説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】要求される画像品質を満たしつつ、生産性の高い画像出力条件を簡単に設定することができるワイドフォーマット対応の画像形成装置及び方法を提供する。
【解決手段】ワイドフォーマット対応の画像形成装置において、記録媒体上に形成される画像の観察距離を示す情報を入力する情報入力手段と、入力された観察距離を示す情報に基づき、記録解像度、走査パス数、記録時の作画方向、キャリッジ速度、定着工程の条件のうち、少なくとも1つを含む出力条件を決定する出力条件設定手段と、設定された出力条件及び画像データにしたがって記録ヘッド及び走査手段の動作を制御することにより当該画像データに対応した画像を記録媒体上に形成する画像出力制御手段とを備える。また、入力された画像データから画像種(低周波画像、高周波画像)を判断し、画像種と用途・観察距離を考慮して最適条件を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及び画像形成方法に係り、特に、看板や広告物など業務用印刷に用いられるワイドフォーマットインクジェットプリンタ等における画像出力条件の設定の適正化・簡易化に好適な画像形成制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、使用する記録媒体の種類や印刷の目的・用途に対応した複数の記録モードを備えるシリアルスキャン方式のインクジェット記録装置が開示されている。例えば、記録媒体の種類として「光沢紙」が指定された場合に、「速度優先」モード、「標準」モード、「高品位」モード、「最高品位」モードの4つもモードの中から所望のモードを選択できるようになっている。
【0003】
特許文献1では、多種多様の記録モードが具備された装置において、ユーザが用途に応じて適切な記録モードを選択しやすくする観点から、同一記録媒体上に複数の記録モードで複数のテストパターンを記録するとともに、各テストパターンの近傍に対応する記録モードの識別情報、並びにその記録モードによる推定記録時間の情報を記録し、ユーザによる比較検討に資する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−34063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワイドフォーマットなど大判の印刷が可能なプリンタでは、印刷物の用途やその観察距離によって要求品質が大きく異なり、且つ業務印刷にあっては生産性を出来る限り高くしたいという要望がある。特許文献1には、そのような観点は含まれていない。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、大判印刷に対応し、要求品質を満たしつつ、生産性を高めることができる画像出力条件を簡単に設定することができる画像形成装置及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、入力された画像データに基づいて当該画像データに対応した画像を記録媒体上に形成するワイドフォーマット対応の画像形成装置であって、前記記録媒体上に画像を形成する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを前記記録媒体に対して相対移動させる走査手段と、前記記録媒体上に形成される前記画像の観察距離を示す情報を入力する情報入力手段と、前記情報入力手段から入力された前記観察距離を示す情報に基づき、記録解像度、走査パス数、記録時の作画方向、キャリッジ速度、定着工程の条件のうち、少なくとも1つを含む出力条件を決定する出力条件設定手段と、前記出力条件設定手段によって設定された前記出力条件及び前記画像データにしたがって前記記録ヘッド及び前記走査手段の動作を制御することにより当該画像データに対応した画像を前記記録媒体上に形成する画像出力制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、出力しようとする画像の観察距離を示す情報を入力することにより、その観察距離で求められる要求品質を満たしつつ、生産性の高い出力条件の設定を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図
【図2】図1に示したインクジェット記録装置の画像記録部の拡大斜視図
【図3】インクジェット記録装置の構成を示すブロック図
【図4】印刷物の用途と観察距離の関係の事例を示した説明図
【図5】本例のインクジェット記録装置における出力条件の設定手順を示すフローチャート
