説明

画像形成装置、画像形成方法

【課題】像担持体ベルトの垂直方向(第2の方向)における位置変動および移動方向(第1の方向)における速度変動の両方を求めることを可能とする技術を提供する。
【解決手段】第1の方向に移動するとともに像を担持する像担持体ベルト31と、像担持体ベルトの一端部を検出する検出部SCと、第1の方向に垂直もしくは略垂直な第2の方向に、像担持体ベルトを変位させる変位部56と、検出部の検出結果から第2の方向の像担持体ベルトの位置の変動を算出するとともに、変位部が像担持体ベルトを第2の方向に変位させた際の検出部の検出結果から第1の方向の像担持体ベルトの速度の変動を算出する制御部ECと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、像を担持する像担持体ベルトを用いた画像形成装置および画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような画像形成装置では、感光体ベルトや中間転写ベルトといった像担持体ベルトを所定の移動方向に移動させつつ、この像担持体ベルトの表面に像を形成あるいは転写するといったことが行なわれている。ただし、このような画像形成装置では、像担持体ベルトの蛇行が問題となっていた。つまり、特許文献1でも指摘されているとおり、像担持体ベルトは移動方向にまっすぐ移動するとは限らず、移動方向に対して垂直な垂直方向によれながら移動する(すなわち、蛇行する)場合がある。このような場合、像担持体ベルトに形成・転写されて当該像担持体に担持される像の位置が、垂直方向にずれてしまい、その結果、画像形成を良好に行えないおそれがあった。
【0003】
このような問題に対応するために、特許文献1では、蛇行による像担持体ベルトの位置変動、言い換えれば、垂直方向における像担持体ベルトの位置変動が求められる。具体的には、像担持体ベルトの一端に沿って、2つのセンサーが像担持体ベルトの移動方向に並んで配置される。そして、これらのセンサーが像担持体ベルトの一端の位置を検出した結果から、垂直方向における像担持体ベルト(の一端)の位置変動が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−114240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、像担持体ベルトの移動方向への移動速度は常に一定とは限らない。したがって、像担持体ベルトの移動速度が変動することで、像担持体ベルトに形成・転写されて当該像担持体ベルトに担持される像の位置が、移動方向にずれてしまう場合があった。つまり、画像形成を良好に行うためには、垂直方向における像担持体ベルトの位置変動を求めるだけでは足りず、移動方向における像担持体ベルトの速度変動も求めておく必要があった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、像担持体ベルトの垂直方向における位置変動および移動方向における速度変動の両方を求めることを可能とする技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、第1の方向に移動するとともに像を担持する像担持体ベルトと、像担持体ベルトの一端部を検出する検出部と、第1の方向に垂直もしくは略垂直な第2の方向に、像担持体ベルトを変位させる変位部と、検出部の検出結果から像担持体ベルトの第2の方向の位置の変動を算出するとともに、変位部が像担持体ベルトを第2の方向に変位させた際の検出部の検出結果から像担持体ベルトの第1の方向に移動する速度の変動を算出する制御部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
また、この発明にかかる画像形成方法は、上記目的を達成するために、第1の方向に移動する像担持体ベルトの一端部を検出し、検出された結果から第1の方向に垂直もしくは略垂直な第2の方向の像担持体ベルトの位置の変動を算出し、像担持体ベルトを第2の方向に変位させ、第2の方向に変移させた後に像担持体ベルトの一端部を検出した結果から、像担持体ベルトの第1の方向に移動する速度の変動を算出することを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明(画像形成装置、画像形成方法)は、第1の方向に移動する像担持体ベルトの一端部を検出部により検出する構成を備える。したがって、第1の方向に垂直もしくは略垂直な第2の方向への像担持体ベルトの位置変動は、像担持体ベルトの一端部の検出結果から算出することができる。ただし、上述のとおり、像担持体ベルトは、第2の方向へ位置変動を起こすのみならず、第1の方向へ速度変動を起こす場合もある。そこで、この発明は、像担持体ベルトを第2の方向に変位させる構成を備えている。つまり、このような構成を備えることで、像担持体ベルトを第2の方向に変位させた際の検出部の検出結果から第1の方向の像担持体ベルトの速度の変動を算出することが可能となる。こうして、この発明では、像担持体ベルトの第2の方向(垂直方向)における位置変動および第1の方向(移動方向)における速度変動の両方を求めることが可能となっている。
