説明

画像形成装置及びカートリッジ

【課題】帯電装置端部での静電潜像担持体の局所的な削れ増加を抑制してリーク画像の発生を抑制する画像形成装置構成を提案する。
【解決手段】帯電装置端部での静電潜像担持体の局所的な削れは放電が支配的である。よって放電を助長する帯電装置と前露光の長手方向の影響領域を画像領域から帯電装置端部までの間とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式等によって画像形成を行う複写機、プリンタ等の画像形成装置に係り、特に、静電潜像担持体、帯電装置、露光装置、転写装置、前露光装置の長手配置に関する。
【0002】
また、画像形成装置の装置本体に取り外し可能に装着されるカートリッジに関する。
【背景技術】
【0003】
従来、複写機、プリンタ等の電子写真技術において、帯電装置は、オゾン抑制の観点から、導電性部材を静電潜像担持体に接触させて帯電する接触帯電方式が、広く用いられている。
【0004】
接触帯電方式の構成としては、下記のような構成が一般的である。即ち、静電潜像担持体の移動方向と直交する帯電部材や静電潜像担持体の回転軸方向(以下、長手方向と呼ぶ)で、静電潜像担持体と帯電部材が均一に密着するように、一方を弾性体(ブラシや弾性体にバックアップされたシートなどを含む)、他方を剛体とする。
【0005】
構成的に最も簡易なのは、静電潜像担持体を剛体とし、帯電部材を弾性体とする構成である。帯電部材は、芯金の周囲に弾性層として導電ゴムを用い、端部は芯金に対しほぼ垂直に切断されているものが一般的である。特に画像形成装置の装置本体から着脱可能に構成される交換ユニットもしくはカートリッジとして、静電潜像担持体もしくは帯電部材を含むように構成される場合に、上記の組合せで用いられることが多い。
【0006】
露光装置は、単一光源と複数光源に大別できるが、各ドットの照射光量及び形状の均一性の観点から、単一光源を用い、ポリゴンミラーを回転させ、レンズで補正し、静電潜像担持体表面を走査する方式が広く用いられている。
【0007】
現像装置は、反転現像方式が一般的である。また、ハーフトーン再現性や過剰なエッジ効果の抑制などの利点から、現像剤担持体に静電潜像担持体を接触させて現像を行う接触現像方式が、広く用いられている。
【0008】
転写装置は、反転現像された現像剤像を転写する為、正電圧を印加して、静電潜像担持体から中間転写体や最終転写材に転写を行う。この際、静電潜像担持体から最終転写材に転写する系において、静電潜像担持体の長手幅と、露光装置の露光幅と、転写材の長手幅と、帯電装置の有効帯電幅と転写部材の有効転写幅の関係を考慮する。そうしないと、紙端の黒スジ汚れや転写装置のトナー汚れが発生してしまう。
【0009】
この問題を回避するための有効な構成が特許文献1に開示されている。即ち、静電潜像担持体の感光層幅をWsとする。転写材の幅をWpとする。帯電装置において放電現象が発生し静電潜像担持体表面を一様に帯電可能となる長手幅(以下、有効帯電幅と記載する)と、転写装置において現像剤像が均一に転写される長手幅(以下、有効転写幅と記載する)が重複している長手幅をWtとする。そして、各装置の長手配置の関係を、Ws>Wt>Wp>We、とする。
【0010】
前露光装置は、静電潜像担持体周期のポジゴースト画像の抑制と現像剤像の転写性を両立するため、転写後の静電潜像担持体表面電位を制御する目的で、搭載されている。従来、照射面の光量均一性及び照射効率アップのため、WEDアレイやライトガイド等を用い、静電潜像担持体に対して、ほぼ垂直に照射し、除電を行っている。
【0011】
これに対し、近年、静電潜像担持体の長手方向側面からライトガイドなどを用いずに直に照射することで、小型化及びコストで有利な構成が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第2925432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1の実施形で提案されている長手構成に加えて、静電潜像担持体の長手方向外側から照射するように前露光装置を搭載した場合、リーク画像が発生することがあった。
【0014】
