説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】シリコーンオイルを含むキャリア液を使用する画像形成装置内で、揮発した揮発成分を回収し、同時にコロナ帯電部の換気を行う。
【解決手段】潜像が形成される潜像担持体と、ワイヤー及び該ワイヤーを覆うケーシングを有して該潜像担持体を帯電させるコロナ帯電部と、該コロナ帯電部で帯電された該潜像担持体を露光して該潜像を形成する露光部と、シリコーンオイルを含むキャリア液及びトナーを有する液体現像剤で現像する現像部と、該現像部、該潜像担持体、該帯電器を収容するケーシングと、該ケーシング内に配設されて電圧が印加されて放電して該ケーシング内で揮発したキャリア液の揮発成分を回収する回収部と、該ケーシング内に配設され、該ケーシング内で吸気する気流ファンを有して該回収部で該キャリア液の揮発成分が回収された気流を吸引する気流発生部と、該気流発生部で吸引された気流を該コロナ帯電部に移動させる気流経路とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア液及びトナーを有する液体現像剤によって現像し、現像された像を記録媒体に転写し、定着することで画像形成する画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体溶媒中に固体成分からなるトナーを分散させた高粘度の液体現像剤を用いて潜像を現像し、静電潜像を可視化する湿式画像形成装置が種々提案されている。この湿式画像形成装置に用いられる現像剤は、シリコーンオイルや鉱物油、食用油等からなる電気絶縁性を有し高粘度のキャリア液中に固形分(トナー粒子)を懸濁させたものであり、このトナー粒子は、粒子径が1μm前後と極めて微細である。このような微細なトナー粒子を使用することにより、湿式画像形成装置では、粒子径が7μm程度の粉体トナー粒子を使用する乾式画像形成装置に比べて高画質化が可能である。
【0003】
液体現像剤を用いた画像形成装置では、キャリア液中に揮発成分を含む場合があり、この揮発成分が機内雰囲気中で揮発し、揮発成分により帯電器が汚れ、画像不良が生じる場合がある。
【0004】
特許文献1は、キャリア液として揮発性の溶媒を使用した例であるが、定着部などで発生したキャリア液蒸気を回収し、回収キャリア液の再利用を図る湿式画像形成装置が開示されている。また、特許文献2には、帯電器の汚れへの対策として放電電極での集塵効果を利用した粉塵捕獲用放電部を設け、乾式トナーの未転写分など機内に浮遊する固形分を捕捉する帯電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−166721号公報
【特許文献2】特開2002−132018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液体現像剤のキャリア液としてシリコーンオイルを用いる場合、シリコーンオイルは揮発成分が少ない溶媒であり、揮発性のキャリア液を用いた場合と異なり大型の揮発成分の処理装置が省略できる。そのため画像形成装置として小型化が図ることが可能となる。しかしながらシリコーンオイルをキャリア液として用いた場合でも、画像形成装置の各プロセス部材に薄い液体現像剤の液膜が塗布され、暴露される表面積が大きくなると、少量の揮発成分が装置内に揮発する。この揮発成分(主に低分子シロキサン)が感光体の帯電器や現像器に配設されるトナー帯電に用いられているコロナ放電器(以下「コロナ帯電部」という)内の高電界領域(放電電極近傍)に曝されると、固体であるシリカ(SiO2)に分解され、これが放電電極表面に付着、堆積してコロナ放電の放電性を悪化させる。このコロナ放電の放電性の悪化により画像不良が生じる。
【0007】
特許文献1に開示される方法を用いて揮発成分の回収を行うことは可能であるが、揮発成分は少量であるのに対し、前述したように回収装置は、冷却装置や分離装置など複雑な装置構成でサイズは非常に大きくなり、かつ高価であり、さらに消費電力も大きく、経済的ではない。
【0008】
