説明

画像形成装置及び階調補正方法

【課題】周期ムラによる濃度検出精度の低下を抑制して、高精度の階調補正を行うこと。
【解決手段】画像形成装置100は、階調補正の前処理として、中間転写ベルト11上にトナーパターンを作成し、どの周期の濃度ムラが最も大きいかを算出する。そして、最も大きな濃度ムラが現れる周期で、周期ムラを打ち消すように階調補正用のトナー像を形成する。これにより、どのような周期の濃度ムラが現れても、濃度検出精度の低下を抑制でき、高精度の階調補正を行うことができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複写機や、レーザビームプリンタ、ファクシミリ、ディジタル複合機等の画像形成装置及びそれに用いられる階調補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像形成装置では、温湿度などの装置周囲の環境や、装置の経時的変化などの外乱に起因して、トナー像の画像濃度が変動することがある。そこで、画像形成装置では、一般に、画像濃度の安定化を図るために、階調補正が行われる。
【0003】
例えば、画像形成装置では、感光体上にテスト用のトナー像として複数の階調からなる階調パターン像を形成し、この階調パターン像の濃度に基づいて階調補正が行われる。この階調補正は、電源投入時や、スリープ復帰時、ある所定の印刷枚数に達したとき、あるいは、外部環境が大きく変わった場合に、印字中の階調特性を補正するために行われる。
【0004】
具体的には、画像形成装置では、階調補正時に、中間転写ベルト上に階調パターン像を形成し、その各階調の濃度が濃度センサによって検出される。そして、検出された濃度が予め設定された目標濃度と一致するように現像バイアスを調節することで(つまり階調補正を行うことで)、所望の画像濃度を得るようになっている。実際上、この階調補正は、濃度センサによって得られた濃度検出値に基づき、それぞれの階調が所定の濃度となるように、画像データの入力階調を、制御部の階調変換テーブルにおいて補正することで行われる。
【0005】
ここで、階調パターン像の検出精度が悪いとそれに伴って階調補正の精度も悪くなるので、従来、階調パターン像の濃度を高精度で検出するために、多くの工夫がなされている。特許文献1及び2には、複数の階調パターン像を用いる技術が開示されている。さらに、特許文献3−8には、現像ローラや、中転転写ベルト、感光体の周期で現れるムラ(周期ムラ)を打ち消すように、複数の階調パターンを、上記周期の1/2や、M/N(M、Nは互いに素な自然数)の間隔で配置する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−171689号公報
【特許文献2】特開2008−26551号公報
【特許文献3】特開2010−134366号公報
【特許文献4】特開2007−264364号公報
【特許文献5】特開2006−47349号公報
【特許文献6】特開2007−3688号公報
【特許文献7】特開2006−343679号公報
【特許文献8】特開2010−134160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、階調パターン像を、ある特定の周期ムラを打ち消すような位置に固定して配置すると、別要因の周期ムラのほうが大きくなった場合に、大きいほうの周期ムラを打ち消すことができなくなる。その結果、階調パターンの濃度検出精度が悪くなってしまう。
【0008】
ちなみに、周期ムラの発生要因は、現像ローラや、感光体、中間転写ベルトなど複数存在するので、周期ムラの様態も様々である。
【0009】
従来の階調パターンの配置は、これらが十分に考慮されていない。その結果、濃度検出結果が周期ムラを大きく受けて、濃度検出の精度が低下するおそれがある。濃度検出の精度が低下すると、当然、階調補正の精度も低下する。
【0010】
本発明の目的は、周期ムラによる濃度検出精度の低下を抑制することで、高精度の階調補正を行うことができる、画像形成装置及び階調補正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の画像形成装置の一つの態様は、像担持体上にトナー像を形成する画像形成ユニットと、前記画像形成ユニットにより形成された階調補正用のトナー像の濃度を検出する濃度検出部と、を有し、前記濃度検出部によって得た濃度検出結果に基づいて階調補正を行う画像形成装置であって、前記濃度検出部によって得られた濃度検出結果に基づいて、濃度ムラの周期と、各濃度ムラ周期での濃度変動量と、を検出する濃度ムラ検出部を、具備し、前記画像形成ユニットは、前記濃度ムラ検出部により得られた前記濃度変動量に基づいて、前記像担持体上に形成する前記階調補正用のトナー像を変更する。
