説明

画像形成装置及び定着装置

【課題】 離型性を向上させるためのワックスを内包するトナーを用いてトナー画像を形成するものとし、画像の光沢ムラを低減して高光沢の良好な画像を得る。
【解決手段】 樹脂バインダーと、色材と、離型性を向上させるワックスとを含むトナーを用いてトナー像を形成し、記録シートP上に転写した後、定着装置で加熱・加圧して定着する。定着装置の加熱ロール20は、金属からなる中空の円筒部材21を有し、周面から中空部に貫通する多数の小孔25が設けられている。トナーTが加熱されると溶融したワックスが表面に層を形成し、このワックスが毛細管現象によって小孔に吸引され、除去される。吸引されたワックスは、加熱ロールの内側に形成されているグラスファイバーの層23に吸着され、保持される。トナー像の表面から余剰のワックスが除去されることにより、定着後に急冷されても、顕著に高光沢となることはなく、光沢ムラの発生が抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電電位の差による潜像にトナーを選択的に付着させてトナー像を形成し、これを記録シートに転写した後、加熱及び加圧して定着画像とする画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉状のトナーを用いる画像形成装置は、高精細な画像を形成することができるようになり、写真に近い画像を出力することが可能となっている。このように高精細な画像では、光沢(グロス)についても要求が高くなり、高光沢の画像が要求されることが多い。このため、記録シートとして、表面に光沢剤の被覆層が形成されたいわゆるコート紙が使用され、これにトナー像を転写した後、定着装置でトナー像を充分に加熱して光沢の高いトナー像を形成することが行われている。
【0003】
しかし、このように高光沢の画像を形成すると、光沢が不均等となる部分つまり光沢のムラが生じやすく、画像の品質を劣化させることがある。光沢ムラの代表的なものとして、いわゆるロールマークがある。これは、図4に示すように、定着装置101で加熱及び加圧された記録シートP上のトナー像が、充分に冷却されていない状態で記録シートを搬送するためのロール対102に挟み込まれ、ロールの周面がトナー像に接触することによって生じるものである。このようにして生じるロールマーク103は、光沢を低下させるものが多い。
【0004】
このようなロールマークを低減する技術は、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されている。
特許文献1に記載の装置は、定着装置を通過した記録シートに冷却用エアを吹き付け、記録シートが定着装置の下流側に設けられた搬送ロールに接触するまでにトナー像の温度を低下させようとするものである。
【0005】
また、特許文献2に記載の画像形成装置では、定着装置の下流側でトナーが柔らかい状態にある領域に、この定着済みのトナー画像に加圧接触して平滑にする均し手段が設けられている。これにより、排紙ロールと接触してロールマークが形成されても、その後に均し手段でトナー像の表面を平滑にならし、ロールマークを消去しようとするものである。また、排紙ロールより上流側に均し手段を設け、トナー像の表面を平滑にするとともに、トナーのガラス転移温度以下に冷却された状態で排紙ロールと接触させて、ロールマークの発生を防ぐことも提案されている。
【特許文献1】特開2003―21978号公報
【特許文献2】特開2003―195663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、写真や印刷に近い高光沢のカラー画像を実現するために、ワックスを内包した溶融性の良好なトナーを用いることが提案されている。このワックスは、定着時にトナー像と圧接される加熱部材からの剥離性を良くするために用いられるものである。従来は剥離性を維持するために加熱ロール等の表面にオイルを塗布していたが、高光沢の画像を得るために高い温度まで加熱すると、良好な剥離性を維持するために多量のオイルを必要とする。このため、オイルの塗りむらによる筋が発生したり、オイルがトナー像の表面に残り、定着画像に触れたときに手についてしまう。また、画像の表面に鉛筆等で加筆できないという問題が生じる。ワックスを内包するトナーを用いると、これらの問題点を解消することができ、さらに、このようなトナーを用いた像をコート紙上に転写し、定着速度を遅くして充分に加熱した状態で定着を行うことによって高光沢の画像を得ることができる。そして、トナーが定着装置内で加熱ロール又は加熱ベルトと接触して高温となっている状態でも、ワックスによって加熱ロール等との離型性が確保される。
【0007】
