説明

画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム

【課題】スリープ状態から復帰した機器から不正なネットワークパケットを送信せず、且つ、機器を管理する管理アプリケーションも機器の状態を不整合なく正確に管理することができる機器管理環境を構築すること。
【解決手段】画像形成装置1をスリープ状態に移行する場合に、スリープ通知制御部206が画像形成装置1が受信するデータをプロトコルスタック201で破棄する受信フィルタ制御処理機能を有効にし、該受信フィルタ制御処理機能を有効にした後に、スリープ通知送信部207がプロトコルスタック201を介してスリープ通知をスリープ通知先DB208に登録されている宛先へ送信し、該スリープ通知の完了の後に、スリープ通知制御部206が送信フィルタ制御処理機能を有効にし、該送信フィルタ制御処理機能を有効にした後に、スリープ制御部205が画像形成装置1をスリープ状態に移行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置における状態遷移時のパケット制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置等の機器が消費する電力を低減するため、稼動していない状態が一定時間以上経過した場合は、電力の供給を機器の一部に限定し低電力で動作する「スリープ状態」へ遷移する省電力機能が進歩している。
【0003】
また、ネットワーク技術の普及に伴い、ネットワークを利用して機器とホスト間で定期的にデータのやりとりを行う状況が想定される。機器が「スリープ状態」であっても、このようなネットワーク経由のデータの処理を行うために、機器に複数のCPUを搭載し、非スリープ時にはメインCPUで処理を行うが、スリープ時には、電力消費の小さいサブCPUでメインCPUの処理を代替させる手法が考えられている(特許文献1参照)。
【0004】
このようなシステムでは、サブCPUは受信したネットワークパケットに対して代理応答するか破棄するか、メインCPUをスリープ状態から復帰させるかを判断し処理する機能を有している。
【0005】
一方、近年、機器の多機能化に伴い、機器を制御するメインCPUには多くのドライバが搭載されている。その為、スリープ状態に遷移する場合、これらのドライバに対してスリープ状態遷移の為の停止処理を実施する必要がある。また、機器が画像形成装置である場合、定着器等のエンジンを停止するための処理も必要となる。
【0006】
これらの処理を実施するには数秒間の時間が必要である。つまり、機器がスリープ移行を決定してから、実際にスリープ移行するまで、スリープ準備処理を実行している時間が数秒間発生していた。
【0007】
このスリープ準備中にメインCPUが外部ホストからネットワークパケットを受信すると、タイミングによってはプロトコルスタック、あるいはアプリケーションで処理中に機器がスリープ状態に遷移してしまう場合がある(図7参照)。
【0008】
図7のように、スリープ移行(710)している間では、画像形成装置701は、外部ホスト702から処理を要求するリクエストパケット(SNMP Request)711を受信しても、プロトコルスタックあるいはアプリケーションで処理中に、スリープ状態に遷移する(712)。そして、次にスリープ復帰(713)した瞬間にリクエストパケット711の処理を進め、応答パケット(714)を外部ホスト702に送信する。
【0009】
しかし、次にスリープ復帰した際にパケット処理を進めて応答パケットを送信しても、一定時間が経過しているため応答したパケットの内容が不正になる、あるいは外部ホスト702から見れば意図しない時間に応答パケットが来るため攻撃パケットとみなされる可能性もある。
【0010】
そのため、メインCPUではスリープ準備処理中の送受信パケットをドライバあるいはプロトコルスタックレベルで破棄するという処理が一般的である(図8参照)。
図8のように、スリープ移行(810)している間では、画像形成装置801は、外部ホスト802から処理を要求するリクエストパケット(SNMP Request)811を受信しても、パケットを破棄し(812)、スリープ状態に遷移する(813)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−259906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来のスリープ遷移中に送受信パケットを破棄する制御では、機器を管理する管理アプリケーションが正確に機器管理できない問題が発生してしまう(図9参照)。
【0013】
近年の機器管理アプリケーションは、機器のスリープ状態も把握する機能が一般的である。例えば、機器が何時にスリープ状態に遷移したか、何時にスリープ状態から復帰したかを管理することで機器の消費電力を計算し、ユーザに提示する機能等がある。
【0014】
