説明

画像形成装置および転写装置

【課題】
本発明は、画像形成装置および転写装置に関し、転写ローラを支持した扉の開閉時に、円滑な操作力を得て操作感を向上させる。
【解決手段】
扉が、ベース板600に固定されそのベース板の内面との間に間隔を空けて回転中心線と平行に延びる長穴規制軸62と、バネ部材602とを有し、転写組立体が、長穴規制軸62が遊びをもって挿通された長穴422を有するとともに、2次転写ロール41を支持する支持部材42を有し、ベース板600に対しガタを持って扉に支持されるとともにバネ部材602により付勢されたものであって、長穴422が、扉が閉状態に向かって回転してきて転写ロールのベアリング部材411が本体側の窪み部331に接触した当初において、扉の回転中心線を中心として描いた長穴規制軸62を通る円弧に交わる半径方向について、長穴規制軸の両側に、長穴規制軸と穴の壁面との間に隙間d1,d2を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
転写ローラを支持した扉を閉じることで、トナー像を保持する像保持体に転写ローラを押圧してそれらの間を通過する記録媒体上にトナー像を転写するように構成された画像形成装置が提案されている(特許文献1〜3)。
【0003】
これらのうち、特許文献2,3には、扉を閉じる際に必要となる操作力を低減させる構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−330352号公報
【特許文献2】特開2011−102860号公報
【特許文献3】特開2011−102861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、転写ローラを支持した扉の開閉に関し、円滑な操作力を得て操作感を向上させた画像形成装置および転写装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1は、
本体フレームと、
本体フレーム内の搬送路に沿って記録媒体を搬送する搬送手段と、
トナー像の形成を受けてトナー像を保持し、トナー像を、記録媒体が通過する転写位置に搬送する像保持体と、
転写位置において像保持体に対向し転写位置を通過中の記録媒体を像保持体との間に挟んで像保持体上のトナー像を記録媒体に転写する、記録媒体の通過方向に交わる幅方向に延びる回転軸を有するとともに、その回転軸と同軸上の、記録媒体の通過領域から外れた位置に被位置決め部を有する転写ロールを含む転写組立体と、
本体フレームに支持され、上記被位置決め部の押し当てを受けて転写ロールを位置決めする位置決め部材と、
転写位置よりも記録媒体の搬送方向下流側に配置され、転写位置においてトナー像の転写を受けた記録媒体上にそのトナー像を定着する定着器と、
ベース板を有し、そのベース板の内側において転写ロールがベース板に沿って延びる向きに転写組立体を支持し、転写ロールの回転軸と平行に延びる回転中心線の回りに回転することにより本体フレームに対し開閉する扉とを有し、
上記扉がさらに、上記ベース板に固定されそのベース板の内面との間に間隔を空けて上記回転中心線と平行に延びる支持軸と、転写組立体をベース板から離れる方向に付勢する付勢部材とを有し、
転写組立体が、転写ロールの回転軸の延長線を遮る向きに広がり、上記支持軸が遊びをもって挿通された穴を有する側壁が形成された、転写ロールを支持する支持部材を有し、上記ベース板に対しガタを持って扉に支持されるとともに上記付勢部材により付勢されたものであって、
上記穴が、扉が開状態から閉状態に向かって回転してきて被位置決め部が位置決め部材に接触した当初において、扉の回転中心線を中心として描いた支持軸を通る円弧に交わる半径方向について、支持軸の両側に、支持軸と穴の壁面との間に隙間を有する形状の穴であることを特徴とする画像形成装置である。
【0007】
請求項2は、請求項1の画像形成装置において、上記穴が、扉の開方向に向かって扉の回転中心線から離れる向きに長径方向が向かう長穴であることを特徴とする。
【0008】
請求項3は、請求項1又は2の画像形成装置において、上記位置決め部材よりも扉の回転中心線に近づいた位置に配置されて本体フレームに固定され、扉が開状態から閉状態に向かって回転してきたときに上記支持部材の当たりを受ける受け部材を有し、
上記扉が、開状態から閉状態に向かって回転してきて支持部材が上記受け部材に当たり、かつ被位置決め部が位置決め部材に接触した後、その支持部材の、被位置決め部よりも扉の回転中心線から離れた部分を押すことにより、その支持部材の、受け部材に当たった部分を支点として被位置決め部を位置決め部材に押し当てる押当部材を有することを特徴とする。
【0009】
請求項4は、
トナー像の形成を受けてトナー像を保持しそのトナー像を記録媒体が通過する転写位置に搬送する像保持体に対向し、転写位置を通過中の記録媒体を像保持体との間に挟んで像保持体上のトナー像を記録媒体に転写する、記録媒体の通過方向に交わる幅方向に延びる回転軸を有するとともに、その回転軸と同軸上の、記録媒体の通過領域から外れた位置に被位置決め部を有する転写ロールを含む転写組立体と、
本体フレームに支持され、被位置決め部の押し当てを受けて転写ロールを位置決めする位置決め部材と、
ベース板を有し、ベース板の内側において転写ロールがベース板に沿って延びる向きに転写組立体を支持し、転写ロールの回転軸と平行に延びる回転中心線の回りに回転することにより本体フレームに対し開閉する扉とを有し、
上記扉がさらに、ベース板に固定されベース板の内面との間に間隔を空けて回転中心線と平行に延びる支持軸と、転写組立体をベース板から離れる方向に付勢する付勢部材とを有し、
転写組立体が、転写ロールを支持するとともに、その転写ロールの回転軸の延長線を遮る向きに広がり、上記支持軸が遊びをもって挿通された穴を有する側壁が形成された支持部材を有し、ベース板に対しガタを持って扉に支持されるとともに上記付勢部材により付勢されたものであって、
上記穴が、扉が開状態から閉状態に向かって回転してきて被位置決め部が位置決め部材に接触した当初において、扉の回転中心線を中心として描いた支持軸を通る円弧に交わる半径方向について、支持軸の両側に、支持軸と該穴の壁面との間に隙間を有する形状の穴であることを特徴とする転写装置である。
【0010】
請求項5は、請求項4の転写装置において、上記穴が、扉の開方向に向かって扉の回転中心線から離れる向きに長径方向が向かう長穴であることを特徴とする。
【0011】
請求項6は、請求項4又は5の転写装置において、上記位置決め部材よりも扉の回転中心線に近づいた位置に配置されて本体フレームに固定され、扉が開状態から閉状態に向かって回転してきたときに上記支持部材の当たりを受ける受け部材を有し、
