説明

画像形成装置及び画像形成システム

【課題】画像形成ジョブの実行に異常が発生して中断した場合の、他の画像形成装置におけるその画像形成ジョブの再開を、ユーザの手を煩わせずに簡単な処理で確実に実行できるようにする。
【解決手段】 画像処理装置10aにおいて画像形成ジョブの実行に異常が発生した場合に、ジョブ情報保障部102がウェブストレージ制御部104を介してウェブストレージサービスサーバ30にアクセスして、実行できなくなった画像形成ジョブの内容を示すジョブ情報を送信し、保存させると共に、ウェブストレージサービスサーバ30にアクセスするために用いるアクセス情報と、記憶させたジョブ情報を特定するためのジョブ識別情報とを画像処理装置10bに送信し、そのアクセス情報及びジョブ識別情報に従った画像形成ジョブを実行することを画像処理装置10bに要求するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ジョブ情報に従って画像形成ジョブを実行する画像形成手段を備える画像形成装置、およびこのような画像形成装置を複数備える画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ジョブ情報に従って画像形成ジョブを実行する画像形成手段を備えるプリンタ等の画像形成装置が広く知られている。また、このような画像形成装置において、画像形成ジョブの実行中に異常が生じジョブが中断された場合でも、そのジョブの実行を他の画像形成装置に代わりに実行させることにより、中断されたジョブに係る印刷物等を得られるようにする手法として、以下のものが知られている。
【0003】
まず、特許文献1には、画像入出力装置において異常発生時に既に受け付けられている処理すべき未処理のジョブ及び処理途中のジョブを着脱可能な記憶媒体に記憶させ、ユーザにより記憶媒体が装着された他の画像入出力装置がその記憶媒体に記憶されているジョブを読み取って実行するようにすることが記載されている。
特許文献2には、第1の印刷装置において印刷の実行中に印刷エラーが発生した場合にプリントサービスサーバに対して印刷中断情報を送信して登録しておき、ユーザが第2の印刷装置を操作してプリントサービスサーバに認証を受けた場合に、その印刷中断情報を参照して、その第2の印刷装置において、印刷エラーが発生した印刷の続きを行えるようにすることが記載されている。
【0004】
特許文献3には、印刷が失敗に終わった場合に、印刷ジョブを代替印刷装置に送信することが記載されている。
特許文献4には、プリンタ100−1がPC300から印刷要求を受信した場合に、ストレージ200に、印刷パラメータと印刷処理のイベント通知に関する情報とを含むジョブ指示情報を送信して保存させると共に、PC300から指定された補助プリンタに、補助印刷要求を送信することが記載されている。そして、この補助印刷要求を受信したプリンタは、それぞれストレージ200へジョブ取得要求を送信することによってジョブ指示情報の全部又は一部と文書データとを取得し、ジョブに係る印刷処理を実行することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の手法では、着脱可能な記憶媒体を用いてジョブを移動させるため、記憶媒体の装着が可能な機種にしか適用できないし、記憶媒体を付け替えるためにはユーザに専門知識が要求され、作業負荷が大きいという問題があった。
特許文献2に記載の手法でも、ユーザが第2の印刷装置を操作する必要があるため、ユーザの作業負荷が大きいという問題があった。また、プリントサービスサーバ側に、印刷中断情報をユーザと対応付けて管理する機能を設ける必要であり、このため専用のサーバが必要になるという問題があった。
【0006】
また、特許文献3に記載の手法では、印刷ジョブそのものを代替印刷装置に宛てて送信するため、代替印刷装置においてサイズの大きいジョブを実行中に別途ジョブを送信してしまうようなことが起こると、メモリ容量不足により印刷ジョブを正しく受け取れない可能性があるという問題があった。
特許文献4に記載の手法では、プリンタ100−1が印刷要求を受信した時点で、ストレージ200へのジョブ指示情報の保存と補助プリンタへの補助印刷要求を行うため、複数のプリンタで重複してジョブを実行しないようにするための比較的複雑な制御が必要となり、システム開発の負荷が大きいという問題があった。
【0007】
この発明は、このような問題を解決し、画像形成ジョブの実行に異常が発生して中断した場合の、他の画像形成装置におけるその画像形成ジョブの再開を、ユーザの手を煩わせずに簡単な処理で確実に実行できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、この発明による画像形成装置は、ジョブ情報に従って画像形成ジョブを実行する画像形成手段を備える画像形成装置において、上記画像形成手段による画像形成ジョブの実行に異常が発生した場合に、所定のアクセス先にアクセスして、その異常により実行できなくなった画像形成ジョブの内容を示すジョブ情報を送信し、保存させる異常ジョブ処理手段と、上記異常ジョブ処理手段が上記アクセス先にジョブ情報を記憶させた場合に、上記所定のアクセス先にアクセスするために用いるアクセス情報と、上記所定のアクセス先において上記記憶させたジョブ情報を特定するためのジョブ識別情報とを他の画像形成装置に送信し、そのアクセス情報及びそのジョブ識別情報に従った画像形成ジョブの実行を上記他の画像形成装置に要求する要求手段とを設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のような構成によれば、画像形成ジョブの実行に異常が発生して中断した場合の、他の画像形成装置におけるその画像形成ジョブの再開を、ユーザの手を煩わせずに簡単な処理で確実に実行できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の画像形成装置の一実施形態である画像処理装置を含む画像処理システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した画像処理装置の機能構成を示す図である。
【図3】ウェブストレージサービスシステムの機能構成を示す図である。
【図4】図1に示した画像処理装置が扱うジョブ情報のフォーマット例を示す図である。
