説明

画像形成装置及び閾値マトリックスの作成方法

【課題】原画像をハーフトーン化画像に変換して画像を形成する画像形成装置は、規則的に網点間の優先順位を決定して、閾値マトリックスを作成した場合のハーフトーン化画像は、特定の出力階調で、本来の網点の線数より粗い線数のパターンが目立ち、本来の網点の角度とは異なる角度のパターンが生じるという課題があった。
【解決手段】画像形成装置10は、閾値マトリックス作成部31と、比較部38とを備えて構成される。閾値マトリックス作成部31は、特に、画素順番決定手段34の決定結果と網点間優先順位決定手段35の決定結果とに基づいて、全ての画素に階調の順番を付与し、その上で、入力階調数に合わせて画素値を規格化する。そのため、画像形成装置10によるハーフトーン化画像は、特定の出力階調で、本来の網点の線数より粗い線数のパターンが目立つことや、本来の網点の角度とは異なる角度のパターンが生じることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原画像として与えられた画像を網点画像に変換して画像を形成(以下「ハーフトーン化」という。)する画像形成装置、及び閾値マトリックスの作成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷の分野では、多階調画像をハーフトーン化する際に、原画像を保存して、ある閾値マトリックスでタイル状に覆い、画素値の比較を行なって比較値の方が闘値よりも大きかったらドットをON(ONドット/黒ドット)、小さかったらドットをOFF(OFFドット/白ドット)することで、二値化画像を得る一対一比較方式が古くから用いられている。
【0003】
この閾値マトリックスの閾値は、通常、丸状やライン状のドットパターンが特定の周期と角度を持って繰り返し形成するよう配置される。画像形成装置としての高解像度の印刷装置であれば、1つの網点の面積率で原画像の有する階調を十分に表現できる。しかしながら、低解像度の印刷装置の場合、1つの網点で表現できる階調は限られたものとなる。例えば、600DPI(1インチ当たり600ドット)の出力解像度をもった印刷装置で141線(1インチ当たり141の繰り返し周期)の網点を形成する場合、1つの網点で表現できる階調は19階調となる。このような場合には、複数の網点間で形成順序を設け、複数の網点の面積率の平均で表される濃度で原画像のもつ階調を表現する。例えば、前述の141線の網点を形成する場合には、4×4個の網点間で形成順序を設けることで、4×4×19=304階調の表現を行なうことが可能となる。原画像の有する階調が0〜255の範囲であれば、前記の304階調の出力パターンを256階調の出力パターンに規格化することで、原画像の持つ階調を十分に表現できる。原画像の有する前記の網点間の形成順序は、通常、ベイヤ型の配列にならった順序で規則的に決定される。ベイヤ型の配列にならった順序は空間上でなるべく一様になるように、かつ、規則的に配置され、配置されていく順序が最も高い周波数となるように配置される。
【0004】
例えば、下記の特許文献1には、上記網点間の規則的な形成順序の決定に起因する本来の網点の線数より粗い線数のパターンを目立たなくさせる方法として、基本ドット配置点から網点間の形成順序をブルーノイズ特性に基づいて決定する方法が開示されている。ブルーノイズは、ランダムなノイズの低周波成分をできる限り取り除くことで、ランダムなノイズながら空間上での分散がある程度均一になり、人間の視覚的に好ましい印象を与えるノイズと言われている。網点間の形成順序をブルーノイズ特性に基づいて決定することで、網点間の規則的な形成順序を拡散し、空間上である程度均一で、低周波成分をできる限り取り除いた高周波成分を有するパターンを生成させようにしている。したがって、特定の出力階調で本来の網点の線数より粗い線数のパターンの発生を目立たなくさせることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−44445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたような方法によって、網点間の形成順序を決定して、閾値マトリックスを形成したハーフトーン化画像には、以下の(a),(b)のような課題があった。
【0007】
(a) 特定の出力階調で本来の網点の線数より粗い線数のパターンが目立つ。
(b) 特定の出力階調で本来の網点の角度とは異なる角度のパターンが生じる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1〜5に係る発明の画像形成装置は、M(但し、Mは3以上の自然数。)階調の画素値を有する画素の集合からなるM階調画像を、複数の網点によって表現する画像形成装置であって、N(但し、Nは2以上の自然数。)階調の閾値マトリックスを作成する閾値マトリックス作成部と、前記M階調画像の前記画素の各画素値と前記閾値マトリックスの対応する各閾値とを比較して、前記N階調の画素値を有する画素の集合からなるN階調画像に変換する比較部とを備え、前記閾値マトリックス作成部は、基本ドットの配置を決定し、全ての前記画素を前記基本ドットの各配置点を中心とした複数の前記網点に分割し、分割された前記各網点内に含まれる前記画素の階調の順番を決定し、前記複数の網点の核となる前記基本ドットの配置点から、総数の半分の基本ドットの順位付けが終了した際の決定済みの前記基本ドットの配置が、前記基本ドットの配置で定まる特定の周期に偏るように決定された前記基本ドットの順位に基づいて、前記網点間の階調の優先順位を決定し、前記各網点内に含まれる前記画素の階調の前記順番と前記網点間の階調の前記優先順位とに基づいて、全ての前記画素の階調の閾値の順番を1〜N−1に決定し、前記1〜N−1の値の閾値を有する前記閾値マトリックスを作成することを特徴とする。
【0009】
請求項6及び7に係る発明の画像形成装置は、M(但し、Mは3以上の自然数。)階調の画素値を有する画素の集合からなるM階調画像を、クラスタ型のFMスクリーンにより、N(但し、Nは2以上の自然数。)階調のドットパターンに変換して、画像形成を行う画像形成装置であって、前記N階調の閾値マトリックスを作成する閾値マトリックス作成部と、前記M階調画像の前記画素の各画素値と前記閾値マトリックスの対応する各閾値とを比較して、前記N階調の画素値を有する画素の集合からなるN階調画像に変換する比較部と、を備え、前記閾値マトリックス作成部は、前記クラスタ型のFMスクリーンのハイライト部において、L(但し、Lは2以上の自然数。)ドットの画素塊と、K(但し、KはL未満の自然数。)ドットの画素塊を混在させることを特徴とする。
【0010】
