説明

画像形成装置及び、プロセスカートリッジ

【課題】 クリーニング部材のクリーニング性を維持し、ブレード捲れの発生を抑える。
【解決手段】 クリーニング部材のブレードの端部のみにイソシアネート化合物を含浸させる処理を行なう。含浸処理は、ブレード端部から画像形成可能領域とトナーコート領域の間まで行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング部材を用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置において、感光体ドラムにトナー像を形成して、記録媒体に感光体ドラム上のトナー像を転写する工程を繰り返す過程で、記録媒体に転写せずに感光体ドラム上に残ったトナー(現像剤)を除去する必要がある。この転写後に感光体ドラム上に残留したトナーを除去するクリーニング手段として、ファーブラシやブレードがある。しかし、生産性、コスト、性能の面からポリウレタンゴムからなるクリーニングブレードが主流となっている。クリーニングブレードは、通常、感光体ドラムの回転方向に対してカウンター方向に圧接配置されている。
【0003】
しかしながら、クリーニングブレードは感光体ドラムの回転方向に対してカウンター方向に当接しているので、感光体ドラムとクリーニングブレードの間の摩擦力が過大になる。すると、クリーニングブレードのエッジが感光体ドラムの回転方向に反転して、クリーニングブレードの捲れが発生する場合がある。
【0004】
通常、感光体ドラム上にトナーが現像される領域は画像形成領域内(印字可能領域内)であるが、微量の飛散したトナーが現像領域外(トナーコート領域外)の感光体ドラムに付着する場合がある。このような飛散トナーの付着を極力低減するため、画像形成領域外の両端部では帯電領域を広くとり、電気的にトナーを引きつけ難くい構成としている。しかしながら、このような構成とした場合でもトナーの付着を皆無にすることは困難である。そこで、クリーニングブレード3の長手方向の長さを十分長くして、画像形成領域外をも含めた十分な範囲のクリーニングを行なう必要がある。
【0005】
その一方、画像形成領域外は画像形成領域に比べてクリーニングブレードに達するトナー又は外添剤の量が少ない。トナーや外添剤はクリーニングブレードと感光ドラムの滑性を維持する効果があるが、トナーや外添剤の少ない画像形成領域外はクリーニングブレード捲れが発生しやすい。
【0006】
そこで、クリーニングブレード捲れを軽減させる為に、ブレード長手全域にイソシアネート化合物を含浸させたもの(特許文献1、特許文献2参照)や、ブレード両端部に樹脂膜をコーティングしたもの(特許文献3参照)が従来例としてある。
【特許文献1】特開2001−75451
【特許文献2】特開2003−122222
【特許文献3】特開2002−162885
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ウレタン樹脂より形成されたクリーニングブレードにイソシアネート化合物を含浸させることにより膨潤が生じる。その為、クリーニングブレードが感光体ドラムと当接する部分において波打ちが生じ、トナーや外添剤のすり抜けが生じる可能性がある。
【0008】
また、クリーニングブレードの両端部に樹脂膜を塗布すると、樹脂膜を塗布した場所と塗布しない場所で段差が生じてしまい、トナーがすり抜けてしまう可能性がある。
【0009】
その為に、本発明ではクリーニング性を維持し、ブレードの捲れを抑えることのできるクリーニング部材を有する画像形成装置及び、プロセスカートリッジの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジであって、
像担持体と、
前記像担持体の表面に形成された静電潜像を、現像剤を用いて現像する現像部材と、
前記像担持体の表面から現像剤を除去するための、前記像担持体の長手方向に沿って前記像担持体と当接するブレードを有するクリーニング部材であって、前記長手方向において前記ブレードの一端側と他端側にイソシアネート化合物を含浸した処理部を有し、前記長手方向において前記処理部の内側端部が、前記長手方向において前記現像部材に前記現像剤を担持可能な現像剤担持可能領域よりも内側に位置するクリーニング部材と、
を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、クリーニング部材のクリーニング性能を維持しつつ、像担持体の移動によるクリーニング部材のブレードの捲れを抑えることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(画像形成装置の構成と動作の概略)
