説明

画像形成装置

【課題】 定着装置に近接して配置された搬送ローラ対によって用紙を挟持して搬送する際に、搬送ローラ対により用紙上のトナー像に圧痕や擦り傷が発生する事を防止する。
【解決手段】 未定着トナー像が転写された用紙Sを加熱加圧することにより定着する定着装置30と、定着装置30の定着ニップ部Nの用紙搬送方向下流側に配設され、定着ニップ部Nを通過した用紙Sを挟持して搬送する搬送ローラ対37を備えた画像形成装置において、搬送ローラ対37のうち、片面記録後の用紙Sのトナー像に接触する搬送ローラ37Bの外周面に複数の微小突起37B2を設けた画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、複合機などの画像形成装置にに関し、特に、定着装置により加熱溶融した後の記録媒体上のトナー像が搬送ローラに圧接する事により、トナー像に発生する圧痕や擦り傷を防止する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において、加熱溶融性の樹脂より成るトナーを担持する記録媒体を加熱定着する定着装置には、加熱ローラ方式や、熱定着ベルト方式等が採用されている。
【0003】
熱ローラ方式の定着装置は、内部にハロゲンヒータ等の発熱体を備えた加熱回転体と、これに圧接する加圧回転体とから構成され、この一対のローラの圧接部である定着ニップ部に用紙等の記録媒体を通過させる事により、記録媒体に担持されたトナー像を加熱、溶融させた後、搬送ローラ対により排出するものである。
【0004】
特許文献1に記載された画像形成装置は、定着装置の定着ニップ部下流に最も近接する搬送ローラ対は、記録シートのトナー像側に位置する上ロールと、記録シートのトナー像と反対側に位置する下ロールとを、所定間隙を介して非接触状態に配置したものである。
【特許文献1】特開2003−20149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像形成装置、特にカラー画像形成装置においては、一般に、記録媒体上に形成される写真やグラフ等の多色のトナー像の形成面は単色のトナー像に比して広く、且つ多色のトナー像の形成厚さが単色のトナー像に比して大である。
【0006】
また、カラー画像形成装置では、カラー画像を鮮明にするため、特殊な塗工処理を施した記録媒体を用いる事がある。さらに、カラー画像に光沢を付加するため、定着温度を高く設定する事や記録媒体の搬送速度を遅くする事が行われている。
【0007】
このようなカラー画像処理を行う定着装置においては、記録媒体上に保持された多色の未定着トナーを定着装置により加熱溶融した後に、記録媒体上のトナーが完全に固化していない状態で、定着装置に近接して配置された搬送ローラ対によって記録媒体を挟持して搬送する際に、搬送ローラ対により記録媒体上のトナー像に圧痕や擦り傷が発生する。
【0008】
特許文献1に記載の定着装置においては、記録媒体上のトナーに圧痕や擦り傷を発生する事を回避するため、搬送ローラ対の押圧力を低減させているため、記録媒体の搬送力が低下し、搬送不良を発生する事がある。特に、搬送ローラ対の記録媒体下流側に、記録媒体を反転搬送する搬送路切換部材を配置した搬送路においては、搬送ローラ対により排出された記録媒体が搬送路切換部材に摺接する際に、記録媒体が搬送路切換部材により屈曲されるとき摩擦抵抗を受けて、搬送不良を発生するという問題がある。搬送路切換部材の屈曲を緩やかにして摩擦抵抗を低減させるようにすると、搬送路が延長されて画像形成装置が大型化する。
【0009】
本発明は、従来の定着装置における前記のような問題を解決し、搬送ローラ対による記録媒体上のトナーに圧痕や擦り傷を発生する事を防止するとともに、記録媒体の搬送力を確保し、画像形成装置の小型化を達成する事を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の本発明の目的は、下記の発明により達成される。
【0011】
(1) 未定着トナー像が転写された記録媒体を加熱加圧することにより定着する定着装置と、該定着装置の定着ニップ部の記録媒体搬送方向下流側に配設され、前記定着ニップ部を通過した前記記録媒体を挟持して搬送する搬送ローラ対を備えた画像形成装置において、前記搬送ローラ対のうち、片面記録後の前記記録媒体のトナー像に接触する搬送ローラの外周面に複数の微小突起を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【0012】
(2) 前記微小突起は65〜300μmの平均粒径の部材から成ることを特徴とする前記(1)に記載の画像形成装置。