帯電ローラの長手幅をWcとする。静電潜像担持体の長手方向外側から照射する前露光装置の静電潜像担持体表面照射領域の長手幅をWpとする。転写ローラの長手幅をWtとする。そして、表1の長手関係において、静電潜像担持体と帯電ローラとの接触領域の長手方向端部において、静電潜像担持体の感光層が局所的に大きく削れ、この削れに起因するリーク画像が発生することがあった。
【0015】
【表1】

【0016】
本件発明者等は、この静電潜像担持体の局所的な削れの一因は、帯電ローラの長手方向中央部と端部の放電量の差であることを見出した。リーク画像は、静電潜像担持体の耐圧が足りなくなることで発生する。耐圧低下のメカニズムは、一般的に静電潜像担持体に対する放電により、静電潜像担持体の感光層が劣化し、感光層の削れ量が増大し、絶縁体である感光層の膜厚が薄くなり、耐圧が低下する。
【0017】
静電潜像担持体と帯電ローラとの接触領域の長手方向端部において、局所的に放電量が増加する主要因は、1)帯電ローラの形状要因と、2)帯電突入前電位の長手方向における不均一性の要因と、の相互作用である。
【0018】
まず、帯電ローラの形状要因は、帯電ローラ端部において、長手方向に対しほぼ垂直に切断されている為、長手中央部における周面からの放電に加え側面からの放電が発生する分、放電量が局所的に増加する構成となっている。
【0019】
次に、帯電突入前電位の長手方向における不均一性の要因は、静電潜像担持体に対して前露光が静電潜像担持体側面方向より照射されていることである。このため、静電潜像担持体の長手中央部の感光層透過率が端部に対し30%程度になってしまうこともあった。よって、長手中央部の静電潜像担持体回転周期のポジゴーストと転写性を両立させる為に前露光光量を設定すると、端部の光量が過大になってしまい、帯電突入前電位が中央部に対し端部が低い状態になり、端部の放電量が増加する。また、帯電ローラ端部の放電量の増加要因として、転写による帯電ローラ端部の帯電突入前電位低下が上げられる。有効帯電幅より有効転写幅が長い場合、帯電ローラ端部の帯電突入前電位が低下する為、中央部に比べ帯電ローラ端部の放電量が、局所的に増加する。
【0020】
本発明は、上記に鑑みて提案されたもので、帯電装置端部での静電潜像担持体の局所的な削れ増加を抑制してリーク画像の発生を抑制する構成を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の構成は、移動可能な静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体に当接し表面を一様に帯電する帯電装置と、一様に帯電された前記静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像担持体の表面に現像された画像を転写媒体に転写する転写装置と、転写後帯電前に前記静電潜像担持体の表面電位を除電するために前記静電潜像担持体の長手方向外側から光を前記静電潜像担持体の表面に照射する前露光装置と、前記帯電装置の放電領域端部と前記前露光装置の前記静電潜像担持体の表面の照射領域が重複しないように前記前露光装置から前記静電潜像担持体の表面までの光路を遮蔽する遮蔽部材と、を有し、前記帯電装置の長手方向の放電幅をWc、前記露光装置の長手方向の静電潜像形成幅をWl、前記転写装置の長手方向幅をWt、前記遮蔽部材で遮蔽後の前記前露光装置による長手方向の露光幅をWp、とすると、
Wc>Wt>Wl、かつ、Wc>Wp>Wl
となることを特徴とする。
【0022】
また、上記目的を達成するための本発明に係るカートリッジの構成は、
移動可能な静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体に当接し表面を一様に帯電する帯電装置と、一様に帯電された前記静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像担持体の表面に現像された画像を転写媒体に転写する転写装置と、転写後帯電前に前記静電潜像担持体の表面電位を除電するために前記静電潜像担持体の長手方向外側から光を前記静電潜像担持体の表面に照射する前露光装置と、前記帯電装置の放電領域端部と前記前露光装置の前記静電潜像担持体の表面の照射領域が重複しないように前記前露光装置から前記静電潜像担持体の表面までの光路を遮蔽する遮蔽部材と、を有し、前記帯電装置の長手方向の放電幅をWc、前記露光装置の長手方向の静電潜像形成幅をWl、前記転写装置の長手方向幅をWt、前記遮蔽部材で遮蔽後の前記前露光装置による長手方向の露光幅をWp、とすると、