図2は本実施例の画像形成装置の概略構成図である。本実施例の画像形成装置150は、電子写真方式を採用し、プロセスカートリッジ250が着脱可能なレーザプリンタである。
【0013】
1は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体である。本実施例の感光体ドラム1は負帯電性の有機感光体であり、駆動用モータ(不図示)によって矢印W1方向に所定の周速度で回転する。
【0014】
感光体ドラム1はその回転過程で帯電ローラ2によって負の所定電位に一様に帯電処理を受ける。帯電ローラ2は感光体ドラム1に対して従動回転する。帯電ローラ2に対しては、帯電バイアス電源(不図示)からバイアス電圧が印加され、感光体ドラム1の表面を均一に帯電する。
【0015】
次いで露光装置21による露光を受ける。露光装置21は、帯電された感光ドラム1に静電潜像を形成するものであり、本実施例では、半導体レーザスキャナを用いた。露光装置21は、画像形成装置150内のホスト装置(不図示)から送られてくる画像信号に対応して変調されたレーザ光を出力する。そして、後述するプロセスカートリッジ250の露光窓部9を介して感光体ドラム1の均一帯電面を走査露光(像露光)する。感光体ドラム1の表面は露光箇所の電位の絶対値が帯電電位の絶対値に比べて低くなることによって、画像情報に応じた静電潜像が順次形成される。
【0016】
次いでその静電潜像は現像装置5によって現像されてトナー像として顕像化される。本実施例では、ジャンピング現像方式を用いた。この方式では、現像バイアス電源(不図示)から現像部材である現像ローラ7に対して交流と直流を重畳した現像バイアス電圧を印加する。そして、現像剤層厚規制部材6と現像ローラ7の接触箇所で摩擦帯電により負極性に帯電されたトナー(現像剤)を感光体ドラム1の表面の静電潜像に適用して静電潜像を反転現像する。
【0017】
その感光体ドラム1の表面のトナー像が給紙カセット60から給送された記録媒体Pに対して転写ローラ22にて転写される。給送は、所定の制御タイミングで、給紙カセット60のピックアップローラ61と給紙ローラ62が回転駆動される。これにより、給紙カセット60に積載収納されている記録媒体Pが1枚づつ分離給紙され、感光ドラム1での潜像の形成と同期してレジローラ63まで供給される。そして、この記録媒体Pは、感光ドラム1上に形成された潜像の先端と同期して、レジローラ63によって転写ローラ22に搬送される。
【0018】
転写ローラ22は感光体ドラム1に対して感光体ドラム1の中心方向に押圧バネ(不図示)によって押圧されている。記録媒体Pが搬送されて転写工程が開始されると、転写バイアス電源(不図示)から転写ローラ22に対して正極性の転写バイアス電圧が印加され、負極性に帯電している感光体ドラム1上のトナーは記録媒体P上に転写される。
【0019】
トナー像の転写を受けた記録媒体Pは感光体ドラム面から分離されて定着装置23へ搬送されてトナー像の定着処理を受ける。定着装置23は、記録媒体Pに転写されたトナー像を熱や圧力などの手段を用いて記録媒体Pに定着するものである。
【0020】
記録媒体にトナーを転写した後の感光体ドラム1の表面はクリーニング装置4により転写残トナーを掻き取られて清掃され、繰り返して画像形成に供される。本実施例のクリーニング装置4は、ブレード3aと、ブレード3aを支持する板金からなる支持部材3bを有するクリーニング部材3を備えている。クリーニング部材は、転写工程時に感光体ドラム1から記録媒体Pに転写し切れなかった転写残トナーを除去するものである。ブレード3aは、一定の圧力で感光体ドラム1に長手方向に沿って当接している。そして、ブレード3aは転写残トナーを除去することによって感光体ドラム1の表面を清掃する。ここで、ブレード3aは、感光体ドラム1の回転方向に対してカウンターになるような角度をもって当接している。そして、クリーニング工程終了後、感光体ドラム1の表面は再び帯電工程に入る。
【0021】
また、転写ローラ22を通った記録媒体Pは感光ドラム面から分離されて定着装置23に導入される。記録媒体Pはこの定着装置23で未定着のトナー像が熱と圧力により固着像として定着される。そして、定着装置23を出た記録媒体は排紙ローラ64により装置外部の排紙トレイ65にプリントとして排出される。
【0022】