請求項8に係る発明の閾値マトリックス作成方法は、M(但し、Mは3以上の自然数)階調画像からN(但し、Nは2以上の自然数。)階調画像を得る際に用いる閾値マトリックスの作成方法であって、基本ドットの配置を決定する基本ドット配置決定処理と、前記基本ドットの各配置点を中心とした複数の網点に画素を分割する網点分割処理と、前記各網点に含まれる前記画素の順番を決定する画素順番決定処理と、前記基本ドットの配置から前記網点間の優先順位を決定する網点間優先順位決定処理と、全ての前記画素の階調の画素順番を決定する全画素順番決定処理と、前記画素順番を、入力階調Nに合わせて、1〜N−1の値の閾値に規格化する画素値規格化処理とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項9に係る発明の閾値マトリックス作成方法は、M(但し、Mは3以上の自然数。)階調画像からN(但し、Nは2以上の自然数。)階調画像を得る際に用いる閾値マトリックスの作成方法であって、クラスタ型のFMスクリーンのハイライト部において、L(但し、Lは2以上の自然数。)ドットの画素塊と、K(但し、KはL未満の自然数。)ドットの画素塊を混在させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜5に係る本発明の画像形成装置、及び請求項8に係る発明の閾値マトリックス作成方法によれば、各網点内に含まれる画素の階調の順番と網点間の階調の優先順位とに基づいて、全ての前記画素の階調の画素順番を決定し、入力階調数Nに合わせて1〜N−1の値の閾値に規格化することにより閾値マトリックスを作成するようにしている。そのため、低解像度の画像形成装置であっても、パターンの偏りによるむらや、本来の網点線数より粗い線数のパターンが目立たず、本来の網点の角度とは異なる角度のパターンの偏りが抑制された見かけの良好な画像が得られるという効果がある。
【0013】
又、請求項6,7に係る発明の画像形成装置、及び請求項9に係る発明の閾値マトリックス作成方法によれば、閾値マトリックス作成部は、クラスタ型のFMスクリーンのハイライト部において、Lドットの画素塊と、Kドットの画素塊を混在させるようにしている。そのため、孤立した1ドットのドット再現性が悪い画像形成装置においても、数ドットの塊単位でドットを発生させることで、ハイライト部の濃度再現の安定した画像を提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は実施例1における画像形成装置の機能の概略を示す機能構成図である。
【図2】図2は実施例1における基本ドットの配置S1の例を示す図である。
【図3】図3は図2の基本ドットを中心とした画素の網点への分割の例を示す図である。
【図4】図4は図3の網点内の画素の階調の順番の例を示す図である。
【図5】図5は図1中のマトリックス作成部31を示す機能構成図である。
【図6】図6は図1中の閾値マトリックス作成部31の処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図7は図6中の網点間の優先順位決定処理P4の手順を示すフローチャートである。
【図8】図8は実施例1におけるポテンシャル曲線Qの例を示す図である。
【図9】図9は実施例1のd2で与えられる制限の概念を示す概念図である。
【図10】図10は実施例1のハーフトーン化画像の例を示す図である。
【図11】図11は比較例におけるベイヤ型配列の例を示す図である。
【図12】図12は比較例のハーフトーン化画像の例を示す図である。
【図13】図13は実施例2における基本ドットの配置S2の例を示す図である。
【図14】図14は実施例2におけるハーフトーン化画像の例を示す図である。
【図15】図15は実施例3における画像形成装置10Aの機能の概略を示す機能構成図である。
【図16】図16は図15中の閾値マトリックス作成部31Aを示す機能構成図である。
【図17】図17は図16中の網点間優先順位決定手段50での処理P50の手順を示すフローチャートである。
【図18】図18は実施例3におけるLドット毎に選択された基本ドットの例を示す図である。
【図19】図19は実施例3におけるハーフトーン化画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0016】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1における画像形成装置の機能の概略を示す機能構成図である。図2は、実施例1の基本ドットの配置S1の例を示す図である。図3は、図2の基本ドットを中心とした画素の網点への分割の例を示す図である。更に、図4は、図3の網点内の画素順番の例を示す図である。
N値化処理部30は、例えば、プログラム処理を行うプロセッサ等により構成される。
【0017】
図2〜図4を参照しつつ、図1の画像形成装置10における機能構成を説明する。
画像形成装置10は、描画部(色変換部)20、N値化処理部30及び画像形成部40で構成されている。そして、例えば、ホストコンピュータ等の外部装置60から入力される多値画像データに対し、描画部20及びN値化処理部30で所定の処理を施し、処理後の画像データにしたがって、画像形成部40が画像を出力する。
【0018】
外部装置60から画像形成装置10内の描画部20へ、例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)の8ビットの画像データが入力される。描画部20は、入力された画像データを、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の8ビットの画像データに色変換してN値化処理部30へ供給する。N値化処理部30は、色変換された画像データを、入力階調数未満の自然数Nの階調数のN値化画像データに変換して画像形成部40へ出力する。
【0019】
N値化処理部30は、色変換された画像データをハーフトーン化する処理部であり、例えば、画像形成部40で形成可能なドットのレベルが2値であれば、多値画像データを2値にハーフトーン化する。
【0020】
画像形成部40は、例えば、発光ダイオード(LED)プリンタ等の電子写真方式の印刷装置からなり、画像取得部41により取得された画像データや、インタフェース部42を介して受信した画像データを、記録紙上に形成する機能を有している。
【0021】
N値化処理部30は、入力される色変換された画像データをハーフトーン化画像に変換して出力する機能を有し、閾値マトリックス作成部31、閾値マトリックス記憶部38、及び比較部39から構成されている。閾値マトリックス記憶部38には、閾値マトリックス作成部31で予め作成された閾値マトリックスが格納されている。
【0022】
閾値マトリックス作成部31は、閾値マトリックス記憶部38へ予め格納しておく閾値マトリックスを作成するもので、基本ドット配置決定手段32、網点分割手段33、画素順番決定手段34、網点間順位決定手段35、画素順番決定手段36、及び画素値規格化手段37から構成されている。
【0023】
基本ドット配置決定手段32は、基本ドットの配置を決定する手段である。図2に、基本ドットの配置S1の例が示されている。図2に示された基本ドットの配置S1は、特定の角度及び周期をもっている。このように、特定の角度及び周期をもった基本ドットの配置の画面は、一般に、AMスクリーンと呼ばれている。
【0024】
網点分割手段33は、基本ドット配置決定手段32において決定された基本ドットを中心として、AMスクリーンを網点に分割する。図3に、図2における基本ドットKを中心とした画素の網点への分割の例が示されている。図3の例では、太線で囲まれた領域からなる網点内に、それぞれ18個の画素が含まれている。
【0025】
