説明

画像形成装置及び駆動伝達軸継手

【課題】画像品質を改善すべく、軸継手部分での回転速度変動と振動伝播との両方を抑制するとともに、設計変更に対しても早期且つ柔軟に対応することのできる画像形成装置及び駆動伝達軸継手を提供する。
【解決手段】回転駆動源60からの回転駆動力を受ける回転駆動部材62と、感光体ドラム20を含み、着脱可能に構成された画像形成ユニット30と、の間に介在して、回転駆動部材62からの回転駆動力を前記感光体ドラム20に伝達する、画像形成装置1に使用される駆動伝達軸継手40であって、駆動伝達軸継手40が、高剛性材料58及び防振材料56を含んでなり、防振材料56が高剛性材料58を駆動伝達軸継手40の軸方向で分断するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ等の画像形成装置およびそれに用いられる駆動伝達軸継手に関する。詳細には、本発明は、感光体を含む画像形成ユニットが着脱可能な画像形成装置、およびその本体と画像形成ユニットとの間での回転駆動力を伝達する駆動伝達軸継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、感光体等の消耗部分をユニット化して着脱可能な構成とすることにより、ユーザによって交換できるようにした画像形成装置がある。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックという4色の画像形成部を有するタンデム型の画像形成装置では、各色に対応した画像形成ユニットを合計4つ備えている。このような画像形成ユニットが画像形成装置本体に装着されたとき、画像形成装置本体に設けられた駆動源によって感光体ドラムが回転駆動される。当該駆動源に対して感光体ドラムが駆動伝達軸継手を介して連結されることによって、駆動源の駆動力が感光体ドラムに伝達され、感光体ドラムが回転するように構成されている。
【0003】
従来から、当該駆動伝達軸継手の構成として種々のものが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照のこと。)。
【0004】
特許文献1に記載された画像形成装置では、駆動伝達軸継手としてのカップリング凸軸又はカップリング凹軸のうちいずれか一方が、所定の温度以上になると記憶形状に回復する形状記憶材料から構成されている。カップリングに使用される形状記憶材料としては、Cu−Zn−Al合金等の形状記憶合金やポリノルボルネシ等の形状記憶ポリマーが例示されているが、いずれも、樹脂材料や金属材料といった単体の材料が使用されている。
【0005】
また、特許文献2に記載された画像形成装置では、駆動伝達軸継手としてのカップリング軸等を導電性樹脂や金属等の導電性材料にすることによって、感光体ドラムに帯電した不要な電荷を、導電性のドラム軸凸部やカップリング軸や駆動板金等を通じてアースに接地することが行われている。アースへの接地を確立するためには、感光体ドラムから駆動板金までの全経路を導電性材料で構成する必要があることから、カップリング軸としては電気的特性に着目した導電性材料が使用されている。
【0006】
ところで、画像形成装置においては、画像品質の向上が切望されている。画像品質を向上するためには、感光体ドラムの回転を安定させることが非常に重要である。感光体ドラムの回転中に回転速度が変動したり振動が伝播したりすると、画質の劣化を招いてしまう。
【0007】
形状記憶ポリマーや導電性樹脂等の樹脂材料だけで駆動伝達軸継手を構成した場合、駆動伝達軸継手の剛性が不足するために、感光体ドラムの回転速度の変動が大きくなり、画像形成部において各色の色重ねズレが生じやすいという問題がある。
【0008】
また、形状記憶合金等の金属材料だけで駆動伝達軸継手を構成した場合、駆動伝達軸継手の剛性はアップするものの、駆動源からの振動伝播が大きくなり、画像ノイズが混入しやすいという問題がある。
【0009】
さらに、画像形成装置内で発生する振動の周波数と、駆動源と駆動伝達軸継手と感光体ドラムとを含む感光体駆動伝達系の伝達関数の共振周波数とが、一致するか整数倍になったときに、画像問題を生じることがある。そのような画像問題の発生状況に応じて、駆動伝達軸継手の外観形状や寸法形状や感光体駆動伝達系の構成(例えば、駆動ギアの歯数の構成)を個別具体的に変更することによって画像問題を解決しているのが現状である。しかしながら、このような変更は、大幅な設計変更に該当するので、変更が困難である場合が多い。大幅な変更が可能である場合であっても、新製品の早期開発や製造コスト削減の妨げになっている。
【0010】
