面側に回動可能に設けられ、例えばアルミ芯金上にポリウレタン、ポリアミド等の表面部材が形成されると共に、その表面部材にダイヤモンド、シリカ、炭化シリコン、アルミナ、酸化クロム等の微粒子からなる砥粒が固着された研磨ローラ71と、像担持体1のベルト裏面側に研磨ローラ71と対向するように設けられ、像担持体1を受ける支持ローラ72とを備えて構成されている。
このように構成された研磨手段7は、研磨ローラ71の回動よる周速度が、像担持体1の移動速度より速くなるように設定されることで、像担持体1のベルト表面を効率よく研磨されるようになっている。この研磨手段7によって、像担持体1のベルト表面を研磨させて、上記した光沢面、平滑性を維持させるようになっている。なお、支持ローラ72は、像担持体1の移動に伴って従動されるようになっている。
また、この研磨ローラ71は、常時、像担持体1のベルト表面に当接させて研磨処理を行っても良いが、研磨ローラ71を像担持体1のベルト表面と接離可能に設けて、所定の枚数毎に所定時間に亘って研磨処理を行うように構成しても良い。
【0021】
さらに、表面部材に固着された砥粒に替えて、遊離砥粒を含むスラリーを表面部材に供給させる構成にしても良い。この場合、像担持体1上にスラリーが残らないように、像担持体1上のスラリーを除去させるスラリー除去部を設ける。
なお、本実施の形態では研磨手段7として研磨ローラ71を例示しているが、研磨ベルトにしても良い。また、研磨フィルムを用いて像担持体1のベルト表面を研磨させてもよい。
クリーニング手段8は、像担持体1上の異物(例えば、転写残トナーや研磨粉)を掻き取って清掃させるブレード状の部材からなる清掃部と、像担持体1を除電させてクリアな状態にさせる露光部とを備えて構成される。
このうち、清掃部は、ブレード状の部材を例示したが、このものに替えて、ブラシ状またはローラ状の部材を用いても良い。
【0022】
次に、以上のように構成された本実施の形態にかかる画像形成装置の一連の動作を説明するが、その説明の前に、本実施の形態にかかる画像形成装置に用いられる転写材Wについて説明する。
転写材Wは、紙材、OHPシート等、可撓性を有するシート状部材であれば、その種類は特に限定されないが、本実施の形態にかかる画像形成装置は、特に、熱可塑性樹脂の受像層が表面に形成された転写材W(紙体)を用いることで、銀塩写真のような、均一な高光沢で階調豊かな画像を得ることができる。したがって、以下、その転写材Wを用いての一連の動作を説明する。なお、像担持体1は反時計方向に回動しているものとする。また、転写材Wに転写させる画像のデータ(色分解された各色の画像データを含む)は、既に生成されており、その各色の画像データに基づいて夫々のトナー像形成手段2は、トナー像を形成するものとする。
まず、イエローのトナー像形成手段2がイエロートナー像を像担持体1上に形成する。すなわち、帯電部21Y…が像担持体1を一様に帯電し、次いで、露光部22Y…から出力した書き込み光によってイエロー像の静電潜像を形成し、その静電潜像に基づいて現像部23Y…がイエロートナー像を像担持体1上に形成する。
【0023】
次に、マゼンタのトナー像形成手段2が、イエローのトナー像形成手段2と同じ画像形成プロセスによって、イエロートナー像の上から、マゼンタトナー像を重ね合わせるように形成する。同様に、シアン、ブラックの各トナー像形成手段2が、シアントナー像、ブラックトナー像を重ね合わせるように形成して、像担持体1上にフルカラートナー像を形成する。
次いで、このようにして像担持体1に形成したフルカラートナー像と、用紙搬送路から所定のタイミングでもって搬送してきた転写材Wとが、一対の定着ローラ4部分で対峙、重畳し、圧接しながら移動する。
このとき、内装したヒーター3によって所定の温度に昇温している一対の定着ローラ4によって、未定着のフルカラートナー像と転写材Wの受像層が加熱溶融し、所定の表面粗さで光沢面に形成した像担持体1のベルト表面によって、フルカラートナー像は凹凸なく受像層に埋入する(フルカラートナー像と受像層とが、所定の表面粗さでもって面一になる)。これと同時に、転写材Wが像担持体1に密着する。
このように、像担持体1に形成したフルカラートナー像は、フルカラートナー像を受像層に埋め込んで、画像のベタ部、中間調部、非画像部の全ての画像領域に亘って表面を平らにすると共に、静電気力による転写を行わず、直接、用紙転写材Wに定着して、中間調を表現するドットやライン等、フルカラートナー像の乱れを防止する。
【0024】
次いで、像担持体1に密着した転写材Wは、冷却手段5を通過することで、フルカラートナー像が冷却固化して転写材Wに完全に定着する。