画像形成装置150は、上記の手段を用い、帯電、露光、現像、転写、定着、クリーニングの各工程を繰り返して画像形成を行なう。
【0023】
ここで、プロセスカートリッジ250は、感光体ドラム1、帯電ローラ2、クリーニング装置4、現像装置5を一体的にカートリッジ化したものである。そしてカートリッジ250は前述したように、画像形成装置本体150に対して着脱可能とするものである。
【0024】
このような画像形成装置150において、クリーニング部材3の構成を実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。
【0025】
(ブレードの成型)
まず、本実施形のブレード3aの製造方法について説明する。
【0026】
本実施形におけるブレード3aは、ポリイソシアネート化合物と多官能性の活性水素化合物から製造される。
【0027】
本実施形で用いることのできるポリイソシアネート化合物としては、通常のポリイソシアネートと多官能の活性水素化合物である高分子ポリオールとを反応して得られるプレポリマーやセミプレポリマーを用いることが好ましい。プレポリマーやセミプレポリマーのイソシアネート基含有量(NCO%)としては、良好な弾性特性を実現するために、5〜20質量%が好ましい。なお、前記イソシアネート基含有量(NCO%)とは、ポリウレタン樹脂の原料であるプレポリマー又はセミプレポリマー中に含まれるイソシアネート官能基(NCO、分子量は42として計算する)の質量%である。
【0028】
前記プレポリマーやセミプレポリマー等を調製するために通常用いるポリイソシアネートの具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等を挙げることができる。また、前記プレポリマーやセミプレポリマー等を調製するための活性水素化合物である高分子ポリオールの具体例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、カプロラクトンエステルポリオール、ポリカーボネートエステルポリオール、シリコーンポリオール等を挙げることができる。そして、これらの重量平均分子量は通常500〜5000が好ましい。
【0029】
また、本実施形に用いることのできる架橋剤の具体例としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。
【0030】
なお、前記ポリイソシアネート化合物と高分子ポリオール、ポリイソシアネート及び架橋剤を反応させる際には、ポリウレタン樹脂の形成に用いられる通常の触媒を添加する場合もある。このような触媒の具体例としては、トリエチレンジアミン等を挙げることができる。
【0031】
本実施形におけるポリウレタン樹脂で形成されたブレード3aの成形方法としては、高分子ポリオール、ポリイソシアネート、架橋剤及び触媒等を一度に混合して、金型に注型して成形する。その際に、支持部材3bに直接ポリウレタン樹脂からなるブレード3aを成形し、感光体ドラム1との当接部を精度よく作製する為、ポリウレタン樹脂で形成したブレード3aは先端部を切断して作製される。
【0032】
(処理部の形成)
次に、上記したようにして得られたポリウレタン樹脂で形成されたブレード3aに処理部を形成する方法について説明する。
【0033】
前記処理部の形成方法として、例えば、下記工程を有する方法を挙げることができる。
(1)ポリウレタン樹脂で形成されたブレード3aの感光体ドラム当接部の長手方向両端部にイソシアネート化合物を接触させる工程、
(2)イソシアネート化合物をブレード3a表面に接触させた状態で、放置することによりイソシアネート化合物をブレード3a中に含浸させる工程、
(3)含浸後、ブレード3aの表面に残留しているイソシアネート化合物を除去する工程、及び、
(4)ブレード3a中に含浸したイソシアネート化合物を反応させることにより処理部を形成する工程。
【0034】
すなわち、工程(1)及び(2)において、ポリウレタン樹脂で形成されたブレード3a先端の長手方向両端部にイソシアネート化合物を適当量含浸させる。工程(3)において余分なイソシアネート化合物をブレード3aの表面から取り除き、工程(4)において、イソシアネート化合物を反応させて処理部を形成する。
【0035】
工程(4)においては、ブレード3aを形成するポリウレタン樹脂とイソシアネート化合物とが反応してアロファネート結合を形成し、硬化して高硬度の処理部3a1、3a2が形成されると考えられる。処理部3a1、3a2は、ブレード3aの長手方向の一端側と他端側にそれぞれ設けられる。
