説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】本発明は、画像形成処理の動作中にインクやトナー等の記録材の残量が不足して動作を停止する場合でも画質レベルを維持して再開処理を行うことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】画像形成装置は、記録材の残量を検知するとともに検知した残量が所定の閾値より低い残量不足であるか判定する残量検知処理部21と、残量不足と判定された場合に画像形成処理を停止して停止時点における画像形成位置及び処理日時を保存するとともに停止位置から画像形成処理を再開する再開処理部22と、画像形成処理が再開された場合に処理日時から再開開始日時までの放置時間に基づいて画像データを補正する画像補正処理部23とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特にインク、トナー等の記録材の残量が不足して画像形成処理を停止する場合に適切に対応する画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置では、画像データに基づいてインクやトナーを用紙等の記録媒体に付着させて画像形成処理を行っている。そのため、インクやトナーの記録材の残量が不足してくると、画像形成処理を一旦停止して記録材の補充又は記録材を収容するカートリッジ等の容器の交換といった作業を行う必要がある。しかしながら、用紙に画像形成処理を行う動作中に残量不足が検知された場合に画像形成処理を中断すると、動作再開後に最初から画像形成処理を行うことになり、用紙に途中まで画像形成したものが無駄になってしまうことになる。
そのため、例えば、画像データの解像度や階調を減少させてインク等の使用量を節減して画像形成処理を継続したり、カラーインクを用いる場合には、黒色のインクがなくなると、他の色のインクを用いて擬似的に黒色を表出するように画像形成処理を行って動作を継続することが知られている。
【0003】
特許文献1には、印字ヘッド駆動中に保護カバーが開いたことを開閉検出部が検出し、電力遮断スイッチによって印字ヘッド部への電源が遮断されるため印字動作が停止したとき、印字を停止した箇所を記憶しておき、停止位置から印字を再開するための処理を行う画像形成装置が記載されている。また、特許文献2には、今回の出力原稿1枚分の必要インク量を色毎に算出すると共に、前回の出力原稿でのインク射出(および吐出)カウンタ値を受け取って色毎のインク残量を算出し、算出されたインク残量と必要インク量を色毎に比較し、インクの中で残量が必要量より少ないものがあった場合には適切な記録中止ラインを求めて印字するライン数を制限するように制御する記録装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像データの解像度や階調を減少させることは、画質劣化が生じるためユーザの要求する出力画像が得られないという問題がある。また、他の色のインクを用いて擬似的に黒色を得るようにすることは、配合に必要なインクがなくなると結局画像形成処理ができないという問題がある。
上述した特許文献1に記載された画像形成装置には、印字動作が停止した場合に停止位置から印字を再開するように処理することができるが、印字動作を停止した場合の影響を考慮した再開処理が行われておらず、再開処理において画質レベルを維持することができない、といった課題がある。同様に、特許文献2に記載された記録装置においても記録中止した後に記録動作を再開する際に画質レベルを維持することはなされていない。
【0005】
そこで、本発明は、画像形成処理の動作中にインクやトナー等の記録材の残量が不足して動作を停止した場合でも、画質レベルを維持して再開処理を行うことができる画像形成装置及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像形成装置は、画像データに基づいて記録材により画像形成処理を行う画像形成装置において、前記記録材の残量を検知するとともに検知した残量が所定の閾値より低い残量不足であるか判定する残量検知処理手段と、残量不足と判定された場合に画像形成処理を停止して停止時点における画像形成位置及び処理日時を保存するとともに当該画像形成位置から画像形成処理を再開する再開処理手段と、画像形成処理が再開された場合に前記処理日時から再開開始日時までの放置時間に基づいて画像データを補正する画像補正処理手段とを備えている。さらに、前記再開処理手段は、前記画像形成位置からの再開処理が選択された場合に処理を行う。さらに、前記再開処理手段は、前記放置時間に基づいてメンテナンス処理を行う。さらに、前記画像補正処理手段は、前記画像形成位置近傍の画像データを補正する。
【0007】
