説明

画像形成装置及びその制御方法

【課題】キャリブレーション機能を備えたプリンタでは、キャリブレーションの実行中には印刷を行うことができず、ユーザが印刷物を手にするまでに多くの時間がかかってしまうという問題があった。
【解決手段】印刷ジョブを受信する手段と、予め設定されている条件が満たされた場合に、キャリブレーションの実行を要求する手段と、前記受信した印刷ジョブを解析し、前記要求に係るキャリブレーションの実行を延期するかどうかを判定する判定手段と、前記要求に係るキャリブレーションの実行を延期すると判定された場合に、指定された延期時間に対応して、前記要求に係るキャリブレーションの実行を延期する設定を行う延期設定手段と、前記延期設定手段における設定に従って、前記要求に係るキャリブレーションの実行を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、その制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタなどの画像形成装置は、画質を補正するために、キャリブレーション機能を有している。例えば、電子写真記録方式のカラープリンタの場合、キャリブレーションとして、色ずれ調整(レジストレーション調整)やトナー濃度調整などの処理が行われる。このキャリブレーションは、温度や湿度などの環境変動があったとき、一定の枚数を印刷したとき、一定の時間が経過したとき等に実行され、これにより一定の画質を維持している。
【0003】
このようにキャリブレーションには重要な意義があるが、キャリブレーションの実行中は印刷ジョブを処理することができなくなってしまう。そのため、キャリブレーションの実行によって印刷処理が待たされ、結果的にユーザが印刷物を手にするまでに多くの時間がかかってしまうという問題があった。モノクロ印刷の場合などキャリブレーションを必要としない印刷ジョブも存在するところ、そのような場合にまでキャリブレーションの実行によって印刷ができないという状況は時間の浪費でしかないため、改善が望まれていた。
【0004】
この点、従来技術として、印刷ジョブにおいて短時間での印刷処理が設定された場合にキャリブレーションの無効化指令を発行して、印刷ジョブの処理中にキャリブレーションが実行されないようにする方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−210166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、例えばアプリケーションから複数のファイルを開いてそれらを続けて印刷する、いわゆる間欠ジョブ(ファイル毎に生成された印刷ジョブ同士の間隔が空いている一連の印刷ジョブ)の場合に問題があった。具体的には、1つ目の印刷ジョブが処理された後、2つ目の印刷ジョブの処理開始前にキャリブレーションが実行されてしまい、トータルとして一連の印刷物を手にするまでの時間が掛かってしまうといった問題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像形成装置は、印刷ジョブを受信する手段と、予め設定されている条件
が満たされた場合に、キャリブレーションの実行を要求する手段と、前記受信した印刷ジョブを解析し、前記要求に係るキャリブレーションの実行を延期するかどうかを判定する判定手段と、前記要求に係るキャリブレーションの実行を延期すると判定された場合に、指定された延期時間に対応して、前記要求に係るキャリブレーションの実行を延期する設定を行う延期設定手段と、前記延期設定手段における設定に従って、前記要求に係るキャリブレーションの実行を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、必要性の低いキャリブレーションの実行によって印刷ジョブの処理が待たされるという事態の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】プリンタ制御システムを構成するホストコンピュータの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】プリンタ制御システムを構成する画像形成装置(プリンタ)の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】ホストコンピュータにおける印刷時の処理の概要を説明する図である。
【図4】プリンタドライバにおける処理の詳細を説明する図である。
【図5】印刷設定のダイアログボックスの一例を示す図である。
【図6】実施形態1に係る、プリンタにおけるキャリブレーションの制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】キャリブレーション延期設定テーブルの一例を示したものである。