【特許文献1】特開2000−98808号公報
【特許文献2】特開平10−104905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、画像品質を改善すべく、軸継手部分での回転速度変動と振動伝播との両方を抑制するとともに、設計変更に対しても早期且つ柔軟に対応することのできる画像形成装置及び駆動伝達軸継手を提供することである。
【課題を解決するための手段および作用・効果】
【0012】
上記技術的課題を解決するために、
回転駆動源からの回転駆動力を受ける回転駆動部材と、
感光体ドラムを含み、着脱可能に構成された画像形成ユニットと、
前記回転駆動部材と画像形成ユニットとの間に介在して、回転駆動部材からの回転駆動力を前記感光体ドラムに伝達する駆動伝達軸継手と、を有する画像形成装置であって、
前記駆動伝達軸継手が、高剛性材料及び防振材料を含んでなり、
前記防振材料が、高剛性材料を駆動伝達軸継手の軸方向で分断するように構成されていることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0013】
上記構成によれば、駆動伝達軸継手が、高剛性材料及び防振材料を含むいわゆるハイブリッド構造をしているので、高剛性材料が回転速度変動の抑制を担うとともに、防振材料が振動伝播の抑制を担っている。そして、防振材料が、高剛性材料を駆動伝達軸継手の軸方向で分断するように構成されていることで、高剛性材料に起因した振動伝播が防振材料によって遮断される。したがって、駆動伝達軸継手での回転速度変動と振動伝播との両方を抑制することができるので、画像品質の向上を図ることができる。また、駆動伝達軸継手部分における高剛性材料及び防振材料の構成を適宜変えることによって、回転速度変動及び振動伝播を低減することができるので、早期且つ柔軟に設計変更に対応することができる。
【0014】
駆動伝達軸継手において、振動伝播を低減させるためには少しの防振材料を介在させることで十分な効果が得られるとともに、駆動伝達軸継手を構造的に支えるために高剛性材料を多く必要とするので、駆動伝達軸継手の主たる構成要素が高剛性材料であることが好ましい。
【0015】
駆動伝達軸継手において、高剛性材料及び防振材料が熱熔着やインサート成形等によって連結された構成とすることもできるが、様々な設計変更に迅速に対応すべく駆動伝達軸継手が高い自由度を備えるように、高剛性材料と防振材料とが螺合することによって連結されていることが好ましい。
【0016】
高剛性材料及び防振材料が軸方向に沿って交互に配置されているという直列的な構成とすることができる。
【0017】
あるいは、高剛性材料がいわゆる芯材として軸方向に延在し、該高剛性材料が防振材料で覆われているという並列的な構成とすることができる。
【0018】
画像形成装置内で発生する振動の周波数と、回転駆動源と回転駆動部材と駆動伝達軸継手とを含む駆動部に存在する伝達関数の共振周波数とが、一致又は整数倍にならないように、高剛性材料と防振材料との体積比が変更される。
【0019】
具体的には、高剛性材料が金属材料又はセラミック材料であり、防振材料が樹脂材料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1について、図1乃至8及び表1を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、画像形成装置として、タンデム型のカラープリンタ1に適用したものである。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るカラープリンタ1の概略構成を示す断面図である。図2は、図1のカラープリンタ1における駆動ユニット3を示す説明図である。図3は、ジョイント40の形状を示す斜視図である。図4は、図3に示したジョイント40の一実施形態を説明する図である。(A)は斜視図であり、(B)は正面図であり、(C)は側面図である。図5は、図4に示したジョイント40の高剛性材料58の形状を説明する図である。(A)は斜視図であり、(B)は正面図であり、(C)は側面図である。図6は、図4に示したジョイント40の樹脂材料56の形状を説明する図である。(A)は斜視図であり、(B)は正面図であり、(C)は側面図である。図7は、感光体ドラム20の回転周期と位置ズレ量との関係を説明する図である。図8は、感光体ドラム20の表面振動と周波数との関係を説明する図である。
【0022】