そして、転写材Wが剥離ローラ6に差し掛かると、剥離ローラ6の曲率でもって形成した像担持体1の屈曲部から、フルカラートナー像が定着した転写材Wが、自身の剛性(コシ)によって剥離する。
そして、転写材Wが剥離した像担持体1は、そのまま移動をし続け、研磨手段7で像担持体1のベルト表面を研磨し、次いで、クリーニング手段8の清掃部で像担持体1上の異物を掻き取って清掃し、クリーニング手段8の露光部で像担持体1を除電させてクリアな状態にして、一連の動作が終了する。
このように本実施の形態にかかる画像形成装置は、像担持体1に静電潜像を形成し、その静電潜像に基づいてフルカラートナー像を像担持体1に形成し、ヒーター3を内装した定着ローラ4が、像担持体1に形成したフルカラートナー像と転写材Wの受像層を加熱溶融と同時に圧接して、フルカラートナー像を直接転写材Wにフラットに定着し、冷却固化してから、転写材Wを像担持体1から剥離している。
【0025】
この一連の動作には、静電潜像の形成からトナー像の定着(転写材Wへの)に至るまで、静電気力を利用したトナー像の転写がなく、したがって、例えば、中間調を表現するドットやライン等、フルカラートナー像の乱れが生じないから、画像品質を向上することができる。特に、受像層を有する転写材Wを用いることで、転写材Wの表面が、像担持体1のベルト表面(光沢面)に沿った凹凸のないフルカラー像を形成することができ、画像品質をより銀塩写真に近づけることができるようになっている。
加えて、上記した現像部23Y…は、クラウド状態Aを形成して現像するように構成しているので、トナー担持ローラ233とトナーとの付着量の影響を小さくすることができる。したがって、現像領域で小さな現像電界にまでトナーが応答することができ、さらにトナー担持ローラ233とトナーの付着力ムラの影響を減少させることができる。つまり、このような点から、高解像度の微小均一ドットの再現性に有利となり、高精細なトナー像を形成することができる。しかも、静電気力による転写を行わない構成にしたから、この高精細のトナー像を乱すことなく転写材Wに再現できる。
【0026】
以上、本実施の形態にかかる画像形成装置を説明したが、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
例えば、加熱手段と加圧手段を隣接して配置させても良い。すなわち、トナー像を加熱溶融した直後に加圧して転写材に定着しても良い。
また、像担持体に静電潜像を形成し、その静電潜像に基づいてトナー像を像担持体に形成し、像担持体に形成したそのトナー像を加熱溶融し、像担持体に転写材を圧接して加熱溶融したトナー像を、転写材に定着するとした画像形成方法でも良い。この場合、転写材に加熱溶融したトナー像を転写すると同時に定着するようにすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施の形態にかかる画像形成装置の構成図である。
【図2】現像部の拡大した構成図である。
【図3】トナー担持ローラの表層部分の拡大図である。
【図4】トナーのクラウド状態を示すトナー担持ローラの表層部分の拡大図である。
【図5】各電極へ印加させる電圧の波形図である。
【図6】他の態様の、トナー担持ローラの表層部分の拡大図である。
【図7】他の態様の、トナーのクラウド状態を示すトナー担持ローラの表層部分の拡大図である。
【図8】各電極へ印加させる電圧の波形図である。
【符号の説明】
【0028】
1 像担持体、2 トナー像形成手段、21Y、21M、21C、21K 帯電部、22Y、22M、22C、22K 露光部、23Y、23M、23C、23K 現像部、231 攪拌スクリュ、232 マグローラ、233 トナー担持ローラ、234 ケース、235 支持基体、236 電極、237 樹脂コート、3 ヒーター(加熱手段)、4 定着ローラ(加圧手段)、5 冷却手段、6 剥離ローラ(剥離手段)、7 研磨手段、71 研磨ローラ、72 支持ローラ、8 クリーニング手段、W 転写材、D 2成分現像材、A クラウド状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成されると共に該静電潜像に基づいて形成されたトナー像を担持させる像担持体と、
該像担持体に形成された前記トナー像を加熱溶融させる加熱手段と、
前記像担持体に転写材を圧接させて加熱溶融された前記トナー像を前記転写材に定着させる加圧手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記加圧手段を加熱させるように配設され、