【図8】実施形態2に係る、プリンタにおけるキャリブレーションの制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】実施形態3に係る、プリンタにおけるキャリブレーションの制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0011】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係るプリンタ制御システムを構成するホストコンピュータの構成の一例を示すブロック図である。ホストコンピュータ100は、以下の構成を備える。
【0012】
101はCPUであり、文書処理プログラム等の各種プログラムに基づいて様々な処理を実行し、以下に示す各部を統括的に制御する。
【0013】
102はRAMであり、CPU101の主メモリ、ワークエリア等として機能する。
103はROMであり、CPU101の制御プログラムであるオペレーティングシステムプログラム(以下OS)等の他、文書処理の際に使用するフォントデータ等の各種データを記憶する。
【0014】
104はシステムバスであり、CPU101、RAM102、ROM103の他、以下の各部を相互に接続する。
【0015】
105はキーボードコントローラであり、キーボード109や不図示のポインティングデバイスなどからのユーザ入力を制御する。
【0016】
106はディプレイコントローラであり、CRTや液晶などのディスプレイ110の表示を制御する。
【0017】
107は外部メモリI/Fであり、ハードディスクやフロッピー(登録商標)ディスク等の外部メモリ111とアクセスするためのインタフェースである。外部メモリ111には、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザファイル、編集ファイル、プリンタドライバ等が格納される。
【0018】
108はプリンタI/Fであり、LAN等のネットワーク150或いはUSB等の双方向通信が可能なインタフェースを介して、図2で示されるプリンタ200に接続され、印刷ジョブの送信やプリンタ情報の受信といったプリンタ200との通信を制御する。
ホストコンピュータ100においては、例えばRAM102上に設定された表示情報RAMへのアウトラインフォントの展開(ラスタライズ)処理をCPU101が実行することにより、ディプレイ110上でのWYSIWYGを可能としている。また、CPU101は、ディスプレイ110上の不図示のマウスカーソル等で指示されたコマンドに基づいて登録された種々のウインドウを開き、種々のデータ処理を実行する。これにより、ユーザは所望の印刷を実行する際、印刷設定に関するウインドウを開き、プリンタの設定や、印刷モードの選択を含むプリンタドライバに対する印刷処理方法の設定を行うことができる。
【0019】
図2は、本実施形態に係るプリンタ制御システムを構成する画像形成装置(プリンタ)の構成の一例を示すブロック図である。プリンタ200は、以下の構成を備える。
【0020】
201はCPUであり、キャリブレーション制御プログラム等の各種プログラムに基づいて様々な処理を実行し、以下に示す各部を統括的に制御する。
【0021】
202はRAMであり、CPU201の主メモリ、ワークエリア等として機能し、出力情報展開領域や環境データ格納領域としても用いられる。さらに、プリンタモードの設定情報などを格納するためのNVRAM(不揮発性RAM)を設けてもよい。
【0022】
203はROMであり、CPU201の制御プログラム等の他、フォントデータ等の各種データを記憶する。
【0023】
204はシステムバスであり、CPU201、RAM202、ROM203の他、以下の各部を相互に接続する。
205は入出力部であり、LAN等のネットワーク150を介して印刷ジョブの受信やプリンタ情報の送信といった図1で示されたホストコンピュータ100との通信処理を行う。
【0024】
206は印刷部I/Fであり、記録媒体(用紙など)に画像を形成する印刷部(プリンタエンジン)208に画像信号を出力するためのインタフェースである。
【0025】
207はメモリI/Fであり、ハードディスクやフロッピー(登録商標)ディスク等のメモリ210とのアクセスするためのインタフェースである。メモリ210には、フォントデータ、エミュレーションプログラム、フォームデータ等を記憶する。また、メモリ210は複数でもよく、内蔵フォントに加えてオプションフォントカード、言語系の異なるプリンタ制御言語を解釈するプログラムなどを格納した外部メモリを複数接続できるように構成されていてもよい。
【0026】
