説明

画像形成装置及びその制御方法

【課題】実行中のジョブが停電により異常終了することを防止可能な画像形成装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、ジョブの実行が指示された場合、ジョブの完了に要するジョブ完了時間を算出するステップ(322)と、ジョブの終了時刻を算出し、ジョブの終了時刻が停電の開始時刻より前であるか否かを判定するステップ(324)と、ジョブの終了時刻が停電の開始時刻より前でないと判定された場合、停電の開始時刻までに完了可能な、ジョブの一部の処理を特定するステップ(328)と、ジョブの終了時刻が停電の開始時刻の前であると判定された場合、ジョブを開始するステップ(326)と、ジョブの終了時刻が停電の開始時刻の前でないと判定された場合、ジョブの一部の処理を開始するステップ(330)とを実行する。これにより、実行中のジョブが停電により異常終了することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実行中のジョブが停電により異常終了することを防止可能な画像形成装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器である画像処理装置の1種として、多くの事業所(会社、事務所等)に、記録紙に画像を形成する画像形成装置(代表的にはコピー機)が導入されている。このような事業所において、プリンタ機能又はコピー機能等を備えた画像形成装置をネットワークに接続し、これらを複数のユーザで共用するケースが多くなっている。このような画像形成装置の1種である複合機(MFP(MultiFunction Peripheral))は、コピーモード、ファクシミリモード(以下、ファクシミリをFAXともいう)、ネットワーク対応のプリンタモード、及びスキャナモードのように、複数の基本的な動作モードを備える。
【0003】
一般に、コピー機は電源オンからの起動時及びコピー機能実行時には非常に多くの電力を消費する。電子写真プロセスの画像形成部を備えた画像形成装置では、感光体上に記録再現されたトナー像を記録紙上に転写する。加熱定着部はヒータ等の熱源を備え、記録紙上に転写されたトナーを、所定の温度及び圧力によって記録紙上に定着させる。したがって、画像形成が常に速やかに行なえる環境を提供しようとすると、加熱定着部の温度を一定に保つ必要がある。そのためにはヒータ等の熱源への通電制御を常に行なう必要がある。例えば、コピー実行までの時間が短縮されるように、待機時(いわゆるレディ状態)においても定着部のローラの温度をある程度の温度に保つことが行なわれる。
【0004】
そうした制御を行なうと、当然に電力消費量が増加するという問題がある。1日の中でそれ程コピー機の利用頻度がない場合にも、上記のように定着部を保温状態にしておくことは、非常に無駄である。ヒータは大きな電力を必要とするため、省エネルギー(以下、省エネともいう)の観点からは特に問題である。最近では事業所での消費電力を節約することが重要視されており、このように大きな電力を常に必要とするのは適切ではない。
【0005】
そこで、下記特許文献1には、コピー終了後、所定時間操作がなかった場合に、定着部への通電を遮断して無駄な電力消費を抑える技術が開示されている。
【0006】
また、コピー機を使用しない日時が予め分かっている場合の節電方法として、下記特許文献2には、祝祭日に画像処理システムを省エネモードに設定する技術が開示されている。また、下記特許文献3には、社会全体で消費電力が多い期間に、画像形成装置を省エネモードに切換えて節電を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−345894号公報
【特許文献2】特開2005−71269号公報
【特許文献3】特開2002−55569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1〜3に提案された技術では、自らのスケジュールとは別に外部要因による急な停電の予定が生じた場合に対応できないことがある。即ち、停電の前に停電開始予定時刻(以下、停電開始時刻という)を考慮してスケジュールを変更することができない場合がある。その場合、停電によって、実行中の印刷ジョブが正常終了することができない、又は一時中断することができない虞があり不便である。停電によって異常終了した場合、停電終了後に画像形成装置を再起動したときに、トラブルを解消する作業が必要となることがある。例えば、紙詰まりであれば、それを除去する作業が必要である。トラブルの種類によっては容易に解消できないこともある。
【0009】
したがって、本発明は、実行中のジョブが停電により異常終了することを防止可能な画像形成装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、下記によって達成することができる。
【0011】
即ち、本発明に係る画像形成装置は、停電の開始時刻を取得する取得部と、ジョブの実行条件の入力を受付ける入力部と、ジョブの実行が指示された場合、このジョブの完了に要するジョブ完了時間を、このジョブの実行条件を用いて算出する算出部と、実行が指示されたジョブの終了時刻を、ジョブ完了時間を用いて算出し、ジョブの終了時刻が停電の開始時刻より前であるか否かを判定する判定部と、判定部により、ジョブの終了時刻が停電の開始時刻より前でないと判定された場合、停電の開始時刻までに完了可能な、ジョブの一部の処理を特定する特定部と、ジョブを実行する実行部とを備え、実行部は、判定部により、ジョブの終了時刻が停電の開始時刻より前であると判定された場合、ジョブを開始し、判定部により、ジョブの終了時刻が停電の開始時刻より前でないと判定された場合、特定部によって特定された、ジョブの一部の処理を開始する。
【0012】
好ましくは、画像形成装置は、スケジュールにしたがって画像形成装置の動作モードを省エネルギーモードに変化させるモード遷移部をさらに備え、特定部によって特定された、ジョブの一部の処理を終了した後に、モード遷移部は、画像形成装置を省エネルギーモードに変化させる。
【0013】
より好ましくは、ジョブは、ページ単位での印刷処理を含むジョブであり、特定部は、判定部により、ジョブの終了時刻が停電の開始時刻より前でないと判定された場合、停電の開始時刻までに完了可能な、ジョブの一部の処理として、停電の開始時刻までに印刷可能なページ数の印刷処理を特定する。
【0014】
