説明

画像形成装置、画像形成方法

【課題】記録媒体に生じる波打ちを抑制することができる画像形成装置、及び画像形成方法を得る。
【解決手段】シート部材Pは、吸着プレート72の吸着面72Aと摺接しながら搬送され、シート部材Pには、シート部材Pをシート部材Pの搬送方向に引っ張る100N/m以上1000N/m以下の張力が生じる。赤外線ヒータ78は、搬送されるシート部材Pを加熱乾燥することで、シート部材Pに張力が生じている状態でシート部材Pの残水量を3g/m以下とする。これにより、シート部材Pに生じる波打ちを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被記録材(記録媒体)に画像を形成した直後の加熱乾燥工程中において、被記録材に排紙方向の張力を付与して被記録材を直線状態に維持するインクジェット記録装置(画像形成装置)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−338575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成では、記録媒体に付与される張力が規定されておらず、また、加熱乾燥工程における記録媒体への乾燥の程度も規定されていない。このため、記録媒体に生じる波打ちを抑制できないことが考えられる。
【0005】
本発明の課題は、記録媒体に生じる波打ちを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る画像形成装置は、記録媒体に液滴を吐出して記録媒体の表面に画像を形成する画像形成部材と、前記画像形成部材によって記録媒体の表面に画像が形成された記録媒体に、100N/m以上1000N/m以下の張力を生じさせる張力付与手段と、前記張力付与手段によって記録媒体に張力が生じている状態で記録媒体の表面に形成された画像を乾燥させて記録媒体の残水量を3g/m以下とする乾燥部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、張力付与手段が、記録媒体に100N/m以上1000N/m以下の張力を生じさせる。さらに、乾燥部材が、張力付与手段によって記録媒体に張力が生じている状態で、記録媒体の表面に形成された画像を乾燥させて記録媒体の残水量を3g/m以下とする。このため、記録媒体に生じる波打ちを抑制することができる。
【0008】
本発明の請求項2に係る画像形成装置は、請求項1に記載において、前記張力付与手段は、記録媒体に、記録媒体の搬送方向の張力を生じさせることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、画像が形成される記録媒体の紙目の方向が記録媒体の搬送方向と直交する方向を向いている場合に、効果的に、記録媒体に生じる波打ちを抑制することができる。
【0010】
本発明の請求項3に係る画像形成装置は、請求項2に記載において、前記張力付与手段は、前記画像形成部材によって画像が形成された記録媒体の先端部を保持部材で保持して搬送する搬送部材と、前記保持部材によって先端部が保持されながら前記搬送部材によって搬送される記録媒体の裏面を吸着する吸着プレートと、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、裏面が吸着プレートに吸着された記録媒体の先端部を保持部材で保持して搬送部材がこの記録媒体を搬送する。このように、記録媒体の搬送方向の張力を記録媒体に生じさせることができる。
【0012】
本発明の請求項4に係る画像形成装置は、請求項3に記載において、前記搬送部材によって搬送される記録媒体を吸着している状態の前記吸着プレートを、記録媒体の搬送方向の下流側に移動する移動部材が設けられ、前記搬送部材による記録媒体の搬送速度より前記移動部材による前記吸着プレートの移動速度を遅くすることで、記録媒体に張力を生じさせることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、搬送される記録媒体の裏面を吸着する吸着プレートが、移動部材によって記録媒体の搬送方向の下流側に移動するため、記録媒体の裏面に傷が付くのを抑制することができる。
【0014】
本発明の請求項5に係る画像形成装置は、請求項1に記載において、前記張力付与手段は、記録媒体に、記録媒体の搬送方向に対して直交する方向の張力を生じさせることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、画像が形成される記録媒体の紙目の方向が記録媒体の搬送方向を向いている場合に、効果的に、記録媒体に生じる波打ちを抑制することができる。
【0016】
本発明の請求項6に係る画像形成装置は、請求項5に記載において、前記張力付与手段は、記録媒体の裏面を吸着しながら周回して記録媒体を搬送する第一搬送ベルトと、前記第一搬送ベルトと並んで配置され、記録媒体の裏面を吸着しながら周回して記録媒体を搬送すると共に、記録媒体の搬送方向の下流側が上流側に比べて前記第一搬送ベルトから離れる第二搬送ベルトと、を備えることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、周回する第一搬送ベルトと周回する第二搬送ベルトとで記録媒体の裏面を吸着しながら記録媒体を搬送する。ここで、第二搬送ベルトは、記録媒体の搬送方向の下流側に向って第一搬送ベルトと離れるように配置されている。これにより、第一搬送ベルトと第二搬送ベルトとの間で、記録媒体の搬送方向に直交する方向の張力を記録媒体に生じさせることができる。
【0018】
本発明の請求項7に係る画像形成装置は、請求項1に記載において、記録媒体の紙目の方向に基づいて、前記張力付与手段を制御して、記録媒体に、記録媒体の搬送方向の張力を生じさせるか、記録媒体の搬送方向に直交する方向の張力を生じさせるかを選択する制御部が設けられることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、記録媒体の紙目の方向に基づいて制御部が、張力付与手段を制御して、記録媒体に、記録媒体の搬送方向の張力を生じさせるか、記録媒体の搬送方向に直交する方向の張力を生じさせるかを選択する。これにより、効果的に、記録媒体に生じる波打ちを抑制することができる。
【0020】
本発明の請求項8に係る画像形成装置は、請求項1〜7の何れか1項に記載において、記録媒体は、枚葉紙であって、前記張力付与手段は、枚葉紙に張力を生じさせることを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、張力付与手段が、枚葉紙に張力を生じさせることで、枚葉紙に生じる波打ちを抑制することができる。
【0022】
本発明の請求項9に係る画像形成装置は、請求項1〜7の何れか1項に記載において、記録媒体は、連長紙であって、前記張力付与手段は、連長紙に張力を生じさせることを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、張力付与手段が、連長紙に張力を生じさせることで、連長紙に生じる波打ちを抑制することができる。
【0024】
本発明の請求項10に係る画像形成装置は、請求項1〜9の何れか1項に記載において、前記画像形成部材に対して記録媒体の搬送方向の上流側には、前記画像形成部材から吐出される液滴中の色材を凝集させる処理液を記録媒体に塗布する処理液塗布部材が設けられることを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、処理液塗布部材が、液滴中の色材を凝集させる凝集処理液を記録媒体に塗布するため、液滴(インク)の記録媒体への浸透が抑制される。これにより、効果的に記録媒体に生じる波打ちを抑制することができる。
【0026】
本発明の請求項11に係る画像形成装置は、請求項10に記載において、前記処理液塗布部材によって記録媒体に塗布された処理液を乾燥させる処理液乾燥部材が設けられることを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、処理液乾燥部材が、処理液塗布部材によって記録媒体に塗布された処理液を乾燥させる。このように、処理液由来の水分を乾燥させることで、記録媒体の軟化が低下され、効果的に記録媒体に生じる波打ちを抑制することができる。
【0028】
本発明の請求項12に係る画像形成方法は、記録媒体に液滴が吐出されて記録媒体の表面に画像が形成される画像形成工程と、100N/m以上1000N/m以下の張力を生じさせた記録媒体の表面に形成された画像を乾燥し、記録媒体に張力が生じている状態で記録媒体の残水量を3g/m以下とする液滴乾燥工程と、を備えることを特徴とする。
【0029】
上記構成によれば、液滴乾燥工程で、100N/m以上1000N/m以下の張力が生じている記録媒体の画像を乾燥し、記録媒体に張力が生じている状態で記録媒体の残水量を3g/mとする。このため、記録媒体に生じる波打ちを抑制することができる。
【0030】