そのため、機器はスリープ状態に遷移する直前や、スリープ状態から復帰した直後は管理アプリケーションに対して通知パケットを送信する機能を有している。しかし、前述のように機器においてスリープ状態遷移中は送受信パケットを破棄するため、実際にスリープ状態移行通知パケットを送信するのは状態遷移前となる。
【0015】
例えば、機器が2種類のスリープ状態通知機能を有しているとする。1つはマルチキャストでスリープ状態通知を行うプロトコルであり、もう1つは予め登録されたホストに対してユニキャストのTCPあるいはUDPでスリープ状態通知を行うプロトコルとする。
【0016】
スリープ状態への遷移が仮決定したら、図9のように、機器(901)は、まずマルチキャストパケットで管理アプリケーションに対してスリープ通知を行う(910)。管理アプリケーションは、スリープ通知パケットを受信したら、機器の状態を「通常状態」から「スリープ状態」に変更する。
【0017】
次に、機器(901)は、予め登録されているホストに対してユニキャストで1台1台にスリープ通知を行っていく(911,912)。もしこの間に、ある外部ホストから機器に対してネットワークアクセス(913)が発生すると、機器(901)はスリープ状態への移行を延期してしまう(914)。例えば、あるホストから印刷処理が実行された場合、機器は、印刷が完了し機器のハードディスク保護時間が経過するまではスリープ状態へ遷移しない(915)。
【0018】
このような場合、機器の管理アプリケーションではスリープ通知(910)を受信したのに、実際に機器はスリープ状態に遷移していない、という管理不整合(916)が発生してしまう問題があった。
【0019】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものである。本発明の目的は、スリープ状態から復帰した機器から不正なネットワークパケットを送信せず、且つ、機器を管理する管理アプリケーションも機器の状態を不整合なく正確に管理することができる仕組みを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、画像形成装置であって、ネットワークを介して外部装置とデータの送受信を行う送受信手段とを有する画像形成装置であって、前記画像形成装置をスリープ状態に移行させるスリープ手段と、前記スリープ状態に移行する旨を通知する宛先を記憶する記憶手段と、前記スリープ状態に移行する場合に、前記画像形成装置が受信するデータを前記送受信手段で破棄する受信フィルタ制御処理を有効にする受信データ破棄設定手段と、前記受信フィルタ制御処理を有効にした後に、前記送受信手段を介して、前記画像形成装置がスリープ状態に移行する旨を示すスリープ通知を前記記憶手段に登録されている宛先へ送信する通知手段と、前記スリープ通知の完了の後に、前記画像形成装置から送信するデータを前記送受信手段で破棄する送信フィルタ制御処理を有効にする送信データ破棄設定手段とを有し、前記スリープ手段は、前記送信フィルタ制御処理を有効にした後に、前記画像形成装置をスリープ状態に移行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、スリープ状態から復帰した画像形成装置から不正なネットワークパケットを送信せず、且つ、画像形成装置を管理する管理アプリケーションも画像形成装置の状態を不整合なく正確に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例を示す画像形成装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示した画像形成装置1のソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図2に示した画像形成装置ソフトウェア2の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】実施例1のスリープ通知先DB208の一例を示す図である。
【図5】実施例1におけるネットワークシーケンスの一例を示す図である
【図6】実施例2のスリープ通知先DB208の一例を示す図である。
【図7】従来のネットワークシーケンスの一例を示す図である
【図8】従来のネットワークシーケンスの一例を示す図である
【図9】従来のネットワークシーケンスの一例を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。ここでは、本発明の機器として、画像形成装置を例に説明する。
【実施例1】
【0024】
実施例1として、本発明を適用した画像形成装置がUDPを用いてスリープ通知を送信する場合について説明する。
図1は、本発明の一実施例を示す画像形成装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施例の画像形成装置1は、コントローラ100、スキャナ111、プリンタエンジン112、オペレーションパネル113を有する。