【0036】
すなわち、ブレード3aを形成するポリウレタン樹脂中には活性水素を有するウレタン結合が存在している。そして、工程(4)でこのウレタン結合と含浸されたイソシアネート化合物とが反応しアロファネート結合を形成することにより高硬度の処理部3a1、3a2が形成されると考えられる。また、イソシアネート化合物同士での反応による多量化反応(例えば、カルボジイミド化反応、イソシアヌレート化反応など)も同時に進行し、高硬度部の形成に寄与するものと考えられる。この結果、処理部3a1、3a2の硬さは向上し、摩擦係数が低下し、ブレード3aの耐久性を改良することができるものと考えられる。
【0037】
前記ブレード3aに含浸させるイソシアネート化合物としては、分子中に1個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を用いることができる。分子中に1個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、オクタデシルイソシアネート(ODI)等の脂肪族モノイソシアネート、芳香族モノイソシアネート等を挙げることができる。
【0038】
また、前記ブレード3aに含浸させる分子中に2個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物として、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、m−フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等を用いることができる。
【0039】
本実施形においては、イソシアネート化合物の反応を促進するために、イソシアネート化合物に加え、触媒もポリウレタン樹脂に含浸させることができる。
【0040】
イソシアネート化合物と共に用いる触媒の例としては、第4級アンモニウム塩、カルボン酸塩等を挙げることができる。第4級アンモニウム塩としては、DABCO社製のTMR触媒等を例示することができる。カルボン酸塩としては、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム等を例示することができる。これらの触媒は非常に粘調であったり、含浸時に固体であったりするので、予め溶剤に溶解してからイソシアネート化合物に添加し、ポリウレタン樹脂に含浸することが好ましい。
【0041】
イソシアネート化合物のブレード3aへの含浸は、例えば、繊維質状の部材や多孔質の部材にイソシアネート化合物を含浸させ、ブレード3aに塗布する方法や、スプレーにより塗布する方法などによって行なうこともできる。
【0042】
以上の様にして、所定時間イソシアネート化合物をブレード3aに含浸させる。最終的に得られるブレード3aの処理具合を所望の範囲とするためには、イソシアネート化合物とポリウレタン樹脂で形成されたブレード3aとの接触時間は5分以上とすることが好ましく、10分以上とすることが更に好ましい。また、この接触時間は1時間以下とすることが好ましく、量産性を考慮すると、40分以下とすることが更に好ましい。
【0043】
ついで、工程(3)において、ブレード3a表面に残存するイソシアネート化合物を、イソシアネート化合物を溶解できる溶剤を用いて拭き取る。もし、含浸後に、過剰に残留しているイソシアネート化合物の除去が均一に行われないと、処理部の表面に、微妙な凸部が発生し、感光ドラム1上に残留するトナーをクリーニングするとき、この凸部の周りでトナーがすり抜け、クリーニング不良を生じる。
【0044】
そこで、イソシアネート化合物を溶解できる溶剤を用いて、ブレード3a表面に付着したイソシアネート化合物を十分に除去する工程が必要になる。ここで用いることのできる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0045】
また、除去する手段としては、例えば、ポリウレタン樹脂で形成されたブレード3aを傷つけない程度の硬さのスポンジ等に上記溶剤を少量含ませ、ブレード3a表面に付着している過剰なイソシアネート化合物を拭き取るなどの方法が挙げられる。
【0046】
以上の工程を経た後、工程(4)において、含浸させたイソシアネート化合物は、反応してアロファネート結合を形成し、あるいは空気中の水分との反応によって殆どが消費されて白色不透明な高硬度な処理層が形成される。そして、表面が平滑なブレード3aを得ることができる。このように作成されたブレード3aは、図3に示すようにイソシアネート化合物を含浸処理した部分がブレード3aの厚み方向であるY方向へ膨潤する。この時のブレード3aの厚み方向Y方向の膨潤を図4と図5を用いて説明する。
