説明

画像形成装置、描画処理制御プログラム及び描画処理制御方法

【課題】ハードウェア及びソフトウェアによって描画処理可能な画像形成装置において、画像形成出力の生産性を保ちつつ消費電力の低減を図ること。
【解決手段】ディスプレイリストの生成に応じて、画像形成出力するべき画像の内容を示す判断情報を取得し、プリントエンジン160のPPMに応じて定められたHA判断条件情報と、取得した判断情報に基づいて判断される描画処理の処理量とに基づいて、ハードウェアアクセラレータ230による描画処理の実行要否を判断するハードウェア描画処理制御部212を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、描画処理制御プログラム及び描画処理制御方法に関し、特に、画像形成装置における画像処理の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報の電子化が推進される傾向にあり、電子化された情報の出力に用いられるプリンタやファクシミリ及び書類の電子化に用いるスキャナ等の画像処理装置は欠かせない機器となっている。このような画像処理装置は、撮像機能、画像形成機能及び通信機能等を備えることにより、プリンタ、ファクシミリ、スキャナ、複写機として利用可能な複合機として構成されることが多い。
【0003】
このような画像処理装置のうち、電子化された情報の出力に用いるプリンタにおいては、入力された画像情報に基づいてプリントエンジンが画像形成出力を実行するための描画情報を生成する画像処理(以降、描画処理とする)が行われる。この画像処理は、専用のハードウェアによって実行される他、CPU(Central Processing Unit)等の演算手段がソフトウェアに従って動作することにより実行される。
【0004】
他方、装置の運用制御においては、可能な限り消費電力を低減した制御が望まれる。例えば、画像形成装置の消費電力を一定以下に保つため、装置の環境を測定し、その測定結果に従って描画処理を実行する前の中間言語の変更する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなハードウェア及びソフトウェアによって描画処理可能な画像形成装置においては、一般的に、描画処理に要する時間を可能な限り短縮するため、ハードウェアとソフトウェアとの処理の並列度を向上し、ハードウェアとソフトウェアとのいずれか一方に待機時間が発生しないように制御することが一般的である。
【0006】
しかしながら、画像形成装置において画像形成出力を実行する画像形成部であるプリントエンジンには、単位時間あたりに出力可能な枚数に限界がある。これは、例えば、PPM(Page Pre Minute)として定められている。そして、このPPMを超えて描画処理を高速化することにより、プリントエンジンがあるページの画像形成出力を実行中に次のページ以降の描画情報についての描画処理が完了したとしても、生成された描画情報はプリントエンジンが実行中の画像形成出力を完了するまで記憶媒体に保持されて待機することとなる。
【0007】
このような状態は、プリントエンジンに最大限のPPMを発揮させた状態ではあるが、不必要に描画処理が高速化された状態でもある。そして、描画処理の高速化のために描画処理を実行するハードウェアによって消費される電力は、無駄な消費電力ということになる。
【0008】
従って、描画処理の処理負荷が低く、ソフトウェアによる描画処理によってプリントエンジンのPPMを発揮させることが可能であるならば、ハードウェアには描画処理を実行させずに電力供給を停止し、省電力化を図ることが好ましい。即ち、描画処理の高速化のみを考慮するのではなく、必要な描画処理の速度を考慮した上で、ハードウェアとソフトウェアとの処理の分散割合を最適化することが望まれる。
【0009】
これに対して、特許文献1に開示された技術においては、消費電力の低減は考慮されているが、プリントエンジンのPPMを発揮させ、画像形成出力の生産性を保つという観点は考慮されていない。
【0010】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、ハードウェア及びソフトウェアによって描画処理可能な画像形成装置において、画像形成出力の生産性を保ちつつ消費電力の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、画像形成出力を実行するための画像処理をハードウェア及びソフトウェアによって実行可能な画像形成装置であって、ページ記述言語に基づいて得られた描画命令に基づき、描画すべき図形毎に情報がまとめられた図形情報を生成する図形情報生成部と、画像形成部が画像形成出力を実行するための描画情報を、前記生成された図形情報に基づいて生成する描画処理をソフトウェア処理によって実行する描画情報生成部と、前記描画処理をハードウェアとして実行する描画情報生成回路と、前記描画情報生成回路による前描画処理の実行を制御する描画処理制御部とを含み、前記描画処理制御部は、前記図形情報の生成に応じて、画像形成出力するべき画像の内容を示す出力内容情報を取得し、画像形成出力を実行する画像形成部が単位時間当たりに画像形成出力可能な枚数に応じて定められた基準値と、前記取得した出力内容情報に基づいて判断される前記描画処理の処理量とに基づいて、前記描画情報生成回路による前記描画処理の実行要否を判断することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の他の態様は、画像形成出力を実行するための画像処理をハードウェアとして実行する描画情報生成回路及びソフトウェア処理によって実行する描画情報生成部とを含む画像形成装置において画像形成出力を実行するための描画情報の生成を制御する描画処理制御プログラムであって、ページ記述言語に基づいて得られた描画命令に基づき、描画すべき図形毎に情報がまとめられた図形情報を生成するステップと、前記図形情報の生成に応じて、画像形成出力するべき画像の内容を示す出力内容情報を取得するステップと、画像形成出力を実行する画像形成部が単位時間当たりに画像形成出力可能な枚数に応じて定められた基準値と、前記取得した出力内容情報に基づいて判断される前記描画処理の処理量とに基づいて、前記描画情報生成回路による前記描画処理の実行要否を判断するステップとを画像形成装置に実行させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の更に他の態様は、画像形成出力を実行するための画像処理をハードウェアとして実行する描画情報生成回路及びソフトウェア処理によって実行する描画情報生成部とを含む画像形成装置において画像形成出力を実行するための描画情報の生成を制御する描画処理制御方法であって、ページ記述言語に基づいて得られた描画命令に基づき、描画すべき図形毎に情報がまとめられた図形情報を生成し、前記図形情報の生成に応じて、画像形成出力するべき画像の内容を示す出力内容情報を取得し、画像形成出力を実行する画像形成部が単位時間当たりに画像形成出力可能な枚数に応じて定められた基準値と、前記取得した出力内容情報に基づいて判断される前記描画処理の処理量とに基づいて、前記描画情報生成回路による前記描画処理の実行要否を判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ハードウェア及びソフトウェアによって描画処理可能な画像形成装置において、画像形成出力の生産性を保ちつつ消費電力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置の機能構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像処理部に含まれる機能を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る描画コアモジュール及びハードウェアアクセラレータの機能構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