特許文献2に開示される粉塵捕獲用放電部は、コロナ帯電器のシールドケースに設けられた通気部に対向して配置した構成である。この場合、通気部を通る気流を制御していないため、放電によって帯電される塵や埃は捕集できるが、絶縁性のシリコーンオイルの揮発成分を捕集することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、潜像が形成される潜像担持体と、
ワイヤー及び前記ワイヤーを覆うケーシングを有し、前記潜像担持体を帯電させるコロナ帯電部と、
前記コロナ帯電部で帯電された前記潜像担持体を露光して前記潜像を形成する露光部と、
シリコーンオイルを含むキャリア液及びトナーを有する液体現像剤で現像する現像部と、
前記現像部、前記潜像担持体、前記帯電器を収容するケーシングと、
前記ケーシング内に配設され、電圧が印加されて放電して前記ケーシング内で揮発したキャリア液の揮発成分を回収する回収部と、
前記ケーシング内に配設され、前記ケーシング内で吸気する気流ファンを有し、前記回収部で前記キャリア液の揮発成分が回収された気流を吸引する気流発生部と、
前記気流発生部で吸引された気流を前記コロナ帯電部に移動させる気流経路と、
を備えることを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明に係る画像形成装置において、前記回収部は、電圧が印加されて放電する放電電極と、
前記放電電極に当接して摺動し、前記放電電極を清掃する清掃部材を有することとしている。
【0011】
さらに、本発明に係る画像形成装置において、前記回収部に気流を流入させる気流ダクトを有することとしている。
【0012】
さらに、本発明に係る画像形成装置において、前記コロナ帯電部の前記ケーシングは、気流を通過させる通気口を有し、
前記気流経路を移動する気流は前記通気口を通して前記ワイヤーに吹き付けられることとしている。
【0013】
さらに、本発明に係る画像形成装置において、前記現像部は、前記潜像担持体と当接して前記潜像を現像する現像剤担持体、前記現像剤担持体に液体現像剤を供給する供給部材、及び前記現像剤担持体と対向して前記供給部材で前記現像剤担持体に供給された液体現像剤をコロナ帯電するトナー帯電部を有することとしている。
【0014】
また、本発明に係る画像形成方法は、ワイヤー及びケーシングを有するコロナ帯電器で帯電された潜像担持体に形成された潜像を、シリコーンオイルを含むキャリア液及びトナーを有する液体現像剤で現像するとともに、ケーシング内に配設された気流ファンで吸引し、
前記気流ファンで吸引された気流に放電してケーシング内で揮発したキャリア液の揮発成分を回収し、
前記キャリア液の揮発成分が回収された気流を前記コロナ帯電部に移動させて前記コロナ帯電部に吹き付けることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の画像形成装置の構成によれば、シリコーンオイルの揮発成分を簡易な構成で回収することができる。またコロナ帯電器への揮発成分の付着を抑えることが可能となり、画像不良を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態に係る吸気ダクト93の構成と気流方向を示す図。
【図3】本発明の実施形態に係る回収部の構成を示す図。
【図4】本発明の実施形態に係る各種電極構成、並びに、清掃部材を示す図。
【図5】コロナ帯電部、回収用放電部の印加電圧と放電量の関係を示す図。
【図6】コロナ帯電部、回収用放電部の構成を比較する図。
【図7】本発明によるコロナ放電量の劣化抑制効果を示す図。
【図8】本発明の他の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態の画像形成装置で用いられる液体現像剤は、シリコーンオイルを含むキャリア液中に、顕像化粒子であるトナーを分散したものが使用される。この液体現像剤の粘度及び濃度は、例えば粘度が20〜500mm2/s(cSt)、トナー濃度が5%から40%で構成される。また、トナーはエポキシ樹脂あるいはポリエステル樹脂中に顔料を分散したものを主成分とし、粒径は、例えばサブミクロンから5μm程度のものが用いられる。