209は操作部であり、例えば液晶パネルで構成され、ユーザが各種指示を入力するためのスイッチやLED表示器等が配されている。
【0027】
図3は、ホストコンピュータ100において実行される、典型的な印刷時の処理の概要を説明する図である。
【0028】
アプリケーション301、グラフィックエンジン302、プリンタドライバ303、システムスプーラ304、およびランゲージモニタ305は、ハードディスク等の記憶部(外部メモリ111)に保存されたファイルとして存在する。つまり、これらはプログラムモジュールであり、RAM102にロードされて実行される。アプリケーション301やプリンタドライバ303は、ネットワーク150等を経由してハードディスク等に追加することが可能となっている。
【0029】
ハードディスク等に保存されているアプリケーション301はRAM102にロードされて実行される。このアプリケーション301からプリンタ200に対して印刷を指示する際には、同様にRAM102にロードされ実行されるグラフィックエンジン302を利用して出力(描画)を行う。
【0030】
グラフィックエンジン302はプリンタ200毎に用意されたプリンタドライバ303をハードディスク等からRAM102にロードし、アプリケーション301の出力(印刷用データ)をプリンタドライバ303を用いてプリンタ200の制御コマンドに変換する。変換された制御コマンドはOSによってRAM102にロードされたシステムスプーラ304に送信される。システムスプーラ304は、ハードディスク等からランゲージモニタ305をロードし、変換された制御コマンドをランゲージモニタ305に送信する。そして、制御コマンドは、ランゲージモニタ305を経てプリンタインタフェース108を介してプリンタ200へ出力される仕組みとなっている。
【0031】
図4は、本実施形態のプリンタドライバ303における処理の詳細を説明する図である。なお、以下で述べる内容は、ハードディスク等に格納されたプログラムがRAM102に読み出され、これをCPU101が実行することにより実現される。より具体的には、アプリケーション301からの文書の印刷指示に応じて、グラフィックエンジン302を介してプリンタドライバ303がRAM102に読み出され、これをCPU101が実行することで実現される。
【0032】
グラフィックスエンジン302から印刷ジョブを受け取ると、プリンタエンジン303は、これをPDL(Page Description Language)と呼ばれる印刷制御コマンド(以下、「PDLコマンド」と呼ぶ。)の印刷ジョブに変換する処理を行う。
【0033】
次に、プリンタエンジン303は、プリンタ200にキャリブレーションの実行を延期又はキャンセルさせる設定がなされているかどうかを判定する。ここでの設定方法としては、例えば、図5に示すような印刷設定のダイアログボックスにおいて、キャリブレーションの実行を延期又はキャンセルするかどうかをチェックボックスによって選択させることが考えられる。その際、どのくらい延期するのかを併せて設定できるようにする。図5の例では、延期時間として15分が設定されている。このような方法以外にも、例えば、印刷ジョブに含まれる印刷態様を指定する情報(印刷設定におけるキャリブレーション設定以外の設定内容)を用いて判定してもよい。具体的には、カラー印刷かモノクロ印刷か、或いは印刷モードがドラフトモード(解像度を抑えて高速印刷を実現するモード)やN−upモード(複数ページのデータを1ページにレイアウトして印刷するモード)であるかどうか等によって判定する等である。一般的に、モノクロ印刷、ドラフトモード、N−upモードの場合にはキャリブレーションを実行する必要性が低いと考えられる。したがって、これらが選択されている場合には常にキャリブレーションの実行を延期又はキャンセルさせる設定がなされているものと見做すことで、キャリブレーションの実行に関するユーザの手間を省くこともできる。
【0034】
そして、プリンタエンジン303は、上記のようなキャリブレーション設定における設定内容に応じて、印刷ジョブに対してキャリブレーションの実行延期又はキャンセルを指示するフラグ(以下、「キャリブレーション制限フラグ」と呼ぶ。)を付加する。すなわち、プリンタ200にキャリブレーションの実行延期又はキャンセルがユーザによって設定されていた場合には、プリンタエンジン303は、PDLコマンドの印刷ジョブに対し、キャリブレーション制限フラグを付加する処理を行う。この際、印刷ジョブには、指定された延期時間の情報も付加される。
【0035】
そして、キャリブレーション制限フラグが付加された(或いは付加されなかった)PDLコマンドの印刷ジョブは、システムスプーラに送られる。
【0036】