るハードウェア描画処理制御部の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る判断情報の例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るHA判断条件情報の例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態及び比較例におけるプリントエンジンの生産性と描画処理時間との関係を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る描画処理の順序を示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係るHA判断条件情報の例を示す図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係るHA判断条件情報の例を示す図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係るHA判断動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明の他の実施形態に係る描画コアモジュール及びハードウェアアクセラレータの機能構成を示す図である。
【図14】本発明の他の実施形態に係るHA判断条件情報の例を示す図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係るHA判断条件情報の例を示す図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係るHA判断動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態においては、プリンタ、スキャナ、複写機等の機能を含む複合機(MFP:Multi Function Peripheral)としての画像形成装置を例として説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、一般的なサーバやPC(Personal Computer)等の情報処理端末と同様の構成に加えて、画像形成出力に係るエンジンを有する。即ち、本実施形態に係る画像形成装置1は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)20、ROM(Read Only Memory)30、エンジン40、HDD(Hard Disk Drive)50及びI/F60がバス90を介して接続されている。また、I/F60にはLCD(Liquid Crystal Display)70及び操作部80が接続されている。
【0018】
CPU10は演算装置であり、画像形成装置1全体の動作を制御する。RAM20は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM30は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。エンジン40は、画像形成装置1において実際に画像形成を実行する機構である。エンジン40には、画像形成出力を実行するためのプリントエンジンや、原稿を読み取るためのスキャナユニットの他、プリントエンジンが画像形成出力を実行するための画像情報を生成するハードウェアアクセラレータが含まれる。
【0019】
HDD50は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納されている。I/F60は、バス90と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD70は、ユーザが画像形成装置1の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部80は、キーボードやマウス等、ユーザが画像形成装置1に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
【0020】
このようなハードウェア構成において、ROM30やHDD50若しくは図示しない光学ディスク等の記録媒体に格納されたプログラムがRAM20に読み出され、CPU10がそれらのプログラムに従って演算を行うことによりソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係る画像形成装置1の機能を実現する機能ブロックが構成される。
【0021】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る画像形成装置1の機能構成について説明する。図2は、本実施形態に係る画像形成装置1の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、コントローラ100、ADF(Auto Documennt Feeder:原稿自動搬送装置)110、スキャナユニット120、排紙トレイ130、ディスプレイパネル140、給紙テーブル150、プリントエンジン160、排紙トレイ170及びネットワークI/F180を有する。
【0022】
また、コントローラ100は、主制御部101、エンジン制御部102、入出力制御部103、画像処理部104及び操作表示制御部105を有する。図2に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、スキャナユニット120、プリントエンジン160を有する複合機として構成されている。尚、図2においては、電気的接続を実線の矢印で示しており、用紙の流れを破線の矢印で示している。
【0023】
ディスプレイパネル140は、画像形成装置1の状態を視覚的に表示する出力インタフェースであると共に、タッチパネルとしてユーザが画像形成装置1を直接操作し若しくは画像形成装置1に対して情報を入力する際の入力インタフェース(操作部)でもある。ネットワークI/F180は、画像形成装置1がネットワークを介して他の機器と通信するためのインタフェースであり、Ethernet(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)インタフェースが用いられる。
【0024】
コントローラ100は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成される。具体的には、ROM30や不揮発性メモリ並びにHDD50や光学ディスク等の不揮発性記録媒体に格納されたファームウェア等の制御プログラムが、RAM20等の揮発性メモリ(以下、メモリ)にロードされ、CPU10がそれらのプログラムに従って演算を行うことにより構成されるソフトウェア制御部と、集積回路などのハードウェアとによってコントローラ100が構成される。コントローラ100は、画像形成装置1全体を制御する制御部として機能する。
【0025】
主制御部101は、コントローラ100に含まれる各部を制御する役割を担い、コントローラ100の各部に命令を与える。エンジン制御部102は、プリントエンジン160やスキャナユニット120等を制御若しくは駆動する駆動手段としての役割を担う。入出力制御部103は、ネットワークI/F180を介して入力される信号や命令を主制御部101に入力する。また、主制御部101は、入出力制御部103を制御し、ネットワークI/F180を介して他の機器にアクセスする。
【0026】
画像処理部104は、主制御部101の制御に従い、入力された印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成する。この描画情報とは、画像形成部であるプリントエンジン160が画像形成動作において形成すべき画像を描画するための情報である。また、印刷ジョブに含まれる印刷情報とは、PC等の情報処理装置にインストールされたプリンタドライバによって画像形成装置1が認識可能な形式に変換された情報であり、本実施形態においては、PDL(Page Description Language)によって記述された情報である。換言すると、上記印刷情報とは、画像形成出力すべきページの情報が記述されたページ情報である。尚、本実施形態においては、ページ記述言語としてPDLを用いる場合を例とするが、他の言語であっても良い。