Wc>Wt>Wl、かつ、Wc>Wp>Wl
となる画像形成装置の装置本体に取り外し可能に装着されるカートリッジであって、少なくとも前記遮蔽部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、帯電装置端部での静電潜像担持体の局所的な削れ増加を抑制してリーク画像の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例の画像形成装置の概略断面図
【図2】静電潜像担持体に対する帯電ローラ、露光領域、転写ローラ、前露光照射領域の長手配置の説明図
【図3】Vd−帯電突入前電位と感光層削れとの関係図
【図4】従来構成と実施例との帯電ローラ端部における削れ量比較図
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0026】
[実施例1]
(1)画像形成装置例の全体的構成の説明
図1は本発明に係る画像形成装置100の一例の全体構成模型図である。この画像形成装置100は転写方式電子写真プロセスを用いたタンデム型のフルカラーレーザービームプリンタ(多色画像形成装置)である。
【0027】
Y・M・C・Bkはそれぞれフルカラー画像の色分解成分色に対応するイエロー・マゼンタ・シアン・ブラックの各色のトナー画像を形成する第1〜第4の4つの作像ステーションであり、画像形成装置本体内に下から上に順に垂直方向に並設されている。
【0028】
作像ステーションY・M・C・Bkは、それぞれ、静電潜像担持体としての移動可能(回転可能)なドラム型の電子写真感光体1(a〜d)を有する。電子写真感光体1を以下、ドラムと記す。また、ドラム1に当接し表面を一様に帯電する帯電装置2(a〜d)を有する。また、一様に帯電されたドラム1の表面に画像露光して静電潜像を形成する露光装置3(a〜d)を有する。また、ドラム1の表面に形成された静電潜像を現像剤(以下、トナーと記す)によりトナー像(画像)として現像する現像装置4(a〜d)を有する。また、転写媒体(記録媒体、転写材)Sに対するトナー像転写後のドラムの表面を清掃するクリーニング装置6(a〜d)を有している。
【0029】
帯電装置2はドラム1に当接して配設された接触帯電部材(導電部材)としての帯電ローラである。露光装置3はレーザースキャナユニットである。ユニット3は、パソコン等の外部ホスト装置(不図示)から画像形成装置の制御回路部(不図示)に入力する電気的な画像情報に対応して変調されたレーザー光を出力してドラム1の一様帯電処理面を走査露光する。これにより、ドラム上に走査露光パターンに対応した静電潜像が形成される。露光装置3は、ドラム1の水平方向に配置され、レーザーダイオード(不図示)、スキャナモーター(不図示)、ポリゴンミラー9(a〜d)、結像レンズ10(a〜d)等を有している。
【0030】
5はドラム1(a〜d)上に形成したトナー画像を転写媒体S上に転写させる転写ユニットである。このユニット5には、すべてのドラム1(a〜d)に対向し且つ接するように循環移動するエンドレスの転写ベルト11が駆動ローラ13、2本の従動ローラ14a・14b、テンションローラ15の4本のローラ間に掛け渡されて縦方向に配設されている。12(a〜d)は転写装置として転写ローラであり、それぞれ、ドラム1(a〜d)との間に転写ベルト11を挟むように転写ベルトの内周面に接触させて並設されている。即ち、転写ベルト11の内側に当接し、4個のドラム1a,1b,1c,1dに対向した位置に転写装置としての高抵抗のスポンジローラ12(a〜d)が並設されている。
【0031】
16は画像形成装置の装置本体の下部に配設された転写媒体給送部であり、転写ユニット5の転写ベルト11に転写媒体Sを給送するものである。この給送部16において、17は給送カセットであり、複数枚の転写媒体Sが収納されている。18は給送ローラ(半月ローラ)、19はレジストローラ、22は静電吸着ローラである。
【0032】
20は画像形成装置の装置本体の内部の上部に配設された定着部であり、転写媒体Sに転写された複数色のトナー画像を定着させるものである。回転する加熱ローラ21a、これと接触して転写媒体Sに圧力を与える加圧ローラ21b、排出ローラ対23、排出口24等を有している。25は画像形成装置本体の上部に設けられた排出トレイである。
