説明

画像形成装置及び画像形成装置の制御方法

【課題】画像形成装置において、簡単な構成によって、印刷物が排紙部から間違って取り出されることを防止する。
【解決手段】複合機1において、制御部3は、印刷実行者から入力された認証情報に基づいて、個人認証を行う。セキュリティ排紙部15は、印刷物が搬入され、外部から印刷物を取り出し可能な第1状態と、取り出し不能な第2状態との間で状態が移行可能である。印刷履歴記憶部27は、印刷実行者に関連する印刷情報を含む印刷履歴を記憶する。制御部3は、入力された認証情報及び印刷履歴に基づいて、セキュリティ排紙部15を第2状態から第1状態に移行させる。エンプティ・センサ39は、セキュリティ排紙部15における印刷物の有無を検出する。制御部3は、入力された認証情報、印刷履歴、及び第2状態から第1状態に移行した後におけるセキュリティ排紙部15での印刷物の有無に基づいて、セキュリティ排紙部15の状況について通知を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及びその制御方法、特に、施錠可能な排紙部を有する画像形成装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置における情報漏洩は、例えば、自分の印刷物を排紙部から取り忘れること、又は他人の印刷物を排紙部から間違えて若しくは故意に取り出すことによって生じる。そこで、従来の画像形成装置には、情報漏洩を防止するために、複数の個人用ビンを設けた用紙仕分け装置を設けたものが知られている。用紙仕分け装置では、印刷物はそれぞれ個人用ビンに排紙される。さらに、個人用ビンには施錠手段が設けられており、施錠手段は印刷実行者がパスワードを入力することで解除可能となっている。このようにして、印刷物が間違って取り出されることが防止されている(特許文献1を参照。)。
【0003】
特許文献1に開示された用紙仕分け装置は、施錠手段付きの個人用ビンの他に施錠手段付きの共用ビンを有しており、各個人用ビンが満杯の場合は、共用ビンに印刷実行者に該当する宛先を表示させるとともに共用ビンに文書が排紙される。そして、共用ビンは、印刷実行者のパスワードのみによって解除され、しかも共用ビン内の文書が空にならない限りは他の印刷実行者によって使用できないようになっている。したがって、当該共用ビンにおいて、複数の印刷実行者による印刷物が混在することはない。以上の結果、印刷実行者が他人の印刷物を取り出すことができず、さらに印刷実行者が印刷物を共用ビンから取り忘れた場合であっても情報漏洩は防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−198500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置では、複数の個人用ビンを設けているので、比較的大きな用紙仕分け装置が必要になる。また、印刷実行者の個人用ビンが満杯の場合、印刷物が共用ビンに排紙されることになるが、その印刷実行者が共用ビンから全ての印刷物を取り出さない限りは、他の印刷実行者からの印刷物が共用ビンに排出されない。したがって、複数の個人用ビンが満杯状態になっている場合にさらに共用ビンに印刷物が残されている場合には、印刷が許可されないという問題が生じる。
【0006】
本発明の課題は、画像形成装置において、簡単な構成によって、印刷物が排紙部から間違って取り出されることを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0008】
本発明の一見地に係る画像形成装置は、入力部と、印刷実行部と、個人認証部と、排紙部と、記憶部と、制御部と、検出部と、通知部とを備えている。入力部には、印刷データが入力される。印刷実行部は、印刷データに基づいて、印刷を行う。個人認証部は、印刷実行者から入力された認証情報に基づいて、個人認証を行う。排紙部は、印刷物が搬入され、外部から印刷物を取り出し可能な第1状態と、取り出し不能な第2状態との間で状態が移行可能である。記憶部は、印刷実行者に関連する印刷情報を含む印刷履歴を記憶する。制御部は、入力された認証情報及び印刷履歴に基づいて、排紙部を第2状態から第1状態に移行させる。検出部は、排紙部における印刷物の有無を検出する。通知部は、入力された認証情報、印刷履歴、及び第2状態から第1状態に移行した後における排紙部での印刷物の有無に基づいて、排紙部の状況について通知を行う。
この装置では、入力された認証情報、印刷履歴、及び第2状態から第1状態に移行した後における排紙部での印刷物の有無に基づいて、通知部が排紙部の状況について適切な通知を行うことができる。特に、個人認証部によって個人認証を行っているので、状況に応じて、個人認証を行った印刷実行者と他の印刷実行者にそれぞれ適切な通知を行うことができる。したがって、1つの排紙部に複数の印刷実行者による印刷物が排紙される構造であるにも関わらず、印刷物が排紙部から間違って取り出されにくい。
【0009】
印刷履歴に個人認証を行った認証済み印刷実行者以外の他の印刷実行者に関連する印刷情報が含まれている状態において、検出部が排紙部に印刷物が存在しないことを検出すれば、以下の動作が行われてもよい。通知部は、認証済み印刷実行者及び他の印刷実行者に対して印刷物が排紙部に存在しないことを通知する。
この場合では、印刷履歴に他の印刷実行者に関連する印刷情報が含まれているにも関わらず排紙部に印刷物が存在しないので、認証済み印刷実行者が間違って他の印刷実行者の印刷物を排紙部から取り出してしまった可能性が高い。そのため、認証済み印刷実行者及び他の印刷実行者にそのことが通知される。その結果、認証済み印刷実行者は、自分が取り出した印刷物を確認して、他の印刷実行者の印刷物を排紙部に戻すことができる。また、他の印刷実行者は、自分の印刷物が排紙部に戻されていなければ、認証済み印刷実行者に問い合わせをすることができる。
【0010】
印刷履歴に他の印刷実行者に関連する印刷情報が含まれている状態において、検出部が排紙部に印刷物が存在することを検出すれば、通知部は他の印刷実行者に対して認証済み印刷実行者を特定する情報を通知してもよい。