本発明の請求項13に係る画像形成方法は、請求項12に記載において、画像形成工程の前に設けられ、前記画像形成工程で記録媒体に吐出される液滴中の色材を凝集させる処理液を記録媒体に塗布する処理液塗布工程と、を備えることを特徴とする。
【0031】
上記構成によれば、処理液塗布工程で、液滴中の色材を凝集させる処理液を記録媒体に塗布するため、液滴(インク)の記録媒体への浸透が抑制され、効果的に記録媒体に生じる波打ちを抑制することができる。
【0032】
本発明の請求項14に係る画像形成方法は、請求項13に記載において、前記処理液塗布工程で記録媒体に塗布された処理液を乾燥させる処理液乾燥工程と、を備えることを特徴とする。
【0033】
上記構成によれば、処理液乾燥工程で、処理液塗布部材によって記録媒体に塗布された処理液を乾燥させる。このように、処理液由来の水分を乾燥させることで、記録媒体の軟化が低下され、効果的に記録媒体に生じる波打ちを抑制することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、記録媒体に生じる波打ちを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置に採用された吸着プレート及びチェーングリッパ等を示した側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置に採用された吸着プレート及びチェーングリッパ、赤外線ヒータ等を示した構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置に採用されたチェーングリッパ及び赤外線ヒータ等を示した斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置を示した概略構成図である。
【図5】(A)(B)(C)本発明の第1実施形態に係る画像形成装置を評価するために用いた評価装置等を示した構成図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置を評価するために用いたシート部材を示した図面である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置について波打ち評価した評価結果をグラフで示した図面である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置について図形精度を評価した評価結果を表で示した図面である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置に採用された吸着プレート及びチェーングリッパ等を示した側面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る画像形成装置に採用された搬送ベルト及びチェーングリッパ等を示した側面図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る画像形成装置に採用された搬送ベルトを示した平面図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る画像形成装置に採用された搬送ベルトを示した平面図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係る画像形成装置に採用された制御部の制御経路を示したブロック図である。
【図14】本発明の第4実施形態に係る画像形成装置を示した概略構成図である。
【図15】本発明の第4実施形態に係る画像形成装置に採用された搬送ベルトを示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の第1実施形態に係る画像形成装置10の一例について図1〜図8に従って説明する。なお、図中の矢印UPは、鉛直方向上方を示す。
【0037】
(全体構成)
図4に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置10は、記録媒体としてのシート部材Pに水性UVインク(水性媒体を使用したUV(紫外線)硬化型のインク)を用いてインクジェット方式で画像を形成する装置である。この画像形成装置10は、主として、シート部材Pを給紙する給紙部12と、給紙部12から給紙されたシート部材Pの表面(画像記録面)に所定の処理液を塗布する処理液塗布部14と、処理液塗布部14で処理液が付与されたシート部材Pの乾燥処理を行う処理液乾燥部16と、処理液乾燥部16で乾燥処理が施されたシート部材Pの表面に画像を形成する画像記録部18と、画像記録部18で画像が形成されたシート部材Pの乾燥処理を行うインク乾燥部20と、インク乾燥部20で乾燥処理されたシート部材PにUV照射処理(定着処理)を行って画像をシート部材Pに定着させるUV照射処理部22と、UV照射処理部22でUV照射処理されたシート部材Pを排紙する排紙部24と、を備えて構成されている。
【0038】
<給紙部>
給紙部12は、主として、シート部材Pが積載される給紙台30と、シート部材Pを送り出すサッカー装置32と、送り出されたシート部材Pを搬送する給紙ローラ34と、シート部材Pを搬送する搬送ベルト36と、シート部材Pの先端部を揃える前当て部材38と、回転しながらシート部材Pを搬送する給紙ドラム40と、を含んで構成されている。
【0039】
給紙台30は、給紙台30に積載された最上位のシート部材Pの高さが一定の高さになるように給紙台30を昇降させる給紙台昇降装置(図示省略)を備えている。
【0040】
サッカー装置32は、昇降自在かつ揺動自在に設けられたサクションフット32Aを備え、このサクションフット32Aによってシート部材Pの上面を吸着保持して、シート部材Pを給紙台30から給紙ローラ34に送り出すようになっている。
【0041】
具体的には、サクションフット32Aは、給紙台30に積載された最上位のシート部材Pの先端側の上面を吸着保持して、シート部材Pを引き上げ、引き上げたシート部材Pの先端を給紙ローラ34に向けて送り出すようになっている。
【0042】
搬送ベルト36は、シート部材の搬送方向の下流側(以下たんに搬送方向下流側という)で下方となるように傾斜して配置され、その搬送面の上に載置されたシート部材Pを搬送面に沿って前当て部材38まで案内するようになっている。
【0043】
また、搬送ベルト36の搬送面の上方には、搬送ベルト36によって搬送されるシート部材Pの浮きや凹凸を抑制する板状のリテーナ36Bがシート部材Pの搬送方向及びシート部材Pの幅方向(シート部材Pが搬送される搬送方向に対して直交する方向)に並んで複数個設けられている。
【0044】
さらに、シート部材Pの搬送方向に並べられた一のリテーナ36Bと他のリテーナ36Bとの間には、搬送されるシート部材Pを搬送ベルト36の搬送面に押し付けるコロ36Cが設けられている。
【0045】
前当て部材38は、シート部材Pの幅方向(以下たんにシート部材幅方向という)に複数個設けられ、シート部材Pの先端部がシート部材幅方向に並べられた前当て部材38に当る(押し込まれる)ことでシート部材Pの姿勢が矯正されるようになっている。
【0046】
さらに、前当て部材38は、姿勢が矯正されたシート部材Pを回転する給紙ドラム40に受け渡すように、前当て部材38を揺動させる揺動装置(図示省略)を備えている。
【0047】
給紙ドラム40は円筒状に形成され、給紙ドラム40を回転させる駆動源(図示省略)が設けられている。さらに、給紙ドラム40の外周面上には、搬送されるシート部材Pの先端部を保持するグリッパ40Aが備えられている。
【0048】
この構成により、給紙ドラム40は、グリッパ40Aによってシート部材Pの先端部を保持して回転することにより、シート部材Pを周面に巻き掛けながら、処理液塗布部14へシート部材Pを搬送するようになっている。
【0049】
<処理液塗布部>
処理液塗布部14は、主として、シート部材Pを搬送する処理液付与ドラム42と、処理液付与ドラム42によって搬送されるシート部材Pの表面に液滴(インク)中の色材(顔料粒子)を凝集させる処理液を付与する処理液塗布部材の一例としての処理液付与ユニット44と、を含んで構成されている。
【0050】
処理液付与ドラム42は円筒状に形成され、処理液付与ドラム42を回転させる駆動源(図示省略)が設けられている。さらに、処理液付与ドラム42の外周面上には、搬送されるシート部材Pの先端部を保持するグリッパ42Aが備えられている。
【0051】
この構成により、処理液付与ドラム42は、グリッパ42Aによって給紙ドラム40から受け渡されたシート部材Pの先端部を保持して回転することにより、シート部材Pを周面に巻き掛けながら、処理液乾燥部16へシート部材Pを搬送するようになっている。
【0052】
処理液付与ユニット44は、主として、シート部材Pに処理液を塗布する塗布ローラ44Aと、処理液が貯留される処理液槽44Bと、処理液槽44Bに貯留された処理液を汲み上げて、塗布ローラ44Aに供給する汲み上げローラ44Cと、を含んで構成されている。この構成により、処理液付与ユニット44は、処理液付与ドラム42によって搬送されるシート部材Pの表面に処理液をローラ塗布するようになっている。
【0053】
