説明

画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】 帯電部材が直流電圧に交流電圧を重畳して電子写真感光体を印加帯電する際に発生する帯電音を抑制する手段として、コストが上昇する手段を用いずに、帯電音を実用上問題のないレベルにまで抑制でき、出力画像が良好であり、かつ搭載する電子写真感光体のリサイクルを容易とする画像形成装置及びプロセスカートリッジの提供。
【解決手段】 電子写真感光体、帯電手段、像露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段を備え、帯電手段の帯電部材が、軸部と導電剤を含む樹脂製の本体部からなり、電子写真感光体に対し非接触で対向配置され、直流電圧に交流電圧を重畳して電子写真感光体を非接触で印加帯電させるものであり、帯電部材と電子写真感光体の間隙をGμm、電子写真感光体の中心軸で回転させたときの外径振れ精度をAμmとして、10μm≦G−A≦90μmという関係を満たす画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、レーザープリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置、及びこの画像形成装置に配設される帯電手段、電子写真感光体を備える画像形成装置用プロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ、レーザービームプリンタ、複写機など、間接電子写真法を使用して画像形成を行う画像形成装置では、電子写真用感光体(以下、単に「感光体」と称することもある)を中心に帯電、画像露光、現像、転写、分離、清掃、除電等の各手段が配設され、感光体に対し、各手段が順に作動する形で、画像形成が行われる。
まず、感光体には帯電手段により、−400〜−800ボルトの帯電(電荷付与)が行われる。帯電手段に電圧を印加する方法には、直流電圧が印加される場合と、交流電圧重畳の直流電圧が印加される場合の2通りの方法がある。通常は直流電圧のみで実用上問題のない作像が可能であるが、直流電圧に交流電圧を重畳することによって、更に環境条件に左右され難くなり、接触帯電方式を用いた場合に生じる、帯電部材、感光体の凹凸、部材の微小なムラ等に起因すると考えられる電位ムラを少なくすることができる。
一方、現在一般的に採用される帯電方法には、シールドケース内に帳架された直径40〜80μmのタングステン線、ニッケル線などの金属線に−4000〜−6000V程度の高電圧を印加して感光体を帯電するコロナ帯電方法、10〜10Ω・cm程度の抵抗を有するローラ形状、ブラシ形状等の帯電部材に−1200〜−2000Vの直流電圧、もしくは−500〜−900Vの直流電圧に、1000〜2500V/500〜4500Hzの交流電圧を重畳させた電圧を印加しながら感光体を帯電する接触帯電方法、もしくは帯電部材と感光体間を30〜250μm程度離して近接配置させ、前記同様の電圧を印加し、感光体を帯電する非接触帯電方法がある。
【0003】
コロナ帯電方法では高電圧が印加されるため、10ppm前後の高濃度のオゾンが発生する。そのため、オゾン臭による環境上の問題がある。そのため近年では低い印加電圧で帯電可能な接触帯電方法が行われ、オゾンの発生は0.1ppm以下と極めて少ない。従って、近年はオゾン生成量が少ない接触帯電法を使用し、帯電部材には交流電圧重畳直流電圧を印加する画像形成装置も多くなっている。
しかし、直流電圧に交流電圧を重畳した帯電手段に印加した場合、画像品質低下の原因物質であるオゾン、窒素酸化物の発生以外に、帯電時に、耳障りな帯電音が発生するという騒音上の問題がある。この帯電音は直流電圧では殆ど問題とはならず、振動電流と言われるが故の交流特有の現象であり、振幅が大きくなるほど、また、感光体の支持体が響き易い材質ほど、帯電音が大きくなる。従って、可能な限り低い条件に設定することが望ましいが、帯電安定性を高くするとどうしても条件が厳しくなり、帯電音が大きくなるため、対策を講じることは必要不可欠である。
この現象を改善する手段として、感光体の支持体を厚くする、ドラム状感光体の内部に制振材(充填材)を挿入する、帯電部材側の改善を行う等の方法が提案されている。これらの方法は感光体の響きを抑え、共振周波数を耳に感じ難い方へずらすことなどを目的としており、下記に示すような事例が提案されている。
【0004】
例えば、ドラム状感光体の内部に制振材を挿入し、帯電時の帯電音(高周波音)の発生を改善する方法として、感光ドラム内部に緩衝材を圧挿すること(例えば、特許文献1参照)、感光体内部に粘弾性材料を充填すること(例えば、特許文献2参照)、感光体の内部に密度2.0g/cm以上の剛体を挿入すること(例えば、特許文献3参照)、2つ以上の弾性体(Oリング)と円柱状部材〔比重1.5以上のプラスチック(ガラス繊維を20%以上含有するポリブチレンテレフタレート樹脂)〕から構成される部材を感光体へ挿入すること(例えば、特許文献4参照)、金属製バネを内蔵した樹脂製円筒状部材を挿入し、感光体内壁に押圧力で固定すること(例えば、特許文献5参照)などが提案されている。
また、感光体基体の肉厚を厚くして、制振効果を高める方法として、感光体の基体がインローを有し、インロー以外の肉厚を1.9mm以上とすることで制振効果を得ること(例えば、特許文献6参照)、感光体の体積密度を0.6g/cm以上、2.0g/cm以下とすることで制振効果を得ること(例えば、特許文献7参照)が提案されている。
更に、帯電部材から帯電音抑制を達成する方法として、中空の帯電部材(ローラ)の表面に被覆層を設け、帯電部材の内部に弾性体を挿入し芯金をその弾性体を介して支持する構造にすることによって、帯電音の改善を行うことが提案されている(例えば、特許文献8参照)。帯電音は感光体の振動周波数を耳障りにならないような可聴域にずらす様にするか、振動そのものを押さえ込むかの何れかの方法により対策方法が異なってくる。
【0005】
上記した方式は何れも大なり小なりの効果がある。ただ、接触帯電法では改善されても、帯電部材を感光体に極近接配置する非接触帯電方式では効果が得難い場合がある。例えば帯電部材で帯電音を抑制する方法や感光体の支持体を厚くしただけでは十分な効果が得難い。感光体支持体の内部に充填材を挿入して重量を上げ、響き(鳴き)を抑える方法は効果が得易いが、単に挿入しても支持体と挿入材の間に隙間があるような場合や重さが小さい場合などでは予想通りの効果が得難い。また、単一構成の部材で構成した場合も効果が低くなることがある。更に、近年は環境問題があり、再生、再使用等が必要であるため、この点に関しての考慮が必要である。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−60481号公報(第2〜3頁)