さらに好ましくは、ジョブは、複数部数の印刷処理を含むジョブであり、特定部は、判定部により、ジョブの終了時刻が停電の開始時刻より前でないと判定された場合、停電の開始時刻までに完了可能な、ジョブの一部の処理として、停電の開始時刻までに印刷可能な部数の印刷処理を特定する。
【0015】
好ましくは、画像形成装置は、データを記憶する記憶部をさらに備え、ジョブは、通信回線を介して伝送されるデータに基づいて印刷するジョブであり、特定部は、判定部により、ジョブの終了時刻が停電の開始時刻より前でないと判定された場合、ジョブの一部の処理として、データを受信して記憶部に記憶する処理を特定する、又は、データを受信する処理と、データから印刷用画像データを生成して記憶部に記憶する処理とを特定する。
【0016】
より好ましくは、画像形成装置は、取得が停電の開始時刻を取得した状態で、実行が指示されたジョブが所定の実行条件を含む場合、ジョブの実行を禁止する禁止部をさらに備え、所定の実行条件は、自動原稿送り装置を使用しないコピー処理である。
【0017】
さらに好ましくは、画像形成装置は、取得部が停電の開始時刻を取得した状態で、実行が指示されたジョブが所定の実行条件を含む場合、ジョブの実行を禁止する禁止部をさらに備え、所定の実行条件は、自動原稿送り装置及び印刷の後処理装置のうちの少なくとも1つの装置の使用である。
【0018】
好ましくは、禁止部はさらに、取得部が停電の開始時刻を取得した状態で、実行が指示されたジョブが所定のジョブであった場合、ジョブの実行を禁止し、所定のジョブは、ファクシミリ受信である。
【0019】
より好ましくは、禁止部は、ファクシミリ受信の呼出信号を受信した場合、回線を接続しないことにより、又は、呼出信号の発呼元に対してビジー信号を送信することにより、ファクシミリ受信を禁止する。
【0020】
さらに好ましくは、禁止部はさらに、取得部が停電の開始時刻を取得した状態で、実行が指示されたジョブが所定のジョブであった場合、ジョブの実行を禁止し、所定のジョブは、送信時刻が予約された画像データ送信である。
【0021】
本発明に係る制御方法は、画像形成装置を制御する方法であって、停電の開始時刻を取得するステップと、ジョブの実行条件の入力を受付けるステップと、ジョブの実行が指示された場合、このジョブの完了に要するジョブ完了時間を、このジョブの実行条件を用いて算出するステップと、実行が指示されたジョブの終了時刻を、ジョブ完了時間を用いて算出し、ジョブの終了時刻が停電の開始時刻より前であるか否かを判定するステップと、判定するステップによって、ジョブの終了時刻が停電の開始時刻より前でないと判定された場合、停電の開始時刻までに完了可能な、ジョブの一部の処理を特定するステップと、ジョブを実行するステップとを含み、ジョブを実行するステップは、判定するステップによって、ジョブの終了時刻が停電の開始時刻より前であると判定された場合、ジョブを開始し、判定するステップによって、ジョブの終了時刻が停電の開始時刻より前でないと判定された場合、特定するステップによって特定された、ジョブの一部の処理を開始する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、停電が予定されている状況で画像形成装置に対してジョブの実行が指示された場合、そのジョブを停電開始までに完了できないときには、そのジョブを実行しない、又は、そのジョブに含まれる処理のうち、停電開始までに完了できる処理のみを実行するので、実行中のジョブが停電により異常終了することを防止することができる。よって、印刷途中で停電になり、原稿又は記録紙が画像形成装置内に滞留してしまうこと、FAX受信中にデータを受信できなくなってしまうこと等が生じない。
【0023】
また、停電が予定されている状況において、ファクシミリ受信、画像データの予約送信等、一旦開始した場合に中断できないジョブを受付けない(禁止する)ので、より確実に、実行中のジョブが停電により異常終了することを防止することができる。
【0024】
また、停電が予定されている状況においては、自動原稿送り装置を使用しないコピー等、人の操作を含む時間がかかるジョブを受付けないようにすることで、さらに確実に、実行中のジョブが停電により異常終了することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示した画像形成装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の停電予定を考慮してジョブの実行を制御するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の稼働状況を表すテーブルである。
【図5】図4の稼働状況に対応する省エネモードを示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の実施の形態では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0027】
本発明の実施の形態に係る画像形成装置は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能、及びファクシミリ機能等の複数の機能を備えたデジタル複合機である。画像形成装置は、画像形成装置自体の稼働状況に応じて予め設定されたスケジュールにしたがって内部の通電状態を変化させる機能を備えており、電力消費を抑えた省エネルギー状態を実現する。
【0028】
図1を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置100は、原稿読取部110、画像形成部120、操作部130、給紙部140、手差し給紙トレイ142、及び排紙処理部150を備えている。操作部130は、タッチパネルディスプレイ132及び操作キー部134を備えている。タッチパネルディスプレイ132は、液晶パネル等で構成された表示パネルと、表示パネルの上に配置され、タッチされた位置を検出するタッチパネルとを含む。操作キー部134には、図示しないいくつかの機能キーが配置される。
【0029】
図2を参照して、画像形成装置100は、画像形成装置100全体を制御する制御部(以下、CPUという)102と、プログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)104と、揮発性の記憶装置であるRAM(Random Access Memory)106と、通電が遮断された場合にもデータを保持する不揮発性記憶装置であるHDD(Hard Disk Drive)108とを備えている。ROM104には、画像形成装置100の動作を制御するのに必要なプログラム及びデータが記憶されている。