上記扉が、開状態から閉状態に向かって回転してきて支持部材が上記受け部材に当たり、かつ被位置決め部が位置決め部材に接触した後、その支持部材の、被位置決め部よりも扉の回転中心線から離れた部分を押すことにより、その支持部材の、受け部材に当たった部分を支点として被位置決め部を位置決め部材に押し当てる押当部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の画像形成装置および請求項4の転写装置によれば、本構成を有しない場合と比べ、転写ロールを支持した扉を円滑に操作でき操作感が向上する。
【0013】
請求項2の画像形成装置および請求項5の転写装置によれば、請求項1および請求項4の「隙間を有する形状の穴」の一例が実現できる。
【0014】
請求項3の画像形成装置および請求項6の転写装置によれば、扉を閉める際の軽い操作力が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】画像形成装置の一例としてのプリンタの概略構成図である。
【図2】図1に示すプリンタの左側面の扉と本体フレーム内に装着されている中間転写ユニットを、図1と同じ方向から見て示した部分組立図である。
【図3】扉と中間転写ユニットとの接触部分の断面拡大図である。
【図4】扉のベース板に支持された状態の2次転写ユニットを、中間転写ユニット側から見て示した斜視図である。
【図5】扉のベース板の斜視図である。
【図6】2次転写ユニットを構成する支持部材と2次転写ロール組立体とのうちの支持部材のみを、ベース板上に支持させた状態を示した図である。
【図7】図6に示す状態の支持部材上に支持される2次転写ロール組立体を示した図である。
【図8】扉のベース板に支持された状態の2次転写ユニットの、一方の側壁の近傍を示した拡大斜視図である。
【図9】側壁の下端の支点部が、本体フレームに支持された受け部材に押し当てられている状態を示した斜視図である。
【図10】2次転写ロールの一方の端部を示す拡大斜視図である。
【図11】押当部材の周囲を示した拡大斜視図である。
【図12】2次転写ユニットを、支持部材の背面側から見て示した部分拡大斜視図である。
【図13】支持部材と2次転写ロール組立体のロック部材の部分を断面して示す拡大斜視図である。
【図14】2次転写ユニットの、コイルバネの部分を断面して示す部分拡大断面図である。
【図15】扉が開状態にあるときの、各部材の位置を示した模式図である。
【図16】扉が開状態から閉状態まで回転する途中の、各部材の位置を示した模式図である。
【図17】扉が開状態から閉状態まで回転する途中の、各部材の位置を示した模式図である。
【図18】扉が開状態から閉状態まで回転する途中の、各部材の位置を示した模式図である。
【図19】扉が開状態から閉状態まで回転する途中の、各部材の位置を示した模式図である。
【図20】扉が開状態から閉状態まで回転する途中の、各部材の位置を示した模式図である。
【図21】扉が開状態から閉状態まで回転する途中の、各部材の位置を示した模式図である。
【図22】扉が閉状態にあるときの、各部材の位置を示した模式図である。
【図23】扉の開閉時の、ベアリング部材と案内部材の移動軌跡を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1は、画像形成装置の一例としてのプリンタの概略構成図である。
【0018】
このプリンタ100は本体フレーム101で囲まれており、この本体フレーム101内には制御部10が備えられている。この制御部10にはこのプリンタ100の外部の、例えば原稿画像を読み取って画像データを生成するスキャナや画像処理用のコンピュータ等から画像データが入力される。この制御部10では、外部から入力されてきた画像データが、後述する露光器26における露光光変調用の画像データに変換される。
【0019】
このプリンタ100は、本体フレーム101の上部に、画像が形成された後の用紙が排出される排紙台11が設けられている。またこのプリンタ100の下部には、2段の給紙台12が配置されている。これらの給紙台12には画像形成前の用紙Pが積み重なった状態に収容されている。これらの給紙台12は、用紙Pの補給のために、引出し自在に構成されている。
【0020】
画像形成にあたっては、給紙台12の一方から用紙Pがピックアップロール13により送り出され、さばきロール14により1枚ずつに分離され、その1枚の用紙Pが、本体フレーム101内の搬送路151上を、搬送ロール15により矢印A方向に上方に搬送され、待機ロール16によりそれ以降の搬送のタイミングが調整されて、さらに上方に搬送される。この待機ロール16以降の用紙の搬送については後述する。
【0021】
このプリンタ100の上下方向のほぼ中央には、4台の画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kが配置されている。これらの画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kは、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)色のトナーを用いてトナー像を形成する装置である。これらの4台の画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kはいずれも同一の構成を有するため、ここでは画像形成エンジン20Yを取り挙げてその概要を説明する。
【0022】
この画像形成エンジン20Yは、図1に矢印Bで示す向きに回転する感光体21Yを有し、その感光体21Yの周囲に、帯電器22Y、現像器23Y、およびクリーナ24Yが配置されている。これら感光体21Y、帯電器22Y、現像器23Y、およびクリーナ24Yは、像形成ユニット200Yを構成しており、図1の紙面に垂直な回転軸方向へのスライドにより本体フレーム101に対し着脱自在に装着されている。
【0023】
また、後述する中間転写ベルト31を感光体21Yとの間に挟んだ位置には、転写器25Yが置かれている。
【0024】
またこれら4台の画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kの下には露光器26が配置されている。この露光器26には、制御部10で生成された、露光器26での露光光変調用の画像データが入力される。この露光器26からは、入力された画像データに基づいて変調された光ビームからなる、各画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kそれぞれに対応する露光光261Y,261M,261C,261Kが出射される。各画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kを構成する各感光体21Y,21M,21C,21Kは、各露光光261Y,261M,261C,261Kの照射を受ける。
