説明

画像形成装置および電子機器

【課題】その利用が特定の管理者に限定されるべき特殊モードを、動作モードの一つとして有する画像形成装置において、特殊モード遷移用のパスワードが盗用される可能性を低減させる。
【解決手段】記憶装置30は、所定の要因に応じて変化する変化データを記憶する。UI10は、記憶装置30に記憶されている変化データを表示する。モード遷移部43は、特殊モード遷移用のパスワードがUI10により受け付けられた場合に、画像形成装置1の動作モードを特殊モードに遷移させる。ここで、特殊モード遷移用のパスワードとして、記憶装置30に記憶されている変化データから所定の規則に従って生成されるパスワードを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その利用が特定の管理者に限定されるべき特殊モードを、動作モードの一つとして有する画像形成装置および電子機器に関し、特に、特殊モードへの遷移に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタなどの画像形成装置には、その動作モードとして、通常の印刷動作を行う通常モードの他に、メンテナンス用のメンテナンスモードを有するものが多い。このメンテナンスモードでは、通常モードでは設定不可能な様々な動作条件を設定することができる。このため、メンテナンスモードにおいて誤った動作条件の設定が行われた場合、故障や事故等の不利益が生じる可能性がある。
【0003】
そこで、上記不利益を防止するため、メンテナンスモードについては、専門の訓練を受けたメンテナンスエンジニア等の特定の管理者のみに、その利用を限定することとしている。メンテナンスモードの利用を特定の管理者に限定するため、例えば、所定のパスワードや規則的なキー操作の入力を、メンテナンスモードへの遷移条件としている。特許文献1には、管理者パスワードが入力された場合には、管理者のみが利用可能な環境設定受付状態に移行し、ユーザパスワードが入力された場合には、当該環境設定受付状態に移行しない状態での動作を開始する情報処理装置が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−91507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術では、パスワードは固定的なものであるので、メンテナンスエンジニアは、メンテナンス時に常に同じパスワードを打ち込むこととなる。このため、パスワードが一般の使用者に盗み見られる危険性が高い。また、盗み見、類推、あるいは試行錯誤などによって、一度パスワードが見破られてしまうと、永続的にパスワードが盗用されることとなる。このような問題は、メンテナンスモードに限られず、その利用が特定の管理者に限定されるべき特殊モードについても同様に生じ得る。また、上記の問題は、画像形成装置に限られず、パスワードの入力を特殊モードへの遷移条件とする電子機器についても生じ得る。
【0006】
そこで、本発明は、特殊モード遷移用のパスワードが盗用される可能性を低減させることができる画像形成装置および電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像形成装置は、その利用が特定の管理者に限定されるべき特殊モードを、動作モードの一つとして有する画像形成装置であって、所定の要因に応じて変化する変化データを記憶する記憶手段と、当該記憶手段に記憶されている変化データを表示する表示手段と、操作者から操作入力を受け付ける入力手段と、前記記憶手段により記憶されている変化データから所定の規則に従って生成されるパスワードが、前記入力手段により受け付けられた場合に、当該画像形成装置の動作モードを前記特殊モードに遷移させるモード遷移手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の好適な態様では、前記パスワードは、前記変化データの全部または所定の一部である。
【0009】
また、本発明の別の好適な態様では、前記変化データは、現在の時刻である。このとき、前記パスワードは、現在の時刻との差異の絶対値が所定時間以下である、全ての時刻であることが好ましい。このとき、前記パスワードは、現在の時刻より過去の時刻であることが好ましい。また、起動時または起動直後に所定の操作入力を受け付けた場合に、パスワードの入力を促すパスワード入力画面を表示画面上に表示させ、前記入力手段は、前記パスワード入力画面を介して操作者からパスワードの入力を受け付ける構成では、前記所定時間は、当該画像形成装置の起動時間とパスワードの入力操作に要する最短時間との合計時間以上であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の別の好適な態様では、前記変化データは、当該画像形成装置の使用に伴って変化するデータである。具体的には、前記変化データは、当該画像形成装置の累積印刷枚数あるいは累積稼動時間、または、感光体ドラムの累積回転数あるいは累積回転時間である。
