説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】トナーの耐熱保存性を維持しつつ、低温定着を行うことができる画像形成装置及び画像形成方法を提供する。
【解決手段】像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像をトナーを用いて現像しトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写されたトナー像を加熱する加熱手段と前記加熱されたトナー像を加圧する加圧手段とを有し前記記録媒体に該トナー像を定着させる定着手段とを備えた画像形成装置において、前記トナーは、樹脂及び該樹脂を軟化させる可塑剤を少なくとも含むコア粒子と、該コア粒子を被覆する被覆層とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ、複写機などの画像形成装置及び前記画像形成装置で用いられる画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ及び複写装置のような画像形成装置は、紙、布、及びOHP用シートのような記録媒体に、画像情報に基づいて文字や記号を含む画像を形成する装置である。画像形成装置には種々の方式があるが、像担持体である感光体上に形成されたトナー像を直接または中間転写体を介して記録媒体に転写した後、記録媒体上に定着させる電子写真方式の画像形成装置が知られている。この電子写真方式の画像形成装置は、普通紙に高精細な画像を高速で形成することができるため、広くオフィスで使用されている。また、このような電子写真方式の画像形成装置としては、定着装置により記録媒体上のトナーを120[℃]〜160[℃]で加熱して軟化あるいは溶融させ、軟化等させたトナーを加圧し記録媒体にトナーをアンカリングすることによって、トナーを記録媒体上に定着させる熱定着方式が広く普及している。
【0003】
このような熱定着方式を採用した電子写真方式の画像形成装置における消費電力の半分以上は、熱定着方式の定着装置においてトナーを加熱処理のために消費されている。一方、近年における環境問題対策の観点からは、消費電力を抑えて省エネルギー化を図れる画像形成装置が望まれている。このため、従来の画像形成装置における消費電力の半分以上を消費する定着装置での省エネルギー化が求められている。従来の熱定着方式の定着装置では加熱処理に多くの電力を消費していたため、トナーを定着するためにトナーを加熱する温度を今までよりも極端に低下させる定着方式が望まれている。
【0004】
特許文献1に記載の画像形成装置では、樹脂及び常温で固体状の可塑剤を含有したトナーを用いている。この画像形成装置では、定着装置に搬送された記録媒体上のトナー像が、内部に加熱手段であるヒータが設けられた加熱ローラと加圧ローラとで形成される圧接部であるニップ部を通過したときに加熱されつつ加圧される。前記可塑剤は、ヒータによって融点温度まで加熱され溶解し樹脂に拡散していく。このように可塑剤が樹脂に拡散することで、従来よりも低温の加熱温度で樹脂が可塑化(軟化)し、それに伴ってトナーが軟化する。そして、このように軟化したトナーがニップ部で加圧され記録媒体にアンカリングすることにより、記録媒体にトナー像が定着される。これにより、熱だけで樹脂を軟化させる場合よりも定着装置で記録媒体にトナー像を定着するためにトナーを加熱する温度を今までよりも極端に低下させることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現像装置内では攪拌搬送されるトナー同士の摩擦などによる摩擦熱でトナーの温度が上がり、現像装置内でトナーの温度が50[℃]近い温度になる虞がある。そのため、単に可塑剤を用いて樹脂の可塑化させトナーとしてのガラス転移温度(軟化点)を例えば40[℃]〜50[℃]程度まで下げると、トナーの耐熱性が低下し現像装置内でトナーが軟化して、トナー同士が融着する所謂ブロッキングが生じるなど、トナーの耐熱保存性が悪化するといった問題が生じる。また、このようにトナーの耐熱保存性が悪化すると、トナーが感光体表面にフィルミングしやすくなったり、現像剤としてトナーとキャリアとを有する二成分現像剤を用いた場合にはトナーがキャリアに融着する所謂トナースペントが発生したりしてしまう。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、トナーの耐熱保存性を維持しつつ、低温定着を行うことができる画像形成装置及び画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像をトナーを用いて現像しトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写されたトナー像を加熱する加熱手段と前記加熱されたトナー像を加圧する加圧手段とを有し前記記録媒体に該トナー像を定着させる定着手段とを備えた画像形成装置において、前記トナーは、樹脂及び該樹脂を軟化させる可塑剤を少なくとも含むコア粒子と、該コア粒子を被覆する被覆層とからなることを特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、樹脂及び前記樹脂を軟化させる可塑剤を少なくとも含むコア粒子が被覆層で被覆されているので、コア粒子の樹脂が可塑剤によって可塑化(軟化)しても、その可塑化した樹脂が被覆層内に閉じ込められる。