本発明のカラープリンタ1は、図1に示すように、各色の画像形成ユニット30が、中間転写ベルト11に沿って並置されている。カラープリンタ1の下部には用紙カセット12が装着され、その中の用紙が給紙ローラ13によって給紙搬送部14に搬送される。各色の画像形成ユニット30によって中間転写ベルト11上に重ねられて形成された画像は、二次転写部15で用紙に転写され、定着部16で定着される。こうして画像が形成された用紙は、排紙ローラ17によって排紙される。これらの構成はすべて筐体10内に収められている。
【0023】
各色の画像形成ユニット30は、いずれもほぼ同様の構成であり、それぞれ、感光体ドラム20、現像部22、露光部、帯電部、クリーナ部、転写部を有している。この画像形成ユニット30の各部の構成および動作は一般的なものであるので、ここでは説明を省略する。各画像形成ユニット30は、少なくとも感光体ドラム20を含んだ所定部分がユニット化されている。画像形成ユニット30は、カラープリンタ1の筐体10に対して着脱可能にされている。以下、カラープリンタ1のうち、画像形成ユニット30を除く部分を本体と呼ぶことにする。なお、画像形成ユニット30は、Y(イエロー)M(マゼンタ)C(シアン)に比べてBK(黒)が大型であり、感光体系も多色のものに比べて大型化されている。
【0024】
図1のカラープリンタ1の手前側には、開閉可能なドアが設けられている。このドアを開放することにより、各画像形成ユニット30の手前側端部が露出する。ユーザはこの露出された画像形成ユニット30の前端部を把持して図1の手前側に引き出すことにより、画像形成ユニット30を本体から取り外すことができる。また、本体の画像形成ユニット30が取り外された空間に画像形成ユニット30を挿入し、図1の奥方向へ押し込めば再び装着することができる。取付後、ドアを閉止すると、画像形成ユニット30の手前側端部がドアの内面によって保持されて固定される。
【0025】
次に、図2を参照しながら、本体と画像形成ユニット30とをつなぐ駆動ユニット3を説明する。この駆動ユニット3は、図1のカラープリンタ1の奥側に配置されている。図2は、駆動ユニット3の断面を模式的に示している。
【0026】
図2の左側に示すように、本体に対して着脱可能である画像形成ユニット30は、図2の右方向に延在する円筒状の感光体ドラム20を含んでいる。感光体ドラム20の左端には、その右端が開口した略円筒形状のカップリング36が、感光体ドラム20の回転軸上に取り付けられている。カップリング36は、その右端が開口して、その内部に三角柱形状の当接穴37が形成されている。なお、各画像形成ユニットには、同じ構成のジョイントを使用する。
【0027】
また、本体側は、図2の右側に示すように、駆動ギア62が軸受けを介して筐体10に固定されている。駆動ギア62の回転軸上には、図2の左方向に延在するジョイント受け部66が形成されている。略円筒形状をしたジョイント受け部66は、その左端が開口して、その内部に三角柱形状の当接穴67が形成されている。当接穴67の右端部には圧縮バネ64が装着されている。圧縮バネ64は、当接穴67の中に挿入されたジョイント40の末端部48に係着されて、ジョイント40を図2の左方向に付勢する。
【0028】
駆動ギア62は、本体の内部に設けられた駆動モータ60による回転駆動力をジョイント40に伝達する。詳しくは後述するが、ジョイント受け部66の当接穴67とジョイント40とは、部分的に当接して回転駆動力が伝達される。軸受けは、筐体10に固定され、駆動ギア62を回転可能に支持している。
【0029】
ジョイント40は、図3に示すように、大略三角柱形状をした本体部42と、大略三角錐形状をした先端部44と、大略円柱形状をした末端部48と、を備えている。画像形成ユニット30が本体に取り付けられた状態のジョイント40は、画像形成ユニット30のカップリング36の当接穴37と、駆動ギア62のジョイント受け部66の当接穴67と、に対して当接している。
【0030】
ジョイント40は、図4に示すように、高剛性材料58と防振材料56とから構成されたハイブリッド構成をしている。高剛性材料58は、アルミニウムやアルミ合金や銅合金やステンレス鋼等の金属材料や、アルミナやジルコニア等のセラミック材料等から構成されている。加工容易性やコスト等の面から、高剛性材料58としては金属材料が典型的に用いられる。また、防振材料56は、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂材料から構成されている。
【0031】
