説明

画像形成装置及び廃液タンク

【課題】廃液タンクの利用効率が悪い。
【解決手段】液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドから排出された液体の廃液を収容する廃液タンク101は、タンク長手方向の一端部に廃液排出端側が密封状態で着脱可能に接続される廃液導入空間114が設けられ、タンク長手方向の他端部側の上面にタンク内外を連通する大気連通口116が設けられた密閉構造であり、廃液タンク101内には、廃液を吸収する吸収部材113が収容され、廃液が導入される部位には、吸収部材113のない空間114が設けられており、廃液が導入される部位における吸収部材113のない空間114の下方には、吸収部材113が配置され、吸収部材113の大気連通口116に対応する部位には、大気連通口116から上下方向に吸収部材113を、廃液タンクの底面に至らない高さまで貫くように吸収部材113のない空間115が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及び廃液タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを着弾させて画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。また、「用紙」とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。
【0004】
このような画像形成装置(以下、単に「インクジェット記録装置」ともいう。)においては、記録ヘッドは、インクをノズルから用紙に吐出させて記録を行なう関係上、ノズルからの溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などにより吐出不良の状態となり、記録不良を起こすという問題を抱えていることから、記録ヘッドの性能を維持回復する維持回復機構を備えている。
【0005】
例えば、記録ヘッドのノズルを密封するキャップ(キャッピング手段、キャップ部材などとも称する。)を備え、装置の非稼動時には記録ヘッドのキャッピングを行うことで、ノズル内のインクの乾燥、増粘を抑えることができるようにしている。また、記録動作の前後やその最中において、記録動作に寄与しないインク滴の吐出を行い、ノズル内で乾燥、増粘したインクを排出して、吐出性能の回復や維持を図るようにしている。
【0006】
このようなノズルの吐出性維持のための画像形成に寄与しないインク滴の吐出は予備吐出或いは空吐出と称され、専用の空吐出受けに吐出し、あるいは、キャップに対して吐出することが行われる。
【0007】
そして、従来、記録ヘッドの維持回復動作によって生じるインクの廃液を収容する廃液タンク(廃液収容容器、廃液貯留部などと称されるものを含む意味である。)として、特許文献1に記載されているようにヘッドからキャップで吸引されたインクの廃液と空吐出されたインクを同一の廃液タンクに収容するものがある。
【0008】
また、特許文献2に記載されているように廃液タンクに廃液流入口と大気連通孔を有し、廃液流入口と大気連通孔との間に廃液を吸収する吸収体を備えるものがある。また、吸収体を備えるものは例えば特許文献3にも記載されている。
【0009】
また、特許文献4に記載されているように固定の廃液貯留部と着脱可能な廃液貯留部とを備えるものがある。
【0010】
また、廃液タンクの満タン検知を行う構成については、特許文献5に記載されているように、廃液を投入する開口部側に満タン検知用の吸収体を設置するものがある。
【0011】
また、特許文献6に記載されているように密閉構造の廃液タンクを備え、廃液タンクに廃液を導入するときにタンク内を大気開放するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−119210号公報
【特許文献2】特開2007−253471号公報
【特許文献3】特開2003‐285452号公報
【特許文献4】特開2001−162829号公報
【特許文献5】特開2007‐76339号公報
【特許文献6】特開2005−199526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の画像形成装置や廃液タンクでは、次のような課題がある。
つまり、顔料系インクなどの速乾性を有するインクの廃液を収容する場合、廃液が空気に触れることで廃液が増粘して堆積し、また、吸収部材に廃液を吸収するときに廃液が乾燥して以後の廃液の吸収を阻害することがある。
【0014】
ここで、廃液を生じる維持回復動作には、記録ヘッドからキャップ内にインクを排出させることで生じる廃液と、記録ヘッドから空吐出受け部材に対してインクを吐出することで生じる廃液とがある。この場合、いずれも廃液も同じ廃液タンクに収容する構成を採ると、上述した廃液の堆積によって廃液タンクの利用効率が低下するという課題がある。
【0015】
また、廃液の乾燥を抑制するために密閉構造の廃液タンク構成とした場合であっても、廃液タンク内に廃液を導入するためには内部の空気を抜くために外部と連通する連通口、例えば大気開放口を設ける必要がある。
【0016】
ここで、密閉構造の廃液タンクが満タンになったことを検知するために満タン検知手段を設ける場合、満タン検知手段が大気開放口より廃液導入部位側に設けられていると、大気開放口に対応する部位まで廃液を収容可能であっても、その前に満タンが検知されて、廃液タンクの利用効率が低下するという課題がある。
【0017】