これにより、現像手段内で樹脂が可塑化(軟化)しても被覆層によってトナー同士が融着することなどを抑えられ、ブロッキングなどが生じるのを抑制することができる。よって、トナーの耐熱保存性が悪化するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上、本発明によれば、トナーの耐熱保存性を維持しつつ、低温定着を行うことができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】コア−シェル構造をもつトナーの断面図。
【図2】本実施形態の定着装置を備えた画像形成装置の構成を示す概略構成図。
【図3】画像形成装置の1つの画像形成ユニットの構成を示す概略構成図。
【図4】評価に用いた定着装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した画像形成方法および画像形成装置の実施形態について説明する。
【0012】
図2は本実施形態の定着装置を備えた画像形成装置の構成を示す概略構成図である。同図に示す画像形成装置は複写機又はプリンタ、それらの機能の複合機であってもよい。図3は図2に示した画像形成装置の1つの画像形成ユニット105の構成を示す概略構成図である。
【0013】
画像形成ユニット105Y,105M,105C,105Kには、像担持体である感光体ドラム116Y,116M,116C,116Kの周辺に、帯電装置117Y,117M,117C,117K、現像装置118Y,118M,118C,118K、クリーニング装置119Y,119M,119C,119K及び除電装置120Y,120M,120C,120Kが配置されている。
【0014】
帯電装置117Y,117M,117C,117Kは、帯電ローラを採用した接触帯電方式の帯電装置である。帯電装置117Y,117M,117C,117Kは、帯電ローラを感光体ドラム116Y,116M,116C,116Kに接触させて、感光体ドラム116Y,116M,116C,116Kに電圧を印加することにより、感光体ドラム116Y,116M,116C,116Kの表面を一様に帯電する。この帯電装置117Y,117M,117C,117Kとしては、非接触のスコロトロン等を採用した非接触帯電方式の帯電装置を採用することもできる。
【0015】
また、画像形成ユニット105Y,105M,105C,105Kの現像装置118Y,118M,118C,118Kは、トナーとキャリアとを有する二成分現像剤中のトナーを感光体ドラム116Y,116M,116C,116K上の静電潜像に付着させ、静電潜像を可視化させる。なお、現像剤としては、トナーを主成分とする一成分現像剤を用いることもできる。
【0016】
さらに、現像装置118Y,118M,118C,118Kは、図示しない攪拌部及び現像部を有し、現像に使用されなかった現像剤は攪拌部に戻され再利用される。攪拌部におけるトナーの濃度はトナー濃度センサによって検出され、トナーの濃度が一定であるように制御されている。
【0017】
また、クリーニング装置119Y,119M,119C,119Kは、感光体ドラム116Y,116M,116C,116K上の不要なトナーを除去する。クリーニング装置119Y,119M,119C,119Kとしては、感光体ドラム116Y,116M,116C,116Kに押し当てられる先端を備えたブレードを用いることができる。ここで、クリーニング装置119Y,119M,119C,119Kによって回収されたトナーは、図示しない回収スクリュー及びトナーリサイクル装置によって、現像装置118Y,118M,118C,118Kに回収され、再利用される。
【0018】
除電装置120Y,120M,120C,120Kはランプで構成されており、光を照射して感光体ドラム116Y,116M,116C,116Kの表面電位を初期化する。
【0019】
画像形成ユニット105Y,105M,105C,105Kの上方には、各色の画像信号に応じたレーザ光Ly,Lm,Lc,Lkを照射する露光装置(図示せず)が設けられている。例えば、画像形成装置が複写機である場合には、スキャナで原稿の画像情報を読み込み、この画像情報に応じて、各感光体ドラム116Y,116M,116C,116K上に静電潜像を書き込むための各色の露光Ly,Lm,Lc,Lkが露光装置により照射される。
【0020】
一方、画像形成ユニット105Y,105M,105C,105Kの下方には、中間転写体として中間転写ベルト101が、3つの支持ローラ102,103,104に張架され図中の矢印A方向に回転可能に設けられている。なお、画像形成ユニット105Y,105M,105C,105Kは中間転写ベルト101に沿って配列されている。