【図6】グラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)の表示例を示す説明図
【図7】ネットワークシステムの構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
<インクジェット記録装置の全体構成>
図1は本発明に係る画像形成装置の一実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図である。このインクジェット記録装置100は、大型ポスターや商業用壁面広告など、広い描画範囲を記録するワイドフォーマットプリンタであり、装置本体21と、この装置本体21を支持する支持脚23とを備えている。なお、ここでは、A3ノビ以上に対応するものを「ワイドフォーマット」とよぶ。
【0012】
装置本体21にはマルチチャンネルタイプのインクジェットヘッド(ヘッドユニット)25と、固定のプラテン27とを備える。ヘッドユニット25は、ヘッド移動手段(走査手段)であるガイド機構29に沿って一方向(記録媒体搬送方向X)と直交する方向(走査方向Y)に移動される。
【0013】
図2は図1に示したインクジェット記録装置100の画像記録部の拡大斜視図である。
プラテン27は、逆樋状に形成され、上面が記録媒体Sの支持面27aとなる。プラテン27の近傍における記録媒体搬送方向上下流側には、記録媒体搬送手段である二対の走査搬送ローラ対31A、31Bが配設され、走査搬送ローラ対31A、31Bは記録媒体Sをプラテン27上で記録媒体搬送方向Xへ移動させる。走査搬送ローラ対31Bは、記録媒体Sの幅方向端部だけを狭持し、記録媒体Sの中央部を縮径することで、後述するプラテン27の開閉蓋53との干渉を防止している。ヘッドユニット25は、ガイド機構29によって、記録媒体搬送方向Xと直交し且つプラテン27の支持面27aと平行な走査方向Yへ移動される。
【0014】
装置本体21には、インクを貯留する交換自在なカートリッジ33が設けられている。カートリッジ33は、本例のインクジェット記録装置100で使用されるY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色インクに対応して設けられている。各カートリッジ33は、それぞれ独立に形成された不図示のインク供給経路によってヘッドユニット25に接続される。
【0015】
本例のインクジェット記録装置100は、紫外線硬化型インク(UVインク)、溶剤インクのいずれのインクをも用いることができ、カートリッジ33を交換することにより、インクの種類を変更することが可能である。
【0016】
ヘッドユニット25は、走査方向Yの左右両脇に、活性エネルギー照射手段である紫外線照射部35a,35bを有している。紫外線照射部35a,35bは、ヘッドユニット25の往復移動によって一緒に移動可能とされている。紫外線硬化型インク(UVインク)を用いた場合に、各ノズルから吐出されて記録媒体Sの上に着弾したカラーインクは、その直後に上を通過する紫外線照射部35a,35bの一方の紫外線照射部によって紫外線が照射される。
【0017】
なお、インクジェット記録装置100は、ヘッドユニット25をプラテン27に対して上下に昇降させるねじ機構等からなる昇降手段を備え、プラテン27上に搭載される記録媒体Sの厚さに応じて、ヘッドユニット25をプラテン27に対して上下に昇降させることができる。
【0018】
また、ヘッドユニット25におけるインク吐出方式としては、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータの変形によってインク滴を飛ばす方式(ピエゾジェット方式)と、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式のいずれをも採用し得るが、UVインクを使用する場合には、ピエゾジェット方式を採用することが好ましい。本実施形態では、ビエゾジェット方式が採用されている。 次に、インクジェット記録装置100の制御系について説明する。
【0019】
図3はインクジェット記録装置100の構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置100には、制御手段である制御装置71が設けられている。制御装置71としては、例えば中央演算処理装置(CPU)を備えたコンピュータ等を用いることができる。制御装置71には操作パネル等の入力装置73、電源スイッチ75及び表示装置77が接続されている。入力装置73は手動による外部操作信号を制御装置71へ入力可能とする手段であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、操作ボタンなど、各種形態を採用し得る。