画素順番決定手段34は、網点分割手段33によって分割された網点内の画素について階調の順番を決定する。図4に、図3の網点内の画素順番が決定された例が示されている。図4に示された例では、画素順番として、0が付与された基本ドットを中心に、外側へ向かって、大きくなるように、1〜17の数字が各画素に付与されている。画素に付与された数字は、画素の階調を判定する段階を示し、小さい数字ほど低い閾値に対応している。
【0026】
網点間順位決定手段35は、網点分割手段33で分割された各網点の優先順位を決定する手段である。基本ドットの配置が、図2に示されたAMスクリーンの場合には、96×96=9216の画素が存在し、512の基本ドットを中心に512の網点が形成されるので、0〜511の優先順位が決定される。
【0027】
全画素順番決定手段36は、画素順番決定手段34による網点内の画素の順番と、網点間優先順位決定手段35による網点間の優先順位とに基づいて、AMスクリーン上の全画素9216について、階調の順番を決定するものである。
【0028】
画素値規格化手段37は、全画素順番決定手段36で決定された画素の順番を、入力階調に合わせて規格化することで、閾値マトリックスの全閾値を決定する手段である。例えば、入力階調数が256であれば、全画素数9216に対応する階調の順番を0〜255の閾値になるように規格化する。
【0029】
閾値マトリックス記憶部38は、閾値マトリックス作成部31で作成した閾値マトリックスを、予め格納するものであり、比較部39は、入力されるM(但し、Mは3より大きい自然数)値の階調を有する画像データと、閾値マトリックス記憶部38に格納されている1〜N−1の閾値とが比較され、N(但し、Nは2より大きい自然数)階調のハーフトーン化画像を出力する。
【0030】
閾値マトリックスには、画像データに対応するAMスクリーン上の全画素に対応する位置に、0〜N−1の閾値が割り振られており、M値の階調を有する画像データが、N−1個の閾値と比較されることによって、N階調のハーフトーン化画像を出力する。
【0031】
図5は、図1中のマトリックス作成部31を示す機能構成図である。
図5に基づき、網点間優先順位決定手段35の機能構成を詳細に説明する。網点間優先順位決定手段35は、網点分割手段33で分割された各網点の優先順位を決定する手段であって、基本ドット初期化手段35aと、変数初期化手段35bと、基本ドット無作為選択手段35cと、選択基本ドット番号付与手段35dと、ポテンシャル加算手段35eと、全基本ドット数判定手段35fとから構成されている。
【0032】
基本ドット初期化手段35aは、全ての基本ドットのポテンシャルに0を設定する手段である。変数初期化手段35bは、変数nに0を設定して初期化を行なう手段である。基本ドット無作為選択手段35cは、番号が与えられていない基本ドットの中で最もポテンシャルの低い基本ドット群の中から1つの基本ドットを無作為に選択する手段である。選択基本ドット番号付与手段35dは、直前に選択された基本ドットに番号nを付与する手段である。ポテンシャル加算手段35eは、直前に選択された基本ドットの位置にポテンシャルが付された場合に各基本ドットが受けるポテンシャルについて、未だ番号が与えられていない基本ドット各々の位置で計算し、各々のポテンシャルに加算する手段である。
【0033】
全基本ドット数判定手段35fは、変数nが基本ドット数と一致するか否かの判定する機能を有している。
【0034】
(実施例1の閾値マトリックスの作成方法)
図6は、図1中の閾値マトリックス作成部31の処理の流れを示すフローチャートである。
【0035】
図1〜図4を参照しつつ、図5の閾値マトリックスを作成する処理P1〜P6について説明する。
【0036】
(P1) 基本ドット配置決定処理
先ず、図1中の基本ドット配置決定手段32が、基本ドットの配置を決定する。基本ドットは網点の核となるドットで、基本ドットを二次元平面上に特定の周期と角度を持って繰り返し配置されるように位置を決定する。例えば、600DPIの画素ピッチを持つ二次元平面上に141線の周期と45度及び135度角度をもった基本ドットを配置した場合には、図2で示すようにある基本ドットに最隣接する2つの基本ドットとの位置関係が(3,3)及び(−3,3)となるように配置され、図2の例では、96×96の画素平面上に、512個の基本ドットが配置される。
【0037】
(P2) 網点分割処理
図1中の網点分割手段33が、各基本ドットを中心とした領域(網点)に画素を分割する。図3は、図2で示した141線の周期を持つように配置した基本ドットについて、各ドットを中心とした領域に画素を分割した例である。図3の黒く塗りつぶした画素が基本ドットであり、太線で囲まれた領域が各基本ドットと中心とした領域(網点)である。図3の例では、各網点に18個の画素が含まれている。
【0038】
(P3) 網点内画素順番決定処理
図1中の網点内画素順番決定手段34が、各網点に含まれる画素の順番を決定する。ここで決定する順番によって網点の成長時に現れる形状が決定される。図4は、図3で示した網点について、各網点に含まれる画素の順番を決定した例を示すものである。図4の例における各網点に含まれる画素の順番は、印刷によく使用される丸状のドットパターンを形成することを意図したものである。
【0039】
オフセット印刷や電子写真プリンタで使用するドットパターンは、通常、集中ドット型のドットパターンが用いられ、各網点の核(基本ドット)を中心に出力階調が高くなるにつれ、ドットパターンの黒の部分の面積が徐々に増加するように意図したものである。網点内画素順番決定処理P3で決定される網点内の画素の順番は、1つの網点について決定し、1つの網点で決定された順番が、全ての網点に適用される。
【0040】
(P4) 網点間優先順位決定処理
図1中の網点間優先順位決定手段35が、網点分割処理P2により分割された網点間での優先順位を決定する。
【0041】
(P5) 画素順番決定処理
図1中の全画素順番決定手段36が、網点内画素順番決定処理P3で決定された網点中の画素の順番と、網点間優先順位決定処理P4で決定された網点間の優先順位(番号)を使って、闘値マトリックスに含まれる全ての画素の順番を決定する。例えば、下式のように決定する。
(画素の順番)=(対象画素が含まれる網点の優先順位)+(対象画素の網点中の順番)×(網点の総数)
【0042】
例えば、図2で示した基本ドット配置で作成される関値マトリックスに含まれる画素は、96×96=9216であり、0〜9215の順番が重複なく全ての画素に与えられる。
【0043】
(P6) 画素値規格化処理
図1中の画素値規格化手段37が、画素順番決定処理P5において決定された画素の順番を入力階調に合わせて規格化することで、閾値マトリックスの全閾値を決定する。例えば、入力階調数が256であれば、閾値が0〜255になるように規格化する。
以上の処理P1〜P6により、本実施例1における閾値マトリックスが作成される。
【0044】
図1中の網点間優先順位決定手段35が行う網点間優先順位決定処理P4について、更に、詳細に説明する。
【0045】
網点間の優先順位は、基本ドットの配置から決定する。網点間の優先順位は、配置された全網点(基本ドット)に固有の番号を与えることで行なう。図2で示した基本ドットの配置であれば、基本ドット数は512であり、各基本ドットに0〜511の固有の番号が与えられる。
【0046】
