説明

画像形成装置およびデータ処理システム

【課題】ホールド処理に係る画像データが不必要に出力されることを防止する画像形成装置およびデータ処理システムを提供する。
【解決手段】データ識別情報を有する画像データを保持するハードディスク18と、ハードディスク18に保持される画像データに操作パネル17やマウス43を介して印刷許容条件を設定できるようにする。複写機2は、ハードディスク18内の画像データについての印刷許容条件を記録する管理テーブル19を備えており、印刷要求がされた場合には、管理テーブル19を参照しつつ、CPU10が印刷要求に係る印刷を許可するか否かを判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入力された画像データを保持するホールド機能を有する画像形成装置、およびデータ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は入力された画像データに基づいて画像形成処理を実行する。画像形成装置に入力される画像データは、この画像形成装置に接続されたパソコン等の機器や記録媒体から供給される。通常、画像形成処理がされた画像データは、画像形成装置内のメモリから消去される。
【0003】
ところが、画像形成装置内に入力された画像データを複数回使用したい場合がある。この場合でも、従来は一度画像形成処理された画像データが画像形成装置のメモリから消去されていたため、画像データを画像形成処理のたびに画像形成装置に入力させる必要があった。
【0004】
そこで、従来技術の中には、入力された画像データを保持するホールド機能を有する画像形成装置がある(例えば、特許文献1参照。)。ホールド機能を有する画像形成装置では、データ識別情報が付加された画像データが画像形成装置のメモリに保持されるため、画像データを画像形成処理のたびに画像形成装置に入力させる必要がない。ユーザは、該当する画像データに対応するデータ識別情報を入力することにより、所望の画像データに係る画像形成処理を実行することができる。
【特許文献1】特開昭62−003322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ホールド処理に係る画像データは、画像形成装置の内部に保持され続ける。このため、ホールド処理に係る画像データが無制限に印刷され、この画像データの希少価値を損なう虞がある。また、画像データによっては、ある決められた期間だけ印刷できれば足り、その他の期間には印刷させるべきでない画像データも存在する。
【0006】
さらに、画像データを長期間にわたって画像形成装置のメモリに残しておくと、その画像データが悪意の第三者により悪用される虞もある。
【0007】
この発明の目的は、ホールド処理に係る画像データが不必要に出力されることを防止する画像形成装置およびデータ処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は以下の構成を備えている。
【0009】
(1)データ識別情報を有する画像データを保持するデータ保持手段と、
前記データ保持手段に保持される画像データに設定すべき印刷許容条件の入力を受け付ける受付手段と
前記データ保持手段が保持する各画像データと前記受付手段が受け付けた印刷許容条件とを対応づけて記録する記録手段と、
印刷要求時に入力されるデータ識別情報に基づき、印刷要求に係る画像データを特定するデータ特定手段と、
前記データ特定手段によって特定される画像データについて、前記記録手段に記録される印刷許容条件の範囲内での印刷処理を行う処理手段と、
を備えたことを特徴する。
【0010】
本発明に係る画像形成装置は、データ保持手段、受付手段、記録手段、データ特定手段、および処理手段を備えている。データ保持手段は、ホールド処理に係るデータ識別情報が付された画像データを保持する。データ保持手段が保持する画像データに対する印刷要求はデータ識別情報の入力をもって行われる。印刷要求時にデータ識別情報が入力されると、これに基づきデータ特定手段が印刷要求に係る画像データを特定する。
【0011】
本発明では、受付手段を介してデータ保持手段に保持される画像データの印刷許容条件が設定される。印刷許容条件とは、該当する画像データについてどのような内容の印刷処理を許容するのかを示す条件である。印刷許容条件の例として、印刷可能時期、印刷可能部数の上限値、許容される印刷処理の種類(フルカラー印刷、モノクロ印刷等)が挙げられる。画像データに設定された印刷許容条件と、印刷要求に係る印刷許容条件との比較は処理手段によって行われる。処理手段は、記録手段の記録内容に基づき、該当する画像データにつき許容されている処理のみ実行する。
【0012】