【0047】
図4は本実施形のブレード3aを真上から見た模式図である。図5は真横方向からみた模式図である。イソシアネート化合物がポリウレタン樹脂から形成されたブレード3aに含浸されることにより、ブレード3aの幅方向Y方向に膨潤が生じる。この膨潤幅hは、支持部材3bの厚み方向Y方向の一端側9aから処理部3a1、3a2までの距離Sと、一端側3b1から処理部以外の領域である未処理部3a3までの距離Mとの差から求めることができる。膨潤幅hを正確に測る為に、距離Mはブレード長手中央を中心に長手方向で1mm間隔で3点測定しその平均を用いた。また距離Sは、処理部3a1、3a2の最大値を用いた。実際の膨潤幅hの測定方法を図6に示す。支持部材3bをブレード板金支持部200に取り付ける前に、ブレード板金支持部200のエッジ先端200aの位置をマイクロメータ210で測定しておく。次に、支持部材3bをブレード板金支持部200に取り付け、距離S、距離Mの測定を行った。
【0048】
また、イソシアネート化合物を含浸させて処理部3a1、3a2を形成すると、処理部3a1、3a2の内側端部3a1t、3a2tは図4のようになる。即ち、略膨潤幅がhとなるところから、内側端部3a1L、3a2Rに向かって、膨潤幅が徐々に小さくなる領域が存在する。ここで、特に膨潤幅hの90%から10%に膨潤幅が変化する領域を遷移領域とする。
【0049】
(処理部の位置関係)
次に、ブレード3aのイソシアネート化合物を含浸させた処理部の端部の位置について説明する。図1には、ブレード3aと他の構成要素との長手方向の関係を示した。まず、ドラム1表面に画像形成可能な画像形成領域Aがある。そして、長手方向において画像形成領域Aを現像可能にするために、画像形成領域Aを覆う領域において、現像ローラ7の表面に現像剤(トナー)を担持することができる現像剤担持可能領域(以下、トナーコート領域という。)Bがある。そして、トナーコート領域Bより外側において、感光ドラム1の表面上にトナーの付着を防止するために、トナーコート領域Bよりも広い、帯電ローラ2によって帯電可能な帯電領域Cがある。しかし、トナーコート領域Bよりも広い帯電領域Cにも、トナーが僅かであるが付着する可能性があるので、帯電領域Cよりも長手方向に長い範囲を覆う長さのブレード3aが設けられている。そして、ブレード3aの長手方向の一端側と他端側にはイソシアネート化合物を用いた含浸した処理部3a1、3a2が施されている。また、画像形成領域A、トナーコート領域B、帯電領域C、ブレード3aのそれぞれの端部を端部a、端部b、端部c、端部tとする。
【0050】
尚、クリーニングブレード3の使用時初期において、ブレード3aの未処理部3aと感光体ドラム1の間の摩擦力が増大することにより、ブレード3aがめくれる可能性がある。それを防止するために、ブレード3aの長手全域に予め潤滑剤を塗布している。潤滑剤は平均粒径3μmのフッ化黒鉛(商品名 セフボン:セントラル硝子社製)を溶媒としてハイドロフルオロエーテル(HFE)に重量比10%分散させ、これをブレードに塗布した後に乾燥して用いた。
【0051】
(クリーニングブレードの評価)
また、このブレード3aの評価には、ヒューレット・パッカード社製レーザービームプリンター「LaserJet4350」を用いた。評価は比較的厳しい環境で行なうために、ブレード捲れの評価を高温高湿環境(32.5℃、80%)で、クリーニング性の評価は、低温低湿環境(15℃、10%)で行なった。今回の実施例及び比較例の結果を表1にまとめた。
【0052】
〔実施例1〕
実施例1で用いたブレード3aはポリウレタン樹脂で形成され、前述した工程(1)で、長手方向の一端側と他端側に、イソシアネート化合物を適当量含浸させた。そして、処理部3a1、3a2を、ブレード3aの端部tから画像形成領域Aの端部aとトナーコート領域Bの端部bの間(領域ii)まで形成されている。さらに、前述した工程(2)において、イソシアネート化合物をブレード3aに接触後20分間放置することによって、ブレード3aの膨潤幅hが30μmになるように設定している。また、遷移領域Wは約1mm形成され、領域ii内に入るようになっている。
【0053】
この条件のブレード3aを評価した結果、ブレード捲れは2万枚のプリント後も発生は無く、クリーニング性も良好であった。
【0054】