ROM103のプログラム用ROMには、CPU109が実行可能な制御プログラム等が記録されている。ROM103のデータ用ROMには、画像形成装置1で利用される情報等が記録されている。
【0025】
CPU109は、ROM103のプログラム用ROMにコンピュータ読み取り可能に記録された制御プログラムに基づいて、システムバス110に接続される各種のデバイスとのアクセスを総括的に制御する。
【0026】
また、CPU109は、プリンタI/F106を介して接続されるプリンタエンジン112に出力情報としての画像信号を出力したり、スキャナI/F101を介して接続されるスキャナ111から入力される画像信号を制御する。
【0027】
RAM104は、主としてCPU109の主メモリ,ワークエリア等として機能する。なお、RAM104は、図示しない増設ポートに接続されるオプションRAMによりメモリ容量を拡張することができるように構成されている。
【0028】
ハードディスク(HDD)105は、フォントデータ、エミュレーションプログラム、フォームデータ等を記憶、プリントジョブを一時的にスプールし、スプールされたジョブを外部から制御するためのジョブ格納領域として使用される。また、HDD105は、スキャナ111から読み取った画像データやプリントジョブの画像データをBOXデータとして保持し、ネットワークから参照、印刷を行うBOXデータ格納領域としても使用される。
【0029】
不揮発性メモリ(NVRAM)107は、オペレーションパネル113で設定される各種設定情報をパネル制御部108経由で記憶している。ネットワークインタフェース(NW I/F)102は、ネットワークケーブルを経由して外部ネットワーク120とデータ通信を行う。
【0030】
図2は、図1に示した画像形成装置1のソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2に示す画像形成装置ソフトウェア2は、画像形成装置1のCPU109がROM103にコンピュータ読み取り可能に記録されたプログラムを読み出して実行することにより実現される機能である。
【0031】
図2に示すように、画像形成装置ソフトウェア2の構成は、大きく分けて、カーネル空間で動作するカーネル部分と、ユーザ空間で動作するアプリケーション部分(アプリケーション202)とに分けられる。このカーネル部分にネットワーク送受信を制御するネットワークプロトコルスタック(プロトコルスタック201)が搭載されている。
【0032】
まず、アプリケーション202について説明する。
アプリケーション202は、スリープ制御部205、スリープ通知制御部206、スリープ通知送信部207、スリープ通知先DB208を有する。
スリープ制御部205は、画像形成装置の全ユニットに電力が供給されている「通常状態」から、1部のユニットへのみ電力が供給される「スリープ状態」に移行するかどうかの制御を行う。スリープ状態に移行すると決定した場合、スリープ制御部205は、スリープ通知制御部206へスリープ移行決定の情報を通知する。
【0033】
スリープ通知制御部206は、スリープ移行決定の情報の通知を受けると、スリープ通知送信部207を介して外部ホスト宛にスリープ通知パケットを送信する。スリープ通知パケットのフォーマットは、Service Location Protocol(SLP)などの汎用プロトコルを使用してもよいし、独自プロトコルを定義してもよい。この時、スリープ通知を送信する宛先は、スリープ通知先DB208に格納されている宛先IPアドレスに基づいて決定される。
【0034】
同様に、スリープ制御部205は、「スリープ状態」から「通常状態」に復帰した場合、スリープ通知制御部206へスリープ復帰の情報を通知する。
スリープ通知制御部206は、スリープ復帰の情報の通知を受けると、スリープ通知送信部207を介して外部ホスト宛にスリープ復帰通知パケットを送信する。
【0035】
次に、プロトコルスタック201について説明する。
プロトコルスタック201は、IPヘッダやTCPヘッダを解釈し、アプリケーション202と外部ホストとのデータ通信のパケット制御を行う。プロトコルスタック201は、受信フィルタ制御部204、送信フィルタ制御部203を有する。
【0036】
受信フィルタ制御部204は、特定の宛先からのアクセスや特定のポート番号へのアクセスに対して、受信パケットの破棄、許可を処理できる機能(受信フィルタ制御処理機能)を有する。同様に、送信フィルタ制御部203は、特定の宛先へのアクセスやポート番号への送信に対して、送信パケットの破棄、許可を処理できる機能(送信フィルタ制御処理機能)を有する。
【0037】
本実施例では、物理層であるドライバレベルでフィルタ制御する例を説明するが、本制御は、物理層、IP層、TCP/UDP層、アプリケーション層いずれのレイヤーで実施されてもよい。
【0038】
以下、図3を用いて、画像形成装置ソフトウェア2の動作について説明する。