この場合、印刷履歴に他の印刷実行者に関連する印刷情報が含まれておりさらに排紙部に印刷物が存在しており、そのこと自体は正常である。しかし、認証済み印刷実行者が間違って他の印刷実行者の印刷物を排紙部から取り出してしまった可能性は否定できない。そこで、他の印刷実行者に認証済み印刷実行者を特定する情報が通知される。その結果、他の印刷実行者は、自分の印刷物が排紙部において不足していれば、認証済み印刷実行者に問い合わせをすることができる。
【0011】
印刷履歴に他の印刷実行者に関連する印刷情報が含まれていない状態において、検出部が排紙部に印刷物が存在することを検出すれば、通知部は認証済み印刷実行者に対して印刷物が排紙部に存在することを通知してもよい。
この場合、印刷履歴に他の印刷実行者に関連する印刷情報が含まれていないにも関わらず排紙部に印刷物が存在しているので、認証済み印刷実行者が自分の印刷物を排紙部に間違って残してしまった可能性が高い。そのため、認証済み印刷実行者にそのことが通知される。その結果、認証済み印刷実行者は、取り忘れた印刷物を排紙部から取り出すことができる。
【0012】
画像形成装置は、通知後の所定時間内に排紙部が開かれなければ、印刷物を排紙部から取り除く取り除き部をさらに備えてもよい。
この装置では、通知後の所定時間内に排紙部が開かれなければ、取り除き部が印刷物を排紙部から取り除く。したがって、取り残された印刷物が、他の印刷実行者によって排紙部から取り出されることがない。
【0013】
取り除き部は、排紙部が開かれてさらに閉じられた後に、排紙部に印刷物が存在すれば、排紙部に存在する印刷物を排紙部から取り除いてもよい。
この装置では、排紙部が開かれたさらに閉じられた後に、取り除き部が印刷物を排紙部から取り除く。したがって、取り残された印刷物が、他の印刷実行者によって排紙部から取り出されることがない。
【0014】
本発明の他の見地に係る画像形成装置の制御方法は、以下の画像形成装置を制御する方法である。画像形成装置は、入力部と、印刷実行部と、排紙部と、記憶部と、検出部とを備えている。入力部には、印刷データが入力される。印刷実行部は、印刷データに基づいて、印刷を行う。排紙部は、印刷物を収納し、外部から印刷物を取り出し可能な第1状態と、取り出し不能な第2状態との間で状態が移行可能である。記憶部は、印刷実行者に関連する印刷情報を含む印刷履歴を記憶する。検出部は、排紙部における印刷物の有無を検出する。画像形成装置の制御方法は、下記のステップを備えている。
◎個人認証が行われたか否かを判断するステップ
◎個人認証が行われた場合に、認証済み印刷実行者に関連する印刷情報が印刷履歴に含まれるか否かを判断するステップ
◎印刷履歴に認証済み印刷実行者に関連する印刷情報が含まれる場合に、排紙部を第2状態から第1状態に移行させるステップ
◎印刷履歴に認証済み印刷実行者以外の他の印刷実行者の印刷情報が含まれるか否かを判断するステップ
◎入力された認証情報、印刷履歴、及び第2状態から第1状態に移行した後における排紙部での印刷物の有無に基づいて、排紙部の状況について通知を行う通知ステップ
この方法では、入力された認証情報、印刷履歴、及び第2状態から第1状態に移行した後における排紙部での印刷物の有無に基づいて、通知部が排紙部の状況について適切な通知を行うことができる。特に、個人認証を行っているので、状況に応じて、個人認証を行った印刷実行者と他の印刷実行者にそれぞれ適切な通知を行うことができる。したがって、1つの排紙部に複数の印刷実行者による印刷物が排紙される構造であるにも関わらず、印刷物が排紙部から間違って取り出されにくい。
【0015】
通知ステップは、以下のステップを有していてもよい。
◎印刷履歴に他の印刷実行者に関連する印刷情報が含まれていると判断されれば、排紙部に印刷物が存在するか否かを判断するステップ
◎排紙部に印刷物が存在しないと判断されれば、認証済み印刷実行者及び他の印刷実行者に対して排紙部に印刷物が存在しないことを通知するステップ
この方法では、印刷履歴に他の印刷実行者に関連する印刷情報が含まれているにも関わらず排紙部に印刷物が存在しないので、認証済み印刷実行者が間違って他の印刷実行者の印刷物を排紙部から取り出してしまった可能性が高い。そのため、認証済み印刷実行者及び他の印刷実行者にそのことが通知される。その結果、認証済み印刷実行者は、自分が取り出した印刷物を確認して、他の印刷実行者の印刷物を排紙部に戻すことができる。また、他の印刷実行者は、自分の印刷物が排紙部に戻されていなければ、認証済み印刷実行者に問い合わせをすることができる。
【0016】
認証済み印刷実行者及び他の印刷実行者に対して排紙部に印刷物が存在しないことを通知するステップは、排紙部に印刷物が存在すると判断されるまで、実行され続けてもよい。
【0017】
通知ステップは、排紙部に印刷物が存在すると判断されれば、他の印刷実行者に対して認証済み印刷実行者を特定する情報を通知するステップをさらに有していてもよい。
この方法では、印刷履歴に他の印刷実行者に関連する印刷情報が含まれておりさらに排紙部に印刷物が存在しているのであり、正常である。しかし、認証済み印刷実行者が間違って他の印刷実行者の印刷物を排紙部から取り出してしまった可能性を否定できない。そのため、他の印刷実行者に認証済み印刷実行者を特定する情報が通知される。その結果、他の印刷実行者は、自分の印刷物が排紙部において不足していれば、認証済み印刷実行者に問い合わせをすることができる。
【0018】
通知ステップは、以下のステップを有していてもよい。
◎印刷履歴に他の印刷実行者に関連する印刷情報が含まれていないと判断されれば、排紙部に印刷物が存在するか否かを判断するステップ
◎排紙部に印刷物が存在すると判断されれば、認証済み印刷実行者に対して排紙部に印刷物が存在することを通知するステップ
この方法では、印刷履歴に他の印刷実行者に関連する印刷情報が含まれていないにも関わらず排紙部に印刷物が存在しているので、認証済み印刷実行者が自分の印刷物を排紙部に間違って残してしまった可能性が高い。そのため、認証済み印刷実行者にそのことが通知される。その結果、認証済み印刷実行者は、取り忘れた印刷物を排紙部から取り出すことができる。
【0019】
画像形成装置の制御方法は、以下のステップをさらに備えていてもよい。
◎通知後の所定時間内に排紙部が開かれたか否かを判断するステップ
◎排紙部が開かれていないと判断されれば、印刷物を排紙部から取り除くステップ