【0018】
この液体現像剤のキャリア液であるシリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイルなどの直鎖型、もしくは側鎖型や両末端型などの変性シリコーンオイルを使用し、その粘度は、次の理由から20〜200mm2/s(cSt)が好適である。すなわち、粘度が20mm2/s(cSt)以下の場合は、液体現像剤を貯留する容器の封止等が困難となり、取扱いが困難となり、また、粘度が200mm2/s(cSt)以上の場合は、現像剤トナーの電気泳動速度が低下し、トナーの移動が現像速度に追従できず、現像効率が低下してしまう。
【0019】
粘度20〜200mm2/s(cSt)のシリコーンオイルは、開放容器に入れ放置しても揮発しないが、画像形成時または停止時とも、各プロセスのローラー類に塗布されるため、画像形成装置の機内雰囲気に接する表面積は非常に大きくなるとともに、さらに駆動モーター等や定着器などの発熱により機内温度が上昇すると、シリコーンキャリア成分に含有している揮発成分である低分子シロキサンがわずかに揮発することがわかっている。
【0020】
揮発した低分子シロキサンは、感光体を帯電させるコロナ帯電部に流入すると、コロナ帯電部内の放電電極近傍の高電界部にて、シリコーンオイルから揮発した低分子シロキサンがさらにシリカに分解し、これが放電電極表面に付着することで帯電用コロナ放電器の放電性が著しく損なわれることになる。
【0021】
本実施形態では、機内換気用の排気ファン近傍に、画像形成装置の機内にて発生した低分子シロキサンを回収する回収部を設けたことを特徴としている。図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置における各画像形成ユニットの構成を示す図である。
【0022】
図1に示すように画像形成のための主要構成は、ケーシング91内に配設されている。なお、ここでは低分子シロキサンの主要発生原因である画像形成ユニットについて説明することとし、2次転写部、定着部、記録材搬送部などの構成は省略する。
【0023】
本実施形態の画像形成装置は、転写ベルト40と、感光体10(本発明でいう「潜像担持体」)に対応して配設され、感光体10上に形成された潜像を液体現像剤で現像する現像部と、現像部に液体現像剤を供給する現像剤供給部を含んで構成されている。
【0024】
現像部は、液体現像剤により感光体10上に形成された潜像を現像する装置であって、現像ローラー20と、中間ローラー32と、アニロックスローラー33と、液体現像剤を貯蔵する液体現像剤容器31、現像ローラー20上のトナーを帯電させる帯電器としてのトナー用コロナ帯電部22を主な構成要素としている。
【0025】
現像ローラー20の外周には、クリーニングブレード21、中間ローラー32、トナー用コロナ帯電部22が配されている。中間ローラー32は、その表面を現像ローラー20とアニロックスローラー33に当接させており、その外周には中間ローラークリーニングブレード34が配設されている。
【0026】
アニロックスローラー33には、現像剤貯留部311から汲み上げた液体現像剤の量を規制する規制部材35が当接している。なお、本実施形態の現像部のように中間ローラー32を用いた3ローラー方式では、中間ローラー32がアニロックスローラー33に当接することで液体現像剤の量を調整することが可能であるため、この規制部材35を配設しない構成とすることも可能である。
【0027】
アニロックスローラー33は、中間ローラー32に対して液体現像剤を供給し、塗布する塗布ローラーとして機能する。このアニロックスローラー33は、円筒状の部材であり、表面に現像剤を担持し易いように表面に微細且つ一様に螺旋状に彫刻された溝による凹凸面が形成されたローラーである。このアニロックスローラー33により、現像剤容器31から現像ローラー20へと液体現像剤が供給される。装置動作時においては、図に示すようにアニロックスローラー33は時計回りに回転して、中間ローラー32に液体現像剤を塗布する。
【0028】