【0020】
電源スイッチ75は制御装置71への電源を供給・遮断する。表示装置77には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTなど、各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置73を操作することにより、印刷条件の入力や付属情報の入力・編集などを行うことができ、入力内容や検索結果等の各種情報は表示装置77の表示を通じて確認することができる。
【0021】
また、制御装置71には、走査搬送ローラ対31A、31B、ガイド機構29、ヘッドユニット25、紫外線照射部35a,35bが接続され、これら構成要素は制御装置71から送出される動作制御信号によって動作制御される。
【0022】
<用途・観察距離の事例>
図4に各種画像(印刷物)の用途と観察距離の関係の事例を示した。図示のように印刷物の用途・観察距離は様々であるが、大きく分けて、屋内用と屋外用に分かれる。観察者(人)が近づくことができるものは、屋内外を問わず、高精細に描画する必要がある。その一方、観察者が近づくことができないものは、遠くから見て満足できる程度であればよく、過剰に高精細な高画質出力は不要である。
【0023】
観察距離が近いものの例として、店内の商品に付されるPOP(point-of-purchase advertising)、店内に掲示される店内POP、店舗看板などがある。これらは、主に屋内に設置され、観察距離も0〜1m程度と近距離である。駅の構内等に掲示される交通広告、電飾サインやカラーコルトン(柱や壁に埋め込まれた電照パネル)、各種看板、移動広告トラックのパネル、イベント会場などに設置されるイベント看板などは、屋内、屋外の両方で使用される可能性があり、概ね1m〜7mの範囲の観察距離である。また、電車やバスの車体に付されるラッピング広告、店舗外広告、サイン、ビルボード、壁面広告などは主に屋外で用いられ、観察距離は概ね7mを超え、15m、25m以上などの遠距離になるものもある。
【0024】
図4に示したように、観察距離がおよそ5m以内のものは、観察者が近くに寄って画像を詳細に観察することができるものが多いため、高精細な画像出力が要求される。その一方、観察距離が5m以遠のものは観察者が画像に近づくことが困難な場合が多く、遠く離れた場所から画像を見ることになる。このため、遠距離から観察する画像については、近距離で要求されるほどの高精細な画像再現は要求されない。
【0025】
本実施形態のインクジェット記録装置は、上記事情と生産性を考慮して、最適な画像出力の条件を簡単に設定することができるように構成されている。
【0026】
<本例のインクジェット記録装置における設定フローチャート>
図5は、インクジェット記録装置における設定のフローチャートである。
【0027】
まず、ステップS11では、使用するインクと記録媒体の材質(基材)の設定を行う。この工程では、オペレータ(ユーザ)がユーザインターフェース(図3で説明した入力装置73と表示装置77の組合せ)から所望の入力を行う。或いは、例えば、インクジェット記録装置100におけるインク装填部や記録媒体供給部などに設けたセンサ等によってインク情報や媒体情報を自動的に取得する態様も可能である。
【0028】
次に、ステップS12では、印刷すべき画像データの入力を行う。画像データの入力インターフェース(画像入力手段)としては、ホストコンピュータとの通信インターフェース、メモリカードなどの外部記憶装置のメディアインターフェースなどが可能である。ステップS13では、入力された画像データについて画像診断を行う。
【0029】
画像診断には、例えば次の方法がある。
【0030】
〔方法1〕:ユーザ(オペレータ)が画像種により低周波画像か高周波画像かを選択して指示を入力する方法。
【0031】
〔方法2〕:ユーザが画像解析ソフトを使用し、低周波画像が高周波画像かを判別する方法。
【0032】
〔方法3〕:サービスセンタに対してネットワーク経由で画像データを送り、サービスセンタのオペレータが画像データを確認し、当該センタに蓄積されているデータを基に低周波画像か高周波画像かを詳細に判断する方法。
【0033】
なお、低周波画像の画像種の例としては、CG(コンピュータ・グラフィック)、濃色・ベタ主体の画像が挙げられる。また、高周波画像の画像種の例としては、写真主体の画像が挙げられる。
【0034】
上記の方法1〜3のうち何れかの方法により、対象画像が「低周波画像」であるか(ステップS14)、「高周波画像」であるか(ステップS15)の判別を行う。