【0010】
より具体的には、制御部は、変位部により像担持体ベルトが第2の方向の第1の側に変位させた後に第2の方向の第1の側と逆の第2の側に変位するときの像担持体ベルトの一端部の位置の変動を検出部が検出した結果に基づいて、像担持体ベルトの第1の方向に移動する速度の変動を算出するように構成すると良い。つまり、変位部により第2の方向の第1の側へ変位した像担持体ベルトは、その後、第1の側と逆の第2の側(変位前の位置に戻る方向)に変位する。そして、後述するように、この変位の速度は像担持体ベルトの速度に依存する。そこで、変位前の位置に戻る方向(第2の側)に変位する像担持体ベルトの一端部の変動を検出することで、第1の方向の像担持体ベルトの速度変動を算出することが可能となる。
【0011】
この際、検出部は、像担持体ベルトの一端部の第2の方向の位置に応じて強度が変化する信号を出力する信号出力手段を有し、制御部は、変位部により像担持体ベルトが第2の方向の第1の側への移動に伴う信号出力手段から出力される信号の強度の変化から、像担持体ベルトが第2の方向の第2の側への移動に伴う信号出力手段から出力される信号の強度が予め定められた値となるまでの時間に基づいて、像担持体ベルトの第1の方向に移動する速度の変動を算出するように構成しても良い。つまり、このような構成では、変位前の位置に戻る方向(第2の側)に変位する像担持体ベルトの一端部の時間的変動を、検出部の信号強度が予め定められた値となるまでの時間により捉えることができる。そして、この時間に基づいて、第1の方向の像担持体ベルトの速度変動を算出することが可能となる。
【0012】
また、制御部が算出した像担持体ベルトの第2の方向の位置の変動に基づいて、像担持体ベルトの第2の方向の位置を調整する位置調整部を有するように構成しても良い。これによって、第2の方向における像担持体ベルトの位置を安定させて、像担持体ベルトに担持される像の位置を適切なものとし、画像形成を良好に行うことが可能となる。
【0013】
また、制御部が算出した像担持体ベルトの第1の方向に移動する速度の変動に基づいて、像担持体ベルトの第1の方向に移動する速度を調整する速度調整部を有するように構成しても良い。これによって、第1の方向における像担持体ベルトの速度を安定させて、像担持体ベルトに担持される像の位置を適切なものとし、画像形成を良好に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置が備える電気的構成を示すブロック図。
【図3】蛇行制御機構の構成を示す模式図。
【図4】ベルト速度制御およびベルト蛇行制御を実行する構成を示すブロック図。
【図5】変位前の状態に戻る中間転写ベルト端面の位置の時間的変化を示す図。
【図6】変位前の状態に戻る中間転写ベルト端面の位置の時間的変化を示す図。
【図7】ベルト速度制御およびベルト蛇行制御を実行する構成を示すブロック図。
【図8】ベルト速度制御を司る系統の動作の一例を示す図。
【図9】ベルト速度制御を司る系統が備える速度変換テーブルの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。図2は、図1の画像形成装置が備える電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置1では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCがエンジンコントローラーECに制御信号を与える。これに基づき、エンジンコントローラーECは装置各部を制御することで、画像形成動作を実行して、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0016】