【0012】
本発明の階調補正方法の一つの態様は、画像形成装置の像担持体上に階調補正用のトナー像を形成し、このトナー像の濃度検出結果に基づいて階調補正を行う階調補正方法であって、前記像担持体上にトナーパターンを形成するステップと、前記トナーパターンの濃度ムラの周期と、各濃度ムラ周期での濃度変動量と、を検出するステップと、前記濃度変動量と、前記濃度ムラの周期とに基づいて、前記像担持体上に形成する前記階調補正用のトナー像の、個数及び又は配置を変更するステップと、前記像担持体上に形成された前記階調補正用トナー像の濃度を検出するステップと、検出された前記階調補正用トナー像の濃度に基づいて階調補正を行うステップと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、どのような周期の濃度ムラが現れても、この濃度ムラを打ち消すような階調補正用トナー像を形成できるので、周期ムラによる濃度検出精度の低下を抑制して、高精度の階調補正を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態の画像形成装置の全体構成を概略的に示す図
【図2】入力される元画像と実際のプリント画像との間の濃度の関係である、階調特性を示す図
【図3】階調パターン及び階調パッチの説明に供する図
【図4】トナーセンサによって検出した階調パターンの濃度検出値を、元画像濃度データに対応させて示した図
【図5】トナーセンサ出力値と濃度との関係を示す図
【図6】階調変換テーブル(図中の曲線L3)の様子を示す図
【図7】中間転写ベルト1周期分のトナーパターンを示す図
【図8】中間転写ベルトの1周分の濃度検出値を示す図
【図9】濃度ムラ検出部による周波数解析結果を示す図
【図10】どの周期の濃度変動量も所定の閾値以内の場合に形成される階調パターンを示す図
【図11】最も大きな濃度変動量の周期が現像ローラの周期の場合における濃度検出値(図11A)と、その場合に形成される階調パターン(図11B)とを示す図
【図12】最も大きな濃度変動量の周期が感光体の周期の場合における濃度検出値(図12A)と、その場合に形成される階調パターン(図12B)とを示す図
【図13】最も大きな濃度変動量の周期が中間転写ベルトの周期の場合における濃度検出値(図13A)と、その場合に形成される階調パターン(図13B)とを示す図
【図14】実施の形態による階調補正の処理手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
[1]全体構成
図1は、実施の形態の画像形成装置100の全体構成を示す概略図である。図1に示した画像形成装置100は、タンデム方式のカラーレーザプリンタである。
【0017】
図1の画像形成装置100は、記録紙Sに未定着のトナーを付着して画像を形成する作像装置10と、トナーを溶融して記録紙Sに定着させる定着装置20と、を有する。
【0018】
作像装置10は、中間転写ベルト11と、4つの画像形成ユニット12−1〜12−4と、一次転写ローラ13と、二次転写ローラ14と、を有する。画像形成ユニット12−1〜12−4は、中間転写ベルト11に沿って配置され、トナー像を形成する。一次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して感光体31に対向する位置に配置されており、各画像形成ユニット12−1〜12−4によって形成されたトナー像を中間転写ベルト11上に転写する。二次転写ローラ14は、中間転写ベルト11に転写された像を記録紙Sに転写する。
【0019】
中間転写ベルト11は、複数のローラ15−1〜15−4に架け回されている。中間転写ベルト11に対向する位置にはクリーニング装置16が配置され、クリーニング装置16は中間転写ベルト11上に残留したトナーを回収する。
【0020】
また、中間転写ベルト11に対向する位置には、トナーセンサ17が配置されている。トナーセンサ17は、階調補正時に、中間転写ベルト11上に形成された階調パターン(トナー像)の濃度を検出する。なお、階調補正時に中間転写ベルト11上に形成された階調パターンは、濃度検出が終わると、クリーニング装置16によって廃トナーとして除去される。
【0021】
トナーセンサ17の構成例について説明する。トナーセンサ17は、光学式のセンサである。トナーセンサ17は、光を発光する発光部と光を受光する受光部とを有し、発光部からトナーパッチに向け光を発光し、トナーパッチ上で反射された光を受光部で受光する。受光部は、受光素子を有し、受光素子で受けた光の量を電気信号に変換することでセンサ出力を得る。トナーパッチはベルト面とトナー面からなり、トナーセンサ17は、トナーによる隠蔽率(パッチ全体の面積に対するトナーが占める割合)を検出する。ベルト面から反射された光が少なくなるほどセンサ出力が小さくなる。トナーパッチの濃度が濃くなると、トナーによるベルト面の隠蔽率が高くなり、センサ出力が小さくなる。よって、センサ出力の大小によって、トナーによるベルト面の隠蔽率、つまりは、トナーパッチの濃度を検出することができる(図5参照)。なお、トナーセンサ17の構成は、上述の構成に限らず、濃度を検出することができるものであればよい。
