説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】細線の視認性の向上。
【解決手段】選択したドットデータに関連づけられたフラグについて判定する(ステップS230)。増加フラグ=FALSE、削減フラグ=FALSEが選択したドットデータに関連づけられている場合(ステップS230、増加フラグ=削減フラグ=FALSE)、通常用LUTを用いてドットデータの色変換をする(ステップS240)。増加フラグ=FALSE、削減フラグ=TRUEが選択したドットデータに関連づけられている場合(ステップS230、増加フラグ=FALSE、削減フラグ=TRUE)、削減用LUTを用いてドットデータの色変換をする(ステップS250)。増加フラグ=TRUE、削減フラグ=FALSEが選択したドットデータに関連づけられている場合(ステップS230、増加フラグ=TRUE、削減フラグ=FALSE)、増加用LUTを用いてドットデータの色変換をする(ステップS260)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成をする装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷による細線の再現性を高めるために、細線であると判別されたドットデータについ
て、濃度を増加させる補正を行って印刷する技術が知られている。(例えば特許文献1)

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−287092号公報
【特許文献2】特開平9−62238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によると、再現性が向上したとしても、視認性は必ずしも向上せず、
場合によっては悪化することがあった。本発明は、印刷を含む画像形成において細線の視
認性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためにされたものであり、以下の形態
または適用例として実現することが可能である。
【0006】
適用例1:描画開始座標情報と、描画終了座標情報と、色情報と、太さ情報とを含む描画
要素データを画像形成用データに変換し、該画像形成用データを用いて画像形成をする画
像形成装置であって、
前記描画要素データから細線と該細線に隣接する隣接領域とを前記太さ情報によって抽
出する抽出部と、
前記隣接領域の前記色情報と前記細線の前記色情報とを特定の様相について比べた結果
が、前記細線の視認性が基準よりも悪いことを示している場合、前記画像形成用データに
変換する際に、該隣接領域の色を細線の視認性が向上するように補正する隣接領域補正部

を備えることを要旨とする。
この画像形成装置によれば、細線の視認性の向上をした方が望ましい場合に、細線を濃
くすることによらず、隣接領域の色を補正することによって細線の視認性を向上させるこ
とができる。ここで言う「様相」とは、色に関するパラメーターのことである。色に関す
るパラメーターとしては、例えば、明度、色相、彩度、輝度、反射率および濃度が挙げら
れる。「特定の様相」とは、これらパラメーターの少なくとも1つのことである。「色を
補正する」とは、上記様相を変化させることである。この変化させる様相は、隣接領域と
細線との比較に用いた様相に対して同じでも異なっていても良い。
【0007】
適用例2:適用例1に記載の画像形成装置であって、
前記特定の様相は、明度であり、
前記隣接領域補正部は、前記隣接領域の明度から、前記細線の明度を引いた差である明
度差が比較基準値未満の場合、前記明度差が拡大するように前記隣接領域の明度を補正す
ることを要旨とする。
この画像形成装置によれば、隣接領域との明度差が拡大するので、細線の視認性が向上
する。「明度差」は、正負の値を取り得る。「明度差を拡大する」とは、明度差の絶対値
を大きくすることである。
【0008】
適用例3:適用例2に記載の画像形成装置であって、
前記隣接領域補正部は、前記明度差が前記比較基準値未満の場合に、前記隣接領域の明
度が絶対基準値以上のときは、前記隣接領域の明度を前記色情報が示す明度よりも高くな
るように補正することを要旨とする。
この画像形成装置においては、前記隣接領域の明度が絶対基準値以上のとき、前記隣接
領域の明度を高くする補正をする。つまり、元々高い隣接領域の明度を更に高くなるよう
