説明

画像形成装置用像保持体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

【課題】繰り返し使用による残留電位の変動が低い画像形成装置用像保持体を提供することにある。
【解決手段】支持体と、該支持体上に下記一般式(I)で示される化合物を含有する感光層と、を有する画像形成装置用像保持体。一般式(I)中、Rは、各々独立に、置換又は未置換の直鎖又は分岐の炭素数1以上8以下のアルキル基を表し、Arは、置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の多核芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の縮合芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の1価の芳香族複素環基を表し、qは0または1を表し、nは各々独立に0以上7以下を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置用像保持体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機光導電性化合物を主成分とする感光層を有する感光体は、従来用いられてきた無機光導電体(セレン、酸化亜鉛、硫化カドミウム又はシリコン等)を主成分として含有する感光体に比較して、製造が比較的容易であること、安価であること、取扱いが容易であること、熱安定性が優れていること等多くの利点を有し、盛んに研究がなされている。
【0003】
特に、光導電体の電荷発生機能と電荷輸送機能とをそれぞれ別個の機能層に分担させ、前者の発生機能を有する材料を電荷発生層に、後者の輸送機能を有する材料を電荷輸送層にそれぞれ含有させる、積層タイプの機能分離型感光層を有する感光体がすでに実用化されている。
【0004】
中でも、光導電性化合物として、その高い電荷移動度からテトラアリールベンジジン化合物が盛んに研究されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5参照)。
【0005】
また、チアゾール誘導体であるベンゾビスチアゾール化合物は、高い平面性による結晶性、その骨格の持つ酸素安定性により大気安定性を有していることが報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,047,948号明細書
【特許文献2】米国特許第4,299,897号明細書
【特許文献3】特開昭61−132955号公報
【特許文献4】特開昭62−267749号公報
【特許文献5】特開平3−138654号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Adv.Mater.,2007,19,4438
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、特許文献1に記載の発明に比べて、繰り返し使用による残留電位の変動が低い画像形成装置用像保持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
支持体と、該支持体上に下記一般式(I)で示される化合物を含有する感光層と、を有する画像形成装置用像保持体である。
【0010】
【化1】

【0011】
一般式(I)中、Rは、各々独立に、置換又は未置換の直鎖又は分岐の炭素数1以上8以下のアルキル基を表し、Arは、置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の多核芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の縮合芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の1価の芳香族複素環基を表し、qは0または1を表し、nは各々独立に0以上7以下を表す。
【0012】
請求項2に係る発明は、
支持体と、該支持体上に下記一般式(II−1)で示される化合物を含有する感光層と、を有する画像形成装置用像保持体である。
【0013】
【化2】



【0014】
一般式(II−1)中、Yは、各々独立に、置換又は未置換の2価の炭化水素基を表し、Aは下記一般式(II−2)で表される基を表し、Rは、各々独立に、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の多核芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の縮合芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数1以上6以下の1価の直鎖状炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数2以上10以下の1価の分枝状炭化水素基、又は水素原子を表す。mは各々独立に1以上5以下の整数を表し、pは5以上5,000以下の整数を表す。
【0015】
【化3】

【0016】
一般式(II−2)中、Arは置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の多核芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の縮合芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の1価の芳香族複素環基を表し、qは0または1を表し、nは各々独立に0以上7以下を表す。
【0017】
請求項3に係る発明は、
請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置用像保持体と、前記画像形成装置用像保持体を帯電させる帯電手段、帯電された前記画像形成装置用像保持体を露光して静電潜像を形成させる露光手段、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段、および前記画像形成装置用像保持体を清掃する清掃手段から選ばれる少なくとも1つと、を少なくとも有するプロセスカートリッジである。
【0018】
請求項4に係る発明は、
請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置用像保持体と、前記画像形成装置用像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記画像形成装置用像保持体を露光して静電潜像を形成させる露光手段と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、特許文献1に記載の発明に比べて、繰り返し使用による残留電位の変動が低い画像形成装置用像保持体が提供される。
請求項2に係る発明によれば、特許文献1に記載の発明に比べて、繰り返し使用による残留電位の変動が低い画像形成装置用像保持体が提供される。
請求項3に係る発明によれば、特許文献1に記載の発明に比べて、画像形成装置で使用した際に、繰り返し使用による細線再現性に優れるプロセスカートリッジが提供される。
請求項4に係る発明によれば、特許文献1に記載の発明に比べて、繰り返し使用による細線再現性に優れる画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係る画像形成装置用像保持体の模式断面図である。
【図2】第2実施形態に係る画像形成装置用像保持体の模式断面図である。
【図3】第3実施形態に係る画像形成装置用像保持体の模式断面図である。
【図4】実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図5】実施形態に係るプロセスカートリッジの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
本実施形態では、下記一般式(I)で示される化合物及び下記一般式(II−1)で示される化合物の少なくとも一方を、電荷輸送材料として用いることにより、画像形成装置用像保持体が提供される。すなわち、支持体(例えば導電性支持体)上に感光層が形成された画像形成装置用像保持体であって、当該感光層は下記一般式(I)で示される化合物及び下記一般式(II−1)で示される化合物の少なくとも一方を含有する。
なお、本実施形態における導電性支持体とは、JIS K 7194「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」に基づき測定した、表面の体積抵抗率が10Ω・cm未満である支持体を指す。すなわち導電性支持体は、上記方法に基づき測定した体積抵抗率が10Ω・cm未満である導電性材料で形成された支持体ものであってもよく、基材表面に前記導電性材料で形成された導電層を有する支持体であってもよい。
【0022】
該画像形成装置用像保持体における感光層は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一層に含む単層型感光層、又は電荷発生材料を含む層と電荷輸送材料を含む層とが隣接するように別個に設けられている機能分離型感光層のいずれでもよく、電荷輸送材料として下記一般式(I)で示される化合物及び下記一般式(II−1)で示される化合物の少なくとも一方を含有させるものである。
【0023】
また、電荷発生材料としては、オキシチタニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン又はヒドロキシガリウムフタロシアニン等の公知の電荷発生材料を用いうる。なお、該画像形成装置用像保持体は、最表面上(導電性支持体から最も離れた位置)に保護層を備えたものであってもよく、この場合における保護層は、電荷輸送性を有する架橋性シリコーン樹脂を含んでなることが好ましい。
【0024】
(画像形成装置用像保持体)
本実施形態に係る画像形成装置用像保持体は、支持体上に、下記一般式(I)で示される化合物及び下記一般式(II−1)で示される化合物の少なくとも一方を含有する感光層が形成された画像形成装置用像保持体である。
【0025】
<一般式(I)で示される化合物>
以下、下記一般式(I)で示される化合物について、詳細に説明する。
【0026】
【化4】

