説明

画像形成装置および画像形成プログラム

【課題】ユーザーの負担を軽減しつつ、メタリックインクを限定的に使用した経済的にも質的にも満足度の高い出力結果を得る。
【解決手段】入力した画像データに含まれる人物を構成する特定要素を検出する検出部と、上記検出された特定要素の位置に基づき、メタリックインクで表現するための領域を定義する領域定義部と、上記領域にメタリックインクを用いているように上記画像データを出力データに変換する変換部と、を備え、上記検出部は、上記特定要素として人物の目、歯、髪のうちの少なくとも一つを検出する画像形成装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷結果において特殊な光沢感を表現するために、メタリックインクが用いられることがある。メタリックインクとは、例えば金属顔料を含むインクを指し、印刷結果において金属的な質感(上記特殊な光沢感)を生じさせるインクである。そして、メタリックインクおよびカラーインクを印刷媒体に吐出して画像データの印刷を実行する印刷装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010‐76317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メタリックインクを用いた印刷をプリンターで実施した場合であっても、必ずしもユーザーが望む画像内の箇所だけにメタリックインクが効果的に使用されるとは限らない。そして、ユーザーがメタリックインクの使用を望まない箇所にもメタリックインクが使用されると、メタリックインクの無駄な消費となり、また、満足する印刷結果も得られない。一方で、ユーザーが画像内におけるメタリックインクの使用箇所や使用量を細かく指定した版(メタリックインク版)を作成することは、ユーザーにとって大きな手間となる。
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、ユーザーの負担を極力無くして、メタリックインクを限定的かつ効果的に使用することで経済的にも質的にも満足度の高い画像出力結果を得ることが可能な画像形成装置および画像形成プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の一つは、画像形成装置であって、入力した画像データに含まれる人物を構成する特定要素を検出する検出部と、上記検出された特定要素の位置に基づき、メタリックインクで表現するための領域を定義する領域定義部と、上記領域にメタリックインクを用いているように上記画像データを出力データに変換する変換部と、を備える構成としてある。
【0007】
当該構成によれば、入力した画像データに含まれる人物の特定要素の位置に基づいて、上記領域が定義され、この領域にのみメタリックインクが用いられているように画像データが出力データに変換される。そのためユーザーは、無駄にメタリックインクの消費を増やすことなく効果的にメタリックインクが使用された画像出力結果を、手軽に得ることができる。
【0008】
本発明の態様の一つは、上記検出部は、上記特定要素として人物の目、歯、髪のうちの少なくとも一つを検出する構成としてある。当該構成によれば、人物の目や歯や髪(あるいはそれらの一部)に関連する所定位置に上記領域が定義されるため、目や歯や髪がメタリックインクにより効果的に演出された満足度の高い画像出力結果を得ることができる。
【0009】
本発明の態様の一つは、画像形成装置は、上記人物の性別を判定する性別判定部を更に備え、上記領域定義部は、上記性別の判定結果に応じて上記領域の位置、形成、大きさ、数のうちの少なくとも一つを変更して上記領域を定義する構成としてある。当該構成によれば、人物の性別に応じて上記領域の位置、形成、大きさ、数(あるいはそれらの一部)が最適化され、性別に相応しい態様でメタリックインクにより効果的に演出された満足度の高い画像出力結果が得られる。
【0010】
本発明の態様の一つは、画像形成装置は、上記領域の位置、形成、大きさ、数のうちの少なくとも一つに対する設定を所定の入力画面を介して受け付ける設定受付部を更に備え、上記領域定義部は、上記設定の結果に応じて上記領域を定義する構成としてある。当該構成によれば、設定受付部は、所定の入力画面を介して上記領域の位置、形成、大きさ、数(あるいはそれらの一部)に対するユーザーの設定を受け付ける。従って、ユーザーによる設定に応じて上記領域が最適化され、ユーザーにとって最適な態様でメタリックインクが使用された画像出力結果が得られる。
【0011】