なお、印刷ジョブには、上記の情報以外に、印刷を指示したユーザを特定可能なユーザ情報も含まれる。ユーザ情報には、例えば、印刷指示を行ったホストコンピュータから取得したユーザ名やIPアドレスの情報を含む。
【0037】
次に、上述のような印刷ジョブをホストコンピュータから受け取った場合のプリンタ200における処理について説明する。なお、以下で述べる内容は、ハードディスク等の記憶部(メモリ210)に格納されたプログラムがRAM202に読み出され、これをCPU201が実行することにより実現される。
【0038】
通常、プリンタ200は、電源をOFFしている間にプリンタエンジン208の環境が変動してしまっている可能性を考慮し、電源がONされる毎にキャリブレーションを実行するような設定が可能なようになっている。但し、電源の投入後に直ちに印刷を実行して印刷物を入手したい場合も考えられるので、電源投入後のキャリブレーションの実行を先に延ばすような設定も可能にしている。具体的には、電源ON直後のキャリブレーションの実行を一定時間(例えば30分)延期する設定をRAM202等に格納しておき、電源がONされても当該設定された時間が経過するまではキャリブレーションを実行しないように制御する等である。これにより電源ON直後にはキャリブレーションが実行されず、一定の時間経過後にキャリブレーションが実行されるため、電源投入後直ちに印刷ジョブを処理することができる。
【0039】
また、プリンタ200は、印刷品質を保つために、予め決められている条件が満たされると、キャリブレーションが実行されるように設定されている。この条件としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【0040】
・温度や湿度など、プリンタの出力環境の変動を検知したこと
・印刷処理枚数が一定の枚数に達したこと
・キャリブレーションの実行間隔が所定の期間空いたこと
以上のような条件が満たされると、キャリブレーションが必要と判断され、キャリブレーションの実行を要求するような設定がRAM202に格納される。
【0041】
当然、プリンタ200には、上記所定の条件が満たされたかどうかの判定に際して必要となる各種デバイス(例えば、温度/湿度センサ)や各種機能(例えば、処理枚数カウンタ、キャリブレーションの実行間隔の設定及び実行日時の記憶)が備えられる。
【0042】
キャリブレーションの実行に関する以上のような設定がなされたプリンタ200において、キャリブレーション制限フラグが付加された印刷ジョブがどのように処理され、どのようにキャリブレーションの実行が制御されるのかを以下詳しく説明する。
図6は、プリンタ200におけるキャリブレーションの制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0043】
不図示の電源ボタンがユーザによって押下されると、ステップ601において、CPU201は、起動処理を開始する。
【0044】
ステップ602において、CPU201は、上述のキャリブレーション実行要求がなされているかどうかを判定する。具体的には、処理枚数カウンタのカウント数が予め設定された所定の閾値に達しているかどうか、或いは前回のキャブリレーション実行時から予め設定された所定の期間が経過しているかどうか等をチェックし、キャリブレーション実行要求の有無を判定する。処理枚数カウンタのカウント数が予め設定された所定の閾値に達している等、キャリブレーション実行要求がある場合は、ステップ603に進む。一方、キャリブレーション実行要求のための所定の条件が満たされておらず、キャリブレーション実行要求がない場合は、ステップ604に進む。
【0045】
ステップ603において、CPU201は、上述の電源投入時のキャリブレーションの実行に関する設定内容を確認し、一定時間延期する設定となっているかどうかを判定する。一定時間延期する設定となっていた場合は、設定された延期時間(例えば30分)の計測を開始して、ステップ604に進む。一定時間延期する設定となっていなかった場合は、ステップ614に進む。
【0046】
ステップ604において、CPU201は、ホストコンピュータ100からのPDLコマンドの印刷ジョブの送信があるかどうか、つまり、PDLコマンドの印刷ジョブを受信したかどうかを判定する。ホストコンピュータ100から印刷ジョブを受信した場合には、ステップ605に進む。一方、印刷ジョブの受信がない場合には、ステップ609に進む。
【0047】
ステップ605において、CPU201は、受信した印刷ジョブを解析し、キャリブレーション制御フラグが含まれているどうかを判定して、キャリブレーションの実行を延期するかどうかを判定する。キャリブレーション制御フラグが含まれている場合は、ステップ606に進む。一方、キャリブレーション制限フラグが含まれていない場合は、ステップ607に進む。