【0027】
一般式(I)中、Rは、各々独立に、置換又は未置換の直鎖又は分岐の炭素数1以上8以下のアルキル基を表し、Arは、置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の多核芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の縮合芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の1価の芳香族複素環基を表し、qは0または1を表し、nは各々独立に0以上7以下を表す。
【0028】
一般式(I)中のRについて説明する。
上記の通り、一般式(I)中のRは、各々独立に、置換又は未置換の直鎖又は分岐の炭素数1以上8以下のアルキル基を表す。
で表されるアルキル基は、各々独立に、炭素数1以上6以下であることが好ましく、炭素数1以上4以下であることがより好ましい。
で表されるアルキル基は、直鎖状又は分岐状であり、結晶性維持および溶解性の観点からは、好ましくは直鎖状アルキル基である。
【0029】
一般式(I)中において、Rで表されるアルキル基が置換基を有する場合、該置換基としては、アリール基又は複素環が挙げられる。
前記置換基としてのアリール基は、炭素数6以上20以下のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基、又はナフチル基等が挙げられる。
前記置換基としての複素環とは、炭素と水素以外の元素を含む環を表す。複素環は、その環骨格を構成する原子数(Nr)が、5又は6であることが好ましい。環骨格を構成する炭素原子以外の原子(異種原子)の種類及び数は特に限定されないが、例えば、硫黄原子、窒素原子、酸素原子、セレン原子、珪素、リン原子等が好ましく用いられ、前記環骨格中には2種類以上の異種原子が含まれてもよく、また2個以上の異種原子が含まれてもよい。
【0030】
5員の複素環としては、例えば、チオフェン、ピロール、フラン、イミダゾール、オキサゾール、セレノフェン、チアゾール、チアジアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、シロール、又は前記化合物の3位及び4位の炭素を窒素で置き換えた複素環が好ましく用いられる。5員の複素環を有する芳香族複素環としては、他に、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、インドールなどを含む。
6員の複素環としては、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジンが好ましく用いられる。
【0031】
なお、前記置換基としての複素環は、該複素環に芳香環が置換しているものを包含し、また、芳香環に複素環が置換しているものも含まれる。
【0032】
一般式(I)におけるRで表されるアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基,プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、を挙げられ、メチル基、エチル基,プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、又はn−オクチル基であることが好ましく、メチル基、ブチル基がより好ましく、メチル基又はブチル基であることが製造容易性、結晶性維持の観点から更に好ましく、入手の容易性の観点からはメチル基が更に好ましい。
【0033】
なお、Rは、置換若しくは未置換の直鎖若しくは分岐の炭素数1以上8以下のアルキル基であり、この範囲内ではアルキル基の種類の違いによるイオン化ポテンシャルや電荷輸送性に与える影響は少ない。
また、一般式(I)中に複数存在するRは、同一でも異なっていてもよいが、製造上の観点から同一であることが好ましい。
【0034】
一般式(I)中のArについて説明する。
一般式(I)中、Arは、置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の多核芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の縮合芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の1価の芳香族複素環基を表す。
【0035】
ここで「多核芳香族炭化水素基」及び「縮合芳香族炭化水素基」は、炭素と水素から構成される芳香環及び後述する複素環からなる群より選ばれる2以上の環が存在する基であり、具体的には以下の通りである。
【0036】
「多核芳香族炭化水素基」とは、炭素と水素から構成される芳香環及び後述する複素環からなる群より選ばれる2以上の環が存在し、環同士が炭素−炭素結合によって結合している炭化水素基を表す。具体的には、芳香環を構成する炭素同士が直接炭素−炭素結合によって結合している炭化水素基や、芳香環同士が炭素数1以上18以下の炭素鎖(アルキル鎖又はアルキレン鎖)によって連結されている炭化水素基等が挙げられる。
多核芳香族炭化水素基としては、具体的には、例えば、ビフェニル、ターフェニル、スチルベン、トリフェニルエチレン等が挙げられる。そして、「多核芳香族炭化水素基」は、多核芳香族炭化水素基からなる置換基であり、例えばビフェニルからなる置換基、すなわちビフェニレン基等が挙げられる。
なお、上記多核芳香族炭化水素基を構成する環は、後述する縮合芳香族炭化水素基であってもよく、芳香族複素環であってもよい。多核芳香族炭化水素基を構成する縮合芳香族炭化水素基及び芳香族複素環の具体例としては、例えば後述する具体例の化合物と同様のものが挙げられる。
【0037】
また、「縮合芳香族炭化水素基」とは、炭素と水素から構成される芳香環及び後述する複素環からなる群より選ばれる2以上の環が存在し、これらの環同士が隣接して結合する1対の炭素原子を共有している炭化水素基を表す。具体的には、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、フルオレン等が挙げられる。そして、「縮合芳香族炭化水素基」は、縮合芳香族炭化水素基からなる置換基であり、例えばナフタレンからなる置換基、すなわちナフチル基等が挙げられる。
【0038】
また、「芳香族複素環」は、炭素と水素以外の元素も含む芳香環を表す。そして、芳香族複素環基は、芳香族複素環からなる置換基である。
芳香族複素環の環骨格を構成する原子数(Nr)としては、例えば、Nr=5、又はNr=6等が挙げられる。また、環骨格を構成する炭素原子以外の原子(異種原子)の種類及び数は限定されない。異種原子の種類としては、例えば、硫黄原子、窒素原子、酸素原子、せれん原子、珪素原子、りん原子等が挙げられる。また芳香族複素間は、環骨格中に2個以上の異種原子が含まれていてもよく、2種以上の異種原子が含まれていてもよい
【0039】
特に、Nr=5の環骨格構造(すなわち5員環構造)を有する複素環としては、例えば、チオフェン、チオフィン、ピロール、フラン、イミダゾール、オキサゾール、セレノフェン、チアゾール、チアジアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、シロール、又はこれらの3位及び4位の炭素をさらに窒素で置換した複素環等が挙げられる。また5員環構造を有する複素環としては、上記のほかに、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、インドール等も挙げられる。
またNr=6の環骨格構造(すなわち6員環構造)を有する複素環としては、例えば、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン等が挙げられる。
【0040】
上記「置換若しくは未置換の1価の芳香族基」において、芳香族基を置換する置換基としては、例えば、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、アリール基、アラルキル基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられ、その中でも特に、例えば水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基等が挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば炭素数1以上10以下のものが挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
前記アルコキシ基としては、例えば炭素数1以上10以下のものが挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。
前記アリール基としては、例えば炭素数6以上20以下のものが挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば炭素数7以上20以下のものが挙げられ、具体的には、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
置換アミノ基の置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられ、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基の具体例は前述の通りである。また置換アミノ基の具体例としては、例えば、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0041】
上記一般式(I)中のArとしては、上記の中でも、置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換の多核芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の縮合芳香族炭化水素基が好ましく、置換若しくは未置換のフェニル基、縮合芳香族炭化水素基及び芳香族複素環を含まない置換若しくは未置換の多核芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換縮合芳香族炭化水素基がより好ましく、置換若しくは未置換のフェニル基、芳香環を構成する炭素同士が直接炭素−炭素結合によって結合した置換若しくは未置換の多核芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の縮合芳香族炭化水素基がさらに好ましい。
また上記一般式(I)中のArにおける芳香環数としては、樹脂との相溶性の観点から、1以上6以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。すなわち、上記一般式(I)中のArとしては、置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換のビフェニレン基、又は置換若しくは未置換のナフチル基がより好ましく、未置換のフェニル基、未置換のビフェニレン基、又は未置換のナフチル基がさらに好ましい。
【0042】
一般式(I)中のq及びnについて説明する。
一般式(I)中のqは、0又は1である。一般式(I)中のqが1である化合物は、一般式(I)中のqが0である化合物に比べて電荷輸送性が高いが、化合物の安定性及び合成容易性の観点からはqが0である方が望ましい。一般式(I)中のqが0である化合物は、qが1である化合物に比べて、酸化されやすいチオフェン骨格を有していないため、化合物の安定性が良好であり、これを用いた画像形成用像保持体は、qが1である化合物を用いた場合に比べて耐久性が良好となる。
特に一般式(I)中のqが0である化合物は、例えば、一般式(I)中のqが1であり(すなわちチオフェン骨格を2つ有し)、かつ、ジベンゾチアゾール骨格を有さない化合物と比較すると、電荷輸送性と上記安定性との両方が良好となる。
【0043】
一般式(I)中のnは、各々独立に0以上7以下である。一般式(I)における2つのnは、同一であってもよく、異なっていてもよいが、製造上の観点から同一であることが好ましい。一般式(I)中のnは、電荷輸送性の観点からは小さいほうが好ましいが、nが小さすぎるとカルボニル基の双極子モーメントの影響により電荷移動度が下がるため、1以上3以下が好ましく、1が最も好ましい。
【0044】
前記一般式(I)で示される化合物は、ベンゾビスチアゾール骨格に、直接又はチオフェン骨格を介して、電子受容性の強いアミノ基を有している。このため、π共役の範囲が拡張されることにより電荷移動度の向上が促進されると共に、アモルファス性が向上して樹脂中への分散性が良好となるものと考えられる。
【0045】
以下に、一般式(I)で表されるベンゾビスチアジアゾール化合物の具体例化合物1から36(下記表における具体例化合物番号1から具体例化合物番号36の化合物)を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
なお、具体例化合物1から36におけるR、Ar、q、及びnは、上記一般式(I)におけるR、Ar、q、及びnを意味する。
【0046】
【化5】

【0047】
【化6】

【0048】
【化7】

【0049】
【化8】

【0050】
<一般式(I)で示される化合物の製造方法>
以下、一般式(I)で示される化合物の製造方法について具体的に説明する。
本実施形態においては、例えば、下記一般式(III)で示されるハロゲン化合物と下記一般式(IV)で示されるジアリールアミン化合物を銅触媒でカップリング反応を行うか、下記一般式(V−1)で示されるジアリールアミン化合物と下記一般式(VI−1)で示されるハロゲン化合物を銅触媒でカップリング反応を行うか、又は下記一般式(V−2)で示されるジアリールアミン化合物と下記一般式(VI−2)で示されるハロゲン化合物を銅触媒でカップリング反応を行うことにより、下記一般式(VII)で表されるトリアリールアミン誘導体が得られる。
【0051】
次いでトリアリールアミン(VII)をオキシ塩化リンの存在下に、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド等のホルミル化剤と反応させることで、トリアリールアミン誘導体のホルミル体(VIII)が得られる。このトリアリールアミン誘導体のホルミル体(VIII)とジアミノベンゾジチオールとを反応させることにより、ベンゾビスチアゾール化合物(IX)が得られる。
【0052】
【化9】

【0053】
一般式(III)中、Rは一般式(I)中のRと同様であり、Gは臭素原子又はヨウ素原子を示す。また、一般式(IV)中、Arは一般式(I)中のArと同様であり、Arはフェニル基又はフェニルチオフェンを示す。
【化10】

【0054】
一般式(V−1)中、R及びArは前述と同様である。また一般式(VI−1)中、Ar及びGは前述と同様である。
一般式(V−2)中、R及びArは前述と同様である。また一般式(VI−2)中、Ar及びGは前述と同様である。
【0055】
【化11】

【0056】
一般式(VII)中、Ar、Ar、及びRは前述と同様である。
【0057】
【化12】

【0058】
一般式(VIII)中、Ar、Ar、及びRは前述と同様である。
【0059】
【化13】

【0060】
一般式(IX)中、Ar、Ar、及びRは前述と同様である。
【0061】
上記カップッリング反応は、一般式(IV)、(V−1)、又は(V−2)で示される化合物1当量に対して、一般式(III)、(VI−1)、又は(VI−2)で示されるハロゲン化合物を、例えば0.5当量以上1.5当量以下、好ましくは0.7当量以上1.2当量以下で用いられる。
上記カップリング反応に用いられる上記銅触媒としては、例えば、銅紛、酸化第一銅、硫酸銅等が挙げられる。また上記銅触媒は、一般式(IV)、(V−1)、又は(V−2)で示される化合物1質量部に対して、例えば0.001質量部以上3重量部以下、好ましくは0.01質量部以上2質量部以下で用いられる。
【0062】
上記カップリング反応においては塩基が用いられるが、用いる塩基の具体例としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。また上記塩基は、一般式(IV)、(V−1)、又は(V−2)で示される化合物1当量に対して、例えば0.5当量以上3当量以下、好ましくは0.7当量以上2当量以下で用いられる。
【0063】
上記反応においては、溶媒を用いてもよいし、溶媒を用いなくても良い。溶媒を用いる場合、用いられる溶媒としては、例えば、n−トリデカン、テトラリン、p−シメン、テルピノレン等の高沸点の非水溶性炭化水素系溶剤や、o−ジクロロベンゼン、クロロベンゼン等の高沸点のハロゲン系溶剤等が挙げられる。上記溶媒は、一般式(IV)、(V−1)、又は(V−2)で示される化合物1質量部に対して、例えば0.1質量部以上3質量部以下、好ましくは0.2質量部以上2質量部以下の範囲で使用される。
【0064】
また、上記反応は、窒素又はアルゴン等の不活性ガス雰囲気下において、例えば100℃以上300℃以下、好ましくは150以上270℃以下、さらに好ましくは180℃以上230℃以下の温度範囲で、効率よく攪拌しながら行い、さらに反応中に生成する水を除去しながら反応させることが好ましい。
【0065】
反応終了後には、必要に応じて冷却した後、例えばメタノール、エタノール、n−オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、又はグリセリン等の溶剤、及び水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等の塩基を用いて、加水分解を行う。
上記加水分解における溶剤の使用量は、一般式(IV)、(V−1)、又は(V−2)で示される化合物1質量部に対して、例えば0.5質量部以上10質量部以下、好ましくは1質量部以上5質量部以下が挙げられる。また上記加水分解における塩基の使用量は、一般式(IV)、(V−1)、又は(V−2)で示される化合物1質量部に対して、例えば0.2質量部以上5質量部以下、好ましくは0.3質量部以上3質量部以下が挙げられる。
【0066】
また、上記加水分解反応は、上記カップリング反応を行った後、その反応溶液中に直接上記溶剤及び上記塩基を加え、窒素又はアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、50℃以上かつ用いる溶剤の沸点以下の温度範囲において、攪拌しながら行う。
また、この場合、溶剤としては、カップリング反応でカルボン酸塩が生成して固化するため、反応温度を上げるためには、例えば、沸点が150℃以上ものを用いる。
【0067】
加水分解反応の終了後、反応生成物を水に注入し、さらに塩酸等で中和することにより一般式(VII)で示されるトリアリールアミン化合物を遊離させる。この加水分解反応の後処理において、水に注入した後、さらに塩酸等で中和することにより一般式(VII)で示されるトリアリールアミン化合物を遊離させるためには、水溶性のエチレングリコール、プロピレングリコール、又はグリセリン等を添加することが特に好ましい。
【0068】
次いで、洗浄し、必要に応じて、溶剤に溶解させた後、シリカゲル、アルミナ、活性白土、活性炭等でカラム精製を行なうか、又は溶液中にこれら吸着剤を添加して不要分を吸着させる等の処理を行う。さらにアセトン、エタノール、酢酸エチル、トルエン等の溶剤から再結晶を行うか、又はメチルエステル若しくはエチルエステル等にエステル化した後、同様の再結晶の操作を行ってもよい。
【0069】
次いで、上記で得られた一般式(VII)で示されるトリアリールアミン化合物をオキシ塩化リンの存在下に、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド等のホルミル化剤と反応させることで、トリアリールアミン誘導体のホルミル体(VIII)が得られる。この場合、ホルミル化剤を過剰に用いることにより、ホルミル化剤が反応溶媒を兼ねてもよいが、溶媒としてo−ジクロロベンゼン、ベンゼン、塩化メチレン等の反応に不活性な溶媒を用いてもよい。反応温度としては、例えば、0度以上かつ用いる溶媒の沸点以下の範囲が挙げられ、好ましくは27℃以上150℃以下である。
【0070】
次に、一般式(XI)で示されるトリアリールアミン誘導体のホルミル体とジアミノベンゾジチオールとの環化反応を行うことにより、一般式(X)で示されるベンゾビスチアゾールの低分子化合物が得られる。
上記一般式(XI)で示されるトリアリールアミン誘導体のホルミル体とジアミノベンゾジチオールとの環化反応において、一般式(XI)で示される化合物1当量に対して、例えば1.5当量以上5当量以下、好ましくは1.7当量以上4当量以下のジアミノベンゾジチオールが用いられる。
【0071】
上記環化反応において、溶剤は必要に応じて使用する。溶剤としては、例えば、n−トリデカン、テトラリン、p−シメン、テルピノレン等の高沸点の非水溶性炭化水素系溶剤、o−ジクロロベンゼン、クロロベンゼン等の高沸点のハロゲン系溶剤、N、N’−ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシド等が挙げられる。上記溶剤は、一般式(XI)で示されるトリアリールアミン誘導体のホルミル体1質量部に対し、例えば0.1質量部以上3質量部以下、好ましくは0.2質量部以上2重量部以下の範囲で使用される。
【0072】
また、この環化反応は、窒素又はアルゴン等の不活性ガス雰囲気下において、例えば100℃以上300℃以下、好ましくは150℃以上270℃以下、さらに好ましくは180℃以上250℃以下で効率よく攪拌しながら行い、さらに反応中に生成する水を除去しながら反応させることが好ましい。反応の終了後は、反応生成物をトルエン、アイソパー、n−トリデカン等の溶剤に溶解させ、必要に応じて、水洗またはろ過により、不要物を除去し、さらに、シリカゲル、アルミナ、活性白土、活性炭等で、カラム精製するか、または溶液中にこれらの吸着剤を添加し、不要分を吸着させる等の処理を行い、さらに、エタノール、酢酸エチル、トルエン等の溶剤から再結晶させて精製する。ただし、本実施形態における合成法としてはこれらに限定されるものではない。