本発明にかかる技術的思想は、画像形成装置というカテゴリー以外にも、種々の形式で実現される。例えば、画像形成装置の各部が実行する処理工程を含む方法の発明や、当該処理工程をコンピューターに実行させるプログラム(画像形成プログラム)の発明を把握することができる。さらには、当該画像形成装置と同様の特徴を備えた印刷装置の発明も把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像形成装置の一例の概略構成を示すブロック図である。
【図2】プリンターが実行する画像形成処理を示すフローチャートである。
【図3】画像データにおける顔領域等の検出結果を例示する図である。
【図4】メタリックインク領域基本データの内容を例示する図である。
【図5】右目に対応する目領域における座標系を例示する図である。
【図6】右目に対応して定義されたメタリックインク領域を例示する図である。
【図7】印刷媒体への印刷結果を例示する図である。
【図8】変形例にかかる画像形成処理を示すフローチャートである。
【図9】変形例において表示されるUI画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
1.画像形成装置の概略構成
図1は、本実施形態にかかる画像形成装置の一例に該当するプリンター10の構成を概略的に示している。プリンター10は、記録メディア(例えば、メモリーカードMC等)から取得した画像データに基づき画像を印刷する、いわゆるダイレクトプリントに対応したプリンターである。プリンター10は、プリンター10の各部を制御するCPU11と、例えばROMやRAMによって構成された内部メモリー12と、ボタンやタッチパネルにより構成された操作部14と、例えば液晶ディスプレーにより構成された表示部15と、印刷機構16と、カードインターフェイス(カードI/F)17と、パーソナルコンピューター(PC)やサーバーやデジタルスチルカメラやスキャナー等の外部機器と接続するためのI/F部13とを備えている。プリンター10の各構成要素は、バスを介して互いに接続されている。
【0014】
印刷機構16は、印刷データに基づき印刷を行うための公知の機構である。例えば、印刷機構16は、メタリックインクを含む複数種類のインク毎のインクカートリッジ16aから供給される複数種類のインクをノズルから吐出(噴射)して印刷媒体への印刷を行なうインクジェット式の記録ヘッド16bを有する。カードI/F17は、カードスロット172に挿入されたメモリーカードMCとの間でデータのやり取りを行うためのI/Fである。メモリーカードMCには画像データが格納されており、プリンター10は、カードI/F17を介してメモリーカードMCに格納された画像データを入力することができる。画像データ提供のための記録メディアとしてはメモリーカードMC以外にも種々の媒体を用いることができる。むろんプリンター10は、記録メディア以外にも、I/F部13を介して有線あるいは無線で接続した上記外部機器から画像データを入力することも可能である。プリンター10は、I/F部13を介して接続したPCやサーバー等から印刷データを入力することもできる。
【0015】
内部メモリー12には、顔・器官検出部20と、領域定義部30と、表示処理部40と、画像処理部50と、性別判定部60とが格納されている。顔・器官検出部20や、領域定義部30や、性別判定部60は、所定のオペレーティングシステムの下で、後述する人物等の検出や、メタリックインク領域の定義や、検出された人物の性別判定等の各処理を実行するためのコンピュータープログラムである。表示処理部40は、表示部15を制御して、表示部15に所定のメッセージやユーザーインターフェイス(UI)画面等を表示させるディスプレードライバーである。画像処理部50は、画像データを印刷データに変換して印刷機構16に印刷データを出力し、印刷データに基づく印刷を印刷機構16に実行させるためのコンピュータープログラム(例えばプリンタードライバー)である。CPU11は、内部メモリー12から、これらのプログラムやドライバーを読み出して実行することにより、これら各部の機能を実現する。
【0016】
なお、顔・器官検出部20は、入力した画像データに含まれる人物を構成する特定要素を検出する検出部に該当する。また、領域定義部30は、検出された特定要素の位置に基づき、メタリックインクで表現するための領域(メタリックインク領域)を定義する領域定義部に該当する。さらに、画像処理部50は、メタリックインク領域にメタリックインクを用いているように上記画像データを出力データ(印刷データ)に変換する変換部に該当する。プリンター10は、コンシューマー向けの印刷装置であってもよいし、DPE向けの業務用印刷装置(いわゆるミニラボ機)であってもよい。また、プリンター10は、印刷機能以外にも、コピー機能やスキャン機能など多種の機能を備えたいわゆる複合機であってもよい。