規制部材35は、厚さ200μm程度の金属ブレードであり、アニロックスローラー33の表面に当設し、アニロックスローラー33によって坦持搬送されてきた液体現像剤の膜厚、量を規制し、現像ローラー20に供給する液体現像剤の量を調整する。
【0029】
中間ローラー32は、円筒状の部材であり、回転軸を中心に図に示すように、現像ローラー20と同様、反時計回りに回転し、現像ローラー20に対しカウンター当接する。中間ローラー32は現像ローラー20と同様に、金属製の内心の外周部に弾性層を設けて構成される。
【0030】
中間ローラー32と現像ローラー20との当接位置下流には、中間ローラークリーニングブレード34が当接して配設され、現像ローラー20に供給されなかった液体現像剤を掻き取って現像剤容器31内の回収液貯留部312に回収する。
【0031】
現像ローラー20は、円筒状の部材であり、回転軸を中心に図に示すように反時計回りに回転する。現像ローラー20は鉄等金属製の内芯の外周部に、ポリウレタンゴム、シリコンゴム、NBR、PFAチューブなどの弾性層を設けたものである。
【0032】
現像ローラークリーニングブレード21は、現像ローラー20の表面に当接するゴム等で構成され、現像ローラー20が感光体10と当接する現像ニップ部より現像ローラー20の回転方向の下流側に配設され、現像ローラー20に残存する液体現像剤を掻き落として除去する。現像残りの現像剤は、現像ローラークリーニングブレード21によって掻き落として除去され現像剤容器31内の回収液貯留部312に滴下して再利用される。
【0033】
トナー用コロナ帯電部22は、現像ローラー20の表面に塗布された液体現像剤中のトナーを帯電させる電界印加手段である。トナー用コロナ帯電部22は、電圧が印加されるワイヤーとワイヤーを覆うシールドケースとを備えており、シールドケースにはワイヤーに吹き付ける気流を流入させる通気口が設けられている。現像ローラー20によって搬送される液体現像剤は、このトナー用コロナ帯電部22と近接する位置でコロナ放電による電界が印加され帯電される。
【0034】
感光体10の周辺には、感光体10の外周の回転方向に沿って順に配設された感光体用コロナ帯電部11、露光ユニット12、感光体スクイーズユニット、1次転写部50、感光体クリーニングブレード17などによって構成される。そして感光体10の外周上、露光ユニット12と第1スクイーズローラー13との間において現像部30の現像ローラー20と当接する。
【0035】
感光体10は、外周面にアモルファスシリコン感光体などの感光層が形成された円筒状の部材からなる感光体ドラムであり、図1では時計回りの方向に回転する。
【0036】
感光体用コロナ帯電部11は、感光体10と現像ローラー20とのニップ部より感光体10の回転方向の上流側に配置される。感光体用コロナ帯電部は、ワイヤーとワイヤーを覆うシールドケースとを備え図示しない電源装置から電圧がワイヤーに印加され、感光体10をコロナ帯電させる。シールドケースにはワイヤーに吹き付ける気流を流入させる通気口が設けられている。露光ユニット12は、コロナ帯電部11より感光体10の回転方向の下流側において、感光体用コロナ帯電部11によって帯電された感光体10上に光を照射し、感光体10上に潜像を形成する。
【0037】
1次転写部50の上流側に配置される感光体スクイーズユニットは、感光体10に対向して現像ローラー20の下流側に配置されている。この感光体スクイーズユニットは、感光体10に摺接して回転する弾性ローラー部材からなる第1感光体スクイーズローラー13、第2感光体スクイーズローラー13’、感光体スクイーズローラークリーニングブレード14、14’にて構成され、感光体10上に現像されたトナー像から余剰なキャリア液及び本来不要なカブリトナーを回収し、顕像(トナー像)内のトナー粒子比率を上げる機能を有する。なお、感光体スクイーズローラー13、13’には、カブリトナーを感光体スクイーズローラー13、13’側に誘引するためバイアス電圧が印加されている。
【0038】
感光体スクイーズローラークリーニングブレード14、14’は、各感光体スクイーズローラー13、13’に当接して設けられ、回収されたキャリア液やカブリトナーを含んだ液体現像剤を掻き落として、現像剤容器31内の回収液貯留部312に滴下する。