【0022】
画像形成ユニット12−1はイエロー(Y)のトナー像を形成し、画像形成ユニット12−2はマゼンタ(M)のトナー像を形成し、画像形成ユニット12−3はシアン(C)のトナー像を形成し、画像形成ユニット12−4はブラック(BK)のトナー像を形成する。これらの画像形成ユニット12−1〜12−4は、中間転写ベルト11の上流から下流に沿って順に配置されている。
【0023】
各画像形成ユニット12(12−1〜12−4)は、感光体31と、感光体31を一様に帯電させるための帯電装置32と、帯電した感光体1に画像露光を行うための露光装置33と、露光によって形成された静電潜像に各色のトナーで現像を行うための現像器34と、を有する。
【0024】
現像器34は、現像ローラ35を有し、現像ローラ35から感光体31にトナーを付着させる。感光体31に対向する位置にはクリーナ36が配置され、クリーナ36は感光体31に残留したトナーを回収する。全ての画像形成ユニット12−1〜12−4は、制御部40によって制御される。
【0025】
次に、この画像形成装置100の動作を説明する。
【0026】
画像形成ユニット12−1〜12−4の感光体31上に現像されたトナー像は、中間転写ベルト11との接触位置で、一次転写ローラ13によって、中間転写ベルト11上に一次転写される。
【0027】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー像は、各画像形成ユニット12−1〜12−4を通過するごとに、各色がその上に重ねられる。これにより、最終的に、フルカラーのトナー画像が、中間転写ベルト11上に形成される。
【0028】
次に、中間転写ベルト11上のフルカラーのトナー像は、中間転写ベルト11の下流において、二次転写ローラ14によって、記録紙Sに一括して二次転写される。
【0029】
次に、記録紙Sは、記録紙Sの搬送路の下流にある定着装置20を通過することによって、トナー像が定着されて、排紙トレー(図示せず)上に排紙される。なお、記録紙Sは、カセット(図示せず)に納められており、このカセットから1枚ずつ二次転写ローラ14まで搬送される。
【0030】
なお、一次転写後、感光体31に残留したトナーは、下流に配置されたクリーナ36によって除去され、図示しない廃トナーボックスへ回収される。また、二次転写後に、中間転写ベルト11上に残留したトナーは、クリーニング装置16によって回収される。
【0031】
ここで、画像形成装置100においては、温湿度などの装置周囲の環境や、装置の耐久などの外乱に起因して、トナー像の画像濃度が異なることがある。そこで、画像形成装置100では、画像濃度の安定化を図るため、中間転写ベルト11上にテスト用(階調補正用)のトナー像を形成し、このテスト用のトナー像の濃度に基づいて、画像形成ユニット12−1〜12−4でのトナー付着量を制御するようになっている。
【0032】
具体的には、中間転写ベルト11上に形成されるトナー像のトナー付着量は、現像器34によって変更される。中間転写ベルト11に形成されるトナー像における中間転写ベルト11の周方向の長さは、現像器34及び露光装置33によって変更される。
【0033】
制御部40は、現像器34及び露光装置33を制御することにより、上記トナー付着量及びトナー像の長さを制御する。実際上、画像形成装置100は、階調補正時には、中間転写ベルト11上にテスト用のトナー像を形成し、このトナー像の濃度をトナーセンサ17で検出する。画像形成装置100は、この濃度検出結果に応じて、制御部40に設けられた階調変換テーブルを補正することで、階調補正を行う。画像形成装置100は、記録紙Sへのプリント時(つまり実際のプリント時)には、補正された階調変換テーブルを用いて、現像器34を制御することで、中間転写ベルト11上に濃度が補正されたトナー像を形成する。
【0034】
制御部40には、濃度ムラ検出部41からの検出結果が入力される。濃度ムラ検出部41は、トナーセンサ17からの濃度検出結果を入力し、濃度ムラの周期と、各濃度ムラ周期での濃度変動量と、を求める。さらに、濃度ムラ検出部41は、濃度ムラの周期の中で最も大きな濃度変動量が現れる周期を求め、この周期と最も大きな濃度変動量とを制御部40に出力する。制御部40は、この周期及び濃度変動量に基づいて、階調補正用のトナー像の個数及び又は配置を決定する。