この方法では、通知後の所定時間が経過しても排紙部が開かれなければ、印刷物が排紙部から取り除かれる。したがって、取り残された印刷物が、他の印刷実行者によって取り出されることがない。
【0020】
画像形成装置の制御方法は、以下のステップをさらに備えていてもよい。
◎排紙部が開かれてさらに閉じられた後に、排紙部に印刷物が存在するか否かを判断するステップ
◎排紙部に印刷物が存在すると判断されれば、印刷物を排紙部から取り除くステップ
この方法では、通知後に所定時間が経過すれば、印刷物が排紙部から取り除かれる。したがって、取り残された印刷物が、他の印刷実行者によって取り出されることがない。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る画像形成装置では、入力された認証情報、印刷履歴、及び第2状態から第1状態に移行した後における排紙部での印刷物の有無に基づいて、通知部が排紙部の状況について適切な通知を行うことができる。したがって、1つの排紙部に複数の印刷実行者による印刷物が排紙される構造であるにも関わらず、印刷物が排紙部から間違って取り出されることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合機の構成ブロック図。
【図2】複合機の制御装置の構成ブロック図。
【図3】複合機の制御動作を示すフローチャート。
【図4】複合機の制御動作を示すフローチャート。
【図5】認証済み印刷実行者のPCの画面に表示されるポップアップ。
【図6】認証済み印刷実行者のPCの画面に表示されるポップアップ。
【図7】他の印刷実行者のPCの画面に表示されるポップアップ。
【図8】複合機の表示部に表示される印刷履歴。
【図9】複合機の表示部に表示される印刷履歴及び印刷物取得履歴。
【図10】本発明の他の実施形態に係る複合機の構成ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(1)複合機の概略構成
図1を用いて、本発明に係る複合機1を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る複合機の構成ブロック図である。複合機1は、外部から送られてきた印刷データを印刷するプリンタ機能を有している。さらに、複合機1は、スキャナによって得られた印刷データを印刷するコピー機能を有している。
複合機1は、制御部3と、画像形成部5と、原稿読取部7と、操作部9と、表示部11と、用紙収納部13と、通常排紙部14と、セキュリティ排紙部15と、廃棄部17と、搬送機構19、通信インターフェース23とを有している。
【0024】
制御部3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)によって構成される。CPUは、種々の演算を行い、プログラムを実行できる。ROMには、CPUが動作するために必要なプログラム及びデータが格納されている。RAMには、プログラムの実行に際して作成される一時的なデータ及びプログラムが格納されている。CPUがROM等の記憶媒体内のプログラムを読み出して実行することによって、制御部3の様々な機能が実現され、複合機1を構成する各部が制御される。
なお、制御部3と他の構成要素はバス21によって通信可能に接続されている。
【0025】
画像形成部5は、原稿読取部7で読み取られた原稿の印刷データ及びパーソナルコンピュータから送られてきた印刷データに基づいて、用紙に画像を形成する。画像形成部5は、例えば、感光体ドラム、帯電器、露光ヘッド、現像器、及び転写ローラを有する電子写真方式を採用することができる。画像形成部5としては、インクジェット方式が採用されてもよい。
【0026】
原稿読取部7は、原稿の画像を読み取って印刷データを生成する。原稿読取部7は、図示しない原稿搬送装置、プラテンガラス、光源、ミラー群、レンズ、読取素子、及び信号処理回路を備える。
表示部11は、表示パネルに画像を表示することで、複合機1の動作状況及びエラーの発生等の情報をユーザーに伝えることができる。
操作部9は、表示パネル上に設けられたタッチパネル、及びハードキーから構成されている。操作部9は、タッチパネルを介してユーザーからの操作を受け付けることができる。また、ハードキーは、テンキー、実行キー及びキャンセルキー等のキーを含み、ユーザーからの操作を受け付けることができる。ユーザーは、操作部9を用いて、例えば、コピー、スキャンまたはファクシミリ送信等を実行する指示を入力できる。
【0027】
用紙収納部13は、多数の印刷前の用紙を収納している。用紙収納部13内の用紙は、搬送機構19によって、1枚ずつ画像形成部5に搬送されるようになっている。
【0028】
通常排紙部14は、印刷後の用紙を収納する。画像形成部5で印刷された用紙は、搬送機構19によって、1枚ずつ通常排紙部14に排紙されるようになっている。通常排紙部14は、ボックス形状であり、ユーザーは通常排紙部14から中の印刷物を自由に取り出すことができる。
セキュリティ排紙部15は、セキュリティプリントの指定に基づいて印刷された用紙を収納する。画像形成部5で印刷された用紙は、搬送機構19によって、1枚ずつセキュリティ排紙部15に排紙されようになっている。セキュリティ排紙部15は、ボックス形状であり、開閉自在な蓋15aが設けられている。ユーザーはセキュリティ排紙部15の蓋15aを開けることで、中の印刷物を取り出すことができる。
【0029】
廃棄部17は、搬送機構19によってセキュリティ排紙部15から送られてきた印刷物を収納する。廃棄部17は、管理者だけが開閉可能となっている。管理者は、廃棄部17から印刷物を取り出してシュレッダーを用いて廃棄する。また、廃棄部17にシュレッダーが設けられていてもよい。
【0030】
通信インターフェース23は、LAN(Local Area Network)41に接続されている。これにより、複合機1は、LAN41に接続された複数のパーソナルコンピュータ43及びプリンタサーバ(図示せず)と通信可能である。各パーソナルコンピュータ43には、複合機1の制御部3を制御するプリンタドライバがインストールされている。プリンタドライバは、パーソナルコンピュータ43のユーザーが印刷を指示したデータを、制御部3が処理可能な印刷データに変換し、印刷ジョブを生成する。
【0031】
(2)制御部の概略構成