【0039】
上記の第1感光体スクイーズローラー13、第2感光体スクイーズローラー13’からなるスクイーズユニットを経た感光体10表面に担持されたトナー像は、1次転写部50に進入する。この1次転写部50では、感光体10に現像されたトナー像を1次転写バックアップローラー51により転写ベルト40へ転写する。この1次転写部50では1次転写バックアップローラー51に印加される転写バイアスの作用によって、感光体10上のトナー像は転写ベルト40側に転写される。ここで、感光体10と転写ベルト40は等速度で同じ方向に移動する構成であり、回転及び移動の駆動負荷を軽減するとともに、トナー像への外乱作用を抑制している。
【0040】
1次転写部50の下流側において、感光体10と当接している感光体クリーニングブレード17は、感光体10上のキャリア成分リッチな液体現像剤をクリーニングする。クリーニングされた液体現像剤は、回収貯留部18に一旦貯留され、移送経路715にて濃度調整タンク71に回収される。
【0041】
転写ベルト40(転写部材)は、ポリイミド基層上にポリウレタンの弾性中間層を設け、さらにその上にPFA表層が設けられている三層構造となっている。この転写ベルト40は、図示しないベルト駆動ローラー、テンションローラーにて張架され、PFA表層側においてトナー像が転写されるようにして用いられる。本実施形態の画像形成装置では、転写させるための部材として、転写ベルト40を用いているが、ベルトに限らず、ローラー、ドラムなど各種の転写部材を採用することも可能である。
【0042】
感光体10と転写ベルト40を挟んで1次転写バックアップローラー51が対向配置することで形成される1次転写部50では、感光体10との当接位置を転写位置として、現像された感光体10上のトナー像を転写ベルト40上に転写してトナー像を担持する。本実施形態では、1つの感光体を用いた単色構成としているが、複数の感光体を各色の液体現像剤毎に設け、転写ベルト40に対して複数色のトナー像を重ねることでカラーの画像形成装置としても構成することができる。
【0043】
転写ベルト40に転写されたトナー像は、図示しない2次転写部にて用紙、フィルム、布などの各種記録材に転写され、定着部にて記録材上に転写された単色、あるいは、カラーのトナー像は熱や圧力を加えて定着される。
【0044】
現像剤貯留部311には、現像剤供給部にて濃度調整された液体現像剤が供給される。本実施形態における現像剤供給部は、主な構成として、濃度調整タンク71、濃度調整タンク71で調整されるトナー濃度より高いトナー濃度の液体現像剤を貯留する高濃度現像剤タンク72、キャリア液を貯留するキャリア液タンク73、回収液貯留部312と濃度調整タンク71を接続する移送経路711、濃度調整タンク71と現像剤貯留部311を接続する移送経路712などで構成される。
【0045】
濃度調整タンク71は、内部に液体現像剤を貯留するとともに、その濃度調整を行うための供給現像剤貯留部710(貯留槽)が形成されている。この供給現像剤貯留部710には、高濃度現像剤タンク72(トナー貯留部)から移送経路713を介して高濃度液体現像剤を、また、キャリア液タンク73(キャリア液貯留部)から移送経路714を介してキャリア液を供給することが可能となっている。各移送経路713、714における高濃度液体現像剤、キャリア液は、図に示すように各移送経路中に設けたポンプ75、76にて搬送することとしてもよいし、バルブを開閉することで自重により供給することとしてもよい。
【0046】
供給現像剤貯留部内に710は、液体現像剤の濃度を検知するための濃度センサー、液量を検知するための液位センサー、貯留する液体現像剤を攪拌するための攪拌部材(何れも図示せず)が配設される。濃度センサー、液位センサーの出力に基づいてポンプ75、76を駆動し、攪拌部材にて攪拌することで、供給現像剤貯留部710に貯留する液体現像剤の濃度(トナー濃度25%)、液量を一定の値に調整することが可能となっている。
【0047】