【特許文献2】特開平3−105348号公報(第2〜5頁)
【特許文献3】特開平5−197321号公報(特許請求の範囲、第8〜10頁)
【特許文献4】特開平11−184308号公報(特許請求の範囲、第2〜3頁)
【特許文献5】特開2000−321929号公報(第2〜4頁)
【特許文献6】特開2000−19761号公報(第2〜3頁)
【特許文献7】特開2000−155500号公報(第2〜3頁)
【特許文献8】特開平9−230671号公報(特許請求の範囲、第3〜10頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、帯電部材が直流電圧に交流電圧を重畳して電子写真感光体を印加帯電する際に発生する帯電音を抑制する手段として、制振材を感光体内部に搭載するなどのコストが上昇する手段を用いずに、帯電音を実用上問題のないレベルにまで抑制でき、出力画像が良好であり、かつ搭載する電子写真感光体のリサイクルを容易とする画像形成装置、及び、該画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題に対し鋭意検討した結果、上記課題が次の1)〜24)の発明(以下、本発明1〜24という)によって解決されることを見出した。
1) 少なくとも電子写真感光体と、電子写真感光体を一様に帯電する帯電手段と、一様帯電後に像露光を行い静電潜像を形成する像露光手段と、静電潜像にトナーを現像する現像手段及び現像した像を転写する手段と、電子写真感光体の転写残トナーをクリーニングするクリーニング手段とを備える画像形成装置であって、帯電手段において用いられる帯電部材が、電子写真感光体に対し非接触で対向して配置され、帯電部材は、直流電圧に交流電圧を重畳して電子写真感光体を非接触で印加帯電させるものであり、かつ軸部と該軸部を被覆する本体部とから構成され、本体部は導電剤を含む樹脂からなり、帯電部材と電子写真感光体の間に形成される間隙の大きさをG(μm)とし、電子写真感光体の中心軸で回転させたときの外径振れ精度をA(μm)としたとき、GとAが次式の関係を満たすことを特徴とする画像形成装置。
10(μm)≦G−A≦90(μm)
2) 前記間隙の大きさGが、20(μm)≦G≦100(μm)なる関係を満たすことを特徴とする1)記載の画像形成装置。
3) 前記外径振れ精度Aが、10(μm)≦A≦50(μm)なる関係を満たすことを特徴とする1)又は2)記載の画像形成装置。
4) 前記帯電部材は、対向して配置される電子写真感光体の画像形成領域外に当る本体部にスペーサ部材を備えることにより、帯電部材と像担持体間に間隙を形成することを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の画像形成装置。
5) 前記帯電部材が電子写真感光体を帯電させるために供給する交流電圧周波数が、100Hz〜2.5kHzであることを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の画像形成装置。
6) 前記帯電部材が電子写真感光体を帯電させるために供給する交流電圧周波数の振動振幅(Vpp)が、1.0〜3.0kVであることを特徴とする1)〜5)の何れかに記載の画像形成装置。
7) 前記本体部の体積抵抗率が、1×10〜1×1010Ω・cmであることを特徴とする1)〜6)の何れかに記載の画像形成装置。
8) 前記電子写真感光体が感光層を有し、最表面層として電荷輸送層を有し、該電荷輸送層の膜厚が10〜35μmであることを特徴とする1)〜7)の何れかに記載の画像形成装置。
9) 前記電子写真感光体は、両端の開口部に軸受け部材が装着され、感光体内部を貫通する軸を具備することを特徴とする1)〜8)の何れかに記載の画像形成装置。
10) 前記電子写真感光体は、動作時に帯電部材と連れ回りで動作し、帯電部材による印加帯電時に電子写真感光体が200rpm以下で回転し帯電することを特徴とする1)〜9)の何れかに記載の画像形成装置。
11) 前記現像手段において使用されるトナーが、平均粒径70〜300nmの無機微粒子を含有することを特徴とする1)〜10)の何れかに記載の画像形成装置。
12) 少なくとも、電子写真感光体を一様に帯電する帯電手段、一様に帯電した後に像露光を行い静電潜像を形成する像露光手段、静電潜像にトナーを現像する現像手段、現像した像の転写手段のうちの帯電手段を含む一つ以上の手段と電子写真感光体とを具備し、該帯電手段において用いられる帯電部材が、電子写真感光体に対し非接触で対向して配置され、帯電部材は直流電圧に交流電圧を重畳して電子写真感光体を非接触で印加帯電させるものであり、かつ軸部と該軸部を被覆する本体部とから構成され、本体部は導電剤を含む樹脂からなり、帯電部材と電子写真感光体の間に形成される間隙の大きさをG(μm)とし、電子写真感光体の中心軸で回転させたときの外径振れ精度をA(μm)としたとき、GとAが次式の関係を満たすことを特徴とする画像形成装置に対して着脱自在のプロセスカートリッジ。
10(μm)≦G−A≦90(μm)
13) 前記間隙の大きさGが、20(μm)≦G≦100(μm)なる関係を満たすことを特徴とする12)記載のプロセスカートリッジ。
14) 前記外径振れ精度Aが、10(μm)≦A≦50(μm)なる関係を満たすことを特徴とする12)又は13)記載のプロセスカートリッジ。
15) 前記帯電部材は、対向して配置される電子写真感光体の画像形成領域外に当る本体部にスペーサ部材を備えることにより、帯電部材と電子写真感光体間に間隙を形成することを特徴とする12)〜14)の何れかに記載のプロセスカートリッジ。
16) 前記帯電部材が電子写真感光体を帯電させるために供給する交流電圧周波数が、100Hz〜2.5kHzであることを特徴とする12)〜15)の何れかに記載のプロセスカートリッジ。
17) 前記帯電部材が電子写真感光体を帯電させるために供給する交流電圧周波数の振動振幅(Vpp)が、1.0〜3.0kVであることを特徴とする12)〜16)の何れかに記載のプロセスカートリッジ。
18) 前記本体部の体積抵抗率が、1×10〜1×1010Ω・cmであることを特徴とする12)〜17)の何れかに記載のプロセスカートリッジ。
19) 前記電子写真感光体が感光層を有し、最表面層として電荷輸送層を有し、該電荷輸送層の膜厚が10〜35μmであることを特徴とする12)〜18)の何れかに記載のプロセスカートリッジ。
20) 前記電子写真感光体は、両端の開口部に軸受け部材が装着され、感光体内部を貫通する軸を具備することを特徴とする12)〜19)の何れかに記載のプロセスカートリッジ。
21) 前記電子写真感光体は、動作時に帯電部材と連れ回りで動作し、帯電部材による印加帯電時に電子写真感光体が200rpm以下で回転し帯電することを特徴とする12)〜20)の何れかに記載のプロセスカートリッジ。