(2)印刷要求に係る印刷処理内容の設定操作を受け付ける操作部をさらに備え、
前記処理手段は、前記操作部に入力された設定内容が前記記録手段に記録された印刷許容条件の範囲内のときに、該当する画像データに係る印刷処理を実行することを特徴とする。
【0013】
この構成においては、印刷要求に係る印刷処理内容が操作部に入力されると、処理手段は記録手段の記録内容に基づいて入力された印刷内容が許容されるべきか否かを判断する。操作部の例として操作パネルや操作キーが挙げられる。このとき、処理手段は、操作部に入力された設定内容が記録手段に記録された印刷許容条件の範囲内のときにのみ該当する画像データに係る印刷処理を実行する。
【0014】
(3)前記操作部は、表示部を有しており、
前記記録手段の記録内容に基づいて、該当する画像データについて許容される印刷処理内容を前記表示部に表示させる表示手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0015】
この構成においては、該当する画像データの印刷許容条件が表示部を介してユーザに通知される。なお、表示部の例として、操作パネルが挙げられる。
【0016】
(4)前記データ保持手段に保持される各画像データに係る累積印刷部数をカウントするカウント手段をさらに備え、
前記処理手段は、該当する画像データに係る累積印刷部数が前記記録手段に記録された許容される印刷部数を超えない範囲で印刷処理を行うことを特徴とする。
【0017】
この構成においては、画像形成装置がさらにカウント手段を有している。処理手段は、印刷許容条件として設定された累積印刷部数の範囲内で該当する画像データに係る印刷処理を実行する。
【0018】
(5)年月日および時刻を計時するカレンダ手段をさらに備え、
前記処理手段は、印刷要求を受け付けた時が、前記記録手段に記録された許容される印刷の期間内であるときに印刷要求に係る印刷処理を行うことを特徴とする。
【0019】
この構成においては、画像形成装置がさらにカレンダ手段を有している。処理手段は、カレンダ手段が保持する年月日および時刻の情報に基づき印刷要求の日時を特定する。処理手段は、印刷許容条件として該当する画像データに設定された印刷可能期間の範囲内に印刷要求がされた場合にのみ、該当する画像データに係る印刷処理を実行する。
【0020】
(6)許容される印刷部数がすべて印刷され、または許容される印刷の期間が経過した画像データを前記データ保持手段から消去する消去手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0021】
この構成においては、印刷許容条件の範囲内での印刷が不可能となった画像データが消去手段によってデータ保持手段から消去される。
【0022】
(7)前記表示手段は、前記消去手段が該当する画像データを消去する旨を前記表示部に表示させることを特徴とする。
【0023】
この構成においては、消去手段が該当する画像データを消去することが、表示部を介してユーザに通知される。
【0024】
(8)ユーザを認証するユーザ認証情報を読み取る読取手段をさらに備え、
前記データ特定手段は、読取手段に読み取られたユーザ認証情報に基づいて、出力要求に係る画像データを特定することを特徴とする。
【0025】
この構成においては、画像形成装置が、ユーザを認証するユーザ認証情報を読み取る読取手段を備えている。データ特定手段は、読取手段によって読み取られたユーザ認証情報に基づいて画像データを特定する。
【0026】
(9)ユーザを認証するユーザ認証情報を読み取る読取手段をさらに備え、
前記処理手段は、読取手段に読み取られたユーザ認証情報が、前記記録手段に記録されたユーザ認証情報に一致する場合に該当する画像データに係る印刷処理を実行することを特徴とする。
【0027】
この構成においては、処理手段が、読取手段に読み取られたユーザ認証情報に基づいて、出力要求に係る出力処理の可否を判断する。
【0028】
(10)画像データ供給装置と画像データ処理装置とを含むデータ処理システムであって、
前記画像データ供給装置は、画像データに付加すべきデータ識別情報および出力許容条件の入力を受け付ける受付手段と、
前記受付手段が受け付けたデータ識別情報および出力許容条件を該当する画像データに付加して前記画像データ処理装置に供給する供給手段と、を有し、
前記画像データ処理装置は、前記データ供給装置から供給された画像データを保持するデータ保持手段と、
前記保持手段に保持される画像データとこの画像データに設定されたデータ識別情報および出力許容条件との対応関係を記録する記録手段と、
出力要求時に入力されるデータ識別情報に基づき、出力要求に係る画像データを特定するデータ特定手段と、