【0027】
画像処理部104は、上述したようなハードウェアアクセラレータと、CPU20がプログラムに従って演算を行うことにより構成されるソフトウェアとによって実現される。このようにハード及びソフトを並列で動作させることにより、上述した描画情報の生成を高効率で短期間に完了することができる。
【0028】
他方、プリントエンジン160の生産性、即ちPPM(Page Per Minute)以上に描画情報の生成を早くしても無意味である。そして、描画情報の生成に要する時間は、夫々のページを構成する画像の内容によって変わるため、一定ではない。そのような事情に鑑み、出力するべき画像の内容に応じてハードウェアアクセラレータの使用を切り替えることが本実施形態に係る要旨である。画像処理部104の機能については、後に詳述する。操作表示制御部105は、ディスプレイパネル140に情報表示を行い若しくはディスプレイパネル140を介して入力された情報を主制御部101に通知する。
【0029】
画像形成装置1がプリンタとして動作する場合は、まず、入出力制御部103がネットワークI/F180を介して印刷ジョブを受信する。入出力制御部103は、受信した印刷ジョブを主制御部101に転送する。主制御部101は、印刷ジョブを受信すると、画像処理部104を制御して、印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成させる。
【0030】
画像処理部104によって描画情報が生成されると、エンジン制御部102は、生成された描画情報に基づき、給紙テーブル150から搬送される用紙に対して画像形成を実行する。即ち、プリントエンジン160が画像形成部として機能する。プリントエンジン160の具体的態様としては、インクジェット方式による画像形成機構や電子写真方式による画像形成機構等を用いることが可能である。プリントエンジン160によって画像形成が施された文書は排紙トレイ170に排紙される。
【0031】
画像形成装置1がスキャナとして動作する場合は、ユーザによるディスプレイパネル140の操作若しくはネットワークI/F180を介して外部のクライアント用の情報処理端末等から入力されるスキャン実行指示に応じて、操作表示制御部105若しくは入出力制御部103が主制御部101にスキャン実行信号を転送する。主制御部101は、受信したスキャン実行信号に基づき、エンジン制御部102を制御する。
【0032】
エンジン制御部102は、ADF110を駆動し、ADF110にセットされた撮像対象原稿をスキャナユニット120に搬送する。また、エンジン制御部102は、スキャナユニット120を駆動し、ADF110から搬送される原稿を撮像する。また、ADF110に原稿がセットされておらず、スキャナユニット120に直接原稿がセットされた場合、スキャナユニット120は、エンジン制御部102の制御に従い、セットされた原稿を撮像する。即ち、スキャナユニット120が撮像部として動作する。
【0033】
撮像動作においては、スキャナユニット120に含まれるCCD等の撮像素子が原稿を光学的に走査し、光学情報に基づいて生成された撮像情報が生成される。エンジン制御部102は、スキャナユニット120が生成した撮像情報を画像処理部104に転送する。画像処理部104は、主制御部101の制御に従い、エンジン制御部102から受信した撮像情報に基づき画像情報を生成する。画像処理部104が生成した画像情報はHDD40等の画像形成装置1に装着された記憶媒体に保存される。
【0034】
画像処理部104によって生成された画像情報は、ユーザの指示に応じてそのままHDD40等に格納され若しくは入出力制御部103及びネットワークI/F180を介して外部の装置に送信される。即ち、スキャナユニット120及びエンジン制御部102が画像入力部として機能する。
【0035】
また、画像形成装置1が複写機として動作する場合は、エンジン制御部102がスキャナユニット120から受信した撮像情報若しくは画像処理部104が生成した画像情報に基づき、画像処理部104が描画情報を生成する。その描画情報に基づいてプリンタ動作の場合と同様に、エンジン制御部102がプリントエンジン160を駆動する。
【0036】
次に、本実施形態に係る画像処理部104の詳細について説明する。図3は、本実施形態に係る画像処理部104に含まれる機能を示すブロック図である。図3に示すように、本実施形態に係る画像処理部104は、PDL解析部210、描画コアモジュール220を含み、ソフトウェア・プログラムに従ってCPU10が演算を行うことにより構成されるPDLアプリケーション200と、集積回路によって構成されるハードウェアアクセラレータ230とを含む。
【0037】
PDL解析部210は、PDLで記述された印刷情報を取得し、描画コアモジュール220が処理可能な形式に変換する。この変換された形式の情報が、PDLアプリケーション200において描画命令として処理される。
【0038】
描画コアモジュール220は、PDL解析部210によって変換された描画命令に基づき、プリントエンジン160が画像形成出力を実行するための描画情報を生成する処理(以降、描画処理とする)を実行する。この描画情報は、画像形成出力するべき画像を構成する各画素の情報、即ちビットマップ情報である。また、描画コアモジュール220は、ハードウェアアクセラレータ230を制御するための機能も含む。ハードウェアアクセラレータ230は、描画コアモジュール220が実行する描画処理の一部を実行するハードウェアである。
【0039】
図4は、本実施形態に係る描画コアモジュール220及びハードウェアアクセラレータ230の機能構成を示すブロック図である。図4に示すように、描画コアモジュール220は、描画コアモジュールI/F221、DL(Display List)処理部222、ハードウェア描画処理制御部223、中間データ記憶部224、描画処理部225及びバンドメモリ226を含む。
【0040】
描画コアモジュールI/F221は、PDL解析部210によって変換された描画命令をPDL解析部210から取得し、DL処理部222に入力する。DL処理部222は、描画コアモジュール221から取得した描画命令に基づき、画像形成出力するべき各ページにおいて描画されるべきオブジェクトの情報が記述されたディスプレイリストを生成し、中間データ記憶部224に格納する。
【0041】
本実施形態において、DL処理部222は、1ページを副走査方向に複数段に分割した“バンド”と呼ばれる夫々の分割領域毎にディスプレイリストを生成し、中間データ記憶部224に格納する。
【0042】
上記ディスプレイリストとは、換言すると、描画すべき図形毎に描画コマンドの情報がまとめられた図形情報である。即ち、DL処理部222は、図形情報生成部として機能する。ハードウェア描画処理制御部223は、ハードウェアアクセラレータ230の制御を行う描画処理制御部である。ハードウェア描画処理制御部223は、ハードウェアアクセラレータ230を制御するための情報を保持している。ハードウェア描画処理制御部223によるハードウェアアクセラレータの制御が本実施形態に係る要旨の1つである。図4に示すように、ハードウェアアクセラレータ230は、ハードウェア描画処理部231を含む。
【0043】
ハードウェア描画処理部231は、ハードウェア描画処理制御部223の制御に従い、中間データ記憶部224に格納された中間データに基づいて描画処理を実行する。即ち、ハードウェアアクセラレータ230が、描画情報生成回路として機能する。尚、本実施形態に係るハードウェアアクセラレータ230は、ハードウェア描画処理制御部223の制御に従って描画処理を実行する場合にのみハードウェア描画処理部231へ電力を供給し、それ以外の間は電力供給を停止する。このような機能により、画像形成装置1の消費電力を低減することができる。
【0044】