また、処理液は、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含んでいる。
【0054】
凝集剤としては、インク組成物のpHを変化させることができる化合物であっても、多価金属塩であっても、ポリアリルアミン類であってもよい。本実施形態においては、インク組成物の凝集性の観点から、インク組成物のpHを変化させることができる化合物が好ましく、インク組成物のpHを低下させ得る化合物がより好ましい。インク組成物のpHを低下させ得る化合物としては、水溶性の高い酸性物質(リン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、もしくはこれらの化合物の誘導体又はこれらの塩など)が好適に挙げられる。
【0055】
このように、凝集剤としては、水溶性の高い酸性物質が好ましく、凝集性を高め、インク全体を固定化させる点で、有機酸が好ましく、2価以上の有機酸がより好ましい。さらに、2価以上3価以下の酸性物質が特に好ましい。この2価以上の有機酸としては、その第1pKaが3.5以下の有機酸が好ましく、さらに3.0以下の有機酸がより好ましく、具体的には、リン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸などが好適に挙げられる。
【0056】
凝集剤で、酸性物質は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これにより、凝集性を高め、インク全体を固定化することができる。インク組成物を凝集させる凝集剤の処理液中における含有量としては、1〜50質量%が好ましく、より好ましくは、3〜45質量%であり、さらに好ましくは、5〜40質量%の範囲である。また、インク組成物のpH(25℃)が8.0以上であって、処理液のpH(25℃)が0.5〜4の範囲が好ましい。これにより、画像濃度、解像度及びインクジェット記録の高速化を図ることができる。
【0057】
また、処理液には、その他の添加物を分有することができる。この添加物としては、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤などの公知の添加剤が挙げられる。
【0058】
<処理液乾燥部>
処理液乾燥部16は、主として、シート部材Pを搬送する処理液乾燥ドラム46と、処理液乾燥ドラム46の外表面に沿って湾曲した搬送ガイド48と、処理液乾燥ドラム46によって搬送されるシート部材Pの表面に熱風を吹き当てて処理液を乾燥させる処理液乾燥部材の一例としての処理液乾燥処理ユニット50と、を含んで構成されている。
【0059】
処理液乾燥ドラム46は円筒状に形成され、処理液乾燥ドラム46を回転させる駆動源(図示省略)が設けられている。さらに、処理液乾燥ドラム46の外周面上には、搬送されるシート部材Pの先端部を保持するグリッパ46Aが備えられている。
【0060】
この構成により、処理液乾燥ドラム46は、グリッパ46Aによって処理液付与ドラム42から受け渡されたシート部材Pの先端部を保持して回転することにより、シート部材Pを周面に巻き掛けながら画像記録部18へシート部材Pを搬送するようになっている。
【0061】
処理液乾燥処理ユニット50は、処理液乾燥ドラム46の内側に2個配置され、内部にヒータ50Aと、ヒータ50Aで暖められた空気をシート部材Pの表面に吹き付けるファン50Bと、を備えている。
【0062】
<画像記録部>
画像記録部18は、主として、シート部材Pを搬送する画像記録ドラム52と、画像記録ドラム52によって搬送されるシート部材Pを押圧して画像記録ドラム52の周面に密着させる押圧ローラ54と、シート部材PにC、M、Y、Kの各色の液滴(インク滴)を吐出する画像形成部材の一例としての記録ヘッド56C、56M、56Y、56Kと、シート部材Pに形成された画像情報を読み取るインラインセンサ58と、インクミストを捕捉するミストフィルタ60と、画像記録ドラム52を冷却するドラム冷却ユニット62と、を含んで構成される。なお、以後の説明では、Y,M,C,Kを区別して説明する必要が無い場合は、Y,M,C,Kを省略して記載する。
【0063】
画像記録ドラム52は円筒状に形成され、画像記録ドラム52を回転させる駆動源(図示省略)が設けられている。さらに、画像記録ドラム52の外周面上には、搬送されるシート部材Pの先端部を保持するグリッパ52Aが備えられている。
【0064】
この構成により、画像記録ドラム52は、グリッパ52Aによって処理液乾燥ドラム46から受け渡されたシート部材Pの先端部を保持して回転することにより、シート部材Pを周面に巻き掛けながらインク乾燥部20へシート部材Pを搬送するようになっている。
【0065】
なお、本実施形態の画像記録ドラム52及び前述した処理液乾燥ドラム46は、外周面上の2カ所にグリッパ52A、46Aが配設され、1回の回転で2枚のシート部材Pを搬送できるように構成されている。
【0066】
また、画像記録ドラム52の周面には、多数の吸引穴(図示せず)が形成されている。画像記録ドラム52の周面に巻き掛けられたシート部材Pは、この吸引穴から吸引されることにより、画像記録ドラム52の周面に吸着保持されながら搬送されるようになっている。
【0067】
押圧ローラ54は、画像記録ドラム52のシート部材受取位置(処理液乾燥ドラム46からシート部材Pを受け取る位置)の近傍に配置される。この押圧ローラ54は、ゴムローラで構成され、画像記録ドラム52の周面に押圧させて配置される。これにより、シート部材Pは、押圧ローラ54と画像記録ドラム52との挟持部を通過することにより画像記録ドラム52の周面に密着させられるようになっている。
【0068】
各記録ヘッド56は、押圧ローラ54に対して搬送方向下流側に一定の間隔をもって配置され、シート部材幅に対応したフルラインヘッドとされている。さらに、記録ヘッド56には、液滴を吐出するノズルが形成されたノズル面(図示省略)が画像記録ドラム52の周面に対向するように設けられている。
【0069】
各記録ヘッド56から吐出させるインクは、水性UVインクが用いられる。水性UVインクは、打滴後に紫外線(UV)を照射することにより、硬化させることができる。
【0070】
本実施形態におけるインク組成物は、顔料を含んでおり、必要に応じて、さらに分散剤や界面活性剤、その他の成分を用いて構成することができる。インク組成物は、色材成分として顔料の少なくとも一種を含有する。顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。顔料は、水に殆ど不溶であるか又は難溶である顔料であることが、インク着色性の点で好ましい。また、顔料は、その表面の少なくとも一部がポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料であることが好ましい。
【0071】
本実施形態のインク組成物は、分散剤の少なくとも一種を含有することができる。前記顔料の分散剤としては、ポリマー分散剤又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
【0072】
ポリマー分散剤の重量平均分子量は、3,000〜100,000が好ましく、より好ましくは、5,000〜50,000であり、さらに好ましくは、5,000〜40,000であり、特に好ましくは、10,000〜40,000である。
【0073】
ポリマー分散剤の酸価としては、処理液が接触したときの凝集性が良好である観点から、100KOHmg/g以下が好ましい。さらには、酸価は、25〜100KOHmg/gがより好ましく、25〜80KOHmg/gがさらに好ましく、30〜65KOHmg/gが特に好ましい。ポリマー分散剤の酸価が25以上であると、自己分散性の安定性が良好になる。
【0074】
ポリマー分散剤は、自己分散性と処理液が接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が25〜80KOHmg/gのポリマーを含むことがより好ましい。
【0075】
本実施形態においては、画像の耐光性や品質などの観点から、顔料と分散剤とを含むことが好ましく、有機顔料とポリマー分散剤とを含むことがより好ましく、さらに有機顔料とカルボキシル基を含むポリマー分散剤とを含むことが特に好ましい。また、顔料は、凝集性の観点からカルボキシル基を有するポリマー分散剤に被覆され、水不溶性であることが好ましい。さらに、凝集性の観点からは、後述の自己分散性ポリマーの粒子の酸価の方が、前記ポリマー分散剤の酸価よりも小さいことが好ましい。
【0076】
顔料の平均粒子径としては、10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。平均粒子径は、200nm以下であると色再現性が良好になり、インクジェット法で打滴する際の打滴特性が良好となり、100nm以下であると耐光性が良好になる。また、色材の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ色材を2種以上混合して使用してもよい。
【0077】
なお、色材(顔料粒子)の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