しかしながら、上記のように離型性を向上させるためにワックスを含むトナーを用いると、従来のトナーを用いた場合では生じない顕著な光沢ムラが発生することがある。つまり、図4に示すように、定着装置によって加熱及び加圧されてトナー像が定着された記録シートが、充分に冷却されるまでに記録シートの搬送ロールと接触すると、接触した部分が高光沢となって光沢ムラを生じる。この光沢ムラは、特許文献1に記載されているような、通常のトナーを用いた画像で光沢が低下するロールマークとは、発生のメカニズムが異なるものであり、光沢が低下するロールマークより目立ち易く、顕著な光沢ムラとなる。
【0008】
この光沢ムラも、トナー像及び記録シートが充分に冷却されるまで、搬送ロール等を接触させないようにすると生じないことは分かっているが、高光沢の画像を得るためにコート紙のような厚い記録シートを使用する場合には冷却速度が遅く、搬送ロールに接触するまでに充分に冷却するのが難しい場合が生じる。また、充分な冷却機能を有する装置は、小型化された画像形成装置内に配置することは難しい。
【0009】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、離型性を向上させるためのワックスを内包するトナーを用いたトナー画像の光沢ムラを低減し、高光沢の良好な画像を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、 静電電位の差による潜像に粉状のトナーを選択的に付着させてトナー像を形成する像形成手段と、 前記トナー像を直接に記録シートに、又は中間転写体を介して記録シートに転写する転写手段と、 加熱された状態で未定着トナー像に接触する加熱部材と、トナー像を担持する記録シートを前記加熱部材に押圧する加圧部材とを備え、該加熱部材と加圧部材との間を通過する記録シート上のトナー像を該記録シートに定着する定着装置とを有し、 前記トナーとして、樹脂バインダーと、色材と、離型性を向上させるワックスとを含むものを用いる画像形成装置であって、 前記定着装置の加熱部材が中空の加熱ロールであり、 該加熱ロールが、周面から中空部に貫通する多数の小孔を有し、前記記録シート上のトナー像に押圧されたときに溶融した前記ワックスを吸引するものである画像形成装置を提供する。
【0011】
トナーに含まれるワックスは、溶融した状態から急冷されて融点以下にまで温度が下降するとワックスが結晶化して高光沢になることが、本願発明を完成する過程において明らかとなった。本発明は、この事実に基づいてなされたものであり、定着装置によってトナー像が加熱加圧され、ワックスが溶融している状態で、表面付近のワックスを除去するものである。
【0012】
この画像形成装置では、定着装置でトナー像が加熱ロールに圧接され、トナーに含まれるバインダー樹脂が記録シートに圧着されるのに適した温度にまで加熱される。この温度では、バインダー樹脂より融点の低いワックスは融点以上となっており、溶融した状態でトナー像の表面に層を形成する。このワックスは、充分に加熱されたトナー像が加熱ロールから剥離し易くする機能を果たすものであるが、トナー像の表面に必要量以上のワックスが浮き出てくる。この溶融したワックスが加熱ロールの周面に形成された多数の小孔に、毛細管現象によって引き込まれ、余剰のワックスがトナー像の表面から除去される。一方、バインダー樹脂はワックスより粘性が高く、小孔には入り込まない。
【0013】
その後、定着装置から排出された記録シートは、下流側で搬送ロール等と接触することがある。このとき、トナー像の表面にワックスがあると、搬送ロール等と接触してワックスが融点以下にまで急冷され、ワックスが結晶化する時に顕著に光沢となるが、本発明の画像形成装置では、上記にようにワックスが除去されており、搬送ロール等との接触部分が顕著に高光沢となる現象が有効に低減される。したがって、定着装置の下流側で搬送ロール等と接触して急冷されることによる光沢ムラの発生が抑制される。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、 前記小孔の径は、前記トナーの粒径の2/3以下で、0.5μm以上であるものとする。
【0015】
トナー像が加熱ロールに接触した後、温度が上昇してトナーのバインダー樹脂及びワックスが軟化するが、接触した初期の段階ではトナーは粉状に維持されている。このとき、加熱ロールの小孔の径がトナーの粒径の2/3以下となっているので、粉状のトナーが小孔に入り込むのが防止される。トナーが小孔に入り込むと、その後に溶融状態となって粘性の高いバインダー樹脂が小孔を塞ぐことになってしまうが、上記のように小孔の径を小さくすることによって、小孔がバインダー樹脂によって詰まるのが防止され、有効に溶融したワックスを吸収する機能が保たれる。
また、小孔の径を上記値以下とすることによって、定着されたトナー像の表面に小孔の跡が残らず、平滑で高光沢の画像が得られる。