22) 前記現像手段において使用されるトナーが、平均粒径70〜300nmの無機微粒子を含有することを特徴とする12)〜21)の何れかに記載のプロセスカートリッジ。
23) 12)〜22)の何れかに記載のプロセスカートリッジを複数具備することを特徴とする画像形成装置。
24) 前記電子写真感光体上に現像されたトナー像を中間転写体上に一次転写した後、中間転写体上のトナー画像を記録材上に二次転写する中間転写手段を有する画像形成装置であって、複数色のトナー画像を記録材上に一括で二次転写できることを特徴とする1)〜11)及び23)の何れかに記載の画像形成装置。
【0009】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明の画像形成装置又はプロセスカートリッジでは、帯電音を実用上問題のないレベルにまで抑制可能であり、搭載される電子写真感光体は、内部に制振材を備えていないのでリサイクルが容易である。また、プロセスカートリッジは、少なくとも、本発明の特徴を有する帯電手段と電子写真感光体とを具備する必要がある。
帯電音を抑制可能な理由は明確になっていないが、帯電部材の本体部を、導電剤を含む樹脂で形成することにより、ゴムで形成した帯電部材と比較して、本体部の形成精度が高まって外径振れ精度が向上し、電子写真感光体と帯電部材の間隙の大きさに変動を起こし難くなる。また、樹脂製の帯電部材はゴム製のものより変形し難いため、画像形成装置内で動作中に変形を起こし難く、電子写真感光体と帯電部材の間隙の大きさに変動を起こし難い。従って樹脂製の帯電部材は非接触で安定して電子写真感光体を帯電させることができるため、ゴム製の帯電部材に比較して帯電音が小さくなるのではないかと推測される。
【0010】
以下、図面に沿って本発明の画像形成装置を詳細に説明する。
図1は、本発明の画像形成装置を説明するための概略図であり、後述するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図1において、11は、本発明の要件を満たす電子写真感光体である。
感光体11はドラム状の形状のものを示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。帯電部材12には帯電ローラが用いられる。帯電部材12は感光体11と微小な間隙Gを持たせて対向して配置される。間隙Gは、一定の厚さを有するスペーサ部材を帯電部材12の非画像形成領域に設けることで調整される。
転写手段16には、一般に上記の帯電ローラを使用できるが、転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
【0011】
また、露光手段13、除電手段1A等に用いられる光源としては、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を挙げることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するため、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
現像手段14により感光体上に現像されたトナー15は、受像媒体18に転写されるが、全部が転写される訳ではなく、感光体上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング手段17により感光体から除去される。クリーニング手段には、ゴム製のクリーニングブレードやファーブラシ、マグファーブラシ等のブラシ等を用いることができる。
【0012】
現像手段において使用されるトナーは、平均粒径が70〜300nmの無機微粒子を含有することにより良質な画像を出力することができる。
電子写真感光体に正(負)帯電を施し画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すればネガ画像が得られる。このような現像手段には公知の方法が適用され、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
以上の電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、勿論、他の実施形態も可能である。
また、以上に示すような画像形成手段は複写機、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込んでもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込んでもよい。プロセスカートリッジとは、電子写真感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段の少なくとも1つを含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は色々あるが、一般的な例として、図2に示すものが挙げられる。
【0013】
図3に本発明の画像形成装置の別の例を示す。この電子写真装置では、感光体11の周囲に帯電手段である帯電部材12、露光手段13、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の各色トナー毎の現像手段(14Bk,14C,14M,14Y)、中間転写体である中間転写ベルト1F、クリーニング手段17が順に配置されている。ここで、図中に示すBk、C、M、Yの添字は、上記のトナーの色に対応し、必要に応じて付けたり適宜省略したりする。
各色の現像手段14Bk,14C,14M,14Yは各々独立に制御可能となっており、画像形成を行う色の現像手段のみが駆動される。感光体11上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト1Fの内側に配置された第1の転写手段1Dにより、中間転写ベルト1F上に転写される。第1の転写手段1Dは感光体11に対して接離可能に配置されており、転写動作時のみ中間転写ベルト1Fを感光体11に当接させる。各色の画像形成を順次行い、中間転写ベルト1F上で重ね合わされたトナー像は、第2の転写手段1Eにより受像媒体18に一括転写された後、定着手段19により定着されて画像が形成される。第2の転写手段1Eも、中間転写ベルト1Fに対して接離可能に配置され、転写動作時のみ中間転写ベルト1Fに当接する。
【0014】
転写ドラム方式の画像形成装置では、転写ドラムに静電吸着させた転写材に各色のトナー像を順次転写するため、厚紙にはプリントできないという転写材の制限があるのに対し、図3に示すような中間転写方式の電子写真装置では、中間転写ベルト1F上で各色のトナー像を重ね合わせるため転写材の制限を受けないという特長がある。このような中間転写方式は、図3に示す装置に限らず、前述の図1及び図2に示す画像形成装置やプロセスカートリッジに適用することができる。