【0011】
また、本発明の好適な態様では、前記パスワードは、前記変化データの全部または所定の一部に、固定パスワードが付加されてなる。この場合における好適な態様では、前記固定パスワードは、操作者に読み取り可能な態様で当該画像形成装置に保持されている、当該画像形成装置の個体識別番号である。
【0012】
本発明に係る画像形成装置の制御装置は、その利用が特定の管理者に限定されるべき特殊モードを、動作モードの一つとして有し、所定の要因に応じて変化する変化データが記憶される記憶領域を備える画像形成装置、の制御装置であって、前記記憶領域に記憶されている変化データを表示画面上に表示させる表示制御手段と、操作者から操作入力を受け付ける入力受付手段と、前記記憶領域に記憶されている変化データから所定の規則に従って生成されるパスワードが、前記入力受付手段により受け付けられた場合に、当該画像形成装置の動作モードを前記特殊モードに遷移させるモード遷移手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る制御プログラムは、その利用が特定の管理者に限定されるべき特殊モードを、動作モードの一つとして有し、所定の要因に応じて変化する変化データが記憶される記憶領域を備える画像形成装置を、前記記憶領域に記憶されている変化データを表示画面上に表示させる表示制御手段、操作者から操作入力を受け付ける入力受付手段、および、前記記憶領域に記憶されている変化データから所定の規則に従って生成されるパスワードが、前記入力受付手段により受け付けられた場合に、当該画像形成装置の動作モードを前記特殊モードに遷移させるモード遷移手段、として機能させることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る画像形成装置の制御方法は、その利用が特定の管理者に限定されるべき特殊モードを、動作モードの一つとして有し、所定の要因に応じて変化する変化データが記憶される記憶領域を備える画像形成装置の制御方法であって、前記記憶領域に記憶されている変化データを表示画面上に表示させる表示ステップと、操作者から操作入力を受け付ける入力受付ステップと、前記記憶領域に記憶されている変化データから所定の規則に従って生成されるパスワードが、前記入力受付ステップで受け付けられた場合に、当該画像形成装置の動作モードを前記特殊モードに遷移させるモード遷移ステップと、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る電子機器は、その利用が特定の管理者に限定されるべき特殊モードを、動作モードの一つとして有する電子機器であって、所定の要因に応じて変化する変化データを記憶する記憶手段と、当該記憶手段に記憶されている変化データを表示する表示手段と、操作者から操作入力を受け付ける入力手段と、前記記憶手段により記憶されている変化データから所定の規則に従って生成されるパスワードが、前記入力手段により受け付けられた場合に、当該電子機器の動作モードを前記特殊モードに遷移させるモード遷移手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、固定パスワードではなく、所定の要因に応じて変化する変化データから生成されるパスワードを、特殊モード遷移用のパスワードとするので、特殊モード遷移用のパスワードが盗用される可能性を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る画像形成装置1の構成を示すブロック図である。この画像形成装置1は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等のように、紙等の記録媒体に対して画像を印刷する装置である。本実施の形態では、印刷方式として、電子写真方式を例にとって説明することとするが、印刷方式は、インクジェット方式など、他の方式であってもよい。
【0019】
画像形成装置1は、その動作モードとして、一般の使用者に利用される通常モードと、その利用が特定の管理者に限定されるべき特殊モードと、を有する。ここでは、特殊モードは、その利用がメンテナンスエンジニアのみに許可されているメンテナンス用のメンテナンスモード(診断モードまたはサービスモードとも呼ばれる)である。このメンテナンスモードでは、通常モードでは設定不可能な種々の動作条件(動作環境)の設定を行うことが可能である。また、メンテナンスモードでは、画像形成装置1に、通常の画像形成動作とは異なる特殊なテスト動作を実行させることができる。このようなメンテナンスモードへの遷移には、後述する所定のパスワードの入力が必要とされる。