一方、廃液が投入される開口部を有する非密閉構造の廃液タンクの場合、画像形成装置が傾けられて廃液タンクが傾くと、収容している廃液が開口部から漏れるという課題がある。
【0018】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、廃液タンクの利用効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドから排出された液体の廃液を収容する廃液タンクと、を備え、
前記廃液タンクは、タンク長手方向の一端部に廃液排出端側が密封状態で着脱可能に接続される廃液導入部が設けられ、タンク長手方向の他端部側の上面にタンク内外を連通する連通口が設けられた密閉構造であり、
前記廃液タンク内には、前記廃液を吸収する吸収部材が収容され、
前記廃液が導入される部位には、前記吸収部材のない空間が設けられており、
前記廃液が導入される部位における前記吸収部材のない空間の下方には、前記吸収部材が配置され、
前記吸収部材の前記連通口に対応する部位には、前記連通口から上下方向に前記吸収部材を、前記廃液タンクの底面に至らない高さまで貫くように前記吸収部材のない空間が設けられている
構成とした。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、廃液タンクの利用効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部の概略を示す構成図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】維持回復機構の概略模式的側面説明図である。
【図4】同じく要部平面説明図である。
【図5】維持回復機構と第2廃液タンクの斜視説明図である。
【図6】同じく側面説明図である。
【図7】第2廃液タンクの斜視説明図である。
【図8】同じく同第2廃液タンクの図7と反対側から見た斜視説明図である。
【図9】第2廃液タンクの断面斜視説明図である。
【図10】第2廃液タンクの吸引チューブとの連結部分の拡大断面説明図である。
【図11】大気連通口からの気泡発生の説明に供する説明図である。
【図12】吸収部材の他の配置例の説明に供する第2廃液タンクの断面斜視説明図である。
【図13】開放型廃液タンクの説明に供する模式的説明図である。
【図14】同じく開放型タンクにおける廃液浸透状態の説明に供する模式的説明図である。
【図15】同じく開放型タンクにおける廃液浸透が不可能になる状態の説明に供する模式的説明図である。
【図16】本発明の第2実施形態における第2廃液タンクの模式的説明図である。
【図17】本発明の第3実施形態における第2廃液タンクの模式的説明図である。
【図18】本発明の第4実施形態における第2廃液タンクの模式的説明図である。
【図19】本発明の第5実施形態における第2廃液タンクの模式的説明図である。
【図20】(a)は同第2廃液タンクの吸収部材における廃液浸透状態の説明に供する模式的説明図、同(b)は同(a)の側断面説明図である。
【図21】比較例の第2廃液タンクの模式的説明図である。
【図22】同じく比較例の第2廃液タンクにおける廃液浸透状態の説明に供する模式的説明図である。
【図23】(a)は同比較例の第2廃液タンクの吸収部材における廃液浸透状態の説明に供する模式的説明図、同(b)は同(a)の側断面説明図である。
【図24】本発明の第6実施形態における第2廃液タンクの模式的説明図である。
【図25】(a)は同じく作用説明に供する模式的説明図、同(b)は同(a)の側断面説明図である。
【図26】(a)は比較例における廃液浸透状態の説明に供する模式的説明図、同(b)は同(a)の側断面説明図である。
【図27】本発明の第7実施形態における第1廃液タンクの斜視説明図である。
【図28】同じく要部断面説明図である。
【図29】同じく廃液の堆積状態を説明する断面説明図である。
【図30】同じく第1廃液タンクを傾けたときの状態の説明に供する断面説明図である。
【図31】本発明の第8実施形態における第1廃液タンクの断面説明図である。
【図32】本発明の第9実施形態における第1廃液タンクの断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図2で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0023】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0024】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0025】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのサブタンク35a、35b(区別しないときは「サブタンク35」という。)を搭載している。このサブタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット5によって各色の供給チューブ36を介して、各色のインクが補充供給される。
【0026】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0027】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0028】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図2のベルト搬送方向に周回移動する。