【0030】
画像形成装置100はさらに、画像処理部122、画像メモリ124、FAX通信部112、ネットワークI/F114、及びバス116を備えている。CPU102、ROM104、RAM106、HDD108、FAX通信部112、ネットワークI/F114原稿読取部110、画像形成部120、画像処理部122、画像メモリ124、操作部130は、バス116に接続されている。各部間のデータ(制御情報を含む)交換は、バス116を介して行なわれる。CPU102は、バス116を介してROM104からプログラムをRAM106上に読出して、RAM106の一部を作業領域としてプログラムを実行する。即ち、CPU102は、ROM104に格納されているプログラムにしたがって画像形成装置100を構成する各部の制御を行ない、画像形成装置100の各機能を実現する。
【0031】
FAX通信部112は、外部の公衆電話回線180に接続され、画像形成装置100が公衆電話回線180を介して外部装置とFAX通信するためのインターフェイスであるFAXモデムを備えている。
【0032】
ネットワークI/F114は、外部のネットワーク182に接続され、画像形成装置100がネットワーク182を介して外部装置と通信するためのインターフェイスとして、例えばNIC(Network Interface Card)を備えている。
【0033】
原稿読取部110は、画像を読取るためのCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)と、原稿台、自動原稿送り装置(ADF)等にセットされた原稿を検知する原稿検知センサとを備え、原稿を読取って画像データを入力する。画像データは画像メモリ(図示せず)に一時的に記憶される。画像処理部122は、読取った画像データに対して、種々の画像処理を実行する。画像形成部120は、画像データを記録紙に印刷する。画像データは、必要に応じてHDD108に記憶される。
【0034】
給紙部140は画像形成用の記録紙を保持する。手差し給紙トレイ142は、記録紙を手差し給紙するためのトレイである。
【0035】
操作部130は、利用者による画像形成装置100に対する指示等の入力を受付ける。タッチパネルディスプレイ132に表示される画像は、画面生成部(図示せず)によって生成される。利用者は、タッチパネルディスプレイ132に表示される画面によって、画像形成装置100の状態及びジョブの処理状況等の確認を行なう。タッチパネルディスプレイ132に表示されたキーを、表示パネルに重ねられたタッチパネル上で選択する(タッチパネル上の該当部分にタッチする)ことによって、画像形成装置100の機能設定及び動作指示等ができる。
【0036】
CPU102は、操作部130に設けられたタッチパネルディスプレイ132、入力キー等に対する利用者の操作を監視すると共に、タッチパネルディスプレイ132に画像形成装置100の状態に関する情報等の利用者に通知すべき情報等を表示する。
【0037】
以下、画像形成装置100が搭載している機能(コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能、及びファクシミリ機能)を実行する各モードについて簡単に説明する。
【0038】
(コピーモード)
画像形成装置100を複写機として利用する場合には、原稿読取部110によって読取られた原稿の画像データが、画像形成部120から複写物として出力される。
【0039】
原稿読取部110に装備されたCCDにより、読取位置にセットされた原稿の画像を電子的に読取ることができる。読取られた画像データは、画像メモリ124上に出力データ(印刷用データ)として完成された後、HDD108に記憶される。原稿が複数ある場合には、この読取り動作及び記憶動作が繰返される。その後、操作部130を介して指示された処理モードに基づいて、HDD108に記憶された画像データが適切なタイミングで順次読出されて画像メモリ124に送られる。そして、画像形成部120での画像形成のタイミングに合わせて、画像データは画像形成部120へと伝送される。
【0040】
読取った画像データを複数枚印刷する場合にも、同様に出力データとしてページ単位でHDD108に記憶され、HDD108から画像メモリ124に送られ、出力枚数の分だけ繰返し、画像形成のタイミングに合わせて画像形成部120へ伝送される。
【0041】
給紙部140では、記録紙がピックアップローラによって引き出され、複数の搬送用ローラによって、画像形成部120まで搬送される。画像形成部120では、帯電された感光体ドラムを入力された画像データに応じて露光することにより、感光体ドラムの表面に、画像データに応じた静電潜像を形成する。感光体ドラム上の静電潜像部分にトナーを付着させた後、トナーによる画像を、転写ベルトを介して、搬送された記録紙に転写させる。その後、記録紙は加熱及び加圧され(これにより記録紙に画像が定着する)、排紙トレイ152に排出される。
【0042】
(プリンタモード)
画像形成装置100をプリンタとして利用する場合には、ネットワークI/F114を介して受信した画像データが画像メモリ124等を介して画像形成部120から出力される。
【0043】
ネットワークI/F114は、ネットワーク182に接続されたコンピュータ等の端末装置(図示せず)から画像データを受信する。受信された画像データは、出力画像データとしてページ単位に画像メモリ124に送られた後、HDD108に記憶される。その後、画像データは、再びHDD108から画像メモリ124に送られ、上記したコピーモードと同様に画像形成部120へと伝送され、画像形成が行なわれる。
【0044】
(スキャナモード)
画像形成装置100を、例えばネットワークスキャナとして利用する場合には、原稿読取部110において読取られた原稿の画像データを、ネットワークI/F114からネットワーク182を介して端末装置へ送信する。この場合にも、原稿読取部110に装備されたCCDにより原稿を電子的に読取る。そして、読取られた原稿の画像データは、画像メモリ124上に出力データとして完成された後、HDD108に記憶される。その後、画像データは、再びHDD108から画像メモリ124に送られ、操作部130を介して指定された送信先との通信を確立した上で、ネットワークI/F114から、指示された送信先へと送信される。