に補正する。このような補正は、変化が小さく見える。よって、この画像形成装置によれ
ば、細線の視認性を上げつつ、隣接領域の明度の補正による影響を小さく見せることがで
きる。
【0009】
適用例4:適用例2に記載の画像形成装置であって、
前記隣接領域補正部は、前記明度差が前記比較基準値未満の場合に、前記隣接領域の明
度が絶対基準値未満のときは、前記隣接領域の明度を前記色情報が示す明度よりも低くな
るように補正することを要旨とする。
この画像形成装置においては、前記隣接領域の明度が絶対基準値未満の場合、前記隣接
領域の明度を低くなるように補正する。つまり、元々低い隣接領域の明度を更に低くなる
ように補正する。このような補正は、変化が小さく見える。よって、この画像形成装置に
よれば、細線の視認性を上げながらも、隣接領域の明度の補正による影響を小さく見せる
ことができる。
【0010】
適用例5:適用例2から適用例4の何れか1つに記載の画像形成装置であって、
前記比較基準値は、正の値であり、
前記隣接領域補正部は、前記明度差が前記比較基準値以上の場合、前記隣接領域の明度
を前記色情報が示す明度よりも高くなるように補正することを要旨とする。
この画像形成装置によれば、隣接領域との明度差が拡大するので、細線の視認性が向上
する。
【0011】
適用例6:適用例2から適用例5の何れか1つに記載の画像形成装置であって、
前記隣接領域補正部は、前記明度差が、前記比較基準値よりも小さく且つ負の値である
第2比較基準値未満の場合、前記補正を行わないことを要旨とする。
「細線の視認性が基準よりも悪い場合」でない場合は、例えば、この画像形成装置のよ
うに規定することができる。
【0012】
適用例7:適用例1から適用例6の何れか1つに記載の画像形成装置であって、
前記細線の視認性が基準よりも悪いことを示している場合、前記細線の色を補正する細
線補正部
を備えることを要旨とする。
この画像形成装置によれば、隣接領域に加えて、細線の色も補正するので、細線の視認
性をより向上させることができる。細線用基準値は、比較基準値や第2比較基準値と同じ
でも異なっていても構わない。細線について補正する様相は、隣接領域について補正する
様相と同じでも異なっていても構わない。
【0013】
適用例8:描画開始座標情報と、描画終了座標情報と、色情報と、太さ情報とを含む描画
要素データを画像形成用データに変換し、該画像形成用データを用いて画像を形成する画
像形成方法であって、
前記描画要素データから細線と該細線に隣接する隣接領域とを前記太さ情報によって抽
出する抽出工程と、
前記隣接領域の前記色情報と前記細線の前記色情報とを特定の様相について比べた結果
が、前記細線の視認性が基準よりも悪いことを示している場合、前記画像形成用データに
変換する際に、該隣接領域の色を細線の視認性が向上するように補正する隣接領域補正工
程と
を備えることを要旨とする。
この画像形成方法によれば、適用例1の画像形成装置と同じ効果を得ることができる。
加えてこの画像形成方法によれば、例えば印刷物を生産できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】印刷装置10の概略構成図。
【図2】出力画像データ作成処理を示すフローチャート。
【図3】ラスタライズ処理を示すフローチャート。
【図4】細線及び隣接領域の明度並びに明度補正の関係を示したグラフ。
【図5】色変換処理を示すフローチャート。
【図6】削減用LUTと通常用LUTと増加用LUTとを比較したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.ハードウェア構成(図1):
図1は、印刷装置10の概略構成図である。印刷装置10は、カラーインクジェット式
であり、紙送りモーター74によって印刷媒体P(白地)を搬送する機構と、キャリッジ
モーター70によってキャリッジ80をプラテン75の軸方向に往復動させる機構と、キ
ャリッジ80に搭載された印刷ヘッド81を駆動してインクを吐出することによってドッ
ト形成を行う機構と、制御対象(紙送りモーター74、キャリッジモーター70及び印刷
ヘッド81)を制御する制御ユニット30と、コンピューターや記憶媒体(図示なし)か
ら入力画像データを取得すると共に制御ユニット30に供給する画像データ供給部91と
を備える。
【0016】
キャリッジ80は、カラーインク用のインクカートリッジ82〜85を搭載する。イン
クカートリッジ82はシアンインクCを、インクカートリッジ83はマゼンタインクMを