【0029】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0030】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0031】
さらに、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。
【0032】
また、この維持回復機構81の下方側には維持回復動作のうちの空吐出受け84に対する空吐出及びワイパ部材83の清掃によって空吐出受け84から生じる廃液を収容するための交換されない第1廃液タンク100を、維持回復機構81の側方側にはカートリッジ装填部4の下側に装置本体の前面側から交換可能な第2廃液タンク101を、それぞれ備えている。インクカートリッジ10及び第1廃液タンク101は、装置本体の前面の共通のカバーを開くことで、装置本体前面側から交換することができるため、低コスト化を図れる。
【0033】
また、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0034】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0035】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0036】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0037】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0038】
次に、この画像形成装置における維持回復機構81について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同維持回復機構の模式的概略構成図、図4は同じく要部平面説明図である。
この維持回復機構81は、維持装置フレーム211に、キャップホルダ212に保持されたキャップ82a、82bと、弾性体を含むワイパ部材83と、第1ワイパ清掃手段であるワイパクリーナ86とがそれぞれ昇降可能(上下動可能)に保持されている。
【0039】
キャップ82は、記録ヘッド34のノズル面と対向する側に開口を有する箱型の部材である。このキャップ82はその開口上面部に弾性部分を有しており、前記弾性部分をノズル面に当接し、密着させることでノズルの開口を封止(キャッピング)することができる。また、キャップ82内には多孔質のスポンジ状部材である図示しない吸収部材が配設されている。これにより、吸収部材の持つ毛管力により、キャップ82内でインクを均一な状態で保持すると同時に、後述する吸引ポンプ220によりキャップ82a内のインクを排出する際に排出する負圧をキャップ全体に伝播させることができる。
【0040】
そして、ワイパ部材83と吸引用となるキャップ82aとの間には筒状の空吐出受け84が配置され、この空吐出受け84のワイパ部材83側上端部はワイパ部材83に付着したインクを掻き落して除去する第2ワイパ清掃手段としてワイパクリーナ部85が形成されている。ワイパ部材83のクリーニングを行うときにはワイパクリーナ86でワイパ部材83をワイパクリーナ部85に押し付けた状態でワイパ部材83を下降させることにより、ワイパ部材83に付着したインクを空吐出受け84側に掻き落す。
【0041】
また、印字領域に最も近い側のキャップ82aにはチューブ部材である弾性部材からなる可撓性吸引チューブ219を介して吸引手段であるチュービングポンプ(吸引ポンプ)220を接続し、キャップ82aのみを吸引(回復)及び保湿用キャップ(以下単に「吸引用キャップ」という。)とし、キャップ82bは単なる保湿用キャップとしている。したがって、記録ヘッド34の回復動作を行うときには、回復動作を行う記録ヘッド34を吸引用キャップ82aによってキャッピング可能な位置に選択的に移動させる。
【0042】
吸引ポンプ220は、吸引チューブ219に対して複数の加圧部材による加圧と移動を繰り返すことによってチューブ210に吸引力を発生させる。
【0043】
吸引チューブ219は、シリコンチューブでも良いが、吸引チューブ219内にインクを一時貯留することから、チューブ壁面からの水蒸気透過が起こりにくい材質で形成することが好ましい。そこで、ここでは、熱可塑性エラストマーからなるチューブを使用している。使用する熱塑性エラストマーとしては、例えばポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、フッ素樹脂系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0044】
また、吸引チューブ219に用いる熱可塑性エラストマーの硬度は、JIS−A規格でおよそ50度のものを使用することで、ポンピングでの送液を可能にする弾性力を得ることができて、モータへの与えるポンプ駆動負荷を小さくすることができる。
【0045】
また、吸引チューブ219に用いる熱可塑性エラストマーの水蒸気透過性は、15g/m・day以下にすることで、保持するインクがチューブ219内で水分蒸発する速度を遅くして、チュー219内にインクを一時貯留させることができる。
【0046】
一方、キャップ82a、82b、ワイパ部材83などの下方にはフレーム211に回転自在に支持したカム軸221を配置し、このカム軸221には、キャップホルダ212を昇降させるためのキャップカム222と、ワイパ部材83を昇降させるためのワイパカム224、空吐出受け84内で空吐出される液滴がかかる回転体としてのコロ226と、ワイパクリーナ86を揺動させるためのクリーナカム228と、キャリッジロック87を昇降させるためのキャリッジロックカム229をそれぞれ設けている。