【0025】
画像形成エンジン20Yの説明に戻る。
【0026】
感光体21Yはロール形状を有し、帯電により電荷を保持し露光によりその電荷を放出してその表面に静電潜像を保持する。
【0027】
帯電器22Yは、感光体21Yの表面をある帯電電位に帯電する。
【0028】
また、露光器26からは、その入力された画像データに応じて変調された露光光261Yが出射される。感光体21Yは、帯電器22Yによる帯電を受けた後、露光器26からの露光光261Yの照射を受け、感光体21Yの表面に静電潜像が形成される。
【0029】
感光体21Yは、露光光261Yの照射を受けて表面に静電潜像が形成された後、現像器23Yにより現像され、その感光体21Yの表面にトナー像(この画像形成エンジン20Yではイエロー(Y)のトナーによるトナー像)が形成される。
【0030】
現像器23Yは、内部にトナーとキャリアとからなる現像剤を収容したケース231Y内に、現像剤を攪拌する2本のオーガ232Yと、現像剤を感光体21Yに対向した位置に運ぶ現像ロール233Yとを有する。感光体21Y上に形成された静電潜像の現像にあたっては、現像ロール233Yにバイアス電圧が印加され、そのバイアス電圧の作用により、現像剤中のトナーが、感光体21Y上に形成された静電潜像に従って感光体21Y上に付着し、トナー像が形成される。
【0031】
現像器23Yによる現像により感光体21Y上に形成されたトナー像は、転写器25Yの作用により中間転写ベルト31上に転写される。
【0032】
この転写後に感光体21Y上に残存するトナーは、クリーナ24Yによって感光体21Y上から取り除かれる。
【0033】
中間転写ベルト31は、複数のロール32に架け回された、無端の、矢印C方向に循環移動するベルトである。この中間転写ベルト31や複数のロール32、各画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kを構成する各転写器25Y,25M,25C,25Kは、中間転写ユニット30を構成していて、図1の紙面に垂直な回転軸方向へのスライドにより本体フレーム101に対し着脱自在に装着されている。ここで、中間転写ユニット30を着脱する際は、この図1の左側に示されている扉60を開き、扉60が開いた状態で中間転写ユニット30の着脱が行われる。中間転写ユニット30を装着するにあたっては、扉60が開かれ、中間転写ユニット30の装着の後、扉60が閉じられる。この扉60についてはさらに後述する。
【0034】
画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kのそれぞれで形成された各色トナーによるトナー像は、順次重なるように中間転写ベルト31上に転写され、2次転写ロール41が配置された2次転写位置に搬送される。この2次転写ロール41は、2次転写位置において中間転写ベルト31に対向し2次転写位置を通過中の用紙を中間転写ベルト31との間に挟んでその中間転写ベルト31上のトナー像を用紙に転写する役割りを担っている。すなわち、中間転写ベルト31上に転写されたトナー像が2次転写位置に搬送されるのと同期して、待機ロール16にまで搬送されてきていた用紙が2次転写位置に搬送され、2次転写ロール41の作用により、中間転写ベルト31上のトナー像が、搬送されてきた用紙上に転写される。このトナー像の転写を受けた用紙は、さらに搬送され、定着器50に到達する。この定着器50は、加熱ロール51と加圧ロール52がケース53に収容された構造を有し、トナー像の転写を受けた用紙は、この定着器50の加熱ロール51と加圧ロール52とに挟まれて進む間に加熱および加圧を受け、これにより用紙上のトナー像がその用紙上に定着されて、定着されたトナー像からなる画像が用紙上に形成される。画像が形成された用紙は、さらに搬送されて、排紙台11上に排出される。
【0035】
2次転写ロール41によりトナー像を用紙上に転写した後の中間転写ベルト31はさらに循環移動し、その表面に残存するトナーがクリーナ42によって中間転写ベルト31上から取り除かれる。
【0036】
また、中間転写ベルト31よりも上方には、各色トナーを収容するトナー容器91Y,91M,91C,91Kが装着されている。これらのトナー容器91Y,91M,91C,91Kに収容されている各色トナーは、現像器23Yなど、対応する画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kにそれぞれ備えられた各現像器におけるトナーの消費量に応じて各現像器に補給される。
【0037】
ここで、このプリンタ100における中間転写ベルト31は、トナー像の形成を受けてトナー像を保持し、そのトナー像を、記録媒体が通過する2次転写位置に搬送する役割りを担っており、本発明にいう像保持体の一例に相当する。また、2次転写位置は本発明にいう転写位置の一例であり、2次転写ロール41は本発明にいう転写ロールの一例である。
【0038】
扉60は、2次転写ロール41を含む2次転写ユニット40(例えば図4参照;後述する)を支持している。またこの扉60は、下端の切欠き部61に、本体フレーム101に固定されたピン102が嵌り込んでいて、そのピン102を中心に回転することで矢印D−E方向に開閉する。この扉60が矢印E方向に閉じられると、2次転写ロール41が中間転写ベルト31にあらかじめ定められた一定の力で押圧される。
【0039】
図2は、図1に示すプリンタ100の左側面の扉60と本体フレーム101内に装着されている中間転写ユニット30を、図1と同じ方向から見て示した部分組立図である。
【0040】
また、図3は、扉60と中間転写ユニット30との接触部分の断面拡大図である。
【0041】
中間転写ユニット30は、図1を参照して説明した通り、矢印C方向に循環する中間転写ベルト31を含むユニットであって、図1,図2の紙面に垂直な方向へのスライドにより本体フレーム101(図1参照)内に装着される。この図2には、この中間転写ユニット30の上部に給電ユニット71が示されている。この給電ユニット71は、中間転写ユニット30を構成する転写器25Y,25M,25C,25K(図1参照)等への電源供給を担っている。この中間転写ユニット30には、扉60側に、その扉60に支持されている2次転写ユニット40(図4参照)の押し当てを受けてその2次転写ユニット40を構成する2次転写ロール41(図1参照)等を位置決めする位置決めプレート33が備えられている。この位置決めプレート33は、中間転写ベルト31を幅方向(図1,図2の紙面に垂直な方向)両側から挟むように一対、備えられている。この図2には、図4に示す2次転写ユニット40を、その図4に示す矢印F方向から見たときの、2次転写ユニット40の側壁が示されている。