、インクカートリッジ84はイエローインクYを、インクカートリッジ85はブラックイ
ンクKを収容する。キャリッジ80の下部の印刷ヘッド81には、先述の各インクに対応
するノズル列が形成されている。キャリッジ80にインクカートリッジ82〜85を上方
から装着すると、インクカートリッジ82〜85から印刷ヘッド81へのインク供給が可
能となる。
【0017】
制御ユニット30は、CPU40と、ROM51と、RAM52と、EEPROM60
とを備える。CPU40は、ROM51に予め記憶された制御プログラムをRAM52に
展開すると共に実行することで、紙送りやキャリッジ80の往復動を制御すると共に、印
刷ヘッド81を駆動して、印刷媒体Pへのインク吐出を制御する。また、インク吐出用の
プログラム(ドライバー)は、各ノズルを制御するためのものである。
【0018】
画像データ供給部91が供給する入力画像データは、ベクターデータとしての描画要素
データの組み合わせによって構成されている。ベクターデータは、基本図形の何れかによ
って描画要素を表現するものである。基本図形には、折れ線(線分を含む)、多角形、楕
円(円を含む)、ベジエ曲線などがある。これら基本図形には、描画開始座標情報、描画
終了座標情報、色情報(RGB値)、太さ情報(線幅を示す数値:単位mm)が含まれる

【0019】
EEPROM60は、色変換LUT61を記憶している。色変換LUT61は、描画要
素データに含まれるRGB形式の色情報を、インクカートリッジ82〜85に収容された
インク(CMYK)それぞれのインク量を示すインク量セットに変換するためのテーブル
であり、描画要素の種類に応じて3種類用意されている(詳しくは後述)。
【0020】
2.出力画像データ作成処理(図2):
図2は、出力画像データ作成処理を示すフローチャートである。出力画像データ作成処
理は、入力画像データから出力画像データを作成するためにCPU40が主体となって実
行する処理であり、画像データ供給部91から制御ユニット30に入力画像データが供給
されたことを契機に実行される処理である。出力画像データ作成処理を開始すると、ラス
タライズ処理を実行する(ステップS100)。
【0021】
2−1.ラスタライズ処理(図3):
図3は、ラスタライズ処理を示すフローチャートである。まず、供給された入力画像デ
ータを構成する描画要素データのうち、ラスタライズしていないものを1つ選択する(ス
テップS110)。なお、描画開始座標が上に配置されたベクターデータから順に選択す
る。上下の位置が同じ場合は、描画開始座標が左に配置されたベクターデータから順に選
択する。
【0022】
次に、選択した描画要素データをラスタライズして、つまり、ベクター形式からラスタ
ー形式に変換することによってドットデータを形成する(ステップS120)。続いて、
選択した描画要素データによって示される描画要素(以下「選択した描画要素」と略す。
)が、細線なのか、細線に接する隣接領域なのか、細線でも隣接領域でもないその他領域
なのかを判定する(ステップS130)。この判定は、選択した描画要素データと、この
選択した描画要素データに隣接する描画要素データに含まれる太さ情報とに基づいて行う
。この「隣接する」とは、ベクターデータによって描画した場合に、境界線の少なくとも
一部を共有することである。
【0023】
2−1−1.隣接領域:
選択した描画要素が隣接領域の場合(ステップS130,隣接領域)、その隣接領域に
接する細線との明度差を判定する(ステップS145)。ここで言う明度は、マンセル表
色系によって定義される明度のことである。以下、細線の明度をX、隣接領域の明度をY
とも表記する。X−Y≧4の場合(ステップS145,X−Y≧4)、明度を補正するこ
となく、ステップS170に進む。X−Y≧4の場合に明度を補正しない理由は、補正し
なくても細線の方が隣接領域よりも十分明度が高く、細線の視認性が良いからである。
【0024】
ステップS170に進むと、全要素をラスタライズしたかを判定する。ラスタライズし
ていない描画要素データがある場合(ステップS170,NO)、ステップS110に戻
る。
【0025】
図4は、細線および隣接領域の明度、並びに明度補正の関係を示したグラフである。つ
まり、細線の明度と隣接領域の明度とがいかなる関係にある場合に、どのような明度補正
をするかを示したグラフである。縦軸は隣接領域の明度、横軸は細線の明度である。上記
のX−Y≧4の場合は、図4の(A)領域に相当する。