【0048】
ステップ606において、CPU201は、キャリブレーション制限フラグに従ってキャリブレーションの延期設定をONにし、指定された延期時間の計測を開始する。さらに、印刷ジョブに含まれるユーザ名に基づいてキャリブレーション延期設定テーブルにこれらの情報を記憶する。図7は、キャリブレーション延期設定テーブルの一例を示したものである。図7に示すとおり、キャリブレーションの延期設定の内容は、ユーザ毎に記憶され、延期設定をONにした場合はその設定時刻及び指定延期時間も記録される。なお、このキャリブレーション延期設定テーブルは、RAM202等に格納される。
【0049】
ステップ607において、CPU201は、キャリブレーションの延期設定をOFFにし、併せて印刷ジョブに含まれるユーザ名に基づいてキャリブレーション延期設定テーブルにこれらの情報を記憶する。なお、キャリブレーションの延期設定をOFFにする場合の情報の記憶は省いてもよい。
【0050】
ステップ608において、CPU201は、PDLコマンドの印刷ジョブをプリンタエンジン208で取扱い可能な画像データに展開し、これをプリンタエンジン208に送って印刷を実行する。
【0051】
ステップ609において、CPU201は、再び上述のキャリブレーション実行要求の有無を判定する。キャリブレーション実行要求がある場合は、ステップ610に進む。一方、キャリブレーション実行要求がない場合は、ステップ604に戻る。
【0052】
ステップ610において、CPU201は、ステップ603で計測を開始した所定の設定延期時間(30分)が経過したかどうかを判定する。所定の設定延期時間が経過している場合は、ステップ611に進む。一方、所定の設定延期時間が経過していない場合は、ステップ604に戻る。
【0053】
ステップ611において、CPU201は、キャリブレーション延期設定テーブルを参照し、キャリブレーションの延期設定がONに設定されているかどうかを判定する。延期設定がONの場合は、ステップ612に進む。一方、延期設定がOFFの場合は、ステップ614に進む。
【0054】
ステップ612において、CPU201は、ステップ606で計測を開始した指定延期時間について、そのすべてが経過しているかどうかを判定する。図7の例では、3名のユーザ“usami”、“honda”、“matsui”がキャリブレーションの延期を設定した印刷ジョブによる印刷を指示している。そして、それぞれの設定時刻と指定延期時間から、“matsui”の印刷ジョブによる延期設定が終了する “14時30分55秒(開始時刻:14時20分55秒+指定延期時間:10分)”が最も遅い延期時間の経過時点となる。したがって、この場合CPU201は、“matsui”の延期設定の開始から10分が経過していれば、指定された延期時間がすべて経過したと判定することになる。このようにして、各ユーザが指定した延期時間がすべて経過したと判定された場合は、ステップ613に進む。一方、指定された延期時間がすべて経過していないと判定された場合は、ステップ604に戻る。
【0055】
ステップ613において、CPU201は、キャリブレーションの延期設定をすべてOFFにする。図7の例では、ユーザ名“usami”、“honda”、“matsui”のすべてのキャリブレーション延期設定をONからOFFに変更する。キャリブレーションの延期設定をすべてOFFにすると、ステップ614に進む。
【0056】
ステップ614において、CPU201は、要求されたキャリブレーションを実行する。
【0057】
以上のような処理によってキャリブレーションの実行が制御されるので、例えば、以下のようなケースでも印刷ジョブの処理が滞ることがない。すなわち、例えばユーザAがキャリブレーションの実行不要と判断し、キャリブレーションの延期を指示した複数のジョブを、間を空けて投入したとする。この場合において、その複数の印刷ジョブの間に他のユーザBがキャリブレーションの延期を指示しない印刷ジョブ(キャリブレーション制限フラグが付加されないジョブ)を投入する可能性がある。このようなケースでも、本実施形態の場合は最初に投入されたユーザAの印刷ジョブによってキャリブレーションの実行は指定された時間に対応して延期される。そのため、キャリブレーションの延期を必要としない他のユーザBの印刷ジョブが割り込んでも、ユーザAが指定した延期時間が経過するまでは、キャリブレーションの延期を維持することができる。つまり、印刷ジョブに含まれるキャリブレーション制限フラグに従ってキャリブレーションの実行がユーザ単位でコントロールされ、たとえ複数のユーザに係る多様な印刷ジョブが間欠的に投入されても、印刷ジョブの処理が遅滞なく実行される。
【0058】