【図5】画像形成ジョブの実行に支障を来す異常の発生を検出した場合に画像処理装置のCPUが実行する処理のフローチャートである。
【図6】図5のステップS22で送信されたジョブ復元要求等を受信した復元先画像処理装置のCPUが実行する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、この発明の画像形成装置の一実施形態である画像処理装置を含む画像処理システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0012】
この画像処理システムは、図1に示す複数の画像処理装置10a〜10cを備える。これらの画像処理装置10a〜10cは、後述する異常発生時のジョブの復元に関する機能を備えていれば同一機種であってもバラバラの機種であっても構わない。しかし、図1に示す範囲のハードウェアは全ての画像処理装置10a〜10cが備えているため、ここでは代表として画像処理装置10aについて説明する。
【0013】
図1に示すように、画像処理装置10aは、CPU11,ROM12,RAM13,通信I/F(インタフェース)14,スキャナエンジン15,プリンタエンジン16,操作パネル17を備え、これらがシステムバスにより接続されている。
【0014】
これらのうちCPU11は、画像処理装置10aを統括制御する制御手段である。そして、ROM12に記録された所要のプログラムを実行し、図1に示した各部を制御することにより、後述するジョブの復元に関する機能をはじめ、種々の機能を実現する。また、画像処理装置10を、コピー、スキャン、プリント、ファクシミリ通信、ドキュメントボックス等の各種機能を備えたデジタル複合機(MFP)として機能させることができる。
【0015】
ROM12は、CPU11が実行するプログラムや書き換えの不要なデータ等を記憶する不揮発性記憶手段である。
RAM13は、CPU11がワークエリアとして使用したり、一時的に保持すべきデータを記憶させたりする記憶手段である。
【0016】
通信I/F14は、画像処理装置10aがLAN(ローカルエリアネットワーク)あるいはインターネット40等のネットワークを介して外部装置と通信するためのインタフェースである。通信の規格は、有線、無線を問わず任意のものを用いることができる。
【0017】
スキャナエンジン15は、原稿の画像を読み取って画像データを得る画像読み取り手段である。
プリンタエンジン16は、画像データに基づき紙等の記録シートに画像を形成する画像形成手段である。
操作パネル17は、LCD(液晶ディスプレイ)やタッチパネルをはじめとする各種の表示器やボタン等を備え、ユーザからの操作を受け付けると共に、ユーザに対して画像処理装置10の動作状態や設定内容等の情報を表示する手段である。
【0018】
以上の画像処理装置10aは、ユーザが操作パネル17から入力した設定操作に基づき生成したジョブ情報、あるいはRIP(Raster Image Processor)サーバやPC等のホスト装置20から渡されるジョブ情報に基づき画像形成ジョブを実行することにより、プリンタエンジン16を制御して用紙に画像を形成することができる。
【0019】
また、画像形成ジョブの実行に際して紙詰まり、用紙切れ等の異常が発生し、ジョブが実行不能となった場合、他の画像処理装置に代わりにジョブを実行させる(このことを、以後、ジョブを「復元する」ともいう)ため、以下の処理を行うことができる。すなわち、インターネット40を介してオンラインで提供される汎用のウェブストレージサービス(オンラインストレージサービス)にアクセスしてジョブのデータを保存させておき、他の画像処理装置に、そのジョブのデータを読み出して実行するよう要求することができる。逆に、ジョブのデータをウェブストレージサービスから読み出してそのデータに係るジョブを実行するよう要求された場合、その要求に応じてジョブを実行することができる。
次にこの点に関連する構成についてより詳細に説明する。
【0020】
図2は、図1に示した画像処理装置10aの機能構成を示す図である。図2には、上述したジョブの復元に関連する機能を中心に示している。
図2に示すように、画像処理装置10aにおいては、図1に示したCPU11,ROM12,RAM13,通信I/F14等を備える画像処理コントローラ100が、主制御部101,ジョブ情報保障部102,ジョブ情報復元部103,ウェブストレージ制御部104,入力制御部105,出力制御部106及びソフトウェア構成管理部107を備えている。
【0021】
これらのうち主制御部101は、画像処理コントローラ100における制御の中心的な役割を担う。操作パネル17における操作検出及び表示の制御、およびホスト装置20との通信に関する処理も行う。
【0022】
ジョブ情報保障部102は、ジョブの実行に異常が生じた場合に、他の画像処理装置に代わりにそのジョブを実行させるために必要なデータ転送を行う機能を有する。なお、このデータ転送に用いる情報として、異常発生時に代わりにジョブを実行させる画像処理装置(復元先画像処理装置)のアドレス(IP(Internet Protocol)アドレスやURL(Uniform Resource Locator)など)、異常発生時にジョブ情報の保存に用いるウェブストレージサービスの種類、そのウェブストレージサービスのアクセスポイント(ウェブストレージサービスサーバ)のアドレス、ウェブストレージサービスサーバに認証を受けるための認証情報などの情報を、予めユーザが設定しておく。この設定は、操作パネル17を操作して行うことができるし、外部のPC等から行うこともできる。
【0023】
ジョブ情報復元部103は、他の画像処理装置からの要求に応じて、その画像形成装置で異常により中断されたジョブを代わりに実行するために必要な情報を取得する機能を有する。
【0024】
ウェブストレージ制御部104は、ウェブストレージサービスサーバ30が提供するウェブストレージサービスを利用する機能を有する。ここで、ウェブストレージサービスには、インターネット40を介してウェブストレージサービスサーバ30に送信されてくるデータを任意のファイル名を付して任意のストレージに蓄積する機能と、ウェブストレージサービスサーバ30がインターネット40を介して受け付けた要求に応じて、蓄積したデータを要求元にダウンロードさせる機能とを含む。そのほか、ウェブストレージサービスサーバ30がユーザ名やパスワード等の認証情報を用いてアクセス元を認証し、蓄積するデータをユーザ名と対応付けて管理する機能を備えていることが好ましい。このとき、蓄積したデータのダウンロードは、そのデータを蓄積したユーザあるいはそのユーザが許可したユーザにのみ許可する。