一方、小孔の径が0.5μm以下になるとワックスを吸引する機能がなくなるが、0.5μm以上とすることによってワックスを有効に吸引除去することができる。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置において、 前記加熱ロールの前記トナー像と接触する部分は、該加熱ロールの周面に対して前記小孔が占める面積の割合が、5%〜30%となっているものとする。
【0017】
加熱ロールの表面で、小孔の占める面積が上記値の範囲とすることによって、トナー像の表面からほぼ均等に余剰のワックスを除去することができる。また、この範囲とすることによって、トナー像の表面の平滑性も維持され、高光沢の良好な画像とすることができる。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の画像形成装置において、 前記小孔の内周面は、表面エネルギーの小さい材料からなる被覆層を有するものとする。
【0019】
上記構成により小孔の内周面の表面エネルギーが小さくなる。これにより、溶融したワックスが加熱ロールに吸引され易くなり、トナー像の表面から余剰のワックスを有効に除去することができる。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の画像形成装置において、 前記加熱ロールの内部には、前記小孔から吸引したワックスを保持する保持部材を有するものとする。
【0021】
上記構成の保持部材は、グラスファイバーやロックウール等を用いることができ、耐熱性を有するとともに、吸引したワックスを吸着することができる表面積の大きい材料を採用することができる。
上記構成とすることにより、小孔から吸引された溶融したワックスは、加熱ロール内で保持部材に吸着され保持される。これにより、既に吸引されたワックスがその後の吸引を阻害するのを防止することができる。したがって、ワックスを吸引する機能が長く保持され、長期間にわたってトナー像の光沢ムラが発生するのを抑制することが可能となる。
【0022】
請求項6に係る発明は、 加熱された状態で、記録シート上に担持された未定着トナー像に接触する加熱ロールと、前記記録シートを前記加熱ロールに押圧する加圧部材とを備え、該加熱ロールと加圧部材との間を通過する記録シート上のトナー像を加熱及び加圧して該記録シートに圧着する定着装置であって、 前記加熱ロールが、中空の部材で形成され、周面から中空部に貫通する多数の小孔を有し、前記記録シート上のトナー像に押圧されたときにトナーに含まれるワックスの溶融物を毛細管現象によって中空部内に吸引するものである定着装置を提供する。
【0023】
この定着装置では、トナー像に加熱ロールが圧接され、トナー像は加熱されるとともに加圧されて記録シート上に圧着される。ワックスを含むトナーで形成されたトナー像が加熱されると、表面に溶融したワックスの層が形成される。このワックスが毛細管現象によって小孔に吸引され、トナー像の表面から除去される。したがって、定着後のトナー像の表面にはワックスがわずかしかなく、その後に搬送ロール等と接触して急冷されても、顕著に高光沢となることはなく、光沢ムラの発生が抑えられる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本願発明に係る画像形成装置又は定着装置では、トナー像が加熱・加圧によって定着されるとともに、加熱されたトナー像の表面から溶融されたワックスの余剰分が加熱ロールに吸引して除去される。これにより、定着装置から送り出された記録シートが、搬送ロール等に接触しても、接触部分が顕著に高光沢となることが回避される。つまり、融点以上の温度から融点以下に急冷されることによって顕著に高光沢化するワックスが除去されているので、顕著な光沢ムラの発生が抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願に係る発明の一実施形態である画像形成装置を示す概略構成図である。
この画像形成装置は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を形成する4つの画像形成ユニット10a、10b、10c、10dを備えており、これらの画像形成ユニット10のそれぞれと対向するように無端ベルト状の中間転写体11が支持され、周面が周回駆動されるものとなっている。画像形成ユニットが中間転写体11と対向する位置の下流側には、転写ロール12が中間転写体11と対向するように配置されており、この2次転写部にはシートトレイ13から搬送路14を経て記録シートが送り込まれる。記録シートの搬送経路における2次転写部の下流側には、トナー像を加熱・加圧して記録シート上にトナー像を圧着する定着装置15が設けられ、さらに下流側には、トナー像が定着された記録シートを搬送する搬送ロール16,17が設けられている。そして、装置のハウジング18の外部に、トナー像が定着された記録シートを収容する排紙トレイ19が形成されている。
【0026】