図2を用いて、制御部3の構成を説明する。図2は、複合機の制御部の構成ブロック図である。
制御部3は、印刷機能、表示機能、画像処理機能、その他制御機能を有している。制御部3には、記憶部25が接続されている。
記憶部25は、例えばハードディスクドライブであって、印刷履歴記憶部27と、認証データ記憶部29とを有している。
【0032】
制御部3は、さらに、操作部9から入力されたIDとパスワードに基づいて、個人認証を行う機能を有している。具体的には、制御部3は、IDとパスワードに基づいて登録された認証データに含まれた印刷実行者であるか否かを判断する。入力者から入力された認証データと登録された認証データが一致すれば、制御部3は、個人認証が行われたことを認証データ記憶部29に記憶させる。なお、登録された認証データは、記憶部25に記憶されている。登録された認証データに登録されている対象は、パーソナルコンピュータ43のログインユーザーである。認証データには、ユーザー名、ID、パスワード等が記録されている。
【0033】
印刷履歴記憶部27は、印刷履歴を記憶できる。印刷履歴とは、印刷が終了した複数の印刷に関連する印刷情報を保有するテーブルである。印刷履歴における印刷情報は、セキュリティ排紙部15に印刷物が存在すると推定される印刷ジョブに対応している。各印刷情報は、セキュリティプリントジョブ又はセキュリティコピージョブが発生すると印刷履歴に追加され、当該印刷物がセキュリティ排紙部17から取り出されると又はその他処理されると印刷履歴から削除される。各印刷情報は、例えば、ドキュメントID、ユーザー名(又はユーザーが利用するパーソナルコンピュータのホスト名)、印刷枚数、印刷日時といった属性を有している(図8及び図9を参照。)。制御部3は、印刷データが送られてくると、画像形成部5に印刷を実行させる。さらに、制御部3は、印刷が終了すると、印刷履歴を更新する。具体的には、制御部3は、終了した印刷に関連する各印刷情報を印刷履歴に追加する。また、制御部3は、後述するように所定の条件が満たされた場合に各印刷情報を印刷履歴から削除する。
【0034】
制御部3は、セキュリティ排紙部15のロック機構35、開閉センサ37及びエンプティ・センサ39に接続されている。制御部3は、ロック機構35に対して、ロック指令及び解除指令を送信する。ロック機構35は、例えば、爪部材とソレノイドとから構成されている。開閉センサ37は、例えば光学式センサ又はリミットスイッチであって、セキュリティ排紙部15の蓋15aが開いているか閉じているかを検出する。エンプティ・センサ39は、例えば光学式センサであって、セキュリティ排紙部15が空になっているか否かを検出する。
【0035】
(3)制御動作
図3及び図4を用いて、複合機1におけるセキュリティプリントの制御動作について説明する。図3及び図4は複合機の制御動作を示すフローチャートである。図5及び図6は、認証済み印刷実行者のPCの画面に表示されるポップアップである。図7は、他の印刷実行者のPCの画面に表示されるポップアップである。
なお、以下の動作は、主に、制御部3が各構成要素を制御する動作である。なお、初期状態において、個人認証は行われておらず、さらにセキュリティ排紙部15の蓋15aはロックされている。さらに、以下の説明では、簡略化のために、機密情報を取り扱うセキュリティプリント又はセキュリティコピーのみが行われたものとして、一連の動作を説明する。
また、図3及び図4に示す各処理の順序は図示されるものに限定されることはなく、本発明の範囲で適宜変更(順序の入れ替え、ステップの省略又は追加)してもよい。
【0036】
ステップS1では、制御部3は、セキュリティプリント指定が行われた印刷ジョブが発生したか否かを判断する。具体的には、制御部3は、LAN41上のパーソナルコンピュータ43又はプリンタサーバ(図示せず)から印刷データが送られてくるのを待つ。なお、セキュリティプリントの指定は、例えば、印刷実行者がパーソナルコンピュータ43の設定画面を用いて行う。
プリントジョブが発生すると(ステップS1でのYes)、プロセスはステップS11に移行する。ステップS11では、制御部3は、画像形成部5に印刷を実行させ、さらに、印刷履歴記憶部27において印刷履歴を更新する。具体的には、制御部3は、新たな印刷情報を印刷履歴に追加する。
プリントジョブが発生していない場合(ステップS1でNoの場合)、プロセスはステップS2に移行する。
【0037】
ステップS2では、制御部3は、個人認証が開始されたか否かを判断する。具体的には、印刷実行者が操作部9から正しいIDとパスワードを入力したか否かを判断する。Noの場合は、プロセスはステップS1に戻る。したがって、個人認証が行われるまでは、制御部3は、印刷データを受信するごとに印刷を実行し、さらに印刷履歴を更新する。このように複数の印刷実行者による印刷が行われ、印刷物がセキュリティ排紙部15に搬入されていく。このように、複数の印刷が連続して実行可能であるので利便性が向上している。
ステップS2においてYesの場合は、制御部3は認証データを認証データ記憶部29に記憶させる。そして、プロセスはステップS3に移行する。なお、これ以降は認証切れ(ステップS10及びステップS20)となるまでは、印刷データを受信しても、制御部3は印刷実行を指示しない。
【0038】
ステップS3では、制御部3は、印刷履歴に認証者の印刷情報が存在するか否かを判断する。印刷履歴に認証者の印刷情報が存在しない場合とは、例えば、セキュリティコピーをするために利用者が複合機1に来て個人認証を行った場合である。ステップS3でNoであれば、プロセスはステップS7に移行する。なお、セキュリティコピーの指定は、例えば、ユーザが操作部9及び表示部11を用いて行う。
ステップS7では、制御部3は、認証者がコピー操作を実行しているか否かを判断する。YesであればプロセスはステップS8に移行し、NoであればプロセスはステップS9に移行する。
ステップS8では、制御部3は、画像形成部5に印刷を実行させるともに、印刷履歴を更新する。ステップS8が終了するとプロセスはステップS4に移行する。
【0039】
ステップS9では、制御部3は、個人認証開始から所定時間が経過したか否かを判断する。Noであれば、プロセスはステップS7に移行する。つまり、制御部3は、所定時間内はコピー操作が行われるのを待つ。ステップS9でYesであれば、プロセスはステップS10に移行する。