【0017】
2.画像形成処理
図2は、プリンター10(CPU11)が実行する画像形成処理をフローチャートにより示している。ステップS100では、顔・器官検出部20が、処理対象となる画像(入力画像)を表した画像データDを、メモリーカードMC等、所定の記録メディアから取得する。ここで言う入力画像は静止画である。むろん、顔・器官検出部20は、プリンター10がハードディスクドライブ(HDD)等の記憶装置を有していれば、当該記憶装置に保存されている画像データDを取得可能であるし、上述したようにI/F部13を介して接続した上記外部機器から画像データDを取得可能である。画像データDは、複数の画素からなるビットマップデータであり、例えば各画素は、RGB(レッド、グリーン、ブルー)各チャネルの階調(例えば、0〜255の256階調)の組み合わせで表現されている。
【0018】
ステップS200では、顔・器官検出部20は、画像データDが表す画像から人顔の検出(顔検出)を行なう。顔検出とは、画像データD内の領域であって少なくとも所定の顔器官(目や鼻や口)を含むと想定される矩形の顔領域FAを検出する処理である。顔検出は、例えば、目や口の各テンプレートを利用したパターンマッチング方法といった公知の検出方法を用いて実行される。顔・器官検出部20は、パターンマッチング以外にも、顔領域FAを検出可能な手法であればあらゆる手法を採用できる。例えば、肌色領域を抽出することによる顔検出や、画像内に設定した矩形領域単位で画像の各種情報(例えば、輝度情報やエッジ量やコントラスト等)を入力し、当該領域が顔領域FAに該当するか否かを示す情報を出力する、予め学習された学習データ(例えば、サンプル画像に基づくニューラルネットワークを用いた学習や、ブースティングを用いた学習や、サポートベクターマシーンを用いた学習等により設定された学習データ)を用いることによる顔検出を行なっても良い。
【0019】
ステップS300では、顔・器官検出部20は、上記顔検出に成功したか否か判定し、成功したと判定した場合(ステップS300において“Yes”。画像データDに顔領域FAが含まれている場合。)にはステップS400に進む。
ステップS400では、顔・器官検出部20は、上記検出した顔領域FAを基準として、画像データD内に表されている人物を構成する特定要素(器官等)を検出する。ここで言う特定要素とは、メタリックインクの適用対象となり得る予め決められた器官等を言い、本実施形態では一例として、少なくとも人物の目、歯、髪を指す。なお、ステップS200の顔検出の際に、目や歯といった器官がテンプレートを利用したパターンマッチング方法等により既に検出されている場合には、それらの検出結果をそのまま採用することで実質的にステップS400における目や歯の検出処理を省略できる。あるいは、顔・器官検出部20は、顔領域FA内の画像を対象として更に詳細に目や歯といった器官の検出を公知の手法により行なうとしてもよい。また、人の髪の位置や範囲は、顔領域FAとの相対的な関係により概ね推定できると言える。そのため、顔・器官検出部20は、画像データD内における顔領域FAの位置および大きさに基づいて、髪の領域を予め決められた基準に従って決定(推定)する。
【0020】
図3は、画像データDにおける顔領域FA等の検出結果を例示している。画像データDは、例えば、人顔P1が撮影された写真データである。また図3では、顔・器官検出部20が検出した人物P1の顔領域FA、目(右目、左目)を含む目領域REA,LEA、歯を含む歯領域TA、髪を含む髪領域HAをそれぞれ鎖線の矩形にて例示している。なお、これら特定要素の検出においては、図示するように各特定要素を含む矩形を検出してもよいし、例えば、特開2011‐48747号公報に示された顔の複数の特徴位置に対応した特徴点からなる形状モデル(アクティブアピアランスモデル)を用いて、各器官の領域(器官の輪郭)を詳細に検出するようにしてもよい。
【0021】
ステップS500では、顔・器官検出部20は、特定要素の検出に成功したか否か判定し、成功したと判定した場合(ステップS500において“Yes”)にはステップS600に進む。なお、顔・器官検出部20は、上記複数の特定要素のうち少なくとも一以上の特定要素を検出できた場合に、ステップS600に進む。
ステップS600では、領域定義部30は、ステップS400までの検出結果および、内部メモリー12または上記記憶装置等に予め保持されているメタリックインク領域基本データSD(図1)を参照することにより、画像データD内にメタリックインク領域MAを定義する。
【0022】