【0047】
そして、吸引ポンプ220及びカム軸221を回転駆動するために、維持回復用モータ231の回転をモータ軸231aに設けたモータギヤ232に、吸引ポンプ220のポンプ軸220aに設けたポンプギヤ233を噛み合わせ、更にこのポンプギヤ233と一体の中間ギヤ234に中間ギヤ235を介して一方向クラッチ237付きの中間ギヤ236を噛み合わせ、この中間ギヤ236と同軸の中間ギヤ238に中間ギヤ239を介してカム軸221に固定したカムギヤ240を噛み合わせている。なお、クラッチ237付きの中間ギヤ236、238の回転軸である中間軸241はフレーム211にて回転可能に保持している。
【0048】
この維持回復機構81においては、記録ヘッド34のノズルを形成した面(ノズル面)に付着したインクや不純物を取り除くときには、モータ231を駆動して、ワイパカム224を介してワイパ部材83を上昇させる。この状態で、キャリッジ33を主走査方向に移動させることにより、ワイパ部材83によって記録ヘッド34のノズル面をワイピングして、不純物などを払拭する。
【0049】
また、記録ヘッド34のノズルを外気に露呈した状態のまま放置すると、内部のインクが乾燥して増粘、固着し、インク吐出性能が低下してしまうことから、これを防ぐために、記録ヘッド34のノズル面をキャップ82で覆うときには、モータ231を回転させ、キャップカム213を介してキャップ82を上昇させ、記録ヘッド34のノズル面をキャッピングする。
【0050】
また、記録動作の前後やその最中において、空吐出受け88、キャップ82aに対して記録動作に寄与しないインク滴の吐出(予備吐出)を行ってノズル吐出性能維持を図る。
【0051】
次に、この画像形成装置に適用した本発明の第1実施形態における第2廃液タンクについて図5ないし図12を参照して説明する。なお、図5は維持回復機構と第2廃液タンクの斜視説明図、図6は同じく側面説明図、図7は第2廃液タンクの斜視説明図、図8は同じく同第2廃液タンクの図7と反対側から見た斜視説明図、図9は第2廃液タンクの断面斜視説明図、図10は第2廃液タンクの吸引チューブとの連結部分の拡大断面説明図、図11は大気連通口からの気泡発生の説明に供する説明図、図12は吸収部材の他の配置例の説明に供する第2廃液タンクの断面斜視説明図である。
【0052】
この画像形成装置では、前述したように維持回復機構81の空吐出受け84からの廃液(廃インク)を貯留保持する固定の第1廃液タンク100と、キャップ82aから排出される廃液を貯留保持する着脱自在な第2廃液タンク101とを備えている。
【0053】
第2廃液タンク101は、容器本体111と蓋部材112とで形成される密閉構造の容器であり、内部にインク(廃液)を吸収して保持する繊維状の不織布やスポンジ状の吸収体からなる複層構造(ここでは3層構造)の吸収部材113が設けられている。容器本体(ケース)111と蓋部材112との間は、溶着、或いはパッキンなどの弾性部材を用いて密閉した構造としている。
【0054】
そして、第2廃液タンク101のタンク長手方向に一端部にはチューブ部材である吸引チューブ219の廃液排出端側が連結部材であるニードル120を介して密封状態で着脱可能に接続される廃液導入口部117が設けられ、タンク長手方向の他端部側の上面にタンク内外を連通する大気連通口116が設けられている。大気連通口116は、開口部が大きいと廃液が第2廃液タンク101から溢れやすくなり、また第2廃液タンク101内に収容された廃液の乾燥を促進してしまうため、開口は小さいほうが好ましい。
【0055】
ここで、第2廃液タンク101の吸収部材113にはニードル120の開口部121から廃液が導入される部位に対応して廃液導入空間114が形成され、また、奥側にも3層を貫いて大気連通口116に対応して空間115が形成されている。
【0056】
これにより、廃液導入空間114と大気連通口116との間には吸収部材113が配置されることになり、廃液流入口(廃液導入空間114)付近と大気連通口115付近との空気の移動が起こりにくくなるため、廃液導入空間114付近の廃液の乾燥を抑制することができる。
【0057】
また、廃液が導入される部位に吸収部材113が存在しない廃液導入空間114が設けられていることで、ニードル120の挿入が容易になって第2廃液タンク101の交換が容易になる。つまり、この部位に吸収部材113があると、ニードル120を吸収部材113に突き刺しながら挿入することになるが、目の細かい吸収部材113にノードル120を突き刺すことは実際上困難である。
【0058】
また、大気連通口116に対応する部位に吸収部材113が存在しない空間115が設けられていることで、大気連通口116から廃液の気泡が発生して第2廃液タンク101が汚れることを防止できる。
【0059】
つまり、図11(a)に示すように、大気連通口116の部位に吸収部材113を設置した場合、吸収部材113に廃液131が浸透した状態で、廃液導入空間114に導入される廃液131及び空気によって大気連通口116から空気が排出されるが、図11(b)に大気連通口116まで廃液131が到達すると、大気連通口116に廃液131の膜132が付着し、この状態で空気が大気連通口116から流出すると、図11(c)に示すように、廃液131に起因する気泡133が発生し破裂することで、第2廃液タンク101を汚してしますことになる。
