説明

画像形成装置、画像処理方法、プログラム及び記録媒体

【課題】描画面積によるエンジン側での印刷速度の差を考慮した印刷時間を予測できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】印刷データ1ページ毎に、描画コマンドを解釈し、描画コマンドにより描画される各領域の描画面積を算出する描画面積算出手段と、面積算出手段により算出された各領域の描画面積に対し、描画コマンドの種類別に予め定められた値を用いて重み付けを行う重み付け手段と、印刷データ1ページ内の総描画面積の大きさに応じて、1ページの印刷に要すると予測される時間である印刷処理予測時間が対応付けられた時間予測テーブルと、重み付け手段により重み付けされた各領域の描画面積の総和である総描画面積を基に、時間予測テーブルを参照して、印刷データ1ページの印刷処理予測時間を算出する予測時間算出手段と、予測時間算出手段により算出された印刷処理予測時間を示すデータを所定の出力先へ出力する出力手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷処理が終了する時間の目安をユーザに提示する画像形成装置、画像処理方法、プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する技術として、例えば特許文献1に開示されているものがある。特許文献1の発明では、例えばPC(Personal Computer)等の情報処理装置であるホストコンピュータ(ホスト装置)より受け取ったデータを全て受信しきった後で、受信した全印刷データのページ数及びデータ量に基づき、全印刷データの印刷処理を実行するのに要する予測時間を算出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の発明は、1ページ当たりの印刷処理(用紙に絵を描くプリンタエンジンの処理を意味する)に要する時間を均一な時間として予測している。ところが、例えばインクジェットプリンタのようなインクヘッド走査により印字する方式のプリンタの場合、1ページあたりの印刷処理時間はページ内の描画面積により大きく差が出るため、特許文献1の発明による予測時間は、実際にかかる時間と大きく異なってしまう恐れがあるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、描画面積によるエンジン側での印刷速度の差を考慮した印刷時間(プリンタエンジンの処理時間)を予測することにより、より正確な印刷終了時間の目安をユーザに提示できる画像形成装置、画像処理方法、プログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、印刷データに含まれる描画コマンドを解釈して印刷画像を生成し、生成した印刷画像の印刷を行う画像形成装置において、印刷データ1ページ毎に、描画コマンドを解釈し、描画コマンドにより描画される印刷画像の各領域の描画面積を算出する描画面積算出手段と、面積算出手段により算出された各領域の描画面積に対し、描画コマンドの種類別に予め定められた値を用いて重み付けを行う重み付け手段と、印刷データ1ページ内の総描画面積の大きさに応じて、1ページの印刷に要すると予測される時間である印刷処理予測時間が対応付けられた時間予測テーブルと、重み付け手段により重み付けされた各領域の描画面積の総和である総描画面積を基に、時間予測テーブルを参照して、印刷データ1ページの印刷処理予測時間を算出する予測時間算出手段と、予測時間算出手段により算出された印刷処理予測時間を示すデータを所定の出力先へ出力する出力手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
本発明の画像処理方法は、印刷データに含まれる描画コマンドを解釈して印刷画像を生成し、生成した印刷画像の印刷を行う装置で実行される画像処理方法において、印刷データ1ページ毎に、描画コマンドを解釈し、描画コマンドにより描画される印刷画像の各領域の描画面積を算出する描画面積算出ステップと、面積算出ステップにより算出された各領域の描画面積に対し、描画コマンドの種類別に予め定められた値を用いて重み付けを行う重み付けステップと、重み付けステップにより重み付けされた各領域の描画面積の総和である総描画面積を基に、印刷データ1ページ内の総描画面積の大きさに応じて、1ページの印刷に要すると予測される時間である印刷処理予測時間が対応付けられた時間予測テーブルを参照して、印刷データ1ページの印刷処理予測時間を算出する予測時間算出