説明

画像形成装置用の環状体、画像形成装置、およびプロセスカートリッジ

【課題】転写効率に優れ且つクリーニング性に優れた画像形成装置用の環状体の提供。
【解決手段】少なくとも最外表面21を構成する層として、ジメチルシリコーン樹脂をグラフト共重合したポリアミドイミド樹脂を含有し、且つ圧縮弾性率が3.0GPa以上である樹脂層を有する画像形成装置用の環状体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置用の環状体、画像形成装置、およびプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
静電複写方式を用いた画像形成装置は、光導電性の感光体からなる像保持体上を帯電し、画像信号を変調したレーザー光等で静電潜像を形成した後、帯電したトナーで前記静電潜像を現像して可視化したトナー像とする。
【0003】
例えば、上記トナー像を中間転写体を介して静電的に転写することにより再生画像を得る画像形成装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
中間転写体方式を採用した画像形成装置に用いられる中間転写体材料としては、ポリカーボネート樹脂(例えば特許文献2参照)、ポリフッ化ビニリデン(例えば特許文献3および4参照)、ポリアルキレンフタレート(例えば特許文献5参照)などの熱可塑性樹脂の半導電性の無端ベルトや、ポリイミド樹脂や全芳香族ポリアミド樹脂(例えば特許文献6参照)を用いる提案がなされている。
【0004】
また、アミド基を導入したポリアミドイミド樹脂を用いることが提案されている(例えば特許文献7参照)。尚、該ポリアミドイミド樹脂に、シリコーン樹脂粒子や高級脂肪酸、フッ素樹脂粒子、グラファイト、二硫化モリブデン等の滑剤を皮膜中に分散する事が知られている。
【0005】
また、ポリアミドイミド樹脂にシリコーン樹脂を共重合する事が提案され(例えば特許文献8参照)、更に対数粘度(分子量)を上げる方法も開示されている(例えば特許文献9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−206567号公報
【特許文献2】特開平6−095521号公報
【特許文献3】特開平5−200904号公報
【特許文献4】特開平6−228335号公報
【特許文献5】特開平6−149081号公報
【特許文献6】特許第2560727号明細書
【特許文献7】特許第3218199号明細書
【特許文献8】特許第4139196号明細書
【特許文献9】特開2007−121619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、転写効率に優れ且つクリーニング性に優れた画像形成装置用の環状体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の本発明によって達成される。
即ち、請求項1に係る発明は、
少なくとも最外表面を構成する層として、ジメチルシリコーン樹脂をグラフト共重合したポリアミドイミド樹脂を含有し、且つ圧縮弾性率が3.0GPa以上である樹脂層を有する画像形成装置用の環状体である。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記樹脂層の表面エネルギーが30dyn/cm以下である請求項1に記載の画像形成装置用の環状体である。
【0010】
請求項3に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、
請求項1に記載の環状体を用いてなる中間転写用環状体と、
前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写用環状体に転写する一次転写装置と、
前記中間転写用環状体に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、
を備える画像形成装置である。
【0011】
請求項4に係る発明は、
請求項1に記載の環状体と、
像保持体、前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置、前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置、前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置、前記像保持体上の前記トナー像を前記環状体に転写する一次転写装置、前記環状体に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置、前記像保持体の表面を清掃する像保持体用清掃装置、および、前記環状体の表面を清掃する環状体用清掃装置から選ばれる少なくとも一種と、
を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0012】
請求項5に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、
請求項1に記載の環状体を用いてなる記録媒体搬送用環状体と、
前記像保持体上の前記トナー像を前記記録媒体搬送用環状体によって搬送される記録媒体に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置である。
【0013】
請求項6に係る発明は、
請求項1に記載の環状体と、
像保持体、前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置、前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置、前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置、前記像保持体上の前記トナー像を前記環状体によって搬送される記録媒体に転写する転写装置、前記像保持体の表面を清掃する像保持体用清掃装置、および、前記環状体の表面を清掃する環状体用清掃装置から選ばれる少なくとも一種と、