【0025】
入力制御部105は、スキャナエンジン15による画像の読み取り及びスキャナエンジン15からの読み取り画像データの入力を制御する。例えば、主制御部101から画像情報(画像属性、画像データ)取得要求を受けて、スキャナエンジン15を制御して画像情報入力処理を行い、スキャナエンジン15より入力された画像データと画像属性を主制御部101へ送信する。
【0026】
出力制御部106は、プリンタエンジン16による画像形成及びプリンタエンジン16への画像データの出力を制御する。例えば、主制御部101より印刷指示を受け、印刷開始要求及び印刷すべき画像の画像データをプリンタエンジン16に送信し、印刷を実行させる。また、プリンタエンジン16は、印刷実行時において、ジャム、紙なしなど、印刷処理に支障を来たす事象が発生した場合に、出力制御部106に異常を通知する。出力制御部106は、この異常通知を受けた場合に、主制御部101に異常通知を送信する。異常が解除された場合には、プリンタエンジン16はその旨を同様に出力制御部106に通知し、出力制御部106はそれに応じて主制御部101に異常解除通知を送信する。
【0027】
ソフトウェア構成管理部107は、画像処理装置10aにインストールされている全てのソフトウェアの種類、および各ソフトウェアのバージョンの情報を管理する。ソフトウェア構成管理部107は、ウェブストレージサービスサーバ30にアクセスするウェブストレージ制御部104の機能を実現する上で必要なソフトウェアも管理する。
【0028】
次に、画像処理装置10aが画像形成ジョブを実行する場合の各部の動作について、より詳細に説明する。
まず、主制御部101は、ユーザが操作パネル17から印刷指示(Scan to Printなど)を行った場合、印刷指示時にユーザから設定された給紙トレイや排紙トレイなどの設定情報を元に、実行すべき画像形成ジョブの内容を示すジョブ情報の生成を行う。Scan to Printの場合、ジョブ情報の生成において必要となる画像情報(画像データと画像属性)は、入力制御部105に指示を出し、入力制御部105を介して、スキャナエンジン15より取得する。また、主制御部101は、ホスト装置20からジョブ情報を受信した場合には、改めてジョブ情報の生成は行わず、受信したジョブ情報に従ったジョブを開始する。
【0029】
いずれの場合も、主制御部101は、ジョブ情報に従い出力制御部106に画像形成を要求する。出力制御部106は、その要求に従ってプリンタエンジン16を制御して画像形成を実行させる。また、出力制御部106は、画像形成実行時にジャム、紙なしなど印刷処理に支障を来たす事象が発生した場合に、プリンタエンジン16のセンサ等の出力に基づきこれを検出し、主制御部101に異常を通知する。
【0030】
主制御部101は、異常通知を受けると、異常により中断したジョブを他の画像処理装置に復元させるべく、未完了である画像形成ジョブのジョブ情報をジョブ情報保障部102に通知する。また、それ以降異常解除通知を受けるまでに生成あるいは受信したジョブ情報もジョブ情報保障部102に通知する。なお、ジョブ情報保障部102にジョブ情報を通知したジョブについては、他の画像処理装置に代わりに実行させることになるので、重複実行を避けるため、異常が解消しても、画像処理装置10aにおいては実行を再開しない。このため、なるべく画像処理装置10aにジョブを実行させたい場合には、異常が発生した場合にすぐにジョブ情報保障部102にジョブ情報を通知するのではなく、少し時間が経っても解消しない場合に通知するようにしてもよい。
【0031】
ジョブ情報保障部102は、主制御部101から上記のようにジョブ情報を通知されると、そのジョブ情報を一意に特定できるジョブ識別子を生成する。そして、ジョブ情報とジョブ識別子とをウェブストレージ制御部104に渡し、ウェブストレージサービスサーバ30にアクセスさせて、ウェブストレージサービスサーバ30が提供するウェブストレージサービスに、ジョブ情報を保存させる。
【0032】
また、ジョブ情報保障部102は、予めユーザによって設定された、ジョブ情報の保存に利用するウェブストレージサービスの種類、それに応じたアクセスポイント(ここではウェブストレージサービスサーバ30であるとする)のアドレス及び、ウェブストレージサービスサーバ30に認証を受けるための認証情報を保持している。そして、ウェブストレージ制御部104にウェブストレージサービスサーバ30へアクセスさせる際には、ウェブストレージ制御部104にそれらの情報を渡す。
【0033】
なお、利用するウェブストレージサービスは、自動アクセス用のプログラムが利用可能なものであれば何でも構わない。広く公衆の利用に供されるサービスも利用することができる。例えば、リコー社の提供するquanp(商標)、アマゾン社の提供するAmazon S3(商標)、及びヤフー社の提供するFlicker(商標)等を利用することが考えられる。ただし、画像処理装置の運用者が独自に設けたウェブストレージサービスを利用することも妨げられない。
【0034】
ウェブストレージ制御部104は、ジョブ情報保障部102からの要求に応じて、指定されたウェブストレージサービスを利用するための自動アクセス用プログラムを起動して、指定されたアクセスポイントであるウェブストレージサービスサーバ30にアクセスして、渡された認証情報を用いて認証を受ける。そして、ジョブ情報保障部102から渡されたジョブ情報を、ウェブストレージサービスサーバ30に送信し、ウェブストレージサービスに保存させる。このとき、ジョブ情報と共に渡されたジョブ識別子を、保存するジョブ情報のファイル名等として用い、後でウェブストレージサービスサーバ30にアクセスした際に、そのジョブ識別子をキーに所望のジョブ情報を検索できるようにする。
【0035】
また、主制御部101は、異常発生後、未完了の画像形成ジョブを全てジョブ情報保障部102に通知し終わると、ジョブ情報保障部102にその旨を通知する。
そして、ジョブ情報保障部102は、主制御部101から全てのジョブ情報の通知が終わったことを通知されると、ウェブストレージ制御部104に接続解除要求を送信する。ウェブストレージ制御部104は、この要求があるとウェブストレージサービスサーバ30からログアウトし、接続を解除する。