【0020】
図1において、画像形成装置1は、ユーザインタフェース(UI)10、プリントエンジン20、記憶装置30、および制御装置40を備えている。
【0021】
UI10は、各種情報を表示する表示手段、および、操作者からの操作入力を受け付ける入力手段、として機能するインタフェースである。ここでは、UI10は、テンキー、スタートボタン、ストップボタンなどの各種ボタンと、タッチパネル式の液晶ディスプレイとから構成される。
【0022】
プリントエンジン20は、電子写真方式に従って、紙等の記録媒体に対して画像を形成する装置である。なお、ここでは、プリントエンジン20は、原稿から画像を読み取るスキャナも含むものとする。
【0023】
記憶装置30は、揮発性または不揮発性のRAM等であり、所定の要因に応じて変化する変化データを記憶する。ここで、変化データとしては、例えば、時間の経過に伴って変化するデータや、画像形成装置1の使用に伴って変化するデータがある。より具体的には、現在の時刻、画像形成装置1の累積印刷枚数あるいは累積稼動時間、感光体ドラムの累積回転数あるいは累積回転時間、またはトナー残量などが挙げられる。記憶装置30に記憶される変化データは、制御装置40のタイマ機能やカウンタ機能などによって、随時更新される。
【0024】
制御装置40は、画像形成装置1全体を制御するものである。図1において、制御装置40は、特に、機能ブロックとして、表示制御部41、入力受付部42、およびモード遷移部43を有する。本実施の形態では、制御装置40の各機能は、ROM等の記憶媒体に格納されている本実施の形態に係る制御プログラムが、CPUに実行されることによって実現される。ただし、制御装置40の各機能の実現態様は、特に限定されず、例えば、専用のハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0025】
表示制御部41は、各種情報をUI10の表示画面上に表示させる。本実施の形態では、表示制御部41は、特に、記憶装置30に記憶されている変化データをUI10の表示画面上に表示させる。
【0026】
入力受付部42は、UI10を介して、操作者から操作入力を受け付ける。本実施の形態では、入力受付部42は、特に、特殊モード遷移用のパスワードの入力を受け付ける。
【0027】
モード遷移部43は、特殊モード遷移用のパスワードが入力受付部42により受け付けられた場合に、画像形成装置1の動作モードをメンテナンスモードに遷移させる。例えば、モード遷移部43は、現在の動作モードを示すパラメータを「通常モード」から「メンテナンスモード」に書き換えることによって、または、メンテナンスモード用のプログラムを呼び出すことによって、画像形成装置1の動作モードをメンテナンスモードに遷移させる。
【0028】
本実施の形態では、パスワードの盗用を防止するため、特殊モード遷移用のパスワードとして、従来のような固定パスワードではなく、記憶装置30に記憶されている変化データから所定の規則に従って生成されるパスワードを用いる。ここで、パスワード生成用の所定の規則としては、非常に多くのバリエーションが考えられるが、例えば、次のような規則が挙げられる。すなわち、変化データの全部または所定の一部をパスワードとする規則、変化データの全部または所定の一部に固定パスワードを付加したものをパスワードとする規則、変化データ(数値)に1を加えた数値をパスワードとする規則、変化データ(文字列)を逆順にした文字列をパスワードとする規則、などが挙げられる。変化データに付加される固定パスワードとしては、管理者に割り当てられた管理者パスワードや、画像形成装置1の個体識別番号が好適である。ここで、個体識別番号は、操作者に読み取り可能な態様で、画像形成装置1に保持されている。具体的には、個体識別番号は、適宜の表示手段(UI10の表示画面、シール、刻印等)により、視認可能となっている。なお、パスワードは、数字、文字、記号等、またはこれらの組み合わせにより構成される。
【0029】
以下、上記構成を有する画像形成装置1の動作について、2つの動作例を挙げて詳細に説明する。
【0030】
(第1の動作例)