本発明に係る画像形成方法は、画像データに基づいて記録材により画像形成処理を行う画像形成方法において、前記記録材の残量を検知するとともに検知した残量が所定の閾値より低い残量不足であるか判定し、残量不足と判定された場合に画像形成処理を停止して停止時点における画像形成位置及び処理日時を保存するとともに当該画像形成位置から画像形成処理を再開し、画像形成処理が再開された場合に前記処理日時から再開開始日時までの放置時間に基づいて画像データを補正する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像形成処理の動作中にインクやトナー等の記録材の残量が不足して動作を停止する場合でも画質レベルを維持して再開処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置に関するブロック構成図である。
【図2】画像形成処理に関する処理フローである。
【図3】画像補正処理に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置に関するブロック構成図である。画像形成装置は、装置全体の動作制御を行う制御部10、原稿を読み取って画像データを生成する画像読取部11、利用者が操作してデータを入力するとともにメッセージ等を表示する操作表示部12、動作制御に必要なプログラム及び設定データ等を記憶するとともに画像形成に必要な画像データを記憶する記憶部13、記憶部13に記憶された画像データに基づいて画像形成処理を行う画像形成部14を備えている。
また、画像形成装置は、インターフェースとして機能する外部I/F部15を介して情報処理装置であるPC16と接続されている。そして、PC16からの指令に基づいて、PC16で作成された文書データ、画像データ等を受信して画像形成処理を行う。また、画像形成装置は、インターフェースとして機能する回線I/F部17を介して通信回線に接続されたFAX18との間で画像データ等の送受信を行い、受信した画像データ等を画像形成処理する。
【0011】
制御部10は、画像処理部20、残量検知処理部21、再開処理部22及び画像補正処理部23を備えている。画像処理部20は、画像読取部11から受信した画像データを処理して記憶部13に記憶する。画像処理としては、例えば、画像読取部11内の機械的なずれ等の補正処理、補正された画像データについてイメージ部分及びテキスト部分を分離する画像分離処理、色変換や総量規制等の中間調処理、及び、変倍、回転等の編集処理といった処理が行われる。
残量検知処理部21は、画像形成部14からのインク、トナー等の記録材の残量検知データを取得して、記録材の残量を監視する。残量検知データは、画像形成処理の要求がある毎に更新し、操作表示部12やPC16で確認できるように表示処理する。また、画像形成処理の動作中に残量検知データを監視して残量検知データが所定の閾値よりも低下すると、残量不足と判定して記録材を収容するカートリッジの交換を促すメッセージ等を操作表示部12に表示処理するとともに、再開処理部22において、動作を停止してカートリッジの交換を行い画像形成処理を再開する一連の再開処理を開始するよう指示する。
【0012】
再開処理部22は、記録材の残量不足により画像形成処理の動作が停止された後にカートリッジの交換を行って画像形成処理を再開する場合、用紙を再セットしてもう一度最初から画像形成処理を行うか、動作を停止した画像形成位置に戻り画像形成処理を行うか選択して再開処理を行う。停止位置に戻って再開する場合には、停止時点における画像形成位置及び処理日時のデータを記憶するように処理する。動作を停止した画像形成位置は、例えば、画像データを変換して記録データを画像形成部14に送信するデコーダに保存するようにすれば、画像形成処理を再開する場合にデコーダの動作を開始することで再開することができる。また、制御部10では、RTC(Real Time Clock)を備えており、装置の電源が切断された場合でも正確な日時情報を得ることができるようになっている。そのため、動作を停止した処理日時の正確な日時データを保存することができ、また、画像形成処理を再開した場合の開始日時についても正確に設定することができるので、停止日時から開始日時までの放置時間を正確に計測することができる。そして、インクジェットヘッドを用いて画像形成処理を行う場合には、放置時間の長さに基づいてインクジェットヘッドのメンテナンス処理を行うようにすることもできる。
画像補正処理部23は、動作を停止した位置に戻り画像形成処理を再開する場合に、後述するように、停止前の画像と再開後の画像とが違和感なく形成されるように画像データを補正処理する。画像データを補正処理する場合には、後述するように放置時間の長さによって画像補正が必要な場合に行うようにすることができる。
【0013】
画像形成部14は、制御部10から送信された記録データに基づいてインクジェットヘッドを駆動して用紙に画像形成処理を行う。画像形成部14には、インクジェットヘッドにインクを供給するためにインクカートリッジが装着されており、インクカートリッジに収容されているインクの残量を検知する残量検知センサ30が設けられている。そして、残量検知センサ30の検知信号が制御部10に送信されて残量検知処理部21に入力される。また、画像形成部14は、制御部10から送信された記録データに基づいて感光体ドラムに静電潜像を形成してトナーで現像し、現像化されたトナー像を用紙に転写して画像形成処理を行うようにすることもできる。この場合には、画像形成部14にトナーカートリッジが装着されており、トナーカートリッジに収容されているトナーの残量を検知する残量検知センサ30が設けられる。