【0078】
顔料は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。顔料のインク組成物中における含有量としては、画像濃度の観点から、インク組成物に対して、1〜25質量%であることが好ましく、2〜20質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましく、5〜15質量%が特に好ましい。
【0079】
本実施形態におけるインク組成物は、ポリマー粒子の少なくとも一種を含有することができる。このポリマー粒子は、後述の処理液又はこれを乾燥させた領域と接触した際に分散不安定価して凝集し、インクを増粘させることによりインク組成物を固定化する機能を有し、インク組成物の記録媒体への定着性及び画像の耐擦過性をより向上させることができる。
【0080】
凝集剤と反応するために、アニオン性の表面電荷を有するポリマー粒子が用いられ、充分な反応性、吐出安定性が得られる範囲で、広く一般に知られているラテックスが用いられるが、特に自己分散性のポリマー粒子を用いることが好ましい。
【0081】
本実施形態におけるインク組成物は、ポリマー粒子として、自己分散性ポリマー粒子の少なくとも一種を含有することが好ましい。この自己分散性ポリマーは、後述の処理液又はこれを乾燥させた領域と接触した際に分散不安定化して凝集しインクを増粘させることによりインク組成物を固定化する機能を有し、インク組成物の記録媒体への定着性及び画像の耐擦過性をより向上させることができる。また、自己分散性ポリマーは、吐出安定性及び前記顔料を含む系の液安定性(特に分散安定性)の観点からも好ましい樹脂粒子である。
【0082】
自己分散性ポリマーの粒子とは、他の界面活性剤の不存在下に、ポリマー自身が有する官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性ポリマーであって、遊離の乳化剤を含有しない水不溶性ポリマーの粒子を意味する。
【0083】
本実施形態における自己分散性ポリマーの酸価としては、処理液が接触したときの凝集性が良好である観点から、50KOHmg/g以下が好ましい。さらには、この酸価は25〜50KOHmg/gがより好ましく、30〜50KOHmg/gがさらに好ましい。自己分散性ポリマーの酸価が25以上であると、自己分散性の安定性が良好になる。
【0084】
本実施形態における自己分散性ポリマーの粒子は、自己分散性と処理液が接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が25〜50KOHmg/gのポリマーを含むことがより好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が30〜50KOHmg/gのポリマーを含むことがより好ましい。
【0085】
自己分散性ポリマーの粒子を構成する水不溶性ポリマーの分子量としては、重量平均分子量で3,000〜20万であることが好ましく、5,000〜15万であることがより好ましく、10,000〜10万であることがさらに好ましい。重量平均分子量を3,000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
【0086】
なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgeL SuperHZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.35/min.、流速を0.35ml/min.、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行う。
【0087】
また、検量線は、東ソー(株)製、「標準試料TSK standard、polystrene」、「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
【0088】
自己分散性ポリマーの粒子の平均粒子径は、体積平均粒子径で10nm〜400nmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、10〜100nmの範囲がさらに好ましい。体積平均粒子径は、10nm以上であると製造適性が向上し、1μm以下であると保存安定性が向上する。
【0089】
なお、自己分散性ポリマーの粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
【0090】
自己分散性ポリマーの粒子は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。自己分散性ポリマーの粒子のインク組成物中における含有量としては、凝集速度や画像の光沢性などの観点から、インク組成物に対して、1〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
【0091】
また、インク組成物中の顔料と自己分散性ポリマーの粒子との含有比率(例えば、水不溶性顔料粒子/自己分散性ポリマーの粒子)としては、画像の耐擦過性などの観点から1/0.5〜1/10であることが好ましく、1/1〜1/4であることがより好ましい。
【0092】
本実施形態におけるインク組成物は、活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性化合物の少なくとも一種を含有することができる。重合性化合物としては、凝集剤と顔料、ポリマー粒子との反応を妨げない点で、ノニオン性又はカチオン性の重合性化合物が好ましい。また、水溶性とは、水に一定濃度以上溶解できることをいい、水性のインク中に(望ましくは均一に)溶解し得るものであればよい。また、水溶性有機溶剤を添加することにより溶解度が上がってインク中に(望ましくは均一に)溶解するものであってもよい。具体的には、水に対する溶解度が10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。
【0093】
重合性化合物としては、凝集剤と顔料、ポリマー粒子との反応を妨げない点で、ノニオン性又はカチオン性の重合性化合物が好ましく、水に対する溶解度が10質量%以上(さらには15質量%以上)の重合性化合物が好ましい。
【0094】
本実施形態における重合性化合物としては、擦過耐性を高め得る観点から、多官能のモノマーが好ましく、2官能〜6官能のモノマーが好ましく、溶解性と擦過耐性の両立の観点から、2官能〜4官能のモノマーが好ましい。重合性化合物は、1種単独又は2種以上を組み合わせて含有することができる。
【0095】
重合性化合物のインク組成物中における含有量としては、顔料及び自己分散性ポリマーの粒子の合計の固形分に対して、30〜300質量%が好ましく、50〜200質量%がより好ましい。重合性化合物の含有量は、30質量%以上であると画像強度がより向上して画像の耐擦過性に優れ、300質量%以下であるとパイルハイトの点で有利である。
【0096】
インク組成物及び処理液の少なくとも一方が、さらに、活性エネルギー線により重合性化合物の重合を開始する開始剤を含む。
【0097】
本実施形態におけるインク組成物は、処理液に含有すると共にあるいは含有せずに、活性エネルギー線により重合性化合物の重合を開始する開始剤の少なくとも1種を含有することができる。光重合開始剤は1種単独で又は2種以上を混合して、あるいは増感剤と併用して使用することができる。
【0098】
開始剤は、活性エネルギー線により重合反応を開始し得る化合物を適宜選択して含有することができ、例えば、放射線もしくは光、又は電子線により活性種(ラジカル、酸、塩基など)を発生する開始剤(例えば、光重合開始剤等)を用いることができる。
【0099】
開始剤を含有する場合、インク組成物中における開始剤の含有量としては、重合性化合物に対して、1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。開始剤の含有量は、1質量%以上であると画像の耐擦過性がより向上し、高速記録に有利であり、40質量%以下であると吐出安定性の点で有利である。
【0100】
本実施形態におけるインク組成物は、水溶性有機溶媒の少なくとも1種を含有することができる。水溶性有機溶媒は、乾燥防止、湿潤あるいは浸透促進の効果を得ることができる。乾燥防止には、噴射ノズルのインク吐出口においてインクが付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する乾燥防止剤として用いられ、乾燥防止や湿潤には、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒が好ましい。また、浸透促進には、紙へのインク浸透性を高める浸透促進剤として用いることができる。
【0101】
乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒であることが好ましい。乾燥防止剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。乾燥防止剤の含有量は、インク組成物中に10〜50質量%の範囲とするのが好ましい。