この画像形成装置1は、互いに異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kは、それぞれ対応する色のトナー像を形成するタンデム型の画像形成装置である。そして、画像形成装置1は、こうして形成されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナー像を、転写ユニット3の中間転写ベルト31に重ね合わせてカラー画像を形成することができる。
【0017】
転写ユニット3は、一列に並ぶ画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kの両外側に配置された2つのローラー33、34に、無端状の中間転写ベルト31を架け渡した概略構成を備える。ローラー33は駆動ローラーであり、駆動ローラー用モーターM33(図2)から駆動力を受けて回転駆動することで、中間転写ベルト31をベルト移動方向(副走査方向)D31に循環移動させる。ちなみに、副走査方向D31は、図1の紙面に平行な方向であって、後述する主走査方向に垂直もしくは略垂直な方向である。また、後述する蛇行制御機構5においては、中間転写ベルト31はベルト移動方向D31(副走査方向)に対して傾斜して移動することもできる。また、ローラー34は従動ローラーであり、循環移動する中間転写ベルト31に従って回転する。
【0018】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21は、その回転軸が主走査方向(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21の回転軸はそれぞれ感光体ドラム21の正面側端部に配置されたドラム駆動モーターに接続され、感光体ドラム21は図1中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。
【0019】
各感光体ドラム21の周囲には、感光体ドラム21表面を所定の電位に帯電させるコロナ帯電器である帯電器22、感光体ドラム21表面を画像信号に応じて露光することで静電潜像を形成する露光ユニット23、該静電潜像をトナー像として顕像化する現像ユニット24、第1スクイーズ部25、第2スクイーズ部26、該トナー像を中間転写ベルト31に転写する転写ユニット3、転写後の感光体ドラム21の表面をクリーニングするクリーニングユニット28およびクリーナブレード29が、それぞれこれらの順に感光体ドラム21の回転方向D21(図1では、時計回り)に沿って配設されている。
【0020】
帯電器22は感光体ドラム21の表面に接触しないものであり、この帯電器22には、従来周知慣用のコロナ帯電器を用いることができる。コロナ帯電器にスコロトロン帯電器を用いた場合には、スコロトロン帯電器のチャージワイヤには負のワイヤ電流が流されるとともに、グリッドには直流(DC)のグリッド帯電バイアスが印加される。帯電器22によるコロナ放電で感光体ドラム21が帯電されることで、感光体ドラム21の表面の電位が略均一の電位に設定される。
【0021】
露光ユニット23は、外部装置から与えられた画像信号に応じて光ビームにより感光体ドラム21表面を露光して画像信号に対応する静電潜像を形成する。この露光ユニット23としては、半導体レーザからの光ビームをポリコンミラーにより走査させるもの、あるいは発光素子を主走査方向に配列したラインヘッド等により構成することができる。
【0022】
こうして形成された静電潜像に対して現像ユニット24からトナーが付与されて、静電潜像がトナー像として現像される。この画像形成装置1の現像ユニット24は、キャリア液内にトナーを分散させた液体現像剤を、現像ローラーにより静電潜像に付着させて、静電潜像を現像するものである。この液体現像剤としては、従来一般的に使用されている、Isopar(商標:エクソン)をキャリア液とした低濃度(1〜2wt%)かつ低粘度の常温で揮発性を有する揮発性液体現像剤ではなく、高濃度かつ高粘度の、常温で不揮発性樹脂中へ顔料などの着色剤を分散させた平均粒径1μmの固形子を、有機溶媒、シリコンオイル、鉱物油又は食用油等の液体溶媒中へ分散剤とともに添加し、トナー固形分濃度を約20%とした高粘度(30〜10000mPa・s程度)のものが用いられる。
【0023】
感光体ドラム21の回転方向D21において現像位置の下流側に、第1スクイーズ部25が配置されるとともに、さらに第1スクイーズ部25の下流側に第2スクイーズ部26が配置されている。これらのスクイーズ部25、26のそれぞれは、スクイーズローラーを感光体ドラム21の表面に当接させてトナー像の余剰現像剤を除去する。
【0024】