中間データ記憶部224は、DL処理部222によって描画命令から変換されたディスプレイリストを記憶する記憶領域であり、RAM20において確保された記憶領域である。また、ハードウェア描画処理部231及び描画処理部225による描画処理の途中のデータを一次的に格納するための記憶領域としても用いられる。
【0045】
描画処理部225は、描画コアモジュール220の機能、即ち、ソフトウェア・プログラムに従って演算を行うCPU10によって構成されるソフトウェア制御部として描画処理を実現する描画情報生成部である。描画処理部225は、DL処理部222によって生成されて中間データ記憶部224に格納されたディスプレイリストに基づき、描画処理を実行する。
【0046】
上述したように、ディスプレイリストは、バンド毎に中間データ記憶部224に記憶される。従って、ハードウェア描画処理部231及び描画処理部225は、バンド毎に描画処理を実行する。バンドメモリ226は、上述したように、ハードウェア描画処理部223及び描画処理部225によって生成された描画情報をバンド毎に記憶する記憶媒体である。バンドメモリ226は、RAM20において確保された記憶領域である。
【0047】
次に、本実施系形態に係るハードウェア描画処理制御部223の動作について説明する。図5は、本実施形態に係る描画コアモジュール220の動作を示すフローチャートである。図5に示すように、まずはDL処理部222が、描画コアモジュールI/F221に入力された描画命令に基づいてディスプレイリストを生成して出力するDL処理を行う(S501)。
【0048】
S501の処理において、DL処理部222は、ハードウェア描画処理制御部223が後述する判断に要する情報(以降、判断情報とする)を抽出してハードウェア描画処理制御部223に出力する。この判断情報は、画像形成出力するべき画像の内容を示す出力内容情報である。DL処理部222から出力されたディスプレイリストは、中間データ記憶部224に入力されて格納される。
【0049】
DL処理部222から1ページ分のディスプレイリストが出力されると(S502/YES)、それに伴い、1ページ分のディスプレイリストから抽出された判断情報もハードウェア描画処理制御部223に入力され、これによりハードウェア描画処理制御部223が判断情報を取得する。ハードウェア描画処理制御部223は、DL処理部222から取得した判断情報に基づいてハードウェアアクセラレータに描画処理を実行させるか否かの判断(以降、HA判断とする)を行う(S503)。
【0050】
ハードウェア描画処理制御部223は、S503の判断の結果に応じてハードウェアアクセラレータ230を制御すると共に、判断結果をDL処理部222に通知する。この判断結果の通知には、ハードウェアアクセラレータ230に描画処理を実行させること及びハードウェアアクセラレータ230に描画処理を実行させる部分の通知も含まれる。
【0051】
ここで、描画処理を実行させる部分とは、即ちバンドを意味する。これにより、DL処理部222は、描画処理部225に描画処理を実行させる必要のないバンド、即ち、中間データ記憶部224に格納されたディスプレイリストのうち、描画処理部225に処理させる必要のないディスプレイリストを認識することができる。
【0052】
DL処理部222は、ハードウェア描画処理制御部223からの通知に従い、描画処理部225に描画処理を実行させる。これにより、ハードウェアアクセラレータ230及び描画処理部225が、指定されたディスプレイリストを中間データ記憶部224から読み出して描画処理を実行する(S504)。
【0053】
次に、図5のS503における判断(以降、HA判断とする)の詳細について説明する。図6は、DL処理部222によって抽出されてハードウェア描画処理制御部223に入力される判断情報の例を示す図である。“setcolor・・・”は、描画コマンドにおいてカラーを指定する関数であり、カッコ内の引数によって、RGB(Red,Green,Blue)各色の色が指定される。また、“rectangle・・・”は、矩形の描画を指定する関数であり、カッコ内の引数によって、矩形を描画する位置が指定される。
【0054】
尚、本実施形態においては、図6に示すように、ディスプレイリストから抽出された情報を判断情報として用いる場合を例とするが、ディスプレイリストそのものを判断情報としてハードウェア描画処理制御部223に入力しても良い。
【0055】
図7は、HA判断のためにハードウェア描画処理制御部223が保持している情報(以降、HA判断条件情報とする)を示す図である。図7に示すように、本実施形態に係るHA判断条件情報においては、判断情報から判明する画像形成出力対象の画像の内容における判断対象の項目を示す“判断項目”と、ハードウェアアクセラレータ230を使用する場合に満たされる場合の条件を示す“HA使用”と、ハードウェアアクセラレータ230を使用しない場合の条件を示す“HA不使用”とが、夫々の項目の番号である“No.”と関連付けられて格納されている。
【0056】
図7の例において、ハードウェア描画処理制御部223は、“カラー/モノクロ”、“描画面積”、“描画コマンドデータサイズ”の3項目について、1ページ分の判断情報に基づいてハードウェアアクセラレータ230に描画処理を実行させるか否かを判断する。
【0057】
“カラー/モノクロ”の項目は、その名の通り、画像形成出力対象の画像がカラーであるかモノクロであるかを判断する項目である。この項目は、図6に示す“setcolor”コマンドによって判断することができる。
【0058】
カラーの場合、一般的に、上述したRGBについて描画処理が必要となる他、RGB形式で描画された情報をCMYK(Cyan,Magenta,Yellow,blacK)形式に変換する処理が必要となるため、一色のモノクロよりも描画処理の処理量が多くなる。そのため、ハードウェア描画処理部225は、画像形成出力対象の画像がカラー画像であれば、ハードウェアアクセラレータ230の使用を判断する。
【0059】
“描画面積”の項目は、ディスプレイリストに含まれる描画コマンドによって描画されるオブジェクトの総面積を予め定められた閾値Sと比較することにより、ハードウェアアクセラレータ230の使用を判断する項目である。この項目は、図6に示す“rectangle”コマンドの場合、引数として示される描画範囲に基づいて計算することができる。
【0060】
描画されるオブジェクトの総面積が広ければ、生成するべき画素情報も多く、処理量も増える。そのため、ハードウェア描画処理制御部223は、ディスプレイリストに含まれる描画コマンドによって描画されるオブジェクトの総面積が、閾値S以上であれば、ハードウェアアクセラレータ230の使用を判断する。
【0061】
“描画コマンドデータサイズ”の項目は、ディスプレイリストに含まれる描画コマンド自体のデータサイズ、即ち図形情報の情報量を予め定められた閾値Dと比較することにより、ハードウェアアクセラレータ230の使用を判断する項目である。この項目は、DL処理部222が、ハードウェア描画処理制御部223に入力する判断情報として、描画コマンドの自体のデータサイズを含めることにより判断することができる。
【0062】
描画コマンドのデータサイズが大きければ、その分描画処理において実行するべき処理量も多い。そのため、ハードウェア描画処理制御部223は、ディスプレイリストに含まれる描画コマンドによって描画されるオブジェクトの総面積が、閾値S以上であれば、ハードウェアアクセラレータ230の使用を判断する。
【0063】
尚、図7においては、夫々の“判断項目”毎に“HA使用”、“HA不使用”の条件が関連付けられているが、最低限、ハードウェアアクセラレータ230の使用要否を判断するための条件が関連付けられていれば良い。例えば、“カラー/モノクロ”であれば、ハードウェアアクセラレータ230を使用する条件として“カラー”という値が関連付けられていれば、ハードウェア描画処理制御部223は、判断情報に基づいてハードウェアアクセラレータ230の使用要否を判断することができる。
【0064】