【0033】
フルカラー画像を形成する動作は次のとおりである。画像形成シーケンスの所定の制御タイミングに合わせて各作像ステーションY・M・C・Bkが順次駆動され、ドラム1が矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。また、転写ベルト11が駆動ローラ13により矢印の時計方向にドラム1の回転速度に対応した速度で循環移動駆動される。
【0034】
ドラム1の外周面(表面)はドラムの回転過程で帯電ローラ2により所定の極性(本実施例では負極性)及び電位に均一に1次帯電処理される。その帯電処理面に対して露光装置3より出力される画像情報に応じて変調されたレーザー光による画像走査露光がなされて、ドラム表面に画像情報の静電潜像が形成される。即ち、露光装置3のレーザーダイオード(不図示)によって画像信号に対応する画像光が出力され、その画像光がスキャナモーター(不図示)によって高速回転されるポリゴンミラー9に照射される。ポリゴンミラーによって反射した画像光は、結像レンズ10を介して、帯電済みのドラム表面を選択的に露光する。これによってドラム表面に静電潜像が形成される。
【0035】
その静電潜像が現像手段4によってトナー像として現像される。本実施例では負極性トナーを用いた反転現像である。これにより、作像ステーションY・M・C・Bkのドラム1(a〜d)の表面にそれぞれ電子写真プロセスによりフルカラー画像の色分解成分色像である、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が所定のシーケンス制御タイミングにて形成される。
【0036】
一方、所定の制御タイミングにおいて、給送部16の給送ローラ18が回転駆動される。これによってカセット17内の転写媒体Sが1枚毎分離給送される。その転写媒体Sの先端がその時点では回転停止状態にあるレジストローラ対19のニップ部に突き当って受け止められて一旦停止する。そして、転写ベルト11の回転とドラム1に形成されるトナー画像との同期をとって、レジストローラ対19が回転駆動される。これによって転写媒体Sが静電吸着ローラ22と転写ベルト11との間へ給送される。給送部16は、画像形成部に転写媒体Sを給送するものであり、複数枚の転写媒体Sがカセット17に収納されている。画像形成時には給送ローラ18、レジストローラ対19が画像形成動作に応じて駆動回転し、カセット17内の転写媒体Sを1枚毎分離給送する。給送された転写媒体Sの先端はレジストローラ対19に突き当たり一旦停止し、ループを形成した後、転写ベルト11の回転と画像書出し位置の同期をとって、レジストローラ対19によって転写ベルト11へと給紙されていく。転写媒体Sは静電吸着ローラ22と転写ベルト11とによって挟み込まれ転写ベルト11の外周面に接触する。そして転写ベルト11と静電吸着ローラ22との間に電圧が印加されることにより、誘電体である転写媒体Sと転写ベルト11の誘電体層に電荷を誘起させる。そして転写媒体Sが静電転写ベルト11表面に静電吸着する。これにより、転写媒体Sは転写ベルト11に安定して吸着され、転写ベルト移動方向において最上流の転写部から転写ベルト11の移動によって最下流の転写部まで搬送される。
【0037】
このように搬送されながら転写媒体Sは、各作像ステーションY・M・C・Bkにおいて、ドラム1と転写ローラ12との間に形成される電界によって、ドラム1のトナー画像の順次重畳転写を受ける。本実施例では、転写ローラ12から正極性の電荷が転写ベルト11を介して転写媒体Sに印加される。この電荷による電界により、ドラム1に接触中の転写媒体Sにドラム1上の負極性のトナー画像が転写される
即ち、転写媒体Sは転写ベルト11の面に静電吸着して保持され、転写ベルト11の回転により下から上に搬送されていく。そして、その搬送過程で作像ステーションY・M・C・Bkの各転写部にてドラム1の面にそれぞれ形成されるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像の重畳転写を順次に受ける。これにより転写媒体Sの面に未定着のフルカラートナー画像が合成形成される。
【0038】