第1および第2スクイーズ部25、26を通過してきたトナー像は転写ユニット3の中間転写ベルト31に1次転写される。つまり、中間転写ベルト31の内側にはバックアップローラー271が配置されている。そして、バックアップローラー271が1次転写位置TR1で中間転写ベルト31を挟んで感光体ドラム21と対向して、感光体ドラム21上のトナー像を中間転写ベルト31に転写する。そして、各色の一次転写位置TR1でトナー像の転写が実行されることで、感光体ドラム21上の各色のトナー像が中間転写ベルト31上に順次重ね合わされ、フルカラーのトナー像が形成される。
【0025】
具体的には、画像形成ステーション2Yが形成したイエロー(Y)のトナー像が、イエローの一次転写位置TR1で中間転写ベルト31に転写される。こうして一次転写されたイエロー(Y)のトナー像は、中間転写ベルト31と一緒にベルト移動方向D31へ移動して、マゼンタ(M)の一次転写位置TR1に到達する。そして、このタイミングに合わせて、画像形成ステーション2Mが形成したマゼンタ(M)のトナー像が、マゼンタの一次転写位置TR1で中間転写ベルト31に転写される。その結果、マゼンタの一次転写位置TR1で、イエロー(Y)のトナー像とマゼンタ(M)のトナー像が重ね合わされる。そして、このような色の重ね合わせを、残りのシアン(C)およびブラック(K)についても実行することで、4色(Y)、(M)、(C)、(K)を重ね合わせたフルカラーのトナー像が形成される。
【0026】
こうして中間転写ベルト31に形成されたフルカラーのトナー像は図1に示すように2次転写部4に搬送される。この2次転写部4では、2次転写ローラー41が中間転写ベルト31を挟んで転写ユニット3の駆動ローラー33と対向して配設される。そして、2次転写ローラー41が配置された2次転写位置で、中間転写ベルト31上に形成されたトナー像が、シート材搬送経路Lにて搬送される用紙、フィルム、布などの記録材に転写される。なお、2次転写部4には、2次転写ローラー41上に残る現像剤を除去する2次転写ローラークリーニング部42が設けられており、2次転写ローラークリーニング部42の先端ブレードを2次転写ローラー41の表面に当接させて現像剤を掻き落とす。さらに、シート材搬送経路Lの下流には、用紙などの記録材に転写されたトナー像に、熱や圧力などを加えて定着させる定着ユニットが配設されている。
【0027】
ところで、本実施形態は、中間転写ベルト31の蛇行を抑制するために、蛇行制御機構5を備える。図3は、蛇行制御機構の構成を示す模式図であり、上段に側面図が示され、下段に上面図が示されている。この蛇行制御機構5は、中間転写ベルト31に対して、画像形成ステーション2Y、2M、2C、2Kの反対側に配置されおり、4本のローラー51、52、53、54、可動テーブル55およびセンサーSCを備える。
【0028】
4本のローラー51〜54はいずれも従動ローラーであり、それぞれの回転軸が主走査方向に平行もしくは略平行となるように配置されている。なお、後述するように、ローラー52、53については、これらを支持する可動テーブル55の回転に伴なって、その回転軸を主走査方向に対して傾けることもできる。
【0029】
ローラー51、54は、駆動ローラー33から従動ローラー34へと向かう中間転写ベルト31の表面を巻き掛けるようにして配置されている。一方、ローラー52、53は、ローラー51、54の間で中間転写ベルト31の裏面を巻き掛けて、中間転写ベルト31をローラー51、54より外側に押し出すようにして配置されている。これにより、中間転写ベルト31は、ローラー51〜54それぞれの巻き掛け部で湾曲して、逆U字状の経路を移動する。
【0030】
可動テーブル55は、中間転写ベルト31を押し出す2つのローラー52、52を、これらの位置関係を保持しながら枢支するものである。また、図3の上面図に示すように、この可動テーブル55は、ローラー52、53のうちベルト移動方向D81上流側のローラーの中央部を回転中心Ccyとして回転可能に構成されている。したがって、可動テーブル用モーターM55(図2)の駆動力を受けて可動テーブル55が回転すると、ローラー52、53の配列方向Dvがベルト移動方向D31に対して角度θだけ傾斜することができる。その結果、ローラー52からローラー53までの範囲では、中間転写ベルト31がベルト移動方向D31に対して角度θだけ傾いて移動する。そして、可動テーブル55の回転を制御して傾き角度θを調整することで、中間転写ベルト31の蛇行を抑えることができる。
【0031】