【0021】
また、画像形成ユニット105Y,105M,105C,105Kの感光体ドラム116Y,116M,116C,116Kに中間転写ベルト101を介して対向する位置に、一次転写装置121Y,121M,121C,121Kが設けられている。
【0022】
一次転写装置121Y,121M,121C,121Kは、感光体ドラム116Y,116M,116C,116K上で可視化されたトナー像を中間転写ベルト101に転写する。本実施形態では、一次転写装置121Y,121M,121C,121Kとして転写ローラを採用しており、転写ローラを中間転写ベルト101を挟んで感光体ドラム116Y,116M,116C,116Kに押し当てている。なお、一次転写装置121Y,121M,121C,121Kとしては、導電性ブラシ、非接触のコロナチャージャー等を採用することもできる。
【0023】
中間転写ベルト101を挟んで中間転写ベルト101の支持ローラ104に対向する位置には、二次転写装置109が設けられている。二次転写装置109は、2つの支持ローラ110,111の間に張架された二次転写ベルト112で構成されている。なお、二次転写装置109としては、転写ベルト以外に転写ローラを用いてもよい。
【0024】
そして、二次転写ベルト112を中間転写ベルト101に押し当てることによって形成された二次転写部に、搬送ローラ対115によって記録媒体としての記録紙114を送り込んで、二次転写装置109により中間転写ベルト101上から記録紙114にトナー像の転写を行う。
【0025】
また、中間転写ベルト101を挟んで中間転写ベルト101の支持ローラ102に対向する位置には、ベルトクリーニング装置113が配置されている。このベルトクリーニング装置113は、二次転写装置109によって中間転写ベルト101上から記録紙114に転写した後、中間転写ベルト101上に残留するトナーなどを除去するために配置されている。
【0026】
トナー像が転写された記録紙114は、二次転写ベルト112によって定着装置1に搬送される。定着装置1は、第一回転体である加熱ローラ10と第二回転体である加圧ローラ11とを有している。加熱ローラ10の内部には図示しない熱源が設けられており、加熱ローラ10が記録紙114上のトナー像を加熱する加熱手段として機能する。そして、加熱ローラ10と加圧ローラ11とを圧接させて圧接部である定着部を形成し、定着部で記録紙114を挟み込んで記録紙114上のトナー像を加熱及び加圧することで、記録紙114に転写された未定着のトナー像を加熱変形させて記録紙114に定着させる。
【0027】
ここで、従来より、定着装置での省エネルギー化を図れるようトナーの低温定着性を達成するために、例えば、軟化点の低い結着樹脂を用いる方法が知られている。しかし、結着樹脂の軟化点が低いとトナーの耐熱性が低下し、特に高温環境下においてトナー同士が融着する所謂ブロッキングが発生する。また、現像装置内においてもトナーが現像装置の各種部材やキャリアに融着して汚染するトナースペントや、トナーが感光体ドラム116表面にフィルミングしやすくなるといった問題が生じる。
【0028】
また、特許文献2では、トナー中に弾性を有する環化ゴムとその環化ゴムの可塑剤であるワックスとを含有する技術が提案されている。この提案の技術では、トナーの低温軟化を達成しながら、耐熱保存性と耐ホットオフセット性を得ることを目的としている。しかしながら、この提案の技術は、60[℃]程度の低温で定着させようとすると、トナースペントの抑制とトナーフィルミングの抑制とを両立させることができないという問題がある。
【0029】
<トナーの説明>
図1にコア−シェル構造をもつトナー50の断面図を示す。
本実施形態に係る画像形成装置の画像形成方法で用いられるトナー50は、着色剤と、結着樹脂と、結着樹脂を可塑化(軟化)する可塑剤とを少なくとも含有するコア粒子51と、このコア粒子51を被覆するシェル層52からなるコア−シェル構造をしている。
【0030】
シェル層52は、コア粒子51を完全に覆いつくしていることが現像装置118内などでのトナーの耐熱保存性の点から望ましい。しかしながら、シェル層52によってコア粒子51が完全に被覆されていなくても、コア粒子51を構成する材料がシェル層52から滲み出しトナー50が凝集するブロッキングなどの問題が発生しないのであればそれでも良い。コア粒子51は、耐熱保存性の点から常温で固体であることが好ましい。
【0031】
なおトナーは、上述のように説明した材料の他に、必要に応じて磁性体、帯電制御剤、外添剤、ワックス、無機微粒子、その他の成分を含有してもよい。
【0032】