上記画像形成ユニット10a、10b、10c、10dのそれぞれは、表面に静電潜像が形成される感光体ドラム1(像担持体)を有しており、各感光体ドラム1の周囲に、該感光体ドラムの表面をほぼ一様に帯電する帯電装置2と、感光体ドラム上に形成された潜像にトナーを選択的に転移させてトナー像を形成する現像装置3と、感光体ドラム1上のトナー像を中間転写体11上に一次転写する転写装置4と、転写後の感光体ドラム1に残留したトナーを回収するクリーニング装置5とを備えている。そして、一様に帯電された感光体ドラム1のそれぞれに、画像信号に基づく像光を照射して静電潜像を書き込む露光装置6が設けられている。
【0027】
感光体ドラム1は、金属からなる円筒状部材の周面に有機感光体層を形成したものであり、金属部分は電気的に接地されている。
【0028】
上記帯電装置2は、ステンレス製の円筒状芯金に中抵抗のゴムを被覆したロール状の部材を備えており、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加して感光体ドラム1の表面を所望の電圧に帯電するものである。この帯電装置2に印加される電圧の直流成分Vhは−600[V]とし、重畳する交流のピークツーピーク値Vbppは1400[V]となっている。
【0029】
上記露光装置6は、画像信号に基づいて点滅するレーザー光を発生し、これをポリゴンミラーによってそれぞれの感光体ドラム1の主走査方向(軸線方向)にスキャンするものである。これによりそれぞれの感光体ドラム1の表面に各色の画像に相当する静電潜像が形成される。
【0030】
現像装置3には現像剤としてトナーと磁性キャリアとを含む二成分現像剤が使用されており、現像ロールに磁気的に吸着されて搬送される。そして、現像ロール上で規制ブレードにより適切な厚さの層とされ、感光体ドラム1との対向位置へと供給される。現像ロールにはトナーを感光体ドラム1上の静電潜像に転移させるために現像バイアス電圧Vd=−500[V]が印加されている。
トナーは主に磁性キャリアとの摩擦により負極性に帯電されるものであり、色材とバインダ樹脂とパラフィンワックスとを含むものである。バインダ樹脂の融点は約250℃、ガラス転移温度は約100℃となっており、パラフィンワックスの融点は約90℃となっている。
【0031】
上記画像形成ユニット10a、10b、10c、10dと対向するように配置される中間転写体11は、厚さが10〜300μm程度の樹脂フイルムからなるものであり、ポリイミドフィルム等が用いられる。また、トナー像を感光体ドラム1から中間転写体11へ静電的に転写するときに、画像の乱れが生じないように上記樹脂フィルムにはカーボンブラック等の導電性材料の粉体を混入し、体積抵抗率を1010Ωcm程度に調整している。
【0032】
上記中間転写体11の内側には、駆動ロール22と、対向ロール23とが配置され、中間転写体11はこれらに張架されて図中に示す矢印Aの方向に周回移動するものとなっている。
【0033】
上記転写ロール12は、上記対向ロール23と対向する位置に設けられ、中間転写体11を介して対向ロール23に押圧されている。この転写ロール12は、金属の芯材に導電性のゴム材で外周部を形成してロール状としたものであり、対向ロール23との間に転写用のバイアス電圧が印加されるものである。
【0034】
上記定着装置15は、図2に示すように、加熱源を内蔵した加熱ロール20と、この加熱ロール20に圧接される加圧ロール30とを備えており、これらが平行に配置されて互いに圧接されるニップ部を形成している。トナー像Tが転写された記録シートPは、上記ニップ部に送り込まれ、回転駆動される加熱ロール20と加圧ロール30との間で加熱されるとともに加圧され、溶融したトナーが記録シートP上に圧着されるものとなっている。
【0035】
上記加熱ロール20は、金属製の円筒部材21の周面上にフッ素樹脂からなる離型層22が形成され、内周面にはグラスファイバーの層23が貼着されたものである。そして、内部には、加熱源としてハロゲンヒータ24が配置されている。
上記円筒部材21は、アルミニウム、ステンレススチール等の金属からなるものであり、外径が30mm〜40mm程度で、厚さが0.5mmから3mm程度となっている。そして、この円筒部材21には、図3に示すように、記録シートPと接触する範囲のほぼ全域に外周面から内側に貫通する多数の小孔25が、ほぼ均等に分布して形成されている。そして、表面の離型層22が上記小孔25の内周面に連続し、小孔の内周面のほぼ全域がフッ素樹脂層26によって被覆されている。
【0036】
上記小孔25は、フッ素樹脂層26の内側で径が約4μmとなっており、使用するトナーの粒径の2/3より小さくなっている。この小孔25の内径は、0.5μm〜5μm程度とするのが望ましい。
また、上記小孔25が占める面積は、円筒部材21の周面上で5%〜30%程度となっている。
【0037】
上記円筒部材21の内側に形成されたグラスファイバーの層23は、ガラス繊維をマット状にして集積したものを貼着することによって形成されている。この層の厚さは2mmから5mm程度とするのが望ましい。