4色のトナー画像の重畳転写を受けた転写媒体Sは、駆動ローラ13の位置において転写ベルト11から曲率分離して定着部20に搬送される。そして、転写媒体Sは回転する加熱ローラ21aと、これと接する加圧ローラ21bとによって形成されるニップ部(定着ニップ部)により挟持搬送される。これによって転写媒体Sに対してローラ対21a・21bにより熱と圧力を与えられて、複数色のトナー画像が転写媒体Sの面上に加熱定着される。転写媒体Sは、定着部20で上記のトナー画像の定着を受けた後、排出ローラ対23によって排出口24から排出トレイ25に排出される。
【0039】
各作像ステーションY・M・C・Bkにおいて、転写媒体Sへのトナー画像転写後のドラム1の表面はクリーニング部材6によって転写残トナー等の残存付着物が除去され、繰り返して作像に供される。
【0040】
図2は、各作像ステーションY・M・C・Bkにおける、ドラム1に対する帯電ローラ2、露光装置3の露光領域、転写ローラ12、前露光装置8の前露光照射領域の長手配置の関係図である。
【0041】
各作像ステーションY・M・C・Bkには、それぞれ、転写後帯電前にドラム1の表面電位を除電するために、ドラム1の長手方向外側から光をドラム表面に照射する前露光装置8(a〜d)が配設されている。図2においては、前露光装置8は、ドラム1の長手方向両側に配設されている。本実施例においては、前露光装置8は、赤色ダイオードを用いている。前露光装置8は、転写後のドラム表面を全面露光してドラム表面の電位を制御する。また、前露光装置8からドラム1への照射光路上に配置され帯電ローラ端部に前露光が当たらないように遮蔽する遮蔽部材81(a〜d)が配設されている。即ち、遮蔽部材81は、帯電ローラ2の放電領域端部と前露光装置8のドラム表面の照射領域が重複しないように前露光装置8からドラム表面までの光路を遮蔽する。前露光転写後のドラム表面に残った転写残トナーがクリーニング装置6により除去される。
【0042】
前露光装置8は、基盤に赤色ダイオードを固定した。前露光装置8は、ドラム1の長手方向両側に配置し、ドラム長手中央部の光量のマージンアップを図っている。
【0043】
図2において、Wcは帯電装置である帯電ローラ2の長手方向の放電幅である。Wlは露光装置3の長手方向の静電潜像形成幅(露光領域)である。Wtは転写装置である転写ローラ12の長手方向幅である。Wpは遮蔽部材81で遮蔽後の前露光装置8による長手方向の露光幅である。遮蔽部材81は、Wc>Wt>Wl、かつWc>Wp>Wlとなるように、前露光の光を遮るように配置する。転写媒体Sの搬送は中央基準であり、各幅Wl・Wp・Wt・Wcの中央はその中央基準線に一致している。
【0044】
(2)帯電ローラ端部における局所的な感光層削れの詳細
上記の画像形成装置100にて行った、ドラム1の感光層の削れの詳細を示す。リーク画像を改善する為、帯電ローラ端部における感光層の局所的な削れのメカニズムと、解決手段について検討を行った。
【0045】
検討は、上記の画像形成装置100にて、15℃/10%Rh環境にて空回転実験を行った。空回転実験は、ドラム表面が−500Vに成るように帯電ローラ2に電圧を印加した。現像装置4の現像ローラ(現像剤担持体)には−350Vの電圧を印加し、トナー(現像剤)が均一に担持できる状況にした。転写ローラ12の印加電圧は、定電流制御により20μAになるように、正電圧を印加した。
【0046】
ドラム1の感光層の削れ量は、初期と空回転後の表面膜厚から算出した。表面膜厚は、Fisherの表面膜厚測定器を使用した。
【0047】
図3は、ドラム1の画像中央(ドラム長手中央部)における、所望の電位Vdと帯電突入前電位との差と、感光層の削れの関係を示している。この時、帯電突入前電位は、前露光光量を可変させることで変化させた。この結果より、所望の電位Vdと帯電突入前電位との差、即ち放電量が多いほど、感光層の削れ量は増加している。よって、帯電ローラ端部における感光層の局所的な削れ増加は、帯電ローラ端部の放電量を少なくすることで、抑制が可能となる。
【0048】