前記データ特定手段によって特定される画像データについて、前記記録手段に記録される出力許容条件の範囲内での出力処理を行う処理手段と、
を有することを特徴とする。
【0029】
本発明に係るデータ処理システムは、受付手段および供給手段を有する画像データ供給手段と、データ保持手段、記録手段、データ特定手段、および処理手段を有する画像データ処理装置と、を備えている。
【0030】
データ保持手段は、ホールド処理に係るデータ識別情報が付された画像データを保持する。データ保持手段が保持する画像データに対する出力要求はデータ識別情報の入力をもって行われる。データ識別情報が入力されると、これに基づきデータ特定手段が出力要求に係る画像データを特定する。
【0031】
本発明では、受付手段を介してデータ保持手段に保持される画像データの出力許容条件が設定される。出力許容条件とは、該当する画像データについてどのような内容の出力処理を許容するのかを示す条件である。出力許容条件は、原則として上述の印刷許容条件と同じであるが、単にディスプレイ等の表示手段への表示やデータの送信を対象にする点で印刷許容条件とは異なる。画像データに設定された出力許容条件と、出力要求に係る出力許容条件との比較は処理手段によって行われる。処理手段は、該当する画像データにつき許容されている処理のみ実行する。
【発明の効果】
【0032】
(1)請求項1に記載の構成によれば、ホールド処理に係る画像データが不必要に出力されることを防止できる。
【0033】
(2)請求項2に記載の構成によれば、操作部に入力された操作のうち、印刷許容条件の範囲内の処理のみを実行できる。
【0034】
(3)請求項3に記載の構成によれば、該当する画像データに係る印刷許容条件をユーザに通知して、ユーザによる誤操作を防止できる。
【0035】
(4)請求項4に記載の構成によれば、該当する画像データが必要以上に印刷されることを防止できる。
【0036】
(5)請求項5に記載の構成によれば、該当する画像データが必要以上に印刷されることを防止できる。
【0037】
(6)請求項6に記載の構成によれば、画像形成装置内に保持しておく必要がなくなった画像データを速やかに消去することができる。
【0038】
(7)請求項7に記載の構成によれば、画像データが適当なタイミングで消去される旨をユーザに伝えることができる。
【0039】
(8)請求項8に記載の構成によれば、印刷要求時にデータ識別情報の入力操作が不要になる。
【0040】
(9)請求項9に記載の構成によれば、ユーザ認証によって画像データの利用を制限し、画像データが悪用されることを抑制できる。
【0041】
(10)請求項10に記載の構成によれば、印刷要求を行ったユーザに必要な画像データを出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、図を用いて本発明のデータ処理システムおよび画像形成装置を説明する。
【0043】
図1は、第1の実施形態に係るデータ処理システム1の概略構成を示している。データ処理システム1は、複写機2、パーソナルコンピュータ(以下、PCという。)4、およびネットワーク3を備えている。本実施形態では、複写機2が本発明の画像形成装置または画像データ処理装置を構成し、PC4が本発明の画像データ供給装置を構成する。
【0044】
PC4は、表示部としてのディスプレイ41、処理部としての本体42、入力部としてのマウス43を備えている。PC4から出力される印刷命令は、ネットワーク3を介して複写機2に供給される。
【0045】
図2は、本発明の概要を示す機能ブロック図である。複写機2は、データ保持手段M1、受付手段M2、記録手段M3、データ特定手段M4、および処理手段M5を備えている。データ保持手段M1は、ホールド処理に係る画像データを保持する。受付手段M2は、データ保持手段M1に保持される画像データに対する印刷許容条件の入力を受け付ける。本実施形態における印刷許容条件の例として、「フルカラー印刷許可」、「モノクロ印刷のみ許可」、「所定の印刷部数だけ印刷許可」、「所定の印刷期間内にかぎり印刷許可」が挙げられる。記録手段M3は、データ保持手段M1が保持する各画像データと受付手段M2が受け付けた印刷許容条件とを対応づけて記録する。データ特定手段M4は、印刷要求Rに含まれるデータ識別情報に基づき、印刷要求Rに係る画像データを特定する。処理手段M5は、データ特定手段M4によって特定される画像データについて、記録手段M3に記録される印刷許容条件の範囲内で印刷処理を行う。
【0046】
PC4は、受付手段M7および供給手段M6を備えている。受付手段M7は、データ保持手段M1に保持される画像データに対する印刷許容条件の入力をPC4を介して行う際に使用される。供給手段M6は、受付手段M7が受け付けたデータ識別情報および印刷許容条件を該当する画像データに付加して複写機2におけるデータ保持手段M2に対して出力する。