図7は、図6中の網点間優先順位決定処理P4の手順を示すフローチャートである。
【0047】
図5を参照しつつ、網点間優先順位決定処理P4の流れを説明する。
図5において、網点間優先順位決定手段35の処理が開始されると、ステップS41へ進む。ステップS41において、基本ドット初期化手段35aが、全ての基本ドットのポテンシャルに0を設定し、ステップS42へ進む。ステップS42において、変数初期化手段35bが、変数nに0を設定して初期化を行ない、ステップS43へ進む。
【0048】
ステップS43において、基本ドット無作為選択手段35cが、番号が与えられていない基本ドットの中で最もポテンシャルの低い基本ドット群の中から1つの基本ドットを無作為に選択し、ステップS44へ進む。初期化直後の場合は、全ての基本ドットのポテンシャルは0であり、また、番号も与えられていないので、全ての基本ドットの中からランダムに1つの基本ドットが選択されることになる。ステップS44において、選択基本ドット番号付与手段35dが、直前に選択された基本ドットに番号nを付与し、ステップS45へ進む。
【0049】
ステップS45において、ポテンシャル加算手段35eが、直前に選択された基本ドットの位置にポテンシャルが付された場合に各基本ドットが受けるポテンシャルについて、未だ番号が与えられていない基本ドット各々の位置で計算し、各々のポテンシャルに加算する。各々のポテンシャルは、下式にしたがって与えられる。
E=1.0−1/{1−exp(d−d1)*k} (∵d<d2)
E=0.0 (∵d≧d2)
【0050】
ここで、dは、直前に選択された基本ドットと未だ番号が与えられていない基本ドット各々との距離である。kは、任意の定数であり、ポテンシャルのエッジの形状を与える。又、d1,d2も任意の定数であり、d1は、ポテンシャルが半分となる距離を与え、d2は、ポテンシャルを0とする距離を与える。
【0051】
図8に、実施例1のポテンシャル曲線Qの例が示されている。図8で示すように、選択基本ドットとの距離が小さい(選択基本ドットの中心付近)でポテンシャル値が1で平坦な特性を示している。選択基本ドットとの距離が大きくなるにしたがってシグモイド関数的に減少するポテンシャルである。上記のポテンシャルは、ステップS43で選択される基本ドットに制限を与えることを意図して設計されている。即ち、図8では、選択された基本ドットから6ドットの距離d1でのポテンシャルは、0.5であり、選択された基本ドットからの距離が9ドットの距離d2以上でのポテンシャルは、0を示している。
【0052】
図9は、基本ドットの中心からの距離d2で与える制限を示す概念図である。
図9で示すように、同一のポテンシャルを持つ複数の基本ドットの中から基本ドットをランダムに選択する際に、直前に選択された基本ドットDn−1からd2離れた箇所(図中の斜線部以外の領域X)から、次の基本ドットDnが選択されるように制限を与える。なお、基本ドットの中心からの距離d1は、網点の1辺の長さの半分程度の値に設定する。又、d1で与える距離により、選択されていく基本ドットの配置の間隔がd1で与えた距離に偏るように制限を与えることができる。又、kで、調整を行なえるポテンシャルの中心付近の平坦な部分は、初期の段階で選択された基本ドットに連結(クラスタ化)するように選択される基本ドットについて、そのポテンシャルの平坦な幅の範囲に含まれる基本ドットについての連結性を平坦な範囲に含まれない基本ドットよりも高めるように働く。
【0053】
ステップS46において、ポテンシャル加算手段35eが、変数nに1を加え、ステップS47へ進む。ステップS47において、全基本ドット数判定手段35fが、変数nが、基本ドット数(図2で示した基本ドット配置であれば基本ドット数は512)と一致するか判定を行い、一致しなければステップS43へ戻り、一致した場合(全ての基本ドットに番号が与えられたことになる)は、処理を終了する。
【0054】
以上のステップS41〜S47において、網点間優先順位決定手段35が、全ての基本ドットに固有の番号(優先順位)を決定する。決定される基本ドットの優先順位は、ランダムな配置ながら空間上である程度均一であり、又、高い周波成分がステップS45のポテンシャルに設定される距離d1の周期に偏った配置となる。ステップP4の処理が終了すると、図6の全画素順番決定処理P5へ進む。
【0055】
(比較例と実施例1とのハーフトーン化画像との比較)
(比較例のハーフトーン化画像)
図11は、比較例におけるベイヤ型の配列を示す図であり、図12、比較例のハーフトーン化画像の例を示す図である。
【0056】
比較例では、網点間の優先順位を決定するために、例えば、図4に示されたような網点内の画素順番である網点間の優先順位の決定に、図11に示されたベイヤ型の配列が用いられている。即ち、図に示された網点内の画素順番と、図11に示されたベイヤ型配列により決められた網点間優先順位とに基づいて、全画素の順番を決定している。4×4個の網点間の優先順位をベイヤ型の配列にならって規則的に決めて、閾値マトリックスを作成している。
【0057】
図12に、比較例ベイヤ型の配列により網点間の優先順位を決定した閾値マトリックスを使用してハーフトーン化画像が示されている。
【0058】
図12の8つのハーフトーン化画像は、上の段の画像111,112,113,114が、それぞれ出力階調1,3,5,7に対応し、下の段の画像115,116,117,118が、それぞれ出力階調9,11,13,15に対応している。図12を見て分かるように、画像113及び画像115で格子上の粗いパターンが目立っている。
【0059】
又、画像114では、本来の網点の角度(45度及び135度)とは異なる角度(0度及び90度)のパターンが生じている。このようなパターンの発生により、連続的に階調が変化するようなグラデーションの原画像をハーフトーン化した場合には、階調間でパターンの連続性が悪くなり見かけを悪化させる。
【0060】
そのため、本発明の実施例1では、網点間順位決定手段35が比較例とは異なる網点間優先順位決定処理P4を行っている。
【0061】
(実施例1のハーフトーン化画像)
図10(a)〜(d)は、実施例1におけるハーフトーン化画像の例を示す図である。
図10(a)〜(d)は、図2、図4で示した141線の周期と45度及び135度の角度を持った網点を、前述した網点間の優先順位を決定する際のポテンシャルに具体的なパラメータを与え作成した閾値マトリックスを用いた場合に得られるハーフトーン化画像を示す図である。
【0062】
特に、図10(a)は、d1=1.0,d2=48,k=2.0の場合のハーフトーン化画像の例が示されている。画像91a,92a,93a,94a,95a,96a,97a,98aは、それぞれ、出力階調1,3,5,7,9,11,13,15で発生するドットパターンを表している。
【0063】
図10の(b)は、d1=4.2226,d2=48,k=2.0の場合のハーフトーン化画像の例が示されている。画像91b,92b,93b,94b,95b,96b,97b、98bは、それぞれ、出力階調1,3,5,7,9,11,13,15で発生するドットパターンを表している。
【0064】
図10の(c)は、d1=6.0,d2=48,k=2.0の場合のハーフトーン化画像の例が示されている。画像91c,92c,93c,94c,95c,96c,97c,98cは、それぞれ、出力階調1,3,5,7,9,11,13,15で発生するドットパターンを表している。