【0042】
扉60は、図1を参照して説明した通り、下端に切欠き部61を有し、本体フレーム10に固定されたピン102(図1参照)がこの切欠き部61に嵌り込んでいて、そのピン102を中心に回転することで矢印D−E方向に開閉する。また、扉60には、その扉60を開けたときに扉60が開き過ぎてしまわないように停止させておく支持バー65が取り付けられている。
【0043】
2次転写ユニット40の構造の詳細は後述するが、この図2には、その2次転写ユニット40を構成する支持部材42の側壁421(図4参照)が示されており、その側壁421に長穴422が形成されていて、その長穴422に長穴規制軸62が遊びをもって挿通されている。この長穴規制軸62は、本発明にいう支持軸の一例に相当する。
【0044】
また、2次転写ユニット40の下部には、本体フレーム101(図1参照)に支持された受け部材72を有する。この受け部材72には、2次転写ユニット40を構成する支持部材42の側壁421の下端にある支点部423が押し当てられている。
【0045】
また、図3に示すように、中間転写ユニット30を構成する位置決めプレート33は、2次転写ロール41の回転軸と同軸上に設けられたベアリング部材411(図4参照)の押し当てを受ける窪み部331と、搬送される用紙を案内する案内部材43の被位置決め部432(図4参照)が押し当てられる突出部332を有する。この位置決めプレート33は、本発明にいう位置決め部材の一例に相当する。またこの扉60には、バネ部材63と、そのバネ部材63で上方に付勢されている押当部材64が備えられている。この押当部材64は、扉60が本体フレーム101に対し開いた状態(開状態)から閉状態に向かって、図1,図2に示す矢印Eで示す向きに回転していくと、側壁421(図2,図4参照)の下端の支点部423が受け部材72に押し当てられ、さらに2次転写ロール41のベアリング部材411が位置決めプレート33の窪み部331に押し当てられる。さらにその後、押当部材64が、支持部材42の一部である押当受け部424を押し、その反力で押当部材64が押当て受け部424に押されて下方に移動してバネ部材63を押し縮める。これにより、側壁421の下部の支点部423を支点とし、押当受け部424を力点として、2次転写ロール41のベアリング部材411が、位置決めプレート33の窪み部331に、あらかじめ定められた力で強く押し当てられる。このように、軽い操作力で扉60を閉めるだけで、テコの原理により、2次転写ロール41のベアリング部材411を位置決めプレート33の窪み部331に規定の強さで押し当てることができる。
【0046】
扉60に取り付けられた2次転写ユニット40の上方には、本体フレーム101(図1参照)に支持された定着器50が備えられている。
【0047】
図4は、扉60のベース板600に支持された状態の2次転写ユニット40を、中間転写ユニット30(図1,図2参照)側から見て示した斜視図である。この2次転写ユニット40は、複数の部材の組立体である。
【0048】
図5は、扉60のベース板600の斜視図である。このベース板600は扉60の内側に備えられていて、この図5には、そのベース板600の、2次転写ユニット40(図4参照)が支持される側の面、すなわち中間転写ユニット30(図1,図2参照)側を向いた面が示されている。
【0049】
図6は、2次転写ユニット40を構成する支持部材42と2次転写ロール組立体45(図7参照)とのうちの支持部材42のみを、ベース板600上に支持させた状態を示した図である。
【0050】
図7は、図6に示す状態の支持部材42上に支持される2次転写ロール組立体45を示した図である。
【0051】
前掲の図4は、図6に示す、ベース板600上に支持された支持部材42の上にさらに、図7に示す2次転写ロール組立体45を支持させた状態を示した図である。
【0052】
ここでは、先ず、図5に示すベース板600について説明する。このベース板600には、その左右に長穴規制軸固定部材601が固定されており、長穴規制軸固定部材601には、長穴規制軸62が固定されている。この長穴規制軸62は、長穴規制軸固定部材601を介して、ベース板600の内面600aとの間に間隔を空けて、扉60の回転中心線(図1,図2に示す切欠き部61を通り、図1,図2の紙面に垂直な線;図5では左右に延びる線となる)と平行に延びる向きに、ベース板600に固定されている。また、このベース板600には、一対の長穴規制軸62に挟まれた内側の左右寄りに、一対のバネ部材602が備えられている。このバネ部材602は、このベース板600の上に支持される、2次転写ユニット40を構成する支持部材42(図6参照)の、ベース板600側を向いた背面に当たり、その支持部材42をベース板600から離れる向きに付勢する部材である。このバネ部材602は、支持部材42を付勢するためのバネ部602aのほか、さらに長く延びて電気的な配線の役割も担っている。ここではその詳細は省略する。
【0053】
またこのベース板600の左右には、ベース板600の内面600aと長穴規制軸62とに挟まれた位置にバネ部材63(図3を合わせて参照)が配置されており、そのバネ部材63に隣接した位置に押当部材64が配置されている。この押当部材64は、中央部分のロール641と、そのロール641を間に挟む両側部分のロール642とで径が異なる、いずれもが独立に自由回転する2段のロールで構成されている。この押当部材64を構成する中央部分のロール641は、ベース板600に設けられたスリット(図示せず)に入り込んでベース板600とは干渉しないように構成されている。その中央部分のロール641を挟む両側部分のロール642はその周面がベース板600に接触し、この押当部材64がバネ部材63を押して移動する際、ベース板600上を転がるようになっている。中央部分のロール641は、2次転写ユニット40を構成する支持部材42の押当受け部424(図3参照)に当たり、バネ部材63の付勢力によりその押当受け部424を押し、その押当受け部424上を転がるようになっている。
【0054】
さらに、このベース板600には、その押当受け部424を押当部64との間に挟む位置に、舌片600b(図3を合わせて参照)が設けられている。
【0055】
さらにこのベース板600には、ここを通過する用紙の有無を検出する用紙センサ610が固定されている。
【0056】
次に図7に示す2次転写ロール組立体45について説明する。
【0057】
この2次転写ロール組立体45は、2次転写ロール41と案内部材43を有する。
【0058】