図4は、帯電手段に用いられる帯電部材の半径方向の断面図である。帯電部材12は、中心が金属製芯金による軸部12a、その外側が本体部12bからなる構造をしている。軸部12aは、例えば、直径が8〜20mmのステンレスやアルミニウムなどの高い剛性と導電性を有する金属製、又は1×10Ω・cm以下、好ましくは1×10Ω・cm以下で高い剛性を有する導電性の樹脂等で構成される。本体部12bは、1×10〜1×1010Ω・cmの体積抵抗率で、1〜2mm程度の厚さにすることが好ましい。本体部12bの体積抵抗率が1×1010Ω・cmを超えると放電が不十分となり、感光体11表面を十分に帯電させることができなくなる恐れがあり、逆に、体積抵抗率が1×10Ω・cm未満となると、感光体11の感光層にピンホールなどの欠陥があった場合、放電電流がピンホールに集中して異常放電が生じ、更に過電流がピンホールを拡大させて感光層が破壊され、異常画像が出力される原因となる。
【0015】
図4では、本体部12bとして1層構造の場合を示したが、特にこの構造に限定されるものではなく、2層以上の導電性の樹脂等により構成されていても良い。本体部12bには、従来はヒドリンゴム等のゴムを用いていたが、ここではゴムよりも膨張係数の低い樹脂を用いて、導電剤を混入して電気抵抗を調整する。通常、樹脂の線膨張係数はゴムの約1/2以下であり、樹脂の体積膨張係数は、等方性の場合、ゴムの約1/6以下になる。従来のようにゴムを用いると、熱や湿度によりゴムの寸法精度が大きく変化することにより間隙Gが変動するので、帯電部材12と感光体11との間隙Gが小さい場合、
10(μm)≦G−A
という条件を満たすことができず、帯電部材と電子写真感光体が接触してしまい、帯電音が大きくなることがあったり、異常放電による帯電ムラの原因となることがある。一方、帯電部材12と感光体11との間隙Gを十分大きくし、かつ外径振れ精度Aが十分に小さい場合、
G−A≦90(μm)
という条件を満たすことができず、感光体11の表面の帯電電位が低下し、出力画像に地汚れが生じ易くなるなど、出力画像の画質低下が起こることがある。
【0016】
本体部12bに用いる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、ポリスチレン及びその共重合体等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂等が挙げられる。
樹脂に混入させる導電剤としては、過酸化リチウム等のアルカリ金属塩、過塩素酸ナトリウム等の過塩素酸塩、テトラブチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩、高分子導電剤等のイオン系導電剤、カーボンブラック、銀粉、銅粉等の金属粉、ITO等のセラミックス粉を用いることができる。
樹脂には、導電剤の他に、強度や寸法の精度を向上させるため、カーボンファイバー、グラスファイバー、炭化物、硼化物等のセラミックスを混入して膨張係数を小さくすることができる。
【0017】
図5は本発明の画像形成装置に用いられる帯電部材の概略図である。帯電部材には本体部の両端にスペーサ部材30を設ける。帯電部材12と感光体11との間隙Gは、スペーサ部材により100μm以下、特に20〜50μmの範囲にする。これにより帯電装置の作動時における異常画像の形成を抑えることができる。間隙Gが100μmを超えると、感光体11の表面の帯電電位が低下することにより出力画像に地汚れが生じ易くなるなど、出力画像の画質低下が起こることがある。また、間隙Gが20μmより小さいと、クリーニング部材により除去されなかった感光体表面の付着物が帯電部材に接触することにより、その一部が帯電部材に転移し、感光体帯電時の帯電ムラの原因となることがある。
スペーサ部材30は、ポリエチレン、ポリオレフィン等のオレフィン樹脂、ポエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂を用いることができる。
【0018】
また、スペーサ部材30には、弾性を有する金属又はゴムを用いることができる。金属としては、アルミニウム、鉄、銅、チタン又はこれらを主体とする合金を用いることができる。更に、これらの表面を酸化物で被覆して、電気的に絶縁性にすることが好ましい。金属製のスペーサ部材30は、感光体11の樹脂による感光層と比較して硬いため、更に、表面を樹脂で被覆することが好ましい。これにより、感光体11の感光層より硬度を低くして、感光体11の摩耗を減らすことができる。また、ゴムとしては、天然ゴム、ポリウレタンゴム、クロロプレンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムを用いることができる。JIS−A:ゴム硬度は70Hs以上が好ましく、更に、シリカ、アルミナ、グラスファイバー等を添加して硬化させたものが好ましい。これにより、間隙Gの変動を防ぐことができる。
【0019】
感光体11に対向して配設された帯電部材12により感光体を帯電させる際、帯電部材12に印加する電圧は、感光体11と帯電部材12が接触している場合、直流電圧のみにより十分な実用性を持たせることが可能であり、実用上問題となるレベルの帯電音は生じない。しかし、非接触の場合は直流電圧のみにより帯電させる場合は、帯電ムラが大幅に生じ易くなる。従って直流電圧に交流電圧を重畳し、交流電圧で補償することにより帯電ムラの発生を抑える必要がある。
交流電圧は正弦波が望ましく、周波数としては100Hz〜2.5kHzに設定するのが望ましい。100Hz未満では感光体に交流電圧が十分に作用しないため、帯電ムラが生じ易くなり、異常画像が生じ易くなる。また、2.5kHzを超えると、異常放電を起こし易いほか、感光体の感光層中にトラップされた電荷が帯電電位を低下させ、帯電電位の繰り返し特性を不安定にさせ、これによる地肌汚れを引き起こす。
帯電部材に印加する交流電圧の周波数は、感光体の線速により好適な値は変動するが、800Hz〜2kHzに設定すれば実用的には支障はない。
【0020】
交流電圧周波数の振動振幅(Vpp)は、1.0〜3.0kVであることが好ましい。この範囲であれば、安定した感光体帯電電位が得られるし、繰り返し使用による感光体の残留電位の上昇を程よく抑えることができるが、Vppは高くなるほどに帯電音が大きくなるので2.5kV以下とすることがより望ましい。また、1.3kV未満では、感光体の帯電が部分的に不十分となる場合があり、帯電ムラを生じ、異常画像が生じることがあるので、1.3kV以上とすることがより望ましい。
感光体の帯電時の回転速度が速くなるほど帯電ムラなく均一に目標とする電位に帯電させるには、交流電圧周波数及びVppを高くすることが望ましい。しかし、前述したように交流電圧周波数及びVppには適する範囲が存在するため、感光体回転速度は200rpm以下で回転し帯電することが望ましい。