【0036】
また、ジョブ情報保障部102は、ジョブ情報のウェブストレージサービスへの保存が完了すると、ユーザによりあらかじめ設定された復元先画像処理装置(ここでは画像処理装置10bとする)のアドレス情報に従い、復元先画像処理装置に対して、ジョブ情報を保存したウェブストレージサービスにアクセスするためのアクセス情報と、保存した1又は複数のジョブ情報を特定するためのジョブ識別情報とを通知すると共に、それらに従ってジョブの復元を行うべきことを要求するジョブ復元要求を行う。
【0037】
なお、アクセス情報とは、ウェブストレージサービスの種類、それに応じたアクセスポイントのアドレス及び、ウェブストレージサービスサーバ30に認証を受けるための認証情報である。また、複数のジョブ情報を保存した場合、それらを全て同じ画像処理装置により復元させても、複数の画像処理装置に適宜に分散して復元させてもよい。また、1つのジョブ復元要求で複数のジョブ情報に係る画像形成ジョブの復元を要求しても、ジョブ情報1つにつき1つのジョブ復元要求を行うようにしてもよい。
以上で、異常が発生した側の画像処理装置におけるジョブの復元に係る動作は終了する。
【0038】
一方、画像処理装置10aは、ジョブの復元を要求される側の画像処理装置としても機能する。
この場合、画像処理装置10aは、他の画像処理装置のジョブ情報保障部102が送信してくるジョブ復元要求、アクセス情報及びジョブ識別情報を受信する。不図示の通信制御部は、これらの情報を受信したことを検出すると、これらの情報をジョブ情報復元部103に渡す。
【0039】
ジョブ情報復元部103は、ジョブ復元要求、アクセス情報及びジョブ識別情報を受け取ると、主制御部101にジョブ実行中か問い合わせる。ジョブ実行中の場合、実行終了時にその旨を通知することを要求するジョブ終了通知要求を主制御部101に送信する。
そして、ジョブ情報復元部103は、主制御部101からジョブ終了通知を受けるかジョブ実行中ではないと回答を受けた場合に、ウェブストレージ制御部104に、受け取ったアクセス情報及びジョブ識別情報を渡し、それらに従ってウェブストレージサービスサーバ30にアクセスさせてジョブ情報を取得させる。
【0040】
ウェブストレージ制御部104は、ジョブ情報復元部103からの要求に応じて、アクセス情報により指定されたウェブストレージサービスを利用するための自動アクセス用プログラムを起動して、アクセス情報により指定されたアクセスポイントであるウェブストレージサービスサーバ30にアクセスして、アクセス情報に含まれる認証情報を用いて認証を受ける。そして、ジョブ識別情報により特定されるジョブ情報のダウンロードを、ウェブストレージサービスサーバ30に要求し、ウェブストレージサービスにおいて保存されているそのジョブ情報を送信させる。このとき、ウェブストレージサービス側ではそのジョブ情報を削除させるようにしてもよいし、後で別途の要求により又は自動的に削除するようにしてもよい。
【0041】
いずれにせよ、ウェブストレージ制御部104は、必要なジョブ情報のダウンロードが完了すると、ウェブストレージサービスサーバ30からログアウトし、接続を解除する。また、ウェブストレージ制御部104は、ダウンロードしたジョブ情報をジョブ情報復元部103に渡す。
【0042】
そして、ジョブ情報復元部103は、その受け取ったジョブ情報を主制御部101に渡して、そのジョブ情報に従った画像形成ジョブを実行させる。主制御部101は、ユーザの支持に従ってジョブ情報を生成したり、ホスト装置20からジョブ情報を受信したりした場合と同様に、ジョブ情報復元部103から渡されたジョブ情報に従った画像形成ジョブを実行する。
【0043】
以上により、ある画像処理装置において実行が中断された画像形成ジョブを、他の画像処理装置により実行することができる。なお、ウェブストレージサービスに保存させるジョブ情報に、中断時点までの画像形成ジョブの進行状況(何枚目まで印刷したか等)の情報を含めるようにすれば、他の画像処理装置に、中断時点の続きから画像形成ジョブを実行させることもできる。
【0044】
次に、ウェブストレージサービスの機能を提供するウェブストレージサービスシステムの構成例について説明する。
図3は、そのウェブストレージサービスシステムの機能構成を示す図である。
上述した画像処理装置10aがジョブ情報の保存に利用するウェブストレージサービスは、上述したように、広く公衆の利用に供されるものをはじめ、いかなるものでも構わないが、この機能を提供するウェブストレージサービスシステム200は、例えば図3に示すように構成することができる。
【0045】
図3に示すウェブストレージサービスシステム200は、ウェブストレージサービスサーバ30及び任意の数のウェブストレージ50を備える(ここでは50a〜50cの3つを示した)。
これらのうちウェブストレージサービスサーバ30は、ウェブストレージサービスを利用する外部のクライアントシステムCからのアクセスを受け付けるアクセスポイントとして機能する。ここで、クライアントシステムCは、インターネット40等のネットワークを介してウェブストレージサービスサーバ30と通信可能な機器であれば何でもよい。図2に示した画像処理装置10aはもちろん、PCやスマートフォンなどでもよい。
【0046】
そして、ウェブストレージサービスサーバ30はネットワーク制御部31とウェブストレージサービス管理部32とを備える。
このうちネットワーク制御部31は、クライアントシステムC及び、複数のウェブストレージ50との通信を行う機能を有する。所定の認証情報によりクライアントシステムCあるいはそのユーザを認証する機能も有する。なお、ウェブストレージサービスサーバ30とウェブストレージ50との間の通信は、図3ではインターネット40を介さない通信として示しているが、インターネット40を介して通信するようにしても構わない。ただし、この場合でも、ウェブストレージ50はクライアントシステムCからのアクセスは受け付けず、ウェブストレージサービスサーバ30を介したアクセスのみを受け付ける。
【0047】