【0013】
(3) 前記微小突起の材料がガラスビーズ又はセラミックス粉体により形成されていることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の画像形成装置。
【0014】
(4) 前記記録媒体上に形成されるトナー像が、複数色のカラートナー像であることを特徴とする前記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0015】
(5) 前記搬送ローラ対を構成する両方の搬送ローラの外周面に、それぞれに複数の微小突起を設けたことを特徴とする前記(1)乃至(4)の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0016】
(6) 前記定着装置より記録媒体搬送方向下流側に、排紙部に向けて前記記録媒体を搬送させる排紙搬送路と、該排紙搬送路から分岐した反転搬送路と、を有し、前記搬送ローラ対を前記排紙搬送路と前記反転搬送路との分岐点よりも記録媒体搬送方向上流側に備えたことを特徴とする前記(1)乃至(5)の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の定着装置により、以下の優れた効果が得られる。
【0018】
請求項1に係る発明によれば、片面記録後の記録媒体のトナー像に接触する搬送ローラの外周面に複数の微小突起を設けたことにより、記録媒体を搬送するとき、完全に固化していない状態の記録媒体上のトナーを搬送ローラと点接触させる事により、搬送ローラ対による記録媒体上のトナー像に圧痕や擦り傷が発生する事が解消され、高品位の画像が提供される。また、搬送ローラに形成された複数の微小突起は、記録媒体に接触して搬送に必要な押圧力により搬送するから、充分な搬送力が得られる。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、トナー像に接触する搬送ローラの微小突起の平均粒径を65〜300μmとすることにより、記録媒体の搬送を確実にすると共に、記録媒体上に形成されたトナー像に圧痕や擦り傷が発生する事が解消され、高品位の画像が提供される。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、トナー像に接触する搬送ローラの微小突起をガラスビーズ又はセラミックス粉体により形成することにより、点接触部分の圧痕が目立たなくなり、高品位の画像が提供される。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、記録媒体上に形成されるトナー像の最大トナー付着量が、7g/m2を超えるカラートナー像の場合、トナー付着量が多くなるに従って搬送ローラ対による記録媒体上のトナー像に圧痕や擦り傷が発生する問題が本発明により解消され、高品位の画像が提供される。また、カラートナー像の光沢度を向上させるため定着温度を上昇させたり、記録媒体の搬送速度を低下させた場合においても、十分に溶融されたカラートナー像に対して、圧痕や擦り傷が発生する事が解消され、高品位の画像が提供される。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、搬送ローラ対を構成する駆動ローラと従動ローラの両方の外周面に、それぞれ複数の微小突起を設ける事により、両面画像形成時にも記録媒体上に形成されたトナー像に圧痕や擦り傷が発生する事が解消され、高品位の画像が提供される。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、定着装置のニップ位置を通過した記録媒体が、搬送ローラ対に挟持されて分岐点を通過し、分岐板の曲率半径の小さな湾曲面に沿って搬送される場合にも、微小突起を有する搬送ローラ対により湾曲面との摩擦抵抗に抗する搬送力が保持されるから、分岐板の曲率半径を小さくして、装置を小型化する事が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本欄の記載は請求項の技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。
【0025】
[画像形成装置]
図1は、本発明に係る定着装置を備えた画像形成装置Aの構成図である。
【0026】
画像形成装置Aは、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成手段10Y,10M,10C,10Kと、ベルト状の中間転写体6と給紙装置20及び後述する定着装置30等から構成されている。
【0027】