感光体11の外径振れ精度Aは10〜50μmにする。外径振れ精度が大きくなるにつれて色ズレが起こり易くなり、出力画像の画質低下が生じることがある。10μm未満の場合、10μm以上のものに比べて作製コストが大幅増となり、コストが上昇する手段を用いずに帯電音を実用上問題のないレベルにまで抑制するといった課題を達成できない。外径振れ精度Aの向上のため、感光体11の両端の開口部に軸受け部材が装着され、感光体内部を貫通する軸を具備しても良い。例えば、樹脂製の精度の良い軸受け部材に、感光体内部を貫通する金属製の精度の良い軸を備えることにより、外径振れ精度Aを向上させることができる。
【0021】
図6は、本発明の画像形成装置に具備される電子写真感光体の構成例(模式断面図)であり、導電性支持体上に感光層を設けた構成の電子写真感光体を示している。図7及び図8は各々本発明の画像形成装置に具備される他の電子写真感光体の構成例(模式断面図)を示す。図7は、感光層が電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)より構成される機能分離型タイプの電子写真感光体を示し、図8は、導電性支持体と機能分離型タイプの感光層のCGL、CTLとの間に下引き層を入れた電子写真感光体を示している。なお、本発明で用いる電子写真感光体としては、導電性支持体上に少なくとも感光層を有し、最表面層が電荷輸送層であれば、上記以外のその他の層が形成されていても構わない。
【0022】
本発明において電子写真感光体に使用される導電性支持体としては、導電体又は導電処理をした絶縁体、例えばAl、Ni、Fe、Cu、Auなどの金属、又はそれらの合金の他、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ガラス等の絶縁性基体上にAl、Ag、Au等の金属あるいはIn、SnO等の導電材料の薄膜を形成したもの、樹脂中にカーボンブラック、グラファイト、金属粉(アルミニウム,銅,ニッケル等)、導電性ガラス粉などを均一に分散させ、樹脂に導電性を付与した樹脂基体、導電処理をした紙等が使用できる。導電性支持体の形状は特に制約はなく、板状、ドラム状、ベルト状の何れのものも使用できるが、ベルト状の支持体を用いると、内部に駆動ローラ、従動ローラを設ける必要があるなど装置が複雑化、大型化する反面、レイアウトの自由度が増すなどのメリットがある。しかしながら、保護層を形成する場合は、該保護層の可撓性が不足して、表面にクラックとよばれる亀裂が入る可能性があり、それが原因で粒状の地肌汚れが発生することが考えられる。このようなことから、支持体としては剛性の高いドラム状のものが好ましく用いられる。
【0023】
導電性支持体と感光層の間には、必要に応じて下引き層を設けてもよい。下引き層は、接着性の向上、モアレなどの防止、上層の塗工性の改良、残留電位の低減などの目的で設けられる。下引き層は、一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂は、その上に溶剤を用いて感光層を塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。また、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物、或いは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を加えてもよい。これらの下引き層は、適当な溶媒を用いて、慣用される塗工法によって形成することができる。
更に、下引き層としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えばゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層も有用である。この他に、下引き層として、Alを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物や、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作製法にて設けてもよい。
下引き層の膜厚は約0.1〜5μmが適当である。
【0024】
電荷発生層は、電荷発生物質を主成分とする層であって、必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料としては、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物等が挙げられる。
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。
これらの電荷発生物質は、単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0025】
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
また、必要に応じて電荷輸送性物質を添加してもよい。また、電荷発生層のバインダー樹脂として、上述のバインダー樹脂の他に、高分子電荷輸送性物質も良好に用いられる。
電荷発生層を形成する方法としては、真空薄膜作製法と、溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
真空薄膜作製法としては、グロー放電重合法、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、加速イオンインジェクション法等が挙げられる。この方法では、上述した無機系材料又は有機系材料を良好に形成することができる。
また、キャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系又は有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共に、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより形成できる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法などの慣用されている方法を用いて行うことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0026】
電荷輸送層は、帯電電荷を保持させ、かつ、露光により電荷発生層で発生分離した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させることを目的とする層である。帯電電荷を保持させる目的を達成するためには、電気抵抗が高いことが要求される。また、保持していた帯電電荷で高い表面電位を得る目的を達成するためには、誘電率が小さく、かつ電荷移動性が良いことが要求される。