また、ウェブストレージサービス管理部32は、複数のウェブストレージ50を制御し、そのHDD54の状態(空き容量や使用状況など)を管理する機能を有する。そして、ネットワーク制御部31がクライアントシステムCからデータの蓄積や読み出し等の要求を受けた場合に、保持している各ウェブストレージ50のディスクの情報を基に、ネットワーク制御部31から各ウェブストレージ50へ、クライアントシステムCからの要求を実現するためのウェブストレージ利用要求を送信する。このとき、データの蓄積を要求するのであれば蓄積すべきデータをウェブストレージ50へ送信する。読み出しを要求するのであれば、ウェブストレージ50が読み出したデータをウェブストレージ50から受信する。
【0048】
また、各ウェブストレージ50は、ネットワーク制御部51,主制御部52,ディスク制御部53,HDD(ハードディスクドライブ)54を備える。
これらのうちネットワーク制御部51は、ネットワークを介した通信の制御を行い、特にウェブストレージサービスサーバ30との間の通信の制御を行う。また、ネットワーク制御部51は、ウェブストレージサービスサーバ30からウェブストレージ利用要求を受信すると、主制御部52に渡す。
【0049】
主制御部52は、ウェブストレージ50全体を制御する制御部であり、ネットワーク制御部51からウェブストレージ利用要求を受けると、ディスク制御部53にその要求に係る動作(HDD54からのデータの読み出しやHDD54へのデータの書き込みなど)を実行させる。その結果はネットワーク制御部51を通じてウェブストレージサービスサーバ30へ返す。
【0050】
ディスク制御部53は、HDD54へのデータの読み書きを制御する機能を有し、主制御部52からの指示に応じてHDD54へのデータの読み書きを行う。
HDD54は、データを記憶する書き換え可能な大容量の不揮発性記憶手段である。
以上のウェブストレージサービスシステム200は、クライアントシステムCからの要求に応じて、データをウェブストレージ50のHDD54に蓄積したり、その蓄積したデータをクライアントシステムCに提供したりすることができる。
【0051】
次に、画像処理装置10aが取り扱うジョブ情報のフォーマットについて説明する。
図4は、そのジョブ情報のフォーマット例を示す図である。
図4に示すように、ジョブ情報は、ジョブ属性、画像属性及び画像データを備える。これらのうち画像属性及び画像データは、画像1枚分毎に備える。
【0052】
そして、ジョブ属性は、印刷設定及び画像数のデータを含む。これらのうち印刷設定は、給紙トレイや排紙トレイの設定、両面/片面の設定、集約や製本印刷、後処理の設定など、ジョブを実行する際に画像処理装置10aに対して行うべき設定を示すデータである。画像数は、印刷すべき画像のページ数、すなわち、ジョブ情報が備える画像属性と画像データの組の数を示す。
【0053】
また、画像属性は、画像データとペアであり、画像データのフォーマットを示すデータである。例えば、画像データのサイズ、画像データが示す画像のX方向及びY方向のサイズ、及び画像データの圧縮形式の情報が含まれる。
画像データは、モノクロあるいはカラー(YMCK)のビットマップにより、印刷すべき画像の内容を示すデータである。必要に応じて圧縮されていてもよい。また、画像処理装置10aが描画機能を備える場合、描画処理前の中間言語データであってもよい。
【0054】
次に、画像処理装置10aが実行するジョブ復旧に関する処理について説明する。
まず図5に、ジャム、用紙切れなど、画像形成ジョブの実行に支障を来す異常の発生を検出した場合に画像処理装置10aのCPU11が実行する処理のフローチャートを示す。この処理は、図2に示した主制御部101、ジョブ情報保障部102及びウェブストレージ制御部104の機能と対応する処理である。
CPU11は、上記の異常の発生を、出力制御部106からの通知等により検知すると、所要のプログラムを実行することにより、図5のフローチャートに示す処理を開始する。
【0055】
CPU11は、この処理においてはまず、中断中又は実行待機中の画像形成ジョブがキューにあるか否か判断する(S11)。もしなければ、ジョブの復元に係る処理は不要であるのでそのまま処理を終了するが、あれば、キューにある中断中又は実行待機中の画像形成ジョブのうちまだ処理対象になっていないもの1つを処理対象として(S12)、ステップS13以下の処理に進む。
【0056】
そして、ステップS13では、ウェブストレージサービスサーバ30にログイン済みであるか否か判断する(S13)。ここでログイン済みでなければ、所定のアクセス用プログラムを起動し、そのプログラムを用いて予め定めてあるウェブストレージサービスサーバ30にアクセスして、予め定めてある認証情報を用いてそのウェブストレージサービスサーバ30に認証を受けログインする(S14)。また、以下のステップS15乃至S21の処理のうち、ウェブストレージサービスサーバ30との通信に関する部分は、ステップS14で起動したアクセス用プログラムを実行することにより行う処理である。また、ステップS13でログイン済みであれば、そのままステップS15に進む。
【0057】
次のステップS15では、CPU11は、処理対象のジョブ情報を一意に特定するための識別情報として、ジョブ識別子を生成する(S15)。このジョブ識別子は、利用するウェブストレージサービスにおいて、保存するデータを特定するための情報として利用可能な形式のデータである。
【0058】
その後、ウェブストレージサービスサーバ30に、処理対象の画像形成ジョブに係るジョブ属性(図4参照)のデータを送信し、そのデータを、ステップS16で生成したジョブ識別子により特定される状態で保存させる(S16)。その後さらに、ウェブストレージサービスサーバ30に処理対象の画像形成ジョブに係る1ページ分の画像属性のデータ及び画像データを送信し、今までに送信したデータの続きとして保存させる(S17)。なお、ウェブストレージサービスシステム200側で実際にこれらの保存を行うのはウェブストレージ50である。
【0059】
その後、処理対象の画像形成ジョブに未処理のページがあるか否か判断する(S18)。この判断は、ジョブ属性中の画像数の情報と、送信済みのページ数とを比較して行うことができる。
ステップS18でまだ未処理のページがあれば、全ページ分のデータの送信が終了するまでステップS17に戻って処理を繰り返す。そして、未処理のページがなくなると、ウェブストレージサービスサーバ30に、1つのジョブ情報の送信が完了した旨を通知する(S19)。ウェブストレージサービスサーバ30は、この通知に応じて、順次送信されるデータを追記してきたジョブ情報のファイルを閉じる。