【0060】
これに対して、大気連通口116に対応する部位に吸収部材113が存在しなければ、このよう廃液131の気泡133の発生、破裂を防止することができる。
【0061】
したがってまた、図12に示すように、大気開放口116に接する吸収部材がなければよいので、複層構造の下面側には吸収部材113を設置してもよい。
【0062】
また、廃液導入口部117内には中実の弾性部材118が内装され、吸引チューブ219を接続したジョイント部であるニードル120を弾性部材118に差し込むことで、吸引チューブ219の排出端部と第2廃液タンク101とが接続される。ニードル部120は、中空針形状であり、先端部側面に形成された開口121を通じて吸引チューブ219から送液された廃液を導入空間114に排出する。
【0063】
弾性部材118は、ニードル120が抜かれたときにはニードル120で貫通された部分が弾性力によって復元して密閉状態となって、第2廃液タンク101を交換するときに廃液が廃液導入口部117から漏れることを防止できる。なお、第2廃液タンク101を交換するとき、大気連通口116については、使用後にデカルを貼付することでタンク101を完全に密閉状態にすることができ、第2廃液タンク101から廃液が溢れるのを防ぐことができる。
【0064】
また、ニードル120から廃液を排出させる場合、ニードル120の流出口(開口部121)では廃液と空気が同時に排出されるため、ニードル120の先端部には気泡起因の粘度の高い廃液が付着しやすい。また、第2廃液タンク101が外された場合に、ニードル120の開口部121に廃液が溜まっていると、廃液が増粘し吸引不良が発生する可能性がある。そこで、廃液導入部117には弾性部材118の外側に吸収部材123を配置し(図9及び図10参照)、第2廃液タンク101を抜かれた時に、ニードル120の先端部が吸収部材123で擦られながら抜かれるようにして、廃液詰まりを防止している。
【0065】
また、ニードル120の開口部121は、先端に設けると弾性部材118を貫通させる時に、弾性部材118の一部が開口部に挟まってしまいニードル120が詰まる可能性があるので、ニードル120の側面に設けられていることが好ましい。
【0066】
また、第2廃液タンク101の長手方向一端部の壁面には情報記憶媒体119が設けられている(図8参照)。この情報記憶媒体119には第1廃液タンク101に排出された廃液量や排出できる排出可能残量などの情報が記憶されている。この情報記憶媒体119の情報は維持回復機構81側の読取り手段125によって読み取ることができる。
【0067】
この実施形態では、第2廃液タンク101の満タン検知については、記録ヘッド34から吐出する滴数と滴量とで排出量をカウントするソフトカウントで第2廃液タンク101に排出された廃液量を計測し、この計測値が予め定めた値(閾値)を超えた場合に満タンと検知するようにしている。満タン検知を検出している第2廃液タンク101が新しい第2廃液タンク101に交換された場合には、自動的に計測値がリセットされる。また、第2廃液タンク101に蓋部材112の上面には画像形成装置内での第2廃液タンク101のがたつきを抑えるためにリブ112aが形成されている。
【0068】
このように、この画像形成装置では、第1廃液タンク100と第2廃液タンク101とを備えて、空吐出及びワイパ部材83の清掃による廃液は第1廃液タンク100に収容し、キャップ82aからの廃液は第2廃液タンク101に収容するようにしている。
【0069】
つまり、維持回復動作で生じる廃液には、記録ヘッド34のノズルの吐出不良回復のためにノズル面をキャップ82aでキャッピングし、吸引ポンプ220によってノズルからインクを吸引することで生じる吸引チューブ219からの廃液と、印字領域以外(空吐出受け84など)の場所にノズルから画像形成に寄与しないインク滴を吐出することで生じる空吐出及びワイパ部材83に付着したインクをワイパクリーナ部85で清掃することによる廃液とがある。
【0070】
ここで、吸引チューブ219からの廃液はノズルから強制的にインクを吸引するため、比較的低粘度の廃液となるが、空吐出やワイパ部材の清掃による廃液(これらを「空吐出受けからの廃液」という。)は量が少ないことなどから比較的高粘度の廃液となる。この場合、低粘度の廃液のみを密閉された空間に排出させることで、廃液の堆積を低減させることができる。
【0071】
そこで、吸引チューブ219からの廃液と空吐出受け84からの廃液とを同一の廃液タンクに排出して収容するのではなく、空吐出受けからの廃液を排出、収容するための第1廃液タンク100と、吸引チューブ219からの廃液を排出、収容するための第2廃液タンク101を備える。そして、この第2廃液タンク101は、密閉構造の廃液タンクとすることで廃液の乾燥が低減されるとともに、収容している廃液の溢れを低減できる。これにより、第2廃液タンク101では廃液の堆積が少なく、廃液タンクの利用効率が向上する。
【0072】
そして、第2廃液タンク101は装置本体に対して着脱可能にすることで廃液タンク101を交換することができる。
【0073】
ここで、開口部を有する開放型廃液タンクの問題点について図13ないし図15を参照して説明する。なお、図13ないし図15は同説明に供する模式的説明図である。
この開放型廃液タンク1001は、吸引チューブ1002から廃液が投入される常時開放された開口部103が形成され、内部に吸収部材104が配置され、開口部1003からから離れた位置に満タン検知センサ1005が設けられている。
【0074】