ここで、図7に示す閾値S、Dの設定方法について説明する。閾値S、Dは、プリントエンジン160の画像形成出力性能が最大限に発揮されるような各ページの描画処理時間を実現するために設定される閾値である。図8(a)〜(c)は、プリントエンジン160の画像形成出力性能と描画処理に要する時間との関係を示す図である。
【0065】
プリントエンジン160の画像形成出力性能を示す数値としてPPM(Page Per Minutes)、即ち、1分間に出力可能なページ枚数がある。そして、PPMの逆数を計算すると、プリントエンジン160が1ページの画像形成出力を行うために要する時間を計算することができる。尚、PPMの逆数の場合、単位は分であり、PPMの逆数を60倍することによって秒単位の数値を求めることができる。
【0066】
図8(a)〜(c)は、プリントエンジン160のPPMの逆数、即ち、画像形成出力の生産性と、1ページ分の描画処理に要する時間との関係を示す図である。尚、図8(a)〜(c)においては、図示の簡略化のために夫々の例毎に描画処理に要する時間を同一にして示しているが、実際には、各ページの内容によって描画処理に要する時間は異なる。
【0067】
図8(a)は、生産性と描画処理時間とのバランスが取れている場合、即ち、プリントエンジン160が1枚の画像形成出力を実行する間に1ページ分の描画処理が完了し、プリントエンジン160において待ち時間が発生することなく次のページの画像形成出力をプリントエンジン160が開始することが出来る場合の例である。
【0068】
これに対して、図8(b)は、描画処理時間が長く、プリントエンジン160の性能が発揮されていない場合を示す図である。図8(b)の場合、描画処理に要する時間が、プリントエンジン160が1枚の画像形成出力に要する時間よりも長い。そのため、プリントエンジン160が画像形成出力を実行するペースに描画処理のペースが追いつかず、プリントエンジン160側において待ち時間が発生してしまうことになる。その結果、プリントエンジン160は、最大のPPMを発揮することができない。
【0069】
また、図8(c)は、描画処理時間が必要以上に短縮されている場合を示す図である。図8(c)の場合、プリントエンジン160が1枚の画像形成出力に要する時間よりも描画処理に要する時間が短い。そのため、プリントエンジン160の生産性は十分発揮されているが、描画処理によって生成された描画情報は、プリントエンジン160が前ページの画像形成出力を完了するまで、バンドメモリ226に格納された状態で待機することになる。
【0070】
このような状態は、ハードウェアアクセラレータ230を動作させず、描画処理部225のみで描画処理を実行した場合であれば、プリントエンジン160の生産性は発揮されているため、バンドメモリ226において情報を保持するための容量が必要となる以外は問題にはならない。
【0071】
他方、ハードウェアアクセラレータ230にも描画処理を実行させた上で図8(c)に示すような状態が発生している場合、ハードウェアアクセラレータ230を動作させて必要以上に描画処理を高速化していることになる。そのため、ハードウェアアクセラレータ230を動作させるために無駄な電力が消費されていることとなる。
【0072】
従って、図7に示す閾値S、Dは、図8(a)に示すようなプリントエンジン160の生産性と1ページ当たりの描画処理時間との関係が実現されるように設定される。即ち、閾値S、Dや、上述した“カラー/モノクロ”の項目における“カラー”という値は、プリントエンジン160のPPMに応じて定められた基準値である。換言すると、図7に示す閾値S、Dは、プリントエンジン160が1枚の画像形成出力を完了するのに要する時間で、1ページ分の描画処理が完了するように、描画面積、描画コマンドデータサイズ夫々に対して設定される。
【0073】
そして、そのようにして設定された閾値S、Dに基づいてハードウェアアクセラレータ230の動作要否を判断することにより、描画処理部225のみで描画処理を行うと図8(b)に示すように、描画処理の完了に要する時間がプリントエンジン160のPPMに追いつかなくなってしまう場合にのみ、ハードウェアアクセラレータ230を動作させることが可能となる。その結果、画像形成出力の生産性を保ちつつ、且つ必要以上に描画処理が高速化されて消費電力の増大を招くようなことを回避することができる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る描画コアモジュール220においては、画像形成出力対象の画像の内容に基づいてハードウェアアクセラレータ230の動作要否を判断するため、ハードウェア及びソフトウェアによって描画処理可能な画像形成装置において、画像形成出力の生産性を保ちつつ消費電力の低減を図ることができる。
【0075】
尚、上記実施形態においては、DL処理部222がディスプレイリストを生成して中間データ記憶部224に格納し、その際に抽出された判断情報に基づいてハードウェア描画処理制御部223がHA判断を行い、その判断結果に基づいて制御されたハードウェア描画処理部231が中間データ記憶部224からディスプレイリストを取得して描画処理を実行する場合を例として説明した。
【0076】
しかしながら、ハードウェア描画処理部231によっては、ディスプレイリストから描画情報を生成する処理のうち、一部の処理のみに対応したものもある。例えば、ディスプレイリストに基づく描画処理の前半部分を描画コアモジュール220側で実行し、後半部分をハードウェアアクセラレータ230と描画処理部225とで分担する態様がある。
【0077】
そのような場合、中間データ記憶部224に格納される前の処理として、ディスプレイリストの生成に加えて描画処理の前半部分が実行される。即ち、DL処理部222が、ディスプレイリストの処理のみではなく、描画処理の前半部分までも実行した結果のデータを中間データとして中間データ記憶部224に格納する中間データ処理部として機能する。
【0078】
図9は、本実施形態に係る描画処理の流れ及び処理の前半部分と後半部分との境目の例を示す図である。図9に示す描画処理の流れは、イメージオブジェクトを含むバンドの描画処理の流れである。図9に示すように、本実施形態に係る描画処理は、“入力”、“フォーマット変換”、“カラーマッチング”、“BG(Back Ground)/UCR(Under Color Removal)”、“γ変換”、“少値化(ディザリング)”、“バンドメモリへの描画”という処理を含む。
【0079】
そして、図9においては、カラーマッチング処理までを前半部分として中間データ記憶部224への格納前に行い、それ以降の処理をハードウェアアクセラレータ230または描画処理部225によって行う。このような場合であっても、ハードウェア描画処理制御部223が、ハードウェアアクセラレータ230を動作させるか否かについて、上記と同様に判断することにより、上述したような効果を得ることが可能となる。
【0080】
また、DL処理部222がディスプレイリストを生成して中間データ記憶部224に一度格納した上で、描画処理部225が描画処理の前半部分を実行し、その処理結果のデータを再度中間データ記憶部224に格納し、以降の処理をハードウェアアクセラレータ230と描画処理部225とで分担することも可能である。そのような場合であっても、本実施形態を適用することにより、上記と同様の効果を得ることが可能である。
【0081】
また、上記実施形態においては、図7に示す“判断項目”の“カラー/モノクロ”の判断において、フルカラーであることを前提として説明した。しかしながら、画像形成出力のカラーにはフルカラーに限らず、2色の場合等もあり、色数が多いほど処理量も多くなる。従って、判断項目を“カラー/モノクロ”ではなく“色数”とし、色数に閾値を設けるようにしても良い。これにより、より様々な条件に対応して判断を行うことが可能となる。
【0082】
尚、そのような観点によれば、図7の“カラー/モノクロ”の判断項目は色数を考慮していないため、色数に対して“2色”という閾値が設定されていることに等しい。
【0083】
実施の形態2.