【0035】
[2]階調補正
次に、階調補正について詳しく説明する。なお、本明細書では、「階調」を「濃度」と言い換えてもよく、逆に、「濃度」を「階調」と言い換えてもよい。
【0036】
図2は、入力された元画像データで示される濃度をO.D.(Original Density)とし、記録紙S上に出力されたプリント画像の濃度をI.D.(Image Density)とした場合の、濃度O.D.と濃度I.D.との関係である階調特性を示す図である。濃度O.D.と濃度I.D.との関係において、図2の階調特性直線L1で示すように線形な関係が維持されれば、理想的なプリント画像を得ることができる。
【0037】
しかし、実際には、濃度O.D.と濃度I.D.との関係は、温湿度などの装置周囲の環境や、装置の耐久、製造のばらつきなどの変動要因により、図2の階調曲線L2で示すように、非線形な関係となる。この結果、プリント画像の濃度は、入力される元画像データに対して、階調ごとに大きく変化してしまう。階調曲線L2からも分かるように、通常は、元画像データが低濃度の領域では、元画像濃度O.D.よりもプリント画像濃度I.D.が低くなるので、色飛びが発生し、極めて濃度の薄いプリント画像は記録紙S上に再現することが困難となる。また、元画像データが高濃度の領域では、元画像濃度O.D.よりもプリント画像濃度I.D.が高くなるので、色つぶれが発生し、最大濃度付近の濃度差を記録紙S上に再現することが困難となる。
【0038】
そこで、プリント画像の濃度を、入力された元画像データで示される濃度に一致させるためには、階調特性を補正する必要がある。具体的には、階調補正によって、濃度O.D.と濃度I.D.との関係を、全階調において安定して線形なものにする。実際上、階調補正は、制御部40に設けられた階調変換テーブルを補正することで行われる。
【0039】
階調変換テーブルの作成方法について説明する。画像形成装置100は、階調補正時に、図3に示すような階調パターン50のトナー像を中間転写ベルト11上に形成し、この階調パターン50の濃度をトナーセンサ17によって検出する。階調パターン50は、階調の異なる複数の階調パッチP1〜P10により構成されている。
【0040】
図4は、トナーセンサ17によって検出した階調パターン50の濃度(プリント画像濃度)検出値を、元画像濃度データに対応させて示したものである。図中の黒丸がそれぞれの各階調パッチP1〜P10(図3)の濃度検出値を表している。濃度検出値は、図5に示すように、あらかじめ作成しておいたトナーセンサ17のセンサ出力値と濃度との関係を示す変換テーブルを用いて、センサ出力値から濃度に変換することで求めることができる。図4から分かるように、濃度検出値は、階調曲線L2上に存在し、目標階調特性直線L1からずれている。そこで、このずれを補正するような階調補正が必要である。
【0041】
図6は、制御部40に設けられる階調変換テーブルの様子を示すものである。図6における、曲線L3が補正された階調変換テーブルのデータを示す。曲線L3で示される補正データは、階調曲線L2の目標階調特性直線L1からのずれを相殺する値とされている。つまり、元画像データが入力されたときに、その元画像データに対応する曲線L3上の補正制御データを用いて画像形成ユニット12−1〜12−4のトナー像形成動作を制御すれば、トナー像の濃度を目標階調曲線L1上の濃度にすることができる。
【0042】
[3]本実施の形態による階調補正用のトナー像、及び、階調補正
次に、本実施の形態による階調補正用のトナー像の形成方法と、階調補正の方法について、詳しく説明する。
【0043】
本実施の形態の場合、階調補正時に中間転写ベルト11上に形成する階調パターン50(図3)は、最大階調を100%として、100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%の階調パッチP1〜P10が隣り合ってつながったものにより構成される。階調パターン50の長さは、各階調パッチP1〜P10がトナーセンサ17で精度良く検出できる長さとする。階調パターン50の幅は、トナーセンサ17の口径、トナーセンサ17の取り付け、画像の主走査方向の作像位置などが振れても、十分に検出できる幅とする。現像ローラ35の直径を16mmとすると、現像ローラ35の1周に相当する中間転写ベルト11上での長さは、16mm×3.14/1.5=33.5mmとなる。ここで、1.5は現像ローラ35と感光体31の周速比である。
【0044】
実施の形態の画像形成装置100は、階調補正の前処理として、図7に示すように、中間転写ベルト1周分のトナーパターン60を中間転写ベルト上に作成し、トナーパターン60をトナーセンサ17で検出する。トナーパターン17の階調は、一様とする。トナーセンサ17は、得られたセンサ出力を図5の関係に当てはめることにより、濃度検出値を得、これを濃度ムラ検出部41に出力する。具体的には、図8に示したような、中間転写ベルト11の1周分の濃度検出値が、濃度ムラ検出部41に入力される。