開放型廃液タンク1001にあっては、図14に示すように、吸引チューブ1002から排出されて開口部1003から廃液導入空間1006内に投入された廃液1010が吸収部材1004に吸収(浸透)されて保持され、定期的に廃液1010が導入される状態では問題は発生しない。
【0075】
しかしながら、廃液タンク1001に廃液1010が排出されて長時間放置された場合、図15に示すように、開口部1003を通じてタンク1001内が常時大気に開放されていることから、吸収部材1004の入口部分に吸収された廃液1011が乾燥、増粘して、ある一定以上増粘が進行すると、新たな廃液1010が導入された時に吸収部材1004として吸収力がなくなり、満タン検知センサ1005が機能しなくなる。この状態で、廃液1010が排出され続けると、廃液タンク1010の開口部1003から廃液1010が溢れることになる。
【0076】
これに対して、上述したように廃タンクを密閉型にすることで水分蒸発を防いで廃液の溢れも抑制することができる。
【0077】
次に、本発明の第2実施形態における第2廃液タンクについて図16を参照して説明する。なお、図16は同第2廃液タンクの説明に供する模式的説明図である。
この第2廃液タンク301は、密閉構造の容器であって、例えば前記第1実施形態の容器本体と蓋部材とを溶着、融着、接着、パッキン部材(シール部材)などを用いて密封して一体化することで構成している。
この第2廃液タンク301の上部には吸引チューブ219が密封状態で接続されている。そして、吸引チューブ219によって廃液が導入される廃液導入部位に対応して廃液導入空間304が形成され、廃液導入空間304以外には廃液を吸収する吸収部材303が配置されている。また、廃液導入空間304とタンク長手方向の反対側には満タン検知センサ3005が設けられている。
【0078】
この場合、廃液タンク201を交換可能とする場合には吸引チューブ219との間で取り外し可能なジョイントを介して接続する。また、吸引チューブ219と廃液タンク201との間には、大気開放されたキャップ82aとの間で大気を遮断するバルブ(開閉手段)を設けることができる。なお、この開閉手段は廃液排出動作時には開放される手段である。また、チュービングポンプで吸引ポンプ220を構成している場合には、停止状態時に吸引チューブ219を加圧コロで潰している状態にすることにより、バルブとして機能させることができる。
【0079】
このように、完全密閉構造の廃液タンクとすることで、上述したように、水分蒸発を防いで廃液の溢れも抑制することができる。
【0080】
次に、本発明の第3実施形態における第2廃液タンクについて図17を参照して説明する。なお、図17は同第2廃液タンクの説明に供する模式的説明図である。
ここでは、上記第2実施形態の第2廃液タンク301において、内外を連通する連通口306を設けるとともに、この連通口306を開閉する開閉手段である大気開放バルブ307を設けている。
【0081】
そして、第2廃液タンク301に廃液を排出するときには大気開放バルブ307を開いて連通口306を介してタンク内部を大気に開放する。これにより、第2廃液タンク301に廃液を排出したときに内部の空気が連通口306から排出されるので、密閉構造の第2廃液タンク301内に廃液を導入することができるようになる。
【0082】
次に、本発明の第4実施形態における第2廃液タンクについて図18を参照して説明する。なお、図18は同第2廃液タンクの説明に供する模式的説明図である。
ここでは、上記第2実施形態の第2廃液タンク301において、第2廃液タンク301内に負圧を発生するために、第2廃液タンク301からエアー吸引を行う空気吸引チューブ310を有し、この空気吸引チューブ310に対して吸引ポンプ220によって吸引力を発生させるようにしている。
【0083】
そして、第2廃液タンク301に廃液を排出するときに、吸引ポンプ220によって廃液が第2廃液タンク301内に排出されるときに第2廃液タンク301内の空気が吸引されて負圧になるので、密閉構造の第2廃液タンク301内に廃液を導入することができるようになる。また、吸引ポンプ220を停止しているときにはチューブ219を加圧コロで潰している状態であるから、第2廃液タンク301の完全密閉状態は保たれる。
【0084】
このように負圧発生手段を設けても完全密閉型の廃液タンクに廃液を排出することができるようになる。言い換えれば、このように負圧発生手段を設けることで、廃液タンクを完全密閉構造とすることができる。なお、ここでは、吸引キャップ82a内の廃液を吸引する吸引ポンプで負圧発生手段を兼用しているが、別途廃液タンク内を負圧にする手段を設けることもできる。
【0085】
次に、本発明の第5実施形態における第2廃液タンクについて図19及び図20を参照して説明する。なお、図19は同第2廃液タンクの模式的説明図、図20(a)は同第2廃液タンクの吸収部材における廃液浸透状態の説明に供する模式的説明図、同(b)は同(a)の側断面説明図である。
ここでは、第2廃液タンク101の満タンを光学センサからなる満タン検知センサ125で検知するようにし、この満タン検知センサ125を第2廃液タンク101の大気連通口116よりも他端部側に、つまり、廃液導入空間114と満タン検知センサ125との間に大気連通口116を配置している。
【0086】
これによって、図20にも示すように、廃液導入空間114に導入された廃液130は吸収部材113に吸収され、吸収部材113に吸収される廃液131が吸収部材113のタンク奥側端部まで達すると満タン検知センサ125で廃液131が検知されて満タンが検知されるので、第2廃液タンク101の使用効率が向上する。