結着樹脂としては、熱可塑性樹脂、特に熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとして、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルが適する。ソフトセグメントとしては、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアルキルアクリレート、ポリ酢酸ビニルなどが適する。ハードセグメントとソフトセグメントの重量比は、1:9〜6:4程度までが適する。1:9よりもハードセグメント割合が下がるとトナーに粘着性が常時でてしまう。6:4よりもハードセグメント割合が高いと硬くなりすぎて、定着に必要な軟化が確保できなくなる。融点が40[℃]〜70[℃]の範囲にある熱可塑性樹脂が好ましい。
【0033】
可塑剤としては、前記結着樹脂を可塑化する材料であれば特に制限はないが、結着樹脂より低融点の材料のほうが、定着工程における変形応答時間を短縮できる、すなわち印刷速度を向上できる点から望ましい。前記可塑剤としては、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル等の可塑剤が一般的であるが、耐久性が要求される用途にはポリエステル系可塑剤が利用される。
【0034】
着色剤としては特に制限はなく、通常使用される顔料を適宜選択して使用することができる。例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物、などが挙げられる。
【0035】
シェル層52はコア粒子51を構成する材料と非相溶性の樹脂からなり、その融点は、耐熱保存性の点から60[℃]〜100[℃]の範囲にあることが好ましい。
【0036】
シェル層52の厚みは、厚くすれば耐熱保存性は向上するが、シェル層52を破壊するために高い圧力が必要になり、定着装置が大型化、重量化してしまう。一般的なオフィス内で使用するデスクトップタイプやフロアタイプの複写機やプリンタを想定した場合の定着部の大きさや重さを重視すると、定着部にかけられる圧力はせいぜい5[MPa]以下、望ましくは1[MPa]以下である。一方、画像形成装置機内でトナーに摩擦が生じる場合の圧力は0.5[MPa]以下と推定される。
【0037】
したがって、シェル層52の厚みは0.5[MPa]程度では破壊されず、1[MPa]以上で破壊されるように設計する必要がある。トナー50に粒径にもよるが、例えばトナー粒径が5[μm]〜10[μm]の場合では、シェル層52の厚みは100[nm]〜300[nm]が好ましい。
【0038】
ここで、特許文献3では、コア−シェル構造をもつトナーを用いているが、定着時にトナーを熱によって軟化させず圧力によって塑性変形させて記録媒体に定着する圧力定着方式の技術が提案されている。しかしながら、熱によってトナーを十分に軟化させないため、トナーを記録媒体に定着させるときに高い圧力(例えば5[MPa]〜10[MPa])が必要になり、装置が大型化や重量化することで製造コストがかさんでしまう。また、記録媒体として紙を用いる場合には、高い圧力でトナーを加圧して紙に定着させるため、紙にシワがよったりちぎれたりするなど紙がダメージを受けやすくなってしまう。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のコア−シェル構造のトナーを用いることによって、シェル層52で耐熱性に要求される圧力および熱からトナーを保護することができる。また、定着工程においては、加熱ローラ10によってコア粒子51を溶融し、加圧ローラ11によってシェル層52の破壊およびコア粒子51をフィルム化するので、従来と比べて低温定着が可能になる。したがって、従来の方法よりも定着温度を低減でき、かつ耐熱性とを両立する画像形成方法となる。
【0040】
[実施例1]
<定着性評価>
本実施形態の画像形成装置で用いる画像形成方法について、定着性と耐熱性について評価した。トナーおよび定着条件は以下に記すとおりである。なお、現像剤としては、トナーとキャリアとを有する二成分現像剤を用いた。
【0041】
・結着樹脂:塩化ビニル系樹脂
・可塑剤:ポリエステル形系樹脂
・可塑剤含有量:10[wt%]
・シェル層:スチレン−アクリル樹脂
・着色剤:銅フタロシアニン
・外添剤:疎水性シリカ微粒子
・評価画像:5[cm]角のベタ画像
・定着部での加圧ローラ面圧:1[MPa]
・加熱ローラ表面温度:40[℃]〜120[℃]
・ニップ時間:30[ms]
・記録媒体:PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルム(100[μm]厚)
【0042】
図4に、評価に用いた定着装置の概略図を示す。図の左側から表面に未定着トナー層が形成された記録媒体を、回転する加熱ローラ10及び加熱ローラに対向する加圧ローラ11との間に通し定着画像を形成した。
【0043】
<定着性評価>
定着させたトナー面をウエスでこすった後の画像濃度を反射濃度計で測定した。反射濃度が1以下を「×」、1〜1.2を「△」、1.2以上を「○」とした。
【0044】
<耐熱試験>