【0026】
一方、Y−X≧4の場合(ステップS145,Y−X≧4)、選択した隣接領域に基づ
いて生成した各ドットデータに対して、削減フラグをTRUEにする(ステップS164
)。図4においては(B)領域に相当する。この削減フラグは、初期値がFALSEであ
り、TRUEに変更されると、ドット発生量を削減するための処理を、後のハーフトーン
処理(ステップS300)において実行することになる。ドット発生量を削減する目的は
、隣接領域の明度を上げるためである。先述したように印刷媒体Pが白地であるので、ド
ット発生量が少なくなればなるほど明度は上がる。明度を上げる目的は、細線との明度差
を拡大することによって、細線の視認性を向上させるためである。ステップS164の次
は、先述したステップS170に進む。
【0027】
一方、|X−Y|<4の場合(ステップS145,|X−Y|<4)、つまり、0≦X
−Y<4又は0≦Y−X<4の場合、隣接領域の明度が4以上かを判定する(ステップS
155)。隣接領域の明度が4以上の場合(ステップS155,YES)、ステップS1
64に進んで削減フラグをTRUEにする。図4においては(C)領域に相当する。
【0028】
一方、隣接領域の明度が4未満の場合(ステップS155,NO)、選択した隣接領域
に基づいて生成した各ドットデータに対して、増加フラグをTRUEにする(ステップS
166)。この増加フラグは、初期値がFALSEであり、TRUEに変更されると、隣
接領域の明度を下げることを目的としたドット発生量を増加させるための処理を、後のハ
ーフトーン処理(ステップS300)において実行することになる。図4においては(D
)領域に相当する。ステップS166の次は、先述したステップS170に進む。
【0029】
このように|X−Y|<4の場合、つまり細線と隣接領域との明度差が小さい場合、隣
接領域のドット発生量の増加又は削減の何れかを選択して実行する。このような処理を行
う目的は、何れの場合も細線との明度差を広げるためである。隣接領域の明度が4以上の
ときに明度を上げる方を選択する目的は、隣接領域の色があまり変化していないように見
せるためである。これは、高い明度の色を補正する場合、明度を下げる方よりも、明度を
更に上げる方が変化を知覚されにくいことを利用している。同様に、隣接領域の明度が4
未満のときに明度を下げる方を選択する目的は、低い明度の色を補正する場合、明度を更
に下げる方が変化を知覚されにくいことを利用して、隣接領域の色があまり変化していな
いように見せるためである。
【0030】
2−1−2.細線:
選択した描画要素が細線の場合(ステップS130,細線)、その細線に接する隣接領
域との明度差を判定する(ステップS140)。X−Y≧4の場合(ステップS140,
X−Y≧4)、明度を補正することなく、ステップS170に進む。図4においては(A
)領域に相当する。このようにX−Y≧4の場合に明度を補正しない理由は、既に述べた
ように、補正しなくても細線の視認性が良いからである。
【0031】
一方、Y−X≧4の場合(ステップS140,Y−X≧4)、選択した細線に基づいて
生成した各ドットデータに対して、増加フラグをTRUEにする(ステップS162)。
図4においては(B)領域に相当する。増加フラグをTRUEにすることによってドット
発生量を増加させる目的は、細線の明度を下げるためである。細線の明度を下げる目的は
、隣接領域との明度差を拡大することによって、細線の視認性を向上させるためである。
ステップS162の次は、先述したステップS170に進む。
【0032】
一方、|X−Y|<4の場合(ステップS140,|X−Y|<4)、隣接領域の明度
が4以上かを判定する(ステップS150)。隣接領域の明度が4以上の場合(ステップ
S150,YES)、ステップS162に進んで増加フラグをTRUEにする。図4にお
いては(C)領域に相当する。
【0033】
一方、隣接領域の明度が4未満の場合(ステップS150,NO)、選択した細線に基
づいて生成した各ドットデータに対して、削減フラグをTRUEにする(ステップS16
0)。図4においては(D)領域に相当する。
【0034】
このように|X−Y|<4の場合、隣接領域の明度が4以上のときは細線の明度を下げ
て、隣接領域の明度が4未満のときは細線の明度を上げる。つまり、細線については、明
度が元々高い場合に下げて、元々低い場合に上げることになる。これは、隣接領域の場合