図2は、第1の動作例における、画像形成装置1の動作手順を示すフローチャートである。本動作例では、記憶装置30には、変化データとして、画像形成装置1の累積稼動時間(例えば6桁の数字)が記憶されている。この累積稼動時間は、制御装置40のタイマ機能により、画像形成装置1の画像形成動作に伴って随時更新される。本動作例では、この累積稼働時間の先頭に固定パスワード「#*#*」を付加したものを特殊モード遷移用の所定のパスワードとする。このパスワードは、メンテナンスエンジニアに知らされ、一般の使用者には知らされない。
【0031】
画像形成装置1の電源が投入されると(S11)、制御装置40は、イニシャライズ等、所定の起動時処理を実行する(S12)。そして、起動時処理終了後、制御装置40は、通常モードで動作するように画像形成装置1を制御する(S13)。例えば、UI10の表示画面上に、枚数、濃度、倍率などのコピー条件の設定や、コピー開始指示の操作入力を受け付けるための待ち受け画面を表示させる。そして、この待ち受け画面における操作者の指示に応じて、プリントエンジン20に通常のコピー動作を実行させる。
【0032】
制御装置40は、特殊モード遷移用のパスワードが入力受付部42により受け付けられるまで、画像形成装置1を通常モードで動作させる(S14:NO、S13)。一方、制御装置40は、特殊モード遷移用のパスワードが入力受付部42により受け付けられると、すなわち、操作者により当該パスワードが入力されると(S14:YES)、制御装置40は、画像形成装置1の動作モードを通常モードからメンテナンスモードに遷移させ、画像形成装置1をメンテナンスモードで動作させる(S15)。具体的には、制御装置40は、UI10の表示画面を、待ち受け画面からメンテナンス画面(特殊機能入力画面ともいう)に遷移させる。そして、このメンテナンス画面における操作者の指示に応じて、動作条件の設定を変更したり、プリントエンジン20にテスト動作を実行させたりする。
【0033】
本動作例における操作者によるパスワードの入力操作は、次のとおりである。すなわち、操作者は、UI10の表示画面上で累積稼動時間を読み取った後、UI10のボタン操作により、固定パスワード「#*#*」に続けて、累積稼動時間を打ち込む。ここで、累積稼動時間は、待ち受け画面で表示されてもよいし、操作者の操作に基づく画面遷移により表示される、動作環境設定画面やステータス表示画面など、他の画面で表示されてもよい。
【0034】
なお、累積稼動時間の先頭に固定パスワード「#*#*」を付加するのは、コピー枚数の設定入力とパスワード入力とを区別するためである。
【0035】
(第2の動作例)
図3は、第2の動作例における、画像形成装置1の動作手順を示すフローチャートである。本動作例では、記憶装置30には、変化データとして、現在の時刻が記憶されている。ここでは、現在の時刻は、年月日時分(例えば、2004/01/01 01:01)に対応する12桁の数字で表される。この現在の時刻は、制御装置40のタイマ機能により、時間の経過に伴って随時更新される。本動作例では、この現在の時刻を特殊モード遷移用のパスワードとする。このパスワードは、メンテナンスエンジニアに知らされ、一般の使用者には知らされない。
【0036】
画像形成装置1の電源が投入されると(S21)、制御装置40は、所定のキー操作が行われたか否かを判断する(S22)。ここで、所定のキー操作としては、例えば、テンキーの「1」と「3」を押しながら電源を入れる操作や、電源投入直後にテンキーの「1」と「3」を5秒間押し続ける操作などが挙げられる。
【0037】
所定のキー操作が行われなかったと判断された場合(S22:NO)、制御装置40は、イニシャライズ等、所定の起動時処理を実行した後(S23)、通常モードで動作するように画像形成装置1を制御する(S24)。一方、所定のキー操作が行われたと判断された場合(S22:YES)、制御装置40は、イニシャライズ等、所定の起動時処理を実行した後(S25)、UI10の表示画面上に、パスワードの入力を促すパスワード入力画面を表示させる(S26)。なお、ステップS23における起動時処理と、ステップS25における起動時処理とは、同じであっても異なっていてもよい。
【0038】
パスワード入力画面において、操作者により入力された入力データが特殊モード遷移用のパスワードと一致する場合(S27:YES)、制御装置40は、画像形成装置1の動作モードをメンテナンスモードに遷移させる(S28)。具体的には、制御装置40は、UI10の表示画面を、パスワード入力画面からメンテナンス画面に遷移させる。そして、このメンテナンス画面における操作者の指示に応じて、動作条件の設定を変更したり、プリントエンジン20にテスト動作を実行させたりする。一方、入力データが上記所定のパスワードと一致しない場合(S27:NO)、制御装置40は、UI10の表示画面上に、パスワードが間違っている旨を示すエラー画面を表示させる(S29)。