2次転写ロール41は、図1を参照して説明した通り、中間転写ベルト31上のトナー像を用紙上に転写する役割りを担っている。また、案内部材43は、2次転写ロール41と定着器50(図1,図2参照)との間に配置され、トナー像の転写を受けた用紙を案内リブ431で定着器50に向けて案内する部材である。2次転写ロール41は、用紙が通過する領域から外れた両側にその回転軸412に同軸に支持されたベアリング部材411を有する。このベアリング部材411は、図3を参照して説明した通り、中間転写ユニット30の位置決めプレート33の窪み部331に入り込んでその窪み部331に押し当てられる。すると、2次転写ロール41の、用紙を挟む部分が中間転写ベルト31に押し当てられる。また、案内部材43は、用紙が通過する領域から外れた両側に被位置決め部432を有する。この被位置決め部432は、これも図3を参照して説明した通り、中間転写ユニット30の位置決めプレート33の突出部332に押し当てられ、これにより案内部材43が位置決めされる。
【0059】
この2次転写ロール組立体45は、図6に示す支持部材42上に、図4に示すように支持される。
【0060】
ここで、2次転写ロール41は、消耗品であり、時々交換する必要がある。本実施形態では、2次転写ロール41を備えた2次転写ロール組立体45を支持部材42から切り離して別部材としたことにより、交換部分が少なくて済み、交換部品のコスト低減の点で有利である。
【0061】
支持部材42には、図6に示すように、2次転写ロール41が配置される窪み425が形成され、その両端に、2次転写ロール41のベアリング部材411を支持するベアリング支持部426が形成されている。2次転写ロール41のベアリング部材411がベアリング支持部426に支持されることにより、ベース板600は、支持部材42と2次転写ロール組立体45とからなる2次転写ユニット40を、2次転写ロール41がベース板600に沿って延びる向き、かつ2次転写ロール41の回転軸が扉60の回転中心線と平行に延びる向きに支持する。
【0062】
また、この支持部材42には、2次転写ロール41を回転軸方向両側から挟む位置に、用紙が通過する通過方向に交わる幅方向に引いた線を遮る向き、すなわち2次転写ロール41の回転軸の延長線を遮る向きに広がる側壁421を有する。この側壁421は長穴422を有し、その長穴422には、ベース板600に固定された長穴規制軸62(図5参照)が遊びを持って挿通されている。
【0063】
この支持部材42は、その支持部材42の押当受け部424(図3参照)が押当部材64とベース板600の舌片600bとの間に入り込み、かつ長穴422に長穴規制軸62が挿通されることにより、ベース板600にガタを持った状態で支持されている。このガタを持ってベース板600に支持されている支持部材42は、その背面が、バネ部材602で、ベース板600から離れる向きに押された状態にある。
【0064】
さらに、この支持部材42には、この支持部材42により支持される2次転写ロール組立体45をその背面から押圧するためのコイルバネ427が支持されており、さらに、2次転写ロール組立体45がこの支持部材42から安易に外れてしまわないようにロックしておくためのロック部材428と、押下げにより、そのロック部材428による2次転写ロール組立体45のロックを外すロック解除部材429を備えている。
【0065】
この2次転写ユニット40の特徴の1つは、長穴422の形状等にあるが、この長穴422についての詳細は後述する。
【0066】
図8は、扉60のベース板600に支持された状態の2次転写ユニット40の、一方の側壁421の近傍を示した拡大斜視図である。
【0067】
この図8には、支持部材42の側壁421に設けられた長穴422とその長穴422に挿通された状態のベース板600に固定された長穴規制軸62が示されている。この図8には扉60(図1,図2参照)が閉状態にあるときのレイアウトが示されており、この閉状態では、長穴規制軸62は長穴422の壁面とは非接触の状態にある。
【0068】
この図8に示す一点鎖線L1は、長穴規制軸62の中心を通り、扉60(図1,図2参照)の回転中心線を中心とした円弧を示している。また一点鎖線L2は、長穴規制軸62の中心を通る、一点鎖線L1の接線を示している。さらに一点鎖線L3は、長穴422の長径方向に引いた線である。また、矢印Dは、図1,図2にも示す通り、扉60の開方向を示している。ここで、これらの一点鎖線L1〜L3から分かる通り、この長穴422は、扉60の開方向に向かって扉60の回転中心線から離れる向きに長径方向が向かう長穴である。
【0069】
尚、本実施形態では、この長穴422は、長径方向と平行に平面的に広がる壁部分を有する長穴であるが、本発明にいう長穴は、全てが曲面で囲まれた長穴、例えば楕円形の長穴等を含む概念である。この長穴422の作用については後述する。
【0070】
図9は、側壁421の下端の支点部423が、本体フレーム101(図1参照)に支持された、受け部材72に押し当てられている状態を示した斜視図である。
【0071】
上述の通り、支持部材42は、扉60を閉じていくと、この受け部材72に押し当てられた支点部423を支点として回転し、テコの原理により、2次転写ロール41のベアリング部材411が、中間転写ユニット30の位置決めプレート33の窪み部331(図3参照)に強く押し当てられる。これにより2次転写ロール41の位置決めが行なわれ、その2次転写ロール41が中間転写ベルト31を規定の押圧力で押圧した状態となる。
【0072】
図10は、2次転写ロール41の一方の端部を示す拡大斜視図である。
【0073】
ここには2次転写ロール41の回転軸に支持されたベアリング部材411が示されており、このベアリング部材411は、支持部材42のベアリング支持部426に支持されている。このベアリング部材411は、扉60が閉じられると、中間転写ユニット30の位置決めプレート33の窪み部331(図3参照)に押し当てられ、支持部材42のベアリング支持部426と位置決めプレート33の窪み部331とに挟まれた状態に支持される。
【0074】
図11は、押当部材64の周囲を示した拡大斜視図である。
【0075】