【0035】
次いで、用途・観察距離の設定を行う(ステップS16、S17)。
【0036】
用途と観察距離を別々に入力してもよいし、図4で説明したように、用途と観察距離の相関から、いずれか一方を入力することにより、他方の入力(指定)を省略する態様も可能である。
【0037】
ここでは、近距離(例えば、5m以内)で観察されるものであるか、遠距離(例えば、5m以遠)で観察されるものであるかについては、ユーザが判断して選択を行う場合を例に説明する(ステップS18〜S21)。
【0038】
近距離用途の具体例として、屋内で掲示されるPOP、看板、交通広告、電飾サインなどが挙げられる。遠距離用途の具体例として、屋外で掲示される店舗外広告、壁面広告、電車やバスのラッピング広告などが挙げられる。
【0039】
観察距離の選択が行われると(ステップS18〜S21)、条件に見合った最適な設定条件が決定される(ステップS22〜S25)。
【0040】
〔グラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)の例〕
上述したステップS11〜S25の工程におけるGUIの例を説明する。
【0041】
図6は、GUI表示の例である。同図(a)はインク・基材の設定画面の例である。
【0042】
この画面では、使用するインクの種類と使用基材の種類を選択する。インクには大きく分けて溶剤系インクと、紫外線硬化型(UV)インクとがあり、溶剤系の中にも各種のインクがあり、また、UVインクの中にも各種のインクがある。図6の例では、インクの一覧(リスト)を表示して、溶剤系インク1〜3、UVインク21の中から使用するインクの選択ボタンを選択するように構成されているが、GUIの構成は様々な形態が可能であり、プルダウンメニューなどによって選択させる態様も可能である。また、使用基材の種類も様々であり、同図では、基材A〜Dの中から選択させる構成を例示した。
【0043】
使用インクと使用基材を選択すると、図6(b)に示す画像診断画面に移行する。
【0044】
ここでは、上記方法1の場合として、「CG、濃色、ベタ主体」などの低周波画像であるか、「写真主体」の高周波画像であるかの選択を行う画面となっている。
【0045】
図6(b)の画面でいずれかの選択ボタンを選択すると、図6(c)の用途・観察距離の入力画面に移行する。ここでは、目的の印刷物の観察距離が5m以内であるか、5m以遠であるかの選択を行う。
【0046】
観察距離を指定するいずれかの選択ボタンを選択すると、入力された情報に基づきプログラムにしたがって自動的に最適な出力条件の設定(記録モードの選択)が行われる。最適な出力条件の設定が完了すると、その旨のメッセージが提示される(図6(d))。
【0047】
なお、自動的に決定された出力条件(記録モード)の内容を装置に自動セットする前に、当該決定された設定条件の内容を画面に表示して、オペレータの確認を促し、オペレータによる承認の入力を条件として、設定の実行を行う構成でもよい。
【0048】
<設定内容の例> 表1〜4に出力条件の設定の一例を示す。各表中「基材A」は印刷面の裏面側に粘着剤層を有する塩化ビニルシートであり、「基材B」はターポリンである。基材Aは、バスラッピングなどにおいて印刷物を車体・壁面に貼り付けるような場合に用いられる。ターポリン(基材B)は、ポリ塩化ビニル(PVC)に繊維を織り込ませたものであり、耐候性に優れ、ビルボード、壁面広告などに広く用いられる。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
表1は、溶剤系インクと基材Aの組合せが選択された場合の例である。表2は、溶剤系インクと基材Bの組合せが選択された場合の例である。表3は、UVインクと基材Aの組合せ、表4はUVインクと基材Bの組合せの例である。各表中の設定1〜4は、図5における設定1〜4に対応している。即ち、設定1、2は、近距離用途であり、設定1は低周波画像、設定2は高周波画像の場合に対応している。設定3、4は遠距離用途であり、設定3は低周波画像、設定4は高周波画像の場合に対応している。解像度としては、設定1から4の順に次第に下がる傾向となる。
【0054】
「パス数」は、画像を形成する際にヘッドが描画走査(スキャン)する回数である。「作画方向」の片方向とは、印画する際に一方向(往方向又は復方向のいずれか片方)のヘッド移動のみで印画(画像形成)を行い、他方向の動きでは印画を行わずにヘッドを空送りする描画方法である。双方向とは往復の両方向で描画を行う方法である。
【0055】