本実施形態においては、図7において説明した態様とは異なる態様によるHA判断の内容について説明する。図10は、本実施形態に係るハードウェア描画処理制御部223が保持しているHA判断条件情報を示す図である。図10に示すように、本実施形態に係るHA判断条件情報においては、ディスプレイリストに含まれる描画コマンドと、夫々のコマンド毎に設定された“データサイズ係数”及び“描画面積係数”とが、夫々のコマンドの番号である“No.”と関連付けられて格納されている。
【0084】
例えば、図10に“Image”として示すイメージ描画コマンドの場合、色処理とバンドメモリ226へのデータの格納のいずれも処理負荷が高いが、“Text”で示す文字描画コマンドの色処理は、一般的に使用される色数が少なく、図9に示す“カラーマッチング”、“BG/UCR”、“γ変換”の処理量が少ないため、処理負荷が低い。
【0085】
従って、本実施形態に係るハードウェア描画処理制御部223は、図10に示すように、描画コマンドデータサイズ及び描画面積夫々について描画コマンド毎に設定された重み値である“データサイズ係数”及び“描画面積係数”を用いて、以下の式(1)により描画コマンドを処理するための処理負荷Rを計算する。

【0086】
ここで、式(1)における“D”は、描画コマンドデータサイズであり、“S”は描画面積である。描画コマンドデータサイズD及び描画面積Sは、実施の形態1と同様の方法により取得可能である。また、“T”、“T”は、図10から取得される“データサイズ係数”及び“描画面積係数”である。そして式(1)におけるシグマは、1ページ分の描画コマンドについて値を合計することを示す。
【0087】
更に、本実施形態に係るハードウェア描画処理制御部223は、HA判断条件情報として、図11に示すようなテーブルを保持している。図11に示すテーブルは、描画コアモジュール220、即ち、ハードウェアアクセラレータ230を動作させずに描画処理を実行する場合の描画処理性能を示すテーブルであり、上述した式(1)によって求められる値に対応する“処理負荷R”と、夫々の処理負荷Rにおいて描画処理に要する“処理時間t”とが関連付けられたテーブルである。
【0088】
図11に示すようなテーブルは、例えば画像形成装置1の出荷前において、様々な条件において描画処理を実行させ、その実行に要した時間を測定して格納することにより生成することができる。また、同一の条件において測定された値を外部から入力してハードウェア描画処理制御部223に記憶させても良い。本実施形態に係るハードウェア描画処理制御部223は、上記式(1)によって処理負荷Rを算出すると、図11に示すテーブルを参照し、算出した処理負荷Rに対応する処理時間tを求める。
【0089】
尚、算出した処理負荷Rと一致する値がテーブルに格納されていない場合、ハードウェア描画処理制御部223は、テーブルに格納されている2つのRの値に夫々関連付けられたtの値に基づき、近似曲線や直線近似によって、算出されたRに対応するtの値を求める。そのようにして求めたtと、プリントエンジン160の生産性とを比較することにより、ハードウェアアクセラレータ230の使用要否を判断することができる。
【0090】
図12を参照して、本実施形態に係るハードウェア描画処理制御部223によるHA判断動作について説明する。本実施形態においては、図12の動作が、図5のS503におけるハードウェア描画処理制御部223の処理である。図12に示すように、ハードウェア描画処理制御部223は、HA判断動作を開始すると、上記式(1)によってRを算出する(S1201)。
【0091】
ハードウェア描画処理制御部223は、1ページ分の描画コマンドについてRの算出処理を繰り返して算出結果を合計し(S1202/NO)、1ページ分のRの算出を完了すると(S1202/YES)、算出したRの値に基づいて図11に示すテーブルからtを取得する(S1203)。
【0092】
そして、ハードウェア描画処理制御部223は、取得したtとプリントエンジン160のPPMの逆数とを比較する(S1204)。即ち、PPMの逆数を閾値として用いる。尚、PPMの逆数の単位は(分)であるため、tの値の単位が(秒)であれば、ハードウェア描画処理制御部223は、PPMの逆数を60倍して単位を合わせた上で比較を行う。S1204の比較の結果、tがPPMの逆数よりも小さければ(S1204/YES)、ハードウェア描画処理制御部223は、ハードウェアアクセラレータ230の動作は不要であると判断し(S1205)、処理を終了する。
【0093】
他方、S1204の比較の結果、tがPPMの逆数以上であれば(S1204/NO)、ハードウェア描画処理制御部223は、ハードウェアアクセラレータ230の動作が必要であると判断し(S1206)、処理を終了する。このような処理により、本実施形態に係るHA動作が完了する。
【0094】
このように、本実施形態においては、プリントエンジン160のPPMに応じて定められた基準値として、PPMの逆数、即ち、プリントエンジン160が1ページ分の画像形成出力を実行するために要する時間を用いる。これにより、PPMを発揮させるために満たされるべき描画処理時間を判断することが可能となる。
【0095】
以上、説明したように、本実施形態に係る描画コアモジュール220においては、描画コマンド毎に設定された重み値に基づいて描画コマンド毎の処理負荷を計算し、その計算結果に応じて定まる処理時間とプリントエンジン160の生産性とを比較することにより、ハードウェアアクセラレータ230の動作の要否を判断する。これにより、より高精度にハードウェアアクセラレータ230の動作の要否を判断することができる。
【0096】
尚、本実施形態においては、図11に示すようなテーブルを用いることにより、上記式(1)によって求めた処理負荷Rを処理時間tに変換した上で、プリントエンジン160の逆数と比較する場合を例とした。しかしながら、プリントエンジン160の逆数を処理負荷に変換した値を、ハードウェア描画処理制御部223が閾値として保持しておくことにより、上記と同様の効果を得ることが可能である。また、この場合、図11に示すようなテーブルではなく閾値を記憶しておけば良いため、記憶しておくべき情報量を削減することができる。
【0097】
実施の形態3.