と逆になり、隣接領域よりは色が変化しているように見えることになる。しかし、隣接領
域に比べると細線は細長く面積が狭い場合が多いので、この変化は知覚されにくいことが
多い。
【0035】
2−1−3.その他領域:
選択した描画要素がその他領域の場合(ステップS130,その他領域)、つまり細線
でも隣接領域でもない場合、細線の視認性に与える影響は小さいので、明度を補正するこ
となく、ステップS170に進む。ステップS170において全要素をラスタライズした
と判定した場合、ラスタライズ処理を終える。
【0036】
2−2.色変換処理(図5):
続いて、色変換処理を開始する(ステップS200)。図5は色変換処理を示すフロー
チャートである。ラスタライズ処理において形成されたドットデータのうち、色変換をし
ていないものを1つ選択する(ステップS210)。この選択の順序は、最も左上に配置
されたドットデータから始めて、右へ向かって進み、最も右に到達したら、1段下の最も
左のドットデータに移るという手順に従う。
【0037】
続いて、選択したドットデータに関連づけられたフラグについて判定する(ステップS
230)。増加フラグ=FALSE、削減フラグ=FALSEが関連づけられている場合
(ステップS230、増加フラグ=F、削減フラグ=F)、色変換LUT61の中の通常
用LUTを用いてドットデータの色変換(RGB→CMYK)をする(ステップS240
)。通常用LUTとは、色の再現性を重視した色変換LUTである。
【0038】
一方、増加フラグ=FALSE、削減フラグ=TRUEが関連づけられている場合(ス
テップS230、増加フラグ=F、削減フラグ=T)、色変換LUT61の中の削減用L
UTを用いてドットデータの色変換をする(ステップS250)。削減用LUTとは、C
MYKそれぞれのインク量を示す値が、通常用LUTに対して0.8倍である色変換LU
Tである。
【0039】
また、増加フラグ=TRUE、削減フラグ=FALSEが関連づけられている場合(ス
テップS230、増加フラグ=T、削減フラグ=F)、色変換LUT61の中の増加用L
UTを用いてドットデータの色変換をする(ステップS260)。増加用LUTとは、C
MYKそれぞれのインク量を示す値が、通常用LUTに対して1.2倍である色変換LU
Tである。
【0040】
図6は、或る色を印刷するためのインク量を、削減用LUTと通常用LUTと増加用L
UTとの場合で比較したグラフである。図6に示すように、3つのLUTによるインク量
は、先述した関係になっている。
【0041】
先述したステップS240〜ステップS260の何れかを実行した後は、ドットデータ
を全て色変換したかを判定する(ステップS270)。まだ変換していないドットデータ
がある場合(ステップS270、NO)、ステップS210に戻り、全ドットデータを色
変換するまで、ステップS210〜ステップS270を繰り返す。ドットデータを全て色
変換すると(ステップS270、YES)、色変換処理を終える。
【0042】
続いて、色変換したドットデータを用いて、ハーフトーン処理を行い(ステップS30
0)、出力画像データ作成処理を終える。ハーフトーン処理は、図2においてはサブルー
チンを有する処理として示したが、周知なので詳細は説明しない。このハーフトーン処理
を通じて出力されるデータ、つまり、出力画像データ作成処理の出力結果となるデータが
、出力画像データである。
【0043】
印刷装置10は、このように作成した出力画像データに基づいて、制御対象(紙送りモ
ーター74、キャリッジモーター70及び印刷ヘッド81)に指示をすることで印刷(画
像形成)を実行する。
【0044】
以上に説明したように印刷装置10は、細線の視認性が悪い場合に、細線と隣接領域と
の明度差を広げることによって、細線の視認性を向上させることができる。明度差を広げ
るためには、印刷装置10が実行するように、細線の明度を上げて隣接領域の明度を下げ
るか、或いは、細線の明度を下げて隣接領域の明度を上げるかの何れかが有効である。そ
の何れを選ぶかについて、印刷装置10は、隣接領域の色の変化を小さく見せることを重
視する。具体的には、隣接領域の明度が高い(実施形態においては4以上)場合は、細線
の明度を下げて隣接領域の明度を上げる方を選ぶ。その理由は、先述したように、明度が
高いものを更に高く変化させても、あまり変化していないように見えるからである。同様
の理由で、隣接領域の明度が低い(実施形態においては4未満)場合は、細線の明度を上