【0047】
図3は、複写機2およびPC4の概略構成を示すブロック図である。複写機2は、ROM11、RAM12、画像読取部13、画像処理部14、画像形成部15、インタフェース(I/F)部16A、操作パネル17、ハードディスク18、管理テーブル19、および給紙部20を備えている。
【0048】
ROM11は、複写機2の動作に必要なプログラムを格納する。RAM12は、必要なデータを一時的に保持する揮発性メモリである。画像読取部13は、原稿台上に位置する原稿の画像情報を読み取り、読み取った画像情報を画像データとして画像処理部14に出力する。画像処理部14は、画像読取部13より受け取った画像データに対して所定の手順で画像処理を行い、画像処理後のデータをRAM12に格納する。画像形成部15は、印刷処理命令に基づき、RAM12から画像データを読み出し電子写真方式の画像形成処理を行う。インタフェース(I/F)部16Aは、ネットワーク3に接続される外部機器と複写機2との間の通信を司る。操作パネル17は、複写機2に対するユーザからの入力操作を受け付ける。ハードディスク18は、ホールド処理に係る画像データを記録する。管理テーブル19は、図4に示すように、ハードディスク18に記録された画像データと、データ特定情報および印刷条件の情報とを対応づけて記録する。給紙部20は、画像形成部15に対して用紙を供給する。
【0049】
CPU10は、ROM11に格納されたプログラムに基づいて動作し、複写機2の各部の動作を統括的に制御する。さらに、CPU10は、各画像データに係る累積印刷部数をカウントするためのカウント手段と、年月日および時刻を計時するためのカレンダ手段を内蔵している。
【0050】
本実施形態では、操作パネル17が受付手段M1および操作部を構成し、ハードディスク18がデータ保持手段M2を構成し、管理テーブル19が記録手段M3を構成し、CPU10がデータ特定手段M4および処理手段M5を構成する。
【0051】
ここで、図4を用いて管理テーブル19の記録内容の一例を説明する。同図における画像データAのデータ識別情報は「0058」である。画像データAについてカラー印刷は許容されていないが、100部数までの白黒印刷が許容されている。ここでは、既に87部数の印刷がされているため、残り13部数の印刷が可能である。なお、画像データAに係る白黒印刷が可能な期間は制限されていない。
【0052】
画像データBのデータ識別情報は「1225」である。画像データBについて50部数までのカラー印刷が許容されていたが、既に50部数の印刷が完了しているため今後画像データBについてカラー印刷をすることはできない。画像データBは150部数の白黒印刷が許容されているため、残り118部数の白黒印刷が可能である。画像データBについてカラー印刷および白黒印刷が許容される時期は共に、2004年6月12日,13日の2日間である。
【0053】
画像データCのデータ識別情報は「3939」である。画像データCに係る印刷はカラーおよび白黒共に印刷部数に制限はない。ただし、カラー印刷については2004年6月12日の午前中のみ行うことができるように設定されている。
【0054】
画像データDのデータ識別情報は「5238」である。画像データDのデータ識別情報は「5238」である。画像データDについて、カラー印刷の部数が100部数に制限されており、その他については制限されていない。
【0055】
このように、管理テーブル19では、ハードディスク18内の画像データに対して設定されたデータ識別情報および印刷許容条件を管理している。
【0056】
PC4は、インタフェース(I/F)部16B、ディスプレイ41、マウス43、ハードディスク44、RAM45、ROM46、およびCPU47を備えている。インタフェース(I/F)部16Bは、ネットワーク3に接続される外部機器と複写機2との間の通信を司る。ディスプレイ41は、PC4の処理に必要な表示を行う。マウス43は、ユーザによる入力操作を受け付けるユーザインタフェースである。ハードディスク44は、データやアプリケーションプログラムを格納する。RAM45は、必要なデータを一時的に保持する揮発性メモリである。ROM46は、複写機2の動作に必要なプログラムを格納する。CPU47は、PC4の各部の動作を統括的に制御する。本実施形態では、マウス43またはキーボードが本発明の受付手段を構成し、CPU47が本発明の供給手段を構成する。
【0057】
図5は、PC4のディスプレイ41の表示画面の一例を示す図である。PC4から複写機2に画像データを送信する際、初期設定では通常印刷が設定されている。印刷コマンドを複写機2に送信する際に、設定内容を変更することによりホールド処理の設定がされる。