【0073】
<一般式(II−3)で示される構造単位を含む化合物(ポリエステル)>
以下、下記一般式(II−3)で示される構造単位を含む化合物について詳細に説明する。
なお本実施形態では、下記一般式(II−3)で示される構造単位を含む化合物として、下記一般式(II−1)で示されるポリエステルを用いる。
【0074】
【化14】

【0075】
一般式(II−3)中、Yは、各々独立に、置換若しくは未置換の2価の炭化水素基を表し、mは1以上5以下の整数を表し、Aは下記一般式(II−2)で表される基を表す。
【0076】
【化15】

【0077】
一般式(II−2)中、Arは置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の多核芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の縮合芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の1価の芳香族複素環基を表し、qは0または1を表し、nは各々独立に0以上7以下を表す。
【0078】
前記一般式(II−3)で示される構造単位を含むポリエステルは、一般式(I)で表されるベンゾビスチアゾール化合物を由来とする構造単位Aを含む。また前記一般式(II−3)で示される構造単位を含むポリエステルはポリマーであることから、低分子化合物であるN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トリル)ベンジジン等の電荷輸送材料よりも高い耐熱性を有する。
よって、前記一般式(II−3)で示される構造単位を含むポリエステルは、画像形成装置用の像保持体に用いるのに好適である。
更に、一般式(II−3)で示される構造単位を含むポリマーをエステル構造とすることで、一般式(I)で表されるベンゾビスチアゾール化合物を由来とする構造単位Aが導入されたポリマーを合成・製造し易い。
【0079】
以下、一般式(II−3)について詳細に説明する。
一般式(II−3)中、Yは、各々独立に、置換若しくは未置換の2価の炭化水素基を表す。
で表される2価の炭化水素基は、2価のアルコール残基であり、アルキレン基、(ポリ)エチレンオキシ基、(ポリ)プロピレンオキシ基、アリーレン基、2価の複素環基又はこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0080】
で表される2価の炭化水素基は、樹脂との相溶性及び電荷輸送性の観点から、炭素数の少ない連結基が好ましい。具体的には炭素数1以上18以下の範囲が好ましく、炭素数1以上6以下の範囲がより好ましい。
またYで表される2価の炭化水素基は、電荷輸送性の観点から双極子モーメントの小さな連結基が好ましい。具体的には、炭素原子及び水素原子以外の原子(例えば、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等)を含まない連結基が好ましい。
すなわち、Yで表される2価の炭化水素基としては、炭素数1以上10以下のアルキレン基、又は炭素数6以上18以下のアリーレン基が好ましく、炭素数1以上6以下のアルキレン基がより好ましい。
またYで表される2価の炭化水素基は、樹脂との相溶性の観点から、立体的なかさ高さが小さい基がより好ましい。立体的なかさ高さが小さい2価の炭化水素基としては、例えば環構造を有さない基が挙げられ、具体的には、例えば、炭素数1以上10以下のアルキレン基が挙げられ、炭素数1以上5以下のアルキレン基がさらに好ましい。また樹脂との相溶性に加えて、分子量の大きな高分子化合物を合成しやすい観点から、炭素数2のアルキレン基が最も好ましい。
【0081】
一般式(II−3)におけるYは、具体的には下記の式(1)から(7)から選択される基が挙げられる。
【0082】
【化16】



【0083】
式(1)及び(2)中、d及びeは、各々独立に、1以上10以下の整数を示す。
式(5)及び(6)中、R及びRは、各々独立に、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシル基、置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換のアラルキル基、又はハロゲン原子を表す。
式(5)及び(6)中、f及びgはそれぞれ0、1、又は2の整数を示し、h及びiはそれぞれ0又は1を示し、Vは下記式(8)から(28)から選択される基を表す。
【0084】
【化17】



【0085】
式(8)中、bは1以上10以下の整数を表し、好ましくは1以上6以下の整数を表し、より好ましくは1以上4以下の整数を表す。
式(14)中、Rは各々独立に、水素原子、アルキル基、又はシアノ基を表す。
式(25)及び(28)中、Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数1以上10以下のアルコキシル基、置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換のアラルキル基、又はハロゲン原子を表す。
式(14)、(15)、及び(24)から(28)中、cは各々独立に、0以上10以下の整数を表し、好ましくは0以上6以下の整数を表し、より好ましくは1以上3以下の整数を表す。
【0086】
一般式(II−3)で示される構造単位を含む化合物に複数存在するYは、同一でも異なっていてもよいが、製造上の観点から同一であることが好ましい。
【0087】
一般式(II−3)中、mは、1以上5以下の整数を表す。溶解性と高分子量化の両立の観点からは、mは1以上3以下の整数であることが好ましく、高分子量化の観点からは1以上2以下の整数であることがより好ましい。また、画像形成装置用像保持体の電気特性を良好にする観点から、上記一般式(II−3)中、mは1が最も好ましい。
【0088】
一般式(II−3)中、Aは下記一般式(II−2)で表される基を表す。
【0089】
【化18】

【0090】
一般式(II−2)中、Arは置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の多核芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の縮合芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の1価の芳香族複素環基を表し、qは0または1を表し、nは各々独立に0以上7以下を表す。
【0091】
一般式(II−2)におけるAr,q、及びnは、それぞれ一般式(I)におけるAr、q、及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。なお、一般式(II−3)で示される構造単位を含むポリエステルにおいては、qが1である場合は特に溶媒に溶解しにくいため、溶解性の観点からqが0である形態が好ましい。
一般式(II−3)で示される構造単位を含む化合物に複数存在するAは、すべて同一であっても、2種類以上が含まれていてもよい。
【0092】
前記一般式(II−3)で表される構造単位を含むポリエステルとしては、例えば、下記一般式(II−1)で表されるポリエステル及び下記一般式(II−4)で表されるポリエステル等が挙げられる。いずれも一般式(I)に由来する構造単位A(すなわち、上記一般式(II−2)で表される基)を含むため、電荷輸送性及び安定性が良好であり、画像形成装置用像保持体に適する。
【0093】
なお、下記一般式(II−1)で表されるポリエステルは、カルボン酸残基としてAを有し、下記一般式(II−4)で表されるポリエステルでは、AとZとをカルボン酸残基として有する。よって、下記一般式(II−1)で表されるポリエステルは合成の簡便さの観点で優れており、下記一般式(II−4)で表されるポリエステルは、組み合わせるカルボン酸残基Zによって更に画像形成装置用像保持体に適したものとなり得る。
【0094】
【化19】



【0095】
一般式(II−1)中、Yは、各々独立に、置換又は未置換の2価の炭化水素基を表し、Aは上記一般式(II−2)で表される基を表し、Rは、各々独立に、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の多核芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の縮合芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数1以上6以下の1価の直鎖状炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数2以上10以下の1価の分枝状炭化水素基、又は水素原子を表す。mは各々独立に1以上5以下の整数を表し、pは5以上5,000以下の整数を表す。
すなわち一般式(II−1)中、Y、A、及びmは、上記一般式(II−3)中のY、A、及びmとそれぞれ同義である。
【0096】
【化20】