げて隣接領域の明度を下げる方を選ぶ。
【0045】
ところで、図4に示した(B)及び(C)領域は何れも、細線をドット増加(明度低下
)、隣接領域をドット削減(明度向上)に対応する。よって、(B)及び(C)領域の境
界線であるY=X+4は、ドットの増加/削減を区分するためには機能していない。Y=
X+4は、ラスタライズ処理(図3)に示したように「隣接領域が細線よりも一定程度明
度が高ければ(ステップS140(145)、Y−X≧4)、細線の明度を下げて隣接領
域の明度を上げる」及び「隣接領域と細線との明度差が小さければ(ステップS140(
145)、|X−Y|<4)、隣接領域の明度を用いて判定する」という技術的思想を具
体化するためのものである。印刷装置10においては、Y=X+4のY切片である4(適
用例における比較基準値に相当)と、(C)及び(D)領域を区分するために基準となる
明度4(適用例における絶対基準値に相当)とが偶々一致していることによって、Y=X
+4がドットの増加/削減を区分するために機能していないだけである。もし上記基準と
なる明度が4より大きければ、Y=X+4の一部が(B)及び(D)領域との境界線とな
り、ドットの増加/削減を区分する。
【0046】
3.実施形態と適用例との対応関係:
ステップS130が抽出部および抽出工程を、ステップS145、164、166、2
50及び260が隣接領域補正部および隣接領域補正工程を、ステップS145、160
、162、250及び260が細線補正部を各々実現するためのソフトウェアに対応する

【0047】
4.他の実施形態:
本発明は、先述した実施形態になんら限定されるものではなく、発明の技術的範囲内に
おける種々の形態により実施できる。例えば、実施形態の構成要素の中で付加的なものは
、実施形態から省略できる。ここで言う付加的な構成要素とは、実質的に独立している適
用例においては特定されていない事項に対応する要素のことである。また、例えば、以下
のような実施形態でも良い。
【0048】
実施形態においては、細線と隣接領域との明度差を3段階に分類することによって、細
線および隣接領域それぞれについて、明度を上げるか、下げるか、維持するかの3段階の
何れかから選択するが、このように3段階でなくても良い。例えば、細線と隣接領域との
明度差を4段階以上に分類して、元々の明度差が小さいほど、明度差を大きくする色変換
をしても良い。
【0049】
分類の基準となる様相は、明度のみに基づかなくても、細線の視認性に関係するものに
基づけば良い。明度、色相、彩度、輝度、反射率、濃度などの1つ以上、例えば、明度と
色相とを組み合わせた指標に基づくことが考えられる。同様に、変化させる様相も、明度
のみでなくても、細線の視認性に関係するものであれば良く、例えば、明度、色相、彩度
、輝度、反射率、濃度の1つ以上を変化させることが考えられる。分類の基準に用いる様
相および変化させる様相は、同じでも異なっていても良い。
【0050】
ユーザーの指示等に基づいて、複数の色変換LUTを用いるのを止める構成にしても良
い。例えば、高速印刷が求められる場合は、明度による分類を行わず、全描画要素を通常
用LUTによって色変換しても良い。
【0051】
細線と隣接領域との抽出は、ベクターデータではなく、ラスターデータに基づいて実行
しても良い。
増加用LUTと削減用LUTとを記憶しておかずに、通常用LUTから算出するように
しても良い。例えば、通常用LUTの値を定数倍しても良い。
【0052】
CMYKそれぞれの値は、同じ比率で変化させなくても良い。例えば、Kのみを違う比
率によって変化させても良い。Kは、他の色(CMY)に比べて明度が低い色なので、他
の色に比べて少ないドット発生率でも明度を下げるからである。CMYKそれぞれを異な
る比率によって変化させても良い。
【0053】
色変換LUTにおいてではなく、ハーフトーン処理においてドット発生率を変化させる
ようにしても良い。具体的な方法としては、例えば次のものが挙げられる。
・ディザ法を用いる場合は、例えば、異なる値を持つディザマトリックスを描画要素の明
度に応じて使い分けることによって、ドット発生率を調整しても良い。
・誤差拡散法を用いる場合は、例えば、描画要素の明度に応じて、拡散する誤差を補正す
ることによって、ドット発生率を調整しても良い。
【0054】
この他、以下の形態でも良い。
・プリンターは、モノクロ印刷用でも、レーザープリンターでも、サーマルプリンターで
も良い。
・ディスプレイでも、プロジェクターでも良い。