「キャリッジ速度」とはヘッドの動くスピードである。「乾燥温度」とは、溶剤系インクの場合、溶剤に顔料が含まれているが、描画後に溶剤を蒸発させるために、ヒータ等の加熱手段や送風手段を制御するときに、乾燥能力を表している。プリント生産性を上げるには乾燥温度を高める(高温で加熱する)ことが必要である。よって、表1において、設定1から設定4にいくにつれて乾燥温度を高くするようになっている。
【0056】
溶剤系インクと基材Bの組合せ(表2)の場合、ターポリンは表面が凹凸を有する素材であるため、高画質に画像を形成しようとしても、基材面の凹凸により画質の限界がある。このため、最適な出力条件としてスピード(生産性)を優先する。表1における設定3、設定4と、表2における設定3、設定4の内容を比較すると、表示2の方が生産性に関して約2倍のスピードとなっている。
【0057】
表3、表4に示したUVインクの場合、表1、表2における「乾燥温度」に代えて「露光量」という項目になっている。UVインクの場合、打滴後に紫外線(UV光)を照射してインクを硬化させる。UV光の強弱によって硬化反応の進行性を制御できる。なお、「乾燥温度」や「露光量」は定着工程の条件に相当するものである。
【0058】
表1〜4のように、最適な設定は、使用インクや使用基材で異なる。使用基材に関して、例えば、表面粗さを塩化ビニル(基材A)とターポリン(基材B)で比較すると、ターポリンの方が高いため、バンディングや粒状性が目立ちにくくなり、より生産性の高い設定にできる。
【0059】
また、遠距離であれば、解像度も低く抑えることができる。表1における設定4と、表2における設定3が同じ設定内容であるのは、かかる理由によるものである。
【0060】
更に、バンディングは、パス数が多いほど、また、作画方向については片方向の方が目立ちにくくなることから、画像種、用途・観察距離と生産性の兼ね合いから最適条件が決定される。
【0061】
ここでは、表1〜4の組合せを例示したが、使用基材、使用インクの組合せは各種の組合せ態様が可能であり、表1〜4以外に、使用インクと使用基材の組合せ態様に応じて、相応の設定内容を規定したテーブルが装置の記憶手段(内部メモリ又は外部メモリ)に記憶される。表1〜4で説明した各設定1〜4をそれぞれ「記録モード」として扱うことができ、使用基材、使用インクの組合せに応じて、多様な記録モードを用意することが可能である。 本実施形態に係るインクジェット記録装置によれば、ユーザが出力したい画像データと用途・観察距離を指定することにより、画像種、用途・観察距離に応じた最適で生産性の高い記録モードの選択が適切に行えるようになる。
【0062】
<ネットワークシステムの構成例>
図7は、ネットワーク経由で画像診断を行うシステム200の構成例である。ここでは、インクジェット記録装置100を使用するユーザの端末装置210をネットワーク経由でサービスステーション220のサーバ222に接続する例を説明する。
【0063】
端末装置210は、通信回線(ネットワーク)230を介してサーバ222と通信可能に接続される。通信回線230の形態は特に限定されず、インターネットのような広域通信網(WAN)であってもよいし、構内LANのようなものでもよい。通信方式は特に限定されず、有線、無線を問わず、これらの組合せでもよい。
【0064】
端末装置210には、通信インターフェースを有するパーソナル・コンピュータを用いることができる。また、端末装置210は、図3で説明した制御装置71を兼ねる構成も可能である。
【0065】
ユーザは端末装置210から、画像データ及びその用途・観察距離などの情報を通信回線230経由でサーバ222に送る。サーバ222は、端末装置210から収集した情報を記憶装置224に格納し、データベース化する。
【0066】
サーバ222には、画像解析ソフト及び画像認識ソフトが組み込まれており、端末装置210から受信した画像データを解析して、これと類似する画像をデータベースから検索し、画像種の自動判定を行う。
【0067】
或いはまた、かかる自動判定に代えて、若しくは、これと組み合わせて、サービスステーション220のオペレータが画像内容をディスプレイ(不図示)等で確認して過去の画像診断の蓄積データを基に画像種を個別に判定してもよい。
【0068】
こうして決定された画像種の情報は、通信回線230を介してサーバ222から端末装置210に送信されるとともに、サーバ222の記憶装置224内に該当画像データとともに蓄積される。こうして、ユーザは、適切な画像診断の結果を得ることができる。
【0069】