ステップと、予測時間算出ステップにより算出された印刷処理予測時間を示すデータを所定の出力先へ出力する出力ステップと、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明のプログラムは、印刷データに含まれる描画コマンドを解釈して印刷画像を生成し、生成した印刷画像の印刷を行うコンピュータに実行させるプログラムにおいて、コンピュータに、印刷データ1ページ毎に、描画コマンドを解釈し、描画コマンドにより描画される印刷画像の各領域の描画面積を算出する描画面積算出処理と、面積算出処理により算出された各領域の描画面積に対し、描画コマンドの種類別に予め定められた値を用いて重み付けを行う重み付け処理と、重み付け処理により重み付けされた各領域の描画面積の総和である総描画面積を基に、印刷データ1ページ内の総描画面積の大きさに応じて、1ページの印刷に要すると予測される時間である印刷処理予測時間が対応付けられた時間予測テーブルを参照して、印刷データ1ページの印刷処理予測時間を算出する予測時間算出処理と、予測時間算出処理により算出された印刷処理予測時間を示すデータを所定の出力先へ出力する出力処理と、を実行させることを特徴とする。
【0008】
本発明の記録媒体は、本発明のプログラムを格納したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、描画面積によるエンジン側での印刷速度の差を考慮した印刷時間(プリンタエンジンの処理時間)を予測することにより、より正確な印刷終了時間の目安をユーザに提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタとホストコンピュータとからなるシステム構成例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタ内部で実行されるプログラムの構成例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタの動作例(印刷処理予測時間の算出)を示すフローチャートである。
【図5】描画コマンドによる描画領域の面積の例を示す図である。
【図6】描画コマンドと係数の対応関係を示すテーブルの例を示す図である。
【図7】印刷データの例を示す図である。
【図8】印刷処理時間予測テーブルの例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタの動作例(印刷終了時間の目安のユーザ通知)を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタの動作例(印刷終了時間の目安の更新)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
本発明の画像形成装置の一実施形態として、レーザプリンタを例に説明する。図1は、本実施形態のレーザプリンタのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態のレーザプリンタ1は、コントローラ2、オペレーションパネル4、プリンタエンジン(単にエンジンともいう)13を有する。また、本実施形態のレーザプリンタ1は、例えばPC等のホストコンピュータ3と接続される。
【0013】
操作パネル(オペレーションパネル)4は、レーザプリンタ1の各種状態を示す表示部、及び、プリンタのモードやフォント等をユーザが切り替え可能なスイッチ部を備える。
【0014】
プリンタエンジン13は、コントローラ2からのビデオ信号及び制御信号により感光体上に静電潜像を作り、現像し、また給紙部より転写紙を給紙し、転写及び定着し、画像を形成する。
【0015】
コントローラ2は、その時設定されている制御モード及びホストコンピュータ3からの制御コードに従って、ホストコンピュータ3からの印字データを、ビデオデータに変換してプリンタエンジン13へ出力する制御機構の総称であり、以下のようなモジュールで構成される。
【0016】
ホストI/F(InterFace)5は、ホストコンピュータ3からレーザプリンタ1への制御信号及びデータ、レーザプリンタ1からホストコンピュータ3へのステータス信号のインターフェースである。
【0017】
CPU(Central Processing Unit)9は、プログラムROM(Read Only Memory)6に従ってホストコンピュータ3からのデータ(印字データ、制御データ)を処理する。
【0018】