【0039】
本動作例における操作者によるパスワード入力操作は次のとおりである。まず、操作者は、通常モードにおいて、UI10の表示画面上で現在の時刻を読み取る。ここでは、現在の時刻として、2004年6月10日15時5分が読み取られたものとする。ついで、操作者は、電源をOFFした後、電源をONするとともに上記所定のキー操作を行う。すると、起動時処理が行われた後、UI10の表示画面上にパスワード入力画面が表示される。操作者は、このパスワード入力画面において、先程読み取った時刻を打ち込む。すなわち、UI10のテンキー操作により、「200406101505」を打ち込む。
【0040】
本動作例のように現在の時刻をパスワードとする場合、操作者が表示画面上から現在の時刻を読み取ってから、読み取った時刻を打ち込み終わるまでに、時間が経過してしまう。このため、入力された時刻と記憶装置30に記憶されている現在の時刻との間にずれが生じてしまう。そこで、現在の時刻に基づくパスワードを用いる場合には、パスワードに範囲を持たせ、現在の時刻との差異の絶対値が所定時間以下である全ての時刻をパスワードとすることが好ましい。本動作例では、時刻の読み取りから起動時処理を経てパスワードが入力されるので、上記の所定時間は、画像形成装置1の起動時間とパスワードの入力操作に要する最短時間との合計時間以上であることが好ましい。また、時刻の読み取り時点はパスワードの入力時点よりも過去であるので、現在の時刻より過去である時刻をパスワードとすることが好ましい。例えば、画像形成装置1の起動時間とパスワードの入力操作に要する最短時間との合計時間が2分である場合において、記憶装置30に記憶されている現在の時刻が「200406101710」であるときには、「200406101707」(3分前の時刻)〜「200406101710」(現在の時刻)の範囲の時刻をパスワードとして認めるとよい。
【0041】
なお、現在の時刻が事前に設定されておらず、記憶装置30に現在の時刻が保持されていない場合には、例えば、操作者は、所定の固定パスワードを用いてメンテナンスモードに遷移し、メンテナンス画面上で時刻設定を行う。そして、時刻設定後は、上記のとおり、現在の時刻に基づくパスワードを用いてメンテナンスモードに遷移する。
【0042】
上記説明した本実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
【0043】
(1)所定の要因に応じて変化する変化データから所定の規則に従って生成されるパスワードを、特殊モードに遷移するためのパスワードとする。このため、操作者により打ち込まれるパスワードを毎回違ったものにすることができ、一般の使用者によるパスワードの盗み見、類推、または推測を防ぐことができる。また、盗み見、類推、あるいは試行錯誤などによって、一度パスワードが見破られた場合に、永続的にパスワードが盗用されることを防ぐことができる。このように、本実施の形態によれば、特殊モード遷移用のパスワードが盗用される可能性を低減させることができる。この結果、一般の使用者による特殊モードの使用を防止することができ、誤った動作条件の設定等による故障や事故等の不利益を回避することができる。
【0044】
(2)装置毎あるいは機種毎に別々のパスワードを設定する場合、管理者は個々のパスワードを記憶しなければならず、管理者に掛かる負担が大きい。各装置のパスワードをメモや記憶メディアに保存することとしても、パスワードを検索しなければならず、管理者に掛かる負担が大きい。また、この場合、メモ等を紛失したときに情報の漏洩に繋がってしまう。これに対し、本実施の形態では、管理者は、表示画面上で変化データを読み取り、この変化データに基づくパスワードを打ち込めばよいので、管理者の負担を軽減することができる。例えば、装置毎あるいは機種毎のパスワードを記憶する訓練を省くことができる。
【0045】
(3)変化データの全部または所定の一部をパスワードとするので、パスワードの生成規則が簡易であるため、管理者の負担を軽減することができる。
【0046】
(4)上記第2の動作例では、現在の時刻をパスワード生成用の変化データとするので、現在の時刻を確認すること自体に違和感がなく、一般の使用者の類推や推測を防ぐことができる。
【0047】
また、現在の時刻との差異の絶対値が所定時間以下である全ての時刻をパスワードとするので、時刻の読み取りから入力までの間の時間経過が考慮された適切なパスワードの設定を行うことができる。これにより、正当な管理者がパスワードを打ち込んだ場合に、時間経過により特殊モードに遷移できない事態を回避することができる。
【0048】