を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、最外表面を構成する層として、ジメチルシリコーン樹脂をグラフト共重合したポリアミドイミド樹脂を含有し、且つ圧縮弾性率が3.0GPa以上である樹脂層を有しない場合に比べ、転写効率に優れ且つクリーニング性に優れた画像形成装置用の環状体が提供される。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、表面エネルギーが30dyn/cm以下でない場合に比べ、クリーニング性に優れた画像形成装置用の環状体が提供される。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、最外表面を構成する層として、ジメチルシリコーン樹脂をグラフト共重合したポリアミドイミド樹脂を含有し、且つ圧縮弾性率が3.0GPa以上である樹脂層を有する環状体を用いない場合に比べ、画質に優れた画像が得られる画像形成装置が提供される。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、最外表面を構成する層として、ジメチルシリコーン樹脂をグラフト共重合したポリアミドイミド樹脂を含有し、且つ圧縮弾性率が3.0GPa以上である樹脂層を有する環状体を用いない場合に比べ、画質に優れた画像が得られるプロセスカートリッジが提供される。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、最外表面を構成する層として、ジメチルシリコーン樹脂をグラフト共重合したポリアミドイミド樹脂を含有し、且つ圧縮弾性率が3.0GPa以上である樹脂層を有する環状体を用いない場合に比べ、画質に優れた画像が得られる画像形成装置が提供される。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、最外表面を構成する層として、ジメチルシリコーン樹脂をグラフト共重合したポリアミドイミド樹脂を含有し、且つ圧縮弾性率が3.0GPa以上である樹脂層を有する環状体を用いない場合に比べ、画質に優れた画像が得られるプロセスカートリッジが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る環状体を示す概略斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
<環状体>
本実施形態に係る画像形成装置用の環状体(以下単に「環状体」とも称す)は、少なくとも最外表面を構成する層(以下単に「最表面層」とも称す)として、ジメチルシリコーン樹脂をグラフト共重合したポリアミドイミド樹脂を含有し、且つ圧縮弾性率が3.0GPa以上である樹脂層を有する。
【0023】
従来、ポリアミドイミド樹脂においてジメチルシリコーン樹脂を共重合すると、柔軟性のあるエーテル基が主鎖に入るため、膜の硬度低下が起こりクリーニング性が低下してしまうことがあった。
これに対し、本実施形態に係る環状体は、ジメチルシリコーン樹脂をグラフト共重合したポリアミドイミド樹脂を最表面層に含有するとの構成を備えることで、転写効率に優れ且つクリーニング性に優れた環状体とし得る。
これは、ジメチルシリコーン樹脂をグラフト共重合することで、硬度が高く圧縮弾性率が3.0GPa以上となり、且つ表面エネルギーの低いポリアミドイミド樹脂が得られるためであると推察される。また、主鎖のポリアミドイミド樹脂を全芳香族とすることで、更に硬度が高く表面エネルギーの低いポリアミドイミド樹脂が得られるものと推察される。
【0024】
−圧縮弾性率−
上記圧縮弾性率は、超微小硬度計DUH−201S(株式会社島津製作所製)を用いて以下の条件で、試料に対し0.3μm以上0.5μm以下での針入時の応力と針入量の傾きより求められる。
測定環境:23℃、55%RH、使用圧子:三角錐圧子、試験モード:3(軟質材料試験)、試験荷重:6.9×10−3N(0.70gf)、負荷速度:0.142×10−3N(0.0145gf/sec)
【0025】
圧縮弾性率が上記範囲であることにより、クリーニング性に優れた環状体とし得る。
尚、上記圧縮弾性率は、更に3.2GPa以上であることが好ましく、4GPa以上であることがより好ましい。一方、特に限定されるものではないが、上限値としては6GPa以下であることが好ましい。
【0026】
−表面エネルギー−
また、前記樹脂層の表面エネルギーは30dyn/cm以下であることが好ましく、更に27dyn/cm以下であることが好ましく、25dyn/cm以下であることがより好ましい。一方、特に限定されるものではないが、下限値としては15dyn/cm以上であることが好ましい。
圧縮弾性率が上記範囲であることにより、転写効率に優れた環状体とし得る。
【0027】
上記表面エネルギーは、表面エネルギーが30dyn/cm、40dyn/cm、50dyn/cmの試薬(和光純薬製)で各皮膜の接触角を測定し、横軸に試薬の表面エネルギー、縦軸にcos(接触角)を取った時の1(接触角が0)になる表面エネルギー値を膜の表面エネルギーとする(Zismanプロット)。
【0028】
−達成法−
尚、圧縮弾性率は、ジメチルシリコーン樹脂をグラフト共重合するポリアミドイミド樹脂を構成する芳香族系モノマーの比率によって上記の範囲に制御される。
また、表面エネルギーは、ポリアミドイミド樹脂にグラフト共重合するジメチルシリコーン樹脂の含有率、鎖長を変えることによって上記の範囲に制御される。
【0029】
−環状体の構成−
次いで、本実施形態に係る環状体の構成について説明する。
本実施形態に係る環状体は、図1に示すごとく無端状のベルト形状である環状体1であり、前述の構成を有する最表面層1層からなる環状体であってもよいし、図2に示すごとく基材層22の外周面上に前述の構成を有する最表面層21を有する2層構成の環状体であってもよい。また、基材層22と最表面層21の間にその他の層を有する態様であってもよい。
【0030】
・最表面層
(1)ジメチルシリコーン樹脂をグラフト共重合したポリアミドイミド樹脂
最表面層は、ジメチルシリコーン樹脂をグラフト共重合したポリアミドイミド樹脂(以下単に「グラフト重合PAI」とも称す)を含有する。
尚、グラフト重合PAIとしては、主鎖の片末端に二個の反応基を持つジメチルシリコーン樹脂をグラフト共重合したポリアミドイミド樹脂が好ましい。
【0031】
上記グラフト重合PAIとしては、特に下記一般式(1)乃至(3)で示される化合物が好ましい。
【0032】
【化1】



【0033】
〔上記一般式(1)乃至(3)において、Rはトリカルボン酸無水物の残基を、RおよびRはジイソシアネートまたはジアミンの残基を、Rは3価のアルキル基を、nは5以上1000以下の整数を、mは正の整数を、それぞれ表す。〕
【0034】
更に、Rのより好ましい例としては後述のトリカルボン酸無水物の好ましい例として挙げられた化合物の残基が挙げられる。また、RおよびRのより好ましい例としては後述のジイソシアネートまたはジアミンの好ましい例として挙げられた化合物の残基が挙げられ、Rのより好ましい例としては後述の主鎖の片末端に二個の反応基を持つジメチルシリコーン樹脂の好ましい例として挙げられた一般式(1−1),(2−1),および(3−1)におけるR,RおよびRで囲まれた部分の基が挙げられ、更には以下に示す3価の基等が挙げられる。
【0035】
【化2】



【0036】
更に、nは表面エネルギーの低下効果が大きく且つ最表面層の硬度低下の抑制や塗布液の粘度上昇の抑制との観点から、10以上300以下の整数であることがより好ましい。