なお、図6に示した処理では、印刷ジョブにキャリブレーション制限フラグが含まれるかどうかによってキャリブレーションの延期設定を行うかどうかを決定していた。しかしながら、このようなフラグを付加しない方法によって同様の効果を得ることも可能である。例えば、受信した印刷ジョブを解析した結果、キャリブレーションの必要性が低いと判断される場合(例えば、モノクロ印刷、ドラフトモードやN−upモードでの印刷)には、プリンタ200側の判断でキャリブレーションを延期するようにしてもよい。すなわち、たとえキャリブレーション制限フラグが印刷ジョブに含まれていなくても(ステップ605で「いいえ」)、指定された印刷態様が所定の内容である場合には、ステップ606に進んでキャリブレーション延期設定をONにするように制御してもよい。この場合には、指定延期時間の情報が印刷ジョブには含まれないことから、デフォルトの延期時間を予め指定しておき(例えば15分)、一律の延期時間が設定されるようにすればよい。
【0059】
このように本実施形態によれば、電源ONの後に複数の印刷ジョブが間欠的に投入された場合でも、その合間にキャリブレーションが実行されて印刷ジョブの処理が待たされるという事態を生じさせないので、ユーザは素早く印刷物を手にすることができる。
【0060】
(実施形態2)
実施形態1では、プリンタ200に電源が投入された直後に印刷ジョブを受信した場合の、キャリブレーションの制御処理について説明した。次に、プリンタ200が安定起動しておりその中でのキャリブレーションの実行中に印刷ジョブを受信した場合の、キャリブレーションの制御処理について、第2の実施形態として説明する。
【0061】
図8は、本実施形態に係るプリンタ200におけるキャリブレーションの制御処理の流れを示すフローチャートである。この制御処理も、ハードディスク等の記憶部(メモリ210)に格納されたプログラムがRAM202に読み出され、これをCPU201が実行することにより実現される。なお、既に述べた実施形態1と共通する部分については説明を簡略化ないしは省略し、ここでは差異点を中心に説明することとする。
【0062】
ステップ801において、CPU201は、キャリブレーション実行要求に基づいて、キャリブレーションを実行する。キャリブレーション実行要求がどのような場合になされるかについては、実施形態1のステップ602で述べたとおりである。そして、CPU201は、キャリブレーションの実行開始に併せて、その経過時間の計測を開始する.
【0063】
ステップ802において、CPU201は、キャリブレーションが終了したかどうかを判定する。キャリブレーションが終了していれば、本処理を抜ける。一方、キャリブレーションが終了していない場合は、ステップ803に進む。
【0064】
ステップ803において、CPU201は、PDLコマンドの印刷ジョブを受信したかどうかを判定する。ホストコンピュータ100から印刷ジョブを受信した場合には、ステップ804に進む。一方、印刷ジョブの受信がない場合には、ステップ802に戻る。
【0065】
ステップ804において、CPU201は、受信した印刷ジョブに、キャリブレーション制限フラグが含まれているどうかを判定する。キャリブレーション制限フラグが含まれている場合は、ステップ805に進む。一方、キャリブレーション制限フラグが含まれていない場合は、ステップ806に進む。
【0066】
ステップ805において、CPU201は、キャリブレーション制限フラグに従ってキャリブレーションの延期設定をONにし、併せて、指定された延期時間の計測を開始する。さらに、印刷ジョブに含まれるユーザ名に基づいてキャリブレーション延期設定テーブルにこれらの情報を記憶する。
【0067】
ステップ806において、CPU201は、キャリブレーションの延期設定をOFFにし、印刷ジョブに含まれるユーザ名に基づいてキャリブレーション延期設定テーブルにこれらの情報を記憶する。
【0068】
ステップ807において、CPU201は、キャリブレーションを中止した場合と、キャリブレーションの終了を待つ場合とで、どちらが早く印刷ジョブの処理を開始できるかを判定する。具体的には、以下のように判定される。まず、RAM202にキャリブレーションの実行終了までに要する時間及び中止時の後処理に要する時間を予め保持しておく。そして、ステップ801で計測を開始した現時点までに要した時間から、残りのキャリブレーションの実行に要する時間を算出し、これと中止時の後処理に要する時間とを比較することで、どちらが早いかを判定する。このような判定処理によって、キャリブレーションを中止した方が、印刷ジョブの処理開始が早いと判定された場合は、ステップ808に進む。一方、キャリブレーションの終了を待った方が、印刷ジョブの処理開始が早いと判定された場合は、キャリブレーションを続行し、ステップ809に進む。