【0097】
一般式(II−4)中、Y、A、m、及びpは、一般式(II−1)におけるY、A、m、及びpとそれぞれ同義である。Rは、各々独立に、−O−(Y−O)−Hまたは−O−(Y−O)−CO−Z−CO−ORで表される基を表す。ここでRは、一般式(II−1)におけるRと同義である。Zは2価の炭化水素基(すなわちカルボン酸残基)を表す。
【0098】
一般式(II−1)及び(II−4)中、pは5以上5,000以下の整数を表す。塗膜組成物(塗布液)として用いる際の一般的な溶媒に対しての溶解性を考慮すると、pは5以上2000以下の整数であることが好ましく、合成の容易さの観点からは5以上600以下の整数であることがより好適であり、分子分散性Mw/Mnの観点からは5以上500以下の整数であることが更に好適である。
なお、pが5以上5,000以下の範囲であれば、pの数によってイオン化ポテンシャルは殆ど影響を受けず、大きくとも0.1eV程度の変動と推測される。
【0099】
一般式(II−1)中、Rは、各々独立に、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の多核芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の縮合芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数1以上6以下の1価の直鎖状炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数2以上10以下の1価の分枝状炭化水素基、又は水素原子を表す。一般式(II−4)中のRで表される基に含まれるRも、一般式(II−1)中のRと同様である。
【0100】
上記のなかでも、Rとしては、水素原子又はフェニル基であることが好適であり、低コスト化、製造容易性の観点から水素原子であることがより好適である。
【0101】
一般式(II−1)及び(II−4)における2つのRは、同一でも異なっていてもよいが、製造上の観点から同一であることが好ましい。一般式(II−4)における2つのRも、同一でも異なっていてもよいが、製造上の観点から同一であることが好ましい。
【0102】
一般式(II−4)におけるZは、2価のカルボン酸残基を表す。
具体的には、一般式(II−3)におけるYで挙げた2価の連結基と同様であり、好適な範囲も同様である。一般式(II−4)における複数のZは、同一でも異なっていてもよいが、製造上の観点から同一であることが好ましい。
【0103】
一般式(II−1)及び一般式(II−4)における複数のAは、同一でも異なっていてもよいが、製造上の観点から同一であることが好ましい。
また一般式(II−1)及び一般式(II−4)における複数のmは、同一でも異なっていてもよいが、製造上の観点から同一であることが好ましい。
【0104】
一般式(II−1)又は一般式(II−4)など、一般式(I)で表される化合物を由来とする構造単位を含むポリエステルは、重量平均分子量Mwが、5000以上300000以下の範囲にあるものが好ましく、一般に塗布液として用いる際の溶媒に対しての溶解性を考慮すると、重量平均分子量は、10000以上200000以下であることが好ましく、30000以上150000以下であることが更に好ましい。
尚、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(キャリア:テトラヒドロフラン)により測定されるポリスチレン換算の平均分子量である。
【0105】
以下に、一般式(II−1)で表されるポリエステルの具体例ポリマー1から32(すなわち、具体例ポリエステル1から32)を示すが、本実施形態はこれらの具体例に限定されるものではない。
尚、具体例ポリマーにおけるモノマーの欄(「Aの構造番号」の欄)の番号は、前記一般式(I)で表される化合物の具体例化合物番号に対応している。以下、各番号を付した具体例(化合物)、例えば15の番号を付したAの構造は、具体例化合物15に由来する構造を意味する。
また、具体例ポリマーにおけるY、m、p、及びRは、それぞれ一般式(II−1)におけるY、m、p、及びRを表す。
【0106】
【化21】

【0107】
【化22】

【0108】
【化23】

【0109】
【化24】

【0110】
上記一般式(II−1)で表される構造単位を含むポリエステルの合成方法は、所望する構造に応じて公知の方法を組み合わせて利用される。その合成方法は特に限定されるものではないが、本実施形態の画像形成装置用像保持体に用いられるベンゾビスチアゾール含有ポリエステルの合成方法の一例を以下に説明する。
【0111】
前記一般式(II−1)で表されるポリエステルは、下記一般式(I−3)で示されるモノマーを、例えば、第4版実験化学講座第28巻(丸善,1992)等に記載された公知の方法で重合することで得られる。
【0112】
【化25】



【0113】
前記一般式(I−3)において、Aは前記一般式(I)で表される化合物から選択された少なくとも1種に由来する部分構造を表し、前記一般式(II−1)中のAと同義である。Aは水酸基、ハロゲン原子、又は−O−Rを表し、Rはアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、又は、アラルキル基を表す。
すなわち、前記一般式(II−1)で表されるポリエステルは、次のようにして合成される。
【0114】
1)Aが水酸基の場合
前記一般式(I−3)で表される化合物に、HO−(Y−O)−Hで表される2価アルコール類を当量混合し、酸触媒を用いて重合する。なお、Yは2価のアルコール残基を表し、一般式(II−1)中のYと同義である。mは1以上5以下の整数を表し、一般式(II−1)中のmと同義である。
【0115】
前記酸触媒としては、硫酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等、通常のエステル化反応に用いるものが使用され、モノマー(すなわち一般式(I−3)で表される化合物)1質量部に対して、1/10,000質量部以上1/10質量以下部、好ましくは1/1,000質量以上1/50質量部以下の範囲で用いられる。
重合中に生成する水を除去するために、水と共沸する溶剤を用いることが好ましく、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、モノマー1質量部に対して、1質量部以上100質量部以下、好ましくは2質量部以上50質量部以下の範囲で用いられる。
反応温度は条件に応じて設定されるが、重合中に生成する水を除去するために、溶剤の沸点で反応させることが好ましい。
【0116】
反応終了後、溶剤を用いなかった場合には溶解する溶剤に溶解させる。溶剤を用いた場合には、反応溶液をそのまま、メタノール、エタノール等のアルコール類や、アセトン等のポリマーが溶解しにくい貧溶剤中に滴下し、ポリエステルを析出させ、ポリエステルを分離した後、水や有機溶剤で十分洗浄し、乾燥させる。
更に、必要であれば適当な有機溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下し、ポリエステルを析出させる再沈殿処理を繰り返してもよい。再沈殿処理の際には、メカニカルスターラー等で、効率よく撹拌しながら行うことが好ましい。再沈殿処理の際にポリエステルを溶解させる溶剤は、ポリエステル1質量部に対して、1質量部以上100質量部以下、好ましくは2質量部以上50質量部以下の範囲で用いられる。また、貧溶剤はポリエステル1質量部に対して、1質量部以上1,000質量部以下、好ましくは10質量部以上500質量部以下の範囲で用いられる。
【0117】
2)Aがハロゲンの場合
前記一般式(I−3)で表される化合物に、HO−(Y−O)−Hで示される2価アルコール類を当量混合し、ピリジンやトリエチルアミン等の有機塩基性触媒を用いて重合する。なお、Yは2価のアルコール残基を表し、一般式(II−1)中のYと同義である。mは1以上5以下の整数を表し、一般式(II−1)中のmと同義である。
【0118】
前記有機塩基性触媒は、モノマー1当量に対して、1当量以上10当量以下、好ましくは2当量以上5当量以下の範囲で用いられる。
溶剤としては、塩化メチレン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、モノマー1質量部に対して、1質量部以上100質量部以下、好ましくは2質量部以上50質量部以下の範囲で用いられる。
反応温度は条件に応じて設定される。重合後、前述のように再沈殿処理し、精製する。
【0119】
また、ビスフェノール等の酸性度の高い2価アルコール類を用いる場合には、界面重合法を用いてもよい。すなわち、2価アルコール類を水に加え、当量の塩基を加えて溶解させた後、激しく撹拌しながら2価アルコール類と当量のモノマー溶液を加えることによって重合する。この際、水は2価アルコール類1質量部に対して、1質量部以上1,000質量部以下、好ましくは2質量部以上500質量部以下の範囲で用いられる。モノマーを溶解させる溶剤としては、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効である。
反応温度は条件に応じて設定され、反応を促進するために、アンモニウム塩、スルホニウム塩等の相間移動触媒を用いることが効果的である。相間移動触媒は、モノマー1質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下、好ましくは0.2質量部以上5質量部以下の範囲で用いられる。
【0120】
3)Aが−O−Rの場合
前記一般式(I−3)で表される化合物に、HO−(Y−O)−Hで示される2価アルコール類を過剰に加え、硫酸、リン酸等の無機酸、チタンアルコキシド、カルシウム及びコバルト等の酢酸塩或いは炭酸塩、亜鉛や鉛の酸化物を触媒に用いて加熱し、エステル交換により合成される。なお、Yは2価のアルコール残基を表し、一般式(II−1)中のYと同義である。mは1以上5以下の整数を表し、一般式(II−1)中のmと同義である。
【0121】
前記2価アルコール類はモノマー(一般式(I−3)で表される化合物)1当量に対して、2当量以上100当量以下、好ましくは3当量以上50当量以下の範囲で用いられる。
前記触媒はモノマー1質量部に対して、1/10,000質量部以上1質量部以下、好ましくは1/1,000質量部以上1/2質量部以下の範囲で用いられる。
【0122】
反応は、反応温度200℃以上300℃以下で行い、−O−Rから−O−(Y−O)−Hへのエステル交換終了後は、HO−(Y−O)−Hの脱離による重合を促進するため、減圧下で反応させることが好ましい。また、HO−(Y−O)−Hと共沸する1−クロロナフタレン等の高沸点溶剤を用いて、常圧下でHO−(Y−O)−Hを共沸で除きながら反応させてもよい。
【0123】
また、次のようにしてポリエステルを合成してもよい。
上記それぞれの場合において、2価アルコール類を過剰に加えて反応させることによって下記一般式(I−4)で示される化合物を生成した後、この化合物を前記一般式(I−3)で示したモノマーの代わりとして用いて、2価カルボン酸又は2価カルボン酸ハロゲン化物等と反応させ、一般式(II−1)で表されるポリエステルが得られる。
【0124】
【化26】