RAM(Random Access Memory)10は、CPU9が処理する時のワークメモリ、ホストコンピュータ3からのデータをページ単位に管理して一時記憶するバッファ、バッファに記憶されたデータを実際の印字パターンに変換し、ビデオデータを記憶するビットマップメモリ等に使われる。
【0019】
NV−RAM11は、電源を切っても保持したいデータを格納しておくための不揮発性RAMである。
【0020】
プログラムROM6は、コントローラ2内でのデータの管理や、周辺モジュールを制御するためのプログラムが格納されている。
【0021】
フォントROM7は、印字に使用されるさまざまな種類のフォントを有する。
【0022】
エンジンI/F12は、コントローラ2からプリンタエンジン13への制御信号、レーザプリンタ1からコントローラ2へのステータス信号のインターフェースである。
【0023】
パネルI/F8は、レーザプリンタ1の状態の表示、モードやフォント等を切り替えるユーザ操作の受付を行うための信号のインターフェースである。
【0024】
ホストI/F5を通してホストコンピュータ3から送られてきたデータは、CPU9により印字データ及び印字制御データとその他に分けられ、印字データ及び印字制御データは、制御コードに変換されてバッファに記憶される。ホストコンピュータ3からのプリント命令またはホストから受け取ったデータが1ページ分を超えた時、コントローラ2はまず、中間コードをビデオデータに変換し、それが終了したら、エンジンI/F12を通してプリンタエンジン13にプリントスタートの命令を出す。
【0025】
以上のような一連の流れで、ホストコンピュータ3からの印字データがプリンタエンジン13を介して印字される。
【0026】
図2は、本実施形態のレーザプリンタ1とホストコンピュータ3とからなるシステム構成の一例を示す図である。図2に示すように、本実施形態のレーザプリンタは、例えばネットワーク等の通信媒体を介して、複数のホストコンピュータと接続される(ホストコンピュータは1台であってもよい)。図2の構成において、本実施形態のレーザプリンタは、ホストコンピュータから送信されたデータを、通信媒体を介して受信し、その受信データを解釈して印刷すべき画像データを生成して印刷する。
【0027】
図3は、本実施形態のレーザプリンタ1の内部で実行されるプログラムの構成の一例を示す図である。図3に示すように、本実施形態のレーザプリンタ1では、PDL(Page Description Language)解析モジュール31、ジョブ管理モジュール32、サービス提供モジュール群38が実行される。サービス提供モジュール群38は、ネットワーク管理モジュール33、メモリ管理モジュール34、印刷管理モジュール35、システム管理モジュール36、操作パネル管理モジュール37の各種サービスを提供するモジュールの総称である。これらのモジュールは互いに通信をし合ってレーザプリンタ1の基本動作を分担し、協力して上位層(PDL解析モジュール31、ジョブ管理モジュール32)からの要求に対応する。
【0028】
PDL解析モジュール31は、レーザプリンタ1が受信したPDLデータを解析して印刷画像を生成するモジュールである。ジョブ管理モジュール32の仲介により、ネットワーク管理モジュール33からPDLデータを受け取り、同じくジョブ管理モジュール32の仲介により、メモリ管理モジュール34から確保したメモリ上に印刷画像を生成することが主な責務である。また、印刷画像生成の際には機器構成情報、例えば給紙トレイ・排紙トレイの構成や、給紙トレイ内の用紙サイズといった情報が必要になるが、これらの情報はジョブ管理モジュール32の仲介により、システム管理モジュール36から得る。
【0029】
ジョブ管理モジュール32は、PDL処理全般に関わる制御を行っており、主にPDL解析モジュール31が必要とする処理を仲介し、サービス提供モジュール群38の各モジュールに対して要求を行うモジュールである。例えば、ネットワーク管理モジュール33が受け取ったPDLデータをPDL解析モジュール31へ受け渡す仲介、PDL解析モジュール31がシステム管理モジュール36の管理する機器構成情報を取得する仲介、PDL解析モジュール31がメモリ管理モジュール34から必要なメモリを確保する仲介、PDL解析モジュール31が作成した印刷画像に関し印刷管理モジュール35に対する印刷要求の発行、といったことを行う。
【0030】
ネットワーク管理モジュール33は、ネットワークコントローラの管理と、ネットワークコントローラから得られる受信データの処理を制御するモジュールである。ホストコンピュータ3からのデータ受信の際に欠かせない通信プロトコル(例えばftpやlprなど)を制御してネットワークコントローラからデータを受信し、他モジュールへ受信データを受け渡すことが主な責務である。