本実施形態の液体現像剤のキャリア液にシリコーンオイルを使用する画像形成装置では、各種ローラーに対する液体現像剤の塗布、また、機内温度の上昇などを理由としてシリコーンオイルの揮発成分が揮発する。さらに、その揮発成分(低分子シロキサン)が感光体用コロナ帯電部11(特に放電電極近傍)に曝されると、固体であるシリカに分解され、感光体用コロナ帯電部11の電極に付着し、その結果放電量低下による帯電不足や付着が不均一になることによる帯電ムラを引き起こす。さらに機内の低分子シロキサンは機内の駆動用モーターなどの他の電気接点部でもシリカに分解付着し、動作不良の原因となる。
【0048】
したがって、機内雰囲気中の低分子シロキサンの機内濃度を低減する必要があるため、本発明では装置内の低分子シロキサンを吸気して回収する気流ファンを配置し、この気流ファンの上流に感光体用コロナ帯電部11とは独立分離している回収部80を配設し、低分子シロキサンを回収することとしている。
【0049】
本実施形態の回収部80は、吸気する気流ファン92(本発明でいう「気流発生部」)にて発生させる気流の上流側に配置されている。気流ファン92に対するシリカ付着を防ぐことで、気流ファン92の機能不良、寿命低下を避けることが可能となる。また、回収部80は、感光体10を帯電させる感光体用コロナ帯電部11とは離間した位置に配設される。気流ファンでケーシング91内で気流を発生させることで、気流ファンの上流に配置した回収部でシロキサンを回収部に移動させて回収することができ、感光体用コロナ帯電部11への流入を抑制し、感光体用コロナ帯電部11の帯電性能の維持を図ることが可能となる。さらに、回収部80に設けられた清掃機構を動作させたときに舞い上がったシリカが、感光体用コロナ帯電部11の放電電極に付着することを防止することが可能となる。
【0050】
さらに回収部80通過後のシロキサン成分回収済の清浄な気流を感光体用コロナ帯電部11近傍に向かう吸気ダクト93へ導入することで、コロナ帯電部へのシロキサンの流入をより確実に遮断することが可能となり、また、感光体用コロナ帯電部11へケーシング91から外気導入するのに比較して、気流ファン92のみでシロキサン回収と感光体用コロナ帯電部への吹き付け気流を同時に生成することができ、気流装置の簡略化、小型化が可能となる。
【0051】
また、気流ファン92は気流経路に覆われ、ケーシング91の外面に露出していないため、気流ファン92の動作による騒音を低減できる。なお、気流ファン92は、図1のような回収部80下流側直下でなくとも回収部80の下流側で感光体用コロナ帯電部11より手前に位置していれば、任意の位置で良い。
【0052】
次に、図2および図1を参照して吸気ダクト93の構成と気流方向を説明する。図2は、本発明の実施形態に係る吸気ダクト93の構成と気流方向を示す図である。気流ファン92によって、回収部80でシロキサンが回収された気流が吸入口931に導入され、さらに感光体用コロナ帯電部11へ向かっている。感光体用コロナ帯電部11に向かった気流は、感光体コロナ帯電部のシールドケース112に設けられた通気口113を通ってワイヤー111に吹きつけられる。
【0053】
図3は、本発明の実施形態に係る回収部80の構成を示す図である。本実施形態の回収部80は、ケーシング91内で気流を発生させる気流ファン92よりも気流の流れにおいて上流側に配設される。また、その主な構成として放電電極81と対向電極82を有する回収用放電部83を備えている。
【0054】
さらに本実施形態では、放電電極に付着したシリカを除去するための清掃機構(本発明でいう「清掃部」)が設けられている。この清掃機構は、スポンジ状、繊維状、固形状、ブラシ状に形成された清掃部材84、そして、この清掃部材84を移動させる移動部材を含んで構成される。回収用放電部83の動作時、すなわち、放電電極81に対するバイアス印加時において、この清掃部材84は放電電極81に対して離間した状態とされている。清掃時には、移動部材によりこの清掃部材84が放電電極81に対して当接するとともに、摺動動作することで放電電極81に付着したシリカを除去する。除去されたシリカは、回収容器85内に収容される。この放電電極81の清掃は、例えば、所定時間経過する毎に実行される。
【0055】