さらに、現在の時刻より過去の時刻をパスワードとするので、一般の使用者により入力されたパスワードが偶然にも所定のパスワードと合致してしまう確率を半分にすることができる。
【0049】
また、起動時または起動直後に所定の操作入力を受け付けたときにパスワードの入力を促す画面を表示画面上に表示させ、この画面を介して操作者からパスワードの入力を受け付ける場合において、上記所定時間を、画像形成装置の起動時間とパスワードの入力操作に要する最短時間との合計時間以上とする。これにより、時刻の読み取りから起動時処理を経てパスワードが入力される場合において、起動時間とパスワードの入力時間とが考慮された適切なパスワードの設定を行うことができる。
【0050】
(5)上記第1の動作例では、画像形成装置の累積稼動時間をパスワード生成用の変化データとするので、累積稼動時間を確認すること自体に違和感がなく、一般の使用者の類推や推測を防ぐことができる。また、累積稼動時間は画像形成動作が実行されない限り変化しないので、画像形成動作が実行されない限り、変化データを読み取ってからパスワードを入力するまでの間に変化データが変化してしまう事態が生じない。これらの効果は、累積稼動時間に限られず、画像形成装置の累積印刷枚数、または、感光体ドラムの累積回転数あるいは累積回転時間など、画像形成装置の使用に伴って変化する変化データであれば、同様に得ることができる。
【0051】
(6)変化データの全部または所定の一部に固定パスワードを付加したものをパスワードとした場合、現在の時刻や累積稼動時間が遷移用のパスワードに含まれることが見破られたとしても、固定パスワードがあるので、パスワード全体が知られることを回避することができる。このとき、画像形成装置の個体識別番号を固定パスワードとすれば、画像形成装置毎に異なる固定パスワードを持たせることができ、ある画像形成装置について見破られたパスワードが他の画像形成装置で使用されることを回避することができる。また、個体識別番号を確認すること自体に違和感がなく、一般使用者の類推や推測を防ぐことができる。また、管理者は各装置の固定パスワードを記憶する必要がないので、管理者の負担を軽減することができる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明が上記の実施の形態に限定されないことは言うまでもない。
【0053】
例えば、本発明は、画像形成装置に限られず、パーソナルコンピュータ等の情報処理機器、テレビジョン等の映像機器、電子レンジ等の家電機器、携帯電話機等の通信機器など、広く電子機器に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の動作例における、画像形成装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図3】第2の動作例における、画像形成装置の動作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1 画像形成装置、10 ユーザインタフェース(UI)、20 プリントエンジン、30 記憶装置、40 制御装置、41 表示制御部、42 入力受付部、43 モード遷移部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その利用が特定の管理者に限定されるべき特殊モードを、動作モードの一つとして有する画像形成装置であって、
所定の要因に応じて変化する変化データを記憶する記憶手段と、
当該記憶手段に記憶されている変化データを表示する表示手段と、
操作者から操作入力を受け付ける入力手段と、
前記記憶手段により記憶されている変化データから所定の規則に従って生成されるパスワードが、前記入力手段により受け付けられた場合に、当該画像形成装置の動作モードを前記特殊モードに遷移させるモード遷移手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記パスワードは、前記変化データの全部または所定の一部であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置であって、
前記変化データは、現在の時刻であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置であって、
前記パスワードは、現在の時刻との差異の絶対値が所定時間以下である、全ての時刻であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置であって、
前記パスワードは、現在の時刻より過去の時刻であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の画像形成装置であって、