また、センサーSCは、ローラー53とローラー54の間に配置されて、ベルト移動方向D31に垂直もしくは略垂直な垂直方向Dv(主走査方向)における一端面を検出する。より具体的には、センサーSCは、中間転写ベルト31の当該一端面の位置が垂直方向Dvへ変位した量に応じて、強度(レベル)が変化する信号を出力する。このようなセンサーSCとしては例えば、超音波型あるいは光検出型のセンサーのものを用いることができる。光が透過しない中間転写ベルト31に対して用いる場合は、どちらのタイプも使用可能であるが、透明フィルムに対して用いる場合は超音波型が有効となる。
【0032】
そして、この実施形態では、エンジンコントローラーECが、センサーSCの検出結果から、中間転写ベルト31の垂直方向Dvへの位置変動(すなわち、蛇行)を求める。なお、後述するように、この実施形態は、中間転写ベルト31を垂直方向Drへ変位させる加振手段56を備えるものであるが、中間転写ベルト31の蛇行をセンサーSCの検出結果から求めるにあたっては、加振手段56の動作は禁止されており、加振手段56による中間転写ベルト31の変位は無い。そして、エンジンコントローラーECは、こうしてセンサーSCの検出結果から求めた、中間転写ベルト31の垂直方向Dvへの位置変動に基づいて可動テーブル用モーターM55を制御して中間転写ベルト31の蛇行を抑える(ベルト蛇行制御)。さらには、エンジンコントローラーECは、センサーSCの検出結果から、中間転写ベルト31のベルト移動方向D31への速度変動を求めるとともに、この結果に基づいて駆動ローラー用モーターM33を制御して中間転写ベルト31の移動速度を安定化させるとともに(ベルト速度制御)。
【0033】
ただし、センサーSCは、中間転写ベルト31端面の垂直方向Dvへの変動に応じて出力信号レベルを変化させるものである。したがって、中間転写ベルト31のベルト移動方向D31への速度変動が、中間転写ベルト31端面の垂直方向Dvへの位置変動を伴なわない限り、センサーSCの検出結果から当該速度変動を検出することはできない。そこで、この実施形態では、このようなセンサーSCによって中間転写ベルト31のベルト移動方向D31への速度変動を検出可能とするために、中間転写ベルト31の一端面を垂直方向Dvへ強制的に変位させる加振手段56が設けられている。
【0034】
図4は、加振手段の構成および動作の説明図であり、図3の側面図の左側から蛇行制御機構5を見た場合を示している。図4に示すように、加振手段56は、ローラー53の一端部に取り付けられている。この加振手段56はソレノイド等で構成されており、中間転写ベルト31を巻き掛けて支持するローラー53を垂直方向Dvの一方側(第1の側)に変位させることができる。そして、中間転写ベルト31は、このローラー53の変位に伴なって、垂直方向Dvへと変位量Δだけ変位する。この変位量Δは十分に小さく設定されており、例えば100[μm]程度である。
【0035】
このとき、ローラー53からローラー54までの距離をLとし、ローラー53からポイントP1、P2、P3、P4それぞれまでの距離をx(n)(n=1、2、3、4)とすると、ポイントP1、P2、P3、P4それぞれにおいて加振手段56により変位した量dは、d=Δ×x(n)/Lで与えられる。そして、中間転写ベルト31は、変位量Δだけ変位した状態を維持し続けるわけではなく、移動方向D31に移動することで変位前の位置に戻る方向に変位していき(図5)、ポイントP1、P2、P3、P4それぞれでの変位量dはゼロへと収束していく。換言すれば、垂直方向Dvの上記一方側と逆の他方側(第2の側)へと、中間転写ベルト31は変位して、変位量Δだけ変位する前の状態に戻ろうとする。しかも、中間転写ベルト31が変位前の位置に戻る速度、換言すれば、ポイントP1、P2、P3、P4それぞれでの変位量dがゼロに収束する速度は、中間転写ベルト31のベルト移動方向D31への移動速度に応じて速くなる(図6)。
【0036】
ここで、図5は、変位前の状態に戻る中間転写ベルト端面の位置の時間的変化を示す図であり、具体的には、中間転写ベルト31端面の位置を検出するセンサーSCの出力信号の時間的変化がプロットされている。なお、図5において、符号P1、P2、P3、P4が付された曲線のそれぞれは、図4のポイントP1、P2、P3、PにセンサーSCを配置した場合におけるセンサーSCの出力信号を示している。また、図6は、変位前の状態に戻る中間転写ベルト端面の位置の時間的変化と中間転写ベルトの移動速度との関係を示す図であり、具体的には、中間転写ベルト31の速度vが2[m/s]と1[m/s]のそれぞれの場合について、ポイントP2に配置されたセンサーSCの出力信号の時間的変化が示されている。これらの図5、図6が示すように、ポイントP1、P2、P3、P4それぞれでの変位量dがゼロに収束するのに応じて、センサーSCの出力値は一次遅れ特性を示しつつ、1.0[V]未満から1.0[V]に収束している。