〔比較例1〕
比較例1では、処理部3a1、3a2を、ブレード3aの端部tから帯電領域Cの端部cとトナーコート領域Bの端部bの間(領域i)まで形成した点が実施例1とは異なっている。その他は、実施例1と同じである。
【0055】
この条件のブレード3aを評価した結果、クリーニング性は2万枚のプリント後も良好であったが、ブレード捲れは3千枚のプリント後に捲れが発生した。
【0056】
この結果から、ブレード捲れを防止するためには少なくとも、処理部3a1、3a2の内側端部3a1t、3a2tを端部aと端部bの間(領域ii)まで形成する必要があることが分かる。
【0057】
〔比較例2〕
比較例2では、ブレード3aの膨潤幅hを40μmに設定している点が実施例1とは異なっている。その他は、実施例1と同じである。そのために、前述した工程(2)において、イソシアネート化合物をブレード3aに接触後30分間放置している。
【0058】
この条件のブレード3aを評価した結果、ブレード捲れは2万枚のプリント後も発生は無かった。しかし、2万枚のプリント後に、処理部3a1、3a2の内側端部3a1t、3a2t付近で、トナーがすり抜けたことによるクリーニング不良が発生した。
【0059】
この結果から、膨潤幅hが40μmと比較的大きいと、そこからトナーのすり抜けによるクリーニング不良により、画像不良が発生してしまう。
【0060】
これまでの結果より、ブレード3aの長手方向の一端側と他端側にイソシアネート化合物をブレード3aの端部tからトナーコート領域よりも内側まで含浸させることによって、ブレード捲れを抑えることが可能である。これは比較例1から、処理部3a1、3a2の内側端部3a1t、3a2tがトナーコート領域Bよりも外側にあると、ブレード捲れが発生してしまったことからも言える。
【0061】
また、ブレード3aの長手方向の一端側と他端側にイソシアネート化合物を含浸させることによって、ブレード3aに膨潤が生じ、この膨潤により処理部と未処理部3a3に段差が生じる。この膨潤幅hが30μm以下であることにより、クリーニング不良による画像不良の発生も無く、ブレード捲れの発生を抑えることが出来る。これは、比較例2で、膨潤幅hが40μmであった時に、トナーのすり抜けによるクリーニング不良が発生した事から言える。
【0062】
〔実施例2〕
実施例2では、前述した工程(1)で、イソシアネート化合物を適当量含浸させ、処理部3a1、3a2を、ブレード3aの端部tから画像形成領域Aの端部aの内側(領域iii)まで形成されている。この点において、実施例1と異なる他は、実施例1と同じである。
【0063】
この条件のブレード3aを評価した結果、ブレード捲れは2万枚のプリント後も発生は無かった。しかし、低温低湿環境で1万枚プリントからハーフトーン画像で軽微な縦スジが発生した。これは、トナーよりも粒径の小さな外添剤が処理部3a1、3a2の内側端部3a1t、3a2t付近からすり抜けて帯電ローラ2を汚してしまったことにより、汚れた部分で帯電不良が発生した為と思われる。これは実際の使用上大きな問題ではないが、より好ましくは処理部3a1、3a2の内側端部3a1t、3a2tはトナーコート領域Bよりも内側で、かつ画像形成領域Aより外側にすることが望ましいことが言える。
【0064】
〔実施例3〕
実施例3では、ブレード3aの膨潤幅hを10μmに設定している点が実施例1とは異なっている。その他は、実施例1と同じである。そのために、前述した工程(2)において、イソシアネート化合物をブレード3aに接触後10分間放置している。
【0065】
この条件のブレード3aを評価した結果、ブレード捲れは2万枚のプリント後も発生は無く、クリーニング性も良好であった。
【0066】
〔実施例4〕
実施例4では、ブレード3aの膨潤幅hを5μmに設定している点が実施例1とは異なっている。その他は、実施例1と同じである。そのために、前述した工程(2)において、イソシアネート化合物をブレード3aに接触後5分間放置している。
【0067】
この条件のブレード3aを評価した結果、ブレード捲れは2万枚のプリント後も発生は無く、クリーニング性も良好であった。しかし、プリント中にブレードと感光体ドラムの摺擦による騒音(ビビリ音)が発生した。
【0068】
これは実際の使用上大きな問題ではないが、より好ましくは膨潤幅hを10μm以上30μm以下にすることが望ましいことが言える。
【0069】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】プロセスカートリッジ構成の長手位置関係