この押当部材64は、図5を参照して説明した通り、互いに独立に自由回転する2段のロール641,642からなり、バネ部材63(図3を合わせて参照)により付勢される部材である。2段のロール641,642のうちの一方のロール641は、もう一方のロール642よりも太径のロールである。この太径のロール641は、ベース板600に設けられたスリット600cに入り込んでいて、ベース板600とは干渉しないように構成されるとともに、支持部材42の押当受け部424に接触している。また、もう一方の細径のロール642は、ベース板600に接し、押当部材424からは離れている。前述の通り、扉60が本体フレーム101に対し開いた開状態から、図1,図2に示す閉状態に向かって矢印Eの向きに回転していくと、側壁421の下端の支点部423が、図9に示すように受け部材72に押し当てられ(図2を合わせて参照)、さらに2次転写ロール41のベアリング部材411が位置決めプレート33の窪み部331に押し当てられると(図3参照)、この図11に示す押当部材64が、支持部材42の一部である押当受け部424から力を受け、その押当受け部424とベース板600とに挟まれて下方(図11に矢印Gで示す向き)に移動する。このとき、押当部材64を構成する2段のロール641,642のうちの一方のロール641は押当受け部424に押されて回転し、もう一方のロール642は、ベース板600の上を、一方のロール641とは逆向きに回転しながら、矢印Gの向きに移動する。押当部材64が矢印Gの向きに移動すると、その押当部材64に隣接して配置されているバネ部材63が縮み、そのバネ部材63の付勢力が強まって押当部材64が押当受け部424を矢印Eの向き(すなわち、図1,図2に示す扉60の閉方向の向き)に強く押すことになる。このようにして、受け部材72に押し当てられている、支持部材42の側壁421の下部の支点部423を支点とし、押当部材64により押されている、支持部材42の押当受け部424を力点とし、中間転写ユニット30の位置決めプレート33の窪み部331に押し当てられている2次転写ロール41のベアリング部材411を作用点として、そのベアリング部材411があらかじめ決められた押し当て力で窪み部331に強く押し当てられる。
【0076】
図12は、2次転写ユニット40を、支持部材42の背面側から見て示した部分拡大斜視図である。
【0077】
この図12には、支持部材42にロックされた2次転写ロール組立体45のロックを外すロック解除部材429(図6を合わせて参照)が示されている。
【0078】
図13は、支持部材42と2次転写ロール組立体45のロック部材428,433の部分を断面して示す拡大斜視図である。
【0079】
この図13には、互いに係止した状態の、支持部材42側のロック部材428(図6を合わせて参照)と2次転写ロール組立体45側のロック部材433(図12を合わせて参照)が示されている。
【0080】
図6,図12に示すロック解除部材429を押し下げると、それらのロック部材428,433どうしの係合が外れる状態となり、2次転写ロール組立体45を支持部材42から取り外すことができる。
【0081】
前述した通り、2次転写ロール組立体45を支持部材42とは別部品として支持部材42に支持させる構成としたことにより、2次転写ロール41の寿命の際に交換する必要のある部品は2次転写ロール組立体のみで済み、コスト的に有利である。また2次転写ロール組立体45を別部品としたことは、図14を参照して説明するように、案内部材43の正確な位置決めにも役立っている。
【0082】
図13に示すように、支持部材42の背面には、電気的な配線を担うプレート491が固定されている。図5に示す、支持部材42の背面を押すバネ部材602は、このプレート491に接触して、このプレート491を押している。これにより、プレート491と、バネ部材602との間の電気的な接触もなされている。
【0083】
図14は、2次転写ユニット40の、コイルバネ427の部分を断面して示す部分拡大断面斜視図である。
【0084】
2次転写ロール組立体45は、このコイルバネ427(図6を合わせて参照)により、支持部材42から離れる向きに付勢されている。このコイルバネ427による付勢と、案内部材43の被位置決め部432が中間転写ユニット30の位置決めプレート33の突出部332(図2,図3参照)に押し当てられることにより、案内部材43が、用紙の、定着器50に向けた案内に適した位置に正確に位置決めされる。
【0085】
図15〜図22は、扉60が開状態から閉状態まで回転したときの、各部材の動きを示した模式図である。これらの図15〜図22のうちの最初の図である図15は扉60が開状態にあるときのもの、最後の図である図22は扉60が閉状態にあるときのものである。
【0086】
ここでは先ず、扉60が閉状態にあるときの図である図22を参照しながら、図15〜図22に線画で示す各部材と、これまで説明してきた図1〜図14に示す各部材との対応関係を説明する。
【0087】
図22の右側には、中間転写ユニット30を構成する2本のロール32と、それらのロール32に架け回された中間転写ベルト31が示されている。また、この中間転写ベルト31に隣接した位置に、中間転写ユニット30を構成する位置決めプレート33(図2,図3参照)の窪み部331が示されており、その窪み部331の斜め左上には、その位置決めプレート33の、突出部332が模式的に示されている。
【0088】
窪み部331には、2次転写ロール41のベアリング部材411が入り込んでいてその窪み部331を規定の力で押している。ここには、そのベアリング部材411を窪み部331との間に挟む、支持部材42のベアリング支持部426(図10参照)と、ベアリング部材411と同軸であって中間転写ベルト31を押圧している状態の2次転写ロール41も示されている。また、突出部332には、案内部材43の被位置決め部432(図4参照)が突き当てられている。
【0089】
また、この図22の、2次転写ロール41の下には、本体フレーム101(図1参照)に固定された受け部材72(図2,図9参照)が示されており、その受け部材72には支持部材42の側壁421の下部にある支点部423(図2,図9参照)が押し当てられている。
【0090】
また、この側壁421に設けられた長穴422には、長穴規制軸62が遊びを持って入り込んでいる(図8参照)。この閉状態では、長穴規制軸62は、長穴422の壁面から離れた状態にある。
【0091】
また、この図22の左側には、扉60の内側に設けられたベース板600と、そのベース板600に取り付けられたバネ部材63と、そのバネ部材63により付勢される押当部材64が示されている。また、ここには、ベース板600の一部である舌片600bと、その舌片600bと押当部材64との間に入り込んだ、支持部材42の押当受け部424(図11参照)が示されている。前述した通り、押当部材64を構成する2段のロール641,642のうちの一方のロール641は押当受け部424に接し、もう一方のロール642は、ベース板600に接している。
【0092】
さらにここには、ベース板600に支持されて支持部材42の背面を押すバネ部材602(図5参照)、および、支持部材42に支持されて2次転写ロール組立体45を押すコイルバネ427(図6,図14参照)も示されている。さらに、この図の上方には、定着器50のケース53の外形が示されている。
【0093】