【0045】
(ファクシミリモード)
画像形成装置100は、FAX通信部112及び公衆電話回線180を介して外部のファクシミリ装置とFAX送受信することができる。
【0046】
画像形成装置100をファクシミリ装置として使用する場合、ファクシミリ装置からFAX受信したデータを、画像データとして画像メモリ124上に形成し、上記と同様に、HDD108への記憶、画像形成部120による印刷を実行することができる。また、画像形成装置100は、HDD108から画像データを読出して、FAX通信用のデータ形式に変換して、FAX通信部112及び公衆電話回線180を介して外部のファクシミリ装置に送信することができる。
【0047】
以下、図3を参照して、停電が予定されている状況で、画像形成装置100がジョブを実行する指示を受けた場合に、画像形成装置100のCPU102が実行するプログラムの制御構造に関して具体的に説明する。
【0048】
画像形成装置100の電力消費を制御するためのスケジュール及び、停電情報(例えば、停電の開示時刻及び終了時刻)が、予め管理者によってHDD108に記憶されているとする。
【0049】
なお、本明細書においては、周期性のない事象に関する「時刻」(例えば停電に関する時刻)は、年月日を含む。一方、周期性のある「時刻」(例えばスケジュール中の時刻)は、1周期内を区分する情報(例えば曜日)を含むが、年月日を含まない。但し、何月日が1周期内を区分する情報に該当する場合(例えば、1か月周期の場合の「日」)には、周期性のある「時刻」に含まれる。したがって、特定の時刻を現在時刻と比較する場合、特定の時刻が年月日を含む場合、現在時刻は年月日を含む時刻を意味し、特定の時刻が年月日を含まない場合、現在時刻も年月日を含まない時刻を意味する。
【0050】
画像形成装置100の電源がオンされた場合、ステップ300においてCPU102は、HDD108に記憶されたスケジュールを読出し、現在の時刻に対応する省エネモードの種類を決定する。決定された省エネモードの種類は、RAM106の所定領域に省エネモード特定情報として記憶される。スケジュールは、所定期間(例えば1週間)を複数の小期間(例えば1時間単位)に区分し、各小期間における画像形成装置100の省エネモードを表したデータである。
【0051】
画像形成装置100の稼働状況の集計結果の一例を図4に示す。図4は、画像形成装置100の各期間において印刷された記録紙の枚数を示す。曜日を横方向に配置し、1日を複数に区切った各期間を縦方向に配置している。各期間は、1週間を、日曜日の午前0時から1時間毎に区切った期間である。各セルは、曜日及び期間で特定される。各セルの数値は、その期間における印刷枚数である。
【0052】
図4に対応するスケジュールは、例えば、図5に示すようなテーブルを表すデータとしてHDD108に記憶される。図5は、省エネモードを、印刷枚数に応じて4種類に分類し、各セルに、省エネモードに対応するパターンを描画している。例えば、画像形成装置100が最も頻繁に使用される状態を「高パフォーマンス」とする。「高パフォーマンス」ほどではないが、かなり高い頻度で画像形成装置100が使用される状態を「パフォーマンス」とする。「パフォーマンス」よりも画像形成装置100の使用頻度が低い状態を「バランス」とする。画像形成装置100の使用頻度が最も低い状態を「省電力」とする。図5では、「省電力」、「バランス」、「パフォーマンス」、及び「高パフォーマンス」のそれぞれを、各セルの印刷枚数が0以上10未満、10以上30未満、30以上50未満、及び50以上の場合に対応させて、それぞれドットパターン、右下がり斜線パターン、左下がり斜線パターン、及び格子パターンで示している。このように、スケジュールは、「曜日を特定する情報」、「1日における期間を特定する情報」、及び「省エネモードの種類を特定する情報」を1セットとして、曜日及び期間の全ての組合せに関するデータ(セット)の集合である。「曜日を特定する情報」、「1日における期間を特定する情報」、及び「省エネモードの種類を特定する情報」は、例えば数値データ、文字(数字、記号等を含む)データ等である。
【0053】
ステップ302において、CPU102は、ジョブを実行する指示を受けたか否かを判定する。ジョブは、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能、及びファクシミリ機能等に関するジョブである。ジョブを実行する指示を受けたと判定された場合、制御はステップ310に移行する。そうでなければ、制御はステップ304に移行する。
【0054】
なお、コピー機能及びスキャナ機能のジョブである場合、ユーザによって操作部130が操作されてジョブの実行条件が設定され、開始キー(ジョブの実行を指示するキー)が押されたときに、CPU102はジョブを実行する指示を受けたと判定する。プリンタ機能の場合には、端末装置からネットワーク182を介して送信される印刷データの受信が完了したときに、CPU102はジョブを実行する指示を受けたと判定する。ファクシミリ機能に関しては、操作部130が直接操作されて実行が指示される場合には、コピー機能及びスキャナ機能と同様に判定される。一方、端末装置からネットワーク182を介してファクシミリ送信が指示される場合には、プリンタ機能と同様に判定される。ファクシミリ受信の場合には、公衆電話回線180を介して呼出信号を受信したときに、CPU102はジョブを実行する指示を受けたと判定する。
【0055】
ステップ304において、CPU102は、停電開始時刻が迫っており、画像形成装置100を停止すべきか否かを判定する。具体的には、CPU102は、HDD108に停電情報が記憶されていれば、停電情報を読出し、タイマ(ハードウェアタイマ又はソフトウェアタイマ)から現在時刻を取得し、読出した停電開始時刻までの時間が所定時間以内であるか否かを判定する。所定時間以内であると判定された場合、CPU102は画像形成装置100を停止する。そうでなければ、制御はステップ306に移行する。所定時間は、画像形成装置100が使用される環境を考慮して適切に設定されることができ、例えば10分間である。
【0056】
ステップ306において、CPU102は、現在の省エネモードを変更するか否かを判定する。具体的には、CPU102は、スケジュールを参照して、ステップ304で取得した現在時刻に対応する省エネモードを特定する省エネモード特定情報を決定し、RAM106に記憶されている省エネモード特定情報と同じか否かを判定する。同じであると判定された場合、制御はステップ302に戻る。異なると判定された場合、制御はステップ308に移行し、CPU102は省エネモードを変更し、RAM106に記憶されている省エネモード特定情報をステップ306で決定された省エネモード特定情報に書換える。