【0087】
この点について、図21ないし図23に示す比較例を参照して説明する。なお、図21は同比較例の第2廃液タンクの模式的説明図、図22は同じく廃液浸透状態を説明する模式的説明図、図22(a)は同比較例の第2廃液タンクの吸収部材における廃液浸透状態の説明に供する模式的説明図、同(b)は同(a)の側断面説明図である。
【0088】
つまり、図21に示すように、満タン検知センサ125を大気連通口116よりも廃液導入空間114側に配置した構成にすると、廃液130は吸収部材113の中で大気連通口116の方向へ浸透するが、図22に示すように吸収部材113の内部で矢印135で示すように大気連通口116の手前の満タン検知センサ125の部位までの間に廃液の吸収経路が形成されることが判明した。その結果、図23にも示すように、吸収部材113に吸収された廃液131の領域が限定され、吸収部材113が十分に廃液が吸収される前に満タン検知信号が出力され、廃液タンクの使用効率が低下する。
【0089】
これに対して、満タン検知センサ125を大気連通口116よりも奥側(廃液導入部位から見て)に配置することで、吸収部材113の奥側まで廃液を吸収できて、廃液タンクの使用効率を向上できる。
【0090】
次に、本発明の第6実施形態における第2廃液タンクについて図24及び図25を参照して説明する。なお、図24は同第2廃液タンクの模式的説明図、図25(a)は同じく作用説明に供する模式的説明図、同(b)は同(a)の側断面説明図である。
ここでは、第2廃液タンク101に廃液導入空間114と満タン検知センサ125との間に、タンク長手方向に沿って、つまりは廃液の浸透方向に沿って複数(この例では3個)の大気連通口116a〜116cを配置している。そして、各大気連通口116a〜116cを開閉する開閉手段としての開閉弁126a〜126cを設けている。
【0091】
この第2廃液タンク101においては、廃液を排出するときに、図25に矢印で示すように、廃液排出量に応じて段階的に開閉弁126a〜126cを開閉制御して大気連通口116a〜116cを順次開いていく。つまり、最初に大気連通口116aを開き、大気連通口116b、116cを閉じた状態にし、廃液排出量が第1の所定量に達したときに大気連通口116aを閉じ、大気連通口116bを開き、大気連通口116cは閉じたままにし、廃液排出量が第2の所定量に達したときに大気連通口116aを閉じ、大気連通口116bを閉じ、大気連通口116cは開く制御を行う。なお、廃液を排出しないときには、すべての開閉弁126a〜126cを閉じることで第2廃液タンク101を完全密閉状態として廃液の乾燥を防止する。
【0092】
この場合、第1の所定量は吸収部材113に浸透した廃液131が大気連通口116aの位置を越えない量、第2の所定量は吸収部材113に浸透した廃液131が大気連通口116bの位置を越えない量に設定することで、吸収部材113に吸収された廃液131が大気連通口116a、116bから溢れ出すことを防止でき、吸収部材113全体への廃液吸収を行うことができる。このときの吸収部材113への廃液吸収量は前記第5実施形態の場合よりも多くすることができる。
【0093】
つまり、前記第5実施形態のようにすることで吸収部材への廃液吸収量を多くすることができるが、大気連通口116と満タン検知センサ125との距離が近い場合には、タンク奥行き方向の廃液浸透に対して、横方向の廃液浸透が不十分の状態で満タン検知が作動することがある。また、図26に示すように、大気連通口116と満タン検知センサ125との間隔を広くすると、大気連通口116付近までの吸収部材113への廃液浸透状態は改善されるが、大気連通口116と満タン検知センサ125間の吸収部材113には廃液が浸透しづらく、結果的に大気連通口116からの廃液溢れが生じるおそれがある。
【0094】
そこで、大気連通口116の位置を廃液導入空間114側から満タン検知センサ125側へ実質的に移動させることによって、吸収部材113の全体に廃液を浸透させることができ、廃液タンクの利用効率が向上する。
【0095】
次に、本発明の第7実施形態における第1廃液タンク100について図27及び図28を参照して説明する。なお、図27は同第1廃液タンクの斜視説明図、図28は同じく要部断面説明図である。
第1廃液タンク100は、容器本体411と蓋部材412とで構成され、蓋部材412には廃液が投入される開口部413が設けられている。なお、容器本体411と蓋部材412とは溶着などで密封している。そして、蓋部材412の内側には開口部413の周囲に内方に向かってリブ414が形成され、リブ414と容器本体411内壁面との間に廃液を保持する空間415が形成されている。
【0096】
これによって、図29に示すように第1廃液タンク100に投入された廃液は粘度が高いときには堆積物431となるが、堆積物431になるまでの流動性を有している状態で第1廃液タンク100が傾けられた場合、図30に示すように、廃液430はリブ414もよって空間415で保持される。これによって、画像形成装置の移動時などに多少画像形成装置が傾けられた場合でも、第1廃液タンク100の開口部413から廃液がこぼれることが防止される。
【0097】
つまり、画像形成装置が容易に持ち運び可能な場合、開放型廃液タンクでは移動時に画像形成装置が傾くことで廃液タンクの開口部から廃液がこぼれて、装置内部を汚すおそれがある。染料インクなどでは、廃液滴下位置に吸収部材を設置することで、吸収部材に廃液が浸透するため、画像形成装置を傾けた場合でも廃液は吸収部材に保持されるため廃液収容タンクから廃液がこぼれることはない。