これらの要件を満足させるための電荷輸送層は、電荷輸送性物質及び必要に応じて用いられるバインダー樹脂により構成され、電荷輸送性物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。電荷輸送層には必要により、電荷輸送性物質及びバインダー樹脂以外に、可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等などの添加剤を適量添加することもできる。
【0027】
電荷輸送性物質としては、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
正孔輸送物質としては、電子供与性物質が良好に用いられる。電子供与性物質の例としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。
これらの正孔輸送物質は、単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0028】
また、高分子電荷輸送性物質は、以下のような構造を有していてもよい。
(a)カルバゾール環を有する重合体
例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、特開昭50−82056号公報、特開昭54−9632号公報、特開昭54−11737号公報、特開平4−175337号公報、特開平4−183719号公報、特開平6−234841号公報に記載の化合物等が例示される。
(b)ヒドラゾン構造を有する重合体
例えば、特開昭57−78402号公報、特開昭61−20953号公報、特開昭61−296358号公報、特開平1−134456号公報、特開平1−179164号公報、特開平3−180851号公報、特開平3−180852号公報、特開平3−50555号公報、特開平5−310904号公報、特開平6−234840号公報に記載の化合物等が例示される。
(c)ポリシリレン重合体
例えば、特開昭63−285552号公報、特開平1−88461号公報、特開平4−264130号公報、特開平4−264131号公報、特開平4−264132号公報、特開平4−264133号公報、特開平4−289867号公報に記載の化合物等が例示される。
(d)トリアリールアミン構造を有する重合体
例えば、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノポリスチレン、特開平1−134457号公報、特開平2−282264号公報、特開平2−304456号公報、特開平4−133065号公報、特開平4−133066号公報、特開平5−40350号公報、特開平5−202135号公報に記載の化合物等が例示される。
(e)その他の重合体
例えば、ニトロピレンのホルムアルデヒド縮重合体、特開昭51−73888号公報、特開昭56−150749号公報、特開平6−234836号公報、特開平6−234837号公報に記載の化合物等が例示される。
【0029】
本発明に使用される電子供与性基を有する重合体は、上記重合体だけでなく、公知単量体の共重合体、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマー、更には、例えば特開平3−109406号公報に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体等を用いることも可能である。
また、本発明に用いられる高分子電荷輸送性物質として更に有用なトリアリールアミン構造を有するポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテルとしては、例えば、特開昭64−1728号公報、特開昭64−13061号公報、特開昭64−19049号公報、特開平4−11627号公報、特開平4−225014号公報、特開平4−230767号公報、特開平4−320420号公報、特開平5−232727号公報、特開平7−56374号公報、特開平9−127713号公報、特開平9−222740号公報、特開平9−265197号公報、特開平9−211877号公報、特開平9−304956号公報等に記載の化合物が例示される。
更に、電荷輸送層に併用できるバインダー樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、フェノキシ樹脂などが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0030】
電荷輸送層の膜厚は、約5〜100μm程度が適当であるが、近年の高画質化の要求から、電荷輸送層の薄膜化が図られており、1200dpi以上の高画質化を達成するためには、より好ましくは10〜35μm程度が適当である。
本発明における電荷輸送層中には、ゴム、プラスチック、油脂類などに用いられる他の酸化防止剤や可塑剤などの添加剤を添加しても構わない。
更に、電荷輸送層中にレベリング剤を添加しても構わない。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー或いはオリゴマーなどが使用され、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して、0〜1重量部が適当である。
塗工方法としては、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法などの慣用されている方法を用いて行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、帯電部材が直流電圧に交流電圧を重畳して電子写真感光体を印加帯電する際に発生する帯電音を抑制する手段として、制振材を感光体内部に搭載するなどのコストが上昇する手段を用いずに、帯電音を実用上問題のないレベルにまで抑制でき、出力画像が良好であり、かつ搭載する電子写真感光体のリサイクルを容易とする画像形成装置、及び、該画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジを提供できる。また、搭載される電子写真感光体は、内部に制振材を備えていないのでリサイクルが容易である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。
【0033】
実施例1
リコー製Ipsio Color 8100改造機に、電子写真感光体11及び帯電部材12として下記のものを搭載した。トナーには少なくとも平均粒径70〜300nmの無機微粒子を含有し、平均粒径5.9μmのものを使用した。
画像濃度5%となる矩形のパッチと文字の混合画像のプリントを行い、Ipsio Color 8100改造機の正面30cmにおいて音量を計測し、帯電音の1〜4倍音の大きさを平均して帯電音量とした。この音量には背景ノイズなど帯電音以外の音も含まれる。また、画像品質として地汚れの有無を評価した。