【0057】
このように、ジョブの実行が指示されない間は、ステップ302〜308が繰返されることによって、スケジュールにしたがって省エネモードが変更される。停電が近づいている場合には、画像形成装置100の電源がオフされる。停電が終わった後、画像形成装置100は、ユーザによって電源がオンされても、タイマによって電源が自動的にオンされてもよい。例えば、電源がオフされても、電源をオンする制御回路及びタイマのみがバッテリで駆動し、停電が終了し、電力が供給される時刻になれば、自動的に電源をオンして画像形成装置100を起動させるようにすることができる。
【0058】
ジョブの実行が指示された場合、ステップ310において、CPU102は、停電が予定されているか否かを判定する。具体的は、HDD108に有効な停電情報が記憶されているか否かを判定する。有効な停電情報が記憶されていると判定された場合、制御はステップ314に移行する。そうでなければ、即ちHDD108に停電情報が記憶されていない場合、制御はステップ312に移行する。また、停電情報が記憶されていたとしても、現在時刻よりも前の情報であり、有効な情報でない場合、制御はステップ312に移行する。なお、停電が終了して画像形成装置100が再起動したときに、その停電情報がHDD108から削除されるようにすれば、HDD108に記憶されている停電情報は常に有効な停電情報である。その場合には、CPU102は、HDD108に停電情報が記憶されているか否かを判定するだけでよい。また、有効な停電情報が、HDD108に複数記憶されている場合もある。その場合には、現在時刻に最も近い停電情報を用いて、以下の処理が実行される。
【0059】
ステップ312において、CPU102は、指示されたジョブを実行する。即ち、停電が予定されていない場合には、通常通りジョブが実行される。ここでは、予め停電情報がHDD108に記憶されているとしたので、ステップ314が実行される。
【0060】
ステップ314において、CPU102は、ステップ302で実行を指示されたジョブが所定種類のジョブであるか否かを判定する。所定種類のジョブは、例えばFAX着信又は送信時刻を指定した送信予約のジョブである。これらのジョブであると判定された場合、制御はステップ316に移行する。そうでなければ、制御はステップ318に移行する。
【0061】
ステップ316において、CPU102は、所定のメッセージを表示し、ステップ302で指示されたジョブを実行せずにキャンセルし、制御はステップ302に戻る。例えば、メッセージとして「停電が予定されています。指示されたジョブを受付けることができません。」が表示される。ユーザが操作部130を操作して送信予約のジョブを登録した場合には、操作部130にメッセージが表示される。送信予約のジョブが、端末装置からネットワーク182を介して指示された場合には、その端末装置に対してメッセージデータが送信され、端末装置の表示部にメッセージが表示される。
【0062】
FAX通信は、通信相手(例えばFAX装置)と電話回線が接続されて通信が開始すると、途中で処理を中断することができないので、停電が予定されている場合には、ジョブを受付けないことが好ましい。したがって、FAX受信のジョブに対しては、例えば、公衆電話回線180を介して呼出信号を受信しても応答しない(回線を接続しない)、又は、回線使用中であることを示すビジー信号を返信する。また、送信を実行するタイミングを指定してイメージ送信を予約する機能(時刻指定送信機能)が知られているが、このような予約送信に関しても、送信時刻として停電中の時刻が設定されることを回避するために、受付けないことが好ましい。メモリ送信は空き時間に送信するジョブであるので、受付けてもよい。
【0063】
停電が予定されていても受付け可能なジョブであった場合、ステップ318において、CPU102は、ステップ302で実行を指示されたジョブが、ジョブを完了するために必要な時間(以下、ジョブ完了時間という)を算出可能なジョブであるか否かを判定する。具体的には、ステップ302の実行指示が、端末装置等の外部装置からの印刷指示、又は、ADFに原稿がセットされた状態でのコピー指示であるか否かを判定する。ジョブ完了時間の算出が可能なジョブと判定された場合、制御はステップ322に移行する。そうでなければ、制御はステップ320に移行する。
【0064】
ステップ320において、CPU102は、所定のメッセージを表示し、ステップ302で指示されたジョブを実行せずジョブをキャンセルし、制御はステップ302に戻る。例えば、メッセージとして「停電が予定されています。停電までに指示されたジョブを完了できません。」が表示される。ユーザが操作部130を操作してジョブの実行を指示した場合には、操作部130にメッセージが表示される。ジョブが、端末装置から指示された場合には、その端末装置にメッセージが表示される。
【0065】
ステップ322において、CPU102は、指示されたジョブのジョブ完了時間を算出する。画像形成装置100が、端末装置から画像データを受信して印刷の実行が指示された場合、CPU102は、受信した画像データを解析して、ジョブの実行条件(例えば、印刷するページ数、用紙サイズ、カラー又は白黒印刷、印刷濃度、印刷品質、両面印刷又は片面印刷等)と画像形成装置100の単位時間の処理能力とから、ジョブ完了時間を算出する。ジョブ完了時間を算出する方法は、例えば特開2003−296084号公報、特開2005−324471号公報等に開示されている公知の方法を使用すればよい。
【0066】
また、ADFに原稿がセットされた状態でコピー実行が指示された場合、ADFにセットされた原稿を全てスキャンしてHDD108に記憶する。そして、HDD108に記憶したデータ及びコピーの実行条件から、プリンタモードの場合と同様にジョブ完了時間を算出することができる。ジョブ完了時間は、印刷時間と、印刷後の処理(パンチ、ステープル処理等)とを合わせた時間である。ADFに原稿がセットされているか否かは、例えばADFに装備された原稿検知センサによって検知することができる。
【0067】