【0060】
次に、CPU11は、まだ中断中又は待機中の画像形成ジョブがキューにあるか判断し(S20)、あれば、ステップS12に戻って処理を繰り返す。なければ、ウェブストレージサービスサーバ30との接続を解除する(S21)。
その後、予めアドレス等が設定されている復元先画像処理装置に対し、ジョブ復元要求を送信すると共に、ジョブ情報をダウンロードするためにアクセスすべきウェブストレージサービスサーバ30のアドレス、ウェブストレージサービスサーバ30へのログインに用いる認証情報、およびウェブストレージサービスに保存したジョブ情報を特定するためのジョブ識別子を送信する(S22)。アドレス及び認証情報がウェブストレージサービスサーバ30へアクセスするためのアクセス情報であり、ジョブ識別子が、ジョブ情報を特定するためのジョブ識別情報である。以後、ジョブ復元要求と、アクセス情報とジョブ識別情報とをまとめて「ジョブ復元要求等」という。
その後、ステップS22で情報を送信したジョブに係るジョブ情報を画像処理装置10aのキューから削除して(S23)、処理を終了する。
【0061】
以上の処理において、CPU11は、ステップS11乃至S21で異常ジョブ処理手段として、ステップS22で要求手段としてそれぞれ機能する。
そして、以上の処理により、画像処理装置10aにおいては異常の発生のため実行できない画像形成ジョブを復元先画像処理装置に実行させるため、ウェブストレージサービスに、そのジョブに係るジョブ情報を保存すると共に、該他の画像処理装置に、ウェブストレージサービスからのジョブ情報の取得に必要な情報を送信することができる。
【0062】
この場合において、ジョブ情報の保存は、異常を検知した画像処理装置10aが能動的にウェブストレージサービスサーバ30にアクセスして行うので、ウェブストレージサービスの側には、画像処理装置10aを監視する機能を設ける必要はなく、汎用のサービスを利用可能である。また、復元先画像処理装置においても、他の画像処理装置における異常の発生を監視する必要はなく、ジョブ復元要求を受けてからジョブの復元に関する動作を行えばよい。ただし、復元先画像処理装置にも、画像処理装置10aと共通のウェブストレージサービスを利用するためのプログラムがインストールされているか、あるいは速やかに適当なライブラリからそのプログラムを取得可能であることは求められる。
また、画像処理装置10aにおいてジョブの実行ができないような異常が発生したことを検知した時点でジョブ情報の保存とジョブ復元要求の送信を行うため、画像処理装置10aと復元先画像処理装置とで二重にジョブを実行してしまうことがない。
【0063】
なお、一旦図5の処理を終了した後、異常が解消する前に画像処理装置10aにおいて新たに実行すべきジョブが生じた場合には、その時点で再度図5の処理を実行すればよい。
また、図5の処理ではジョブ情報のウェブストレージサービスへの保存が全て終了した後でジョブ復元要求等の送信を行っているが、保存の終了したジョブ情報に関するものから順に送信を行うようにしてもよい。また、複数のジョブ情報を保存した場合、それらを複数の画像処理装置に適宜に分散して復元させてもよいことは上述の通りである。この場合、少なくとも復元に用いる画像処理装置毎に、ジョブ復元要求等の送信を行う。
【0064】
次に、図6に、画像処理装置10aが図5のステップS23で送信したジョブ復元要求等を受信した復元先画像処理装置(画像処理装置10bとする)のCPU11が実行する処理のフローチャートを示す。もちろん、画像処理装置10aも、他の画像処理装置から見た場合には復元先画像処理装置として機能することが可能であり、ジョブ復元要求等を受信した場合には同様な処理を行う。
【0065】
画像処理装置10bのCPU11は、他の画像処理装置からジョブ復元要求等を受信したことを検出すると、図6のフローチャートに示す処理を開始する。
そして、まず、現在画像形成ジョブを実行中であるか否か判断し、実行中であれば、その画像形成ジョブが終了するまで待機する(S32)。キューに複数の画像形成ジョブがあれば、それら全てが終了するまで待機する。
【0066】
その後、ジョブ復元要求と共に受信したアドレス及び認証情報を用いてウェブストレージサービスサーバ30にアクセスし、認証を受けてログインする(S33)。そして、ウェブストレージサービスサーバ30から、ジョブ復元要求と共に受信したジョブ識別子で特定されるジョブ情報をダウンロードする(S34)。このジョブ情報は、画像処理装置10aがウェブストレージサービスに保存したものである。
【0067】
その後、ダウンロードしたジョブ情報に従って画像形成ジョブを実行し(S35)、ウェブストレージサービスサーバ30との接続を解除して(S36)、処理を終了する。
ジョブ復元要求と共に複数のジョブ識別子を受信していれば、ステップS34で複数のジョブ情報をダウンロードし、ステップS35で複数の画像形成ジョブを実行することになる。また、ステップS35とS36の処理順は逆でもよい。
【0068】
以上の処理において、CPU11は、ステップS33及びS34でジョブ情報取得手段として、ステップS35で制御手段としてそれぞれ機能する。
そして、以上の処理により、画像処理装置10bは、画像処理装置10aが使用しようとしていたジョブ情報に基づく画像形成ジョブを実行することができるため、画像処理装置10aにおいて実行できなかった画像形成ジョブを代わりに実行することができる。この場合において、ユーザは、最初にジョブを実行させる画像処理装置10aに必要な設定を行い、画像処理装置10bがウェブストレージサービスを利用するためのプログラムを実行可能な状態にしておけば、異常発生時には特段の操作は必要ない。従って、画像形成ジョブの復元を、ユーザの手を煩わせずに簡単な処理で確実に実行することができる。
【0069】
なお、ジョブ情報の取得は、画像処理装置10bが(ジョブ復元要求に応じて)能動的にウェブストレージサービスサーバ30にアクセスして行うので、ウェブストレージサービスの側には、画像処理装置10bを監視する機能を設ける必要はなく、汎用のサービスで対応可能である。
このような能動的なアクセスで対応可能となっているのは、ジョブ情報をダウンロードするために必要なアクセス情報、認証情報及びジョブ識別情報を予め画像処理装置10aが画像処理装置10bに提供しているためである。