【0102】
浸透促進剤としては、インク組成物を記録媒体(印刷用紙など)により良く浸透させる目的にとって好適である。浸透促進剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。浸透促進剤の含有量は、インク組成物中に5〜30質量%の範囲であるのが好ましい。また、浸透促進剤は、画像の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない量の範囲内で使用することが好ましい。
【0103】
インク組成物は、水を含有するものであるが、水の量には特に制限はない。中でも、水の好ましい含有量は、10〜99質量%であり、より好ましくは、30〜80質量%であり、さらに好ましくは、50〜70質量%である。
【0104】
本実施形態におけるインク組成物は、上記成分以外にその他の添加剤を用いて構成することができる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0105】
また、インラインセンサ58は、記録ヘッド56に対して搬送方向下流側に一定の間隔をもって配置され、各色の記録ヘッド56によってシート部材Pに形成された画像情報を読み取るようになっている。また、インラインセンサ58の搬送方向下流側には、インラインセンサ58にシート部材Pが接触するのを防止する接触防止板59が設置される。この接触防止板59は、搬送の不具合等によってシート部材Pに浮きが生じた場合に、シート部材Pがインラインセンサ58に接触するのを防止するようになっている。
【0106】
ミストフィルタ60は、記録ヘッド56とインラインセンサ58との間に配置され、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉するようになっている。これにより、インラインセンサ58へのインクミストの進入が抑制され、読み取り不良等の発生が防止されるようになっている。
【0107】
ドラム冷却ユニット62は、画像記録ドラム52の下部周面と対向するように設けられ、主として、エアコン(図示省略)と、このエアコンから供給される冷気を画像記録ドラム52の周面に吹き当てるダクト62Aと、を含んで構成されている。
【0108】
<インク乾燥部>
インク乾燥部20は、主として、画像が形成されたシート部材Pを搬送する搬送部材の一例としてのチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送されるシート部材Pに張力を付与する吸着プレート72と、チェーングリッパ64によって搬送されるシート部材Pを乾燥処理するインク乾燥処理ユニット68と、を含んで構成されている。
【0109】
チェーングリッパ64は、画像記録ドラム52に近接して設置される第一スプロケット63Aと、排紙部24に設置されて回転自在とされる第二スプロケット63Bと、第一スプロケット63Aと第二スプロケット63Bとに巻き掛けられる無端状のチェーン63Cと、チェーン63Cの走行をガイドする複数のチェーンガイド(図示省略)と、で構成されるチェーン体64Aを備えている。また、第一スプロケット63Aには、第一スプロケット63Aを回転させる駆動源(図示省略)が設けられている。
【0110】
このチェーン体64Aは、シート部材Pの幅方向に間隔を空けて2個設けられ、この一対のチェーン体64Aに跨るように、搬送されるシート部材Pの先端部を保持する保持部材の一例としてのグリッパ64Bが複数個設けられている(図3参照)。
【0111】
つまり、チェーングリッパ64は、一対のチェーン体64Aと、複数個のグリッパ64Bと、を含んで構成されている。
【0112】
チェーンガイドは、所定位置に配置されて、チェーン63Cが所定の経路を走行するようにガイドするようになっている。本実施例の画像形成装置10では、第二スプロケット63Bが第一スプロケット63Aよりも高い位置に配設される。このため、チェーン63Cが、途中で傾斜するような走行経路が形成される。具体的には、チェーン63Cの経路は、第一スプロケット63Aと同じ高さの第一水平搬送経路70Aと、傾斜搬送経路70Bと、第二スプロケット63Bと同じ高さの第二水平搬送経路70Cとで構成されている。このため、進行方向が変わる各経路の交点に、チェーンガイド64が設けられている。
【0113】
吸着プレート72は、チェーングリッパ64によりシート部材Pが搬送される搬送経路に沿って配設される。具体的には、第一水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとを走行するチェーン63Cに沿って配置されている。
【0114】
また、吸着プレート72の内部には、ファン82が設けられ、吸着プレート72の吸着面72A(チェーングリッパ64側を向いた面)には、シート部材Pの裏面を吸着する吸着力が生じるようになっている。
【0115】
これにより、チェーングリッパ64によって先端部を保持されながら搬送されるシート部材Pは、吸着プレート72の吸着面72Aと摺接しながら搬送され、シート部材Pには、張力が生じるようになっている。
【0116】
また、インク乾燥処理ユニット68は、搬送されるシート部材Pを挟んで第一水平搬送経路70Aに配置された吸着プレート72の反対側に配置され、搬送されるシート部材Pの表面に熱風を吹き付けてシート部材Pを加熱乾燥する複数個の赤外線ヒータ78を備えている。
【0117】
なお、インク乾燥部20の構成については、詳細を後述する。
【0118】
<UV照射処理部>
UV照射処理部22は、チェーングリッパ64によって搬送されるシート部材Pに紫外線を照射する紫外線ランプの一例としてのUV照射ユニット74を備えている。これにより、UV照射ユニット74が、シート部材Pに形成された画像に紫外線(UV)を照射して、画像をシート部材Pに定着させるようになっている。
【0119】
<排紙部>
排紙部24は、UV照射され、グリッパ64Bから開放されたシート部材Pが積み重ねられて回収される排紙台76を備えている。また、この排紙台76は、排紙台76に積み重ねられる最上位のシート部材Pが常に一定の高さに位置するように昇降装置(図示省略)を備えている。これにより、排紙部24では、一連の画像記録処理が行われたシート部材Pが排紙台76に積み重ねられて回収されるようになっている。
【0120】
以上の構成により、シート部材Pの表面に画像を形成する場合に給紙部12では、給紙台30の上に積載されたシート部材Pが、サッカー装置32によって上から順に1枚ずつ引き上げられて、給紙ローラ34に給紙される。給紙ローラ34に給紙されたシート部材Pは、搬送ベルト36に向けて送り出され、搬送ベルト36の上に載せられる。
【0121】
搬送ベルト36の上に載せられたシート部材Pは、周回する搬送ベルト36によって搬送される。そして、その搬送過程で、シート部材Pは、リテーナ36Bによって搬送ベルト36の搬送面に押し付けられ、凹凸が矯正される。搬送ベルト36によって搬送されたシート部材Pは、先端が前当て部材38に当てられることにより、傾きが矯正される。その後、シート部材Pは、給紙ドラム40に受け渡される。そして、その給紙ドラム40によって処理液塗布部14へと搬送される。
【0122】
処理液塗布部14では、給紙ドラム40から受け渡されたシート部材Pは、処理液付与ドラム42で受け取られる。処理液付与ドラム42は、シート部材Pの先端部をグリッパ42Aで保持して、回転することにより、シート部材Pを周面に巻き掛けて搬送する。この搬送過程で塗布ローラ44Aがシート部材Pの表面に押圧され、シート部材Pの表面に処理液が塗布される(処理液塗布工程)。
【0123】
処理液乾燥部16では、処理液付与ドラム42から受け渡されたシート部材Pは、処理液乾燥ドラム46で受け取られる。処理液乾燥ドラム46は、シート部材Pの先端部をグリッパ46Aで保持して回転することにより、シート部材Pを搬送する。この際、処理液乾燥ドラム46は、シート部材Pの表面(処理液が塗布された面)を内側に向けて搬送する。
【0124】
シート部材Pは、処理液乾燥ドラム46によって搬送される過程で処理液乾燥ドラム46の内側に設置された処理液乾燥処理ユニット50から熱風が吹きつけられ、乾燥処理される(処理液乾燥工程)。
【0125】
画像記録部18では、処理液乾燥ドラム46から受け渡されたシート部材Pは、画像記録ドラム52で受け取られる。画像記録ドラム52は、シート部材Pの先端部をグリッパ52Aで保持して、回転することにより、シート部材Pを搬送する。画像記録ドラム52に受け渡されたシート部材Pは、押圧ローラ54を通過することにより、画像記録ドラム52の周面に密着される。これと同時に画像記録ドラム52の吸着穴から吸引されて、シート部材Pは、画像記録ドラム52の外周面上に吸着保持される。
【0126】
シート部材Pは、この状態で搬送されて、各色の記録ヘッド56と対向する位置を通過する。そして、その通過時に各色の記録ヘッド56から液滴(インク)が表面に打滴されて、表面にカラー画像が形成される(画像形成工程)。
【0127】