【0058】
印刷コマンド送信時の設定画面において、ジョブハンドリングのタブを選択し、リテンションの項目のいずれかに印を付けることによりホールド処理が設定される。図5において、「印刷せずにホールド」はホールド処理のみを実行する手順をいい、「印刷後ホールド」は該当する画像データにつき印刷処理を実行した後にホールド処理を実行する手順をいう。ホールド処理を実行する際には、データ識別情報入力欄に入力されたデータ識別情報が、画像データを特定するために使用される。本実施形態では、データ識別情報として4桁の数字を用いているが、データ識別情報の種類はこれに限られるものではない。
【0059】
さらに、本実施形態では、ホールド処理に係る画像データについての出力制限も設定することができる。本実施形態では、出力制限として、印刷許容部数、印刷可能期間、カラー印刷許容枚数や白黒印刷許容部数が挙げられる。マウス43を用いて、「部数」や「期間」を所望の値に設定することにより、出力制限としての印刷許容条件(出力許容条件)を設定することができる。
【0060】
図6は、PC4から複写機2に印刷コマンドを送信する際のCPU47の動作手順を示すフローチャートである。PC4から複写機2に画像データを送信する場合、CPU47は、この画像データがホールド処理に係る画像データであるか否かを判断する(S1)。複写機2に送信される画像データがホールド処理に係らない場合には、CPU47は該当する画像データを複写機2に送信する(S5)。データ識別情報が付加されることなく画像データが複写機2に送信されると、複写機2側ではこの画像データについて通常の印刷処理を実行する。
【0061】
S1の判断ステップで、該当する画像データがホールド処理に係る場合には、CPU47は、この画像データに印刷条件の設定情報が付加されているか否かを確認する(S2)。S2のステップで、印刷条件の設定がされていない場合には、画像データおよびデータ識別情報を複写機2に出力する(S6)。S2のステップで、印刷条件の設定がある場合には、画像データに印刷条件の情報を付加する(S3)。続いて、画像データ、データ識別情報、および印刷条件情報を複写機2に送信する(S4)。データ識別情報が付加された状態で画像データが複写機2に送信されると、複写機2側ではこの画像データをホールド処理に係る画像データとして取り扱う。
【0062】
図7は、複写機2に対しホールド処理に係る画像データについて印刷要求があった際のCPU10の動作手順を示すフローチャートである。CPU10は、データ識別情報の入力が完了するまで待機する。なお、データ識別情報は、操作パネル17を介して入力される。データ識別情報が入力されると、入力されたデータ識別情報に対応する画像データがハードディスク18に格納されているか否かを判断する(S12)。S12の判断ステップでは、CPU10が管理テーブル18を参照しつつ、入力されたデータ識別情報に対応づけて記憶されている画像データの存在の有無を確認する。
【0063】
S12の判断ステップにて、対応する画像データが存在しない場合には、CPU10は「対応する画像データが存在しない」旨のエラーメッセージを操作パネル17に表示させる(S17)。これに対して、対応する画像データが存在する場合には、CPU10は画像データの出力制限の情報を確認する(S14)。続いて、CPU10は、印刷要求に係る印刷設定内容が該当する画像データの印刷許容条件の範囲内であるか否かを判断する(S15)。
【0064】
S15の判断ステップでは、CPU10は、管理テーブル18参照して、印刷要求時に設定された内容での印刷が許容されるか否かの判断を行う。このとき、印刷要求に係る設定内容が印刷許容条件の範囲内であれば、CPU10は画像形成部15に該当する画像データに係る印刷を実行させる(S16)。これに対して、印刷要求に係る設定内容が印刷許容条件を範囲内でない場合には、CPU10は設定された内容では印刷をすることができない旨のエラーメッセージを操作パネル17に表示させる(S18)。本実施形態では、ユーザの便宜を考慮して、CPU10は該当する画像データに係る印刷許容条件を操作パネル17に表示する。このとき、CPU10は本発明の表示手段を構成する。
【0065】
上述の実施形態では、PC4を経由して複写機2に画像データを入力しているが、複写機2に画像データを入力する手法はこの実施形態には限られない。
【0066】
ここで、図8〜図10を用いて画像読取部13を介して画像データを複写機2に入力する第2の実施形態を説明する。図8に示すように、複写機2の待機時には、CPU10は原稿の読取が可能である旨を操作パネルに表示させている。ホールド処理を選択せずに画像読取部13に原稿の画像情報を読み取らせる場合、画像読取部13によって読み取られた原稿の画像データは画像処理部14を介して画像形成部15に送られ、画像形成部15にて印刷される。