【0069】
ステップ808において、CPU201は、キャリブレーションの実行を中止する。
【0070】
ステップ809において、CPU201は、キャリブレーションが終了したかどうかを判定し、キャリブレーションが終了していれば、ステップ810に進む。
【0071】
ステップ810において、CPU201は、印刷ジョブに従って印刷を実行する。
【0072】
印刷の実行が完了すると、図6のフローチャートのステップ609に進み、以後は実施形態1と同様の処理になる。
【0073】
このように本実施形態によれば、キャリブレーションの実行中に印刷ジョブを受信した場合にキャリブレーションの続行/中止を適宜判断するので、キャリブレーションによってユーザが待たされる時間を最小限にすることができる。
【0074】
(実施形態3)
一般的に、プリンタは、電源がONの状態で印刷ジョブを一定期間処理しない状態が続くと、無駄な電力消費を抑えるためデバイスを休眠状態に移行させる機能(スリープ機能)を有している。この場合、プリンタは、印刷ジョブを受信するとこのスリープ状態から復帰して印刷を実行するようになっているが、スリープ中に、キャリブレーションの実行要求が発生しても、通常は直ちに実行されない。次の印刷ジョブの受信までに再び環境が変動してしまう等、キャリブレーションを実行しても無意味に帰する可能性があるからである。したがって、例えばスリープ中に前回のキャリブレーションから一定期間が経過する等によってキャリブレーションの実行要求が発生した場合には、他の要因によってスリープ状態から復帰した時点でキャリブレーションが実行されることになる。そうなると、投入された印刷ジョブの処理が、キャリブレーションの実行により待たされるという事態が生じてしまう。
【0075】
そこで、次に、スリープ中にキャリブレーションの実行要求が発生し、ホストコンピュータ100からの印刷ジョブの受信を契機にプリンタ200がスリープ状態から復帰した場合のキャリブレーションの制御処理について、実施形態3として説明する。
【0076】
図9は、本実施形態に係るプリンタ200におけるキャリブレーションの制御処理の流れを示すフローチャートである。この制御処理も、ハードディスク等の記憶部(メモリ210)に格納されたプログラムがRAM202に読み出され、これをCPU201が実行することにより実現される。なお、既に述べた実施形態1及び2と共通する部分については説明を簡略化ないしは省略し、ここでは差異点を中心に説明することとする。
【0077】
ステップ901において、CPU201は、予め設定された所定の期間、印刷ジョブの実行がないことを検知すると、スリープ状態に移行する処理を実行する。
ステップ902において、CPU201は、PDLコマンドの印刷ジョブを受信したかどうかを判定する。CPU201は、印刷ジョブを受信するまでスリープ状態を維持し、ホストコンピュータ100から印刷ジョブを受信すると、ステップ903に進む。
【0078】
ステップ903において、CPU201は、スリープ状態から復帰させる処理を実行し、プリンタ200を、印刷ジョブを処理可能な状態に戻す。
【0079】
ステップ904において、CPU201は、キャリブレーションの実行要求が発生しているかどうかを判定する。キャリブレーションの実行要求が発生している場合は、ステップ905に進む。一方、キャリブレーションの実行要求が発生していない場合は、ステップ909に進む。なお、キャリブレーション実行要求がどのような場合になされるかについては実施形態1のステップ602で述べたとおりであるが、スリープ中に生じるケースとしては、一定時間の経過や環境変動などが考えられる。
【0080】
ステップ905において、CPU201は、受信した印刷ジョブに、キャリブレーション制限フラグが含まれているどうかを判定する。キャリブレーション制限フラグが含まれている場合は、ステップ908に進む。一方、キャリブレーション制限フラグが含まれていない場合は、ステップ906に進む。
【0081】
ステップ906において、CPU201は、キャリブレーションの延期設定をOFFにし、併せて印刷ジョブに含まれるユーザ名に基づいてキャリブレーション延期設定テーブルにこれらの情報を記憶する。
【0082】
ステップ907において、CPU201は、キャブレーション実行要求に基づいて、キャリブレーションを実行する。
【0083】
ステップ908において、CPU201は、キャリブレーション制限フラグに従ってキャリブレーションの延期設定をONにし、併せて、指定された延期時間の計測を開始する。さらに、印刷ジョブに含まれるユーザ名に基づいてキャリブレーション延期設定テーブルにこれらの情報を記憶する。
【0084】