【0045】
濃度ムラ検出部41は、中間転写ベルト11の1周の濃度検出値の推移を求める。濃度ムラ検出部41は、その濃度推移の周波数を解析するために、濃度検出値をフーリエ変換して、周期ごとの濃度変動量を算出する。つまり、濃度ムラ検出部41は、図9に示したような、周波数解析結果を得る。最後に、濃度ムラ検出部41は、最も大きな濃度変動量が現れる周期を求める。図9の例は、現像ローラ35の周期が最も大きな濃度ムラとなる場合である。濃度ムラ検出部41は、この現像ローラ35の周期と、その濃度変動量と、を制御部40に出力する。
【0046】
制御部40は、入力された、濃度変動量の大きさと、最も大きな濃度変動量となる周期とに基づいて、階調補正用の階調パターンの個数と配置を、以下のように場合分けして決定する。
【0047】
■場合1:どの周期の濃度変動量も所定の閾値以内の場合
この場合、図10に示すように、階調パターン50は、中間転写ベルト11上に1個だけ形成される。このように、階調パターン50を1個だけ形成するのは、場合1では、小さい周期ムラしか発生しないためである。
【0048】
ここで、図10の階調パターン50をトナーセンサ17で検出したときのトナーセンサ出力値(V)を、IDC0、IDC10、IDC20、IDC30、IDC40、IDC50、IDC60、IDC70、IDC80、IDC90、IDC100 とする。IDC0は階調0%であり、トナーが全く付着されていない中間転写ベルト11のベース面の出力値である。IDC50は、階調50%の階調パッチを検出したときのトナーセンサ出力値である。各階調パッチそれぞれに得たトナーセンサ出力値を、あらかじめ定めておいた変換式(図5)を用いて、それぞれ濃度検出値に変換する。
【0049】
このように、どの周期の濃度ムラも小さいときには、複数の階調パターンを作成して平均するといった処理を行わなくても検出の精度が悪くならない。複数の階調パターンを作成する必要がないので、トナー消費量が削減できるし、階調補正の所要時間を短縮できる。
【0050】
■場合2:最も大きな濃度変動量が所定の閾値より大きく、かつ、その濃度変動量が得られる周期が、現像ローラの周期の場合
この場合、図11に示すように、階調パターン50−1、50−2は、中間転写ベルト11上に2個形成される。
【0051】
2個の階調パターン50−1、50−2の間隔(シフト量)は、現像ローラ35の周期のムラを打ち消すように、現像ローラ35の1周に相当する中間転写ベルト11上の長さの1/2の5倍となるような間隔とする。現像ローラ35の1周に相当する中間転写ベルト11上での長さが33.5mmならば、間隔(シフト量)は83.75mmとする。
【0052】
なお、階調パターン50の間隔(シフト量)を、周期の1/2の奇数倍に設定すれば、周期ムラを打ち消すことができる。また、階調パターン50の間隔(シフト量)は、周期の1/3や他の値でもよく、要は、周期ムラを打ち消すことができる間隔であればよい。つまり、加算したときに、周期ムラによる濃度の上下変動が打ち消させる位置に、階調パターン50を形成すればよい。
【0053】
ここで、図11Bの階調パターン50−1、50−2をトナーセンサ17で検出したときのトナーセンサ出力値(V)において、1個目の階調パターン50−1のトナーセンサ出力値(V)を、IDC0_1、IDC10_1、IDC20_1、IDC30_1、IDC40_1、IDC50_1、IDC60_1、IDC70_1、IDC80_1、IDC90_1、IDC100_1 とし、2個目の階調パターン50−2のトナーセンサ出力値(V)を、IDC0_2、IDC10_2、IDC20_2、IDC30_2、IDC40_2、IDC50_2、IDC60_2、IDC70_2、IDC80_2、IDC90_2、IDC100_2 とする。そして、次式に示すように、各階調パッチごとに2個の検出値を平均する。次式において、IDC0_ave、IDC10_ave、IDC20_ave、IDC30_ave、IDC40_ave、IDC50_ave、IDC60_ave、IDC70_ave、IDC80_ave、IDC90_ave、IDC100_aveは、各階調ごとの平均値である。
IDC0_ave=(IDC0_1 + IDC0_2)/2
IDC10_ave=(IDC10_1 + IDC10_2)/2


IDC100_ave=(IDC100_1 + IDC100_2)/2
【0054】
画像形成装置100は、各階調パッチそれぞれについて求めた上記平均値を、あらかじめ定めておいた変換式(図5)を用いて、濃度検出値に変換する。