同じコピー指示であっても、ユーザが手で原稿を原稿台にセットして行なう場合には、ジョブ完了時間の算出ができない。したがって、このようなジョブ完了時間を算出できないジョブの実行が指示された場合、上記したように、所定のメッセージが操作部130に表示され、ステップ302で指示されたジョブが実行されずに、制御はステップ302に戻る(ステップ320)。
【0068】
ステップ324において、CPU102は、ステップ322で算出したジョブの完了に要する時間から、停電開始時刻より前に、指示されたジョブを完了できるか否かを判定する。具体的には、CPU102は、タイマから現在時刻を取得し、ステップ322で算出したジョブの完了に要する時間を現在時刻に加算した時刻が、停電開始時刻よりも所定時間以上前であれば、停電開始時刻より前にジョブを完了可能と判定する。停電開始時刻より前に、ジョブが完了可能であると判定された場合、制御はステップ326に移行する。そうでなければ、制御はステップ328に移行する。所定時間は適宜設定すればよい。
【0069】
ステップ324において、CPU102は通常通りジョブを実行し、その後、制御はステップ302に戻る。
【0070】
ステップ328において、CPU102は、停電開始時刻までにジョブの一部を実行できるか否かを判定する。例えば、CPU102は、印刷する全ページのうち停電開始時刻までに印刷可能なページ数を算出する。具体的には、CPU102は、現在時刻から停電開始時刻までの時間を、1ページの印刷に要する時間(ジョブの実行条件によって定まる)で除して、印刷可能なページ数を計算する。なお、実際に印刷を実行するページ数は、計算された値よりも少ない値として、停電開始時刻を超えないようにすることが好ましい。停電開始時刻までにジョブの一部を実行できると判定された場合、制御はステップ330に移行する。そうでなければ、制御はステップ332に移行する。
【0071】
ステップ330において、CPU102は、ジョブの一部を実行(ステップ328で算出されたページ数だけ印刷)する。ジョブの一部の実行が完了した後、CPU102は、ジョブを一時中断する旨のメッセージを操作部130に表示して、制御はステップ302に戻る。例えば、メッセージとして「停電が予定されているため、印刷を中断します。残りの印刷は停電が終わった後に実行されます。」が表示される。ユーザが操作部130を操作してジョブの実行を指示した場合には、操作部130にメッセージが表示される。ジョブが、端末装置から指示された場合には、その端末装置にメッセージが表示される。中断されたジョブの残りの処理は、例えばHDD108に記憶され、停電が終わり、画像形成装置100が再起動されてから実行される。
【0072】
ステップ332において、CPU102は、所定のメッセージを表示し、ステップ302で指示されたジョブを実行せずに、制御はステップ302に戻る。例えば、メッセージ「停電が予定されています。指示されたジョブは停電が終わった後に実行されます。」が表示される。この場合は、ステップ316及び320とは異なり、ジョブはキャンセルされず、停電が終わり、画像形成装置100が再起動されてから実行される。ユーザが操作部130を操作してジョブの実行を指示した場合には、操作部130にメッセージが表示される。ジョブが、端末装置から指示された場合には、その端末装置にメッセージが表示される。
【0073】
以上により、停電が予定されている状況で画像形成装置100に対してジョブの実行が指示された場合、ジョブ完了時刻を予想し、それが停電開始時刻よりも前であれば、ジョブを実行することができる。また、予想されたジョブ完了時刻が停電開始時刻以降になる場合には、ジョブの一部の処理のみを停電までに実行し、残りの処理は停電終了後に実行することができる。また、停電が予定されている状況で、所定のジョブ(FAX受信、送信予約、ADFを使用しないコピー等)の実行が指示された場合、そのジョブを受付けない。ジョブの種類に応じてこのように処理を変更することによって、停電によってジョブの途中で処理が強制的に停止されることを防止することができる。よって、印刷途中で停電になり、原稿又は記録紙が画像形成装置100内に滞留してしまうこと、FAX受信中にデータを受信できなくなってしまうこと等が生じない。
【0074】
上記では、省エネモードのスケジュール及び停電情報が予め管理者によってHDD108に記憶される場合を説明したが、これに限定されない。例えば、画像形成装置100が学習機能を有し、学習結果に応じて省エネモードのスケジュールを変更してもよい。
【0075】
また、停電情報は、ネットワークI/F114を介して端末装置等から送信され、画像形成装置100が受信した停電情報をHDD108に記憶してもよい。画像形成装置100が学習機能を有している場合には、過去の外部要因等で電源オフした時刻を記憶しておき、これを基に学習して、停電情報を決定してもよい。
【0076】
また、停電情報は、少なくとも停電の開始時刻(年月日を含む)を特定できる情報を含んでいればよい。例えば、停電の開始時刻のみ、停電の開始時刻及び停電時間(停電中の期間)、停電の終了時刻及び停電時間等であってもよい。
【0077】
また、図3のフローチャートは、適宜変更されてもよい。ステップ306において、スケジュール及び現在時刻のみから、遷移の有無を判定したが、これに限定されない。例えば、ジョブが完了してからの時間を考慮して遷移してもよい。省エネルギー状態への遷移を行なう場合、例えば、画像形成部120の加熱定着部を予熱モードに移行させる。その場合、ジョブが終了して加熱定着部が動作を停止してから予熱モードに移行するまでの時間(移行時間)を、省エネモードの種類に応じて予め設定しておき、ステップ306において、省エネモードの種類に対応する移行時間が経過したか否かを判定して、遷移すべきか否かを判定すればよい。なお、移行時間を設定するのは、画像の形成を行なうために加熱定着部への通電を開始しても、すぐには画像の形成が開始できないので、画像形成装置100のジョブの終了後、あまり短い時間で加熱定着部への通電を切断することは好ましくないからである。
【0078】
また、ステップ316及び320で表示するメッセージは、ステップ310で読出した停電情報(停電開始時刻)を含んでいてもよい。例えば、「本日○○時○○分に停電が予定されています。指示されたジョブを受付けることができません。」のように表示してもよい。
【0079】
また、ステップ314において、禁止対象のジョブであれば、一律にジョブを受付けない場合を説明したが、これに限定されない。メッセージの表示と同時に、ユーザに、ジョブを実行するか、又はキャンセルするかを選択させてもよい。禁止対象のジョブであっても、停電開始時刻までにジョブを完了できる場合もあり、ユーザが実行を指示した場合にはそのジョブを実行してもよい。