この図22に示す矢印aは、ベアリング部材411が窪み部331から受ける力の方向と強さを示した矢印であり、矢印bは、押当部材64がバネ部材63から受ける力の方向と強さを示した矢印であり、矢印cは、コイルバネ427が2次転写ロール組立体45の背面を押す力の方向と強さを示した矢印である。
【0094】
図15に示す開状態から図22に示す閉状態にまで各部材の動きを順次に追っていく。
【0095】
図15に示す開状態から扉60が少し閉じられ、図16に示す状態になると、案内部材43が、直ぐ上に配置されている定着器50のケース53に近接した点を通る。ただし、案内部材43は、定着器50のケース53に接することなく、最近接点を通り過ぎる(図17参照)。さらに、扉60を閉じていくに従って、各部材は、図18,図19に示す通りに移動する。図19に示す段階では、支点部423は未だ受け部材72から離れた位置にある。閉状態を示す図22からこの図19に示す段階までは、長穴規制軸62は、長穴422の壁面の、最も高い位置に接触している。
【0096】
図20は、図19に示す状態から扉60がさらに閉じる方向に回転し、支点部423が受け部材72に押し当てられた状態が示されている。ベアリング部材411は窪み部331から未だ離れた状態にある。支点部423が受け部材72に押し当てられると、この図20に示すように、長穴422と長穴規制軸62との位置関係が変化する。すなわち、図19の段階では、長穴規制軸62は、長穴422の壁の最も高い位置に接触していたが、支点部423が受け部材72に押し当てられると、この図20に示すように、長穴規制軸62は、長穴422に対し、扉60の回転中心線を中心として描いた長穴規制軸62を通る円弧(一点鎖線L1)に交わる半径方向について、長穴規制軸62の両側に、長穴規制軸62と長穴422の壁面との間に隙間d1,d2を有する位置に移動する。本実施形態では、長穴422が扉60の開方向に向かって扉60の回転中心線から離れる向きに長径方向が向かう長穴であることによって、この関係を達成している。
【0097】
この長穴規制軸62と長穴422の位置関係は、ベアリング部材411が窪み部331への接触を開始する次の段階(図21)でも維持される。したがって、窪み部331とベアリング部材411との間に多少の公差があっても長穴規制軸62は長穴422の中で上下のいずれの方向にも移動することができ、ベアリング部材411は公差を吸収しながら、窪み部331に導き入れられることになる。このため、前掲の特許文献2,3で示される構造で課題の1つとなっていた、扉を閉じるときにベアリング部材が窪み部の入口の縁に突き当たることによって生じる違和感が解消され、操作力の滑らかな変化による滑らかな操作感を得ることができる。
【0098】
次に、図15〜図22を逆順に辿り、図22に示す閉状態から図15に示す開状態に向かって扉を開いていくときの各部材の動きを説明する。
【0099】
図22に示す閉状態にあるときは、長穴422に挿通された長穴規制軸62は、その長穴422の壁面から離れた状態にある。
【0100】
図22の閉状態から扉を開いていくと、図21に示すように、長穴規制軸62は、長穴422の壁面の最も高い位置よりも下がった位置に接触する。扉60が閉状態に向かってさらに回転して、図20に示す、支点部423が受け部材72に押し当てられた状態から、図19に示す、支点部423が受け部材72から離れた状態になると、長穴規制軸62は、長穴422の壁の最も高い位置に接触した状態となる。前述の通り、長穴規制軸62はベース板600に固定されており(図5参照)、一方、支持部材42と2次転写ロール組立体45とからなる2次転写ユニット40はベース板600にガタをもって支持されている。したがって、図19に示すように、長穴規制軸62が長穴422の壁面の最も高い位置に当たった状態になるということは、長穴規制軸62が持ち上がった訳ではなく、長穴422が形成された2次転写ユニット40が重力で下に下がったことを意味している。案内部材43も2次転写ユニット40の一部を成し、したがって下に下がった状態となる。このように、案内部材43が下に下がることにより、その案内部材43は、図16に示すように、定着器50のケース53に干渉することなく、定着器50の下を通り過ぎることができる。
【0101】
図23は、扉60の開閉時の、ベアリング部材411と案内部材43の移動軌跡を示した図である。
【0102】
この図23には、長穴の長径が扉の開閉の軌跡(扉60の回転中心線を中心に描いた円弧)と同一方向に延びている、比較例としての長穴422´も示されている。この図23に一点鎖線で示す軌跡T1は、本実施形態における軌跡であり、二点鎖線で示す軌跡T2は、本実施形態における長穴422に代えて比較例としての長穴422´が設けられていて長穴規制軸62がその長穴422´に挿通されているとした場合の軌跡である。
【0103】
本実施形態の場合、比較例と比べ距離d3に相当する分だけ2次転写ユニット40が下に下がる余地がり、一点鎖線で示す軌跡T1を得ることができる。これに対し比較例の場合、二点鎖線の軌跡T2を辿る結果、閉状態にある扉を開いていくと、このままでは案内部材43が定着器50のケース53に干渉してしまって扉を開くことができないことになる。これを解消するには、定着器50をさらに上に取り付けるといったレイアウト変更などが必要となり、装置の大型化を招くおそれがある。
【0104】
また、この二点鎖線の軌跡T2によれば、ベアリング部材411は、窪み部331の入口の縁に干渉する軌跡を描いている。したがって、開状態にある扉60を閉じていったとき、ベアリング部材411は、窪み部331に円滑には入らずに入口の縁に一旦ぶつかり、部材の多少の弾性変形等によりその縁を乗り越えてから窪み部311に入る。このため、扉60を閉じる操作をしているユーザには、閉じている途中で何かがぶつかったような違和感を手に感じることになり、滑らかな操作感を得ることが難しい。
【0105】
このように本実施形態では、扉60の開方向に向かって扉60の回転中心線から離れる向きに長径方向が向かう長穴を形成してその長穴422に長穴規制軸62を挿通させている。これにより、本実施形態における長穴422と長穴422に挿通された長穴規制軸62は、扉の開閉時に、案内部材43を、前記定着器50との接触を避けた移動軌跡上を移動させ、さらに、ベアリング部材411を、窪み部331の縁との干渉を避けた移動軌跡上を移動させる機構を成していて、扉開閉の円滑な操作と装置の小型化に寄与している。
【符号の説明】
【0106】
20Y,20M,20C,20K 画像形成エンジン
30 中間転写ユニット
31 中間転写ベルト
32 複数のロール
33 位置決めプレート
40 2次転写ユニット
41 2次転写ロール
42 支持部材
45 2次転写ロール組立体