図4は、メタリックインク領域基本データSDの内容を例示している。メタリックインク領域基本データSDにおいては、例えば、特定要素(右目、左目、歯、髪…)毎に、それらの位置、サイズ、形状、数…といった各種情報が規定されている。メタリックインク領域基本データSDが規定する“位置”とは、例えば、対応する特定要素の上記検出結果としての領域内での座標を指す。
【0023】
図5は、右目に対応する目領域REA内における座標系を例示している。領域定義部30は、例えば、このように検出されている領域の水平(左右)方向および垂直(上下)方向の幅を−50〜+50のスケールに規格化し、領域の中心座標を(0,0)とした座標系を定義する。そして、この座標系とメタリックインク領域基本データSDに規定された位置に基づいて、特定要素に対応するメタリックインク領域MAの画像データD内での位置を定義する。ここで、メタリックインク領域基本データSDでは右目に対応するメタリックインク領域MAの位置が(0,0)と規定されている。そのため、右目に対応するメタリックインク領域MAの位置(中心位置)は、目領域REAにおける中心座標(0,0)とされる。同様に、他の特定要素(左目、歯、髪…)についても、検出された領域(LEA,TA,HA…)に定義された座標系と、メタリックインク領域基本データSDに規定された位置に基づいて、メタリックインク領域MAの画像データD内における位置を定義する。
【0024】
また、メタリックインク領域基本データSDが規定する“サイズ”は、例えば、対応する特定要素の上記検出結果としての領域のサイズに対する比率を指す。図5に示すように、右目に対応する目領域REAの水平(左右)方向幅がW、垂直(上下)方向幅がHだとすると、例えば、メタリックインク領域基本データSDが規定する“サイズ”は、この垂直方向幅Hに対するメタリックインク領域MAの垂直方向幅の比率を意味するとしてもよい。ここで、メタリックインク領域基本データSDでは右目に対応するメタリックインク領域MAのサイズが50%と規定されている。そのため、右目に対応するメタリックインク領域MAは、その垂直方向幅が目領域REAの垂直方向幅Hの50%となるように、全体のサイズが定義される。同様に、他の特定要素(左目、歯、髪…)についても、検出された領域(LEA,TA,HA…)のサイズと、メタリックインク領域基本データSDに規定されたサイズに基づいて、メタリックインク領域MAの画像データD内におけるサイズが定義される。
【0025】
また、メタリックインク領域基本データSDでは、特定要素毎に、メタリックインク領域MAの形状が、例えば、ダイヤ型、十字型…等と定義されている。むろん、メタリックインク領域MAの形状としては、星型やハート型等、他にも種々の形状を採用可能である。メタリックインク領域MAの形状は、メタリックインク領域基本データSDに規定されたサイズに因らず相似が保たれる。また、図4に例示するメタリックインク領域基本データSDでは、特定要素毎のメタリックインク領域MAの数が全て1と定義されているが、ある一つの特定要素に対してメタリックインク領域MAの数は2以上であってもよい。その場合、メタリックインク領域基本データSDでは、一つの特定要素に対するメタリックインク領域MA毎に、位置、サイズ、形状が定義されている。
【0026】
図6は、上述したようにステップS600において領域定義部30が右目(目領域REA)に対応させて定義したダイヤ型のメタリックインク領域MAを、二点鎖線により例示している。他の特定要素(左目、歯、髪…)についても、検出された領域(LEA,TA,HA…)において、メタリックインク領域MAが定義される。なお、領域定義部30は、画像データD内において定義したメタリックインク領域MAを構成する各画素には、他の領域と識別するための識別情報(例えばフラグ)を付加しておく。
【0027】
ステップS700では、画像処理部50は、画像データDを印刷データに変換する所定の画像処理を実行する。具体的には、画像処理部50は、各画素がRGBで階調表現されている画像データDを、印刷機構16が搭載する所定のインクの組合せ(例えば、シアン(C),マゼンダ(M),イエロー(Y),ブラック(K)の組合せ)の階調(例えば、0〜255の256階調)で各画素を表現した画像データD´(インク種類毎のインク量を有する画像データ)に色変換する処理を、予め用意された色変換ルックアップテーブルを参照して実行する。ただし画像処理部50は、画像データDを構成する各画素のうち上記識別情報を有する画素に対しては、色変換後の画像データD´において、上記所定のインクの組合せ(CMYK)とは異なるメタリックインクについての所定のインク量(階調値)を付加する。この場合、上記識別情報を有する画素に対して、メタリックインクのインク量のみを与えてCMYKインクのインク量は0としても良いし、CMYKインクのインク量に加えてメタリックインクのインク量を与えても良い。