なお、好ましくは、端末装置210内又は図3で説明した制御装置71内に画像解析ソフトが組み込まれた構成とし、入力画像データについて、まずはユーザ側の当該装置内のソフト処理で一次的な画像診断を行う。そして、このソフト処理による診断結果(一次判断)に確信が持てない場合など、ユーザが必要に応じて上記のサービスステーション220に画像データその他の入力情報を送信して、サービスステーション220の判断を仰ぎ、ソフト処理の結果を修正するなどの利用態様も好ましい。 本例では、画像診断工程のみをサービスステーション220で行う場合を説明したが、画像診断工程のみならず、用途・観察距離を考慮した最適条件の決定アルゴリズムをサーバ222内に搭載し、求めた最適条件の情報を端末装置210に提供する態様も可能である。
【0070】
<他の装置構成への適用例>
上記の実施形態では画像形成装置の例として、インクジェット記録装置100を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、インクジェット方式だけでなく、レーザ記録方式や電子写真方式など他の方式の画像形成装置にも適用可能である。例えば、サーマル素子を記録素子とする記録ヘッドを備えた熱転写記録装置、LED素子を記録素子とする記録ヘッドを備えたLED電子写真プリンタ、LEDライン露光ヘッドを有する銀塩写真方式プリンタなど各種方式のカラー画像形成装置についても本発明を適用することが可能である。
【0071】
<付記>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0072】
(発明1):入力された画像データに基づいて当該画像データに対応した画像を記録媒体上に形成するワイドフォーマット対応の画像形成装置であって、前記記録媒体上に画像を形成する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを前記記録媒体に対して相対移動させる走査手段と、前記記録媒体上に形成される前記画像の観察距離を示す情報を入力する情報入力手段と、前記情報入力手段から入力された前記観察距離を示す情報に基づき、記録解像度、走査パス数、記録時の作画方向、キャリッジ速度、定着工程の条件のうち、少なくとも1つを含む出力条件を決定する出力条件設定手段と、前記出力条件設定手段によって設定された前記出力条件及び前記画像データにしたがって前記記録ヘッド及び前記走査手段の動作を制御することにより当該画像データに対応した画像を前記記録媒体上に形成する画像出力制御手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【0073】
「記録媒体」の形態は特に限定されず、連続用紙、カット紙、シール用紙、樹脂シート、フイルム、布、ゴム、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。
【0074】
「定着工程」の例として、乾燥工程、紫外線照射工程などがある。
【0075】
「情報入力手段」は、ユーザの入力操作を伴う手動入力の手段であってもよいし、情報読取センサなどを利用した自動入力の手段であってもよい。
【0076】
また、観察距離を示す情報としては、観察距離を表す距離情報であってもよいし、これと相関のある間接的な情報であってもよい。例えば、用途と観察距離には相関があるため、用途を入力して、対応するテーブルから観察距離に関する情報に置換してもよい。
【0077】
本発明において、出力条件設定手段にて決定する出力条件は、記録解像度、走査パス数、記録時の作画方向、キャリッジ速度、定着工程の条件のうち、少なくとも1つであればよいが、好ましくは、これらのうち2以上を組合せたものとする。
【0078】
(発明2):発明1に記載の画像形成装置において、前記画像データの画像種を特定する画像種特定手段を備え、前記出力条件設定手段は、前記画像種特定手段で特定した前記画像種と前記情報入力手段から入力された前記観察距離を示す情報とに基づき前記出力条件を決定することを特徴とする画像形成装置。
【0079】
「画像種特定手段」は、ユーザの入力操作を伴う手動入力の手段であってもよいし、画像解析ソフトなどを利用した自動判別の手段を用いてもよい。
【0080】
画像種と観察距離に応じて出力条件を決定する態様が好ましく、要求される画像品質と高い生産性の両方をバランスよく満たすことができる。
【0081】
(発明3):発明2に記載の画像形成装置において、前記画像種の分類として、低周波画像と高周波画像とに分けられることを特徴とする画像形成装置。
【0082】
低周波画像であるか高周波画像であるかによって、バンディング筋などの画像欠陥の目立ち方や画像品質(粒状性や解像力)が異なるため、画像データを考慮して最適な出力条件を判断する態様が好ましい。
【0083】