また、清掃部材84の材料に放電電極81よりも硬い材料を用い、放電電極81を清掃部材84で研磨することとしてもよい。感光体10を帯電させるコロナ帯電部11では、その放電電極が摩耗すると放電特性が変化して帯電ムラとなり画質への悪影響を及ぼすこととなるが、回収用放電部83では、放電電極81が磨耗しても、放電の均一性は感光体用コロナ帯電部11ほど要求されないので特に問題はない。
【0056】
図4は、本発明の実施形態に係る各種電極構成、並びに、清掃部材を示す図である。図3では断面図が示されていたのに対して、放電電極81、清掃部材84の側面図を示したものとなっている。
【0057】
図4(a)は、図3に示した実施形態のものであり、放電電極81は先端が鋭利な針状の放電電極81を複数備えたものとなっている。この放電電極81と対向電極82の間に電圧を印加することで、放電電極81の先端部にシリカが付着する。清掃時には、清掃部材84が各放電電極81の先端付近に当接し、図に示す移動方向に摺動することで先端部に付着したシリカが除去される。なお、(a)〜(c)に示す各実施形態において、清掃部材84は、放電電極81の裏面にのみ当接するようになっているが、放電電極81を挟み込むように清掃部材84を設けることで、清掃効果が高められる。
【0058】
図4(b)は、放電電極81にワイヤーを使用したタイプのものであり、また、図4(c)は、放電電極81に鋸刃形状のものを使用したものである。各実施形態において稼働時には、それぞれの放電電極81に電圧が印加される。このように「針状」、「ワイヤー状」、「鋸刃状」のみならず、鋭利な形状であれば、適宜形状の放電電極81を採用することができる。
【0059】
図5は、コロナ帯電部、回収用放電部の印加電圧と放電量の関係を示す図であり、図6は、コロナ帯電部11の構成と、回収用放電部83の構成を示す図である。図6(a)の感光体用コロナ帯電部11が被帯電物としての感光体10への帯電を目的としているのに対し、図6(b)の回収用放電部83は、被帯電物への帯電を目的としていないため、できるだけ放電量を大きくする設計が可能である。そのため、図5のグラフに示されるよう放電量を確保するための印加電圧を、感光体用コロナ帯電部11のものよりも抑えることが可能となる。したがって、図6に示されるように小型化を図ることができる。また、放電の均一性についても感光体用コロナ帯電部11よりも必要とされないため、簡素で安価な構成を採用することが可能となる。
【0060】
図7は、本発明によるコロナ放電量の劣化抑制効果を示す図である。キャリア液には信越化学製のジメチルシリコーンオイルKF−96でその粘度を50cSと20cSの2種類にて評価を行った。図7のグラフに示されるように本発明のような気流構成がない場合は、短時間で感光体用コロナ帯電部の電極に多量のシリカが堆積し、著しく放電量が低下してしまう。この場合、感光体用コロナ放電器の印加電圧の制御範囲で所要の感光体帯電電位が得られず、カブリと呼ばれる画像不良を引き起こす。一方、本発明の構成とした場合、感光体用コロナ帯電部電極には、ほとんどシリカは付着せず、放電量の低下も微小にすることができる。
【0061】
図8は、本発明の他の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。本実施形態では、回収部80の上流側にケーシング91に対して感光体用コロナ帯電部11近傍まで気流ダクトを設けた構成となっている。シロキサンによる感光体用コロナ帯電部11への劣化影響はケーシング91内の他の電気接点部に対する影響よりも非常に大きいので、感光体用コロナ帯電部をより重点的に換気する構成とすることができ、コロナ帯電器の放電量低下による画像劣化を抑えることができる。
【0062】
なお、本明細書においては、感光体用コロナ帯電部を実施の形態として説明したが、例えば現像部に設けられたトナー帯電用コロナ帯電部でも適用できる。また、それぞれの実施の形態の構成を適宜組み合わせて構成された実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0063】