<電子写真感光体>
アルキッド樹脂〔ベッコライトM6401−50(大日本インキ化学工業社製)〕15重量部、メラミン樹脂〔スーパーベッカミンG−821−60(大日本インキ化学工業社製)〕10重量部をメチルエチルケトン150重量部に溶解し、これに酸化チタン粉末〔タイペールCR−EL(石原産業社製)〕90重量部を加え、ボールミルで12時間分散し、下引層用塗工液を作成した。
これをφ30mmの円筒状アルミニウム基体に浸漬塗工法によって塗工し、130℃で20分間乾燥して、厚み4.5μmの下引き層を形成した。
次にポリビニルブチラール樹脂〔XYHL(UCC社製)〕4重量部をシクロヘキサノン150重量部に溶解し、これに下記構造式〔化1〕のビスアゾ顔料を10重量部加え、ボールミルで48時間分散後、更にシクロヘキサノン210重量部を加えて3時間分散を行った。これを容器に移し、固形分が1.5重量%となるようにシクロヘキサノンで希釈した。こうして得られた電荷発生層用塗工液を前記中間層上に塗工し、130℃で20分間乾燥して、厚み0.2μmの電荷発生層を形成した。
【化1】

次に、テトラヒドロフラン100重量部に、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂10重量部、シリコーンオイル〔KF−50(信越化学工業社製)〕0.002重量部を溶解し、これに下記構造式〔化2〕の電荷輸送物質10重量部を加えて電荷輸送層用塗工液を作製した。こうして得られた電荷輸送層用塗工液を電荷発生層上に浸漬塗工法によって塗工し、その後110℃で20分間乾燥して、厚み31μmの電荷輸送層を形成した。
【化2】

電子写真感光体の帯電条件等は、画像部電位−40V、非画像部電位−500V、感光体の線速155mm/secとした。
感光体には両端の開口部に軸受け部材が装着され、感光体内部を貫通する軸を具備しており、外径振れ精度を25μmとした。
<帯電部材>
ステンレススチール製の芯軸(φ8mm導電性支持体)を本体部として樹脂で被覆した図4に示す構造の帯電ローラを製作した。樹脂材料としては、ABS樹脂100重量部に導電剤としてエーテルアミド0.5重量部を配合し、体積抵抗率が1×10Ω・cm〜1×10Ω・cmとなるよう調整した組成物を用い、この材料を押出成形機により成形して芯軸を被覆し、φ11mmの帯電ローラを得た。スペーサ部材には熱収縮性フッ素樹脂を用いた。加えた電圧条件は交流電圧周波数1.1kHz、Vpp 2.0kV、直流電圧−450Vであり、電子写真感光体と帯電部材の間隙Gは50μmとした。
【0034】
実施例2〜7
間隙G及び外径振れ精度Aを表1に示すように変えた点以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
【0035】
実施例8〜9
間隙G及び外径振れ精度Aを表1に示すように変えると共に、Vppを1.7kV又は2.5kVとした点以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
【0036】
実施例10
感光体の電荷輸送層(CTL)の膜厚を20μmとした点以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
【0037】
実施例11
感光体の線速を77.5mm/secとした点以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
【0038】
比較例1
スペーサ部材を備えないことより、電子写真感光体と帯電部材を接触させた点以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
【0039】
比較例2〜4
間隙G及び外径振れ精度Aを表1に示すように変えた点以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
【0040】
比較例5
帯電部材に加える電圧を直流電圧のみとした点以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
【0041】
比較例6
帯電部材を下記のものに変えた点以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
帯電部材
ステンレススチール製の芯軸(φ8mm導電性支持体)を本体部として半導電性弾性層で被覆した、図4に示す構造の帯電ローラを製作した。弾性材料としてポリエステル成分を含む熱可塑性エラストマー100重量部に、過塩素酸リチウム0.5重量部を配合し、体積抵抗率が1×10Ω・cm〜1×10Ω・cmとなるように調整した組成物を用い、この材料を押出成形機により成形して芯軸を被覆し、φ11mmの帯電ローラを得た。
【0042】
上記実施例1〜11、比較例1〜6の評価結果を纏めて表1に示す。
【表1】

表1から分るように、本発明の構成要件を満たす実施例では、帯電音の音量が低減し、帯電不良による地汚れが見られない極めて高画質な画像を得られることが確認された。一方、本発明の要件を満たしていない比較例では、何れも帯電音の音量の増大、又は帯電不良による地汚れが見られ異常画像が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の画像形成装置を説明するための概略図。
【図2】プロセスカートリッジの一般的な形状例を示す図。
【図3】本発明の画像形成装置の別の例を示す図。
【図4】帯電手段に用いられる帯電部材の半径方向の断面図。
【図5】本発明の画像形成装置に用いられる帯電部材の概略図。
【図6】本発明の画像形成装置に具備される電子写真感光体の構成例を示す模式断面図。
【図7】本発明の画像形成装置に具備される電子写真感光体の他の構成例を示す模式断面図。
【図8】本発明の画像形成装置に具備される電子写真感光体の他の構成例を示す模式断面図。
【符号の説明】
【0044】
11 電子写真感光体(感光体)
12 帯電部材
13 露光手段
14 現像手段
15 トナー
16 転写手段
17 クリーニング手段
18 受像媒体
19 定着手段
1A 除電手段
1D 第1の転写手段
1E 第2の転写手段
1F 中間転写ベルト
12a 帯電部材の軸部
12b 帯電部材の軸部を被覆する本体部
14Bk ブラックの現像手段
14C シアンの現像手段
14M マゼンタの現像手段
14Y イエローの現像手段
30 スペーサ部材