【0037】
ここで、本実施形態におけるグラフト重合PAIの重合について説明する。
ポリアミドイミド樹脂は、トリカルボン酸無水物とジイソシアネートまたはジアミンとの組み合わせで作製される。ポリアミドイミド樹脂においてジメチルシリコーン樹脂をグラフト重合するためには、イソシアネート基もしくはアミン基と反応する基(例えば水酸基、カルボキシル基、アミン基/本明細書においては単に「反応基」とも称す)を片末端に2つ持つジメチルシリコーン樹脂を、予めジアミンもしくはジイソシアネートと反応させ、ジメチルシリコーン樹脂をグラフトしたジアミンもしくはジイソシアネートを作製する。例えば下記に示す反応式のごとく、反応基として水酸基を片末端に2つ持つジメチルシリコーン樹脂とMDI(ジイソシアネートの一例)とを反応させる等の方法により、ジメチルシリコーン樹脂をグラフトしたジアミンもしくはジイソシアネートが得られる。
その後、このジメチルシリコーン樹脂をグラフトしたジアミンもしくはジイソシアネートと、トリカルボン酸無水物と、を反応させることによりジメチルシリコーン樹脂をグラフト共重合したポリアミドイミド樹脂(グラフト重合PAI)が得られる。
【0038】
【化3】

【0039】
また、トリカルボン酸無水物と、ジアミンもしくはジイソシアネートと、片末端に2つの反応基(例えば水酸基、カルボキシル基、アミン基)を持つジメチルシリコーン樹脂と、を混合し反応させる方法によっても本実施形態におけるグラフト重合PAIが得られる。
【0040】
上記の重合に用いるトリカルボン酸無水物、ジイソシアネート、ジアミンとしては、芳香族系のものを使うことが望ましい。
トリカルボン酸無水物またはその誘導体の好ましい例としては、トリメリット酸無水物や、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’ビフェニルジカルボン酸、4,4’ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’ベンゾフェノンジカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、3,3’,4,4’ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3,’,4,4’ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’ビフェニルテトラカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸、マレイン酸、フマール酸、ダイマー酸、スチルベンジカルボン酸、1,4シクロヘキサンジカルボン酸、1,2シクロヘキサンジカルボン酸等の多価カルボン酸の酸ハライド化合物等が望ましい。
ジイソシアネートの好ましい例としてはMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、TODI(3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート)、NDI(1,5−ナフタレンジイソシアネート)、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート、ビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ビフェニル−3,3’−ジイソシアネート、ビフェニル−3,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジエチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート等が望ましい。
ジアミンの好ましい例としては4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、オキシジアニリン、メチレンジアミン、ヘキサフルオロイソプロピリデンジアミン、ジアミノ−m−キシリレン、ジアミノ−p−キシリレン、1,4−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、イソプロピリデンジアニリン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス−[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス−(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]へキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド等が望ましい。
【0041】
また、主鎖の片末端に二個の反応基を持つジメチルシリコーン樹脂としては下記一般式(1−1),(2−1),または(3−1)で表されるジメチルシリコーン樹脂が挙げられる。
【0042】
【化4】



【0043】
〔上記一般式(1−1)乃至(3−1)において、Rはアクリル酸またはメタクリル酸の残基を、Rはアルキル基を、Rはアルキレン基を、nは5以上1000以下の整数を、それぞれ表す。尚、2つあるRは同一でも異なっていてもよい。〕
【0044】
主鎖の片末端に二個の反応基を持つジメチルシリコーン樹脂の市販品の好ましい例としては、例えばチッソ社製のサイラプレーンFMDA21が挙げられる。
【0045】
ジメチルシリコーン樹脂の添加量は、転写効率を向上させ且つ膜の硬度を高くする観点から、グラフト重合PAI中において5質量%以上40質量%以下が望ましく、更には5質量%以上20質量%以下がより望ましい。
【0046】
このようにして得られたグラフト重合PAIの数平均分子量は、10000以上50000以下とすることが望ましく、15000以上40000以下とすることがより望ましい。
【0047】
(2)導電性材料
導電性材料とは、本実施形態に係る環状体に導電性を付与し得る材料を表し、即ち上記環状体の内周面、外周面の表面抵抗率を1013以下に制御し得る材料を指す。
上記導電性材料としては、例えばカーボンブラック、または導電性高分子材料等が挙げられる。
【0048】
上記カーボンブラックとしては、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等の一般的なカーボンブラックが用いられる。より具体的には、三菱化学製の#3350B、#30、#3030B、東海カーボン製の#5500、電気化学(株)製の粒状アセチレンブラック、旭カーボン(株)製のHS−500、アサヒサーマルFT、アサヒサーマルMT、ライオンアグゾ(株)製のケッチェンブラック、キャボット(株)製のバルカンXC−72、キャボット社の「REGAL 400R」、「MONARCH 1300」、Degussa社の「Color Black FW200」、「SPECIAL BLACK 4」、「PRINTEX150T」、「PRINTEX140T」、「PRINTEX U」等が挙げられる。