10…感光体(潜像担持体)、11…感光体用コロナ帯電部、111…ワイヤー、112…シールドケース、113…通気口、12…露光ユニット、13…第1スクイーズローラー、13’…第2スクイーズローラー、14…第1スクイーズローラークリーニングブレード、14’…第2スクイーズローラークリーニングブレード、17…感光体クリーニングブレード、18…回収貯留部、20…現像ローラー(現像剤担持体)、21…現像ローラークリーニングブレード、22…トナー用コロナ帯電部、30…現像部、31…現像剤容器、311…現像剤貯留部、312…回収液貯留部、313…仕切板、32…中間ローラー、33…アニロクスローラー、34…中間ローラークリーニングブレード、35…規制部材、36…攪拌オーガ、37…回収オーガ、40…転写ベルト、51…1次転写バックアップローラー、71…濃度調整タンク、72…高濃度現像剤タンク、73…キャリア液タンク、74〜76…ポンプ、710…供給現像剤貯留部、711〜715…移送経路、80…回収部、81…放電電極、82…対向電極、83…回収用放電部、84…清掃部材、85…回収容器、91…ケーシング、92…気流ファン、93…吸気ダクト、931…吸気口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像が形成される潜像担持体と、
ワイヤー及び前記ワイヤーを覆うケーシングを有し、前記潜像担持体を帯電させるコロナ帯電部と、
前記コロナ帯電部で帯電された前記潜像担持体を露光して前記潜像を形成する露光部と、
シリコーンオイルを含むキャリア液及びトナーを有する液体現像剤で現像する現像部と、
前記現像部、前記潜像担持体、前記帯電器を収容するケーシングと、
前記ケーシング内に配設され、電圧が印加されて放電して前記ケーシング内で揮発したキャリア液の揮発成分を回収する回収部と、
前記ケーシング内に配設され、前記ケーシング内で吸気する気流ファンを有し、前記回収部で前記キャリア液の揮発成分が回収された気流を吸引する気流発生部と、
前記気流発生部で吸引された気流を前記コロナ帯電部に移動させる気流経路と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記回収部は、電圧が印加されて放電する放電電極と、
前記放電電極に当接して摺動し、前記放電電極を清掃する清掃部材を有する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記回収部に気流を流入させる気流ダクトを有する請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記コロナ帯電部の前記ケーシングは、気流を通過させる通気口を有し、
前記気流経路を移動する気流は前記通気口を通して前記ワイヤーに吹き付けられる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像部は、前記潜像担持体と当接して前記潜像を現像する現像剤担持体、前記現像剤担持体に液体現像剤を供給する供給部材、及び前記現像剤担持体と対向して前記供給部材で前記現像剤担持体に供給された液体現像剤をコロナ帯電するトナー帯電部を有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
ワイヤー及びケーシングを有するコロナ帯電器で帯電された潜像担持体に形成された潜像を、シリコーンオイルを含むキャリア液及びトナーを有する液体現像剤で現像するとともに、ケーシング内に配設された気流ファンで吸引し、
前記気流ファンで吸引された気流に放電してケーシング内で揮発したキャリア液の揮発成分を回収し、
前記キャリア液の揮発成分が回収された気流を前記コロナ帯電部に移動させて前記コロナ帯電部に吹き付けることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−220601(P2012−220601A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84255(P2011−84255)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】