各色の記録ヘッド56によって画像が形成されたシート部材Pは、インラインセンサ58と対向する位置を通過する。そして、そのインラインセンサ58の通過時にシート部材Pの表面に形成された画像情報が読み取られる。この画像情報の読み取りは必要に応じて行われ、読み取られた画像から吐出不良等の検査が行われる。これにより、例えば、吐出不良等の異常を直ちに検出することができ、その対応を迅速に行うことができる。
【0128】
インク乾燥部20では、画像記録ドラム52から受け渡されたシート部材Pは、チェーングリッパ64で受け取られる。チェーングリッパ64は、シート部材Pの先端部をグリッパ64Bで保持して、吸着プレート72に沿わせてシート部材Pを搬送する。
【0129】
チェーングリッパ64に受け渡されたシート部材Pは、第一水平搬送経路70Aを搬送される。この第一水平搬送経路70Aを搬送される過程でシート部材Pは、赤外線ヒータ78によって加熱乾燥される(液滴乾燥工程)。
【0130】
UV照射処理部22では、チェーングリッパ64によって傾斜搬送経路70Bを搬送されるシート部材Pの表面に対して、UV照射ユニット74から紫外線が照射される。これにより、シート部材Pに形成された画像にUV照射処理が施され、画像がシート部材Pに定着する(光照射工程)。
【0131】
排紙部24では、UV照射され、グリッパ64Bから開放されたシート部材Pが排紙台76に積み重ねられて回収される。このように、一連の画像記録処理が行われたシート部材Pが排紙台76に積み重ねられて回収される。
【0132】
(要部構成)
次に、インク乾燥部20等の構成について詳細に説明する。
【0133】
図2に示されるように、吸着プレート72は、多数の吸着孔及び排出孔が外周面に形成された箱状の筐体80と、筐体80の吸着面72A(チェーンガイド64側を向いた面)に吸着力を生じさせる前述したファン82とを備えている。
【0134】
この構成により、チェーングリッパ64のグリッパ64Bによって先端部が保持しながら搬送されるシート部材Pの裏面は吸着面72Aに吸着される。これにより、シート部材Pは、吸着プレート72の吸着面72Aと摺接しながら搬送され、シート部材Pには、シート部材Pをシート部材Pの搬送方向に引っ張る張力が生じるようになっている。
【0135】
つまり、シート部材Pにシート部材Pの搬送方向の張力を生じさせる張力付与手段の一例としての張力付与装置86は、チェーングリッパ64と、吸着プレート72とを含んで構成されている。
【0136】
ここで、シート部材Pに生じる張力は、100N/m〜1000N/mとなるように、吸着面72Aの吸着力及びチェーングリッパ64の搬送力が決められている。
【0137】
さらに、図1に示されるように、搬送されるシート部材Pを挟んで吸着プレート72の反対側には、前述したように、インク乾燥処理ユニット68に備えられた赤外線ヒータ78がシート部材Pの搬送方向に並んで複数個設けられている。
【0138】
また、全ての赤外線ヒータ78によって、シート部材Pを加熱乾燥することで、張力付与装置86によってシート部材Pに張力が生じている状態でシート部材Pの残水量が3g/m以下となるように、各赤外線ヒータ78の出力が決められている。
【0139】
ここで、残水量とは、インク水分の残水量であり、シート部材Pに元々含まれる水分は考慮されないものである。例えば、液滴打滴時に、インク水分量が10g/mであった場合に、シート部材Pを乾燥させることで、インク水分量を3g/m以下にすることである。
【0140】
一方、本実施形態の画像形成装置10に用いられるシート部材Pの紙目は、一例として、シート部材Pの搬送方向に直交している。つまり、シート部材Pには、紙目に対して直交する方向の張力が付与されるようになっている。ここで、紙目とは、紙の繊維が並んでいる方向を言う。
(要部構成の作用・効果)
次に、要部構成の作用及び効果について説明する。
【0141】
図1、図2に示されるように、インク乾燥部20では、画像記録ドラム52から受け渡されたシート部材Pは、チェーングリッパ64で受け取られる。チェーングリッパ64では、グリッパ64Bがシート部材Pの先端部を保持し、チェーングリッパ64は、吸着プレート72に沿わせてこのシート部材Pを搬送する。
【0142】
具体的には、図1に示されるように、前述した液滴乾燥工程において、チェーングリッパ64のグリッパ64Bによってシート部材Pの先端部が保持され、チェーングリッパ64は、先端部を保持した状態で、シート部材Pを搬送方向下流側に搬送する。さらに、搬送されるシート部材Pの裏面は、吸着プレート72の吸着面72Aに吸着される。
【0143】
これにより、シート部材Pは、吸着プレート72の吸着面72Aと摺接しながら搬送され、シート部材Pには、シート部材Pをシート部材Pの搬送方向に引っ張る100N/m以上1000N/m以下の張力が生じる。
【0144】
さらに、赤外線ヒータ78は、張力付与装置86によってシート部材Pに張力が生じている状態でシート部材Pの表面に形成された画像を乾燥させてシート部材の残水量を3g/m以下とする
【0145】
ここで、水性インクジェット方式によりシート部材Pへ画像を形成する場合、インク中の水分に起因してシート部材Pに膨潤が生じる。これが、画像濃度に依存してシート部材Pの面内で不均一に発生する為、シート部材Pに波打ちが生じる場合がある。
【0146】
また、水性インクを用いてシート部材Pに画像を形成させた後に加熱乾燥を行なうことにより、シート部材Pに付与された水分を蒸発させることができ、ある程度の波打ちの軽減がみられるが、波打ちが無くなることはない。
【0147】
この波打ちの原因は、第1に、インク水分が乾燥されるより早くシート部材Pへのインクの浸透が起こること、第2に、加熱乾燥により画像濃度の低い領域、特に非画像部の水分が揮発しシート部材Pの収縮が発生すること、と考える。
【0148】
また、シート部材Pに生じる波打ちを是正するために、シート部材Pに生じさせる張力を強くするのが有効と思われるが、シート部材Pを伸ばした状態(張力が生じている状態)で乾燥すると、図形精度(本来描画されるべき図形寸法の精度)が、低下することが考えられる。
【0149】
<評価装置>
そこで、シート部材Pに生じる波打ち及び図形精度(本来描画されるべき図形寸法の精度)について評価を行なった。
・評価装置及び評価部材
評価に用いるシート部材Pは、コート紙 王子製紙製のOKトップコート+(商品名)坪量104.7gsm 幅方向150mm 搬送方向150mm とした。評価に用いるシート部材Pには、予め処理液が塗布される。
【0150】
図5(A)(B)(C)には、評価に用いた評価装置について記載されている。図5(A)(B)に示されるように、シート部材Pは、先端側及び後端側が湾曲した台座90にセットされる。台座90の先端側には、シート部材Pの先端部を保持するグリッパ92が設けられており、後端側には、シート部材Pの後端部を引っ張り、シート部材Pに張力を生じさせるバネ部材94が設けられている。これにより、台座90にセットされたシート部材Pには、所定の張力が生じる。ここで、本評価では、画像形成装置10と同様に、シート部材Pには、紙目に対して直交する方向の張力が付与される。
【0151】
図5(C)に示されるように、評価装置には、台座90にセットしたシート部材Pを、速度500〔mm/s〕で矢印D方向に向けて搬送する搬送手段(図示省略)が設けられている。さらに、評価装置には、搬送されるシート部材Pに向けてインク(ブラック)を吐出する記録ヘッド96と、搬送されるシート部材Pと30〔mm〕の距離を空けて配置される温風ヒータ102と、赤外線ヒータ104と、が設けられている。
【0152】
具体的には、温風ヒータ102は4ユニット設けられ、赤外線ヒータ104は3ユニット設けられ、温風ヒータ102と赤外線ヒータ104とは交互に配置されている。この温風ヒータ102は、温度30℃〜80℃の空気を風速10m/sでシート部材Pの表面に吹き付けるようになっている。また、この赤外線ヒータ104は、夫々の出力が10W/cm〜60W/cmとされている。
【0153】
この評価装置を用いることで、図6に示されるように、バネ部材94によって張力が生じているシート部材Pの中央側には、記録ヘッド96から吐出されるインクにより先端部から後端部に延びる幅50mmのベタ部100が形成される。具体的には、1200dpi 6pL (インク打滴量13.0g/m2)の条件で記録ヘッド96がインクをシート部材Pに打滴することでベタ部100が形成される。これにより、ベタ部100と白地部とが混在しており波打ちの出やすいパターンがシート部材Pに形成されるようになっている。
【0154】
ベタ部100が形成されて速度500〔mm/s〕で搬送されるシート部材Pは、温風ヒータ102及び赤外線ヒータ104と対向する位置を通過して、バネ部材94によってシート部材Pに張力が生じている状態でシート部材Pの表面に形成された画像を乾燥されるようになっている。
【0155】
以上の装置を用いてシート部材Pに付与される張力と、温風ヒータ102及び赤外線ヒータ104よって乾燥されるシート部材Pの残水量とを変化させて評価を行なった。
【0156】
なお、評価に用いた、処理液処方及びインク処方は下記に記載する。