【0055】
■場合3:最も大きな濃度変動量が所定の閾値より大きく、かつ、その濃度変動量が得られる周期が、感光体31の周期の場合
この場合、図12に示すように、階調パターン50−1、50−2は、中間転写ベルト11上に2個形成される。
【0056】
2個の階調パターン50−1、50−2の間隔(シフト量)は、感光体31の周期のムラを打ち消すように、感光体31の1周に相当する中間転写ベルト11上の長さの1/2の3倍となるような間隔とする。感光体31の1周に相当する中間転写ベルト11上での長さが94.2mmならば、間隔(シフト量)は141.3mmとする。
【0057】
なお、この間隔(シフト量)は、場合2で述べたように、周期ムラを打ち消すことができる間隔であればよい。また、場合2で述べたように、対応する階調パッチの平均値を求めて、それを基に濃度検出値を得ればよい。
【0058】
■場合4:最も大きな濃度変動量が所定の閾値より大きく、かつ、その濃度変動量が得られる周期が、中間転写ベルト11の周期の場合
この場合、図13に示すように、階調パターン50−1、50−2は、中間転写ベルト11上に2個形成される。
【0059】
2個の階調パターン50−1、50−2の間隔(シフト量)は、中間転写ベルト11の周期のムラを打ち消すように、中間転写ベルト11の1周の長さの1/2となるような間隔とする。
【0060】
なお、この間隔(シフト量)は、場合2で述べたように、周期ムラを打ち消すことができる間隔であればよい。また、場合2で述べたように、対応する階調パッチの平均値を求めて、それを基に濃度検出値を得ればよい。
【0061】
場合1、場合2、場合3、場合4のいずれの場合においても、上述したように各階調の濃度検出値が得られたら、次に、濃度検出値に基づいて階調補正を行うための階調変換テーブル(図6の曲線L3)を算出して、これを保存する。実際の印刷時には、この階調変換テーブルを用いて、元画像濃度データを補正濃度制御データに変換して、画像形成ユニット12−1〜12−4のトナー像形成動作を制御することで、階調特性を線形にすることができる。
【0062】
次に、図14を用いて、本実施の形態による階調補正の処理手順について説明する。
【0063】
画像形成装置100は、先ず、ステップS0で処理を開始し、続くステップS1で階調補正を行うタイミングか否か判断する。画像形成装置100は、階調補正を行うタイミング(すなわち、電源投入時や、スリープ復帰時、あるいは、外部環境が大きく変わったタイミング)になると(ステップS1;YES)、ステップS2に進む。
【0064】
ステップS2では、制御部40が図示しない印刷枚数カウンタからのカウント値に基づいて、濃度ムラを調べるための印刷枚数に達したか否か判断する。制御部40は、例えば印刷枚数が1000枚になる度に濃度ムラを調べる枚数になったと判断する。制御部40は、濃度ムラを調べるための印刷枚数に達したと判断すると(ステップS2;YES)、ステップS3に移る。
【0065】
ステップS3では、画像形成ユニット12−1〜12−4が、図7に示したように、中間転写ベルト11上に中間転写ベルト11の1周分のトナーパターン60を形成する。続くステップS4では、トナーセンサ17がトナーパターン60についての濃度検出値を得る。続く、ステップS5では、濃度ムラ検出部41がステップS4で得られた濃度検出値の推移をフーリエ変換することで、図9に示したような、周波数解析結果を得る。ステップS6では、濃度ムラ検出部41によって、濃度ムラが最も大きい周期(つまり、最も大きな濃度変動量が現れる周期)を算出する。このようにして濃度ムラ検出部41で求められた濃度変動量及び周期の情報は、制御部40に与えられる。
【0066】
ステップS7では、制御部40がいずれの濃度ムラも所定の濃度差以内(つまり、どの周期の濃度変動量も所定の閾値以内)か否かを判断し、肯定結果を得ると、ステップS8に移る。ステップS8では、図10に示したように、画像形成ユニット12−1〜12−4によって、階調パターン50を中間転写ベルト11上に1個だけ形成する。ステップS9では、各階調のパッチP1〜P10をトナーセンサ17によって検出する。なお、ステップS8、S9の処理は、上述した場合1の処理に相当する。
【0067】
一方、ステップS7で否定結果が得られると、ステップS10に移る。ステップS10では、制御部40が、最も大きなムラが中間転写ベルト11の周期か否か判断する。
【0068】
ステップS10で肯定結果が得られると、ステップS11に移り、図13に示したように、画像形成ユニット12−1〜12−4によって、中間転写ベルト11上に2個の階調パターン50−1、50−2を形成する。そして、この2個の階調パターン50−1、50−2の間隔(シフト量)は、中間転写ベルト11の周期のムラを打ち消すようなものとする。この処理は、上述した場合4の処理に相当する。