【0065】
図10の(d)は、d1=8.4853,d2=48,k=2.0の場合のハーフトーン化画像の例が示されている。画像91d,92d,93d,94d,95d,96d,97d,98dは、それぞれ、出力階調1,3,5,7,9,11,13,15で発生するドットパターンを表している。
【0066】
先に説明したように、d1で与えるパラメータは、発生するパターンの高周波成分の周期を与えるパラメータであり、図10(d)<(c)<(b)<(a)の順に高周波成分の周波数が高くなるようにパラメータを与えており、実際に発生するドットパターンについても、図で見て分かるとおり、図10(d),(c),(b)の順に発生するドットパターンの高周波成分の周波数が高くなって見えることが分かる。
【0067】
しかしながら、図10(a),(b)間では発生するドットパターンについての見え方は、ほとんど変わらない。これは基本ドットのドット間距離に関係して生じるものである。先の基本ドット配置におけるドット間距離の最小値は、おおよそ4.2426(600DPIの画素間ピッチを1とした場合)であり、これより小さいドット間距離は存在しない。図10(a)では、前記のドット間隔の最小値より小さい距離を与えているため、結果、図10(b)と同様なドットパターンが発生する。また、図10(c),(d)で与えているd1は、それぞれ、先の基本ドット配置におけるドット間距離の2番目に小さいドット間距離(=6.0)、3番目に小さいドット間距離(=8.4853)であり、配置可能なドット間隔であるため、図10(c),(d)で発生するドットパターンが変化する。
【0068】
以上のように、周期的なドット位置に対して置かれていくドットの位置の、高周波成分の周期の偏りを変更する場合には、選択可能な周期が離散的となる。なお、ポテンシャルの中心付近の平坦部分で調整を行なう連結性についても上記の制限を受けるため、ポテンシャルの中心付近の平坦部分の幅は連結性を確保するために少なくともドット間距離の最小値の幅を持たせる必要がある。
【0069】
図10(a),(b)で発生するドットパターンは、出力階調7、9付近で、0度及び90度に偏って見え、図10(c),(d)で発生するパターンは0度及び90度の偏りがないことが分かる。
【0070】
又、図10(a)、(b)の出力階調7、9付近で発生するドットパターンの偏りは、図10(c),(d)のそれと比較して広い空間上での均一性が悪いことが分かる。
【0071】
なお、図10(a),(b)は、基本ドット配置において最小となるドット間隔をもつように網点間の優先順位を決定したものであり、図10(a),(b)で得られる結果は、ブルーノイズ特性に基づいて網点間の優先順位を決定した場合の結果と同様になる。図10(c),(d)で発生するドットパターンにおいて、ブルーノイズ特性に基づいて網点間の優先順位を決定する方法の問題点を解消している。
【0072】
以上のように、周期的なドット位置に対して、ランダムかつ空間上である程度均一になるように配置を決定していく場合には、なるべく高周波成分に偏らせるのでなく、周期的なドット位置において少なくとも2番目に小さいドット周期をもった高周波成分に偏らせた方が良いことが分かる。
【0073】
(実施例1の効果)
以上説明したように、実施例1の画像形成装置10及び閾値マトリックス作成方法によれば、低解像度の画像形成部40であっても、パターンの偏りによるむら及び本来の網点線数より粗い線数のパターンが、目立たず、本来の網点の角度とは異なる角度のパターンの偏りが抑制された見かけの良好な画像を提供できる。
【実施例2】
【0074】
(実施例2の構成)
実施例2の画像形成装置の構成は、実施例1の画像形成装置10の構成と同様であるので、構成の説明は省略する。又、閾値マトリックス留作成部31で行われる閾値マトリックスの作成法についは、閾値マトリックスを作成する素となる基本ドットの配置が異なる他は、実施例1と同様である。
【0075】
図13は、実施例2における基本ドットの配置S2の例を示す図である。
図13例では、600DPIの画素ピッチを有する二次元平面上に600線の周期、つまり、全ての画素が基本ドットとなるように配置する。128×128の画素平面上に16384個の基本ドットが配置されている。又、基本ドットに対応する網点は、1個の画素で構成され、網点内の順番については全ての画素が0である。
【0076】
(実施例2の動作)
図14(a)〜(c)は、実施例2のハーフトーン化画像の例を示す図である。
【0077】
図14(a)〜(c)では、上述の網点について、前述の網点間の優先順位を決定する際のポテンシャルに具体的なパラメータを与え作成した閾値マトリックスを用いた場合に得られるハーフトーン化画像が示されている。
【0078】
特に、図14(a)は、d1=1.4142,d2=64,k=4.0の場合のハーフトーン化画像の例が示されている。画像131a,132a,133a,134aは、それぞれ、出力階調7,64,128,192で発生するドットパターンを表している。
【0079】
図14(b)は、d1=3.0,d2=64,k=2.0の場合のハーフトーン化画像の例が示されている。画像131b,132b,133b,134bは、それぞれ、出力階調7,64,128,192で発生するドットパターンを表している。
【0080】
図14(c)は、d1=4.2426,d2=64,k=1.3の場合のハーフトーン化画像の例が示されている。画像131c,132c,133c,134cは、それぞれ、出力階調7,64,128,192で発生するドットパターンを表している。
【0081】
図14(a)〜(c)から分かる通り、どのパターンも特定の角度や周期を持たず、ランダムな位置を持った核ドットがクラスタを形成するように成長している。又、そのクラスタのサイズが、d1に与えるパラメータを大きくするにしたがって、図14(a)<図14(b)<図14(c)の順に大きくなっていることが分かる。
【0082】
ここで、図14(a)〜(c)に示されたような特定の角度及び周期を持たない核ドットの配置の画面は、一般に、クラスタ型のFMスクリーンと呼ばれている。
【0083】
(実施例2の効果)
以上説明したように、実施例2の画像形成装置10及び閾値マトリックス作成方法によれば、特定の角度や周期をもたないドットパターンを発生でき、そのクラスタのサイズを任意に調整できる。
【0084】
従って、原画像に周期的な画像が含まれている場合でもモアレが発生せず、又、クラスタのサイズを印刷装置に合わせて任意の調整を行なうことで濃度再現の安定した良好な画像を提供できる。
【実施例3】
【0085】
(実施例3の構成)
図15は、実施例3における画像形成装置10Aの機能の概略を示す機能構成図であり、実施例1の構成を示す図1中の共通の要素には共通の符号が付されている。
【0086】
本実施例3の画像形成装置10Aは、実施例1の画像形成装置10と構成及び機能が異なっている。即ち、本実施例3の画像形成装置10Aは、実施例1と同様の描画部(色変換部)20及び画像形成部40と等と、実施例1とは構成及び機能が異なるN値化処理部30Aとを有している。
【0087】