(発明4):発明2又は3に記載の画像形成装置において、前記出力条件設定手段は、前記画像データの画像種と前記観察距離を示す情報の組合せに応じて、記録解像度、走査パス数、記録時の作画方向、キャリッジ速度及び定着工程の条件を決定することを特徴とする画像形成装置。
【0084】
記録解像度、走査パス数、記録時の作画方向、キャリッジ速度及び定着工程の条件を全て組み合わせた設定を一括して決定する態様が好ましい。
【0085】
(発明5):発明1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記記録ヘッドとしてインクジェットヘッドが用いられ、前記情報入力手段は、使用するインクの種類及び前記記録媒体としての基材の情報を入力する手段を含み、前記出力条件設定手段は、前記使用するインクの種類及び前記基材の情報に応じて前記出力条件を決定することを特徴とする画像形成装置。
【0086】
本発明はワイドフォーマットインクジェットプリンタに適用することができる。この場合、使用するインクの種類や記録媒体の種類に応じて出力条件を決定する態様が好ましい。
【0087】
本発明に係る画像形成装置の一態様としてのインクジェット記録装置は、ドットを形成するためのインク液滴を吐出するためのノズル(吐出口)及び吐出圧を発生させる圧力発生素子(圧電アクチュエータや加熱発泡用の発熱体)を含む液滴吐出素子を高密度に多数配置した液体吐出ヘッド(記録ヘッド)を備えるとともに、入力画像から生成されたインク吐出用データ(ドット画像データ)に基づいて前記液体吐出ヘッドからの液滴の吐出を制御する吐出制御手段とを備え、ノズルから吐出した液滴によって記録媒体上に画像を形成する。
【0088】
例えば、画像入力手段を介して入力された画像データ(印字データ)に基づいて色変換やハーフトーニング処理が行われ、インク色に応じたインク吐出データが生成される。このインク吐出データに基づいて、液体吐出ヘッドの各ノズルに対応する圧力発生素子の駆動が制御され、ノズルからインク滴が吐出される。
【0089】
なお、インクジェット方式の記録ヘッドを用いてカラー画像を形成する場合は、複数色のインク(記録液)の色別に記録ヘッドを配置してもよいし、1つの記録ヘッドから複数色のインクを吐出可能な構成としてもよい。
【0090】
(発明6):発明5に記載の画像形成装置において、溶剤インク又は紫外線硬化型インクのいずれかを選択的に使用することができ、前記記録ヘッドは各ノズルに対応して設けられた圧電素子を駆動することによってインクを吐出させる構成であることを特徴とする画像形成装置。
【0091】
UVインクを使用する場合には、サーマルジェット方式よりもピエゾジェット方式が好ましい。
【0092】
(発明7):発明1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記観察距離が遠いほど、記録解像度を低く設定し、記録速度を高速化する設定が行われることを特徴とする画像形成装置。
【0093】
かかる態様によれば、生産性をできる限り高くするという要求を満たすことができる。
【0094】
(発明8):入力された画像データに基づいて当該画像データに対応した画像を記録媒体上に形成するワイドフォーマット対応の画像形成方法であって、前記記録媒体上に形成される前記画像の観察距離を示す情報を入力する情報入力工程と、前記情報入力工程で入力された前記観察距離を示す情報に基づき、記録解像度、走査パス数、記録時の作画方向、キャリッジ速度、定着工程の条件のうち、少なくとも1つを含む出力条件を決定する出力条件設定工程と、前記出力条件設定工程によって設定された前記出力条件及び前記画像データにしたがって記録ヘッド及び前記記録ヘッドを前記記録媒体に対して相対移動させる走査手段の動作を制御することにより当該画像データに対応した画像を前記記録媒体上に形成する画像出力制御工程と、を含むことを特徴とする画像形成方法。
【0095】
(発明9):発明8に記載の画像形成方法において、ネットワークに接続可能な通信機能を持つ端末装置から前記画像データをネットワーク経由でサーバに送り、前記サーバに保存されているデータを基に、前記画像データの画像種の判断を行い、当該判断結果をネットワーク経由で前記サーバから前記端末装置に送り、前記サーバから前記端末装置が取得した前記判断結果を含む情報に基づいて前記出力条件を決定することを特徴とする画像形成方法。
【符号の説明】
【0096】
21…装置本体、25…ヘッドユニット、29…ガイド機構、33…カートリッジ、71…制御装置、73…入力装置、77…表示装置、100…インクジェット記録装置、210…端末装置、222…サーバ、230…通信回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像データに基づいて当該画像データに対応した画像を記録媒体上に形成するワイドフォーマット対応の画像形成装置であって、