ステップS10では、制御部3は認証切れ処理を実行する。具体的には、制御部3は、認証データ記憶部29に記憶された認証データを消去する。さらに、制御部3は、表示部11に認証切れを知らせるメッセージを所定時間表示させる。ステップS10が終了するとプロセスはステップS1に戻る。
【0040】
ステップS3においてYesであれば、プロセスはステップS4に移行する。ステップS4では、制御部3は、セキュリティ排紙部15のロック機構35に解除指令を送信し、ロック機構35はセキュリティ排紙部15のロックを解除する。これにより、セキュリティ排紙部15はロック状態から解除状態に移行する。
ステップS5では、制御部3は、開閉センサ37からの検出信号に基づいて、セキュリティ排紙部15の蓋15aが認証者によって開かれた後に閉ざされるのを待つ。なお、セキュリティ排紙部15の蓋15aが開かれた後、閉ざされることなく所定時間が経過した場合は、閉じ忘れとみなして自動的に蓋15aを閉じることも可能である。この場合の所定時間は、認証者がセキュリティ排紙部15の蓋15aを開けて印刷物を取り出して、印刷物を確認して、その後に蓋15aを閉じるのに十分な時間であることが好ましい。なお、蓋15aが閉じられたとしても、ロック機構35はセキュリティ排紙部15の蓋15aをロックしていない。したがって、以後の制御動作において認証者はセキュリティ排紙部15を開けることができる。
また、ステップS5においてセキュリティ排紙部15が閉じられた日時は、各印刷実行者の印刷物取得日時として記憶されることが好ましい。
【0041】
ステップS12では、制御部3は、印刷履歴にある印刷情報が認証者のものだけであるか否かを判断する。YesであればプロセスはステップS13に移行し、NoであればプロセスはステップS21に移行する。
ステップS13では、制御部3は、エンプティ・センサ39からの検出結果に基づいて、セキュリティ排紙部15が空になっているか否かを判断する。YesであればプロセスはステップS19に移行し、NoであればプロセスはステップS14に移行する。ここではYesとは、印刷履歴にある印刷情報は認証者の印刷情報だけであってしかもセキュリティ排紙部15が空なので、認証者が自分の印刷物を全てセキュリティ排紙部15から取り出したことになる。また、Noとは、印刷履歴にある印刷情報は認証者の印刷情報だけであるにも関わらずセキュリティ排紙部15に印刷物が残っているので、認証者が自分の印刷物をセキュリティ排紙部15に取り残していることになる。
【0042】
ステップS19では、制御部3は、印刷履歴記憶部27において、印刷履歴から認証者の印刷情報を消去する。
ステップS20では、制御部3は、認証データ記憶部29から認証データを消去し、さらにセキュリティ排紙部15のロック機構35にロック指令を送信する。その結果、ロック機構35がセキュリティ排紙部15をロックする。ステップS20が終了すると、プロセスはステップS1に戻る。
【0043】
ステップS14では、制御部3は、認証者に対する警告を出す。具体的には、制御部3は、警告内容を通信インターフェース23及びLAN41を介して認証者のパーソナルコンピュータ43に送信する。それにより、パーソナルコンピュータ43のプリンタドライバがブラウザに警告をポップアップ表示させる。同時に、表示部11にも警告を表示させることが好ましい。これにより、認証者が印刷物を持って、まだ複合機1のそばにいる場合は、認証者に早く警告に気がつかせることができる。警告は、図5に示すように、印刷物がセキュリティ排紙部15に残っていること、さらには印刷物を残したままにしておくと廃棄されることを述べている。
ステップS15では、制御部3は、所定時間内にセキュリティ排紙部15の蓋15aが開かれたか否かを判断する。所定時間とは、認証者が印刷物を持って自分の机まで戻ってからパーソナルコンピュータ43の画面に表示された警告に気がついて、さらに複合機1まで戻ってくるのに十分な時間であることが好ましい。Yesであれば、プロセスはステップS16に移行し、NoであればプロセスはステップS18に移行する。
【0044】
ステップS16では、制御部3は、開閉センサ37からの検出信号に基づいて、蓋15aが閉ざされるのを待つ。
ステップS17では、制御部3は、エンプティ・センサ39からの検出信号に基づいて、セキュリティ排紙部15が空になったか否かを判断する。YesであればプロセスはステップS19に移行し、NoであればプロセスはステップS18に移行する。
【0045】
ステップS18では、制御部3は、搬送機構19を駆動して、セキュリティ排紙部15に残った印刷物を廃棄部17に移動させる。これにより、セキュリティ排紙部15は空になる。
なお、ステップS15においてNoとは、警告を出しているにも関わらず認証者が所定時間内にセキュリティ排紙部15を開けなかった場合である。つまり、認証者が取り出しを不要と判断した場合である。また、ステップS17においてNoとは、警告後に蓋15aが開閉されたにもかかわらず印刷物がセキュリティ排紙部15に残された場合である。つまり、認証者が印刷物を確認して取り出し不要と判断した場合である。
ステップS21では、制御部3は、エンプティ・センサ39からの検出信号に基づいて、セキュリティ排紙部15が空になったか否かを判断する。YesであればプロセスはステップS22に移行し、NoであればプロセスはステップS26に移行する。ステップS21でYesとは、印刷履歴に認証者以外の印刷情報があるにも関わらずセキュリティ排紙部15が空になっている場合であり、認証者が間違えて全ての印刷物をセキュリティ排紙部15から取り去ってしまった可能性が高い。また、ステップS21でNoとは、印刷履歴に認証者以外の印刷情報があり、しかもセキュリティ排紙部15に印刷物が残っているので、正常な状態である。
【0046】
ステップS22では、制御部3は、認証者に対する警告を出す。具体的には、制御部3は、警告内容を通信インターフェース23及びLAN41を介して認証者のパーソナルコンピュータ43に送信する。それにより、パーソナルコンピュータ43にあるプリンタドライバがブラウザに警告をポップアップ表示させる。同時に、表示部11にも警告を表示させることが好ましい。これにより、認証者が印刷物を持って、まだ複合機1のそばにいる場合は、認証者に早く警告に気がつかせることができる。警告は、図6に示すように、他人の文書を持ち去った可能性が高いので、確認してセキュリティ排紙部15に戻すようにと述べている。