すなわち、図4乃至6に示すように、ジョイント40は、樹脂材料56からなる先端部44と、金属材料58からなる本体部42及び末端部48から構成されている。つまり、金属材料58がジョイント40の主たる構成要素となっている。先端部44の末端側には、内ネジの形成された受入凹部52が設けられているとともに、本体部42の先端側には、外ネジの形成された突出部50が設けられている。本体部42が先端部44に対して感光体ドラム20の回転方向と同じ方向に回転・挿入されると、突出部50が受入凹部52に螺合して、先端部44が本体部42に対して連結固定される。寸法や材質や比率を変えた先端部44及び本体部42を適宜組み合わせることによって、所望のジョイント特性を得ることができる。
【0032】
ジョイント40が、感光体ドラム20のカップリング36の当接穴37と、駆動ギア62のジョイント受け部66の当接穴67と、に対してそれぞれ挿入されているとき、ジョイント40の稜線46が、カップリング36の三角柱形状の当接穴37の三つの内接面と、駆動ギア62の三角柱形状の当接穴67の三つの内接面とに対してそれぞれ一点のみで当接している。したがって、ジョイント40は、当接穴37と当接穴67とに対して、回転方向の駆動に関してそれぞれ三点で嵌合されるので、駆動モータ60による回転駆動力を感光体ドラム20に伝達することができる。
【0033】
次に、このようなジョイント40をカラープリンタ1に組み込んだときのジョイント性能を、「感光体表面上の最大位置ズレ量」と「感光体表面上への振動伝播強度」とによって評価した。なお、評価に供したジョイント40は、ポリカーボネート(PC)からなる先端部44と、アルミ合金からなる本体部42及び末端部48とから構成されている。
【0034】
「感光体表面上の最大位置ズレ量」は、感光体ドラム20を一定速度で回転したと仮定したときの理想的な位置に対して、現実にどれだけの量のズレが発生しているかを実測したものである。具体的には、感光体ドラム20の回転位置を読み取るエンコーダを感光体ドラム20の回転中心と同軸に取付けて、感光体ドラム20を回転駆動させたときの回転周期毎の感光体ドラム20の表面上の位置データを測定する。この測定結果と、感光体ドラム20が一定速度で回転すると仮定したときの理想的な位置との差を計算することによって、図7に示したような、感光体ドラム20の回転周期毎の位置ズレ量が算出される。そして、感光体ドラム20の回転周期と位置ズレとの関係を示した図7のグラフから、一回転周期での位置ズレ量の最大振幅を求めることによって、「感光体表面上の最大位置ズレ量」が算出される。したがって、「感光体表面上の最大位置ズレ量」の値は、感光体ドラム20の回転速度の変動に関係している。
【0035】
ここで、「感光体表面上の最大位置ズレ量」が小さいほど、印字が理想的な位置で作像及び転写されていることを示している。また、「感光体表面上の最大位置ズレ量」が大きいほど、駆動ギア62と感光体ドラム20との間での回転駆動力の伝達に遅延(位相のズレ)が周期的に発生するために、各色を転写したときの色重ねズレが大きくなる原因となり、色重ねズレがある閾値を超えると、人間の視覚上で色重ねズレを感知して画像品質問題となる。
【0036】
また、「感光体表面上への振動伝播強度」は、感光体ドラム20を回転駆動する駆動源としての駆動モータ60や駆動ギア62の駆動源から発生する振動が、感光体ドラム20の表面上でどれだけ伝播しているかを実測したものである。具体的には、感光体ドラム20の表面での速度変動をレーザードップラー計等を用いて測定し、その得られた測定結果を周波数解析を行い、図8に示したような、駆動源に起因した周波数の強度がどれくらいであるかを求めることによって、「感光体表面上への振動伝播強度」が算出される。したがって、「感光体表面上への振動伝播強度」の値は、駆動源からの振動伝播に関係している。
【0037】
ここで、駆動ギア62から感光体ドラム20までの感光体駆動伝達系での共振周波数と、駆動モータ60のギアと駆動ギア62との間の噛み合い周波数とが、一致するか又は整数倍となる場合に、駆動ギア62の振動が感光体駆動伝達系で増幅されるために、「感光体表面上への振動伝播強度」が大きいと、画像に周波数ノイズが入り、ある閾値を超えると、人間の視覚上で汚いものと感知して、画像品質問題となる。
【0038】
その形状を同じにして構成材料だけを変えた三種類のジョイント40、すなわち、比較例としての樹脂材料56のみからなるジョイント40と、比較例としての金属材料58のみからなるジョイント40と、本発明のハイブリッドタイプのジョイント40と、を準備して、それらについて上記測定をそれぞれ行い、測定結果を表1にまとめた。このとき、本発明のハイブリッドタイプのジョイント40は、樹脂材料の体積:金属材料の体積=1:4であるように構成されている。表1において、「感光体表面上の最大位置ズレ量」及び「感光体表面上への振動伝播強度」の各測定値のうち、それぞれの最小のものを1としたときに、他のものが相対的にどれくらい悪くなっているかを倍率で示している。