【0080】
また、ステップ318において、ADFに原稿がセットされた状態でのコピー指示を、完了時間算出可能なジョブとしたが、完了時間算出不可能なジョブとしてもよい。
【0081】
また、ステップ322において、ジョブ完了時間に、印刷後の処理(パンチ、ステープル処理等)が含まれる場合を説明したが、印刷後の後処理を含むジョブである場合には、後処理に時間がかかるので、ステップ318において、受付けないようにしてもよい。
【0082】
また、ステップ322において、ADFに原稿がセットされた状態でコピー実行が指示された場合、ADFにセットされた原稿を全てスキャンしてHDD108に記憶する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、ADFを用いて実際にスキャンせずに、原稿枚数等のジョブ完了時間を算出するために必要な情報を、操作部130を介してユーザに入力させてもよい。入力させる情報は、原稿をスキャンしないと分からない情報であればよい。原稿のサイズはセンサによって検知することができ、印刷部数、スキャンの解像度、白黒又はカラー等は、ジョブに実行条件として設定されるので、ここでユーザに入力させる必要はない。入力される情報は正確な情報でなくても、ある程度の精度でジョブ完了時間を算出することができる。
【0083】
また、ステップ328において、停電開始時刻までに印刷可能なページ数を算出する場合を説明したがこれに限定されない。例えば、複数部数の印刷が指示されている場合には、停電開始時刻までに印刷可能な部数を算出する。
【0084】
また、ステップ330において、ジョブの一部の処理のみが実行された後、ステップ302に戻る場合を説明したが、ステップ330の処理を実行した時点では停電開始時刻が迫っているので、例えば「省電力」状態に遷移して停電に備えてもよい。さらに、ジョブを受付けないようにしてもよい。
【0085】
また、ステップ302において、プリンタ機能のジョブの場合に、端末装置からネットワーク182を介して送信される印刷データの受信が完了したときに、ジョブを実行する指示を受けたと判定される場合を説明したが、これに限定されない。例えば、端末装置からネットワーク182を介して送信される印刷データの受信を開始したときに、ジョブを実行する指示を受けたと判定してもよい。画像形成装置100は、プリント機能を実行する場合、通常、次のような処理が並行して実行される。即ち、印刷データを受信する処理、受信データから1ページ毎の印刷用画像データを生成する処理、1ページ毎の印刷用画像データを圧縮してHDD108に記憶する処理、HDD108から1ページ毎の圧縮データを読出して伸長して印刷用画像データを生成する処理、伸長された印刷用画像データを印刷する処理が並行して実行される。このような場合でも、画像形成装置100が、ある程度データを受信できた段階であれば、ステップ322において、ジョブ完了時間を算出することができる。即ち、ある程度データを受信し、受信データからある程度の印刷用画像データが生成された段階であれば、ジョブ完了時間を算出することができる。したがって、端末装置からプリントジョブを指示され、ステップ324において停電開始時刻までにジョブを完了できないと判定された場合(即ち全ページを指定部数印刷できないと判定された場合)、ステップ330において、印刷を実行せずに全データを受信してHDD108に記憶した段階で、ジョブの実行を中断してもよい。また、全データを受信し、全ての印刷用画像データを生成し、圧縮してHDD108に記憶した段階で、ジョブの実行を中断してもよい。受信したデータによっては、印刷用画像データの生成に時間がかかる場合がある。例えば、多数のオブジェクトを複雑な配置で含む場合、レンダリングを実行して、1ページの画像データを生成する時間が非常に長くなる。そのような場合には、印刷用の画像データを生成せずに、全データを受信しHDD108に記憶した段階でジョブを中断することが好ましい。
【0086】
また、画像形成装置には、ログインするユーザ毎に印刷枚数を制限する機能を有しているものがある。即ち、ユーザアカウント毎にリミット値(例えば、1か月間に印刷を許可する最大枚数)を設定することができる。その場合には、リミット値を、停電開始時刻までにジョブが完了するか否かの判定に利用することができる。例えば、ステップ322において、算出された結果が停電開始時刻までにジョブを完了できないと判定された場合、そのユーザアカウントに対応する印刷枚数がリミット値に近いときには、停電開始時刻になる前にリミット値に達して、ジョブの実行が禁止される可能性があるので、ジョブを完了できると判定して、ステップ326の処理を実行してもよい。その場合、印刷枚数がリミット値になれば、リミット値を管理する別のプログラムによって、ジョブは停止される。
【0087】
また、画像形成装置100の動作モードがスケジュールにしたがって制御される場合に限定されない。画像形成装置100がスケジューリング機能を有していなくてもよい。少なくとも停電情報を記憶することができ、現在時刻を取得することができる画像形成装置であればよい。
【0088】
また、上記では、画像形成装置100が、指示されたジョブを全て実行する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、停電開始時刻までにジョブを完了できない場合、より高速な別の画像形成装置にジョブを転送して、実行させてもよい。又は、画像形成装置100がジョブの一部を実行し、ジョブの残りを別の画像形成装置に転送し、並行して実行させてもよい。また、これらの処理をユーザに選択させてもよい。
【0089】
以上、実施の形態を説明することにより本発明を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0090】
100 画像形成装置
102 制御部(CPU)
104 ROM
106 RAM
108 HDD
110 原稿読取部
112 FAX通信部
114 ネットワークI/F
116 バス
120 画像形成部
122 画像処理部
124 画像メモリ
130 操作部
132 タッチパネルディスプレイ
134 操作キー部
140 給紙部
142 手差し給紙トレイ
150 排紙処理部
152 排紙トレイ
180 公衆電話回線
182 ネットワーク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