【0031】
メモリ管理モジュール34は、メモリ及び外部記憶装置を管理するモジュールであり、他モジュールの要求に基づいてメモリ及び外部記憶装置の割り当て・解放を行うことが主な責務である。
【0032】
印刷管理モジュール35は、PDL解析モジュール31が生成した印刷画像の印刷処理に関する制御を行うモジュールである。メモリ管理モジュール34が管理するメモリ/外部記憶装置内に格納された印刷画像を、プリンタエンジン13に印刷させるために必要な各種処理を実行するのが主な責務であり、給排紙命令の発行、後処理実行命令の発行、印刷に関わるエラー状態の検知と他モジュールへの通知などを行う。
【0033】
システム管理モジュール36は、レーザプリンタ1の機器構成情報や機器状態を管理・制御するモジュールである。機器構成情報とは、上述したように、例えば、給紙トレイや排紙トレイの着脱の情報や、給紙トレイ内の用紙構成といった情報である。また、機器状態とは、印刷中・待機中、ジャムや用紙切れなどのエラー発生中といった内容である。システム管理モジュール36は、このような情報を他モジュールへ通知する他、ユーザによる機器設定(設定により動作を変化させるカスタマイズ可能項目)の管理が主な責務である。
【0034】
操作パネル管理モジュール37は、操作パネル4の表示及びユーザによるパネル操作の管理を行うモジュールである。他モジュールからの要求に基づいて、レーザプリンタ1の状態を表示したり、システム管理モジュール36が管理する機器設定の変更を行うメニュー画面の表示、エラー画面を表示したりして、ユーザに適切な処置を促すことなどが主な責務である。また、メニュー画面やエラー画面などでボタンを表示した際には、押下されたボタンを認識して他モジュールへ通知することも行う。
【0035】
本実施形態のレーザプリンタ1の動作について説明する。ここでは、図4を用いて、印刷処理に要すると予測される時間(印刷処理予測時間)を算出する処理について説明する。図4は、PDL解析モジュール31が印刷処理予測時間を算出する処理の動作フローである。なお、ここでいう「印刷処理」とは、用紙に絵を描くというプリンタエンジン13の処理を意味しており、PDL解析モジュール31が受信したデータを基にメモリ上に絵を描く処理を意味するものではない。
【0036】
まず、ホストコンピュータ3からネットワーク管理モジュール33により受信したデータは、ジョブ管理モジュール32を経て、順次PDL解析モジュール31に渡されていく(S401)。この受信データ(印刷対象となるデータ:印刷データ)には、例えば、下記のようなPDLコマンド(描画コマンド)が複数含まれており、これらの組み合わせによりページは形成されている。
・指定された文字を描画する文字描画コマンド
・指定された図形(長方形・円など)を描画する図形描画コマンド
・指定された画像(jpeg,bmpなど)を描画する画像描画コマンド
【0037】
PDL解析モジュール31は、受け取った受信データ中に含まれるPDLコマンドを解析し、メモリ上に絵(印刷画像)を描画していくと同時に、各コマンドにより描画した印刷画像の領域の面積(描画面積)を算出する(S402)。描画領域の面積の算出方法は、描画コマンドの種類により異なる。
【0038】
描画コマンドによる描画領域の面積の例を図5に示す。図5の左側に示すように、文字描画コマンドは、文字の大きさ(len)が指定されており、指定された大きさを一辺とする正方形に収まるように文字を描画するとするものとする。すると、文字の描画領域の面積はlen×lenで示される正方形の面積として算出される。また、図5の中央に示すように、長方形を描く図形描画コマンドでは、長方形の位置を示す点の座標と各辺の長さ(x,y)が指定されており、円を描く図形描画コマンドでは円の中心点の座標と半径の長さ(r)が指定されているものとする。そうすると、これらの描画領域の面積はそれぞれx×y、π×r×rで示すことができる。また、図5の右側に示すように、画像描画コマンドも、長方形を描く図形描画コマンドと同様、画像を貼り付ける位置のオフセットを示す点の座標と、画像の縦横の長さ(x,y)が指定されている。よって、画像の描画面積は縦横の長さを掛け合わせること(x×y)により算出することができる。上記の長さの単位はPDLによる。例えば、「画素(pixel)」としてもよいし、「mm」などでもよい。
【0039】