【0039】
【表1】

【0040】
表1から、金属材料58のみからなるジョイント40及び樹脂材料56のみからジョイント40は、いずれか一方の特性だけが優れているものの、他の特性は大幅に劣っている。したがって、金属材料58及び樹脂材料56を含む本発明のハイブリッドタイプのジョイント40が総合的に優れていることが分かる。
【0041】
次に、本発明の他の実施形態に係る画像形成装置1について、図9乃至12及び表2乃至4を参照しながら詳細に説明する。
【0042】
図9は、図3に示したジョイント40の他の実施形態を説明する図である。図10は、ジョイント40の材料構成と周波数との関係を説明する概念図である。図11は、従来技術に係る金属材料58だけからなるジョイント40の回転速度と周波数との関係を説明する図である。図12は、本発明に係るジョイント40の回転速度と周波数との関係を説明する図である。
【0043】
図9に示すように、ジョイント40の軸方向での樹脂材料56と金属材料58との体積比を変えることによって、様々なシステムスピード(機種毎で異なっていることが多い)に対応しようとするものである。例えば、先端部44が樹脂材料56であるとともに本体部42及び末端部48が金属材料58であるジョイント40(図9の上図)を、先端部44及び本体部42の約半分が樹脂材料56であるとともに本体部42の約半分及び末端部48が金属材料58であるジョイント40(図9の下図)のように、樹脂材料56と金属材料58との体積比を変更するものである。
【0044】
【表2】

【0045】
表2は、画像形成装置1の内部で発生した振動の周波数と、ジョイント40を含む駆動部の構成に存在する伝達関数の共振点とが一致する場合とずれる場合とを模式的に示している。画像形成装置1内で発生する振動とは、例えば、駆動モータ60のギアと駆動ギア62との間の噛み合いによって発生する振動のことである。また、伝達係数とは、駆動モータ60から感光体ドラム20までの感光体駆動伝達系における振動の各周波数の出力と入力との比であり、例えば、駆動モータ60に与える変調周波数をスイープさせることによって感光体ドラム20の回転ムラを測定し、各変調周波数で入力(駆動モータ60)と出力(感光体ドラム20)との比をとることで、ジョイント40を含む駆動部の構成に存在する伝達関数を求めることができる。ジョイント40を含む駆動部の構成が変更されたときには、もちろん、駆動モータ60から感光体ドラム20までの感光体駆動伝達系における伝達関数も変化するので、そのような変更のたびに上記測定を行うことによって伝達関数を求めることができる。
【0046】
画像形成装置1の内部で発生した振動に、駆動モータ60から感光体ドラム20までの感光体駆動伝達系の伝達関数を乗じたものが感光体ドラム20(回転体)の表面での振動になって現れる。感光体ドラム20(回転体)での振動ピークがある値以上になると、人間の視覚上でズレを感知し、画像品質問題となる。
【0047】
図10は、加振源である駆動モータ60のギア及び駆動ギア62の回転駆動力に対して、感光体ドラム20の表面がどれだけ変位するかを模式的に示している。図10に示すように、ジョイント40における構成材料の比率を変更することによって、感光体駆動伝達系の伝達関数の共振周波数をシフトさせることができるのではないかという考えに基づいて、樹脂材料56と金属材料58との体積比の変更について検討した。
【0048】
駆動モータ60の回転速度を変化させることで、システム速度(感光体ドラム20の表面上の回転速度)を変化させながら感光体ドラム20にレーザー光を照射して感光体ドラム20の回転速度を測定し、その結果を周波数解析するということを行った。システム速度を変化させると、駆動モータ60のギアと駆動ギア62との間の噛み合い周波数が変化する。当該噛み合い周波数のピークが、あるシステム速度において出現したならば、当該ピークの周波数が感光体駆動伝達系の共振周波数であることがわかる。
【0049】
本発明の他の実施形態に係る長手軸方向での樹脂材料56と金属材料58との体積比を変えたジョイント40と、比較例として金属材料58だけからなるジョイント40とを、それぞれ、図2に示した駆動ユニット3に組込み、そのときの「感光体表面上への振動伝播強度」についての周波数解析を行い、それらの結果を図11、12及び表3、4に示した。
【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