ステップS23では、制御部3は、印刷履歴にある印刷情報に対応する印刷実行者のパーソナルコンピュータ43にアラートを送る。このアラートは、図7に示すように、印刷実行者が次に認証者となってセキュリティ排紙部15を開けたときに自分の印刷物が不足している可能性があること及び実際に不足している場合には誰に問い合わせをすればよいか知らせるためのものである。
【0047】
ステップS24では、制御部3は、開閉センサ37からの検出信号に基づいて、セキュリティ排紙部15の蓋15aが開かれたか否かを判断する。YesであればプロセスはステップS25に移行し、NoであればプロセスはステップS22に戻る。つまり、セキュリティ排紙部15の蓋15aが開かれなければ、警告及びアラートは出され続ける。
ステップS25では、制御部3は、開閉センサ37からの検出信号に基づいて、セキュリティ排紙部15の蓋15aが閉ざされるのを待つ。蓋15aが閉ざされればプロセスはステップS21に戻って、セキュリティ排紙部15に印刷物が戻されたか否かを判断する。つまり、セキュリティ排紙部15に印刷物が戻されるまでは、警告・アラートが出され続ける。
【0048】
ステップS26では、制御部3は、印刷履歴にある印刷情報に対応する印刷実行者のパーソナルコンピュータ43にアラートを送信する。このアラートは、図7に示すように、印刷実行者が次に認証者としてセキュリティ排紙部15を開けたときに自分の印刷物が不足している可能性があること及び実際に不足している場合には誰に問い合わせをすればよいか知らせるためのものである。この場合は印刷履歴に認証者以外の印刷情報があり、しかもセキュリティ排紙部15に印刷物が残っているので、正常な状態である。ただし、認証者が実際に自分の印刷物だけをセキュリティ排紙部15から取出したか否かまでは分からない。そのため、認証者が間違って他人の印刷物まで取り出した場合又は意図的にすり替えを行った場合に備えて、このようなアラートを他の印刷実行者のパーソナルコンピュータ43に表示させる。これにより、他の印刷実行者は自分が認証者として印刷物をセキュリティ排紙部15から取り出すときに注意することができ、さらに自分の印刷物が不足している場合には誰に問い合わせすればよいのかが分かる。
ステップS26が終了すると、プロセスはステップS19に移行する。
【0049】
(4)特徴
(A)上記実施形態で説明したように、本実施形態に係る複合機1では、印刷実行者が個人認証を行うとセキュリティ排紙部15のロックが解除されて、認証者がセキュリティ排紙部15から用紙を取り出せるようになっている。この場合、個人認証が行われるまでは複数の印刷ジョブに対して印刷を実行可能としており、個人認証が行われると認証切れになるまでは、印刷実行及び個人認証は禁じられている。さらにセキュリティ排紙部15における用紙の有無に基づいて、認証者及び/又は他の印刷実行者に適切な通知を行う。これにより、1つのセキュリティ排紙部15に複数の印刷実行者による印刷物が排紙される構造であるにも関わらず、印刷物がセキュリティ排紙部15から間違って取り出されにくい。このようにして、簡単な構造で機密性が高い画像形成装置が実現される。
【0050】
(B)より具体的には、複合機1は、画像形成部5(印刷実行部)と、セキュリティ排紙部15と、印刷履歴記憶部27(記憶部)と、制御部3と、エンプティ・センサ39とを備えている。制御部3には、印刷データが入力される。画像形成部5は、印刷データに基づいて、印刷を行う。制御部3は、印刷実行者から入力された認証情報に基づいて、個人認証を行う。セキュリティ排紙部15は、印刷物が搬入され、外部から印刷物を取り出し可能な第1状態と、取り出し不能な第2状態との間で状態が移行可能である。印刷履歴記憶部27は、印刷実行者に関連する印刷情報を含む印刷履歴を記憶する。制御部3は、入力された認証情報及び印刷履歴に基づいて、セキュリティ排紙部15を第2状態から第1状態に移行させる。エンプティ・センサ39は、セキュリティ排紙部15における印刷物の有無を検出する。制御部3は、入力された認証情報、印刷履歴、及び第2状態から第1状態に移行した後におけるセキュリティ排紙部15での印刷物の有無に基づいて、セキュリティ排紙部15の状況について通知を行う。
この装置では、入力された認証情報、印刷履歴、及び第2状態から第1状態に移行した後におけるセキュリティ排紙部15での印刷物の有無に基づいて、制御部3がセキュリティ排紙部15の状況について適切な通知を行うことができる。特に、制御部3によって個人認証を行っているので、状況に応じて、個人認証を行った印刷実行者と他の印刷実行者にそれぞれ適切な通知を行うことができる。したがって、1つのセキュリティ排紙部15に複数の印刷実行者による印刷物が排紙される構造であるにも関わらず、印刷物がセキュリティ排紙部15から間違って取り出されにくい。
【0051】
(C)複合機1の制御方法は、制御部3は、以下の制御動作を実行する。
◎個人認証が行われたか否かを判断するステップ
◎個人認証が行われた場合に、認証済み印刷実行者に関連する印刷情報が印刷履歴に含まれるか否かを判断するステップ
◎印刷履歴に認証済み印刷実行者に関連する印刷情報が含まれる場合に、セキュリティ排紙部15を第2状態から第1状態に移行させるステップ
◎印刷履歴に認証済み印刷実行者以外の他の印刷実行者の印刷情報が含まれるか否かを判断するステップ
◎入力された認証情報、印刷履歴、及び第2状態から第1状態に移行した後におけるセキュリティ排紙部15での印刷物の有無に基づいて、セキュリティ排紙部15の状況について通知を行う通知ステップ
この方法では、入力された認証情報、印刷履歴、及び第2状態から第1状態に移行した後におけるセキュリティ排紙部15での印刷物の有無に基づいて、制御部3が排紙部の状況について適切な通知を行うことができる。特に、個人認証を行っているので、状況に応じて、個人認証を行った印刷実行者と他の印刷実行者にそれぞれ適切な通知を行うことができる。したがって、1つのセキュリティ排紙部15に複数の印刷実行者による印刷物が排紙される構造であるにも関わらず、印刷物がセキュリティ排紙部15から間違って取り出されにくい。