図3は、図2に示した画像形成装置ソフトウェア2の動作の一例を示すフローチャートである。即ち、本フローチャートの動作は、画像形成装置1のCPU109がROM103にコンピュータ読み取り可能に記録されたプログラムを読み出して実行することにより実現されるものである。
【0039】
S301において、スリープ制御部205は、画像形成装置1がスリープ状態に移行できるかどうかを判断する。スリープ状態移行の判断基準としては、例えば、最後にハードディスク105にアクセスしてから、ハードディスク保護時間が経過しているか否か等で判断を行うものとする。
【0040】
前記S301において、スリープ移行可能でないと判断した場合(No)、スリープ制御部205は、S301に処理を戻す。
一方、前記S301において、スリープ移行可能と判断した場合(Yes)、スリープ制御部205は、スリープ通知制御部206にスリープ移行可能の旨を通知する。
【0041】
スリープ移行可能の旨の通知を受けると、スリープ通知制御部206は、S302において、プロトコルスタック201の受信フィルタ制御部204を起動させ、受信パケットを全て破棄する処理(受信フィルタ制御処理)の設定(受信データ破棄設定)を有効にする。
【0042】
次に、S303において、スリープ通知制御部206は、スリープ通知先DB208を参照し、スリープ通知を送信すべき宛先が存在するか否かを判断する。スリープ通知先DB208は、例えば図4のようなリストとなっている。
【0043】
図4は、実施例1のスリープ通知先DB208の一例を示す図である。
図4に示すように、スリープ通知先DB208が管理する通知先データ(宛先)は、宛先IPアドレス、プロトコル種別(例えば、SLP)、トランスポート種別(例えば、UDP)、パターン(例えば、マルチキャスト、ユニキャスト)を含むものとする。
【0044】
例えば、図4のNo1には、SLPマルチキャストでスリープ通知送信を行うための宛先が格納されている。また、No2には、192.168.1.1に対してUDPを使用してSLPユニキャストでスリープ通知送信を行うための宛先が格納されている。また、No3には、192.168.1.2に対してUDPを使用してSLPユニキャストでスリープ通知送信を行うための宛先が格納されている。また、No4には、192.168.1.3に対してUDPを使用してSLPユニキャストでスリープ通知送信を行うための宛先が格納されている。なお、スリープ通知先DB208が管理する通知先データは、ポート番号やアドレスファミリー(AF_INET、AF_INET6等)等の属性を含んでいてもよい。
なお、スリープ通知先DB208は、工場出荷時等に予めROM103等に格納されている静的な宛先と、ユーザにより登録される動的な宛先を記憶管理している。
【0045】
以下、図3の説明にもどる。
前記S303において、送信すべき宛先が存在すると判断した場合(Yes)、スリープ通知送信部207は、S304に処理を進める。
S304では、スリープ通知送信部207は、前記スリープ通知先DB208に存在する宛先を読み出して、該宛先にスリープ通知を送信する。
【0046】
送信が完了したら、S305において、スリープ通知送信部207は、次の宛先が存在するかスリープ通知先DB208を参照する。
なお、上記S302で受信パケット破棄設定を有効にされた受信フィルタ制御部204は、前記S303〜S305の手順の間に、外部ホストからネットワークパケットを受信したと判断した場合(S306でYes)、受信フィルタ制御部204が受信パケットを破棄する(S307)。この処理によって、機器はネットワーク受信によってスリープ移行が延期されることを防止できる。
【0047】
次に、スリープ通知送信部207は、S303に処理を戻し、前記S305での次の宛先の参照結果に基づいて、次にスリープ通知を送信すべき宛先が存在するか否かを判断する。そして、送信すべき宛先が存在する間(S303でYesの間)、スリープ通知送信部207は、S304〜S305の処理を繰り返す。
【0048】
図4に示した例の場合、まずSLPマルチキャストでスリープ通知を送信する。次に、192.168.1.1に対してUDPを使用してSLPユニキャストでスリープ通知を送信する。次に、192.168.1.2に対してスリープ通知を送信する。さらに、192.168.1.3に対してスリープ通知を送信する。これにより、スリープ通知を受信した管理アプリケーション側は、画像形成装置1の状態をスリープ状態として管理を始める。
【0049】
そして、前記S303において、次にスリープ通知を送信すべき宛先が存在しないと判断した場合(No)、スリープ通知送信部207は、S308に処理を進める。
S308において、スリープ通知制御部206は、プロトコルスタック201の送信フィルタ制御部203を起動させ、送信パケットを全て破棄する処理(送信フィルタ制御処理)の設定(送信データ破棄設定)を有効にする。さらに、スリープ通知制御部206は、スリープ制御部205に対して、スリープ通知およびフィルタ制御が完了した旨の通知を行う。