しかし、図形と文字を比べると明らかに文字は密度が低いので、文字描画コマンドにより算出した面積と図形描画コマンドにより算出した面積が同じだとしても、実際にエンジンでの印字に要する処理量は文字のほうが小さい。また、単色で描かれる図形に比べて、画像は色数も多いので、画像描画コマンドにより算出した面積と図形描画コマンドにより算出した面積が同じだとしても、実際にエンジンでの印字に要する処理は画像のほうが大きい。このように、各描画コマンドにより算出された面積は同等に扱うことはできず、重み付けをする必要がある。
【0040】
そこで本実施形態では、PDL解析モジュール31が、PDLコマンド解析のときに算出した面積に対して重み付けをするため、各描画コマンドの種類ごとに、異なる係数をかける(S403)。コマンドと係数の対応は、例えば図6に示すようなテーブルの形で、予めレーザプリンタ1内の所定のメモリ(例えばNV−RAM11)に保持されている。
【0041】
図6の例の場合、図形を基準として、文字は1/10の重み付けがされている。また、一般的に画像の中でも自然画像は人工画像と比べて色使いなどの複雑度が高いので、人工画を描画するコマンドと自然画を描画するコマンドが異なる場合、図6の例のように自然画には人工画に比べて大きく重み付けする、などのようにしてもよい。
【0042】
次に、PDL解析モジュール31は、「PDLコマンドにより描画した面積を算出し、算出した面積に重み付けをする処理」を1ページ分の受信データを処理するまで繰り返し、重み付けした値を加算していく(S404〜S405/NO)。そして、1ページ分のデータ処理が終了するまで値が加算されると(S405/YES)、1ページの総描画面積(重み付け済)が算出される。
【0043】
例えば、図6に示すコマンドと重み係数の対応を用いると、図7に示す印刷データ1ページの総描画面積は、以下のように算出される。単位は(画素×画素)。
文字 0.1×6.0×6.0×85=306
図形A 1.0×64.0×40.0=2560
図形B 1.0×25.0×30.0=750
画像(人工画) 1.5×54.0×82.0=6642
ページの総描画面積 306+2560+750+6642=10258
【0044】
次に、PDL解析モジュール31は、1ページ分の総描画面積(重み付け済)から、そのページを印刷するのに要すると予測される時間(印刷処理予測時間)を算出する(S406)。この算出には、例えば図8に示すような印刷処理時間予測テーブル(時間予測テーブル)を使用する。
【0045】
図8に示す印刷処理時間予測テーブルは、予めレーザプリンタ1の所定のメモリ(例えばNV−RAM11)に保持されている。図8に示すように、印刷処理時間予測テーブルでは、総描画面積毎に印刷処理予測時間が対応付けられている。なお、総描画面積と印刷処理予測時間の対応は、個々の画像形成装置の特性(解像度や性能など)により決定されるものであり、図8の例に限定されるものではない。また、図8の例では印刷処理予測時間を5段階に分けているが、これより少なくしてもよいし、あるいは多くしてもよい。
【0046】
PDL解析モジュール31は、印刷処理予測時間を算出すると、それをユーザに提示するために、算出した印刷処理予測時間を示すデータを操作パネル管理モジュール37に通知する(S407)。
【0047】
PDL解析モジュール31は、印刷データ全ページ分のデータの処理が完了するまで上記S401〜S407の処理を繰り返し(S408/NO)、全ページ分の印刷処理予測時間を算出する(S408/YES)。
【0048】
そして、全ページ分のデータ処理が終了すると、PDL解析モジュール31は、全ページの処理が終了したことを操作パネル管理モジュール37に通知する(S409)。
【0049】
上記図4の後の処理、すなわち、印刷処理予測時間に基づいた印刷終了時間(印刷処理全体が終了する時間)の目安をユーザに通知する処理について説明する。ここでは、通知例として、全ページ分の印刷が終了するまでの残り時間の予測値を通知する例について説明する。
【0050】
操作パネル管理モジュール37は、PDL解析モジュール31から印刷処理予測時間の通知を受けると(S901/YES)、印刷処理予測時間に基づいて印刷終了時間の目安を算出し、その結果を操作パネル4に表示する(S902)。すなわち、全ページが印刷終了するまでの残り時間を表示するために、操作パネル管理モジュール37は、現在表示している時間に対して新たに通知された印刷処理予測時間を足した時間(値)を、印刷処理終了時間の目安として操作パネル4に表示するようにする。例えば、前のページの印刷がまだ終了しておらず、操作パネル4に「残り時間あと7秒」と表示されている状態のときに、新たにPDL解析モジュール31から印刷処理予測時間=4秒との通知を受けた場合は、操作パネル管理モジュール37は、7+11で「残り時間あと11秒」と表示する。なお、印刷処理予測時間を通知されたのが1ページ目の場合は、0+4で「残り時間あと4秒」と表示する。操作パネル管理モジュール37は、PDL解析モジュール31から全ページ分のデータ処理終了の通知(図4のS409)を受けるまで、S901〜S902の処理を繰り返す(S903)。