【0070】
また、画像処理装置10aから画像処理装置10bに送信するデータの容量は小さいもので済むため、画像処理装置10bにおいてメモリ容量を圧迫することはない。また、画像処理装置10bは任意のタイミングでウェブストレージサービスサーバ30にアクセスしてジョブ情報を取得すればよいので、他のジョブを実行中の場合のような、メモリ容量が圧迫されている時を避けてジョブ情報を取得することができる。従って、メモリ容量不足により印刷ジョブを正しく受け取れないリスクは最低限にすることができる。
画像処理装置10aにHDDのような大容量の記憶手段を設けない場合には、メモリ容量の制約が比較的厳しいため、このようにメモリ容量を圧迫しないようにすることは特に有用である。
【0071】
また、特に複数のジョブ情報をダウンロードする場合において、ダウンロードする前にウェブストレージサービスサーバ30から各ジョブ情報のデータサイズの情報を取得するとよい。そして、メモリ容量が足りない場合には、一部のジョブ情報をダウンロードして実行した後、そのジョブ情報を削除してから、残りのジョブ情報をダウンロードすることも可能である。このようにすれば、メモリ容量不足のリスクをより効果的に低減することができる。
【0072】
以上で実施形態の説明を終了するが、この発明において、システムあるいはそれを構成する各装置の具体的な構成や、実行する処理の内容、データの形式等は、実施形態で説明したものに限るものではない。
例えば、復元先画像処理装置は、予め指定しておく他、画像処理装置10aが自動的に探索するようにすることも考えられる。指定しておくべき復元先画像処理装置が定められていない場合や、指定された復元先画像処理装置と通信ができない場合にも同様に探索を行うことが考えられる。
【0073】
この探索の際には、画像処理装置10aにおいて、ジョブ情報保障部102は、主制御部101に対して、ウェブストレージ制御部104に利用させるウェブストレージサービスの種類と、そのウェブストレージサービスを利用するためのプログラムのバージョンの情報の取得を要求する。主制御部101は、ジョブ情報保障部102からその取得要求を受けると、ソフトウェア構成管理部107から、ウェブストレージサービスの種類とプログラムのバージョンの情報を取得し、ジョブ情報保障部102にその情報を送信する。
【0074】
そして、ジョブ情報保障部102は、主制御部101から受信したウェブストレージサービスの種類とプログラムのバージョン情報を、同一ネットワーク上の全ての画像処理装置に対して通知する。各画像処理装置は、その通知を受けると、それぞれ自身のソフトウェア構成管理部を参照し、通知された種類のウェブストレージサービスを利用するための、通知されたバージョン(あるいはそれと互換性を有するバーション)のプログラムが利用可能であるか否か判断する。そして、利用可能であれば、その旨を画像処理装置10aに回答する。
【0075】
ジョブ情報保障部102は、この回答を参考に、画像処理装置10aと同じウェブストレージサービスを、同じバージョンのプログラムを用いて利用可能な装置を、復元先画像処理装置として選択することができる。
なお、各画像形成装置が、自身が画像形成ジョブを実行中であるか否かも併せて回答するようにすれば、ジョブを実行中でない、直ちにジョブの復元に着手可能な画像処理装置を、復元先画像処理装置として選択することができる。
【0076】
また、上述した実施形態では、ジョブ情報を、画像処理装置からインターネットを介してアクセスするウェブストレージサービスに保存する例について説明した。しかし、ジョブ情報の保存先はこれに限られない。初めにジョブを実行する画像処理装置と、復元先画像処理装置とから共通にアクセス可能な装置であれば、どのような装置にジョブ情報を保存しても構わない。これらの画像処理装置と同じLAN内に、ジョブ情報を保存する装置を設けてもよい。ジョブ情報を保存する装置が、いずれかの画像処理装置と一体であることも妨げられない。
【0077】
また、上述した実施形態では、アクセスすべきウェブストレージサービスサーバ30のアドレスやログインに用いる認証情報もジョブ復元要求と共に復元先画像処理装置に通知する例について説明した。しかし、同じ管理者が管理する装置であれば、これらの情報は予め復元先画像処理装置にも設定しておくことも可能である。そして、このような場合には、アドレスや認証情報を復元先画像処理装置に通知する必要はない。
【0078】
また、ウェブストレージサービスにおいて、復元先画像処理装置がジョブ情報をダウンロードできるように適切にアクセス権限が設定されていれば、初めにジョブを実行する画像処理装置がウェブストレージサービスサーバ30にログインするための認証情報と、復元先画像処理装置がウェブストレージサービスサーバ30にログインするための認証情報とが異なっていてもよい。すなわち、これらの装置が異なるアカウントを用いてウェブストレージサービスサーバ30にアクセスすることは妨げられない。
【0079】
また、復元先画像処理装置においても復元を要求された画像形成ジョブの実行に不具合が生じた場合には、図5を用いて説明した処理により、さらに別の画像処理装置に、ジョブの復元を要求することが考えられる。
また、全ての画像処理装置が、図5の処理(ジョブ情報の保存及び復元の要求に関する処理)と図6の処理(ジョブ復元の実行に関する処理)を両方実行可能である必要はない。図5の処理のみ実行可能な画像処理装置が図6の処理のみ実行可能な画像処理装置にジョブ復元要求を行うことによっても、上述した実施形態と同様なジョブの復元が可能である。このような2台の画像処理装置からなるシステムも、この発明の画像形成システムの一実施形態である。
【0080】
また、上述した実施形態では、この発明を画像形成ジョブの復元に適用した例について説明した。このため、装置も画像処理装置を例に挙げて説明した。しかし、この発明は、ジョブの実行を必ずしも当初指定した装置で行わず、他の装置が行ってもよいようなものであれば、任意のジョブの管理について適用することができる。ただし、原稿のスキャンのように、原稿をセットした装置自身に実行させないと意味がないようなジョブの管理に適用することは、好ましくない。
【0081】