【0067】
一方、ホールド処理が実行されている場合には、図9に示すように、CPU10は「文書データの保存先と印刷許容条件(出力許容条件)の選択を促すメッセッージを操作パネル17に表示させる。ここでは、データの保存先として、コピーフォルダ、スキャンフォルダ、ファックスフォルダ、プリンタフォルダのいずれかのフォルダから画像データを保持するフォルダが選択できる。また、印刷条件として「出力部数」、「出力期間」、「カラー印刷/白黒印刷」を設定することができる。
【0068】
CPU10は、図10に示すように、印刷許容条件の設定の入力を受け付けるための画面を操作パネル17に表示させる。印刷許容条件の設定の入力が完了すると、CPU10は、ホールド処理に係る原稿の画像情報を画像読取部13に読み取らせる。このとき、CPU10は、ホールド処理に係る画像データは、印刷許容条件の範囲内での印刷が不可能になるタイミングで消去される旨を操作パネル17に表示させる。ユーザは、ホールド処理に係る画像データがいつまでも複写機2内に存在することがないことを操作パネル17の表示によって認識できるため、安心して複写機2から立ち去ることができる。
【0069】
ホールド処理に係る画像データの消去は、印刷許容条件の範囲内での印刷が不可能になった時点でCPU10によって実行される。例えば、ある画像データについて印刷可能部数のすべてを印刷した場合や、印刷可能期間が経過した場合に、CPU10が該当する画像データをハードディスク18から消去する。
【0070】
なお、本実施形態では、画像読取部13を介してホールド処理に係る画像データが入力される例を示したが、メモリカード等の記録媒体を複写機2に接続してホールド処理に係る画像データを複写機2に入力しても良い。記録媒体を複写機2に接続する場合にも、図9および図10に示すように表示画面を操作パネル17に表示させれば、表示画面に従いつつ記録媒体に格納された画像データを複写機2に供給することが可能になる。
【0071】
上述の第1および第2の実施形態では、操作パネル17を介してデータ識別情報を入力することで、ハードディスク18に記録された画像データを特定していたが、画像データの特定はこの手法に限定されるものではない。
【0072】
例えば、招待状や受講証を画像読取部13に読み取らせ、招待状や受講証の画像情報に基づいて、印刷すべき画像データを特定することもできる。この場合、データ識別情報の入力が不要になるため、ユーザ側がデータ処理システムを利用し易くなる。
【0073】
また、ホールド処理に係る画像データについて、特定のIDを有するユーザであることを印刷許容条件として設定し、この特定のIDを画像読取部13に読み取らせることをこの画像データに係る印刷処理を実行するための条件にしても良い。この場合には、データ識別情報のみでは該当する画像データに係る印刷をすることができないため、悪意の第三者によって画像データが悪用されることが防止される。
【0074】
このように、本発明のように、ホールド処理に係る画像データの印刷条件を設定できるため、ホールド処理に係る画像データの出力形態に様々なバリエーションを設けることができる。
【0075】
例えば、より早く画像データにアクセスするユーザにフルカラープリントの印刷を許容したり、拡大サイズでの印刷を許容したり、上質紙での印刷を許容する等、画像データにユーザがより早くアクセスするような動機を与えることができる。また、所定番目にアクセスしたユーザにより有利な条件での印刷を認めるなど印刷処理に意外性を持たせることで、データ処理システムをユーザに飽きられにくくすることができる。
【0076】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明のデータ処理システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明のデータ処理システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】複写機とPCのの概略構成を示すブロック図である。
【図4】PCのディスプレイの表示画面の一例を示す図である。
【図5】各画像データの印刷許容条件の設定内容の例を示す図である。
【図6】PCのCPUの動作手順を示す図である。
【図7】複写機のCPUの動作手順を示す図である。
【図8】複写機における操作パネルの表示内容の一例を示す図である。
【図9】複写機における操作パネルの表示内容の一例を示す図である。
【図10】複写機における操作パネルの表示内容の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
1−データ処理システム