【0037】
このように、中間転写ベルト31のベルト移動方向D31への移動速度が速いほど、中間転写ベルト31が変位前の位置に戻る速度も速くなるのが判る。そこで、この実施形態では、変位前の位置に向かって垂直方向Dvへと変位する中間転写ベルト31一端面の位置の時間的な変動をセンサーSCで検出している。より具体的には、中間転写ベルト31が変位量Δだけ変位してセンサーSCの出力レベルが低下した時刻(=0秒)から、センサーSCの出力レベルが閾値電圧Vthに戻るまでの時間t11、t1が検出される。そして、この検出結果に基づいて中間転写ベルト31のベルト移動方向D31への速度変動が求められる。
【0038】
このように、この実施形態の画像形成装置1は、中間転写ベルト31の垂直方向Dvへの位置変動と、中間転写ベルト31のベルト移動方向D31への速度変動とを、センサーSCの検出結果から求めることができる構成を備えている。そして、こうして求めた結果に基づいて、ベルト蛇行制御およびベルト速度制御が実行される。続いて、これらの制御について以下に詳述する。
【0039】
図7は、中間転写ベルトのベルト速度制御およびベルト蛇行制御を実行するエンジンコントローラー内部の構成を示すブロック図である。図5に示すように、エンジンコントローラーECは、比較器101および制御回路102で構成されてベルト蛇行制御を司る系統と、出力信号比較回路103、測定パルス発生回路104、時間差測定回路105、制御回路106および速度変換テーブル107で構成されてベルト速度制御を司る系統とを有している。
【0040】
ベルト蛇行制御を司る系統の動作は次のとおりである。加振手段56による中間転写ベルト31の変位が無い状態において、センサーSCの出力が比較器101によって基準値と比較された後に、制御回路102に入力される(図7)。この制御回路102は、垂直方向Dv(主走査方向)への中間転写ベルト31の一端面の位置変動を算出する。そして、制御回路102は、この算出結果に基づいて可動テーブル用モーターM55を制御することで、中間転写ベルト31のベルト蛇行制御を行なって、中間転写ベルト31の蛇行を抑制する。こうして、ベルト蛇行制御を実行するフィードバックループが形成される。なお、制御回路102の動作としては、基準値との差を単純に定数倍するものから、微分動作、積分動作を含むものまで種々のものを採用可能である。
【0041】
続いて、ベルト速度制御を司る系統の動作について、図8、図9を用いて説明する。ここで、図8は、エンジンコントローラーが備えるベルト速度制御を司る系統の動作の一例を示す図である。特に、図8の下段には、測定パルス発生回路104が出力するパルス(測定パルス)が示されており、図8の上段には、センサーSCの出力信号が示されている。また、図9は、ベルト速度制御を司る系統が備える速度変換テーブルの一例を示す図である。
【0042】
ベルト速度制御では、まず、測定パルス発生回路104が加振手段56へステップ状のパルス信号を出力し(図8の下段)、加振手段56はこのパルス信号を受けてソレノイドを動作させてローラー53を垂直方向Dvに変位させる。また、測定パルス発生回路104の発生したパルス信号は、制御回路102にも出力される。これによって、加振手段56がローラー53を垂直方向Dvに変位させている間は、蛇行制御機構5の動作が禁止されることとなる。
【0043】
時間差測定回路105は、測定パルス発生回路104から出力されたパルスの立上りを検出すると、内部タイマーの動作を開始させて、出力信号比較回路103からのストップ信号を待つ。一方、出力信号比較回路103は、センサーSCの出力信号レベルと所定の閾値電圧Vthとを比較して、これらが一致したタイミングでストップ信号を出力する。こうして、センサーSCの出力信号レベルが閾値電圧Vthに到達するまでの時間が計測される。そして、制御回路106は、この計測時間に基づいて、中間転写ベルト31のベルト移動方向D31への移動速度を求める。より具体的には、計測時間と中間転写ベルト31の移動速度とを対応付けて記憶する速度変換テーブル107を参照することで、制御回路106は、中間転写ベルト31の移動速度を求める。
【0044】
こうして求められた中間転写ベルト31の移動速度から、中間転写ベルト31のベルト移動方向D31への速度変動を算出することができる。そして、制御回路106は、こうして算出された中間転写ベルト31の速度変動に基づいて駆動ローラー用モーターM33を制御することで、中間転写ベルト31のベルト速度制御を行なって、中間転写ベルト31の速度変動を抑制する。