これらの中でも、チャンネルブラックや酸化処理したカーボンブラックを用いることが望ましい。カーボンブラックは、1種類でなく複数種類配合してもよい。
【0049】
また、上記導電性高分子材料としては、例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等が挙げられる。尚、上記導電性材料は単独で用いても混合して用いてもよい。
【0050】
本実施形態に用いられる導電性材料の添加量は、前記最表面層の全固形分100質量部に対し、10質量部以上50質量部以下が望ましく、15質量部以上40質量部以下が更に望ましい。
【0051】
導電性材料をポリアミドイミド樹脂中に分散する方法としては、セラミックビーズやボールといったメディアの衝突力を利用して粉砕するメディアミル、高圧で微小オリフィスを通過させ高せん断力をかけるとともに衝突させた際の衝撃力を利用する湿式ジェットミルやホモジナイザといった一般的に用いられる分散方法が用いられる。
【0052】
(3)その他の添加剤
本実施形態に係る環状体には、上記のほかにも、酸化防止剤や界面活性剤等、画像形成装置の環状体として用いられるどの添加剤を用いてもよい。
【0053】
・基材層
既に述べた通り、本実施形態にかかる環状体は、基材層22の外周面上に前述の構成を有する最表面層21を有する2層構成としてもよく、基材層22と最表面層21の間にその他の層を有する態様としてもよい。
【0054】
基材層は、樹脂材料を含んで構成される。基材層も、環状体の用途に応じて(例えば中間転写体[中間転写ベルト]や、搬送転写体[搬送転写ベルト]等の転写ベルトに適用する場合)、導電剤を含んで構成される。
【0055】
尚、該基材層は引っ張り弾性率が3GPa以上の層であることが好ましい。
上記引っ張り弾性率は、以下の方法により測定される。即ち、オートグラフ((株)東洋精機製作所製、V1−C)を用い、JIS K 7161に準拠して、5mm×50mmの大きさに切り出したサンプルをチャック間距離40mmになるように保持し、常温にて引張速度を20mm/minとして測定される。
【0056】
樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、補強材を添加してなるポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0057】
導電剤については、前述の最表面層を構成する導電剤として列挙したものが好適に用いられる。
【0058】
−環状体の製造方法−
次に、本実施形態に係る環状体における最表面層の製造方法について説明する。尚、最表面層のみの単層構成の場合には以下の方法により環状体が製造され、一方基材等を有する複数層の構成の場合には、該基材等の外周面上に以下の方法により最表面層を形成することで環状体が得られる。
【0059】
上記環状体は、(a)塗布工程、(b)乾燥工程、(c)加熱工程、(d)剥離工程を経て製造されることが好ましい。
【0060】
(a)塗布工程
まず、塗布工程では、少なくとも前述のグラフト重合PAIおよび溶媒を含有する樹脂組成物を調製する。
上記溶媒としては、例えば、n−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジグライム等が挙げられる。
【0061】
次に、芯材の外周面に前記樹脂組成物を塗布する。
尚、芯材としては、アルミニウムやステンレスが望ましく用いられ、特にステンレスを用いることが望ましい。また、形成された環状体の芯材表面からの剥離を良好に行うため、芯材の表面には離型性が付与されていてもよい。離型性を付与するためには、芯材表面をクロムやニッケルでメッキしたり、フッ素系樹脂やシリコーン樹脂で表面を被覆したり、あるいは表面に離型剤を塗布することが有効である。
【0062】
芯材表面に樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、樹脂組成物をノズルから吐出させながら、回転する芯材を回転軸方向に移動させることによって、芯材の外周面に樹脂組成物を塗布する方法や、芯材を樹脂組成物に浸漬して引き上げる浸漬塗布法等が挙げられる。
【0063】
(b)乾燥工程
本実施形態に係る環状体の製造方法では、前記塗布工程の後、形成した塗布膜を乾燥させる乾燥工程を行う。尚、乾燥工程とは、芯材表面に塗布された樹脂組成物の塗布膜の流動性を失わせることを目的として加熱が施される工程である。尚、前記乾燥工程における乾燥条件としては、80℃以上180℃以下の範囲の温度で10分間以上60分間以下とすることが望ましい。
【0064】
(c)加熱工程
本実施形態に係る環状体の製造方法では、前記乾燥工程の後、形成した乾燥膜を更に高い温度で加熱する加熱工程(焼成工程)を行う。
更に高い温度で加熱することにより、ポリアミドイミド樹脂による乾燥膜では更に溶媒を揮発させ、またイミド転化を生じさせ、ポリアミドイミド樹脂を含んでなる樹脂皮膜を形成する。
【0065】
尚、加熱工程は2段階以上に分けて段階的に昇温して加熱されることが望ましい。
ここで例えば、4段階に分けて加熱を行う方法を一例にとって説明する。まず、第一段階の温度130℃まで昇温して20分保持し、次いで第二段階の温度175℃まで昇温して20分保持し、更に第三段階の温度220℃まで昇温して20分保持し、最後に第四段階の温度250℃まで昇温して20分保持し、溶媒の除去を行って加熱工程が施される。
尚、ここでの加熱温度は、加熱装置の設定温度をさし、例えば加熱炉によって加熱を行う場合であれば該加熱炉の設定温度をさす。
【0066】
また、前記加熱工程の加熱条件としては、2段階以上に分けて昇温する内の最高到達温度が、300℃以下で加熱することが望ましく、更には280℃以下で加熱することがより望ましい。これは、300℃以下であることによりアミド基の分解が抑制され、脆い皮膜となることが抑制されるためである。
【0067】
上記加熱工程での総加熱時間(最初の段階における昇温を開始する時から最後の段階での加熱を終了する時までの時間)は、20分間以上120分間以下とすることが望ましく、40分間以上90分間以下とすることがより望ましい。
【0068】
(d)剥離工程
このようにして得られた環状体を、芯材と環状体との間隙に空気を吹き込む等の公知の方法によって剥離する剥離工程を経ることによって、本実施形態に係る環状体が製造される。
環状体の厚さは0.05mm以上0.2mm以下であることが望ましく、0.06mm以上0.12mm以下であることが更に望ましい。
【0069】
なお、本実施形態に係る環状体の製造方法は前記方法に限定されるものではなく、他の公知の方法によって形成してもよい。
【0070】