図11及び12において、横軸は空間周波数であり、縦軸のW/Fは、感光体ドラム20表面上の回転速度の平均値を100%として、回転速度が平均値からどの程度変動しているかの割合を示している。図11において、(A)はシステム速度が120mm/sである場合、(B)はシステム速度が90mm/sである場合、(C)はシステム速度が60mm/sである場合、についての周波数解析結果をそれぞれ示している。
【0053】
図11及び表3に示すように、比較例として金属材料58だけからなるジョイント40を組み込んだ場合、システム速度が120mm/s、90mm/s、60mm/sと遅くなるに従って、駆動モータ60のギアと駆動ギア62との間の噛み合い周波数が小さくなって、噛み合い周波数と、感光体駆動伝達系の伝達関数の共振周波数とが一致して、振動が増幅されていることが分かる。
【0054】
これに対して、軸方向での樹脂材料56と金属材料58との体積比を変えたジョイント40(すなわち、図9の上図のように、樹脂材料の体積:金属材料の体積=1:4)を図2に示した駆動ユニット3に組み込んだ場合、図12に示すように、駆動モータ60のギアと駆動ギア62との間の噛み合い周波数のピークが消失していることが分かる。
【0055】
また、本発明の他の実施形態に係るジョイント40として、図9の下図のように、樹脂材料の体積:金属材料の体積=1:1としたものを、図2に示した駆動ユニット3に組み込んだ場合、図12と同様に、駆動モータ60のギアと駆動ギア62との間の噛み合い周波数のピークが消失していた。
【0056】
また、比較例としての樹脂材料だけからなるジョイント40を、図2に示した駆動ユニット3に組み込んだ場合も、図12と同様に、駆動モータ60のギアと駆動ギア62との間の噛み合い周波数のピークが消失していた。
【0057】
表4は、上述したジョイント40、すなわち、比較例としての金属材料58だけからなるジョイント40と、比較例としての樹脂材料56からなるジョイント40と、本発明に係る樹脂材料の体積:金属材料の体積=1:4のハイブリッドタイプのジョイント40と、本発明に係る樹脂材料の体積:金属材料の体積=1:1のハイブリッドタイプのジョイント40と、についての共振周波数をまとめたものである。表4から分かるように、金属材料58のウエイトが大きくなるに従って、共振周波数が大きくなり、逆に、樹脂材料56のウエイトが大きくなるに従って、共振周波数が小さくなっている。
【0058】
このように、本発明に係るハイブリッドタイプのジョイント40の材料やその体積比を変えることによって、ジョイント40を含む駆動部や駆動ユニット3の形状や寸法や構成を変更することなく、駆動モータ60から感光体ドラム20までの感光体駆動伝達系の伝達関数の共振周波数をずらすことで、図12に示したように、共振現象を避けることができる。したがって、本発明に係るハイブリッドタイプのジョイント40を用いた画像形成装置1は、ジョイント40の部分での回転速度変動と振動伝播との両方を抑制して画像品質を改善することができるとともに、設計変更に対しても早期且つ柔軟に対応することができる。
【0059】
上記の2部品(2つの異種材料)が軸方向に沿って直列に配置されたハイブリッドタイプのジョイント40は、高剛性材料である金属材料58及び防振材料である樹脂材料56が軸方向に沿って交互に複数個配置された構成することができる。すなわち、ハイブリッドタイプのジョイント40は、金属材料58、樹脂材料56、金属材料58あるいは樹脂材料56、金属材料58、樹脂材料56の順番で軸方向に沿って直列に配置された3部品構成や、樹脂材料56、金属材料58、樹脂材料56、金属材料58の順番で軸方向に沿って直列に配置された4部品構成にすることができる。このとき、ジョイント40の部品構成は、ジョイント40の両端に対向するカップリング36及びジョイント受け部66の材質と実質的に同じ材質であるように選択される。そして、構造上の支持機能を担っている金属材料58の体積比率あるいは軸方向長さは、通常、樹脂材料56のそれよりも大きく構成されている。つまり、金属材料58がジョイント40の主たる構成要素となっている。したがって、本発明のジョイント40においては、防振機能を担っている樹脂材料56によって、構造上の支持機能を担っている金属材料58がジョイント40の軸方向に分断されている。
【0060】
図3に示したジョイント40のさらに他の実施形態について、図13及び14を参照しながら説明する。
【0061】