この結果を踏まえ、従来構成(帯電ローラ端部に前露光照射有り)と、実施例1(帯電ローラ端部の前露光遮蔽)の構成と、の感光層削れ量を比較する。図4に示す通り、従来構成において、帯電ローラ端部の感光層削れ量は、画像中央に比べ2倍程度となっている。これは、帯電ローラ端部からの放電効果及び、側面から照射する前露光の影響だと考える。また、本実施例に示した構成と従来構成における感光層の削れ量を比較すると、本実施例に示した構成の感光層の削れ量は半分程度となっている。このように、帯電ローラ端部の前露光を遮蔽し、転写ローラ12を帯電ローラ2より短くすることで、帯電ローラ端部の放電を少なくし、寿命末期においても、感光層の膜厚低下によるリーク画像の発生は、抑制することが出来る。
【0049】
本実施例1において、ドラム1は、直径30mmで、厚さ0.7mmのアルミ素管の基体を有する。その外周面上に、有機光導電層(感光層)を塗布したものである。感光層の削れを抑制するために、感光層は、ポリカーボネート樹脂に削れ難いポリアリレート樹脂を含有した感光層を使用する。感光層の感度は、23℃/50%環境にてVdを−420Vとした場合、面光量0.37μJ/cmで露光するとVlが−85Vになるように設定した。
【0050】
帯電ローラ2は、ローラ状に形成された導電性弾性ゴムローラであり、このローラをドラム表面に片側500g重で当接させるとともに、電圧印加手段(不図示)でこのローラに帯電バイアスを印加する。帯電ローラ2は、ドラム1の回転に従動して回転する。この帯電ローラ2によりドラム表面が一様に帯電される。帯電ローラ2の体積抵抗は、Alシリンダーに対し、500g重で押し当て、30rpmで回転しながら−200V印加した状態で10Ωである。硬度は、MD1硬度が57°、AskerC硬度が86°である。端部形状は、成型後に突っ切りで加工するため、ドラム1に当接する周面に対し、垂直となっている。
【0051】
露光装置(スキャナユニット)3は、単一光源からの赤色光をポリゴンミラーに照射し、ポリゴンミラーを回転させることで、ドラム表面を正確に走査する。この時、ドラム1の単位面積あたりの光量は、0.37μJ/cmとしたが、0.25〜0.4μJ/cmの間では、後述の結果と同様の傾向を示している。
【0052】
転写ローラ12は、例えば、芯金と導電性のスポンジから成っており、このローラを片側400g重でドラム1に当接させ、ドラム1に対し、従動回転させている。体積抵抗は、Alシリンダーに対し、500g重で押し当て、30rpmで回転しながら−1000V印加した状態で10Ωである。硬度は、AskerC硬度が24°である。転写ベルト12は、ポリイミド製である。体積抵抗は、金属板の上にベルトを載せ三菱油化製ハイベスターで−100V印加の条件で、1010Ωである。
【0053】
前露光装置(赤色ダイオード)8の光量は、前露光照射後のドラム表面電位の減少量が、画像中央と帯電ローラ端部とで異なればよい。本実施例では、前露光装置8に40mA通電して発光させる。画像中心の前露光照射後のドラム表面電位を−100Vとする。帯電ローラ端部の前露光装置8は、ドラム1の端部から長手方向外側に10mm、長手方向鉛直方向上側に16mm、転写ローラ当接位置より下流側に5mmの両側方位置に配置する。そして、ドラム1の軸方向と光軸とのなす角θ=2°でドラム表面を照射し、ドラム1の表面電位を除電する。尚、片側から照射する場合であっても、遮蔽部材81との関係が保たれていれば、感光層の削れ抑制に効果がある。
【0054】
遮蔽部材81は、前述したように、Wc>Wt>Wl、かつ、Wc>Wp>Wlとなるように、前露光の光を遮るように配置する。具体的に、遮蔽部材81は、前露光装置8の光源と帯電ローラ端を結ぶ線よりも長手方向内側で、前露光装置8の光源と画像形成領域端を結ぶ線よりも、長手方向外側となるように配置する。本実施例では、前露光装置8の鉛直下側にモールド製の遮蔽部材81を配置した。遮蔽部材81がない場合、ドラム1の画像中央の帯電突入前のドラム表面電位は−100V程度であるのに対し、帯電ローラ端部の帯電突入前のドラム表面電位は、−30〜−50Vとなっている。
【0055】
具体的に、Wc:228mm、Wl:209.5mm、Wt:227.4mm、Wp:224mmとした。この長手配置とすることで、帯電ローラ端部における感光層の局所的な削れ増加を抑制し、寿命末期のドラム表面の耐圧性を上げ、リーク画像の発生を抑制することが出来る。
【0056】
《実施例2》