起動時または起動直後に所定の操作入力を受け付けた場合に、パスワードの入力を促すパスワード入力画面を表示画面上に表示させ、
前記入力手段は、前記パスワード入力画面を介して操作者からパスワードの入力を受け付け、
前記所定時間は、当該画像形成装置の起動時間とパスワードの入力操作に要する最短時間との合計時間以上である、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の画像形成装置であって、
前記変化データは、当該画像形成装置の使用に伴って変化するデータであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置であって、
前記変化データは、当該画像形成装置の累積印刷枚数あるいは累積稼動時間、または、感光体ドラムの累積回転数あるいは累積回転時間であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記パスワードは、前記変化データの全部または所定の一部に、固定パスワードが付加されてなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9に記載の画像形成装置であって、
前記固定パスワードは、操作者に読み取り可能な態様で当該画像形成装置に保持されている、当該画像形成装置の個体識別番号であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
その利用が特定の管理者に限定されるべき特殊モードを、動作モードの一つとして有し、所定の要因に応じて変化する変化データが記憶される記憶領域を備える画像形成装置、の制御装置であって、
前記記憶領域に記憶されている変化データを表示画面上に表示させる表示制御手段と、
操作者から操作入力を受け付ける入力受付手段と、
前記記憶領域に記憶されている変化データから所定の規則に従って生成されるパスワードが、前記入力受付手段により受け付けられた場合に、当該画像形成装置の動作モードを前記特殊モードに遷移させるモード遷移手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置の制御装置。
【請求項12】
その利用が特定の管理者に限定されるべき特殊モードを、動作モードの一つとして有し、所定の要因に応じて変化する変化データが記憶される記憶領域を備える画像形成装置を、
前記記憶領域に記憶されている変化データを表示画面上に表示させる表示制御手段、
操作者から操作入力を受け付ける入力受付手段、および、
前記記憶領域に記憶されている変化データから所定の規則に従って生成されるパスワードが、前記入力受付手段により受け付けられた場合に、当該画像形成装置の動作モードを前記特殊モードに遷移させるモード遷移手段、
として機能させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項13】
その利用が特定の管理者に限定されるべき特殊モードを、動作モードの一つとして有し、所定の要因に応じて変化する変化データが記憶される記憶領域を備える画像形成装置の制御方法であって、
前記記憶領域に記憶されている変化データを表示画面上に表示させる表示ステップと、
操作者から操作入力を受け付ける入力受付ステップと、
前記記憶領域に記憶されている変化データから所定の規則に従って生成されるパスワードが、前記入力受付ステップで受け付けられた場合に、当該画像形成装置の動作モードを前記特殊モードに遷移させるモード遷移ステップと、
を有することを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項14】
その利用が特定の管理者に限定されるべき特殊モードを、動作モードの一つとして有する電子機器であって、
所定の要因に応じて変化する変化データを記憶する記憶手段と、
当該記憶手段に記憶されている変化データを表示する表示手段と、
操作者から操作入力を受け付ける入力手段と、
前記記憶手段により記憶されている変化データから所定の規則に従って生成されるパスワードが、前記入力手段により受け付けられた場合に、当該電子機器の動作モードを前記特殊モードに遷移させるモード遷移手段と、
を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−1087(P2006−1087A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178392(P2004−178392)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】