【0014】
図2は、画像形成処理に関するフローである。画像形成処理が開始されると、残量検知処理部21により常時カートリッジに収容される記録材の残量の検知信号が監視され、残量が所定の閾値以上か、チェックされる(S100)。残量が所定の閾値以上である場合には(S100:YES)、画像形成処理が行われ(S101)、次の記録データがある場合には(S102:YES)ステップS100に戻り、次の記録データがない場合には(S102:NO)画像形成処理を終了する。
ステップS100において残量が閾値より減少すると(S100:NO)、画像形成処理の動作を停止し(S103)、停止位置から動作を再開するか判定する(S104)。この場合、利用者がPC16又は操作表示部12を操作して選択された結果により判定してもよいし、装置側で自動的に判定するようにしてもよい。例えば、1頁の半分以上記録している場合には、自動的に停止位置から再開するようにする。ステップS104において停止位置から再開しないと判定された場合には(S104:NO)、カートリッジの交換が行われて(S105)、用紙がセットされると(S106)、用紙の先頭から再度画像形成処理を開始する再開処理が行われる(S107)。
ステップS104において停止位置から再開すると判定された場合には(S104:YES)、停止時点における画像形成位置及び処理日時に関するデータを保存し(S108)、カートリッジの交換が行われて(S109)、停止位置から画像形成処理を開始する再開処理が行われる(S110)。まず、動作停止によるメンテナンス処理が行われ(S111)、停止前に用紙に画像形成された画像と再開後の画像とが違和感なく画像形成されるように画像データの補正処理が行われて(S112)、動作停止による画質劣化が生じることなく画像形成処理を行われるようになる。
【0015】
ステップS111におけるメンテナンス処理では、動作の停止日時から再開処理を開始する日時までの放置時間に基づいてメンテナンスの内容を決定することができる。例えば、インクジェットヘッドにより画像形成処理する装置では、放置時間が3時間以内であると判定された場合には、インクジェットヘッドを停止位置に設定したままで吐出ノズルのインク詰り防止のための微振動を加えるようにメンテナンス処理を行う。また、放置時間が3時間を超えると、インクジェットヘッドを一旦ホームポジションに戻し、インク詰り防止のために吐出ノズルの空吐出動作を行うメンテナンス処理を行う。メンテナンス処理によりホームポジションにインクジェットヘッドを戻していた場合には、インクジェットヘッドを停止位置に移動させて画像形成処理を再開するように処理する。
ステップS112における画像補正処理では、放置時間により補正処理を行うか否か判定する。例えば、インクジェットヘッドにより画像形成処理する装置では、放置時間が0.2時間以内の場合には、停止前に画像形成したインクが十分乾燥しておらず再開後に画像形成したインクの滲みが生じる状態であるとして画像補正処理を行い、放置時間が0.2時間を超えた場合には停止前のインクが十分乾燥して再開後に画像形成したインクの滲みが生じない状態であるとして画像補正処理を行わない、といったように判定する。
【0016】
また、出力画像の色に基づいて補正処理を行うか否か判定することもできる。例えば、カラー画像の場合には補正処理を行い、白黒画像の場合には補正処理を行わない、といったように判定する。また、出力画像の解像度に基づいて補正処理を行うか否か判定することもできる。例えば、出力画像の解像度が600dpiより低い場合には補正処理を行わず、600dpi以上の場合には補正処理を行う、といったように判定する。カラー画像や高解像度の画像の場合には、停止前の出力画像と再開後の出力画像との間の違いが目立ちやすいので、停止前と再開後との間で画質を維持するように画像補正処理を行う。
また、画像データのページ内イメージデータ率に基づいて補正処理を行うか否か判定することもできる。例えば、画像処理部20において画像データのテキスト部分及びイメージ部分を分離処理する際にイメージデータの割合を算出して記憶部13に保存しておき、保存されたイメージデータの割合が50%より小さい場合には補正処理を行わず、50%以上の場合に補正処理を行う、といったように判定する。また、動作を停止した画像形成位置近傍における画像データのイメージデータ率に基づいて補正処理を行うか否か判定することもできる。例えば、記憶部13に記憶されている画像データについて停止位置付近のデータをブロック単位(例;3×3ドット又は8×8ドットのブロック)で抽出してイメージデータ率を算出し、イメージデータ率が40%より小さい場合には補正処理を行わず、40%以上の場合には補正処理を行う、といったように判定する。イメージデータの割合が高い場合には、停止前の出力画像と再開後の出力画像との間の違いが目立ちやすくなるので、画質を維持するように画像補正処理を行う。