【0028】
画像処理部50は、さらに、画像データD´に対してハーフトーン処理やラスタライズ処理等を施すことにより、画素毎に各種インクの記録(ドットオン)/非記録(ドットオフ)を規定した印刷データに変換する。ステップS700後のステップS900では、画像処理部50は、ステップS700で生成された(画像データDから変換された)印刷データ(メタリックインク領域MAにメタリックインクを適用した画像を表現する印刷データ)を、印刷機構16に出力する。この結果、印刷機構16により印刷データが表現する画像が印刷媒体Pに印刷(出力)される。なお本発明において、画像の出力とは、ある処理段階から次の処理段階へデータを受け渡す場合と、最終的に印刷媒体やディスプレー等に画像を出力する場合との両方を含む意味である。
【0029】
図7は、ステップS700で生成された印刷データに基づいて印刷媒体Pに出力された印刷結果を例示している。図7に示すように、印刷結果に含まれる人物(図3の人物P1に該当)の右目、左目それぞれの中央にはダイヤ型のメタリックインク領域MAが再現されており、さらに当該人物の歯の右(画像に向かって右)端には十字型のメタリックインク領域MAが再現されている。つまり図7では、ステップS400までに人物P1の左右の目および歯の検出(特定要素の検出)に成功し、それら左右の目および歯に対してステップS600でメタリックインク領域MAが定義された場合の印刷結果を例示している。本実施形態では、このようなメタリックインク領域MAに該当する印刷媒体P上の箇所にのみメタリックインクが使用され、かかる箇所でメタリックインク特有の特殊な光沢感が生じる。
【0030】
なお、ステップS300において顔検出に成功しなかったと判定された場合または、ステップS500において特定要素の検出に成功しなかったと判定された場合には、図2に示すように画像処理部50は、画像データDに対して通常の画像処理(色変換処理、ハーフトーン処理、ラスタライズ処理等)を実行して印刷データを生成し(ステップS800)、生成した印刷データを印刷機構16に対して出力すればよい(ステップS900)。通常の画像処理では、色変換後の画像データD´にメタリックインクのインク量を与えない。ただし、プリンター10は、ステップS300において顔検出に成功しなかったと判定した場合又はステップS500において特定要素の検出に成功しなかったと判定した場合には、図2において鎖線で示すように、それ以降の処理(ステップS800,S900)を行なうことなく当該フローチャートを終了してもよい。
【0031】
このように本発明によれば、プリンター10は、入力した画像データDを対象として、当該画像に含まれる人物の目や歯や髪等といったメタリックインクを適用するに相応しい特定要素を検出し、検出した特定要素毎にダイヤ型や十字型等の特殊形状のメタリックインク領域を定義し、このメタリックインク領域にのみメタリックインクが適用されるように画像データDを印刷データに変換し、出力するとした。そのためユーザーは、極めて手軽に且つメタリックインクの消費を必要最小限に抑えて、メタリックインクが効果的に使用された良好な画像出力結果を得ることができる。
【0032】
3.変形例
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば以下のような変形例も可能である。上述の実施形態における記載事項と変形例とを適宜組み合わせた内容も、本発明の開示範囲である。
【0033】
図8は、プリンター10(CPU11)が実行する一変形例にかかる画像形成処理をフローチャートにより示している。ここでは、図2のフローチャートと異なる箇所についてのみ説明するものとし、また図8では図2と同様のステップについては同じステップ番号を付している。ステップS500で“Yes”と判定された後、ステップS550では、性別判定部60がステップS300で検出された顔領域FAにかかる人物の性別判定を、顔領域FA内の画像データに基づいて実行する。性別判定の手法は、あらゆる公知の手法を採用可能であり、性別を判定(推定)出来さえすれば特に限定されない。
【0034】