ステップ909において、CPU201は、印刷ジョブに従って印刷を実行する。印刷の実行が完了すると、図6のフローチャートのステップ609に進み、以後は実施形態1と同様の処理になる。
【0085】
このように本実施形態によれば、プリンタ200は、スリープ中にキャリブレーションの実行要求が発生し、印刷ジョブの受信によってスリープ状態から復帰した場合、キャリブレーションの実行を延期し、印刷ジョブの処理を優先する。これにより印刷ジョブが待たされることがなく、ユーザは素早く印刷物を手にすることができる。
【0086】
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施例の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ジョブを受信する手段と、
予め設定されている条件が満たされた場合に、キャリブレーションの実行を要求する手段と、
前記受信した印刷ジョブを解析し、前記要求に係るキャリブレーションの実行を延期するかどうかを判定する判定手段と、
前記要求に係るキャリブレーションの実行を延期すると判定された場合に、指定された延期時間に対応して、前記要求に係るキャリブレーションの実行を延期する設定を行う延期設定手段と、
前記延期設定手段における設定に従って、前記要求に係るキャリブレーションの実行を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記受信した印刷ジョブに付加された、キャリブレーションの実行の延期を指示するキャリブレーション制限フラグの有無によって、前記要求に係るキャリブレーションの実行を延期するかどうかを判定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記受信した印刷ジョブに含まれる、印刷態様を指定する情報を用いて、前記要求に係るキャリブレーションの実行を延期するかどうかを判定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記印刷ジョブは、ユーザを特定するユーザ情報及び前記延期時間を指定する情報を含み、
前記延期設定手段は、前記ユーザ情報及び前記延期時間を指定する情報に基づいて、ユーザ毎に前記延期時間を設定し、
前記制御手段は、ユーザ毎に設定されたすべての延期時間が経過した後に、前記要求に係るキャリブレーションを実行する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
キャリブレーションの実行中に前記印刷ジョブを受信した場合に、当該実行中のキャリブレーションを中止した場合と続行した場合とで、いずれが前記受信した印刷ジョブの処理を早く開始できるかを判定する手段をさらに備え、
前記制御手段は、中止した場合の方が早いと判定された場合には当該キャリブレーションの実行を中止し、続行した場合の方が早いと判定された場合には当該キャリブレーションの実行を続行する、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記印刷ジョブの受信によってスリープ状態から復帰した場合に、キャリブレーションが要求されているかどうかを判定する手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置と接続されるホストコンピュータのプリンタドライバであって、前記印刷ジョブに、前記キャリブレーション制限フラグを付加する設定を行うことを特徴とするプリンタドライバ。
【請求項8】
印刷ジョブを受信するステップと、
予め設定されている条件が満たされた場合に、キャリブレーションの実行を要求するステップと、
前記受信した印刷ジョブを解析し、前記要求に係るキャリブレーションの実行を延期するかどうかを判定するステップと、
前記要求に係るキャリブレーションの実行を延期すると判定された場合に、指定された延期時間に対応して、前記要求に係るキャリブレーションの実行を延期する設定を行う延期設定ステップと、
前記延期設定ステップにおける設定に従って、前記要求に係るキャリブレーションの実行を制御するステップと、
を含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法をコンピュータに実行させるプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−236312(P2012−236312A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106152(P2011−106152)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】