【0038】
上記加熱ロール20と圧接される加圧ロール30は、金属製の芯金31の周面上に弾性層32を形成し、その表面上に離型層33を被覆したものである。
なお、上記定着装置は、本願の請求項6に係る発明の一実施形態である。
【0039】
上記定着装置15の下流側に設けられた搬送ロール16,17は、記録シートの搬送路の両側に対向するように設けられた一対のロール部材からなり、対となるもののそれぞれは金属製のシャフトに幅の小さい合成樹脂製の円筒体が間隔をあけて複数が固着されたものである。これらのロール部材は、平行に配置されて互いに周面が圧接されており、一方が回転駆動されることによって記録シートを挟み込み、搬送するものとなっている。
【0040】
次に、上記画像形成装置の動作について説明する。
中間転写体11に対向して設けられた4つの画像形成ユニット10a、10b、10c、10dで、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、黒のトナー像が形成される。トナー像の形成は次のような工程により行われる。
感光体ドラム1がそれぞれ帯電装置2によりほぼ一様に帯電され、露光装置6から画像信号に応じてオンオフされるレーザー光が照射される。これにより光照射された位置の電荷が減衰し、感光体ドラム1上に静電電位の差による潜像が形成される。各感光体ドラム1上の静電潜像は、現像装置3との対向位置においてトナーの転移によって現像され、トナー像が感光体ドラム1上に形成される。
【0041】
形成された各色トナー像は、転写装置4により中間転写体11上へ重ね合わせて転写される。これにより、中間転写体11上に複数色のトナー像が重ね合わされたカラー画像が形成される。中間転写体11上に形成された複数色のトナー像は、中間転写体11が転写ロール12と対向する位置で、シートトレイ13から搬送された記録シート上に転写され、定着装置15へ送られる。定着装置の加熱ロール20は、トナー像を溶融するのに充分な温度に加熱されており、この加熱ロール20と加圧ロール30との間に記録シートが挟み込まれる。
【0042】
記録シートP上のトナー像Tは、図3に示すように加熱ロール20と接触し、加熱ロール20から伝達される熱で加熱され、軟化する。軟化するまでの状態では、トナーの粒径は小孔25の径より大きくなっており、トナーの粒子が小孔内に入り込むことはない。
加熱が進み、トナーに含まれるワックス及びバインダー樹脂が溶融すると、溶融したワックスが表面に層状となり、このワックスが小孔25内に毛細管現象によって吸引される。そして表面で溶融しているワックスのかなりの部分が加熱ロール20に吸引して除去される。このとき、バインダー樹脂は、粘性が高いために小孔に入り込むことはない。そして、トナー像は加熱ロール20と加圧ロール30との間で押圧され、記録シート上に圧着されて定着画像となる。
【0043】
加熱ロール20及び加圧ロール30の回転によってこれらのニップ部から排出される時には、トナー像の表面にわずかに残っているワックスの作用によってトナー像は加熱ロール20から良好に剥離され、定着装置15から排出される。
その後、記録シートは下流側の搬送ロール16,17に挟み込まれて搬送され、排紙トレイ19へ排出される。この搬送される過程で、記録シートPは搬送ロール16、17と接触することになり、ワックスの融点以上の温度から融点以下にまで急冷されることも生じる。しかし、トナー像の表面からはワックスの多くが除去されているので、光沢の変動は少なく、搬送ロール等との接触部分が顕著に高光沢となることはない。したがって、光沢ムラの発生が有効に抑えられる。
【0044】
以上に説明した実施の形態において、加熱ロール20が備える金属製の円筒部材21は、厚さを0.5mmから3mm程度としているが、溶融したワックスを効率よく吸引するためには、厚さを薄く設定するのが望ましく、3mm以上となると充分なワックスの除去が難しくなる。一方、円筒部材の厚さを薄くすると剛性が小さくなり断面形状が変形したり、両端部に押圧力を作用させて加圧ロールと圧接したときに軸線にたわみが生じることになる。したがって、剛性の低下による弊害が生じない程度で部材圧を薄くするのが望ましい。
【0045】
上記小孔25は、フッ素樹脂層の内側で径が約4μmとなっているが、軟化前のトナーが小孔内に入り込むのを防止するためにトナーの粒径の2/3以下とするのがよく、0.5μm〜5μm程度とするのが望ましい。0.5mm以下とすると溶融したワックスの吸引が難しくなる。また、5μm以上とすると、小孔の跡がトナー像の表面に残ることがあり、平滑性が損なわれるおそれが生じる。
【0046】
上記小孔が占める面積は、円筒部材の周面上で5%〜30%程度とすることによってトナー像の表面から均等にワックスを除去することができ、小孔の占める面積が小さいと、小孔の間隔が大きくなり、ワックスの除去量にムラを生じて画像を劣化させるおそれがある。