−環状体の物性−
本実施形態に係る環状体の表面抵抗率は、内周面側および外周面側共に、1×10Ω/□以上1×1013Ω/□以下であることが望ましく、1×10Ω/□以上1×1012Ω/□以下であることがより望ましい。
【0071】
また、本実施形態に係る環状体の体積抵抗率は、10Ω・cm以上1012Ω・cm以下が望ましく、10Ω・cm以上1011Ω・cm以下がより望ましい。
【0072】
本実施形態に係る環状体は、ベルト状であっても、該ベルト状の環状体を円筒状基体の表面に被覆したドラム状であってもよい。
【0073】
<画像形成装置>
上記本実施形態に係る環状体は、電子写真方式の画像形成装置用の環状体として好適に用いられ、特に中間転写用環状体または記録媒体搬送用環状体として好適に用いられる。即ち、上記本実施形態に係る環状体を適用した望ましい画像形成装置の態様としては、例えば以下の2態様が挙げられる。
【0074】
第一の態様は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、本実施形態に係る環状体を用いてなる中間転写用環状体と、前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写用環状体に転写する一次転写装置と、前記中間転写用環状体に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、を備える画像形成装置である。
尚、環状体を中間転写用環状体として用いる場合には、該環状体は表面抵抗率1×10Ω/□以上1×1012Ω/□以下の抵抗率を持つことが望ましい。
【0075】
尚、上記画像形成装置においては、本実施形態に係る環状体と、像保持体、前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置、前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置、前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置、前記像保持体上の前記トナー像を前記環状体に転写する一次転写装置、前記環状体に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置、前記像保持体の表面を清掃する像保持体用清掃装置、および、前記環状体の表面を清掃する環状体用清掃装置から選ばれる少なくとも一種と、を備え、上記画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジを備えていてもよい。
【0076】
第二の態様は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、本実施形態に係る環状体を用いてなる記録媒体搬送用環状体と、前記像保持体上の前記トナー像を前記記録媒体搬送用環状体によって搬送される記録媒体に転写する転写装置と、を備える画像形成装置である。
尚、環状体を記録媒体搬送用環状体として用いる場合には、該環状体は表面抵抗率1×10Ω/□以上1×1012Ω/□以下の抵抗率を持つことが望ましい。
【0077】
尚、上記画像形成装置においては、本実施形態に係る環状体と、像保持体、前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置、前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置、前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置、前記像保持体上の前記トナー像を前記環状体によって搬送される記録媒体に転写する転写装置、前記像保持体の表面を清掃する像保持体用清掃装置、および、前記環状体の表面を清掃する環状体用清掃装置から選ばれる少なくとも一種と、を備え、上記画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジを備えていてもよい。
【0078】
以下においては、本実施形態に係る環状体を中間転写用環状体(中間転写ベルト)として用いた実施形態について、図面を参照して説明する。
【0079】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の構成の一例(一実施形態)を示す概略図である。本実施形態に係る画像形成装置100は、いわゆるタンデム方式であり、電子写真感光体からなる4つの像保持体101a乃至101dの周囲に、その回転方向に沿って順次、帯電装置102a乃至102d、露光装置114a乃至114d、現像装置103a乃至103d、一次転写装置(一次転写ロール)105a乃至105d、像保持体クリーニング装置104a乃至104dが配置されている。尚、転写後の像保持体101a乃至101dの表面に残留している残留電位を除去するために除電器を備えていてもよい。
【0080】
また、中間転写ベルト107が、支持ロール106a乃至106d、駆動ロール111および対向ロール108に支持され、環状体支持装置(ベルト支持装置)107bを形成している。これらの支持ロール106a乃至106d、駆動ロール111および対向ロール108により、中間転写ベルト107は、各像保持体101a乃至101dの表面に接触しながら各像保持体101a乃至101dと一次転写ロール105a乃至105dとで挟まれる領域を矢印Aの方向に移動し得る。一次転写ロール105a乃至105dが中間転写ベルト107を介して像保持体101a乃至101dに接触する部位が一次転写部となり、像保持体101a乃至101dと一次転写ロール105a乃至105dとの接触部には一次転写電圧が印加される。
【0081】
また、二次転写装置として、中間転写ベルト107および二次転写ベルト116を介して対向ロール108と二次転写ロール109が対向配置されている。紙等の記録媒体115が中間転写ベルト107の表面に接触しながら中間転写ベルト107と二次転写ロール109とで挟まれる領域を矢印Bの方向に移動し、その後、定着装置110を通過する。二次転写ロール109が中間転写ベルト107および二次転写ベルト116を介して対向ロール108に接触する部位が二次転写部となり、二次転写ロール109と対向ロール108との接触部には二次転写電圧が印加される。更に、転写後の中間転写ベルト107と接触するように、中間転写ベルトクリーニング装置112および113が配置されている。
【0082】
この構成の多色画像形成装置100では、像保持体101aが矢印Cの方向に回転するとともに、その表面が帯電装置102aによって帯電された後、レーザー光等の露光装置114aにより第1色目の静電潜像が形成される。形成された静電潜像はその色に対応するトナーを収容した現像装置103aにより、トナーで現像(顕像化)されてトナー像が形成される。なお、現像装置103a乃至103dには、各色の静電潜像に対応するトナー(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)がそれぞれ収容されている。