【0125】
一般式(I−4)中、Aは前記一般式(I)で表される化合物から選択された少なくとも1種に由来する部分構造を表し、前記一般式(II−1)におけるAと同義である。Yは2価のアルコール残基を表し、前記一般式(II−1)におけるYと同義である。mは1以上5以下の整数を表し、前記一般式(II−1)におけるmと同義である。
【0126】
また、前記ポリエステルの末端に分子を導入することを行ってもよい。その場合、次の方法が挙げられる。すなわち、Aが水酸基の場合、末端導入化合物のモノカルボン酸を共重合させるか、ポリマーの重合反応後の電子輸送性化合物にモノカルボン酸を仕込んで反応させ導入する。
【0127】
また、Aがハロゲンの場合、末端導入化合物のモノ酸塩化物を共重合させるか、ポリマーの重合反応後、末端導入化合物のモノ酸塩化物を仕込んで反応させ導入する。Aが−O−Rの場合には、末端導入化合物のモノエステルを共重合させるか、ポリマーの重合反応後、末端導入化合物のモノエステルを仕込んで反応させ導入する。
【0128】
本実施形態の画像形成装置用像保持体では、前記の通り、前記一般式(I)で示される化合物及び前記一般式(II−1)で示される化合物の少なくとも一方が、感光層に含まれる。そして、前記一般式(I)で示される化合物及び前記一般式(II−1)で示される化合物の少なくとも一方が電荷輸送性を有することにより、繰返し使用による残留電位変動が低く、優れた環境維持性を発揮する。そして、前記一般式(I)で示される化合物及び前記一般式(II−1)で示される化合物の少なくとも一方は、電荷輸送性が高いことに加えて、酸化されにくく安定性が良好であるため、画像形成装置用像保持体の耐久性も良好となる。
また本実施形態の画像形成装置用像保持体では、前記一般式(I)で示される化合物及び前記一般式(II−1)で示される化合物の少なくとも一方が樹脂との相溶性に優れるため、感光層に結着樹脂を用いても、感光層の膜厚むらが少なく、像保持体の繰り返し使用による残留電位の変動が低くなる。
さらに本実施形態の画像形成装置及びプロセスカートリッジでは、本実施形態の画像形成装置用像保持体を用いるものであるために、長期にわたって良好な画質が得られ、環境負荷の低減や大幅なコストダウンにもなる。
【0129】
<画像形成装置用像保持体の構成>
以下、本実施形態の画像形成装置用像保持体の構成について説明する。
本実施形態の画像形成装置用像保持体は、支持体上に感光層を有する画像形成装置用像保持体であって、該感光層に上記した一般式(I)で示される化合物及び一般式(II−1)で示される化合物の少なくとも一方を含有することを特徴とする。
図1から図3は、それぞれ本実施形態の画像形成装置用像保持体の第1から第3実施形態を示す模式断面図である。
いずれも画像形成装置用像保持体1を導電性支持体2及び感光層3の積層方向に沿って切断したものである。
【0130】
図1及び図2に示す、第1及び第2実施形態に係る画像形成装置用像保持体1は、電荷発生物質と電荷輸送物質とが異なる層に含有される機能分離型感光層を備えるものである。すなわち、感光層3中において、電荷発生物質を含有する層(電荷発生層5)と電荷輸送物質を含有する層(電荷輸送層6)とが別個に形成され、それらが隣接するように積層されている。
【0131】
一方、図3に示す、第3実施形態に係る画像形成装置用像保持体1は、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一の層に含有される単層型感光層を備えるものである。すなわち、感光層3中において、電荷発生物質と電荷輸送物質と含有する電荷発生・輸送層8が一層形成されている。
【0132】
より詳しくは、第1実施形態に係る画像形成装置用像保持体1においては、導電性支持体2上に下引き層4、電荷発生層5、及び電荷輸送層6がこの順で積層されて感光層3が構成されており、第2実施形態に係る画像形成装置用像保持体1においては、導電性支持体2上に下引き層4、電荷発生層5、電荷輸送層6、及び保護層7がこの順で積層されて感光層3が構成されている。また、第3実施形態に係る画像形成装置用像保持体1においては、導電性支持体2上に下引き層4及び電荷発生・輸送層8がこの順で積層されて感光層3が構成されている。
【0133】
なお、図示を省略するが、第2実施形態の変形態様として、第2実施形態における電荷発生層5と電荷輸送層6との積層順を逆にした態様や、第3実施形態の変形態様として、第3実施形態の電荷発生・輸送層8上に、第2実施形態において用いられる保護層7を形成させた態様も挙げられる。
【0134】
導電性支持体2としては、アルミニウムがドラム状、シート状、又はプレート状等の形状のものとして使用されるが、これらに限定されるものではない。導電性支持体2には陽極酸化処理や、ベーマイト処理、又はホーニング処理等を行ってもよい。
【0135】
導電性支持体2と感光層3で挟まれる領域又は導電性支持体2と電荷発生・輸送層8で挟まれる領域には、図1から図3に示すように下引き層4が設けられる。下引き層4としては、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、又はジルコニウムカップリング剤等の有機ジルコニウム化合物;チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、又はチタネートカップリング剤等の有機チタン化合物;アルミニウムキレート化合物、又はアルミニウムカップリング剤等の有機アルミニウム化合物のほか;アンチモンアルコキシド化合物、ゲルマニウムアルコキシド化合物、インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物、マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物、スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物、アルミニウムシリコンアルコキシド化合物、アルミニウムチタンアルコキシド化合物、又はアルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物、等の有機金属化合物が用いられる。特に有機ジルコニウム化合物、有機チタニル化合物、又は有機アルミニウム化合物は好ましく使用される。
【0136】
また、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス2メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、又はβ−3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を更に含有させて使用する。
【0137】
更に、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレノキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、又はポリアクリル酸等の公知の結着樹脂を更に含有させ得る。これらの混合割合は、必要に応じて設定される。
また、下引き層4中には電子輸送性顔料を混合又は分散して使用し得る。
【0138】
電子輸送性顔料としては、特開昭47−30330号公報に記載のペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、又はキナクリドン顔料等の有機顔料が挙げられる。また、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、又はハロゲン原子等の電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料やフタロシアニン顔料等の有機顔料、酸化亜鉛、又は酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。これらの顔料の中では、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、酸化亜鉛、又は酸化チタンが好ましい。
【0139】
またこれらの顔料の表面は、上記カップリング剤や、バインダ等で表面処理してもよい。電子輸送性顔料の含有量は、下引き層4全量中95重量%以下、好ましくは90重量%以下で使用される。
【0140】
下引き層4中に電子輸送性顔料を混合又は分散する方法は、ボールミル、ロールミル、サンドミル、又はアトライター、超音波等を用いる常法が適用される。混合及び分散は有機溶剤中で行われるが、有機溶剤としては、有機金属化合物や樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合又は分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであれば如何なるものでも使用される。
【0141】
下引き層4の厚みは、0.1μm以上30μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以上25μm以下が適当である。
また、下引き層4を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、又はカーテンコーティング法等の通常の方法を用いる。
【0142】
前記成分を含有する下引き層形成用組成物を塗布して形成された塗膜を乾燥させて下引き層4を得るが、通常、乾燥は溶剤を蒸発させ、製膜され得る温度で行われる。特に、酸性溶液処理、ベーマイト処理を行った基材は、基材の欠陥隠蔽力が不十分となり易いため、下引き層4を形成することが好ましい。
【0143】
電荷発生層5に含有される電荷発生材料は、ビスアゾ、又はトリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、又はフタロシアニン顔料等既知のものを使用し得るが、とくに金属及び無金属フタロシアニン顔料が好ましい。その中でも、特開平5−263007号公報及び、特開平5−279591号公報に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報及び、特開平5−140473号公報に開示されたジクロロスズフタロシアニン、又は特開平4−189873号公報及び、特開平5−43813号公報に開示されたチタニルフタロシアニンが特に好ましい。
【0144】
電荷発生層5は、電荷発生材料と結着樹脂とを混合して形成するが、このような結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、又はポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択し得る。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、又はポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いる。
なお本発明における絶縁性樹脂とは、JIS K 7194「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」に基づき測定した体積抵抗率が1012Ω・cm以上であるような絶縁性樹脂を指す。
【0145】
電荷発生材料と結着樹脂の配合比(重量比)は10:1から1:10の範囲が好ましく、より好ましくは8:3から3:8である。
またこれらを分散させる方法としてはボールミル分散法、アトライター分散法、又はサンドミル分散法等の通常の方法を用いるが、この際、分散によって電荷発生材料の結晶型が変化しない条件が必要とされる。ちなみに本実施形態で用いた前記の分散法のいずれについても分散前と結晶型が変化していないことが確認されている。
【0146】
更にこの分散の際、電荷発生材料の粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。
【0147】
電荷発生層5の厚みは0.1μm以上5μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。また、電荷発生層5を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、又はカーテンコーティング法等の通常の方法を用いる。
【0148】
電荷輸送層6としては、前記一般式(I)で示される化合物及び前記一般式(II−1)で示される化合物の少なくとも一方を含有する他は、公知の技術によって形成されたものを使用し得る。
電荷輸送層6は、前記一般式(I)で示される化合物及び前記一般式(II−1)で示される化合物の少なくとも一方を含有すれば、その他の電荷輸送材料、結着樹脂等を含有して形成されてもよい。なお、前記一般式(I)で示される化合物を用いて前記一般式(II−1)で示される化合物を用いない場合は、前記一般式(I)で示される化合物を結着樹脂等に分散させて用いることが望ましい。また前記一般式(II−1)で示される化合物を用いる場合は、その他の樹脂を用いなくても電荷輸送層6が形成されるが、低コストの観点から、その他の樹脂と混合して用いることが望ましい。
その他の電荷輸送材料としては、例えば、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物や、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物といった他の電荷輸送材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0149】
電荷輸送層6全量中、前記一般式(I)で示される化合物及び前記一般式(II−1)で示される化合物の含有量は、5質量%以上70質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上60質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以上50質量%以下である。
また前記一般式(I)で示される化合物及び前記一般式(II−1)で示される化合物以外の化合物を電荷輸送材料として併用する場合は、電荷輸送材料全量中、前記一般式(I)で示される化合物及び前記一般式(II−1)で示される化合物の含有量は、1質量%以上であるのが好ましく、5質量%以上であるのがより好ましい。
【0150】
電荷輸送層6に結着樹脂を用いる場合、結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン、又は特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材等高分子電荷輸送材が挙げられる。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(重量比)は10:1から1:10が好ましく、より好ましくは8:3から3:8である。
【0151】
電荷輸送層6の厚みは5μm以上50μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以上30μm以下である。
塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、又はカーテンコーティング法等の通常の方法を用いる。
【0152】
また、感光層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加してもよい。
また、少なくとも1種の電子受容性物質を含有してもよい。
【0153】
本実施形態の画像形成装置用像保持体は、保護層7(表面層)を備えるようにしてもよいが、保護層7を高強度保護層(高強度表面層)とすることが好ましい。この高強度保護層としては、バインダー樹脂中に導電性粒子を分散したもの、通常の電荷輸送層材料にフッ素樹脂、アクリル樹脂等の潤滑性粒子を分散したもの、シリコーンや、アクリル等のハードコート剤等が使用される。高強度保護層は、電荷輸送性を有し、架橋構造を有するシロキサン系樹脂を含むものが好ましい。
【0154】
保護層7は、他のカップリング剤、フッ素化合物を混合して用いてもよい。この化合物として、各種シランカップリング剤、及び市販のシリコーン系ハードコート剤が用いられる。
保護層7の形成に用いる塗布液の調整は、無溶媒で行うか、必要に応じて溶媒を用いてもよい。
【0155】
反応温度及び時間は原料の種類によっても異なるが、通常、0℃以上100℃以下、好ましくは10℃以上70℃以下、特に好ましくは、15℃以上50℃以下の温度で行う。反応時間に特に制限はないが、反応時間は10分から100時間の範囲で行うことが好ましい。
【0156】
硬化触媒としては、塩酸、酢酸、リン酸、又は硫酸等のプロトン酸、アンモニア、又はトリエチルアミン等の塩基、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、又はオクエ酸第一錫等の有機錫化合物、テトラ−n−ブチルチタネート、又はテトライソプロピルチタネート等の有機チタン化合物、アルミニウムトリブトキシド、又はアルミニウムトリアセチルアセトナート等の有機アルミニウム化合物、有機カルボン酸の鉄塩、マンガン塩、コバルト塩、亜鉛塩、又はジルコニウム塩等が挙げられるが、金属化合物が好ましく、更に、金属のアセチルアセトナート、あるいは、アセチルアセテートが好ましく、特にアルミニウムトリアセチルアセトナートが好ましい。
【0157】
硬化触媒の使用量は必要に応じ設定されるが、加水分解性ケイ素置換基を含有する材料の合計量に対して0.1重量%以上20重量%以下が好ましく、0.3重量%以上10重量%以下がより好ましい。
硬化温度は、必要に応じ設定されるが、所望の強度を得るためには60℃以上、より好ましくは80℃以上に設定される。硬化時間は、必要に応じ設定されるが、10分から5時間が好ましい。
また、硬化反応を行ったのち、高湿度状態に保つことも有効である。更に、用途によっては、ヘキサメチルジシラザンや、又はトリメチルクロロシラン等を用いて表面処理を行い、疎水化する。
【0158】
画像形成装置用像保持体の保護層7には、酸化防止剤を添加することが好ましい。
また画像形成装置用像保持体の保護層7には、アルコールに溶解する樹脂を加えてもよい。
更に、保護層7に各種粒子を添加してもよい。それらは、単独で用いてもよいが、併用してもよい。粒子の一例として、ケイ素含有粒子、フッ素系粒子、半導電性金属酸化物粒子等が挙げられる。
また、保護層7にシリコーンオイル等のオイルを添加し得る。
【0159】
なお単層型感光層の場合、当該単層型感光層は、上記電荷発生物質、上記電荷輸送物質(本実施形態の一般式(I)で示される化合物、及び一般式(II−1)で示される化合物の少なくとも一方を含む。)及び結着樹脂を含有して形成され得る。なお、電荷輸送物質は高分子電荷輸送物質を含有してもよい。上記結着樹脂としては、上記電荷発生層5及び電荷輸送層6に用いられる結着樹脂として列挙されたものが用いられる。単層型感光層中の電荷発生物質の含有量は、10重量%以上85重量%以下、好ましくは20重量%以上50重量%以下である。また、単層型感光層中の電荷輸送物質の含有量は5重量以上50重量%以下とすることが好ましい。
塗布に用いる溶剤や塗布方法は、前述のものが用いられる。単層型感光層の膜厚は5μm以上50μm以下が好ましく、10μm以上40μm以下がより好ましい。
【0160】
(画像形成装置)
本実施形態の画像形成装置は、既述の本実施形態の画像形成装置用像保持体と、前記画像形成装置用像保持体を帯電させる帯電装置と、帯電した前記画像形成装置用像保持体を露光して静電潜像を形成させる露光装置と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を被転写体に転写する転写装置と、を備えることを特徴とする。
図4は、本実施形態の画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
図4に示す画像形成装置200は、本実施形態の画像形成装置用像保持体207と、画像形成装置用像保持体207を接触帯電方式により帯電させる帯電装置208と、帯電装置208に接続された電源209と、帯電装置208により帯電される画像形成装置用像保持体207を露光して静電潜像を形成する露光装置210と、露光装置210により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置211と、現像装置211により形成されたトナー像を被転写体500に転写する転写装置212と、クリーニング装置213と、除電器214と、定着装置215とを備える。
【0161】
図4に示した帯電装置208は、画像形成装置用像保持体207の表面に接触型帯電部材(例えば、帯電ロール)を接触させて像保持体に電圧を印加し、像保持体表面を帯電させるものである。
接触型帯電部材としては、芯材の外周面に弾性層、抵抗層、保護層等を設けたローラ状のものが好適に用いられる。なお、接触型帯電部材の形状は、上記したローラ状の他、ブラシ状、ブレード状、又はピン電極状等何れでもよく、画像形成装置の仕様や形態に合わせて選択される。
【0162】
ローラ状の接触型帯電部材における芯材の材質としては、導電性を有するもの、例えば、鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、又はニッケル等が用いられる。また、導電性粒子等を分散した樹脂成形品等が用いられる。弾性層の材質としては、導電性あるいは半導電性を有するもの、例えば、ゴム材に導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散したものが使用される。抵抗層及び保護層の材質としては結着樹脂に導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散し、その抵抗を制御したものである。
これらの接触型帯電部材を用いて像保持体を帯電させる際には、接触型帯電部材に電圧が印加されるが、かかる印加電圧は直流電圧、直流電圧に交流電圧を重畳したもののいずれでもよい。
なお、図4における接触型帯電部材の代わりに、コロトロン、又はスコロトロン等の非接触方式のコロナ帯電装置も用いられる。これらは画像形成装置の仕様や形態に合わせて選択される。
【0163】
露光装置210としては、画像形成装置用像保持体表面に、半導体レーザー、LED(light emitting diode)、液晶シャッター等の光源を所望の像様に露光する光学系装置等が用いられる。
【0164】
現像装置211としては、一成分系、二成分系等の正規または反転現像剤を用いた従来より公知の現像装置等が用いられる。現像装置211に使用されるトナーの形状は特に限定されないが、球形トナーが好ましい。
【0165】
転写装置212としては、ローラ状の接触帯電部材の他、ベルト、フィルム、又はゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、あるいはコロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等、が挙げられる。
【0166】
クリーニング装置213は、転写工程後の画像形成装置用像保持体の表面に付着する残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された画像形成装置用像保持体は上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。クリーニング装置としては、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、又はロールクリーニング等が用いられるが、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、又はシリコーンゴム等が挙げられる。
【0167】
上記実施形態は1つの画像形成ユニットを有するものであるが、他の実施形態に係る画像形成装置は、この画像形成ユニットを複数有するタンデム型画像形成装置である。
例えば、画像形成ユニットが4つである場合、4つの画像形成ユニットの各現像装置においては、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブランクの4色の色成分トナーを使用する。また、タンデム型画像形成装置は、4つの画像形成ユニットに共通し記録材料を搬送するベルトと、このベルトを搬送する搬送装置と、各現像装置にトナー像を供給するトナー供給装置と、カラートナー像を記録材料に定着させる定着装置とを備えていることが好ましい。
【0168】
また、本実施形態の画像形成装置は像保持体を200000サイクル以上、更に、250000サイクル、あるいは、300000サイクル以上も使用する場合には、トナーのみを単独に補給する機構を有するものが好ましい。
【0169】
(プロセスカートリッジ)
本実施形態のプロセスカートリッジは、既述の本実施形態の画像形成装置用像保持体を少なくとも有し、かつ、前記画像形成装置用像保持体を帯電させる帯電装置、帯電した前記画像形成装置用像保持体を露光して静電潜像を形成させる露光装置、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置、前記トナー像を被転写体に転写する転写装置、および前記画像形成装置用像保持体をクリーニングするクリーニング装置から選ばれる少なくとも1つと、を備えることを特徴する。
【0170】
図5は、本実施形態の画像形成装置用像保持体を備えるプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
プロセスカートリッジ300は、画像形成装置用像保持体207とともに、帯電装置208、現像装置211、クリーニング装置(クリーニング手段)213、露光のための開口部218、及び、除電露光のための開口部217を取り付けレール216を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。
そして、このプロセスカートリッジ300は、現像装置211により形成されたトナー像を被転写体500に転写する転写装置212と、定着装置215と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態は、その要旨の範囲内で様々な変形や変更がされ得る。
【実施例】
【0171】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また本実施例において、目的物の同定には、H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl、VARIAN株式会社製、UNITY−300、300MHz)、及びIRスペクトル(KBr法にてフーリェ変換赤外分光光度計(株式会社 堀場製作所、FT−730、分解能4cm−1)を用いた。
さらに本実施例において、ポリマーの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー社製、HLC−8120GPC)によって測定した。
【0172】
(一般式(I)又は(II−1)で示される化合物の合成)
[合成例1−具定例化合物4の合成]
アセトアニリド(25.0g)、4−ヨードフェニルプロピオン酸メチル(64.4g)、炭酸カリウム(38.3g)、硫酸銅5水和物(2.3g)、n−トリデカン(50ml)を500mlの三口フラスコに入れ、窒素気流下、230℃で20時間加熱攪拌した。反応終了後、水酸化カリウム(15.6g)をエチレングリコール(300ml)に溶解したものを加え、窒素気流下で3.5時間加熱還流した後、室温(25℃)まで冷却し、反応液を1Lの蒸留水に注ぎ、塩酸で中和し、結晶を析出させた。結晶を吸引ろ過によりろ取し、水洗した後、1Lのフラスコに移した。これに、トルエン(500ml)を加え、加熱還流し、共沸により水を除去した後、濃硫酸(1.5ml)のメタノール(300ml)溶液を加え、窒素気流下で5時間加熱還流した。反応後、トルエンで抽出し、有機相を純水で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧下留去し、ヘキサンから再結晶することにより下記DAA−1を36.5g得た。
【0173】
【化27】