本実施例3のN値化処理部30Aは、実施例1のN値化処理部30と同様の閾値マトリックス記憶部37及び比較部38と、実施例1の閾値マトリックス作成部31とは構成及び機能が異なる閾値マトリックス作成部31Aとから構成されている。
【0088】
閾値マトリックス作成部31Aは、クラスタ型のFMスクリーンのハイライト部において、L(但し、Lは2以上の自然数。)ドットの画素塊と、K(但し、KはL未満の自然数。)ドットの画素塊を混在させることを特徴としている。
【0089】
本実施例3の閾値マトリックス作成部31Aは、閾値マトリックス記憶部37へ予め格納しておく閾値マトリックスを作成するもので、実施例1と同様の基本ドット配置決定手段32、網点分割手段33、網点分割手段33、画素順番決定手段34、全画素順番決定手段36、及び画素値規格化手段37と、実施例1とは構成及び機能の異なる網点間優先順位決定手段50とから構成されている。本実施例3においては、基本ドット配置決定手段32における基本ドットの配置が、図2に示されたようなAMスクリーンではなく、実施例2と同様に、図13に示された基本ドットの配列S2が選択させる。その他の点については、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0090】
図16は、図15中の閾値マトリックス作成部31Aを示す機能構成図であり、実施例1の構成を示す図1中の共通の要素には共通の符号が付されている。
【0091】
網点間優先順位決定手段50は、所定のパラメータL、TH1を設定することで、パラメータに応じて、クラスタ型のFMスクリーンのハイライト部において、Lドットの画素塊と、Kドットの画素塊を混在させるものである。
【0092】
網点間優先順位決定手段50は、基本ドット初期化手段51と、パラメータ設定手段52と、基本ドット無作為選択手段53と、選択基本ドット番号付与手段54と、付与番号閾値比較手段55と、隣接基本ドット選択番号付与手段56、第1のポテンシャル加算手段58と、第2のポテンシャル加算手段57と、全基本ドット数判定手段61とから構成されている。
【0093】
基本ドット初期化手段51は、基本ドットに付されるポテンシャルの値を0に設定し初期化する手段である。パラメータ設定手段52は、基本ドット選択時に付与される付与番号n(但し、nは0〜N−1の整数)を0に設定し、L及びハイライト部を決める閾値TH1(但し、TH1は0又は自然数)を設定する手段である。
【0094】
基本ドット無作為選択手段53は、付与番号nが付与されていない最もポテンシャルの低い基本ドット群の中から1つの基本ドットを無作為に一つ選択する手段である。選択基本ドット番号付与手段54は、直前に選択された基本ドットに前記付与番号を付与する手段である。付与番号閾値比較手段55は、選択基本ドット番号付与手段54が付与した付与番号nと、パラメータ設定手段52が設定した閾値TH1とを比較する手段である。
【0095】
隣接基本ドット選択番号付与手段56は、付与番号閾値比較手段の比較結果が、付与番号nが閾値TH1未満のとき、選択された基本ドットに隣接するL−1個の基本ドットを選択し、各々にn+1〜n+L−1の番号を付与する手段である。第1のポテンシャル加算手段58は、隣接基本ドット選択番号付与手段56により選択されたL個の基本ドットの位置にポテンシャルを付した場合に受けるポテンシャルを、付与番号nが付与されていない基本ドットのポテンシャルに加算するものである。
【0096】
第2のポテンシャル加算手段57は、付与番号閾値比較手段の比較結果が、付与番号nが閾値TH1以上のとき、選択された基本ドットの位置にポテンシャルを付した場合に受けるポテンシャルを、付与番号nが付与されていない基本ドットのポテンシャルに加算するものである。
【0097】
全基本ドット数判定手段61は、変数nが全基本ドット数と一致するかの判定を行い、一致しなければ、基本ドット無作為選択番号付与手段53へ一致していないことを知らせ、一致すれば、全画素順番決定手段36へ一致したことを知らせる機能を有している。
【0098】
第1のポテンシャル加算手段の加算結果と、第2のポテンシャル加算手段の加算結果とは、
全画素順番決定手段36に入力される。全画素順番決定手段36は、第1のポテンシャル加算手段の加算結果と、第2のポテンシャル加算手段の加算結果とに基づいて、全ての画素の階調の画素順番を決定する手段である。画素値規格化手段37は、全画素順番決定手段36が決定した画素順番を入力階調数Nに合わせて、1〜N−1の値の閾値に規格化する手段である。
【0099】
(実施例3の閾値マトリックスの作成方法)
実施例3では、図5に示された実施例1の閾値マトリックス作成部31の処理中の網点間優先順位決定処理P4の内容が、処理の内容が異なる網点間優先順位決定処理P50に変更されている。その他の処理P1〜P3、P5、及びP6については、図5に示された実施例1の閾値マトリックス作成部31の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0100】
図15中の網点間優先順位決定手段50が、基本ドット配置から網点間の優先順位を決定する。優先順位は、配置された全網点(基本ドット)に固有の番号を与えることで行なう。図13で示した基本ドット配置であれば基本ドット数は16384個であり、各基本ドットに0〜16383の固有の番号が与えられる。
【0101】
図17は、図16中の網点間優先順位決定手段50での処理P50の手順を示すフローチャートであり、更に、図18は、実施例3のLドット毎に選択された基本ドットを示す図である。
【0102】
図16を参照しつつ、図17の網点間優先順位決定手段50の処理の流れを説明する。
先ず、網点間の優先順位決定の処理が開始されると、ステップS51へ進む。ステップS51において、基本ドット初期化手段51が、全基本ドットのポテンシャルに0を設定し、ステップS52へ進み、ステップS52において、パラメータ設定手段52が、変数nに0、変数L及び閾値TH1を設定して初期化を行ない、ステップ53へ進む。
【0103】
ステップS53において、基本ドット無作為選択手段53が、番号が与えられていない基本ドットの中で最もポテンシャルの低い基本ドット群の中から1つの基本ドットをランダムに選択する。初期化直後の場合は、全て基本ドットのポテンシャルは0であり、また、番号も与えられていないので、全ての基本ドットの中からランダムに1つ選択され、ステップS54へ進む。
【0104】
ステップS54において、選択基本ドット番号付与手段54が、直前に選択された基本ドットに番号nを付与し、ステップS55へ進む。ステップS55において、付与番号閾値比較手段55が、変数nと閾値TH1とを比較し、変数nが閾値TH1より小さい場合はステップS56へ進み、それ以外の場合はステップS57へ進む。
【0105】
ステップS56において、隣接基本ドット選択番号付与手段56が、ステップS53で選択された基本ドットに隣接するL−1個の基本ドットを選択し、各々にn+1〜n+L−1の番号を付与する。例えば、パラメータLが4である場合には、ステップS56で選択された基本ドットに隣接する3個の基本ドットが図18で示すように選択され、それぞれ、番号n+1、n+2、n+3が付与され、ステップS58へ進む。
【0106】