【0083】
像保持体101a上に形成されたトナー像は、一次転写部を通過する際に、一次転写ロール105aによって中間転写ベルト107上に静電的に転写(一次転写)される。以降、第1色目のトナー像を保持した中間転写ベルト107上に、一次転写ロール105b乃至105dによって、第2色目、第3色目、第4色目のトナー像が順次重ね合わせられるよう一次転写され、最終的に多色の多重トナー像が得られる。
【0084】
中間転写ベルト107上に形成された多重トナー像は、二次転写部を通過する際に、記録媒体115に静電的に一括転写される。トナー像が転写された記録媒体115は、定着装置110に搬送され、加熱や加圧等により定着処理された後、機外に排出される。
【0085】
一次転写後の像保持体101a乃至101dは、像保持体クリーニング装置104a乃至104dにより残留トナーが除去される。一方、二次転写後の中間転写ベルト107は、中間転写ベルトクリーニング装置112および113により残留トナーが除去され、次の画像形成プロセスに備える。
【0086】
〔像保持体〕
像保持体101a乃至101dとしては、公知の電子写真感光体が広く適用される。電子写真感光体としては、感光層が無機材料で構成される無機感光体や、感光層が有機材料で構成される有機感光体などが用いられる。有機感光体においては、露光により電荷を発生する電荷発生層と、電荷を輸送する電荷輸送層を積層する機能分離型有機感光体や、電荷を発生する機能と電荷を輸送する機能を果たす単層型有機感光体が好適に用いられる。また、無機感光体においては、感光層がアモルファスシリコンにより構成されているものが、好適に用いられる。
【0087】
また、像保持体の形状には特に限定はなく、例えば、円筒ドラム状、シート状またはプレート状等、公知の形状が採用される。
【0088】
〔帯電装置〕
帯電装置102a乃至102dとしては、特に制限はなく、例えば、導電性(ここで、帯電装置における「導電性」とは例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満を意味する。)または半導電性(ここで、帯電装置における「半導電性」とは例えば体積抵抗率が10乃至1013Ωcmを意味する。)のローラ、ブラシ、フィルム、またはゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器など、公知の帯電器が広く適用される。これらの中でも接触型帯電器が望ましい。
【0089】
帯電装置102a乃至102dは、像保持体101a乃至101dに対し、通常、直流電流を印加するが、交流電流を更に重畳させて印加してもよい。
【0090】
〔露光装置〕
露光装置114a乃至114dとしては、特に制限はなく、例えば、像保持体101a乃至101dの表面に、半導体レーザー光、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)光、または液晶シャッタ光等の光源、或いはこれらの光源からポリゴンミラーを介して定められた像様に露光し得る光学系機器など、公知の露光装置が広く適用される。
【0091】
〔現像装置〕
現像装置103a乃至103dとしては、目的に応じて選択され、例えば、一成分系現像剤または二成分系現像剤をブラシ、またはローラ等を用い接触或いは非接触させて現像する公知の現像器などが挙げられる。
【0092】
本実施形態の画像形成装置100に用いるトナー(現像剤)は特に限定されず、例えば、結着樹脂と着色剤を含んで構成される。
【0093】
結着樹脂としては、スチレン類、モノオレフィン類、ビニルエステル類、α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルエーテル類、またはビニルケトン類等の単独重合体および共重合体が例示され、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、またはポリプロピレン等が挙げられる。更に、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、またはパラフィンワックス等も挙げられる。
【0094】
着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、またはC.I.ピグメント・ブルー15:3等が代表的なものとして挙げられる。
【0095】
トナーには、帯電制御剤、離型剤、他の無機粒子等の公知の添加剤を内添加処理や外添加処理してもよい。
【0096】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、またはキャンデリラワックス等が代表的なものとして挙げられる。
【0097】
帯電制御剤としては、公知のものが使用されるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、または極性基を含有するレジンタイプ等の帯電制御剤が用いられる。
【0098】
他の無機粒子としては、粉体流動性、帯電制御等の目的で、平均1次粒径が40nm以下の小径無機粒子を用い、更に、付着力低減の為、それより大径の無機或いは有機粒子を併用してもよい。これらの他の無機粒子は公知のものが使用される。
また、小径無機粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性をあげる効果が大きくなるため有効である。
【0099】
トナーの製造方法としては、高い形状制御性を得られることから、乳化重合凝集法や溶解懸濁法等などの重合法が望ましく用いられる。また、これらの方法で得られたトナーをコアにして、更に凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法を行ってもよい。
【0100】
なお、外添剤を添加する場合、トナーおよび外添剤をヘンシェルミキサー或いはVブレンダー等で混合することによって製造し得る。また、トナーを湿式にて製造する場合は、湿式にて外添してもよい。
【0101】
〔一次転写ロール〕
一次転写ロール105a乃至105dは単層或いは多層のいずれでもよい。例えば、単層構造の場合は、発泡または無発泡のシリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。
【0102】
〔像保持体クリーニング装置〕