【0069】
一方、ステップS10で否定結果が得られると、ステップS12に移る。ステップS12では、制御部40が、最も大きなムラが感光体31の周期か否か判断する。
【0070】
ステップS12で肯定結果が得られると、ステップS12に移り、図12に示したように、画像形成ユニット12−1〜12−4によって、中間転写ベルト11上に2個の階調パターン50−1、50−2を形成する。そして、この2個の階調パターン50−1、50−2の間隔(シフト量)は、感光体31の周期のムラを打ち消すようなものとする。この処理は、上述した場合3の処理に相当する。
【0071】
一方、ステップS10で否定結果が得られると、ステップS14に移る。ステップS14では、図11に示したように、画像形成ユニット12−1〜12−4によって、中間転写ベルト11上に2個の階調パターン50−1、50−2を形成する。そして、この2個の階調パターン50−1、50−2の間隔(シフト量)は、現像ローラ35の周期のムラを打ち消すようなものとする。この処理は、上述した場合2の処理に相当する。
【0072】
画像形成装置100は、ステップS11、S13又はS14の処理の後、ステップS15の処理に進む。ステップS15では、各階調のパッチP1〜P10をトナーセンサ17によって検出する。続くステップS16では、制御部40が各階調ごとにトナー検出値を平均する。
【0073】
画像形成装置100は、ステップS17で、各階調ごとに、トナーセンサ検出値を濃度検出に変換する。ステップS18では、濃度検出値から階調特性を算出する。ステップS19では、得られた階調特性から、階調変換テーブルを算出することで、階調補正を行う。具体的には、制御部40が、図6の曲線L3を階調補正後の階調変換テーブルとして作成する。ステップS20では、階調補正の結果を、印字中の設定に反映する。そして、ステップS21で、階調補正処理手順を終了する。
【0074】
なお、上述した例では、最も大きな濃度変動が現れる周期が、現像ローラ周期、感光体周期、又は、中間転写ベルトの周期のいずれであるかを検出した場合について述べたが、検出する周期はこれらの周期に限らない。要は、周波数解析により、最も大きな濃度ムラが現れると周期を検出し、この周期に基づいて、周期ムラが打ち消されるように、階調パターン等のトナー像の配置を決定すればよい。
【0075】
また、上述した例では、階調補正の前処理として、図7に示したように、中間転写ベルト1周分のトナーパターン60を中間転写ベルト11上に作成し、トナーパターン60をトナーセンサ17で検出したが、トナーパターン60の長さは必ずしも中間転写ベルト11の1周分でなく、それよりも短くてもよい。但し、トナーパターン60の長さを、中間転写ベルト11の1周分よりも短くすると、中間転写ベルト11に起因する周期ムラは検出対象外となる。つまり、トナーパターン60の長さを、中間転写ベルト11の1周分としたのは、画像形成装置100で想定される周期が最長の周期ムラは中間転写ベルト11だからである。
【0076】
また、上述した例では、最も大きな濃度変動量が所定の閾値より大きい場合(場合2、場合3、場合4)に形成する階調パターンの個数を2個としたが、この個数は2個に限らず、例えば3個でも4個でもよい。要は、濃度変動量の閾値判定結果に応じて、形成する階調パターンの個数を変更すればよい。
【0077】
また、上述の例では、濃度を検出するための階調パターンとして、階調の異なる10個の階調パッチP1〜P10からなる階調パターン50を用いたが、階調パターンを構成する階調パッチの数は10個に限らない。さらに、階調補正用のトナー像は、階調パターンに限らない。
【0078】
また、上述の例では、像担持体が中間転写ベルト11である場合について説明したが、感光体ベルト、感光体ドラム、又は、中間転写ドラムが像担持体である画像形成装置にも同様に適用できる。
【0079】
さらに、本発明の画像形成装置は、フルカラーの複写機、プリンタ、FAX、又は、これらの複合機などのいずれにでも適用できる。
【0080】
[4]効果
以上のように、本実施の形態によれば、濃度ムラの周期と、各濃度ムラ周期での濃度変動量と、を検出する濃度ムラ検出部41を設け、濃度ムラ検出部41により得られた濃度変動量に基づいて、中間転写ベルト11上に形成する階調補正用のトナー像の個数及び配置を変更した。具体的には、階調補正の前処理として、中間転写ベルト11上にトナーパターンを作成し、どの周期の濃度ムラが最も大きいかを算出してから、最も大きな濃度ムラが現れる周期で、周期ムラを打ち消すように階調補正用のトナー像を形成した。これにより、どのような周期の濃度ムラが現れても、濃度検出精度の低下を抑制でき、高精度の階調補正を行うことができるようになる。