針入度試験器(日科エンジニアリング社製)を用いて耐熱試験を行った。試験は、トナー10[g]を20[℃]〜25[℃]、40[%]〜60[%]RHの環境下で30[ml]のガラス容器に入れフタを閉めた後、100回タッピングを行う。つぎに、このガラス容器を恒温槽に入れ、50[℃]で24時間加熱する。この後、ガラス容器中のトナーの針入度を測定する。耐熱性に優れたトナーであれば、加熱後においても固まらないので針が深く入り、そうでない場合は固まってしまって針が入っていかないので、針の入り具合によってトナー耐熱性を判断できる。
【0045】
実施例1の評価結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
定着性については、加熱ローラ温度が60[℃]〜100[℃]の範囲で良好な定着性が得られた。ローラ温度が低いとトナーの変形が少ないため十分にフィルム化しない。また120[℃]では、オフセットが発生したため、画像濃度が低下した。一方、トナーの耐熱性は、針入度が21[mm]となり、感光体ドラム116表面へのトナーフィルミング化や、トナーがキャリアに融着する所謂トナースペントも発生しておらず、良好な耐熱試験結果が得られた。
【0048】
加熱ローラ10の温度範囲が60[℃]〜100[℃]の場合、低温定着性および耐熱性が両立することを確認した。
【0049】
[実施例2]
実施例2では、定着性のローラ面圧依存性について評価した。実験条件は定着部での加圧ローラ11の面圧を変化させた以外は実施例1と同一である。
【0050】
・結着樹脂:塩化ビニル系樹脂
・可塑剤:ポリエステル形系樹脂
・可塑剤含有量:10[wt%]
・シェル層:スチレン−アクリル樹脂
・着色剤:銅フタロシアニン
・外添剤:疎水性シリカ微粒子
・評価画像:5[cm]角のベタ画像
・定着部での加圧ローラ面圧:0.3[MPa]〜1.5[MPa]
・加熱ローラ表面温度:80[℃]
・ニップ時間:30[ms]
・記録媒体:PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルム(100[μm]厚)
【0051】
評価結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
定着部での加圧ローラ11の面圧が高いと、定着後のトナー層の厚みが薄くなり、十分な画像濃度が得られなかった。この結果から、定着部での加圧ローラ11の面圧は、0.5[MPa]〜1[MPa]の範囲にあることが好ましい。
【0054】
[実施例3]
実施例3では、定着性と耐熱性の可塑剤含有量依存性について評価した。実験条件は、可塑剤含有量を変化させた以外は実施例1と同一である。
【0055】
・結着樹脂:塩化ビニル系樹脂
・可塑剤:ポリエステル形系樹脂
・可塑剤含有量:0[wt%]〜25[wt%]
・シェル層:スチレン−アクリル樹脂
・着色剤:銅フタロシアニン
・外添剤:疎水性シリカ微粒子
・評価画像:5[cm]角のベタ画像
・定着部での加圧ローラ面圧:1[MPa]
・加熱ローラ表面温度:80[℃]
・ニップ時間:30[ms]
・記録媒体:PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルム(100[μm]厚)
【0056】
評価結果を表3に示す。
【0057】
【表3】

【0058】
可塑剤の含有量が5[wt%]以下ではトナーが十分に変形せず、十分な定着性が得られなかったが、10[wt%]以上であれば1[MPa]、80[℃]の定着条件において十分に変形し、定着することを確認した。
【0059】
耐熱試験については、可塑剤の含有率0[wt%]〜20[wt%]のトナーは良好な耐熱試験結果が得られた。しかし、可塑剤の含有量25[wt%]のトナーは、針入度は6[mm]となり耐熱試験不合格であった。
【0060】
これらの結果から、可塑剤の含有率としては、10[wt%]〜20[wt%]の範囲であれば、低温定着性と耐熱保存性を両立できることを確認した。
【0061】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
感光体ドラム116などの像担持体上に潜像を形成する露光装置などの潜像形成手段と、前記潜像をトナーを用いて現像しトナー像を形成する現像装置118などの現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する一次転写装置121や二次転写装置109などの転写手段と、前記記録媒体に転写されたトナー像を加熱する加熱手段と前記加熱されたトナー像を加圧する加圧手段とを有し前記記録媒体にトナー像を定着させる定着装置1などの定着手段とを備えた画像形成装置において、トナー50などの前記トナーは、樹脂及び前記樹脂を軟化させる可塑剤を少なくとも含むコア粒子51などのコア粒子と、コア粒子を被覆するシェル層52などの被覆層とからなる。これによれば、上記実施形態について説明したように、トナーの耐熱保存性を維持しつつ、低温定着を行うことができる。
(態様B)
(態様A)において、上記加熱手段は加熱ローラ10などの加熱ローラであり、加熱ローラの表面温度が60[℃]〜100[℃]である。これによれば、上記実施形態について説明したように、低温定着性および耐熱性が両立することができる。