・ハーフトーン処理を用いなくても良い。例えば、二値化を用いても良い。
・インクのドットの大きさを制御することで、明度を調整しても良い。
・RIP(ラスターイメージプロセッサー)を用いて、細線の視認性を上げるための処理
(実施形態においては、出力画像データ作成処理)を実行しても良い。
【符号の説明】
【0055】
10…印刷装置
30…制御ユニット
40…CPU
51…ROM
52…RAM
60…EEPROM
61…色変換LUT
70…キャリッジモーター
74…紙送りモーター
75…プラテン
80…キャリッジ
81…印刷ヘッド
82〜85…インクカートリッジ
91…画像データ供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画開始座標情報と、描画終了座標情報と、色情報と、太さ情報とを含む描画要素デー
タを画像形成用データに変換し、該画像形成用データを用いて画像形成をする画像形成装
置であって、
前記描画要素データから細線と該細線に隣接する隣接領域とを前記太さ情報によって抽
出する抽出部と、
前記隣接領域の前記色情報と前記細線の前記色情報とを特定の様相について比べた結果
が、前記細線の視認性が基準よりも悪いことを示している場合、前記画像形成用データに
変換する際に、該隣接領域の色を細線の視認性が向上するように補正する隣接領域補正部

を備える画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記特定の様相は、明度であり、
前記隣接領域補正部は、前記隣接領域の明度から、前記細線の明度を引いた差である明
度差が比較基準値未満の場合、前記明度差が拡大するように前記隣接領域の明度を補正す
る画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記隣接領域補正部は、前記明度差が前記比較基準値未満の場合に、前記隣接領域の明
度が絶対基準値以上のときは、前記隣接領域の明度を前記色情報が示す明度よりも高くな
るように補正する画像形成装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記隣接領域補正部は、前記明度差が前記比較基準値未満の場合に、前記隣接領域の明
度が絶対基準値未満のときは、前記隣接領域の明度を前記色情報が示す明度よりも低くな
るように補正する画像形成装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4の何れか1つに記載の画像形成装置であって、
前記比較基準値は、正の値であり、
前記隣接領域補正部は、前記明度差が前記比較基準値以上の場合、前記隣接領域の明度
を前記色情報が示す明度よりも高くなるように補正する画像形成装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5の何れか1つに記載の画像形成装置であって、
前記隣接領域補正部は、前記明度差が、前記比較基準値よりも小さく且つ負の値である
第2比較基準値未満の場合、前記補正を行わない画像形成装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1つに記載の画像形成装置であって、
前記細線の視認性が基準よりも悪いことを示している場合、前記細線の色を補正する細
線補正部を備える画像形成装置。
【請求項8】
描画開始座標情報と、描画終了座標情報と、色情報と、太さ情報とを含む描画要素デー
タを画像形成用データに変換し、該画像形成用データを用いて画像を形成する画像形成方
法であって、
前記描画要素データから細線と該細線に隣接する隣接領域とを前記太さ情報によって抽
出する抽出工程と、
前記隣接領域の前記色情報と前記細線の前記色情報とを特定の様相について比べた結果
が、前記細線の視認性が基準よりも悪いことを示している場合、前記画像形成用データに
変換する際に、該隣接領域の色を細線の視認性が向上するように補正する隣接領域補正工
程と
を備える画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−66005(P2013−66005A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202799(P2011−202799)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】