像保持体クリーニング装置104a乃至104dは、一次転写工程後の像保持体101a乃至101dの表面に付着する残存トナーを除去するためのものであり、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、またはロールクリーニング等が用いられる。これらの中でもクリーニングブレードを用いることが望ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、またはシリコーンゴム等が挙げられる。
【0103】
〔二次転写ロール〕
二次転写ロール109の層構造は、特に限定されるものではないが、例えば、三層構造の場合、コア層と中間層とその表面を被覆するコーティング層により構成される。コア層は導電性粒子を分散したシリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等の発泡体で、中間層はこれらの無発泡体で構成される。コーティング層の材料としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、またはパーフルオロアルコキシ樹脂などが挙げられる。二次転写ロール109の体積抵抗率は10Ωcm以下であることが望ましい。また、中間層を除いた2層構造としてもよい。
【0104】
〔対向ロール〕
対向ロール108は、二次転写ロール109の対向電極を形成する。対向ロール108の層構造は、単層或いは多層のいずれでもよい。例えば単層構造の場合は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。二層構造の場合は、上記のゴム材料で構成される弾性層の外周面を高抵抗層で被覆したロールから構成される。
【0105】
また、対向ロール108と二次転写ロール109のシャフトとには、通常1kV以上6kV以下の電圧が印加される。対向ロール108のシャフトへの電圧印加に代えて、対向ロール108に接触させた電気良導性の電極部材と二次転写ロール109とに電圧を印加してもよい。上記電極部材としては、金属ロール、導電性ゴムロール、導電性ブラシ、金属プレート、または導電性樹脂プレート等が挙げられる。
【0106】
〔定着装置〕
定着装置110としては、例えば、熱ローラ定着器、加圧ローラ定着器、またはフラッシュ定着器など公知の定着器が広く適用される。
【0107】
〔中間転写ベルトクリーニング装置〕
中間転写ベルトクリーニング装置112および113としては、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、またはロールクリーニング等が用いられる、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが望ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、またはシリコーンゴム等が挙げられる。
【0108】
上述した実施形態においては、像保持体が複数個で構成される所謂タンデム方式の画像形成装置を説明したが、像保持体が1個で、色数分だけ中間転写ベルトが回転・作像プロセスを行う所謂複数サイクル方式(例えば4サイクル方式等)の画像形成装置であっても良い。
【実施例】
【0109】
以下、実施例および比較例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、以下において「部」は、特に断りのない限り質量基準を表す。
【0110】
〔実施例1〕
(ジメチルシリコーン樹脂グラフト重合ポリアミドイミド樹脂)
表1に記載の配合量(単位:部)に従い、NMP中にシリコーン樹脂(反応基を持ったジメチルシリコーン樹脂)を投入し、溶解後、ジイソシアネート、トリメリット酸二無水物の順に攪拌しながら投入した。投入材料が完全に溶解した後、攪拌しながら180℃に昇温し5時間保持させた後に冷却し、ジメチルシリコーン樹脂グラフト重合ポリアミドイミド溶液を得た。
【0111】
(無端ベルト作製方法)
表1に示したジメチルシリコーン樹脂グラフト重合ポリアミドイミド溶液中に、カーボンブラック(FW1/Degussa製)を50phr添加し、高圧衝突型分散機(ジーナス製)を用い200Mpaにてφ0.1mmのオリフィスを通過させるとともに2分割したスラリーを衝突させることを5回行い、分散を行った。この物にカーボンブラックの配合質量が、樹脂100部に対して20部になるようジメチルシリコーン樹脂グラフト重合ポリアミドイミド溶液を攪拌しながら加えた塗布液を準備した。
この塗布液をディップコートにて膜厚80μmになるように調整した塗布条件でφ278のアルミ製パイプ外面に塗布し、120℃で20分回転乾燥を行った。このものを第一段階温度130℃20分とし、第二段階温度175℃20分、第三段階温度220℃20分、第四段階温度250℃20分とした炉中で溶剤除去を行った後、フィルムを抜き取り定められた幅にすることで無端ベルトを得た。
【0112】
得られた無端ベルトを、富士ゼロックス社製のDocuPrintC6550の中間転写ベルトとして組み込み、下記に示した方法で評価を行った。
【0113】
(圧縮弾性率および表面エネルギーの測定)
作製した無端ベルトからサンプルを切り出し、以下の方法で測定した。
・圧縮弾性率
このサンプルを超微小硬度計DUH−201S(株式会社島津製作所製)を用いて以下の条件で、0.3μm以上0.5μm以下での針入時の応力と針入量の傾きより、圧縮弾性率を求めた。
測定環境:23℃、55%RH、使用圧子:三角錐圧子、試験モード:3(軟質材料試験)、試験荷重:6.9×10−3N(0.70gf)、負荷速度:0.142×10−3N(0.0145gf/sec)
【0114】
・表面エネルギー
表面エネルギーが30dyn/cm、40dyn/cm、50dyn/cmの試薬(和光純薬製)で各皮膜の接触角を測定し、横軸に試薬の表面エネルギー、縦軸にcos(接触角)を取った時の1(接触角が0)になる表面エネルギー値を膜の表面エネルギーとした(Zismanプロット)。
【0115】
(クリーニング性)
30℃/85%RHの環境下において、ハーフトーン(マゼンタ30%)の画像をA4縦サイズで連続して3000枚転写した後、ハーフトーン(マゼンタ30%)の画像をA3縦用紙に転写した。得られたハーフトーン画像を目視により下記評価基準で白抜け画像の判定および、ベルト表面の汚染状態観察を行った。
・白抜け画像/汚染状態の評価基準
◎:白抜けなし、汚染なし
○:わずかに白抜けあり、わずかに汚染あり
△:白抜けあり、汚染あり
×:ひどい白抜けあり、ひどい汚染あり
【0116】
(二次転写効率)
22℃55%RHの環境下において、10mm×50mmのシアン100%の画像を中間転写体に形成後、用紙に転写し、定着される前に機械を止め、用紙に転写されたトナー量と中間転写体に残ったトナー量を測定し、(用紙に転写されたトナー量)÷(用紙に転写されたトナー量+中間転写体に残ったトナー量)×100で転写効率を求めた。
・二次転写効率の評価基準
◎:95%以上
○:92.5%以上95%未満
△:90%以上92.5%未満
×:90%未満