50 定着器
53 ケース
60 扉
61 切欠き部
62 長穴規制軸
63,602 バネ部材
64 押当部材
72 受け部材
100 プリンタ
101 本体フレーム
102 ピン
331 窪み部
332 突出部
411 ベアリング部材
421 側壁
422,422´ 長穴
423 支点部
424 押当受け部
425 窪み
426 ベアリング支持部
427 コイルバネ
428,433 ロック部材
429 ロック解除部材
432 被位置決め部
491 プレート
600 ベース板
601 長穴規制軸固定部材
600a 内面
600b 舌片
600c スリット
610 用紙センサ
641,642 ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体フレームと、
前記本体フレーム内の搬送路に沿って記録媒体を搬送する搬送手段と、
トナー像の形成を受けて該トナー像を保持し、該トナー像を、前記記録媒体が通過する転写位置に搬送する像保持体と、
前記転写位置において前記像保持体に対向し該転写位置を通過中の記録媒体を該像保持体との間に挟んで該像保持体上のトナー像を該記録媒体に転写する、該記録媒体の通過方向に交わる幅方向に延びる回転軸を有するとともに、該回転軸と同軸上の、該記録媒体の通過領域から外れた位置に被位置決め部を有する転写ロールを含む転写組立体と、
前記本体フレームに支持され、前記被位置決め部の押し当てを受けて前記転写ロールを位置決めする位置決め部材と、
前記転写位置よりも前記記録媒体の搬送方向下流側に配置され、該転写位置においてトナー像の転写を受けた記録媒体上に該トナー像を定着する定着器と、
ベース板を有し、該ベース板の内側において前記転写ロールが該ベース板に沿って延びる向きに前記転写組立体を支持し、前記転写ロールの回転軸と平行に延びる回転中心線の回りに回転することにより前記本体フレームに対し開閉する扉とを有し、
前記扉がさらに、前記ベース板に固定され該ベース板の内面との間に間隔を空けて前記回転中心線と平行に延びる支持軸と、前記転写組立体を前記ベース板から離れる方向に付勢する付勢部材とを有し、
前記転写組立体が、該転写ロールの回転軸の延長線を遮る向きに広がり、前記支持軸が遊びをもって挿通された穴を有する側壁が形成された、前記転写ロールを支持する支持部材を有し、前記ベース板に対しガタを持って前記扉に支持されるとともに前記付勢部材により付勢されたものであって、
前記穴が、前記扉が開状態から閉状態に向かって回転してきて前記被位置決め部が前記位置決め部材に接触した当初において、該扉の回転中心線を中心として描いた前記支持軸を通る円弧に交わる半径方向について、該支持軸の両側に、該支持軸と該穴の壁面との間に隙間を有する形状の穴であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記穴が、前記扉の開方向に向かって該扉の回転中心線から離れる向きに長径方向が向かう長穴であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記位置決め部材よりも前記扉の回転中心線に近づいた位置に配置されて前記本体フレームに固定され、該扉が開状態から閉状態に向かって回転してきたときに前記支持部材の当たりを受ける受け部材を有し、
前記扉が、該扉が開状態から閉状態に向かって回転してきて前記支持部材が前記受け部材に当たり、かつ前記被位置決め部が前記位置決め部材に接触した後、前記支持部材の、該被位置決め部よりも該扉の回転中心線から離れた部分を押すことにより、該支持部材の、該受け部材に当たった部分を支点として該被位置決め部を該位置決め部材に押し当てる押当部材を有することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
トナー像の形成を受けて該トナー像を保持し該トナー像を記録媒体が通過する転写位置に搬送する像保持体に対向し、該転写位置を通過中の記録媒体を該像保持体との間に挟んで該像保持体上のトナー像を該記録媒体に転写する、該記録媒体の通過方向に交わる幅方向に延びる回転軸を有するとともに、該回転軸と同軸上の、該記録媒体の通過領域から外れた位置に被位置決め部を有する転写ロールを含む転写組立体と、
本体フレームに支持され、前記被位置決め部の押し当てを受けて前記転写ロールを位置決めする位置決め部材と、
ベース板を有し、該ベース板の内側において前記転写ロールが該ベース板に沿って延びる向きに前記転写組立体を支持し、前記転写ロールの回転軸と平行に延びる回転中心線の回りに回転することにより前記本体フレームに対し開閉する扉とを有し、
前記扉がさらに、前記ベース板に固定され前記ベース板の内面との間に間隔を空けて前記回転中心線と平行に延びる支持軸と、前記転写組立体を前記ベース板から離れる方向に付勢する付勢部材とを有し、
前記転写組立体が、前記転写ロールを支持するとともに、該転写ロールの回転軸の延長線を遮る向きに広がり、前記支持軸が遊びをもって挿通された穴を有する側壁が形成された支持部材を有し、前記ベース板に対しガタを持って前記扉に支持されるとともに前記付勢部材により付勢されたものであって、
前記穴が、前記扉が開状態から閉状態に向かって回転してきて前記被位置決め部が前記位置決め部材に接触した当初において、該扉の回転中心線を中心として描いた前記支持軸を通る円弧に交わる半径方向について、該支持軸の両側に、該支持軸と該穴の壁面との間に隙間を有する形状の穴であることを特徴とする転写装置。
【請求項5】
前記穴が、該扉の開方向に向かって該扉の回転中心線から離れる向きに長径方向が向かう長穴であることを特徴とする請求項4記載の転写装置。
【請求項6】
前記位置決め部材よりも前記扉の回転中心線に近づいた位置に配置されて前記本体フレームに固定され、該扉が開状態から閉状態に向かって回転してきたときに前記支持部材の当たりを受ける受け部材を有し、
前記扉が、該扉が開状態から閉状態に向かって回転してきて前記支持部材が前記受け部材に当たり、かつ前記被位置決め部が前記位置決め部材に接触した後、前記支持部材の、該被位置決め部よりも該扉の回転中心線から離れた部分を押すことにより、該支持部材の、該受け部材に当たった部分を支点として該被位置決め部を該位置決め部材に押し当てる押当部材を有することを特徴とする請求項4又は5記載の転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−68841(P2013−68841A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208082(P2011−208082)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】