【0050】
スリープ制御部205は、スリープ通知制御部206からスリープ通知およびフィルタ制御が完了した旨の通知を受けると、S309において、スリープ移行処理を開始し、移行処理が完了次第、スリープ状態に移行する(S310)。
【0051】
スリープ制御部205は、スリープ状態から復帰した場合(S311でYes)、スリープ通知制御部206に対して、スリープ状態から復帰した旨の通知を行う。
スリープ状態から復帰した旨の通知を受けると、スリープ通知制御部206は、S312において、前記S302で有効にしていた受信フィルタ制御部204の受信パケット破棄の設定、及び前記S308で有効にしていた送信フィルタ制御部203の送信パケット破棄の設定をそれぞれ無効にする。
【0052】
次に、S313において、スリープ通知制御部206は、スリープ通知送信部207を介して、スリープ通知先DB208に格納されている全ての宛先に対して、スリープ復帰通知を送信する。図4に示した例の場合、まずSLPマルチキャストでスリープ復帰通知を送信する。次に、192.168.1.1に対してUDPを使用してSLPユニキャストでスリープ復帰通知を送信する。次に、192.168.1.2に対してスリープ復帰通知を送信する。さらに、192.168.1.3に対してスリープ復帰通知を送信する。これにより、スリープ復帰通知を受信した管理アプリケーション側は、画像形成装置1の状態を通常状態として管理を始める。
【0053】
以下、図5を用いて、具体的例を示す。
図5は、実施例1におけるネットワークシーケンスの一例を示す図である
図3に示した処理を実行することで、図5のように、スリープ通知(511〜513)を送信している間では、画像形成装置1は、外部ホスト501から印刷処理を要求するLPDリクエストパケット(LPD Print Request)514を受信しても、受信パケット破棄設定が有効(510)になっているので、印刷を受け付けることなく受信パケットを破棄する(515)。
【0054】
そのため画像形成装置1は、スリープ通知を送信した場合は、必ずスリープ状態に移行することができるため(516)、管理アプリケーションへの通知と実際の画像形成装置1の状態との間の不整合を解消できる。
【0055】
また、管理アプリケーション側でもスリープ通知を受信したのに、画像形成装置1がスリープ状態に移行していない、という不整合が発生することもない。
図5に示した例では、外部ホストから印刷要求リクエストを受信した場合であったが、特にプロトコルを限定することはなく本発明を適用できる。
【0056】
なお、プロトコル処理によってスリープ移行をどれだけの時間延期させるかは、機器構成によって異なるものとする。例えば、HDDにアクセスするようなプロトコル受信の場合は、少なくともハードディスク保護時間分はスリープ移行時間を延期しなければならない。また、SNMPやSLP等の機器の情報取得系のプロトコルであれば連続してアクセスしてくる可能性があるため、一般的には数十秒間はスリープ移行しないように時間を延期する。
【0057】
なお、機器は画像形成装置に限定されるものではなくスリープ状態に遷移するネットワーク機器であれば、本発明を適用可能である。
以上示したように、本実施例によれば、スリープ状態に遷移する機器において不正なネットワークパケットの送信を防止し、かつ機器を管理する管理アプリケーションも機器の状態を不整合なく正確に管理することができるネットワーク環境を構築することができる。
【0058】
なお、スリープ通知制御部206は、画像形成装置1がスリープ状態に遷移する直前に、前記S302で有効にしていた受信フィルタ制御部204の受信パケット破棄の設定、及び前記S308で有効にしていた送信フィルタ制御部203の送信パケット破棄の設定をそれぞれ無効にするように構成してもよい。この構成の場合、スリープ通知制御部206は、スリープ復帰した場合に、S312の送受信パケット破棄設定の無効処理を行うことなく、S313のスリープ復帰通知の送信を行うものとする。
【実施例2】
【0059】
実施例2では、本発明を適用した画像形成装置1がTCPを用いてスリープ通知を送信する場合について説明する。
図6は、実施例2のスリープ通知先DB208の一例を示す図である。
図6に示す例の場合、画像形成装置1は、まずSLPマルチキャストでスリープ通知を送信する。次に、192.168.1.1に対してTCPを使用してSLPユニキャストでスリープ通知を送信する。次に、192.168.1.2に対してUDPを使用してSLPユニキャストでスリープ通知を送信する。さらに、192.168.1.3に対してTCPを使用してSLPユニキャストでスリープ通知を送信する。
【0060】
即ち、スリープ通知先DB208に図6のように宛先が登録されている場合、画像形成装置1は、192.168.1.1や192.168.1.3に対して、スリープ通知をTCPで送信する必要がある。管理アプリケーションによっては、確実に通知を受信したいため、TCPでスリープ通知を送信してほしい場合がある。