【0174】
次に、ヨードベンゼン(4.8g)、上記DAA−1(5.0g)、硫酸銅(II)五水和物(0.2g)、炭酸カリウム(1.3g)、トリデカン(10ml)の混合液を、210℃で7時間撹拌した。反応終了後、水酸化カリウム(15.6g)をエチレングリコール(300ml)に溶解したものを加え、窒素気流下で3.5時間加熱還流した後、室温(25℃)まで冷却し、反応液を1Lの蒸留水に注ぎ、塩酸で中和し、結晶を析出させた。結晶を吸引ろ過によりろ取し、水洗した後、1Lのフラスコに移した。これに、トルエン(500ml)を加え、加熱還流し、共沸により水を除去した後、濃硫酸(1.5ml)のメタノール(300ml)溶液を加え、窒素気流下で5時間加熱還流した。室温(25℃)に冷却し、トルエンを加えてセライト濾過した。純水で洗浄し、有機相を抽出し、有機溶媒を留去して得られた生成物をシリカゲルカラムクロマト(ヘキサン4:トルエン1)で分離し、下記TAA−1を3.9g得た。
【0175】
【化28】

【0176】
TAA−1(3.0g)、N,N−ジメチルホルムアミド(100ml)の混合液を500mlの三口フラスコに入れ、オキシ塩化リン(1.7g)を滴下した後、80℃に加温し、7時間撹拌した。
冷却後、純水に反応溶液を加え、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、TAA−1のホルミル体を2.4g得た。
【0177】
【化29】

【0178】
窒素雰囲気下、TAA−1のホルミル体(1.6g)と2,5−ジアミノ−1,4−ベンソジチオール(0.5g)をm−キシレン(10ml)に溶解し、15時間還流した。冷却後、THF(テトラヒドロフラン)30mlを加え、反応溶液をろ過した。これをカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=5:1)で精製を行い、具体例化合物4を0.6g得た。
【0179】
【化30】

【0180】
H−NMRスペクトル測定及びIRスペクトル測定によって、得られた化合物が具体例化合物4であることを確認した。
【0181】
[合成例2−具体例ポリマー6の合成]
合成例1において得られた具体例化合物4を0.5g用い、エチレングリコール10mlおよびテトラブトキシチタン0.01gとともに50mlの三口ナスフラスコに入れ、窒素雰囲気下、200℃で5時間加熱攪拌した。
原料である上記具体例化合物4が反応して消失したのをTLCにより確認した後、50Paに減圧してエチレングリコールを留去しながら210℃に加熱し、6時間反応を続けた。
【0182】
その後、室温(25℃)まで冷却し、テトラヒドロフラン50mlに溶解し、不溶物を0.5μlのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにてろ過し、ろ液を減圧下留去した後、モノクロロベンゼン300mlに溶解させ、1N−HCl300ml、水500ml×3の順に洗浄した。モノクロロベンゼン溶液を30mlまで減圧下留去して、酢酸エチル/メタノール=1/3:800ml中に滴下し、ポリマーを再沈殿させた。
得られたポリマーをろ過し、メタノールで洗浄した後、60℃で16時間真空乾燥させ、0.7gの重合体〔具体例ポリマー6〕を得た。
【0183】
この重合体の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー社製、HLC−8120GPC)にて測定したところ、重量平均分子量Mw=6.9×10(スチレン換算)、Mw/Mn=1.95であり、原料である低分子化合物の分子量から求めた重合度pは81であった。
【0184】
[合成例3−具定例化合物23の合成]
4−(2−チエニル)アセトアニリド(30.0g)、4−ヨードフェニルプロピオン酸メチル(28.5g)、炭酸カリウム(13.6g)、硫酸銅5水和物(2.0g)、1,2−ジクロロベンゼン(50ml)を500mlの三口フラスコに入れ、窒素気流下、230℃で20時間加熱攪拌した。反応終了後、水酸化カリウム(15.6g)をエチレングリコール(300ml)に溶解したものを加え、窒素気流下で3.5時間加熱還流した後、室温(25℃)まで冷却し、反応液を1Lの蒸留水に注ぎ、塩酸で中和し、結晶を析出させた。結晶を吸引ろ過によりろ取し、水洗した後、1Lのフラスコに移した。これに、トルエン(500ml)を加え、加熱還流し、共沸により水を除去した後、濃硫酸(1.5ml)のメタノール(300ml)溶液を加え、窒素気流下で5時間加熱還流した。反応後、トルエンで抽出し、有機相を純水で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧下留去し、ヘキサンから再結晶することによりDAA−2を17.9g得た。
【0185】
【化31】