【0157】
処理液処方
マロン酸 :10質量部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル :20質量部
オルフィンE1010(日信化学工業製) :1質量部
イオン交換水 :残部
インク処方
顔料 :4質量部
分散剤ポリマー :2質量部
樹脂エマルジョン :8質量部
水溶性有機溶媒 :15質量部
オルフィンE1010(日信化学工業製) :1質量部
イオン交換水 :残部
顔料:チバ・スペシャリティーケミカルズ社 Cromophtal Jet Magenta DMQ(PR−122)
分散剤ポリマー:メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸
質量比 60/30/10
樹脂エマルジョン:メタクリル酸メチル/アクリル酸フェノキシエチル/アクリル酸 質料比 66/29/5
ガラス転移点温度=65℃
<評価方法−1>
残水量評価方法 :重量法により評価を行なう。
【0158】
波打ち評価方法 :前述した評価装置を用いて画像が乾燥されたシート部材Pに生じた張力を開放した後、グレード見本参照による目視評価により評価を行なう。
【0159】
波打ち評価基準
3.1以上 × :波打ちが酷く品質上許容できない
2.1〜3.0 △ :波打ちが視認されるが品質上は許容内
1.1〜2.0 ○ :波打ちが僅かに視認されるが品質上の問題なし
0.0〜1.0 ◎ :波打ちが視認されない
図形精度の評価方法 :本来描画されるべき図形寸法の精度を図形精度誤差として算出して評価を行なう。
【0160】
図形精度の評価基準
図面精度誤差 0.05%未満 :◎ (品質許容)
図面精度誤差 0.05%以上 0.10%未満 :○ (品質許容)
図面精度誤差 0.10%以上 0.15%未満 :△ (品質許容)
図面精度誤差 0.15%以上 :× (品質NG)
<評価結果−1>
図7には、波打ち評価の評価結果がグラフで示されている。図7に示すグラフの縦軸は、波打ちレベルを示し、横軸は、シート部材Pに生じた張力である。このグラフより、残水量が3g/m以下で、張力が100N/m以上のとき波打ちレベルが3以下となり波打ちの品質が許容されることが分かる。
【0161】
図8には、図面精度の評価結果が表で示されている。この表より、張力1000N/m以下で、評価結果△となり図面精度の品質が許容されることが分かる。
【0162】
以上の評価結果からも分かるように、本実施形態では、シート部材Pに100N/m以上1000N/m以下の張力を生じさせ、シート部材Pに張力が生じている状態でシート部材Pを乾燥させてシート部材Pの残水量を3g/m以下とする。このため、シート部材Pに生じる波打ちを抑制することができ、さらに、図面精度の品質を確保することができる。
【0163】
また、画像が形成されるシート部材Pの紙目の方向がシート部材Pの搬送方向と直交する方向を向いている場合に、シート部材Pにシート部材Pの搬送方向の張力を生じさせることで、効果的に、シート部材Pに生じる波打ちを抑制することができる。
【0164】
また、チェーングリッパ64のグリッパ64Bによってシート部材Pの先端部を保持しながら搬送されるシート部材Pの裏面を吸着プレート72の吸着面72Aに吸着される。これにより、容易に、シート部材Pの搬送方向の張力をシート部材Pに生じさせることができる。
【0165】
また、処理液付与ユニット44が、液滴中(インク中)の色材(顔料粒子)を凝集させる凝集処理液をシート部材Pに塗布するため、液滴(インク)のシート部材Pへの浸透が抑制され、効果的にシート部材Pに生じる波打ちを抑制することができる。
【0166】
また、処理液乾燥処理ユニット50、処理液付与ユニット44によってシート部材Pに塗布された処理液を乾燥させる。このように、処理液由来の水分を乾燥させることで、シート部材Pの軟化が低下され、効果的にシート部材Pに生じる波打ちを抑制することができる。
【0167】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置及び画像形成方法について、図9に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0168】
図9に示されるように、本第2実施形態では、吸着プレート72は、装置本体に対して移動可能に設けられている。具体的には、吸着プレート72に形成されたナット(図示省略)には、シート部材Pの搬送方向に延びる移動部材の一例としてのボールネジ110がねじ込まれている。そして、ボールネジ110を周方向に回転させるステッピングモータ(図示省略)が設けられている。このステッピングモータを回転させることで、シート部材Pを吸着した状態の吸着プレート72を速度V1で搬送方向下流側へ搬送する。
【0169】
ここで、吸着プレート72の速度V1は、シート部材Pの先端部を保持して搬送するチェーングリッパ64の速度V2より遅く設定されている。このように、吸着プレート72の速度V1をチェーングリッパ64の速度V2より遅くすることで、搬送されるシート部材Pには、シート部材Pの搬送方向の張力が生じる。
【0170】
このように、シート部材Pに張力を生じさせる際に、吸着プレート72を移動させることで、シート部材Pの裏面と吸着面72Aとの間で生じる摩擦力が軽減されるため、シート部材Pの裏面に傷が付くのを抑制することができる。
【0171】
また、吸着プレート72を移動させることで、チェーングリッパ64によるシート部材Pの搬送速度を速くすることができる。
【0172】
他の効果は、第1実施例と同様である。
【0173】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る画像形成装置及び画像形成方法について、図10〜図13に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0174】
図10、図11に示されるように、本第3実施形態では、吸着プレートは設けられておらず、チェーングリッパ64によって搬送されるシート部材Pの裏面を吸着しながら周回してシート部材Pを搬送する第一搬送ベルト120と第二搬送ベルト122とが設けられている。
【0175】
この第一搬送ベルト120と第二搬送ベルト122とは並んで配置され、シート部材Pの幅方向一端側が第一搬送ベルト120に吸着され、シート部材Pの幅方向他端側が第二搬送ベルト122に吸着されるようになっている。
【0176】
具体的には、第一搬送ベルト120には、表面に複数個の孔が形成された無端状のベルト部材120Aと、ベルト部材120Aが巻き掛けられた一対のローラ120Bと、ベルト部材120Aの内部に設けられ、吸着面に吸引力を生じさせる複数個のファン120Cとが設けられている。さらに、ローラ120Bに回転力を付与する駆動源(図示省略)が設けられている。
【0177】
また、同様に、第二搬送ベルト122には、表面に複数個の孔が形成された無端状のベルト部材122Aと、ベルト部材122Aが巻き掛けられた一対のローラ122Bと、ベルト部材122Aの内部に設けられ、吸着面に吸引力を生じさせる複数個のファン122Cとが設けられている。さらに、ローラ122Bに回転力を付与する駆動源(図示省略)が設けられている。
【0178】
また、図11、図12に示されるように、平面視で、第一搬送ベルト120、第二搬送ベルト122を揺動可能に支持する軸部120D、122Dが設けられている。これにより、第一搬送ベルト120及び第二搬送ベルト122は、第一搬送ベルト120と第二搬送ベルト122とが平行となる平行位置(図11参照)と、搬送方向下流側に向って互いに徐々に離れる離間位置(図12参照)との間を移動可能とされている。
【0179】
また、基端部が第一搬送ベルト120のフレーム部材(図示省略)に固定され、先端部が第二搬送ベルト122に向けて延びる第一ラック部材126が設けられている。同様に、基端部が第二搬送ベルト122のフレーム部材(図示省略)に固定され、先端部が第一搬送ベルト120に向けて延びると共に、ギア歯が第一ラック部材126のギア歯と向かい合う第二ラック部材128が設けられている。
【0180】
さらに、第一ラック部材126と第二ラック部材128との間には、互いのギア歯と噛み合うピニオンギア130が設けられている。また、ピニオンギア130に回転力を付与するステッピングモータ(図示省略)が設けられている。
【0181】
この構成により、ピニオンギア130を回転させることにより、第一搬送ベルト120及び第二搬送ベルト122を平行位置と離間位置との間を移動させることができるようになっている。
【0182】
また、図13に示されるように、画像形成装置10には、使用されるシート部材Pの紙目の方向を入力する紙目入力部132が設けられている。さらに、紙目入力部132への入力結果に基づいて、第一搬送ベルト120の搬送速度、第二搬送ベルト122の搬送速度、チェーングリッパ64の搬送速度、及びピニオンギア130の回転角度を制御する制御部134が設けられている。
【0183】