【0051】
また、操作パネル管理モジュール37は、PDL解析モジュール31からの通知を受けたときだけでなく、所定のページの印刷処理が終了したタイミングで、ユーザに通知する印刷終了時間の目安を更新する。1ページの印刷が終了したときに、操作パネル4に表示中の印刷終了時間の目安を更新(再算出)する処理の動作フローを図10に示す。
【0052】
操作パネル管理モジュール37は、所定のページの印刷処理が終了すると(S1001/YES)、操作パネル4に表示している印刷終了時間の目安(例えば、残り時間)から当該ページの印刷処理予測時間を引いたものを、新たな印刷終了時間の目安として表示する(S1002)。操作パネル管理モジュール37は、PDL解析モジュール31から全ページ分のデータ処理終了の通知(図4のS409)を受けるまで、S1001〜S1002の処理を繰り返す(S1003)。
【0053】
例えば、1ページ目の印刷処理予測時間が5秒、2ページ目の印刷処理予測時間が4秒、3ページ目の印刷処理予測時間が3秒、と通知され、3ページ目の印刷処理予測時間が通知されるまでの間に1ページ目の印刷処理が終了するとき、操作パネル4に表示される残り時間は、5秒(1ページ目の予測時間が通知)→9秒(2ページ目の予測時間が通知)→4秒(3ページ目の予測時間の通知前に1ページ目の印刷処理が終了)→7秒(3ページ目の予測時間が通知)・・・、と変わっていく。
【0054】
上記図9、図10の説明では、印刷終了時間の目安の表示例として、全ページ分の印刷が終了するまでの残り時間の予測値を表示するようにしたが、その他の例として、全ページ分の印刷処理予測時間に対して実際に印刷処理が終了した経過時間(タイマー使用)の割合を表示するようにし、実行中の印刷処理の進捗状況(例えば「現在、印刷処理全体の40%が完了」といった表示)をユーザに通知するようにしてもよい。あるいは、印刷処理予測時間自体を、印刷終了時間の目安として通知するようにしてもよい。
【0055】
また、印刷終了時間の目安の通知方法は、操作パネル4の表示を例としたが、それ以外にも、例えばスピーカからの音声出力による通知であってもよい。または、操作パネル4の表示とスピーカからの音声出力とを組み合わせるようにしてもよい。さらには、印刷処理予測時間、又は、印刷処理予測時間に基づいた印刷終了時間の目安を、ネットワーク管理モジュール33を通してホストコンピュータ3に送信するようにし、ホストコンピュータ3側で画面表示するようにしてもよい。また、本実施形態では、レーザプリンタを適用例としたが、インクジェットプリンタに適用してもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、PDLコマンドを解析し、1ページ内に含まれる描画コマンドによる描画面積を算出し、描画コマンドの種類毎に重み付けを行って総描画面積を算出し、予め用意してある印刷処理時間予測テーブルを用いて総描画面積から1ページあたりの印刷処理予測時間を算出する。印刷データが複数のページからなる場合は、上記一連の処理を繰り返し、ページ毎に印刷処理予測時間を算出し、累積する。この印刷処理予測時間に基づいて、印刷処理全体が終了する時間の目安(例えば、全ての印刷処理予測時間に対して実際に印刷処理が終了した時間の割合、又は、印刷処理全体が終了するまでの残り時間の予測値)をユーザに通知する。このようにして、本実施形態では、描画面積によるエンジン側での印刷速度の差を考慮した印刷時間(プリンタエンジンの処理時間)を予測でき、より正確な印刷終了時間(印刷処理全体が終了する時間)の目安をユーザに提示できる。よって、ユーザは印刷終了時間の目安をより正確に知ることができ、ユーザがプリンタの前で印刷処理が終わるのを待ち続ける時間を無くす(減らす)ことができる。
【0057】
また、例えば特許文献1の発明では、ホストコンピュータから印刷データを全て受信した後で、印刷処理時間を予測する処理やPDL解析処理などを行うため、印刷処理を開始する時間が遅くなってしまうという問題があったが、本実施形態によれば、受信した印刷データを逐次処理していくので、印刷処理の開始が遅くなることがない。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【0059】