前記加圧手段は、前記像担持体に前記転写材を圧接させると同時に前記像担持体に形成された前記トナー像を加熱溶融させて、前記像担持体に形成された前記トナー像を前記転写材に転写させると同時に定着させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像担持体は、複数のローラに掛架された無端状のベルト体からなり、前記静電潜像及び前記トナー像を形成させる面が、光沢面であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記加熱手段は、ヒーターからなり、前記加圧手段は、前記ヒーターを内装させるローラであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
加熱溶融された前記トナー像の固化後に前記像担持体から前記転写材を剥離させる剥離手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記加圧手段で前記転写材に定着された前記トナー像を冷却させて固化させる冷却手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記転写材が、その表面に熱可塑性樹脂を主成分とした受像層を設けてなる場合において、
前記加熱手段は、前記受像層をも加熱溶融可能に構成され、
前記加熱手段と前記加圧手段とで、加熱溶融された前記トナー像を加熱溶融された前記受像層に埋入させることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記像担持体に前記静電潜像及び前記トナー像を形成させるトナー像形成手段を備え、前記トナー像形成手段は、複数色のトナー像を前記像担持体に重ね合わせ可能に複数設けられていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記トナー像形成手段は、前記像担持体と非接触に、かつ、前記像担持体と対向するように配置され、トナーの浮遊状態を形成させて前記静電潜像が形成された現像領域に前記トナーを搬送させるトナー担持体を備えていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記トナー担持体は、移動可能に構成されると共に、その表面部に複数の電極が所定の間隔をおいて並設されてなり、夫々の前記電極に電圧を印加させて電極間に振動電界を形成させ、該振動電界によって前記トナーの浮遊状態を形成させると共に、当該トナー担持体の移動によって前記現像領域に前記トナーを搬送させることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記トナー担持体は、その表面部に複数の電極が所定の間隔をおいて並設されてなり、夫々の前記電極に多相の電圧を印加させて電極間に進行波電界を形成させ、該進行波電界によって前記トナーを浮遊させながら前記現像領域に前記トナーを搬送させることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記像担持体の、前記静電潜像及び前記トナー像を形成させる面は、100μm四方での算術表面粗さRaが概ね0.4μm以下の平滑性を備えていることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記像担持体の、前記静電潜像及び前記トナー像を形成させる面を研磨させて、前記光沢面、または、前記平滑性を維持させる研磨手段を備えていることを特徴とする請求項3乃至12の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
像担持体に静電潜像を形成し、該静電潜像に基づいてトナー像を前記像担持体に形成し、前記像担持体に形成した前記トナー像を加熱溶融し、前記像担持体に転写材を圧接して加熱溶融した前記トナー像を前記転写材に定着することを特徴とする画像形成方法。
【請求項15】
像担持体に静電潜像を形成し、該静電潜像に基づいてトナー像を前記像担持体に形成し、前記像担持体に転写材を圧接すると同時に前記トナー像を加熱溶融して、前記転写材に前記トナー像を転写すると同時に定着することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−129544(P2008−129544A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317675(P2006−317675)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】