2−画像形成装置
3−ネットワーク
4−パーソナルコンピュータ(PC)
10−CPU
17−表示パネル
18−管理テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ識別情報を有する画像データを保持するデータ保持手段と、
前記データ保持手段に保持される画像データに設定すべき印刷許容条件の入力を受け付ける受付手段と
前記データ保持手段が保持する各画像データと前記受付手段が受け付けた印刷許容条件とを対応づけて記録する記録手段と、
印刷要求時に入力されるデータ識別情報に基づき、印刷要求に係る画像データを特定するデータ特定手段と、
前記データ特定手段によって特定される画像データについて、前記記録手段に記録される印刷許容条件の範囲内での印刷処理を行う処理手段と、
を備えたことを特徴する画像形成装置。
【請求項2】
印刷要求に係る印刷処理内容の設定操作を受け付ける操作部をさらに備え、
前記処理手段は、前記操作部に入力された印刷処理内容が前記記録手段に記録された印刷許容条件の範囲内のときに、該当する画像データに係る印刷処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記操作部は、表示部を有しており、
前記記録手段の記録内容に基づいて、該当する画像データについて許容される印刷処理内容を前記表示部に表示させる表示手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記データ保持手段に保持される各画像データに係る累積印刷部数をカウントするカウント手段をさらに備え、
前記処理手段は、該当する画像データに係る累積印刷部数が前記記録手段に記録された許容される印刷部数を超えない範囲で印刷処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
年月日および時刻を計時するカレンダ手段をさらに備え、
前記処理手段は、印刷要求を受け付けた時が、前記記録手段に記録された許容される印刷の期間内であるときに印刷要求に係る印刷処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
許容される印刷部数がすべて印刷され、または許容される印刷の期間が経過した画像データを前記データ保持手段から消去する消去手段をさらに備えたことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記表示手段は、前記消去手段が該当する画像データを消去する旨を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
ユーザを認証するユーザ認証情報を読み取る読取手段をさらに備え、
前記データ特定手段は、読取手段に読み取られたユーザ認証情報に基づいて、出力要求に係る画像データを特定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
ユーザを認証するユーザ認証情報を読み取る読取手段をさらに備え、
前記処理手段は、読取手段に読み取られたユーザ認証情報が、前記記録手段に記録されたユーザ認証情報に一致する場合に該当する画像データに係る印刷処理を実行することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
画像データ供給装置と画像データ処理装置とを含むデータ処理システムであって、
前記画像データ供給装置は、画像データに付加すべきデータ識別情報および出力許容条件の入力を受け付ける受付手段と、
前記受付手段が受け付けたデータ識別情報および出力許容条件を該当する画像データに付加して前記画像データ処理装置に供給する供給手段と、を有し、
前記画像データ処理装置は、前記データ供給装置から供給された画像データを保持するデータ保持手段と、
前記データ保持手段に保持される画像データとこの画像データに設定されたデータ識別情報および出力許容条件とを対応づけて記録する記録手段と、
出力要求時に入力されるデータ識別情報に基づき、出力要求に係る画像データを特定するデータ特定手段と、
前記データ特定手段によって特定される画像データについて、前記記録手段に記録される印刷許容条件の範囲内での印刷処理を行う処理手段と、
を有することを特徴とするデータ処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−7484(P2006−7484A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185365(P2004−185365)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】