本実施形態においては、ハードウェア描画処理部231が複数設けられている場合について説明する。図13は、本実施形態に係る描画コアモジュール220及びハードウェアアクセラレータ230の機能構成を示すブロック図である。図13に示すように、本実施形態に係るハードウェアアクセラレータ230は、ハードウェア描画処理部231a及びハードウェア描画処理部231bとして、2つのハードウェア描画処理部を含む。この2つのハードウェア描画処理部は、並列して異なる描画処理を実行することが可能であり、それにより、単位時間当たりの描画処理の効率を向上することができる。
【0098】
ハードウェア描画処理部231a及びハードウェア描画処理部231b夫々は、実施の形態1において説明したハードウェア描画処理部231と同一の機能を有する。即ち、ハードウェア描画処理部231a及びハードウェア描画処理部231bは、夫々ハードウェア描画処理制御部223の制御に従い、中間データ記憶部224に格納されているディスプレイリストに基づいて描画処理を実行してバンドメモリ226に描画情報を格納する。
【0099】
本実施形態においても、ハードウェア描画処理制御部223は、プリントエンジン160のPPMが発揮されるようにハードウェアアクセラレータ230を制御する。以下、実施の形態1の態様による制御と実施の形態2の態様による制御との夫々の場合において、本実施形態に係るハードウェア描画処理制御部223の機能について説明する。
【0100】
図14は、実施の形態1の態様による制御を行う場合にハードウェア描画処理制御部223が保持しているHA判断条件情報の例を示す図であり、実施の形態1の図7において説明した情報に相当する。
【0101】
図14に示すように、本実施形態に係るHA判断条件情報においては、図7において説明した“判断項目”に対して、ハードウェア描画処理部231を2つ使用する場合の条件を示す“HA使用2”と、ハードウェア描画処理部231を1つ使用する場合の条件を示す“HA使用1”と、ハードウェアアクセラレータ230を使用しない場合の条件を示す“HA不使用”とが、夫々の項目の番号である“No.”と関連付けられて格納されている。
【0102】
図14に示すようなHA判断条件情報を用いて、実施の形態1と同様の処理により判断を行うことにより、本実施形態に係るハードウェア描画処理制御部223は、DL処理部222から入力された判断情報に基づき、ハードウェアアクセラレータ230に含まれる2つのハードウェア描画処理部をいくつまで動作させるかを判断することが可能となる。
【0103】
図15は、実施の形態2の態様による制御を行う場合にハードウェア描画処理制御部223が保持しているHA判断条件情報の例を示す図であり、実施の形態2の図11において説明した情報に相当する。図15に示すテーブルにおいては、図11の“処理時間t”に相当する“CPUのみ処理時間t”に加えて、ハードウェア描画処理部を1つだけ動作させて描画処理を実行した場合に描画処理に要する時間を示す“CPU+HA処理時間t”が、夫々の処理負荷Rに関連付けられている。
【0104】
本実施形態に係るハードウェア描画処理制御部223は、このようなテーブルを用いて、実施の形態2において説明した式(1)により算出した処理負荷Rに対応する処理時間t、tを求め、夫々の値とプリントエンジン160のPPMの逆数とを比較する。これにより、ハードウェアアクセラレータ230を動作させるか否かに加えて、ハードウェアアクセラレータ230を動作させる場合には、何個のハードウェア描画処理部を動作させるかを判断することが可能となる。
【0105】
図16は、本実施形態に係るハードウェア描画処理制御部223が、実施の形態2の態様による制御を行う場合のHA判断動作を示すフローチャートである。図16に示すように、ハードウェア描画処理制御部223は、S1601、S1602において、図12のS1202までと同様の処理を実行する。1ページ分のRの算出を完了すると(S1602/YES)、ハードウェア描画処理制御部223は、算出したRの値に基づいて図15に示すテーブルからt、tを取得する(S1603)。
【0106】
、tの値を取得すると、ハードウェア描画処理制御部223は、まず、tの値とプリントエンジン160の逆数とを比較する(S1604)。S1604の比較の結果、tがPPMの逆数よりも小さければ(S1604/YES)、ハードウェア描画処理制御部223は、ハードウェアアクセラレータ230の動作は不要であると判断し(S1605)、処理を終了する。
【0107】
他方、S1604の比較の結果、tがPPMの逆数以上であれば(S1604/NO)、次に、ハードウェア描画処理制御部223は、tの値とプリントエンジン160の逆数とを比較する(S1606)。S1604の比較の結果、tがPPMの逆数よりも小さければ(S1606/YES)、ハードウェア描画処理制御部223は、ハードウェア描画処理部を1つだけ使用することを判断し(S1607)、処理を終了する。
【0108】
S1606の比較の結果、tがPPMの逆数以上であれば(S1606/NO)、ハードウェア描画処理制御部223は、ハードウェアアクセラレータ230に含まれる2つのハードウェア描画処理部の両方の動作が必要であると判断し(S1608)、処理を終了する。このような処理により、本実施形態に係るHA動作が完了する。
【0109】
尚、本実施形態においては、ハードウェアアクセラレータ230がハードウェア描画処理部231a、231bの2つのハードウェア描画処理部を含む場合を例として説明したが、ハードウェア描画処理部が3つ以上であっても、同様に適用することが可能である。その場合、図14の態様であれば、ハードウェア描画処理部の個数分の条件が、夫々の“判断項目”に対応して設定されていれば、ハードウェア描画処理制御部223は、DL処理部222から入力された判断情報に基づいて、使用するハードウェア描画処理部の数を判断することが可能である。
【0110】
また、図15の態様であれば、図15に示す“CPUのみ処理時間t”、“CPU+HA処理時間t”に続いて、動作させるハードウェア描画処理部の個数を1つずつ増やしていき、ハードウェアアクセラレータ230に含まれるハードウェア描画処理部の個数よりも1つ少ない個数のハードウェア描画処理部を動作させた場合まで、処理負荷Rに関連付けて格納しておく。そして、図16のS1604、S1606の判断を増やしていくことにより、ハードウェアアクセラレータ230に含まれるハードウェア描画処理部が3つ以上であっても、図15、図16の態様と同様に適用することが可能である。
【0111】
以上、説明したように、本実施形態に係る画像処理部104の構成によれば、ハードウェアアクセラレータ230が複数のハードウェア描画処理部を含む場合であっても、画像形成出力の生産性を保ちつつ消費電力の低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0112】