本実施例は、実施例1の画像形成装置100の各作像ステーションY・M・C・Bkにおける、ドラム1、帯電ローラ2、現像装置4、クリーニング装置6、前露光装置8、遮蔽部材81をカートリッジ7(a〜d)にしている。即ち、上記の電子写真プロセス機器を一括して画像形成装置100の装置本体に取り外し可能に装着されるカートリッジ(プロセスカートリッジ)としたものである。
【0057】
この場合も、Wc>Wt>Wl、かつ、Wc>Wp>Wlとなる長手配置とすることで、帯電ローラ端部における感光層の局所的な削れ増加を抑制し、寿命末期のドラム表面の耐圧性を上げ、リーク画像の発生を抑制することが出来る。
【0058】
カートリッジ7(a〜d)は、少なくとも遮蔽部材81を有するものである。また、この遮蔽部材81の他に、ドラム1、帯電ローラ2、現像装置4、クリーニング装置6、前露光装置8の少なくとも1つを有するものである。
【符号の説明】
【0059】
1・・ドラム(静電潜像担持体)、2・・帯電装置、3・・レーザースキャナ(露光装置)、4・・現像装置、5・・転写ユニット、11・・転写ベルト、12・・転写ローラ(転写装置)、6・・クリーニング装置、7・・カートリッジ、8・・前露光装置、81・・遮蔽部材、9・・ポリゴンミラー、10・・結像レンズ、16・・給送部、17・・給送カセット、18・・給送ローラ、19・・レジストローラ対、20・・定着部、21・・定着ローラ対、21a・・加熱ローラ、21b・・加圧ローラ、100・・画像形成装置、S・・転写媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体に当接し表面を一様に帯電する帯電装置と、一様に帯電された前記静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像担持体の表面に現像された画像を転写媒体に転写する転写装置と、転写後帯電前に前記静電潜像担持体の表面電位を除電するために前記静電潜像担持体の長手方向外側から光を前記静電潜像担持体の表面に照射する前露光装置と、前記帯電装置の放電領域端部と前記前露光装置の前記静電潜像担持体の表面の照射領域が重複しないように前記前露光装置から前記静電潜像担持体の表面までの光路を遮蔽する遮蔽部材と、を有し、前記帯電装置の長手方向の放電幅をWc、前記露光装置の長手方向の静電潜像形成幅をWl、前記転写装置の長手方向幅をWt、前記遮蔽部材で遮蔽後の前記前露光装置による長手方向の露光幅をWp、とすると、
Wc>Wt>Wl、かつ、Wc>Wp>Wl
となることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
移動可能な静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体に当接し表面を一様に帯電する帯電装置と、一様に帯電された前記静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像担持体の表面に現像された画像を転写媒体に転写する転写装置と、転写後帯電前に前記静電潜像担持体の表面電位を除電するために前記静電潜像担持体の長手方向外側から光を前記静電潜像担持体の表面に照射する前露光装置と、前記帯電装置の放電領域端部と前記前露光装置の前記静電潜像担持体の表面の照射領域が重複しないように前記前露光装置から前記静電潜像担持体の表面までの光路を遮蔽する遮蔽部材と、を有し、前記帯電装置の長手方向の放電幅をWc、前記露光装置の長手方向の静電潜像形成幅をWl、前記転写装置の長手方向幅をWt、前記遮蔽部材で遮蔽後の前記前露光装置による長手方向の露光幅をWp、とすると、
Wc>Wt>Wl、かつ、Wc>Wp>Wl
となる画像形成装置の装置本体に取り外し可能に装着されるカートリッジであって、少なくとも前記遮蔽部材を有することを特徴とするカートリッジ。
【請求項3】
前記遮蔽部材の他に、前記静電潜像担持体と帯電装置を有することを特徴とする請求項2に記載のカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−160185(P2010−160185A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−623(P2009−623)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】