【0017】
また、環境負荷を低減するために記録材の使用量の節減等の処理を行うエコモードが選択されている場合には、もともと画質を問わない画像形成処理が行われているので、自動的に補正処理を行うようにすればよい。例えば、解像度を600dpiから300dpiに低下させたり、中間階調に関するデータを2bit/dotから1bit/dotに粗く設定したり、黒色を他の色を混合して擬似的に黒色を表出するように画像形成処理を行う、といったように補正処理を行う。
以上のような画像補正処理を行うか否かの判定条件は、適宜優先順位を付けて順次判定処理すればよい。例えば、画像形成装置の環境負荷の低減を考慮する場合には、エコモードに対応する補正処理(解像度の低下、中間階調の粗化)を最優先の判定条件とする。
【0018】
図3は、画像補正処理に関する説明図である。この例では、インクジェットヘッドによる画像形成処理の場合におけるインクの滲みを考慮した画像補正処理を行う。停止日時からの放置時間が長くなると、インクが乾燥するため停止前に生じていたインクの滲みや混色が発生しないことから、再開後の画像形成処理では擬似的にインクの滲みや混色が生じやすくなるように画像補正処理を行う。
インクの残量不足による動作停止がない場合には、図3(a)に示すように、ブラックの小滴B、イエローの中滴Y、マゼンタの中滴Mを2滴順次吐出して画像形成が行われる。この場合、マゼンタのインクの残量不足が検知されてイエローの中滴Yが吐出された時点で動作が停止する。そして、停止した状態で放置時間が長いと、インクが完全に乾燥した状態となるため、再開時には停止前と同様の擬似的なインクの滲みと混色を発生させる必要がある。そのため、図3(b)に示すように、再開時にはイエローの小滴y1及びy2をまず吐出した後マゼンタの大滴M’を吐出して擬似的にインクの滲みと混色を生じさせた後マゼンタの中滴Mを吐出して通常の画像形成を行う。
このように、停止前に吐出した最終のインクと同じ色で一段小さなサイズのインク滴を再開時に吐出することで滲みを生じさせ、次のインクを一段大きなサイズのインク滴を吐出してインクをなじませることができる。このように、動作を停止した画像形成装置の近傍において、インクの特性に応じてインクの色毎の重ね順や液滴サイズを変更するように画像補正処理を行うことで、動作の停止による画質の変化を抑えることができる。以上のように、画像データを補正処理して動作停止による画質の変化を抑えて画質を維持することができる。
【符号の説明】
【0019】
10・・・制御部、11・・・画像読取部、12・・・操作表示部、13・・・記憶部、14・・・画像形成部、15・・・外部I/F部、16・・・PC、17・・・回線I/F部、18・・・FAX。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2006−205530号公報
【特許文献2】特開平10−166622号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて記録材により画像形成処理を行う画像形成装置において、前記記録材の残量を検知するとともに検知した残量が所定の閾値より低い残量不足であるか判定する残量検知処理手段と、残量不足と判定された場合に画像形成処理を停止して停止時点における画像形成位置及び処理日時を保存するとともに当該画像形成位置から画像形成処理を再開する再開処理手段と、画像形成処理が再開された場合に前記処理日時から再開開始日時までの放置時間に基づいて画像データを補正する画像補正処理手段とを備えている画像形成装置。
【請求項2】
前記再開処理手段は、前記画像形成位置からの再開処理が選択された場合に処理を行う請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記再開処理手段は、前記放置時間に基づいてメンテナンス処理を行う請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像補正処理手段は、前記画像形成位置近傍の画像データを補正する請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像データに基づいて記録材により画像形成処理を行う画像形成方法において、前記記録材の残量を検知するとともに検知した残量が所定の閾値より低い残量不足であるか判定し、残量不足と判定された場合に画像形成処理を停止して停止時点における画像形成位置及び処理日時を保存するとともに当該画像形成位置から画像形成処理を再開し、画像形成処理が再開された場合に前記処理日時から再開開始日時までの放置時間に基づいて画像データを補正する画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−171287(P2012−171287A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37270(P2011−37270)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】