【0081】
以上、本発明の各実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記各装置の構成および動作についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【符号の説明】
【0082】
10 作像装置
11 中間転写ベルト
12−1、12−2、12−3、12−4 画像形成ユニット
17 トナーセンサ
31 感光体
32 帯電装置
33 露光装置
34 現像器
35 現像ローラ
40 制御部
41 濃度ムラ検出部
50 階調パターン
60 トナーパターン
100 画像形成装置
S 記録紙
P1〜P10 階調パッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上にトナー像を形成する画像形成ユニットと、前記画像形成ユニットにより形成された階調補正用のトナー像の濃度を検出する濃度検出部と、を有し、前記濃度検出部によって得た濃度検出結果に基づいて階調補正を行う画像形成装置であって、
前記濃度検出部によって得られた濃度検出結果に基づいて、濃度ムラの周期と、各濃度ムラ周期での濃度変動量と、を検出する濃度ムラ検出部を、具備し、
前記画像形成ユニットは、前記濃度ムラ検出部により得られた前記濃度変動量に基づいて、前記像担持体上に形成する前記階調補正用のトナー像を変更する、
画像形成装置。
【請求項2】
前記濃度ムラの周期の中で、最も大きな濃度変動量が現れる周期に基づいて、前記階調補正用のトナー像の配置を決定する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成ユニットは、前記濃度変動量に基づいて、前記階調補正用のトナー像の個数を変更する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成ユニットは、
前記濃度変動量に基づいて、前記階調補正用のトナー像の個数を変更し、
かつ、
前記濃度ムラの周期の中で、最も大きな濃度変動量が現れる周期に基づいて、前記階調補正用のトナー像の配置を決定する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成ユニットによって、前記像担持体1周分のトナーパターンを前記像担持体上に形成し、
前記濃度ムラ検出部によって、前記前記像担持体1周分のトナーパターンの濃度ムラの周期と、各濃度ムラ周期での濃度変動量と、を検出し、
前記画像形成ユニットによって、前記濃度変動量と、前記濃度ムラの周期とに基づいて、前記像担持体上に形成する前記階調補正用のトナー像の、個数及び又は配置を変更する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記階調補正用のトナー像は、それぞれ階調の異なる複数の階調パッチにより構成された階調パターンであり、
前記画像形成ユニットは、前記濃度変動量が閾値未満の場合には、前記像担持体上に第1の個数の前記階調パターンを形成し、前記濃度変動量が前記閾値以上の場合には、前記像担持体上に第1の個数よりも多い第2の個数の前記階調パターンを形成する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記画像形成ユニットによって形成される複数の前記階調パターンは、
同一の階調パターンであり、かつ、最も大きな濃度変動量が現れる周期による周期ムラが互いに相殺される位置に形成される、
請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
画像形成装置の像担持体上に階調補正用のトナー像を形成し、このトナー像の濃度検出結果に基づいて階調補正を行う階調補正方法であって、
前記像担持体上にトナーパターンを形成するステップと、
前記トナーパターンの濃度ムラの周期と、各濃度ムラ周期での濃度変動量と、を検出するステップと、
前記濃度変動量と、前記濃度ムラの周期とに基づいて、前記像担持体上に形成する前記階調補正用のトナー像の、個数及び又は配置を変更するステップと、
前記像担持体上に形成された前記階調補正用トナー像の濃度を検出するステップと、
検出された前記階調補正用トナー像の濃度に基づいて階調補正を行うステップと、
を含む階調補正方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−230312(P2012−230312A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99499(P2011−99499)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】