【0061】
このような場合、画像形成装置1が図3のS304において、192.168.1.1に対してTCPでスリープ通知を送信すると、まずはTCP SYNパケットが送信される。SYNに対して、192.168.1.1がSYN ACKの応答を画像形成装置1に対して送信すると、実施例1の構成では、受信フィルタ制御部204で破棄設定が有効になっているので、受信フィルタ制御部204がSYN ACKパケットを破棄してしまう。そのため、TCPセッションが確立せずに、TCPでスリープ通知を登録していた192.168.1.1や192.168.1.3の宛先に対しては、スリープ通知することができない。
【0062】
この問題を解決するために、実施例2では、TCPでスリープ通知を登録している宛先が存在する場合、プロトコルスタック201において、ステートフルインスペクション機能を有効にして、受信フィルタ制御処理を実行する。例えば、図3のS302において受信パケット破棄設定を有効にする場合に、スリープ通知制御部206が、TCPでスリープ通知を登録している宛先が存在するか判定し、存在する場合、受信フィルタ制御部204のステートフルインスペクション機能も有効に設定する。
【0063】
ステートフルインスペクション機能とは、例えば画像形成装置1がクライアントとなってリクエストパケットデータを送信する場合、該送信したパケットデータをログとして保管しておき、受信フィルタ制御部204が、このログに基づいて、受信したパケットデータが該当の応答データであるか判断し、該当の応答データであれば受信フィルタ対象とみなさずに受信処理を行うように制御する機能である。
【0064】
このステートフルインスペクション機能を有効にすることで、TCPで登録されている宛先に対してもスリープ通知を行うことが可能となる。即ち、実施例2によれば、TCPのように、送達確認等を行うプロトコルを使用して通信する宛先に対しても、スリープ通知を行うことが可能となる。
【実施例3】
【0065】
実施例3として、本発明を適用した画像形成装置が、シャットダウンする場合について説明する。
画像形成装置1をシャットダウンする場合も、スリープ状態に移行する場合と同様の課題が存在する。
シャットダウン処理中は、送受信パケットを破棄するフィルタ制御を有効にするため、フィルタ有効前にシャットダウン通知を送信する必要がある。
この場合も、通知宛先が多く存在し、通知処理中に外部ホストから印刷ジョブ等を受信してしまった場合、画像形成装置のシャットダウンは延期されるため、管理不整合が発生してしまう。
【0066】
本実施例においても、シャットダウンする場合、まずは受信フィルタ制御処理機能のみを有効にして、該受信フィルタ制御処理機能が有効になった後にシャットダウン通知を送信し、該シャットダウン通知の送信が完了したら送信フィルタ制御処理機能を有効にし、該送信フィルタ制御処理機能が有効になったらシャットダウン処理を開始する制御を画像形成装置ソフトウェア2に搭載することで解決できる。
【0067】
以上示したように、本実施例によれば、画像形成装置等のネットワーク機器からの不正なネットワークパケットの送信を防止し、かつ機器を管理する管理アプリケーションも画像形成装置等の機器の状態を不整合なく正確に管理することができるネットワーク環境を構築することができる。
【0068】
なお、上記各実施例では、本発明の機器の例として画像形成装置を用いて説明した。しかし、本発明の機器は、画像形成装置に限定されるものではなく、ネットワーク通信可能な機器であってスリープ状態に遷移する機器であればよい。
【0069】
なお、上述した各種データの構成及びその内容はこれに限定されるものではなく、用途や目的に応じて、様々な構成や内容で構成されることは言うまでもない。
以上、一実施形態について示したが、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
また、上記各実施例を組み合わせた構成も全て本発明に含まれるものである。
【0070】
(他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【0071】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、1つの機器からなる装置に適用してもよい。
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形(各実施例の有機的な組合せを含む)が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。即ち、上述した各実施例及びその変形例を組み合わせた構成も全て本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0072】
1 画像形成装置
2 画像形成装置ソフトウェア
201 プロトコルスタック
203 送信フィルタ制御部
204 受信フィルタ制御部
205 スリープ制御部