ステップS550後のステップS650では、領域定義部30は、ステップS400までの検出結果、ステップS550における性別判定の結果、および、メタリックインク領域基本データSDを参照することにより、画像データD内にメタリックインク領域MAを定義する。当該変形例では、性別に応じたメタリックインク領域基本データSD、つまり男性用のメタリックインク領域基本データSDと女性用のメタリックインク領域基本データSDとが予め保持されている。そこで、領域定義部30は、上記性別判定の結果に応じて、参照するメタリックインク領域基本データSDを選択する。当該変形例では、メタリックインク領域基本データSDの内容の少なくとも一部が男性用と女性用とで異なっているものとする。基本的には、男性よりも女性の方が顔周辺を装飾する要求が高いと想定される。そのため、男性用のメタリックインク領域基本データSDと女性用のメタリックインク領域基本データSDとを比較した場合、例えば、女性用の方が、メタリックインク領域の定義対象となる特定要素の種類が多かったり、メタリックインク領域のサイズや数が大きかったり、また、メタリックインク領域の形状もより可愛らしい印象を与える形状(例えばハート型)が多かったりする。当該変形例によれば、検出された顔の性別に応じたより相応しい態様で、目や歯等の特定要素をメタリックインクにて効果的に表現することができる。
【0035】
これまでは、ステップS600(図2)あるいはステップS650(図8)で参照するメタリックインク領域基本データSDは予め決められていることを前提に説明をしたが、このメタリックインク領域基本データSDをユーザーが任意に設定できるとしてもよい。メタリックインク領域基本データSDをユーザーが設定するタイミングは、上記フローチャート(図2,8)の途中であってもよい。その場合、ステップS500で“Yes”と判定された後であって、ステップS600(図2)あるいはステップS650(図8)が開始されるまでのタイミングで下記UI画面70が表示され、メタリックインク領域基本データSDが設定される。あるいは、メタリックインク領域基本データSDをユーザーが設定するタイミングは、上記フローチャートが開始される前であってもよい。
【0036】
図9は、メタリックインク領域基本データSDの設定をユーザーにさせるために表示処理部40によって表示部15に表示されるUI画面70(入力画面)の一例を示している。UI画面70は、例えば、要素選択欄71、位置選択欄72、形状選択欄73、サイズ選択欄74、数選択欄75、配置選択欄76、登録ボタン77、プレヴュー欄78、等を含む。要素選択欄71は、特定要素となり得る複数の要素を列挙している。位置選択欄72は、特定要素に対して取り得るメタリックインク領域の位置を列挙している。形状選択欄73は、メタリックインク領域の形状を複数種類列挙している。ユーザーは、操作部14を操作することで、要素選択欄71、位置選択欄72、形状選択欄73に列挙されている内容を任意に選択することができる。また、ユーザーは、サイズ選択欄74ではスライダー74aの位置を左右に任意に動かすことによりメタリックインク領域の大きさを選択することができ、数選択欄75ではメタリックインク領域の数を任意に入力することができる。
【0037】
また、配置選択欄76は、数選択欄75において2以上の数字が入力された場合に有効化(アクティベート)される入力欄である。つまり、ある特定要素に対するメタリックインク領域が複数個定義される場合には、それら領域相互間の配置態様も指定できるようになり、例えば、複数のメタリックインク領域をランダムに配置する態様や、複数のメタリックインク領域を重ねて配置する態様等を選択可能である。ユーザーは、要素選択欄71で一つの特定要素を選択した上で、当該選択した特定要素に対応するメタリックインク領域の位置、形状、サイズ、数(および配置)を任意に選択し、登録ボタン77を操作する。すると、当該選択された特定要素と、当該特定要素に関連して選択されたメタリックインク領域の位置、形状、サイズ、数(および配置)とを示す情報が領域定義部30に受け付けられ、メタリックインク領域基本データSDとして内部メモリー12または上記記憶装置等に記録される。ユーザーは、要素選択欄71で選択可能な特定要素毎に、このような選択と登録を繰り返すことで、各特定要素についてのメタリックインク領域基本データSDを設定可能である。
【0038】
上記フローチャート(図2,8)の途中のタイミングでUI画面70を介した設定を行なう場合は、図9に例示するように、プレヴュー欄78に、ステップS400で検出済みの特定要素であって、要素選択欄71で選択された特定要素に対応する画像を表示するとしてもよい。また、それとともにプレヴュー欄78では、ユーザーによるメタリックインク領域の位置、形状、サイズ、数(および配置)の選択結果に連動したメタリックインク領域の表示も行なうとしてもよい。図9では、右目(要素選択欄71で選択された特定要素)の画像とともに、右目中央に星型のメタリックインク領域が所定サイズで1個表示されたプレヴュー欄78を示している。上記フローチャートが開始される前のタイミングでUI画面70を介した設定を行なう場合等であっても、プレヴュー欄78には、ダミーの画像(要素選択欄71で選択され得る特定要素を示すために予め用意された目や歯等の画像)とともに、ユーザーによる各選択結果に連動したメタリックインク領域の表示を行なえば良い。また、上述したように性別に応じて異なるメタリックインク領域基本データSDを参照することを鑑みれば、UI画面70を介して性別に応じたメタリックインク領域基本データSDを設定できるようにしてもよい。