停電の開始時刻を取得する取得手段と、
ジョブの実行条件の入力を受付ける入力手段と、
ジョブの実行が指示された場合、該ジョブの完了に要するジョブ完了時間を、該ジョブの実行条件を用いて算出する算出手段と、
実行が指示された前記ジョブの終了時刻を、前記ジョブ完了時間を用いて算出し、前記ジョブの終了時刻が前記停電の開始時刻より前であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により、前記ジョブの終了時刻が前記停電の開始時刻より前でないと判定された場合、前記停電の開始時刻までに完了可能な、前記ジョブの一部の処理を特定する特定手段と、
前記ジョブを実行する実行手段とを備え、
前記実行手段は、
前記判定手段により、前記ジョブの終了時刻が前記停電の開始時刻より前であると判定された場合、前記ジョブを開始し、
前記判定手段により、前記ジョブの終了時刻が前記停電の開始時刻より前でないと判定された場合、前記特定手段によって特定された、前記ジョブの一部の処理を開始することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
スケジュールにしたがって前記画像形成装置の動作モードを省エネルギーモードに変化させるモード遷移手段をさらに備え、
前記特定手段によって特定された、前記ジョブの一部の処理を終了した後に、前記モード遷移手段は、前記画像形成装置を省エネルギーモードに変化させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ジョブは、ページ単位での印刷処理を含むジョブであり、
前記特定手段は、前記判定手段により、前記ジョブの終了時刻が前記停電の開始時刻より前でないと判定された場合、前記停電の開始時刻までに完了可能な、前記ジョブの一部の処理として、前記停電の開始時刻までに印刷可能なページ数の印刷処理を特定することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ジョブは、複数部数の印刷処理を含むジョブであり、
前記特定手段は、前記判定手段により、前記ジョブの終了時刻が前記停電の開始時刻より前でないと判定された場合、前記停電の開始時刻までに完了可能な、前記ジョブの一部の処理として、前記停電の開始時刻までに印刷可能な部数の印刷処理を特定することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
データを記憶する記憶手段をさらに備え、
前記ジョブは、通信回線を介して伝送されるデータに基づいて印刷するジョブであり、
前記特定手段は、前記判定手段により、前記ジョブの終了時刻が前記停電の開始時刻より前でないと判定された場合、前記ジョブの一部の処理として、
前記データを受信して前記記憶手段に記憶する処理を特定する、又は、
前記データを受信する処理と、前記データから印刷用画像データを生成して前記記憶手段に記憶する処理とを特定する
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記取得手段が前記停電の開始時刻を取得した状態で、実行が指示された前記ジョブが所定の実行条件を含む場合、前記ジョブの実行を禁止する禁止手段をさらに備え、
前記所定の実行条件は、自動原稿送り装置を使用しないコピー処理であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記取得手段が前記停電の開始時刻を取得した状態で、実行が指示された前記ジョブが所定の実行条件を含む場合、前記ジョブの実行を禁止する禁止手段をさらに備え、
前記所定の実行条件は、自動原稿送り装置及び印刷の後処理装置のうちの少なくとも1つの装置の使用であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記取得手段が前記停電の開始時刻を取得した状態で、実行が指示された前記ジョブが所定のジョブであった場合、前記ジョブの実行を禁止する禁止手段をさらに備え、
前記所定のジョブは、ファクシミリ受信であることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記禁止手段は、前記ファクシミリ受信の呼出信号を受信した場合、回線を接続しないことにより、又は、前記呼出信号の発呼元に対してビジー信号を送信することにより、前記ファクシミリ受信を禁止することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記取得手段が前記停電の開始時刻を取得した状態で、実行が指示された前記ジョブが所定のジョブであった場合、前記ジョブの実行を禁止する禁止手段をさらに備え、
該所定のジョブは、送信時刻が予約された画像データ送信であることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
画像形成装置を制御する方法であって、
停電の開始時刻を取得するステップと、
ジョブの実行条件の入力を受付けるステップと、
ジョブの実行が指示された場合、該ジョブの完了に要するジョブ完了時間を、該ジョブの実行条件を用いて算出するステップと、
実行が指示された前記ジョブの終了時刻を、前記ジョブ完了時間を用いて算出し、前記ジョブの終了時刻が前記停電の開始時刻より前であるか否かを判定するステップと、
判定する前記ステップによって、前記ジョブの終了時刻が前記停電の開始時刻より前でないと判定された場合、前記停電の開始時刻までに完了可能な、前記ジョブの一部の処理を特定するステップと、
前記ジョブを実行するステップとを含み、
前記ジョブを実行する前記ステップは、
判定する前記ステップによって、前記ジョブの終了時刻が前記停電の開始時刻より前であると判定された場合、前記ジョブを開始し、
判定する前記ステップによって、前記ジョブの終了時刻が前記停電の開始時刻より前でないと判定された場合、特定する前記ステップによって特定された、前記ジョブの一部の処理を開始することを特徴とする制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−15719(P2013−15719A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149173(P2011−149173)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】