前記記録媒体上に画像を形成する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを前記記録媒体に対して相対移動させる走査手段と、
前記記録媒体上に形成される前記画像の観察距離を示す情報を入力する情報入力手段と、
前記情報入力手段から入力された前記観察距離を示す情報に基づき、記録解像度、走査パス数、記録時の作画方向、キャリッジ速度、定着工程の条件のうち、少なくとも1つを含む出力条件を決定する出力条件設定手段と、
前記出力条件設定手段によって設定された前記出力条件及び前記画像データにしたがって前記記録ヘッド及び前記走査手段の動作を制御することにより当該画像データに対応した画像を前記記録媒体上に形成する画像出力制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記画像データの画像種を特定する画像種特定手段を備え、
前記出力条件設定手段は、前記画像種特定手段で特定した前記画像種と前記情報入力手段から入力された前記観察距離を示す情報とに基づき前記出力条件を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において、
前記画像種の分類として、低周波画像と高周波画像とに分けられることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の画像形成装置において、
前記出力条件設定手段は、前記画像データの画像種と前記観察距離を示す情報の組合せに応じて、記録解像度、走査パス数、記録時の作画方向、キャリッジ速度及び定着工程の条件を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記記録ヘッドとしてインクジェットヘッドが用いられ、
前記情報入力手段は、使用するインクの種類及び前記記録媒体としての基材の情報を入力する手段を含み、
前記出力条件設定手段は、前記使用するインクの種類及び前記基材の情報に応じて前記出力条件を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、
溶剤インク又は紫外線硬化型インクのいずれかを選択的に使用することができ、前記記録ヘッドは各ノズルに対応して設けられた圧電素子を駆動することによってインクを吐出させる構成であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記観察距離が遠いほど、記録解像度を低く設定し、記録速度を高速化する設定が行われることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
入力された画像データに基づいて当該画像データに対応した画像を記録媒体上に形成するワイドフォーマット対応の画像形成方法であって、
前記記録媒体上に形成される前記画像の観察距離を示す情報を入力する情報入力工程と、
前記情報入力工程で入力された前記観察距離を示す情報に基づき、記録解像度、走査パス数、記録時の作画方向、キャリッジ速度、定着工程の条件のうち、少なくとも1つを含む出力条件を決定する出力条件設定工程と、
前記出力条件設定工程によって設定された前記出力条件及び前記画像データにしたがって記録ヘッド及び前記記録ヘッドを前記記録媒体に対して相対移動させる走査手段の動作を制御することにより当該画像データに対応した画像を前記記録媒体上に形成する画像出力制御工程と、
を含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の画像形成方法において、
ネットワークに接続可能な通信機能を持つ端末装置から前記画像データをネットワーク経由でサーバに送り、
前記サーバに保存されているデータを基に、前記画像データの画像種の判断を行い、
当該判断結果をネットワーク経由で前記サーバから前記端末装置に送り、
前記サーバから前記端末装置が取得した前記判断結果を含む情報に基づいて前記出力条件を決定することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−165038(P2010−165038A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4919(P2009−4919)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】