【図2】画像形成装置の構成図
【図3】本発明のクリーニングブレードを説明する為の模式図
【図4】本発明のクリーニングブレードを説明する為に先端方向から見た模式図
【図5】本発明のクリーニングブレードを説明する為に真横から見た模式図
【図6】本発明のクリーニングブレード膨潤幅の測定装置模式図
【符号の説明】
【0071】
1 感光体
2 帯電ローラ
3 クリーニング部材
4 クリーニング装置
5 現像装置
6 現像剤層厚規制部材
7 現像ローラ
9 支持部材
21 露光装置
22 転写ローラ
23 定着装置
60 給紙カセット
61 ピックアップローラ
62 搬送ローラ
63 レジローラ
64 排紙ローラ
65 排紙トレイ
X クリーニングブレードの長手方向
Y クリーニングブレードの厚み方向
Z クリーニングブレードの自由長方向
200 クリーニングブレード板金支持部
210 マイクロメータ
P 記録媒体
M 支持部材から未処理部の距離
S 支持部材から処理部の距離
h 膨潤幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジであって、
像担持体と、
前記像担持体の表面に形成された静電潜像を、現像剤を用いて現像する現像部材と、
前記像担持体の表面から現像剤を除去するための、前記像担持体の長手方向に沿って前記像担持体と当接するブレードを有するクリーニング部材であって、前記長手方向において前記ブレードの一端側と他端側にイソシアネート化合物を含浸した処理部を有し、前記長手方向において前記処理部の内側端部が、前記長手方向において前記現像部材に前記現像剤を担持可能な現像剤担持可能領域よりも内側に位置するクリーニング部材と、
を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項2】
前記処理部の内側端部は、前記現像剤担持可能領域よりも内側で、かつ、前記長手方向において記録媒体に画像を形成可能な画像形成領域よりも外側に位置することを特徴とする請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項3】
前記ブレードの幅方向において、前記処理部と前記処理部以外の未処理部との段差は30μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項4】
前記ブレードの幅方向において、前記処理部の最大値と前記処理部以外の未処理部との段差は10μm以上30μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項5】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
像担持体と、
前記像担持体の表面に形成された静電潜像を、現像剤を用いて現像する現像部材と、
前記像担持体の表面から現像剤を除去するための、前記像担持体の長手方向に沿って前記像担持体と当接するブレードを有するクリーニング部材であって、前記長手方向において前記ブレードの一端側と他端側にイソシアネート化合物を含浸した処理部を有し、前記長手方向において前記処理部の内側端部が、前記長手方向において前記現像部材に前記現像剤を担持可能な現像剤担持可能領域よりも内側に位置するクリーニング部材と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記処理部の内側端部は、前記現像剤担持可能領域よりも内側で、かつ、前記長手方向において前記記録媒体に画像を形成可能な画像形成領域よりも外側に位置することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ブレードの幅方向において、前記処理部と前記処理部以外の未処理部との段差は30μm以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記ブレードの幅方向において、前記処理部の最大値と前記処理部以外の未処理部との段差は10μm以上30μm以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−42581(P2009−42581A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208738(P2007−208738)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】