図13及び14に示したジョイント40は、構造上の支持機能を担っている芯材としての金属材料58をジョイント40の大略軸方向に沿って配置し、防振機能を担っている樹脂材料56が当該金属材料58を覆うように構成されている。したがって、図13及び14のジョイント40は、金属材料58と樹脂材料56とがジョイント40の軸方向に対して並列に配置された構成となっている。そして、ジョイント40の少なくとも一つの端部、すなわちカップリング36側の端部及び/又はジョイント受け部66側の端部が、樹脂材料56で構成されている。図13及び14に示したジョイント40は、一つの端部が樹脂材料56で構成された例であって、先端部44が樹脂材料56で構成され、本体部42が金属材料58と樹脂材料56とからなる複合体で構成され、末端部48が金属材料58で構成されている。このようなジョイント40は、金属材料58を成形金型内に装填した後、成形金型内に溶融した樹脂材料56を注入して金属材料58を溶融した樹脂材料56で包んだ状態で固化させるといういわゆるインサート成形によって作製することができる。
【0062】
上記の2部品(2つの異種材料)が軸直交方向すなわち半径方向に沿って配置されたハイブリッドタイプのジョイント40においても、構造上の支持機能を担っている金属材料58の体積比率あるいは軸方向長さは、通常、樹脂材料56のそれよりも大きく構成されている。つまり、金属材料58がジョイント40の主たる構成要素となっている。そして、図13のジョイント40においても、防振機能を担っている樹脂材料56からなる先端部44によって、構造上の支持機能を担っている金属材料58が軸方向に分断されている。
【0063】
また、高剛性材料として用いた金属材料58の代わりに、セラミック材料を用いたセラミック材料と樹脂材料56とからなるハイブリッドタイプのジョイント40においても、上記と同様の作用・効果を得ることができる。
【0064】
上記実施形態では、ジョイント40を感光体ドラムの駆動部に適用した場合について説明したが、回転速度変動と振動伝播との両方を抑制することが求められる箇所、例えば、現像部22の駆動部にも適用することができる。
【0065】
また、先端部44の受入凹部52と本体部42の突出部50とを熱熔着することによって、先端部44と本体部42とを一体に連結することができる。あるいは、先端部44の受入凹部52を正六角形等の正多角凹形にするとともに、本体部42の突出部50を正六角形等の正多角凸形にすることで、雌雄の嵌合によって先端部44と本体部42とを一体に連結することができる。また、本実施例では、四つの画像形成ユニットのジョイントにおいて、同じ構成のジョイントを使用しているが、感光体径の異なるBK(黒)のみ異なる構成としてもよい。例えば、図9のように、黒の感光体のみを、樹脂材料と金属材料との比率を1:4とし、他色の感光体を、樹脂材料と金属材料との比率を1:1としてもよい。こうすることで、駆動系等の他の構成を変えることなく、大きさの異なる画像形成ユニットの回転速度の変動や振動伝播を低減するように、簡単な変更が可能となる。あるいは、それぞれの感光体に対して異なる構成のジョイントを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1の画像形成装置における駆動ユニットを示す説明図である。
【図3】駆動伝達軸継手の形状を示す斜視図である。
【図4】図3に示した駆動伝達軸継手の一実施形態を説明する図である。(A)は斜視図であり、(B)は正面図であり、(C)は側面図である。
【図5】図4に示した駆動伝達軸継手の高剛性材料の形状を説明する図である。(A)は斜視図であり、(B)は正面図であり、(C)は側面図である。
【図6】図4に示した駆動伝達軸継手の防振材料の形状を説明する図である。(A)は斜視図であり、(B)は正面図であり、(C)は側面図である。
【図7】感光体ドラムの回転周期と位置ズレ量との関係を説明する図である。
【図8】感光体ドラムの表面振動と周波数との関係を説明する図である。
【図9】図3に示した駆動伝達軸継手の他の実施形態を説明する図である。
【図10】駆動伝達軸継手の材料構成と周波数との関係を説明する概念図である。
【図11】従来技術に係る金属材料からなる駆動伝達軸継手の回転速度と周波数との関係を説明する図である。
【図12】本発明に係る駆動伝達軸継手の回転速度と周波数との関係を説明する図である。
【図13】図3に示した駆動伝達軸継手のさらに他の実施形態を説明する図である。
【図14】図3に示した駆動伝達軸継手のさらに他の実施形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0067】
1:カラープリンタ(画像形成装置)
3:駆動ユニット
10:筐体
11:中間転写ベルト
12:用紙カセット