【0039】
なお、位置選択欄72やサイズ選択欄74では、「中央」、「右寄り」、「左寄り」、「小さい」〜「大きい」等と感覚的な表現を採用することでユーザーによる感覚的な選択を可能としている。むろん、「中央」、「右寄り」、「左寄り」、「小さい」〜「大きい」のそれぞれが意味する数値(座標や比率)は予め決められているため、ユーザーが感覚的に選択した位置やサイズが、一つの位置やサイズとして(メタリックインク領域基本データSDの一部として)設定される。また、図9では複数の選択欄やプレヴュー欄等を一つのUI画面70に同時表示しているが、このように同時表示することは必須ではない。例えば、表示部15の画面サイズが上記のような同時表示に不向きなサイズである場合には、上記複数の欄を複数のUI画面に振り分け、UI画面を適宜切り替えることで上記複数の欄を表示してもよい。このようにUI画面を介してユーザーがメタリックインク領域基本データSDを設定できるようにすることで、ユーザーが所望するメタリックインクの効果的な使用態様を、容易かつ確実に実現することができる。なお、操作部14、表示部15および領域定義部30は、設定受付部としても機能すると言える。
【0040】
上記では画像形成装置がプリンター10によって具現化される例を示したが、画像形成装置は、例えば、PCや、サーバーや、デジタルスチルカメラや、スキャナー等、各種画像処理機器(あるいは複数の機器)によって実現されてもよい。つまり、これら各種画像処理機器が、上記顔・器官検出部20、領域定義部30、表示処理部40、画像処理部50、性別判定部60の各機能を備え、また操作部14や表示部15を備え、入力画像に対して顔や器官等の検出処理を実行し、検出した器官等(特定要素)に対応するメタリックインク領域の定義や画像の出力等、上述した各種処理を実行するとしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10…プリンター、11…CPU、12…内部メモリー、14…操作部、15…表示部、16…印刷機構、20…顔・器官検出部、30…領域定義部、40…表示処理部、50…画像処理部、60…性別判定部、70…UI画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力した画像データに含まれる人物を構成する特定要素を検出する検出部と、
上記検出された特定要素の位置に基づき、メタリックインクで表現するための領域を定義する領域定義部と、
上記領域にメタリックインクを用いているように上記画像データを出力データに変換する変換部と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
上記検出部は、上記特定要素として人物の目、歯、髪のうちの少なくとも一つを検出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
上記人物の性別を判定する性別判定部を更に備え、
上記領域定義部は、上記性別の判定結果に応じて上記領域の位置、形成、大きさ、数のうちの少なくとも一つを変更して上記領域を定義することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
上記領域の位置、形成、大きさ、数のうちの少なくとも一つに対する設定を所定の入力画面を介して受け付ける設定受付部を更に備え、
上記領域定義部は、上記設定の結果に応じて上記領域を定義することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
入力した画像データに含まれる人物を構成する特定要素を検出する検出機能と、
上記検出された特定要素の位置に基づき、メタリックインクで表現するための領域を定義する領域定義機能と、
上記領域にメタリックインクを用いているように上記画像データを出力データに変換する変換機能と、をコンピューターに実行させることを特徴とする画像形成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−50858(P2013−50858A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188621(P2011−188621)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】