206 スリープ通知制御部
207 スリープ通知送信部
208 スリープ通知先DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して外部装置とデータの送受信を行う送受信手段とを有する画像形成装置であって、
前記画像形成装置をスリープ状態に移行させるスリープ手段と、
前記スリープ状態に移行する旨を通知する宛先を記憶する記憶手段と、
前記スリープ状態に移行する場合に、前記画像形成装置が受信するデータを前記送受信手段で破棄する受信フィルタ制御処理を有効にする受信データ破棄設定手段と、
前記受信フィルタ制御処理を有効にした後に、前記送受信手段を介して、前記画像形成装置がスリープ状態に移行する旨を示すスリープ通知を前記記憶手段に登録されている宛先へ送信する通知手段と、
前記スリープ通知の完了の後に、前記画像形成装置から送信するデータを前記送受信手段で破棄する送信フィルタ制御処理を有効にする送信データ破棄設定手段とを有し、
前記スリープ手段は、前記送信フィルタ制御処理を有効にした後に、前記画像形成装置をスリープ状態に移行させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶される宛先は、IPアドレス、プロトコル種別、トランスポート種別の属性を有するデータであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記受信データ破棄設定手段は、前記宛先のトランスポート種別がTCPである場合、前記受信フィルタ制御処理を有効にする場合に、前記画像形成装置が受信したデータが前記画像形成装置より送信したデータの応答データである場合には、前記受信フィルタ制御処理において当該受信したデータを破棄しない機能をも有効にすることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、予め登録されている静的な宛先と、ユーザにより登録される動的な宛先を記憶することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成装置がスリープ状態から復帰した場合に、前記送信フィルタ制御処理、及び前記受信フィルタ制御処理を無効にする設定手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成装置がスリープ状態に遷移する直前に、前記送信フィルタ制御処理、及び前記受信フィルタ制御処理を無効にする設定手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記通知手段は、前記スリープ状態から復帰した場合に、前記送受信手段を介して、前記画像形成装置がスリープ状態から復帰した旨を示すスリープ復帰通知を前記記憶手段に登録されている宛先へ送信することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記受信データ破棄設定手段は、前記画像形成装置をシャットダウンする場合に、前記受信フィルタ制御処理を有効にし、
前記通知手段は、前記シャットダウンのために前記受信フィルタ制御処理を有効にした後に、前記送受信手段を介して、前記画像形成装置をシャットダウンする旨を示すシャットダウン通知を前記記憶手段に登録されている宛先へ送信し、
前記シャットダウン通知の完了の後に、前記送信フィルタ制御処理を有効にし、
前記シャットダウンのために前記送信フィルタ制御処理を有効にした後に、前記画像形成装置をシャットダウンするシャットダウン手段を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
ネットワークを介して外部装置とデータの送受信を行う送受信手段とを有する画像形成装置の制御方法であって、
前記画像形成装置をスリープ状態に移行する場合に、前記画像形成装置が受信するデータを前記送受信手段で破棄する受信フィルタ制御処理を有効にする受信データ破棄設定ステップと、
前記受信フィルタ制御処理を有効にした後に、前記送受信手段を介して、前記画像形成装置がスリープ状態に移行する旨を示すスリープ通知を記憶手段に登録されている宛先へ送信する通知ステップと、
前記スリープ通知の完了の後に、前記画像形成装置から送信するデータを前記送受信手段で破棄する送信フィルタ制御処理を有効にする送信データ破棄設定ステップと、
前記送信フィルタ制御処理を有効にした後に、前記画像形成装置をスリープ状態に移行させるスリープ移行ステップと、
を有することを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−103447(P2013−103447A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249897(P2011−249897)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】