(態様C)
(態様A)または(態様B)において、上記加圧手段は加熱ローラ10などの第一回転体と加圧ローラ11などの第二回転体とを有し第一回転体と第二回転体とを圧接させて定着部などの圧接部を形成し、圧接部で記録媒体を挟み込んで記録媒体上のトナー像を加圧するものであり、圧接部での面圧(圧接部での加圧ローラ面圧)が0.5[MPa]〜1[MPa]であるのが望ましい。
(態様D)
(態様A)、(態様B)または(態様C)において、上記コア粒子の上記可塑剤の含有量が10[wt%]〜20[wt%]である。これによれば、上記実施形態について説明したように、低温定着性と耐熱保存性を両立することができる。
(態様E)
(態様A)、(態様B)、(態様C)または(態様D)において、上記コア粒子が常温で固体である。これによれば、上記実施形態について説明したように、耐熱保存性を得ることができる。
(態様F)
像担持体上に潜像を形成する潜像形成工程と、前記潜像をトナーを用いて現像しトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写されたトナー像を加熱手段により加熱し、前記加熱されたトナー像を加圧手段により加圧して前記記録媒体に定着させる定着工程とを有する画像形成方法において、前記トナーは、樹脂及び該樹脂を軟化させる可塑剤を少なくとも含むコア粒子と、該コア粒子を被覆する被覆層とからなる。これよれば、上記実施形態について説明したように、トナーの耐熱保存性を維持しつつ、低温定着を行うことができる。
【符号の説明】
【0062】
1 定着装置
10 加熱ローラ
11 加圧ローラ
50 トナー
51 コア粒子
52 シェル層
101 中間転写ベルト
102 支持ローラ
103 支持ローラ
104 支持ローラ
105 画像形成ユニット
109 二次転写装置
110 支持ローラ
111 支持ローラ
112 二次転写ベルト
113 ベルトクリーニング装置
114 記録紙
115 搬送ローラ対
116 感光体ドラム
117 帯電装置
118 現像装置
119 クリーニング装置
120 除電装置
121 一次転写装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特許第436534号公報
【特許文献2】特開2002−221825号公報
【特許文献3】特開2010−191197号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像をトナーを用いて現像しトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写されたトナー像を加熱する加熱手段と前記加熱されたトナー像を加圧する加圧手段とを有し前記記録媒体に該トナー像を定着させる定着手段とを備えた画像形成装置において、
前記トナーは、樹脂及び該樹脂を軟化させる可塑剤を少なくとも含むコア粒子と、該コア粒子を被覆する被覆層とからなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記加熱手段は加熱ローラであり、該加熱ローラの表面温度が60[℃]〜100[℃]であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2の画像形成装置において、
上記加圧手段は第一回転体と第二回転体とを有し該第一回転体と該第二回転体とを圧接させて圧接部を形成し、該圧接部で記録媒体を挟み込んで該記録媒体上のトナー像を加圧するものであり、
前記圧接部での面圧が0.5[MPa]〜1[MPa]であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1、2または3の画像形成装置において、
上記コア粒子の上記可塑剤の含有量が10[wt%]〜20[wt%]であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1、2、3または4の画像形成装置において、
上記コア粒子が常温で固体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
像担持体上に潜像を形成する潜像形成工程と、
前記潜像をトナーを用いて現像しトナー像を形成する現像工程と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、
前記記録媒体に転写されたトナー像を加熱手段により加熱し、前記加熱されたトナー像を加圧手段により加圧して前記記録媒体に定着させる定着工程とを有する画像形成方法において、
前記トナーは、樹脂及び該樹脂を軟化させる可塑剤を少なくとも含むコア粒子と、該コア粒子を被覆する被覆層とからなることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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