ステップS58において、第1のポテンシャル加算手段58が、直前に選択されたL個の基本ドットの位置にポテンシャルが付された場合に各基本ドットが受けるポテンシャルについて、まだ番号が与えられていない基本ドット各々の位置で計算し、各々のポテンシャルに加算し、ステップS59へ進む。なお、ここで付すポテンシャルは実施例1と同様である。ステップS59において、第1のポテンシャル加算手段56が、変数nにLを加え、ステップS61へ進む。
【0107】
ステップS55で、変数nが閾値TH1より小さくない場合には、ステップS57へ進み、ステップS57において、第2のポテンシャル加算手段57が、ステップS53で選択された基本ドットの位置にポテンシャルが付された場合に各基本ドットが受けるポテンシャルについて、まだ番号が与えられていない基本ドット各々の位置で計算し、各々のポテンシャルに加算し、ステップ60へ進む。なお、ここで付すポテンシャルは実施例1と同様である。
【0108】
ステップS60において、第2のポテンシャル加算手段57が、変数nに1を加え、ステップS61へ進む。ステップS61において、全基本ドット数判定手段61が、変数nが全基本ドット数(図13で示した基本ドット配置であれば基本ドット数は16384)と一致するかの判定を行い、一致しなければステップS53へ戻り、一致した場合(全ての基本ドットに番号が与えられたことになる)は、処理を終了する。
【0109】
以上、ステップS51〜S61において、全ての基本ドットに固有の番号を決定する。決定される基本ドットの優先順位は、実施例1と同様、ランダムな配置ながら空間上である程度均一であり、また、高い周波成分がステップS57及びS58のポテンシャルに設定される距離d1の周期に偏った配置となる。また、優先順位(各基本ドットに与えられる番号)が閾値TH1より小さい場合には、Lドットの基本ドット群(塊)毎に優先順位が決定される。
【0110】
なお、実施例3における基本ドット配置は、実施例2と同様、図12の通りである。また、基本ドットに対応する網点は1個の画素で構成され、網点内の順番については全て画素が0である。上述の網点について、前述の網点間の優先順位を決定する際のポテンシャルに与えるパラメータを、d1=3.0,k=2.0,d2=64とし、ステップS52の変数L、閾値TH1に具体的なパラメータを与え作成した閾値マトリックスを用いた場合に得られるハーフトーン化画像について、以下説明する。
【0111】
(実施例3のハーフトーン化画像の評価)
図19(a)〜(c)は、実施例3におけるハーフトーン化画像の例を示す図である。
【0112】
実施例3で作成する閾値マトリックスを用いて得られるハーフトーン化画像について説明する。
【0113】
図19(a)は、L=4、TH1=0の場合の実施例3のハーフトーン化画像の例であり、画像181a,182a,183a,184aは、それぞれ出力階調7,14,28,50で発生するドットパターンを表している。
【0114】
図19(b)は、=4、TH1=516の場合の実施例3のハーフトーン化画像の例であり、画像181b,182b,183b,184bは、それぞれ出力階調7,14,28,50で発生するドットパターンを表している。
【0115】
図19(c)は、=4,TH1=3216の場合の実施例3のハーフトーン化画像の例であり、画像181c,182c,183c,184cは、それぞれ出力階調7,14,28,50で発生するドットパターンを表している。
【0116】
前述したように、閾値TH1より小さい優先順位は、Lドットの基本ドット塊毎に優先順位が決定され、TH1に対応する優先順位が対応する出力階調は、図14の例の場合TH1×255/16384で計算され、図19(b)の出力階調8以下、図19(c)の出力階調50以下で発生するドットパターンはLドット(4ドット)のドットの塊のみ発生する。又、図19(a)についてはTH1が0であるので、図19(b),(c)のようにLドット(4ドット)のドット塊とはならず、1ドットのドットが発生する。又、図19(c)のように4ドットのドット塊単位で配置を続けると、出力階調が大きくなるに伴いドットが密集するとむらが目立つようになるのに対し、図19(b)のように4ドットのドット塊単位での配置をある程度ドットが粗の状態(低い出力階調)で止め、その後のドット配置を4ドットより少ないドット塊単位で行なうことでむらが目立たなくなっていることが分かる。
【0117】
(実施例3の効果)
以上説明したように、実施例3の画像形成装置10A及び閾値マトリックスの作成方法によれば、クラスタ型のFMスクリーンを発生でき、更に、そのハイライト部分で発生するドットパターンについて設定されたドット数のドット塊のみ発生するように調整できる。
【0118】
従って、孤立した1ドットのドット再現性が悪い画像形成部40においても、数ドットの塊単位でドットを発生させることで、ハイライト部の濃度再現の安定した画像を提供できる。又、数ドットの塊単位でのドット配置について、ドットが粗の状態で止め、その後のドット配置をより少ないドット塊単位で行なうことで、ハイライト部のドットの密集によるむらが目立たない画像を提供できる。
【0119】
(その他の変形例)
本発明は、上記実施例や変形例に限定されず、更に、次のような他の変形例も適用可能である。
【0120】
実施例では、電子写真式の画像形成装置10,10Aに適用した例を説明したが、本発明は、レーザープリンタやインクジェットプリンタにも適用可能である。又、コピー機や複合機に使用する印刷エンジンとして本実施の内容を適用することも可能である。更に、ディスプレイ等の表示デバイスに本実施例の内容を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0121】
10,10A 画像形成装置
20 描画部(色変換部)
30,30A N値化処理部
31,31A 閾値マトリックス作成部
32 基本ドット配置決定手段
33 網点分割手段
34 網点内画素順番決定手段
35 網点間優先順位決定手段
35a、51 基本ドット初期化手段
35b 変数初期化手段
35c、53 基本ドット無作為選択手段
35d、54 選択基本ドット番号付与手段
35e ポテンシャル加算手段
35f、61 全基本ドット数判定手段
36 全画素順番決定手段
37 画素値規格化手段
38 閾値マトリックス記憶部
39 比較部
40 画像出力部
41 画像取得部
42 インタフェース部
52 パラメータ設定手段
55 付与番号閾値比較手段
56 隣接基本ドット選択番号付与手段
57 第2のポテンシャル加算手段
58 第1のポテンシャル加算手段
60 外部装置
61 全基本ドット数判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
M(但し、Mは3以上の自然数。)階調の画素値を有する画素の集合からなるM階調画像を、複数の網点によって表現する画像形成装置であって、
N(但し、Nは2以上の自然数。)階調の閾値マトリックスを作成する閾値マトリックス作成部と、
前記M階調画像の前記画素の各画素値と前記閾値マトリックスの対応する各閾値とを比較して、前記N階調の画素値を有する画素の集合からなるN階調画像に変換する比較部と、を備え、
前記閾値マトリックス作成部は、