【0045】
以上のように、この実施形態では、ベルト移動方向D31に移動する中間転写ベルト31の一端部をセンサーSCにより検出する構成を備える。したがって、垂直方向Dvへの中間転写ベルト31の位置変動は、中間転写ベルト31の一端部の検出結果から算出することができる。ただし、中間転写ベルト31は、垂直方向Dvへ位置変動を起こすのみならず、ベルト移動方向D31へ速度変動を起こす場合もある。そこで、この実施形態は、中間転写ベルト31を垂直方向Dvに変位させる構成を備えている。つまり、このような構成を備えることで、中間転写ベルト31を垂直方向Dvに変位させた際のセンサーSCの検出結果からベルト移動方向D31の中間転写ベルト31の速度の変動を算出することが可能となる。こうして、この実施形態では、中間転写ベルト31の垂直方向Dvにおける位置変動およびベルト移動方向31における速度変動の両方を求めることが可能となっている。
【0046】
また、この実施形態では、エンジンコントローラーECが算出した垂直方向Dvへの中間転写ベルト31の位置変動に基づいて、垂直方向Dvへの中間転写ベルトの位置を調整している。これによって、垂直方向Dvにおける中間転写ベルト31の位置を安定させて、中間転写ベルト31に担持される像の位置を適切なものとし、画像形成を良好に行うことが可能となる。
【0047】
特に、上述のようなタンデム型の画像形成装置では、蛇行によって垂直方向Dvへ中間転写ベルト31の位置が変動すると、中間転写ベルト31表面において異なる色のトナー像の転写位置が垂直方向Dvにずれて、垂直方向Dvへのレジストずれが発生するおそれがある。これに対して、エンジンコントローラーECが算出した垂直方向Dvへの中間転写ベルト31の位置変動に基づいて、垂直方向Dvへの中間転写ベルトの位置を調整することで、この垂直方向Dvへのレジストずれを効果的に抑制することができる。
【0048】
また、この実施形態では、エンジンコントローラーECが算出したベルト移動方向D31への中間転写ベルト31の速度変動に基づいて、ベルト移動方向D31への中間転写ベルト31の速度を調整するように構成しても良い。これによって、ベルト移動方向D31における中間転写ベルト31の速度を安定させて、中間転写ベルト31に担持される像の位置を適切なものとし、画像形成を良好に行うことが可能となる。
【0049】
特に、上述のように駆動ローラー33によって中間転写ベルト31を循環駆動する構成では、駆動ローラー33を駆動する駆動ローラー用モーターM33の負荷変動等に起因して、駆動ローラー33の速度が安定しない場合がある。しかも、上述のようなタンデム型の画像形成装置において駆動ローラー33の速度が不安定になると、ベルト移動方向D31への中間転写ベルト31の移動速度が変動することとなる。その結果、中間転写ベルト31表面において異なる色のトナー像の転写位置がベルト移動方向D31にずれて、副走査方向へのレジストずれが発生するおそれがある。これに対して、エンジンコントローラーECが算出したベルト移動方向D31への中間転写ベルト31の速度変動に基づいて、ベルト移動方向D31への中間転写ベルト31の位置を調整することで、このベルト移動方向D31へのレジストずれを効果的に抑制することができる。
【0050】
以上のように、この実施形態では、ベルト移動方向D31(副走査方向)が本発明の「第1の方向」に相当し、垂直方向Dvが本発明の「第2の方向」に相当する。また、中間転写ベルト31が本発明の「像担持体ベルト」に相当し、センサーSCが本発明の「検出部」「信号出力手段」に相当し、加振手段56が本発明の「変位部」に相当し、エンジンコントローラーECが本発明の「制御部」に相当する。また、エンジンコントローラーEC、可動テーブル用モーターM55および蛇行制御機構5が協働して本発明の「位置調整部」として機能し、エンジンコントローラーEC、駆動ローラー用モーターM33および駆動ローラー33が協働して本発明の「速度調整部」として機能している。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、エンジンコントローラーECが算出した、垂直方向Dvへの中間転写ベルト31の位置変動やベルト移動方向D31への中間転写ベルトの速度変動を、上述した以外の対象を制御するために用いることもできる。具体的には、上記実施形態では、エンジンコントローラーECが算出したベルト移動方向D31への中間転写ベルト31の速度変動に基づいて、ベルト移動方向D31への中間転写ベルト31の速度を調整していた。しかしながら、この中間転写ベルト31の速度変動の算出値に基づいて、露光ユニット23が感光体ドラム21表面に潜像形成するタイミング(露光開始タイミング)を調整して、ベルト移動方向D31へのレジストずれを抑制するように構成しても良い。