【0098】
しかしながら、速乾性を有するインクを使用する場合、廃液滴下位置に吸収部材を設置すると、吸収部材に吸収される前に乾燥してしまい吸収部材の上面に増粘した廃液の膜が形成され、それ以後廃液を吸収できなくなるため、画像形成装置を傾けた場合に廃液タンクから吸収部材に吸収されなかった廃液が開口部からこぼれることがある。
【0099】
この場合、廃液滴下領域には吸収部材を設置せず、廃液滴下領域以外に吸収部材を設置する構成が考えられるが、この構成では廃液タンクの容積が少なくなる。
【0100】
そこで、この第1廃液タンク100では吸収部材を設置しないで、廃液を直接受ける構成とするとともに、開口部413の周囲にリブ414を設けて空間415を形成し、廃液を保持できるようにして、こぼれを防止している。
【0101】
なお、この第1廃液タンク100では蓋部材412の外側には開口部413の周囲に外方に向かってリブ421を形成し、リブ421で空吐出時などに廃液ミストが飛散することを低減している。
【0102】
次に、本発明の第8実施形態における第1廃液タンク100について図31を参照して説明する。なお、図31は同第1廃液タンクの断面説明図である。
ここでは、上記第7実施形態における第1廃液タンク100の空間415内に吸収部材416を配置保持している。このようにすれば、容器本体411と蓋部材412との密着度を下げても廃液が容器本体411と蓋部材412の隙間からこぼれにくくなるため、溶着などの工程がなくなり、製造コストを下げることができる。
【0103】
次に、本発明の第9実施形態における第1廃液タンク100について図32を参照して説明する。なお、図32は同第1廃液タンクの断面説明図である。
ここでは、上記第7実施形態における第1廃液タンク100の容器本体411の底面と廃液を収容する空間の間に全周にわたってリブ417を形成している。このリブ417を設けることで、第1廃液タンク100が傾けられたときにリブ417が抵抗となり廃液が流れにくくなる。
【0104】
なお、本発明に係る画像形成装置は、インクジェットプリンタ以外にも、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機などにも適用することができる。さらに、インク以外の液体(記録液)、例えばレジスト、医療分野におけるDNA試料などを吐出させる画像形成装置などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
33…キャリッジ
34、34a、34b…記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
35…サブタンク
81…維持回復機構
82a…吸引及び保湿用キャップ
82b…保湿用キャップ
83…ワイパ部材
84…空吐出受け
100…第1廃液タンク
101…第2廃液タンク
111…容器本体
112…蓋部材
113…吸収部材
114…廃液導入空間
116…大気連通口
125…満タン検知センサ
219…吸引チューブ
220…吸引ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドから排出された液体の廃液を収容する廃液タンクと、を備え、
前記廃液タンクは、タンク長手方向の一端部に廃液排出端側が密封状態で着脱可能に接続される廃液導入部が設けられ、タンク長手方向の他端部側の上面にタンク内外を連通する連通口が設けられた密閉構造であり、
前記廃液タンク内には、前記廃液を吸収する吸収部材が収容され、
前記廃液が導入される部位には、前記吸収部材のない空間が設けられており、
前記廃液が導入される部位における前記吸収部材のない空間の下方には、前記吸収部材が配置され、
前記吸収部材の前記連通口に対応する部位には、前記連通口から上下方向に前記吸収部材を、前記廃液タンクの底面に至らない高さまで貫くように前記吸収部材のない空間が設けられている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドから排出された液体の廃液を収容する廃液タンクにおいて、
タンク長手方向の一端部に廃液排出端側が密封状態で着脱可能に接続される廃液導入部が設けられ、タンク長手方向の他端部側の上面にタンク内外を連通する連通口が設けられた密閉構造であり、
前記廃液タンク内には、前記廃液を吸収する吸収部材が収容され、
前記廃液が導入される部位には、前記吸収部材のない空間が設けられており、
前記廃液が導入される部位における前記吸収部材のない空間の下方には、前記吸収部材が配置され、
前記吸収部材の前記連通口に対応する部位には、前記連通口から上下方向に前記吸収部材を、前記廃液タンクの底面に至らない高さまで貫くように前記吸収部材のない空間が設けられている
ことを特徴とする廃液タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2013−60026(P2013−60026A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−2589(P2013−2589)
【出願日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【分割の表示】特願2008−160735(P2008−160735)の分割
【原出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】