基本ドットの配置を決定し、全ての前記画素を前記基本ドットの各配置点を中心とした複数の前記網点に分割し、分割された前記各網点内に含まれる前記画素の階調の順番を決定し、前記複数の網点の核となる前記基本ドットの配置点から、総数の半分の基本ドットの順位付けが終了した際の決定済みの前記基本ドットの配置が、前記基本ドットの配置で定まる特定の周期に偏るように決定された前記基本ドットの順位に基づいて、前記網点間の階調の優先順位を決定し、前記各網点内に含まれる前記画素の階調の前記順番と前記網点間の階調の前記優先順位とに基づいて、全ての前記画素の階調の閾値の順番を1〜N−1に決定し、前記1〜N−1の値の閾値を有する前記閾値マトリックスを作成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記閾値マトリックス作成部は、
前記基本ドットの配置を決定する基本ドット配置決定手段と、
全ての前記画素を前記基本ドットの各配置点を中心とした複数の前記網点に分割する網点分割手段と、
前記各網点に含まれる前記画素の階調の前記順番を決定する画素順番決定手段と、
前記複数の網点の核となる前記基本ドットの配置点から各ドットの中心として各ドットの中心付近で平坦であり、前記中心からの距離が大きくなると連続的に減少するポテンシャルを付し、前記ポテンシャルの和に基づいて前記網点間の階調の前記優先順位を決定する網点順位決定手段と、
前記画素順番決定手段の決定結果と前記網点順位決定手段の決定結果とに基づいて、全ての前記画素の階調の画素順番を決定する全画素順番決定手段と、
前記全画素順番決定手段で決定された前記画素順番を入力階調Nに合わせて、1〜N−1の値の閾値に規格化する画素値規格化手段と、
を有することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記基本ドット配置決定手段は、
前記基本ドットの配置として、FMスクリーン上の全ての画素を前記基本ドットとし、
前記網点分割手段は、
前記基本ドットの全てを網点とし、
前記画素順番決定手段は、
前記網点内の画素の順番として0を付与することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ポテンシャルは、
前記各ドットの中心で1であり、前記各ドットの中心からの距離が前記基本ドットの配置において少なくとも2番目に小さい前記ドット間の距離において値が0.5となることを特徴とする請求項2又は3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ポテンシャルは、前記各ドットの中心からシグモイド関数にしたがって減少することを特徴する請求項2〜4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
M(但し、Mは3以上の自然数。)階調の画素値を有する画素の集合からなるM階調画像を、クラスタ型のFMスクリーンにより、N(但し、Nは2以上の自然数。)階調のドットパターンに変換して画像形成を行う画像形成装置であって、
前記N階調の閾値マトリックスを作成する閾値マトリックス作成部と、
前記M階調画像の前記画素の各画素値と前記閾値マトリックスの対応する各閾値とを比較して、前記N階調の画素値を有する画素の集合からなるN階調画像に変換する比較部と、を備え、
前記閾値マトリックス作成部は、
前記クラスタ型のFMスクリーンのハイライト部において、L(但し、Lは2以上の自然数。)ドットの画素塊と、K(但し、KはL未満の自然数。)ドットの画素塊を混在させる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記閾値マトリックス作成部は、
基本ドットの配置を決定する基本ドット配置決定手段と、
全ての前記画素を前記基本ドットの各配置点を中心とした複数の前記網点に分割する網点分割手段と、
前記各網点に含まれる前記画素の階調の前記順番を決定する画素順番決定手段と、
前記基本ドットに付されるポテンシャルの値を0に設定し初期化する基本ドット初期化手段と、
前記基本ドット選択時に付与される付与番号n(但し、nは0〜N−1の整数)を0に設定し、L(但し、Lは2以上の自然数。)、及びハイライト部を決める閾値(但し、閾値は0又は自然数)を設定するパラメータ設定手段と、
前記付与番号nが付与されていない最もポテンシャルの低い基本ドット群の中から1つの基本ドットを無作為に1つ選択し、選択された前記基本ドットに前記付与番号を付与する基本ドット無作為選択番号付与手段と、
前記付与番号と前記閾値とを比較する付与番号閾値比較手段と、
前記付与番号閾値比較手段の比較結果が、前記付与番号が前記閾値未満のとき、選択された前記基本ドットに隣接するL−1個の前記基本ドットを選択し、各々にn+1〜n+L−1の番号を付与する隣接基本ドット選択番号付与手段と、
前記隣接基本ドット選択番号付与手段により選択されたL個の前記基本ドットの位置にポテンシャルを付した場合に受けるポテンシャルを、前記付与番号nが付与されていない前記基本ドットのポテンシャルに加算する第1のポテンシャル加算手段と、
前記付与番号閾値比較手段の比較結果が、前記付与番号nが前記閾値以上のとき、選択された前記基本ドットの位置にポテンシャルを付した場合に受ける前記ポテンシャルを、前記付与番号nが付与されていない前記基本ドットのポテンシャルに加算する第2のポテンシャル加算手段と、
前記第1のポテンシャル加算手段の加算結果と、前記第2のポテンシャル加算手段の加算結果とに基づいて、全ての前記画素の階調の画素順番を決定する全画素順番決定手段と、
前記全画素順番決定手段で決定された前記画素順番を入力階調数Nに合わせて、1〜N−1の値の閾値に規格化する画素値規格化手段と、
を備えたことを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
M(但し、Mは3以上の自然数)階調画像からN(但し、Nは2以上の自然数。)階調画像を得る際に用いる閾値マトリックスの作成方法であって、
基本ドットの配置を決定する基本ドット配置決定処理と、
前記基本ドットの各配置点を中心とした複数の網点に画素を分割する網点分割処理と、
前記各網点に含まれる前記画素の順番を決定する画素順番決定処理と、
前記基本ドットの配置から前記網点間の優先順位を決定する網点間優先順位決定処理と、
全ての前記画素の階調の画素順番を決定する全画素順番決定処理と、
前記画素順番を、入力階調Nに合わせて、1〜N−1の値の閾値に規格化する画素値規格化処理と、
を有することを特徴とする閾値マトリックスの作成方法。
【請求項9】
M(但し、Mは3以上の自然数。)階調画像からN(但し、Nは2以上の自然数。)階調画像を得る際に用いる閾値マトリックスの作成方法であって、
クラスタ型のFMスクリーンのハイライト部において、L(但し、Lは2以上の自然数。)ドットの画素塊と、K(但し、KはL未満の自然数。)ドットの画素塊を混在させることを特徴とする閾値マトリックスの作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−98881(P2013−98881A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241881(P2011−241881)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】