【0047】
グラスファイバーの層は、この層にワックスを吸着して保持するものであり、保持できるワックスの量を勘案して厚さを決定するのが望ましい。また、グラスファイバーは、内蔵する加熱源からの熱伝導を阻害するものとなるので、加熱の効率をも考慮して定めるのがよい。
【0048】
また、上記実施形態では、加熱ロールに圧接される加圧部材として加圧ロールを用いているが、これに限定されるものではなく、加圧パッド、複数のロールに張架された無端ベルト、無張架の状態で内側からロール・パッド等によって加熱ロールに押圧される無端ベルト等を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本願に係る発明の一実施形態である画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す画像形成装置で用いられる定着装置の概略断面図である。
【図3】図2に示す定着装置の一部の拡大断面図である。
【図4】従来の画像形成装置における問題点を説明するための概略斜視図であって、定着装置、その下流側に設けられた搬送ロール、及び記録シートに生じたロールマークを示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1:感光体ドラム、 2:帯電装置、 3:現像装置、 4:転写装置、 5:クリーニング装置、 6:露光装置、 10:画像形成ユニット、 11:中間転写体、 12:転写ロール、 13:シートトレイ、 14:記録シートの搬送路、 15:定着装置、 16,17:搬送ロール、 18:画像形成装置のハウジング、 19:排紙トレイ、
20:定着装置の加熱ロール、 21:円筒部材、 22:離型層、 23:グラスファイバーの層、 24:ハロゲンヒータ、 25:小孔、 26:フッ素樹脂層、
30:定着装置の加圧ロール、 31:芯金、 32:弾性層、 33:離型層、
P:記録シート、 T:トナー像


【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電電位の差による潜像に粉状のトナーを選択的に付着させてトナー像を形成する像形成手段と、
前記トナー像を直接に記録シートに、又は中間転写体を介して記録シートに転写する転写手段と、
加熱された状態で未定着トナー像に接触する加熱部材と、トナー像を担持する記録シートを前記加熱部材に押圧する加圧部材とを備え、該加熱部材と加圧部材との間を通過する記録シート上のトナー像を該記録シートに定着する定着装置とを有し、
前記トナーとして、樹脂バインダーと、色材と、離型性を向上させるワックスとを含むものを用いる画像形成装置であって、
前記定着装置の加熱部材が中空の加熱ロールであり、
該加熱ロールが、周面から中空部に貫通する多数の小孔を有し、前記記録シート上のトナー像に押圧されたときに溶融した前記ワックスを吸引するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記小孔の径は、前記トナーの粒径の2/3以下で、0.5μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記加熱ロールの前記トナー像と接触する部分は、該加熱ロールの周面に対して前記小孔が占める面積の割合が、5%〜30%となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記小孔の内周面は、表面エネルギーの小さい材料からなる被覆層を有することを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記加熱ロールの内部には、前記小孔から吸引したワックスを保持する保持部材を有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
加熱された状態で、記録シート上に担持された未定着トナー像に接触する加熱ロールと、前記記録シートを前記加熱ロールに押圧する加圧部材とを備え、該加熱ロールと加圧部材との間を通過する記録シート上のトナー像を加熱及び加圧して該記録シートに圧着する定着装置であって、
前記加熱ロールが、中空の部材で形成され、周面から中空部に貫通する多数の小孔を有し、前記記録シート上のトナー像に押圧されたときにトナーに含まれるワックスの溶融物を毛細管現象によって中空部内に吸引するものであることを特徴とする定着装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−91146(P2006−91146A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273868(P2004−273868)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】