【0052】
(5)第2実施形態
この実施形態では、第1実施形態の図3のステップS4とステップS5との間に、複合機1の表示部11に印刷履歴を表示するステップを設けている。これにより、認証者は、セキュリティ排紙部15に他の印刷実行者の印刷物が混じっている状態において、他の印刷実行者の印刷物の有無及び自分の印刷物の位置が分かる。その結果、認証者は、セキュリティ排紙部15から全ての印刷物を取り出すことが無くなり、さらには取り出し時に自分の印刷物を注意して取り出すようになる。
図8に、複合機1の表示部11に表示された印刷履歴を示す。図8は、複合機の表示部に表示される印刷履歴である。例えば認証者がユーザーBの場合は、上から11枚目の1枚が自分の印刷物である。
この例では、ユーザーBによる印刷が実行される前にユーザーAによる印刷が実行されているが、ユーザーAよりユーザーBが先に個人認証を行って印刷物を取り出そうとしている。また、ユーザーBによる印刷が実行された後でかつ個人認証を行う前に、ユーザーCによる印刷が実行されている。したがって、セキュリティ排紙部15には、下から、ユーザーAの印刷物、ユーザーBの印刷物、ユーザーCの印刷物の順で印刷物が積まれている。
【0053】
さらに、認証者に印刷以降にセキュリティ排紙部15から印刷物を取り出した印刷実行者がいる場合には、複合機1の表示部11に印刷履歴を表示するステップにおいて、印刷履歴に加えて印刷物取得履歴を表示するようにしてもよい。印刷物取得履歴には、認証者の印刷時刻より後にセキュリティ排紙部15から印刷物を取り出した印刷実行者の情報が含まれている。具体的には、ユーザー名(又はユーザーが利用するパーソナルコンピュータのホスト名)、枚数、印刷物取得日時である。これにより、認証者は、自分の印刷物が印刷された以後に他の印刷実行者がセキュリティ排紙部15を開けて印刷物を取り出したことが分かるので、自分の印刷物が間違って取り出されているか否かを注意することができる。
図9に、複合機1の表示部11に表示された印刷履歴及び印刷物取得履歴を示す。図9は、複合機の表示部に表示される印刷履歴及び印刷物取得履歴である。この場合認証者がユーザーBの場合は、ユーザーDとユーザーEが先に印刷物を取り出していることが分かるので、自分の印刷物が不足している場合にはユーザーD及びユーザーEに問い合わせすることができる。
この例では、ユーザーBによる印刷実行とユーザーCによる印刷実行との間で、ユーザーDが自分の印刷物をセキュリティ排紙部15から取り出している。さらに、ユーザーCによる印刷実行後にユーザーEが自分の印刷物を取り出している。したがって、ユーザーDはユーザーAの印刷物及びユーザーBの印刷物を取り出した又は順序を崩した可能性があり、ユーザーEはユーザーAの印刷物、ユーザーBの印刷物、及びユーザーCの印刷物を取り出した又は順序を崩した可能性がある。その問題に対処するために、図9に示すように、表示部11の表示では、印刷物の順序が変わっている可能性について注意を促している。
【0054】
(6)他の実施形態
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0055】
(a)前記実施形態では通常排紙部とセキュリティ排紙部が混在した複合機を説明したが、本発明はセキュリティ排紙部のみが存在する複合機又はプリンタにも適用できる。そのような例を図10に示す。
(b)前記実施形態ではパーソナルコンピュータからのセキュリティプリントに加えて、ユーザが複合機の前に来てセキュリティコピーを行う場合にも用紙がセキュリティ排紙部に搬送されていた。しかし、本発明は、パーソナルコンピュータのように他の接続機器から印刷データが送信されてきた場合のセキュリティプリントは実行するが、セキュリティコピーは許可しないような装置にも、適用できる。その場合、前記実施形態の図3に示された制御フローにおいて、ステップS3で認証者の印刷履歴がない場合は、制御部はすぐに認証切れ処理を行い、その後プロセスはステップS1に戻る。
(c)前記実施形態では個人認証はユーザーがIDとパスワードを入力することで開始されたが、その他の方法であってもよい。磁気カード、ICカード、バーコードによる読取装置で認証を行ってもよい。また、生体認証でもよい。
(d)前記実施形態では排紙部は1つだけが図示されていたが、複数の排紙部が設けられた複合機にも本発明は適用可能である。その場合には、少なくとも1つの排紙部は上記実施形態の特徴が実現されている必要がある。
(e)前記実施形態では複合機を説明したが、本発明はコピー機能を有さないプリンタにも適用できる。
(f)前記実施形態では排紙部に残された印刷物を廃棄部に搬送することで排紙部を空にしたが、例えば管理者に印刷物を取り除くように通知することで管理者によって排紙部を空にするようにしてもよい。
(g)前記実施形態では排紙部に残された印刷物はシュレッダーによって読み取り不能とされたが、読み取り不能となるような印刷処理を施してもよい。
(h)前記実施形態では、各種通知は表示部における文字表示で行っていたが、マイクからの音声若しくは又はランプの点灯・消灯によって、又はそれら各手段を適宜組み合わせて行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、施錠可能な排紙部を有する画像形成装置及びその制御方法に広く適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 複合機
3 制御部
5 画像形成部
7 原稿読取部
9 操作部
11 表示部
13 用紙収納部
15 セキュリティ排紙部
15a 蓋
17 廃棄部
19 搬送機構
21 バス
23 通信インターフェース
25 記憶部
27 印刷履歴記憶部
29 認証データ記憶部
35 ロック機構
37 開閉センサ
39 エンプティ・センサ
41 LAN
43 パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データが入力される入力部と、
前記印刷データに基づいて、印刷を行う印刷実行部と、
印刷実行者から入力された認証情報に基づいて、個人認証を行う個人認証部と、
印刷物が搬入され、外部から前記印刷物を取り出し可能な第1状態と、取り出し不能な第2状態との間で状態が移行可能な排紙部と、