また、この発明は、コンピュータに各種デバイスを制御させ、上述した画像処理装置10a,10bの機能を実現させるためのプログラムとして実施することもできる。このようなプログラムは、予め画像処理装置等のメモリに記憶させておく他、記録媒体であるCD−ROMあるいはフレキシブルディスク,SRAM,EEPROM,メモリカード等の不揮発性記録媒体(メモリ)に記録したり、ネットワークを介してダウンロードできるようにしたりして提供することもできる。そして、そのプログラムをインストールしてCPUに実行させるか、CPUにメモリあるいはダウンロードサーバからこのプログラムを取得させて実行させることにより、上述した各機能を実現させることができる。
【0082】
また、以上説明してきた実施形態の構成は、相互に矛盾しない限り任意に組み合わせて実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0083】
10a〜10c:画像処理装置 11:CPU 12:ROM 13:RAM
14:通信I/F 15:スキャナエンジン 16:プリンタエンジン
17:操作パネル 18:システムバス 20:ホスト装置
30:ウェブストレージサービスサーバ 31:ネットワーク制御部
32:ウェブストレージ管理部 40:インターネット
50a〜50c:ウェブストレージ 51:ネットワーク制御部 52:主制御部
53:ディスク制御部 54:HDD 100:画像処理コントローラ
101:主制御部 102:ジョブ情報保障部 103:ジョブ情報復元部
104:ウェブストレージ制御部 105:入力制御部 106:出力制御部
200:ウェブストレージサービスシステム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特開2001−47700号公報
【特許文献2】特開2006−99725号公報
【特許文献3】特開2000−35867号公報
【特許文献4】特開2004−265092号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジョブ情報に従って画像形成ジョブを実行する画像形成手段を備える画像形成装置であって、
前記画像形成手段による画像形成ジョブの実行に異常が発生した場合に、所定のアクセス先にアクセスして、該異常により実行できなくなった画像形成ジョブの内容を示すジョブ情報を送信し、保存させる異常ジョブ処理手段と、
前記異常ジョブ処理手段が前記アクセス先にジョブ情報を記憶させた場合に、前記所定のアクセス先にアクセスするために用いるアクセス情報と、前記所定のアクセス先において前記記憶させたジョブ情報を特定するためのジョブ識別情報とを他の画像形成装置に送信し、該アクセス情報及び該ジョブ識別情報に従った画像形成ジョブの実行を前記他の画像形成装置に要求する要求手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記アクセス情報及び前記ジョブ識別情報を受信し、該アクセス情報及び該ジョブ識別情報に従った画像形成ジョブの実行を要求された場合に、該アクセス情報を用いて前記アクセス先にアクセスし、該ジョブ識別情報により特定されるジョブ情報を前記アクセス先から取得するジョブ情報取得手段と、
前記ジョブ情報取得手段が取得したジョブ情報に従って前記画像形成手段に画像形成ジョブを実行させる制御手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
ジョブ情報に従って画像形成ジョブを実行する画像形成手段を備える画像形成装置であって、
他の画像形成装置から、特定のアクセス先にアクセスするために用いるアクセス情報及び該アクセス先においてジョブ情報を特定するためのジョブ識別情報を受信し、該アクセス情報及び該ジョブ識別情報に従った画像形成ジョブの実行を要求された場合に、該アクセス情報を用いて前記アクセス先にアクセスし、該ジョブ識別情報により特定される、実行すべき画像形成ジョブの内容を示すジョブ情報を前記アクセス先から取得するジョブ情報取得手段と、
前記ジョブ情報取得手段が取得したジョブ情報に従って前記画像形成手段に画像形成ジョブを実行させる制御手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記アクセス先は、前記画像形成装置からインターネットを介してアクセスする、ウェブストレージサービスを提供するシステムであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
各々ジョブ情報に従って画像形成ジョブを実行する画像形成手段を備える第1及び第2の画像形成装置を備える画像形成システムであって、
第1の画像形成装置に、
当該第1の画像形成装置の画像形成手段による画像形成ジョブの実行に異常が発生した場合に、所定のアクセス先にアクセスして、該異常により実行できなくなった画像形成ジョブの内容を示すジョブ情報を送信し、保存させる異常ジョブ処理手段と、
前記異常ジョブ処理手段が前記アクセス先にジョブ情報を記憶させた場合に、前記所定のアクセス先にアクセスするために用いるアクセス情報と、前記所定のアクセス先において前記記憶させたジョブ情報を特定するためのジョブ識別情報とを前記第2の画像形成装置に送信し、該アクセス情報及び該ジョブ識別情報に従った画像形成ジョブの実行を前記第2の画像形成装置に要求する要求手段とを備え、
前記第2の画像形成装置に、
他の画像形成装置から、特定のアクセス先にアクセスするために用いるアクセス情報及び該アクセス先においてジョブ情報を特定するためのジョブ識別情報を受信し、該アクセス情報及び該ジョブ識別情報に従った画像形成ジョブの実行を要求された場合に、該アクセス情報を用いて前記アクセス先にアクセスし、該ジョブ識別情報により特定されるジョブ情報を前記アクセス先から取得するジョブ情報取得手段と、
前記ジョブ情報取得手段が取得したジョブ情報に従って当該第2の画像形成装置の画像形成手段に画像形成ジョブを実行させる制御手段とを備えたことを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−63579(P2013−63579A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203527(P2011−203527)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】