【0186】
窒素雰囲気下、ヨードベンゼン(3.6g)、DAA−2(5.0g)、硫酸銅(II)五水和物(0.2g)、炭酸カリウム(1.3g)、トリデカン(15ml)の混合液を、210℃で15時間撹拌した。
反応終了後、水酸化カリウム(15.6g)をエチレングリコール(300ml)に溶解したものを加え、窒素気流下で3.5時間加熱還流した後、室温(25℃)まで冷却し、反応液を1Lの蒸留水に注ぎ、塩酸で中和し、結晶を析出させた。結晶を吸引ろ過によりろ取し、水洗した後、1Lのフラスコに移した。これに、トルエン(500ml)を加え、加熱還流し、共沸により水を除去した後、濃硫酸(1.5ml)のメタノール(300ml)溶液を加え、窒素気流下で5時間加熱還流した。
冷却後、トルエンを加えてセライト濾過し、トルエンを留出して得られた生成物をシリカゲルカラムクロマト(ヘキサン2:トルエン1)で分離し、TAA−2を3.2g得た。
【0187】
【化32】

【0188】
TAA−2(3.0g)をN,N−ジメチルホルムアミド(5ml)に溶解し,オキシ塩化リンを滴下した。室温(25℃)で4時間撹拌後,無水N,N−ジメチルホルムアミド(3ml)追加投入し,さらに13.5時間磁気攪拌した.反応終了後,水(100ml)と酢酸エチル(100ml)を入れ撹拌して,有機相を分離し,有機相を飽和食塩水食50mlで洗浄し,硫酸ナトリウムで乾燥した.溶媒留去し得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:4)で分離し、TAA−2のホルミル体を2.5g得た。
【0189】
【化33】

【0190】
TAA−2のホルミル体(2.2g)と2,5−ジアミノ−1,4−ベンソジチオール(0.37g)をN,N−ジメチルホルムアルデヒド(15ml)に溶解し、24時間還流した。N,N−ジメチルホルムアルデヒドを減圧下で留出して得られた固体を,ヘキサンでソックスレー抽出(6時間)を行い、不純物を除去した。得られた粗結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)で分離し,トルエンから再結晶して具定例化合物23を0.45g得た。
【0191】
【化34】

【0192】
H−NMRスペクトル測定及びIRスペクトル測定によって、得られた化合物が具体例化合物23であることを確認した。
【0193】
[合成例4−具定例化合物(5)の合成]
4−メチルアセトアニリド(21.0g)、4−ヨードフェニルプロピオン酸メチル(64.4g)、炭酸カリウム(38.3g)、硫酸銅5水和物(2.3g)、n−トリデカン(50ml)を500mlの三口フラスコに入れ、窒素気流下、230℃で20時間加熱攪拌した。反応終了後、水酸化カリウム(15.6g)をエチレングリコール(300ml)に溶解したものを加え、窒素気流下で3.5時間加熱還流した後、室温(25℃)まで冷却し、反応液を1Lの蒸留水に注ぎ、塩酸で中和し、結晶を析出させた。結晶を吸引ろ過によりろ取し、水洗した後、1Lのフラスコに移した。これに、トルエン(500ml)を加え、加熱還流し、共沸により水を除去した後、濃硫酸(1.5ml)のメタノール(300ml)溶液を加え、窒素気流下で5時間加熱還流した。反応後、トルエンで抽出し、有機相を純水で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧下留去し、ヘキサンから再結晶することにより下記DAA−3を34.1g得た。
【0194】
【化35】

【0195】
次に、ヨードベンゼン(4.8g)、上記DAA−3(5.0g)、硫酸銅(II)五水和物(0.2g)、炭酸カリウム(1.3g)、トリデカン(10ml)の混合液を、210℃で7時間撹拌した。反応終了後、水酸化カリウム(15.6g)をエチレングリコール(300ml)に溶解したものを加え、窒素気流下で3.5時間加熱還流した後、室温(25℃)まで冷却し、反応液を1Lの蒸留水に注ぎ、塩酸で中和し、結晶を析出させた。結晶を吸引ろ過によりろ取し、水洗した後、1Lのフラスコに移した。これに、トルエン(500ml)を加え、加熱還流し、共沸により水を除去した後、濃硫酸(1.5ml)のメタノール(300ml)溶液を加え、窒素気流下で5時間加熱還流した。室温(25℃)に冷却し、トルエンを加えてセライト濾過した。純水で洗浄し、有機相を抽出し、有機溶媒を留去して得られた生成物をシリカゲルカラムクロマト(ヘキサン4:トルエン1)で分離し、下記TAA−3を3.1g得た。
【0196】
【化36】

【0197】
TAA−3(3.0g)、N,N−ジメチルホルムアミド(100ml)の混合液を500mlの三口フラスコに入れ、オキシ塩化リン(1.7g)を滴下した後、80℃に加温し、7時間撹拌した。
冷却後、純水に反応溶液を加え、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、TAA−3のホルミル体を2.7g得た。
【0198】
【化37】

【0199】
窒素雰囲気下、TAA−3のホルミル体(2.0g)と2,5−ジアミノ−1,4−ベンソジチオール(0.69g)をm−キシレン(10ml)に溶解し、20時間還流した。冷却後、THF(テトラヒドロフラン)30mlを加え、反応溶液をろ過した。これをカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=5:1)にて精製を行い、具体例化合物5を0.7g得た。
【0200】
【化38】


TAA−3のホルミル体 具体例化合物5


【0201】
H−NMRスペクトル測定及びIRスペクトル測定によって、得られた化合物が具体例化合物5であることを確認した。
【0202】
[合成例5−具定例化合物14の合成]
1−アセトアミドナフタレン(25.0g)、4−ヨードフェニルプロピオン酸メチル(64.4g)、炭酸カリウム(38.3g)、硫酸銅5水和物(2.3g)、n−トリデカン(50ml)を500mlの三口フラスコに入れ、窒素気流下、230℃で20時間加熱攪拌した。反応終了後、水酸化カリウム(15.6g)をエチレングリコール(300ml)に溶解したものを加え、窒素気流下で3.5時間加熱還流した後、室温まで冷却し、反応液を1Lの蒸留水に注ぎ、塩酸で中和し、結晶を析出させた。結晶を吸引ろ過によりろ取し、十分に水洗した後、1Lのフラスコに移した。これに、トルエン(500ml)を加え、加熱還流し、共沸により水を除去した後、濃硫酸(1.5ml)のメタノール(300ml)溶液を加え、窒素気流下で5時間加熱還流した。反応後、トルエンで抽出し、有機層を純水で十分に洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧下留去し、ヘキサンから再結晶することによりDAA−4を36.5g得た。
【0203】
【化39】

【0204】
次に、ヨードベンゼン(4.8g)、上記DAA−4(5.0g)、硫酸銅(II)五水和物(0.2g)、炭酸カリウム(1.3g)、トリデカン(10ml)の混合液を、210℃で7時間撹拌した。反応終了後、水酸化カリウム(15.6g)をエチレングリコール(300ml)に溶解したものを加え、窒素気流下で3.5時間加熱還流した後、室温(25℃)まで冷却し、反応液を1Lの蒸留水に注ぎ、塩酸で中和し、結晶を析出させた。結晶を吸引ろ過によりろ取し、水洗した後、1Lのフラスコに移した。これに、トルエン(500ml)を加え、加熱還流し、共沸により水を除去した後、濃硫酸(1.5ml)のメタノール(300ml)溶液を加え、窒素気流下で5時間加熱還流した。室温(25℃)に冷却し、トルエンを加えてセライト濾過した。純水で洗浄し、有機相を抽出し、有機溶媒を留去して得られた生成物をシリカゲルカラムクロマト(ヘキサン4:トルエン1)で分離し、下記TAA−4を3.9g得た。
【0205】
【化40】

【0206】
TAA−4(3.0g)、N,N−ジメチルホルムアミド(100ml)の混合液を500mlの三口フラスコに入れ、オキシ塩化リン(1.7g)を滴下した後、80℃に加温し、7時間撹拌した。
冷却後、純水に反応溶液を加え、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、TAA−4のホルミル体を2.4g得た。
【0207】
【化41】

【0208】
窒素雰囲気下、TAA−4のホルミル体(2.2g)と2,5−ジアミノ−1,4−ベンソジチオール(0.7g)をm−キシレン(10ml)に溶解し、28時間還流した。冷却後、THF(テトラヒドロフラン)30mlを加え、反応溶液をろ過した。これをカラムクロマトグラフィー(トルエン)で精製を行い、具体例化合物14を0.7g得た。
【0209】
【化42】