13:給紙ローラ
14:給紙搬送部
15:二次転写部
16:定着部
20:感光体ドラム
28:トナーカートリッジ
30:画像形成ユニット
36:カップリング
37:当接穴
40:ジョイント(駆動伝達軸継手)
42:本体部
44:先端部
46:稜線
48:末端部
50:突出部
52:受入凹部
56:樹脂材料(防振材料)
58:金属材料(高剛性材料)
60:駆動モータ(回転駆動源)
62:駆動ギア(回転駆動部材)
64:圧縮バネ
66:ジョイント受け部
67:当接穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動源からの回転駆動力を受ける回転駆動部材と、
感光体ドラムを含み、着脱可能に構成された画像形成ユニットと、
前記回転駆動部材と画像形成ユニットとの間に介在して、回転駆動部材からの回転駆動力を前記感光体ドラムに伝達する駆動伝達軸継手と、を有する画像形成装置であって、
前記駆動伝達軸継手が、高剛性材料及び防振材料を含んでなり、
前記防振材料が、高剛性材料を駆動伝達軸継手の軸方向で分断するように構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記駆動伝達軸継手の主たる構成要素が高剛性材料であることを特徴とする、請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記高剛性材料と防振材料とが螺合することによって連結されていることを特徴とする、請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記高剛性材料及び防振材料が軸方向に沿って交互に配置されていることを特徴とする、請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記高剛性材料が芯材として軸方向に延在し、該高剛性材料が防振材料で覆われていることを特徴とする、請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像形成装置内で発生する振動の周波数と、回転駆動源と回転駆動部材と駆動伝達軸継手とを含む駆動部に存在する伝達関数の共振周波数とが、一致又は整数倍にならないように、高剛性材料と防振材料との体積比が変更されることを特徴とする、請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記高剛性材料が金属材料又はセラミック材料であり、前記防振材料が樹脂材料であることを特徴とする、請求項1記載の画像形成装置。
【請求項8】
回転駆動源からの回転駆動力を受ける回転駆動部材と、
感光体ドラムを含み、着脱可能に構成された画像形成ユニットと、の間に介在して、回転駆動部材からの回転駆動力を前記感光体ドラムに伝達する、画像形成装置に使用される駆動伝達軸継手であって、
当該駆動伝達軸継手が、高剛性材料及び防振材料を含んでなり、
前記防振材料が、高剛性材料を駆動伝達軸継手の軸方向で分断するように構成されていることを特徴とする駆動伝達軸継手。
【請求項9】
主たる構成要素が高剛性材料であることを特徴とする、請求項7記載の駆動伝達軸継手。
【請求項10】
前記高剛性材料と防振材料とが螺合することによって連結されていることを特徴とする、請求項7記載の駆動伝達軸継手。
【請求項11】
高剛性材料及び防振材料が軸方向に沿って交互に配置されていることを特徴とする、請求項7記載の駆動伝達軸継手。
【請求項12】
高剛性材料が芯材として軸方向に延在し、該高剛性材料が防振材料で覆われていることを特徴とする、請求項7記載の駆動伝達軸継手。
【請求項13】
画像形成装置内で発生する振動の周波数と、回転駆動源と回転駆動部材と駆動伝達軸継手とを含む駆動部に存在する伝達関数の共振周波数とが、一致又は整数倍にならないように、高剛性材料と防振材料との体積比が変更されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の駆動伝達軸継手。
【請求項14】
前記高剛性材料が金属材料又はセラミック材料であり、前記防振材料が樹脂材料であることを特徴とする、請求項12記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2008−139427(P2008−139427A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323788(P2006−323788)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】