【0117】
〔実施例2〜6、比較例1〜4〕
実施例1において、ジメチルシリコーン樹脂グラフト重合ポリアミドイミド樹脂の組成を下記表1および表2に示す通り変更した以外は、実施例1に記載の方法により無端ベルトを作製し、評価を行なった。
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
実施例1〜6にて示すごとく、片末端ジメチルシリコーン樹脂をグラフト重合し、上記範囲の圧縮弾性率を持つポリアミドイミド樹脂を用いることで、クリーニング性に優れた静電複写プロセス用無端ベルトが得られた。
また、実施例2〜6に示すごとく、更に表面エネルギーを上記範囲とすることで、転写効率の優れた静電複写プロセス用無端状ベルトを得られた。
【0121】
〔実施例7〕
また、2層構成の無端ベルトとして、まず下記の基材層を作製した。
ポリアミック酸(宇部興産製UワニスA)樹脂溶液中に、カーボンブラック(SB4、Degussa製)を80phr添加し、高圧衝突型分散機(ジーナス製)を用い200Mpaにてφ0.1mmのオリフィスを通過させるとともに2分割したスラリーを衝突させることを5回行い、分散を行った。この物にカーボンブラックの配合質量が、樹脂100部に対して30部になるようにジメチルシリコーン樹脂グラフト重合ポリアミドイミド溶液を攪拌しながら加えた塗布液を準備した。この塗布液をディップコートにてφ278のアルミ製パイプ外面に塗布し、120℃で20分回転乾燥を行った。このものを第一段階温度250℃20分とし、第二段階温度280℃20分、第三段階温度300℃20分、第四段階温度320℃20分とした炉中で溶剤除去を行い、基材層を得た。
この基材層の膜厚は40μmであり、引っ張り弾性率は3.2GPaであった。
【0122】
この基材層上に、前記実施例2に示した方法により40μmの膜厚の最表面層を形成し、2層構成の無端ベルトを得た。
【0123】
この2層構成の無端ベルトを用い、実施例1に記載の方法により評価を行なった。結果を上記表1に示す。
【0124】
(色ずれ評価)
上記実施例7で得た2層構成の無端ベルト、および前述の実施例2の無端ベルトを用いて、以下の方法により色ずれ評価を行った。
前述の富士ゼロックス社製のDocuPrintC6550の中間転写ベルトとして組み込んだ後、22℃55%RHの環境下において、プロセス方向と直角方向に4色黒ライン画像を形成し、得られた画像を顕微鏡で観察し、色ずれの有無を確認した。
・色ずれの評価基準
○:色ずれなし。
△:X50で観察して色ずれあり。
×:目視で判る色ずれあり。
以上の結果を表1に示す。
【0125】
実施例7に示すごとく、内面に引っ張り弾性率が上記範囲の基材層を設けることで、色ずれが改善されていることが判る。
【符号の説明】
【0126】
1 環状体
21 最表面層
22 基材層
101a乃至101d 像保持体
102a乃至102d 帯電装置
103a乃至103d 現像装置
104a乃至104d 像保持体クリーニング装置
105a乃至105d 一次転写ロール
106a乃至106d 支持ロール
107 中間転写ベルト
107b 環状体支持装置(ベルト支持装置)
108 対向ロール
109 二次転写ロール
110 定着装置
111 駆動ロール
112 中間転写ベルトクリーニングブレード
113 中間転写ベルトクリーニングブラシ
114a乃至114d 像露光装置
115 記録媒体
116 二次転写ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも最外表面を構成する層として、ジメチルシリコーン樹脂をグラフト共重合したポリアミドイミド樹脂を含有し、且つ圧縮弾性率が3.0GPa以上である樹脂層を有する画像形成装置用の環状体。
【請求項2】
前記樹脂層の表面エネルギーが30dyn/cm以下である請求項1に記載の画像形成装置用の環状体。
【請求項3】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、
請求項1に記載の環状体を用いてなる中間転写用環状体と、
前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写用環状体に転写する一次転写装置と、
前記中間転写用環状体に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項4】
請求項1に記載の環状体と、
像保持体、前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置、前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置、前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置、前記像保持体上の前記トナー像を前記環状体に転写する一次転写装置、前記環状体に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置、前記像保持体の表面を清掃する像保持体用清掃装置、および、前記環状体の表面を清掃する環状体用清掃装置から選ばれる少なくとも一種と、
を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項5】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、
請求項1に記載の環状体を用いてなる記録媒体搬送用環状体と、
前記像保持体上の前記トナー像を前記記録媒体搬送用環状体によって搬送される記録媒体に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項6】
請求項1に記載の環状体と、
像保持体、前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置、前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置、前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置、前記像保持体上の前記トナー像を前記環状体によって搬送される記録媒体に転写する転写装置、前記像保持体の表面を清掃する像保持体用清掃装置、および、前記環状体の表面を清掃する環状体用清掃装置から選ばれる少なくとも一種と、
を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−68912(P2013−68912A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209276(P2011−209276)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】