【0210】
H−NMRスペクトル測定及びIRスペクトル測定によって、得られた化合物が具体例化合物14であることを確認した。
【0211】
[合成例6−具体例ポリマー16の合成]
合成例5において得られた具体例化合物14を1.0g用い、エチレングリコール10mlおよびテトラブトキシチタン0.02gとともに50mlの三口ナスフラスコに入れ、窒素雰囲気下、200℃で5時間加熱攪拌した。
原料である上記具体例化合物14が反応して消失したのをTLCにより確認した後、50Paに減圧してエチレングリコールを留去しながら210℃に加熱し、6時間反応を続けた。
【0212】
その後、室温(25℃)まで冷却し、テトラヒドロフラン50mlに溶解し、不溶物を0.5μlのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにてろ過し、ろ液を減圧下留去した後、モノクロロベンゼン300mlに溶解させ、1N−HCl300ml、水500ml×3の順に洗浄した。モノクロロベンゼン溶液を30mlまで減圧下留去して、酢酸エチル/メタノール=1/3:800ml中に滴下し、ポリマーを再沈殿させた。
得られたポリマーをろ過し、メタノールで洗浄した後、60℃で16時間真空乾燥させ、0.5gの重合体〔具体例ポリマー16〕を得た。
【0213】
この重合体の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー社製、HLC−8120GPC)にて測定したところ、重量平均分子量Mw=5.2×10(スチレン換算)、Mw/Mn=1.95であり、原料である低分子化合物の分子量から求めた重合度pは55であった。
【0214】
[合成例7−具定例化合物25の合成]
4−(2−チエニル)アセトアニリド(30.0g)、4−ヨードフェニルプロピオン酸メチル(28.5g)、炭酸カリウム(13.6g)、硫酸銅5水和物(2.0g)、1,2−ジクロロベンゼン(50ml)を500mlの三口フラスコに入れ、窒素気流下、230℃で20時間加熱攪拌した。反応終了後、水酸化カリウム(15.6g)をエチレングリコール(300ml)に溶解したものを加え、窒素気流下で3.5時間加熱還流した後、室温(25℃)まで冷却し、反応液を1Lの蒸留水に注ぎ、塩酸で中和し、結晶を析出させた。結晶を吸引ろ過によりろ取し、水洗した後、1Lのフラスコに移した。これに、トルエン(500ml)を加え、加熱還流し、共沸により水を除去した後、濃硫酸(1.5ml)のメタノール(300ml)溶液を加え、窒素気流下で5時間加熱還流した。反応後、トルエンで抽出し、有機相を純水で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧下留去し、ヘキサンから再結晶することによりDAA−2を17.9g得た。
【0215】
【化43】

【0216】
窒素雰囲気下、3−メチルヨードベンゼン(4.0g)、DAA−2(5.0g)、硫酸銅(II)五水和物(0.2g)、炭酸カリウム(1.3g)、トリデカン(15ml)の混合液を、210℃で15時間撹拌した。
反応終了後、水酸化カリウム(15.6g)をエチレングリコール(300ml)に溶解したものを加え、窒素気流下で3.5時間加熱還流した後、室温(25℃)まで冷却し、反応液を1Lの蒸留水に注ぎ、塩酸で中和し、結晶を析出させた。結晶を吸引ろ過によりろ取し、水洗した後、1Lのフラスコに移した。これに、トルエン(500ml)を加え、加熱還流し、共沸により水を除去した後、濃硫酸(1.5ml)のメタノール(300ml)溶液を加え、窒素気流下で5時間加熱還流した。
冷却後、トルエンを加えてセライト濾過し、トルエンを留出して得られた生成物をシリカゲルカラムクロマト(ヘキサン2:トルエン1)で分離し、TAA−5を3.0g得た。
【0217】
【化44】

【0218】
TAA−5(3.0g)をN,N−ジメチルホルムアミド(5ml)に溶解し,オキシ塩化リンを滴下した。室温(25℃)で4時間撹拌後,無水N,N−ジメチルホルムアミド(3ml)追加投入し,さらに13.5時間磁気攪拌した.反応終了後,水(100ml)と酢酸エチル(100ml)を入れ撹拌して,有機相を分離し,有機相を飽和食塩水食50mlで洗浄し,硫酸ナトリウムで乾燥した.溶媒留去し得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:4)で分離し、TAA−5のホルミル体を2.5g得た。
【0219】
【化45】

【0220】
TAA−5のホルミル体(2.5g)と2,5−ジアミノ−1,4−ベンソジチオール(0.7g)をN,N−ジメチルホルムアルデヒド(15ml)に溶解し、30時間還流した。N,N−ジメチルホルムアルデヒドを減圧下で留出して得られた固体を,ヘキサンでソックスレー抽出(5時間)を行い、不純物を除去した。得られた粗結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)で分離し,トルエンから再結晶して具定例化合物25を0.6g得た。
【0221】
【化46】

【0222】
H−NMRスペクトル測定及びIRスペクトル測定によって、得られた化合物が具体例化合物25であることを確認した。
【0223】
(画像形成装置用像保持体の作製)
[実施例1]
アルミニウム基板上に、ジルコニウム化合物(オルガチックスZC540、マツモト製薬社製)10質量部及びシラン化合物(A1110、日本ユニカー社製)1質量部とi−プロパノール40質量部及びブタノール20質量部からなる溶液を浸漬コーティング法にて塗布し、150℃において10分間加熱乾燥し、膜厚0.6μmの下引き層を形成した。この上に、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°に強い回折ピークを持つクロロガリウムフタロシアニン結晶の1質量部を、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学社製)1質量部及び酢酸n−ブチル100質量部と混合し、ガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間処理して分散した後、得られた塗布液を上記下引き層の上に浸漬コーティング法で塗布し、100℃において10分間加熱乾燥し、電荷発生層を形成した。
次に、上記によりえられた具定例化合物4を2質量部と、以下に構造を示すビスフェノール(Z)高分子化合物(粘度平均分子量:40,000)3質量部をクロロベンゼン35質量部に加熱溶解後,室温(25℃)に戻した。この塗布液を前記電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、130℃、60分の加熱を行って膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0224】
【化47】



【0225】
[実施例2から実施例7]
実施例1で用いた具定例化合物4に代えて、具体例ポリマー6、具体例化合物23、具体例化合物5、具体例化合物14、具体例ポリマー16、及び具体例化合物25をそれぞれ用いた他は、実施例1と同様にして画像形成装置用像保持体を作製した。
【0226】
[実施例8]
実施例1で用いたクロロガリウムフタロシアニン結晶に代えて、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に強い回折ピークを持つヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を用いた他は、実施例1と同様にして、画像形成装置用像保持体を作製した。
【0227】
[比較例1]
実施例1で用いた具定例化合物4に代えて、下記構造の化合物(X)を用いた他は、実施例1に記載の方法により画像形成装置用像保持体を作製した。
【0228】
【化48】

【0229】
(比較例2)
実施例1で用いた具定例化合物4に代えて、下記構造の化合物(XI)(p=52)を用いた他は、実施例1に記載の方法により画像形成装置用像保持体を作製した。
【0230】
【化49】



【0231】
(比較例3)
実施例1で用いた具定例化合物4に代えて、下記構造の化合物(XII)を用いた他は、実施例1に記載の方法により画像形成装置用像保持体を作製した。
【0232】
【化50】

【0233】
(比較例4)
実施例1で用いた具定例化合物4に代えて、下記構造の化合物(XIII)(p=82)を用いた他は、実施例1に記載の方法により画像形成装置用像保持体を作製した。
【0234】
【化51】

【0235】
(評価)
上記実施例及び比較例で得られた、それぞれの画像形成装置用像保持体を用い、電子写真特性について評価するため、静電複写紙試験装置(エレクトロスタティックアナライザーEPA−8100、川口電気社製)を用いて、20℃、40%RHの環境下、−6KVのコロナ放電を行い、帯電させた後、タングステンランプの光を、モノクロメーターを用いて800nmの単色光にし、感光体表面上で1μW/cmになるように調整して、照射した。
そして、帯電直後における感光体表面の表面電位V(V)、感光体表面の光照射により表面電位が1/2×V(V)となる半減露光量E1/2(erg/cm)を測定した(初期特性)。その後、10ルックスの白色光を1秒間照射し、感光体表面に残留した残留電位VRP(V)を測定した(初期特性)。
更に上記の帯電、露光(800nmの単色光、露光量は半減露光量)、及び白色光の照射(10ルックス)を1000回繰り返した後のV、E1/2、及びVRPを測定、またその変動量ΔV、ΔE1/2、ΔVRPを評価した(安定性、耐久性)。
【0236】
つぎに上記実施例および比較例で得られた画像形成装置用像保持体を用い、画像形成装置を作製した。画像形成装置用像保持体以外の要素は、富士ゼロックス製プリンターDocucenter C6550Iに搭載されたものを用いた。
各画像形成装置について、28℃、75%RHの環境下で1万枚分の画像形成テスト(画像濃度10%、シアン100%)を実施した。なお、本テスト条件においては、各カートリッジのプロセスは通常通り行われるが、シアン以外のカートリッジのトナーは使用(供給)されない。テスト後、トナーのクリーニング性(クリーニング不良による帯電器の汚れや画質劣化)、画質(プロセスブラック1dotライン斜め45度細線再現性)を評価した。クリーニング性及び画質の評価方法及び評価基準は以下の通りであり、得られた結果を表1に示す。
【0237】
クリーニング性は目視にて評価し、いかの評価基準に基づいて評価した。
○:良好
△:部分的(全体の10%程度以下)にスジ状の画質欠陥あり
×:広範にスジ状の画質欠陥あり
【0238】
画質は拡大鏡を用いて判断し、以下の評価基準に基づいて評価した。
A:良好
B:部分的に欠陥有り(実用上は問題なし)
C:欠陥有り(細線が再現されていない)
【0239】
【表1】

【0240】
上記の結果から、本実施例で得られた画像形成装置用像保持体は、比較例に比べて繰り返し使用による残留電位変動が低いことがわかる。また該画像形成装置用像保持体を有する画像形成装置で得られた画像は、画質も良好であることがわかる。
【符号の説明】
【0241】
1 画像形成装置用像保持体
2 導電性支持体
3 感光層
4 下引き層
5 電荷発生層
6 電荷輸送層
7 保護層
8 電荷発生・輸送層
200 画像形成装置
207 画像形成装置用像保持体
208 帯電装置
209 電源
210 露光装置
211 現像装置
212 転写装置
213 クリーニング装置
214 除電器
215 定着装置
216 取り付けレール
217 除電露光のための開口部
218 露光のための開口部
300 プロセスカートリッジ
500 被転写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に下記一般式(I)で示される化合物を含有する感光層と、を有する画像形成装置用像保持体。
【化1】

〔一般式(I)中、Rは、各々独立に、置換又は未置換の直鎖又は分岐の炭素数1以上8以下のアルキル基を表し、Arは、置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の多核芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の縮合芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の1価の芳香族複素環基を表し、qは0または1を表し、nは各々独立に0以上7以下を表す。〕
【請求項2】
支持体と、該支持体上に下記一般式(II−1)で示される化合物を含有する感光層と、を有する画像形成装置用像保持体。
【化2】



〔一般式(II−1)中、Yは、各々独立に、置換又は未置換の2価の炭化水素基を表し、Aは下記一般式(II−2)で表される基を表し、Rは、各々独立に、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の多核芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の縮合芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数1以上6以下の1価の直鎖状炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数2以上10以下の1価の分枝状炭化水素基、又は水素原子を表す。mは各々独立に1以上5以下の整数を表し、pは5以上5,000以下の整数を表す。〕
【化3】

〔一般式(II−2)中、Arは、置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の多核芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の縮合芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の1価の芳香族複素環基を表し、qは0または1を表し、nは各々独立に0以上7以下を表す。〕
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置用像保持体と、前記画像形成装置用像保持体を帯電させる帯電手段、帯電された前記画像形成装置用像保持体を露光して静電潜像を形成させる露光手段、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段、および前記画像形成装置用像保持体を清掃する清掃手段から選ばれる少なくとも1つと、を少なくとも有するプロセスカートリッジ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置用像保持体と、前記画像形成装置用像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記画像形成装置用像保持体を露光して静電潜像を形成させる露光手段と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−22209(P2012−22209A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161027(P2010−161027)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】