前記印刷実行者に関連する印刷情報を含む印刷履歴を記憶する記憶部と、
前記入力された認証情報及び前記印刷履歴に基づいて、前記排紙部を前記第2状態から前記第1状態に移行させる制御部と、
前記排紙部における前記印刷物の有無を検出する検出部と、
前記入力された認証情報、前記印刷履歴、及び前記第2状態から前記第1状態に移行した後における前記排紙部での前記印刷物の有無に基づいて、前記排紙部の状況について通知を行う通知部と、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記印刷履歴に個人認証を行った認証済み印刷実行者以外の他の印刷実行者に関連する印刷情報が含まれている状態において、
前記検出部が前記排紙部に前記印刷物が存在しないことを検出すれば、前記通知部は前記認証済み印刷実行者及び前記他の印刷実行者に対して前記印刷物が前記排紙部に存在しないことを通知する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記印刷履歴に前記他の印刷実行者に関連する印刷情報が含まれている状態において、
前記検出部が前記排紙部に前記印刷物が存在することを検出すれば、前記通知部は前記他の印刷実行者に対して前記認証済み印刷実行者を特定する情報を通知する、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記印刷履歴に前記他の印刷実行者に関連する印刷情報が含まれていない状態において、
前記検出部が前記排紙部に印刷物が存在することを検出すれば、前記通知部は前記認証済み印刷実行者に対して前記印刷物が前記排紙部に存在することを通知する、請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記通知後の所定時間内に前記排紙部が開かれなければ、前記印刷物を前記排紙部から取り除く取り除き部をさらに備える、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記取り除き部は、前記排紙部が開かれてさらに閉じられた後に、前記排紙部に前記印刷物が存在すれば、前記印刷物を前記排紙部から取り除く、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
印刷データが入力される入力部と、
前記印刷データに基づいて、印刷を行う印刷実行部と、
印刷物が搬入され、外部から前記印刷物を取り出し可能な第1状態と、取り出し不能な第2状態との間で状態が移行可能な排紙部と、
前記印刷実行者に関連する印刷情報を含む印刷履歴を記憶する記憶部と、
前記排紙部における前記印刷物の有無を検出する検出部と、を備えた画像形成装置の制御方法であって、
個人認証が行われたか否かを判断するステップと、
前記個人認証が行われた場合に、認証済み印刷実行者に関連する印刷情報が前記印刷履歴に含まれるか否かを判断するステップと、
前記印刷履歴に前記認証済み印刷実行者に関連する印刷情報が含まれる場合に、前記排紙部を前記第2状態から第1状態に移行させるステップと、
前記印刷履歴に前記認証済み印刷実行者以外の他の印刷実行者の印刷情報が含まれるか否かを判断するステップと、
前記入力された認証情報、前記印刷履歴、及び前記第2状態から前記第1状態に移行した後における前記排紙部での前記印刷物の有無に基づいて、前記排紙部の状況について通知を行う通知ステップと、
を備えた画像形成装置の制御方法。
【請求項8】
前記通知ステップは、
前記印刷履歴に前記他の印刷実行者に関連する印刷情報が含まれていると判断されれば、前記排紙部に前記印刷物が存在するか否かを判断するステップと、
前記排紙部に前記印刷物が存在しないと判断されれば、前記認証済み印刷実行者及び前記他の印刷実行者に対して前記排紙部に前記印刷物が存在しないことを通知するステップとを有している、請求項7に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項9】
前記認証済み印刷実行者及び前記他の印刷実行者に対して前記排紙部に前記印刷物が存在しないことを通知するステップは、前記排紙部に前記印刷物が存在すると判断されるまで、実行され続ける、請求項8に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項10】
前記通知ステップは、
前記排紙部に前記印刷物が存在すると判断されれば、前記他の印刷実行者に対して前記認証済み印刷実行者を特定する情報を通知するステップをさらに有している、請求項8又は9に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項11】
前記通知ステップは、
前記印刷履歴に前記他の印刷実行者に関連する印刷情報が含まれていないと判断されれば、前記排紙部に前記印刷物が存在するか否かを判断するステップと、
前記排紙部に前記印刷物が存在すると判断されれば、前記認証済み印刷実行者に対して前記排紙部に前記印刷物が存在することを通知するステップとを有している、請求項7〜10のいずれかに記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項12】
前記通知後の所定時間内に前記排紙部が開かれたか否かを判断するステップと、
前記排紙部が開かれていないと判断されれば、前記印刷物を前記排紙部から取り除くステップと、をさらに備えている、請求項11に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項13】
前記排紙部が開かれてさらに閉じられた後に、前記排紙部に前記印刷物が存在するか否かを判断するステップと、
前記排紙部に前記印刷物が存在すると判断されれば、前記印刷物を前記排紙部から取り除くステップとをさらに備えている、請求項11又は12に記載の画像形成装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−76383(P2012−76383A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224527(P2010−224527)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】