例えば、上述した実施形態における動作は、ハードウェア、または、ソフトウェア、あるいは、両者の複合構成によって実行することも可能である。
【0060】
ソフトウェアによる処理を実行する場合には、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ内のメモリにインストールして実行させてもよい。あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させてもよい。
【0061】
例えば、プログラムは、記録媒体としてのハードディスクやROM(Read Only Memory)に予め記録しておくことが可能である。あるいは、プログラムは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory),MO(Magneto optical)ディスク,DVD(Digital Versatile Disc)、磁気ディスク、半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体に、一時的、あるいは、永続的に格納(記録)しておくことが可能である。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することが可能である。
【0062】
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体からコンピュータにインストールする他、ダウンロードサイトから、コンピュータに無線転送してもよい。または、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介して、コンピュータに有線で転送してもよい。コンピュータでは、転送されてきたプログラムを受信し、内蔵するハードディスク等の記録媒体にインストールすることが可能である。
【0063】
また、上記実施形態で説明した処理動作に従って時系列的に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力、あるいは、必要に応じて並列的にあるいは個別に実行するように構築することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、画像形成に所定の時間を要する装置・機器、システム、方法、プログラム、記録媒体等に適用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 レーザプリンタ
2 コントローラ
3 ホストコンピュータ
4 オペレーションパネル
5 ホストI/F
6 プログラムROM
7 フォントROM
8 パネルI/F
9 CPU
10 RAM
11 NV−RAM
12 エンジンI/F
13 プリンタエンジン
14 オプションRAM
31 PDL解析モジュール
32 ジョブ管理モジュール
33 ネットワーク管理モジュール
34 メモリ管理モジュール
35 印刷管理モジュール
36 システム管理モジュール
37 操作パネル管理モジュール
38 サービス提供モジュール群
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】特開平09−290548号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データに含まれる描画コマンドを解釈して印刷画像を生成し、生成した印刷画像の印刷を行う画像形成装置において、
前記印刷データ1ページ毎に、前記描画コマンドを解釈し、前記描画コマンドにより描画される印刷画像の各領域の描画面積を算出する描画面積算出手段と、
前記面積算出手段により算出された各領域の描画面積に対し、前記描画コマンドの種類別に予め定められた値を用いて重み付けを行う重み付け手段と、
印刷データ1ページ内の総描画面積の大きさに応じて、1ページの印刷に要すると予測される時間である印刷処理予測時間が対応付けられた時間予測テーブルと、
前記重み付け手段により重み付けされた各領域の描画面積の総和である総描画面積を基に、前記時間予測テーブルを参照して、前記印刷データ1ページの印刷処理予測時間を算出する予測時間算出手段と、