G 帯電部材と電子写真感光体の間に形成される間隙の大きさ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも電子写真感光体と、電子写真感光体を一様に帯電する帯電手段と、一様に帯電した後に像露光を行い静電潜像を形成する像露光手段と、静電潜像にトナーを現像する現像手段及び現像した像を転写する手段と、電子写真感光体の転写残トナーをクリーニングするクリーニング手段とを備える画像形成装置であって、帯電手段において用いられる帯電部材が、電子写真感光体に対し非接触で対向して配置され、帯電部材は、直流電圧に交流電圧を重畳して電子写真感光体を非接触で印加帯電させるものであり、かつ軸部と該軸部を被覆する本体部とから構成され、本体部は導電剤を含む樹脂からなり、帯電部材と電子写真感光体の間に形成される間隙の大きさをG(μm)とし、電子写真感光体の中心軸で回転させたときの外径振れ精度をA(μm)としたとき、GとAが次式の関係を満たすことを特徴とする画像形成装置。
10(μm)≦G−A≦90(μm)
【請求項2】
前記間隙の大きさGが、20(μm)≦G≦100(μm)なる関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記外径振れ精度Aが、10(μm)≦A≦50(μm)なる関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記帯電部材は、対向して配置される電子写真感光体の画像形成領域外に当る本体部にスペーサ部材を備えることにより、帯電部材と電子写真感光体間に間隙を形成することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記帯電部材が電子写真感光体を帯電させるために供給する交流電圧周波数が、100Hz〜2.5kHzであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記帯電部材が電子写真感光体を帯電させるために供給する交流電圧周波数の振動振幅(Vpp)が、1.0〜3.0kVであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記本体部の体積抵抗率が、1×10〜1×1010Ω・cmであることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記電子写真感光体が感光層を有し、最表面層として電荷輸送層を有し、該電荷輸送層の膜厚が10〜35μmであることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記電子写真感光体は、両端の開口部に軸受け部材が装着され、感光体内部を貫通する軸を具備することを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記電子写真感光体は、動作時に帯電部材と連れ回りで動作し、帯電部材による印加帯電時に電子写真感光体が200rpm以下で回転し帯電することを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記現像手段において使用されるトナーが、平均粒径70〜300nmの無機微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項12】
少なくとも、電子写真感光体を一様に帯電する帯電手段、一様に帯電した後に像露光を行い、静電潜像を形成する像露光手段、静電潜像にトナーを現像する現像手段、現像した像の転写手段のうちの帯電手段を含む一つ以上の手段と電子写真感光体とを具備し、該帯電手段において用いられる帯電部材が、電子写真感光体に対し非接触で対向して配置され、帯電部材は直流電圧に交流電圧を重畳して電子写真感光体を非接触で印加帯電させるものであり、かつ軸部と該軸部を被覆する本体部とから構成され、本体部は導電剤を含む樹脂からなり、帯電部材と電子写真感光体の間に形成される間隙の大きさをG(μm)とし、電子写真感光体の中心軸で回転させたときの外径振れ精度をA(μm)としたとき、GとAが次式の関係を満たすことを特徴とする画像形成装置に対して着脱自在のプロセスカートリッジ。
10(μm)≦G−A≦90(μm)
【請求項13】
前記間隙の大きさGが、20(μm)≦G≦100(μm)なる関係を満たすことを特徴とする請求項12記載のプロセスカートリッジ。
【請求項14】
前記外径振れ精度Aが、10(μm)≦A≦50(μm)なる関係を満たすことを特徴とする請求項12又は13記載のプロセスカートリッジ。
【請求項15】
前記帯電部材は、対向して配置される電子写真感光体の画像形成領域外に当る本体部にスペーサ部材を備えることにより、帯電部材と電子写真感光体間に間隙を形成することを特徴とする請求項12〜14の何れかに記載のプロセスカートリッジ。
【請求項16】
前記帯電部材が電子写真感光体を帯電させるために供給する交流電圧周波数が、100Hz〜2.5kHzであることを特徴とする請求項12〜15の何れかに記載のプロセスカートリッジ。
【請求項17】
前記帯電部材が電子写真感光体を帯電させるために供給する交流電圧周波数の振動振幅(Vpp)が、1.0〜3.0kVであることを特徴とする請求項12〜16の何れかに記載のプロセスカートリッジ。
【請求項18】
前記本体部の体積抵抗率が、1×10〜1×1010Ω・cmであることを特徴とする請求項12〜17の何れかに記載のプロセスカートリッジ。
【請求項19】
前記電子写真感光体が感光層を有し、最表面層として電荷輸送層を有し、該電荷輸送層の膜厚が10〜35μmであることを特徴とする請求項12〜18の何れかに記載のプロセスカートリッジ。
【請求項20】
前記電子写真感光体は、両端の開口部に軸受け部材が装着され、感光体内部を貫通する軸を具備することを特徴とする請求項12〜19の何れかに記載のプロセスカートリッジ。
【請求項21】
前記電子写真感光体は、動作時に帯電部材と連れ回りで動作し、帯電部材による印加帯電時に電子写真感光体が200rpm以下で回転し帯電することを特徴とする請求項12〜20の何れかに記載のプロセスカートリッジ。
【請求項22】
前記現像手段において使用されるトナーが、平均粒径70〜300nmの無機微粒子を含有することを特徴とする請求項12〜21の何れかに記載のプロセスカートリッジ。
【請求項23】
請求項12〜22の何れかに記載のプロセスカートリッジを複数具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項24】
前記電子写真感光体上に現像されたトナー像を中間転写体上に一次転写した後、中間転写体上のトナー画像を記録材上に二次転写する中間転写手段を有する画像形成装置であって、複数色のトナー画像を記録材上に一括で二次転写できることを特徴とする請求項1〜11及び23の何れかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−84724(P2006−84724A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268855(P2004−268855)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】