以上の構成により、図12、図13に示されるように、紙目入力部132にシート部材Pの紙目方向がシート部材Pの搬送方向と入力されると、制御部134は、ピニオンギア130の回転角度を制御して、第一搬送ベルト120及び第二搬送ベルト122を離間位置に配置する。さらに、制御部134は、第一搬送ベルト120の搬送速度、第二搬送ベルト122の搬送速度、及びチェーングリッパ64の搬送速度を制御して、チェーングリッパ64でシート部材Pが搬送される速度と、第一搬送ベルト120及び第二搬送ベルト122でシート部材Pが搬送される速度を同一速度とする。
【0184】
このように、第一搬送ベルト120及び第二搬送ベルト122を離間位置に配置することで、シート部材Pには、シート部材Pの搬送方向と直交する方向の張力が生じる。
【0185】
一方、図11、図13に示されるように、紙目入力部132にシート部材Pの紙目方向がシート部材Pの搬送方向と直交する方向と入力されると、制御部134は、ピニオンギア130の回転角度を制御して、第一搬送ベルト120及び第二搬送ベルト122を平行位置に配置する。さらに、制御部134は、第一搬送ベルト120の搬送速度、第二搬送ベルト122の搬送速度、及びチェーングリッパ64の搬送速度を制御して、チェーングリッパ64でシート部材Pが搬送される速度を、第一搬送ベルト120及び第二搬送ベルト122でシート部材Pが搬送される速度より速くする。
【0186】
このように、チェーングリッパ64でシート部材Pが搬送される速度を、第一搬送ベルト120及び第二搬送ベルト122でシート部材Pが搬送される速度より速くすることで、シート部材Pには、シート部材Pの搬送方向の張力が生じる。
【0187】
以上説明したように、シート部材Pの紙目の方向に基づいて制御部134が、シート部材Pに、シート部材Pの搬送方向の張力を生じさせるか、シート部材Pの搬送方向に直交する方向の張力を生じさせるかを選択する。具体的には、本実施形態では、紙目の方向と直交する方向の張力を生じさせる。これにより、効果的に、シート部材Pに生じる波打ちを抑制することができる。
【0188】
なお、他の効果は、第1実施例と同様である。
【0189】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る画像形成装置及び画像形成方法について、図14、図15に従って説明する。なお、第3実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0190】
図14、図15に示されるように、本第4実施形態では、液滴が吐出されるシート部材Pは、枚葉紙ではなく連長紙である。
【0191】
そして、画像形成装置140には、連長紙であるシート部材Pを送り出す、送出しローラ142と、送出しローラ142によって送り出されたシート部材Pを巻き取る巻取りローラ144とが設けられている。
【0192】
また、送出しローラ142と巻取りローラ144との間には、シート部材Pが巻き掛けられる一対の巻掛けローラ146が互いに距離を空けて配置されている。さらに、一対の巻掛けローラ146の間であって、シート部材Pの搬送方向上流側には、シート部材Pの表面に液滴を吐出する各色の記録ヘッド56が設けられている。
【0193】
さらに、記録ヘッド56に対して搬送方向下流側には、シート部材Pの表面と対向するに複数個の赤外線ヒータ78が配置されている。また、シート部材Pを挟んで赤外線ヒータ78の反対側には、離間位置に配置された第一搬送ベルト120と第二搬送ベルト122とが設けられている。
【0194】
この構成により、紙目の方向がシート部材Pの搬送方向とされる連長紙であるシート部材Pに、シート部材Pの搬送方向とは直交する方向の張力を生じさせるようになっている。
【0195】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、特に言及しなかったが、張力を生じさせる方向が紙目と直交する方向では無い場合、例えば紙目と平行する方向に張力を生じさせる場合、波打ちの軽減効果がやや低下する。そのため、紙目に応じて張力を生じる方向を変更することが好ましい。
【符号の説明】
【0196】
10 画像形成装置
44 処理液付与ユニット(処理液塗布部材の一例)
50 処理液乾燥処理ユニット(処理液乾燥部材の一例)
56 記録ヘッド(画像形成部材の一例)
64B グリッパ(保持部材の一例)
64 チェーングリッパ(搬送部材の一例)
68 インク乾燥処理ユニット
72 吸着プレート
78 赤外線ヒータ(乾燥部材の一例)
86 張力付与装置(張力付与手段の一例)
110 ボールネジ(移動部材の一例)
120 第一搬送ベルト
122 第二搬送ベルト
134 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に液滴を吐出して記録媒体の表面に画像を形成する画像形成部材と、
前記画像形成部材によって記録媒体の表面に画像が形成された記録媒体に、100N/m以上1000N/m以下の張力を生じさせる張力付与手段と、
前記張力付与手段によって記録媒体に張力が生じている状態で記録媒体の表面に形成された画像を乾燥させて記録媒体の残水量を3g/m以下とする乾燥部材と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記張力付与手段は、記録媒体に、記録媒体の搬送方向の張力を生じさせる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記張力付与手段は、
前記画像形成部材によって画像が形成された記録媒体の先端部を保持部材で保持して搬送する搬送部材と、
前記保持部材によって先端部が保持されながら前記搬送部材によって搬送される記録媒体の裏面を吸着する吸着プレートと、
を備える請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記搬送部材によって搬送される記録媒体を吸着している状態の前記吸着プレートを、記録媒体の搬送方向の下流側に移動する移動部材が設けられ、
前記搬送部材による記録媒体の搬送速度より前記移動部材による前記吸着プレートの移動速度を遅くすることで、記録媒体に張力を生じさせる請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記張力付与手段は、記録媒体に、記録媒体の搬送方向に対して直交する方向の張力を生じさせる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記張力付与手段は、
記録媒体の裏面を吸着しながら周回して記録媒体を搬送する第一搬送ベルトと、
前記第一搬送ベルトと並んで配置され、記録媒体の裏面を吸着しながら周回して記録媒体を搬送すると共に、記録媒体の搬送方向の下流側が上流側に比べて前記第一搬送ベルトから離れる第二搬送ベルトと、
を備える請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
記録媒体の紙目の方向に基づいて、前記張力付与手段を制御して、記録媒体に、記録媒体の搬送方向の張力を生じさせるか、記録媒体の搬送方向に直交する方向の張力を生じさせるかを選択する制御部が設けられる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
記録媒体は、枚葉紙であって、
前記張力付与手段は、枚葉紙に張力を生じさせる請求項1〜7の何れか1項に記載された画像形成装置。
【請求項9】
記録媒体は、連長紙であって、
前記張力付与手段は、連長紙に張力を生じさせる請求項1〜7の何れか1項に記載された画像形成装置。
【請求項10】
前記画像形成部材に対して記録媒体の搬送方向の上流側には、前記画像形成部材から吐出される液滴中の色材を凝集させる処理液を記録媒体に塗布する処理液塗布部材が設けられる請求項1〜9の何れか1項に記載された画像形成装置。
【請求項11】
前記処理液塗布部材によって記録媒体に塗布された処理液を乾燥させる処理液乾燥部材が設けられる請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
記録媒体に液滴が吐出されて記録媒体の表面に画像が形成される画像形成工程と、
100N/m以上1000N/m以下の張力を生じさせた記録媒体の表面に形成された画像を乾燥し、記録媒体に張力が生じている状態で記録媒体の残水量を3g/m以下とする液滴乾燥工程と、
を備える画像形成方法。
【請求項13】
画像形成工程の前に設けられ、前記画像形成工程で記録媒体に吐出される液滴中の色材を凝集させる処理液を記録媒体に塗布する処理液塗布工程と、
を備える請求項12に記載の画像形成方法。
【請求項14】
前記処理液塗布工程で記録媒体に塗布された処理液を乾燥させる処理液乾燥工程と、
を備える請求項13に記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−60302(P2013−60302A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−151632(P2012−151632)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】