前記予測時間算出手段により算出された印刷処理予測時間を示すデータを所定の出力先へ出力する出力手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記予測時間算出手段により算出された印刷処理予測時間に基づいて、前記印刷データ全ページ分の印刷が終了する時間の目安を算出する終了目安算出手段を有し、
前記出力手段は、
前記終了目安算出手段により算出された目安を所定の出力先へ出力することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記終了目安算出手段は、
前記印刷データの所定ページの印刷が終了した場合、印刷がまだ行われていないページの印刷処理予測時間に基づいて前記目安を更新することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記終了目安算出手段は、
前記印刷データ全ページ分の印刷が終了するまでの残り時間の予測値、又は、前記印刷データ全ページ分の印刷処理予測時間に対して実際に印刷が終了した経過時間の割合、のいずれかを算出することを特徴とする請求項2又は3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記出力手段として、情報処理装置と接続してデータ通信を可能とする通信手段を有し、
前記通信手段は、
前記情報処理装置への前記印刷処理予測時間の送信、前記情報処理装置への前記目安の送信、及び、前記情報処理装置からの前記印刷データの受信、のうち少なくとも1つのデータ通信を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記出力手段として、画面表示又は音声出力によりユーザに通知を行う通知手段を有し、
前記通知手段は、
前記印刷処理予測時間又は前記目安の通知を行うことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
印刷データに含まれる描画コマンドを解釈して印刷画像を生成し、生成した印刷画像の印刷を行う装置で実行される画像処理方法において、
前記印刷データ1ページ毎に、前記描画コマンドを解釈し、前記描画コマンドにより描画される印刷画像の各領域の描画面積を算出する描画面積算出ステップと、
前記面積算出ステップにより算出された各領域の描画面積に対し、前記描画コマンドの種類別に予め定められた値を用いて重み付けを行う重み付けステップと、
前記重み付けステップにより重み付けされた各領域の描画面積の総和である総描画面積を基に、印刷データ1ページ内の総描画面積の大きさに応じて、1ページの印刷に要すると予測される時間である印刷処理予測時間が対応付けられた時間予測テーブルを参照して、前記印刷データ1ページの印刷処理予測時間を算出する予測時間算出ステップと、
前記予測時間算出ステップにより算出された印刷処理予測時間を示すデータを所定の出力先へ出力する出力ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
印刷データに含まれる描画コマンドを解釈して印刷画像を生成し、生成した印刷画像の印刷を行うコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
前記コンピュータに、
前記印刷データ1ページ毎に、前記描画コマンドを解釈し、前記描画コマンドにより描画される印刷画像の各領域の描画面積を算出する描画面積算出処理と、
前記面積算出処理により算出された各領域の描画面積に対し、前記描画コマンドの種類別に予め定められた値を用いて重み付けを行う重み付け処理と、
前記重み付け処理により重み付けされた各領域の描画面積の総和である総描画面積を基に、印刷データ1ページ内の総描画面積の大きさに応じて、1ページの印刷に要すると予測される時間である印刷処理予測時間が対応付けられた時間予測テーブルを参照して、前記印刷データ1ページの印刷処理予測時間を算出する予測時間算出処理と、
前記予測時間算出処理により算出された印刷処理予測時間を示すデータを所定の出力先へ出力する出力処理と、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
請求項8記載のプログラムを格納したことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−31580(P2011−31580A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182670(P2009−182670)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】