1 画像形成装置
10 CPU
20 RAM
30 ROM
40 エンジン
50 HDD
60 I/F
70 LCD
80 操作部
90 バス
100 コントローラ
101 主制御部
102 エンジン制御部
103 入出力制御部
104 画像処理部
105 操作表示制御部
110 ADF
120 スキャナユニット
130 排紙トレイ
140 ディスプレイパネル
150 給紙テーブル
160 プリントエンジン
170 排紙トレイ
180 ネットワークI/F
200 PDLアプリケーション
210 PDL解析部
220 描画コアモジュール
221 描画コアモジュールI/F
222 DL処理部
223 ハードウェア描画処理制御部
224 中間データ記憶部
225 描画処理部
226 バンドメモリ
230 ハードウェアアクセラレータ
231、231a、231b ハードウェア描画処理部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0113】
【特許文献1】特開2008−186299号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成出力を実行するための画像処理をハードウェア及びソフトウェアによって実行可能な画像形成装置であって、
ページ記述言語に基づいて得られた描画命令に基づき、描画すべき図形毎に情報がまとめられた図形情報を生成する図形情報生成部と、
画像形成部が画像形成出力を実行するための描画情報を、前記生成された図形情報に基づいて生成する描画処理をソフトウェア処理によって実行する描画情報生成部と、
前記描画処理をハードウェアとして実行する描画情報生成回路と、
前記描画情報生成回路による前描画処理の実行を制御する描画処理制御部とを含み、
前記描画処理制御部は、
前記図形情報の生成に応じて、画像形成出力するべき画像の内容を示す出力内容情報を取得し、
画像形成出力を実行する画像形成部が単位時間当たりに画像形成出力可能な枚数に応じて定められた基準値と、前記取得した出力内容情報に基づいて判断される前記描画処理の処理量とに基づいて、前記描画情報生成回路による前記描画処理の実行要否を判断することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記描画処理制御部は、前記出力内容情報に基づいて求めた前記描画すべき図形の面積が、前記基準値として予め定められた閾値を超えている場合に、前記描画情報生成回路による前記描画処理が必要であると判断することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記描画処理制御部は、前記出力内容情報として前記図形情報の情報量を取得し、前記取得した情報量が前記基準値として予め定められた閾値を超えている場合に、前記描画情報生成回路による前記描画処理が必要であると判断することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記描画処理制御部は、前記取得した出力内容情報に基づき、描画すべき図形の種類毎に定められた重み値を用いて描画処理の処理負荷に関する値を計算し、その計算結果と前記基準値として予め定められた閾値との比較結果に基づいて前記描画情報生成回路による前記描画処理の実行要否を判断することを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記描画処理制御部は、前記出力内容情報に基づいて求めた前記描画すべき図形の面積及び前記図形情報の情報量の夫々について描画すべき図形の種類毎に定められた重み値を用いて描画処理の処理負荷に関する値を計算することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記描画処理制御部は、前記出力内容情報に基づき、画像形成出力において用いられる色数を判断し、前記基準値として予め定められた色数を超えている場合に、前記描画情報生成回路による前記描画処理が必要であると判断することを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記描画情報生成回路は、並列して動作可能な複数の描画処理手段を含み、
前記描画処理制御部は、動作させる前記描画処理手段の数に応じて複数定められた前記基準値と、前記取得した出力内容情報に基づいて判断される前記描画処理の処理量とに基づいて、前記描画情報生成回路において動作させる前記描画処理手段の数を判断することを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
画像形成出力を実行するための画像処理をハードウェアとして実行する描画情報生成回路及びソフトウェア処理によって実行する描画情報生成部とを含む画像形成装置において画像形成出力を実行するための描画情報の生成を制御する描画処理制御プログラムであって、
ページ記述言語に基づいて得られた描画命令に基づき、描画すべき図形毎に情報がまとめられた図形情報を生成するステップと、
前記図形情報の生成に応じて、画像形成出力するべき画像の内容を示す出力内容情報を取得するステップと、
画像形成出力を実行する画像形成部が単位時間当たりに画像形成出力可能な枚数に応じて定められた基準値と、前記取得した出力内容情報に基づいて判断される前記描画処理の処理量とに基づいて、前記描画情報生成回路による前記描画処理の実行要否を判断するステップとを画像形成装置に実行させることを特徴とする描画処理制御プログラム。
【請求項9】
画像形成出力を実行するための画像処理をハードウェアとして実行する描画情報生成回路及びソフトウェア処理によって実行する描画情報生成部とを含む画像形成装置において画像形成出力を実行するための描画情報の生成を制御する描画処理制御方法であって、
ページ記述言語に基づいて得られた描画命令に基づき、描画すべき図形毎に情報がまとめられた図形情報を生成し、
前記図形情報の生成に応じて、画像形成出力するべき画像の内容を示す出力内容情報を取得し、
画像形成出力を実行する画像形成部が単位時間当たりに画像形成出力可能な枚数に応じて定められた基準値と、前記取得した出力内容情報に基づいて判断される前記描画処理の処理量とに基づいて、前記描画情報生成回路による前記描画処理の実行要否を判断することを特徴とする描画処理制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−52615(P2013−52615A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193048(P2011−193048)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】