【0052】
また、中間転写ベルト31の端面を検出するセンサーの個数や位置は上述したものに限られず、適宜変更可能である。
【0053】
また、感光体ドラム21の変わりに、ローラーに巻き掛けられて循環移動する無端状の感光体ベルトに対して潜像を形成する構成には、この感光体ベルトの駆動制御に本発明を適用することもできる。そこで、例えば、感光体ベルトの一端面を検出する2つのセンサーの検出結果から低周波成分と高周波成分とをそれぞれ求めて、感光体ベルトの垂直方向Dvにおける位置変動およびベルト移動方向1における速度変動の両方を求めるように構成しても良い。要するに、その表面に像を担持する像担持体ベルト全般に対して、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
D31…ベルト移動方向、 Dv…垂直方向、 31…中間転写ベルト、 55…加振手段、 SC…センサー、 EC…エンジンコントローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に移動するとともに像を担持する像担持体ベルトと、
前記像担持体ベルトの一端部を検出する検出部と、
前記第1の方向に垂直もしくは略垂直な第2の方向に、前記像担持体ベルトを変位させる変位部と、
前記検出部の検出結果から前記像担持体ベルトの前記第2の方向の位置の変動を算出するとともに、前記変位部が前記像担持体ベルトを前記第2の方向に変位させた際の前記検出部の検出結果から前記像担持体ベルトの前記第1の方向に移動する速度の変動を算出する制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記変位部により前記像担持体ベルトが前記第2の方向の第1の側に変位させた後に前記第2の方向の前記第1の側と逆の第2の側に変位するときの前記像担持体ベルトの前記一端部の位置の変動を前記検出部が検出した結果に基づいて、前記像担持体ベルトの前記第1の方向に移動する速度の変動を算出する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記像担持体ベルトの前記一端部の前記第2の方向の位置に応じて強度が変化する信号を出力する信号出力手段を有し、
前記制御部は、前記変位部により前記像担持体ベルトが前記第2の方向の前記第1の側への移動に伴う前記信号出力手段から出力される信号の強度の変化から、前記像担持体ベルトが前記第2の方向の前記第2の側への移動に伴う前記信号出力手段から出力される信号の強度が予め定められた値となるまでの時間に基づいて、前記像担持体ベルトの前記第1の方向に移動する速度の変動を算出する請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部が算出した前記像担持体ベルトの前記第2の方向の位置の変動に基づいて、前記像担持体ベルトの前記第2の方向の位置を調整する位置調整部を有する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部が算出した前記像担持体ベルトの前記第1の方向に移動する速度の変動に基づいて、前記像担持体ベルトの前記第1の方向に移動する速度を調整する速度調整部を有する請求項1ないし4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
第1の方向に移動する像担持体ベルトの一端部を検出し、
検出された結果から前記第1の方向に垂直もしくは略垂直な第2の方向の前記像担持体ベルトの位置の変動を算出し、
前記像担持体ベルトを前記第2の方向に変位させ、
前記第2の方向に変移させた後に前記像担持体ベルトの一端部を検出した結果から、前記像担持体ベルトの前記第1の方向に移動する速度の変動を算出することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−173448(P2012−173448A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34277(P2011−34277)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】