画像形成装置Aの上部には、画像読取装置Bが設置されている。原稿台上に載置された原稿は画像読取装置Bの原稿画像走査露光装置の光学系により画像が走査露光され、ラインイメージセンサに読み込まれる。ラインイメージセンサにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、露光手段3Y,3M,3C,3Kに入力される。
【0028】
イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成手段10Yは、像担持体としての感光体ドラム1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像装置4Y及びクリーニング手段5Yを有する。マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成手段10Mは、像担持体としての感光体ドラム1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像装置4M及びクリーニング手段5Mを有する。シアン(C)色の画像を形成する画像形成手段10Cは、像担持体としての感光体ドラム1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像装置4C及びクリーニング手段5Cを有する。黒(K)色の画像を形成する画像形成手段10Kは、像担持体としての感光体ドラム1K、帯電手段2K、露光手段3K、現像装置4K及びクリーニング手段5Kを有する。帯電手段2Yと露光手段3Y、帯電手段2Mと露光手段3M、帯電手段2Cと露光手段3C及び帯電手段2Kと露光手段3Kとは、潜像形成手段を構成する。
【0029】
4Y,4M,4C,4Kは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)の小粒径トナーとキャリアからなる二成分現像剤を収容する現像装置である。
【0030】
中間転写体6は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持されている。
【0031】
画像形成手段10Y,10M,10C,10Kより形成された各色の画像は、回動する中間転写体6上に一次転写手段7Y,7M,7C,7Kにより逐次転写されて(一次転写)、合成されたカラー画像が形成される。
【0032】
給紙装置20の用紙収納部(給紙カセット)21内に収容された記録媒体(以下、用紙と称す)Sは、給紙手段(第1給紙部)22により給紙され、給紙ローラ23,24,25A,25B、レジストローラ(第2給紙部)26等を経て、二次転写手段(転写ローラ)9に搬送され、用紙S上にカラー画像が転写される(二次転写)。
【0033】
なお、画像形成装置Aの下部に鉛直方向に縦列配置された3段の用紙収納部21は、ほぼ同一の構成をなすから、同符号を付した。また、3段の給紙手段22も、ほぼ同一の構成をなすから、同符号を付してある。用紙収納部21、給紙手段22を含めて給紙装置20と称す。
【0034】
用紙収納部21に収容された用紙Sのサイズ及び紙種は操作部11の表示画面に表示され、任意に選択設定される。また、原稿サイズと複写倍率とによって用紙Sのサイズを自動設定する事も可能である。
【0035】
カラー画像が転写された用紙Sは、定着装置30において用紙Sが挟持され、熱と圧力とを加えることにより用紙S上のカラートナー像(或いはトナー像)が定着されて用紙S上に固定され、搬送ローラ対37に挟持されて搬送され、排紙搬送路に設けられた排紙ローラ27から排出され、機外の排紙トレイ28上に載置される。
【0036】
一方、二次転写手段9により用紙Sにカラー画像を転写した後、用紙Sを曲率分離した中間転写体6は、クリーニング手段8により残留トナーが除去される。
【0037】
定着処理された用紙Sを反転排紙する場合には用紙Sは定着装置30と排紙ローラ27の中間の分岐点に配置された分岐板29の図示右側の搬送路を通過し、下方の搬送路r1(反転搬送路)に搬送された後、逆転搬送されて分岐板29の図示左側の搬送路r2を通過し、排紙ローラ27により装置外に排出される。
【0038】
用紙Sの両面に複写する場合には、用紙Sの第1面に形成した画像を定着処理した後、用紙Sを分岐板29により排紙搬送路から分岐させ、下方の搬送路r1、さらに搬送路r3に導入した後、逆転搬送し、搬送路r4に搬送した後、上方に迂回し給紙ローラ25Bにより搬送する。
【0039】
用紙Sは画像形成手段10Y,10M,10C,10Kにおいて第2面に各色の画像が両面に形成され、定着装置30により加熱定着処理され、排紙ローラ27によって装置外に排出される。
【0040】
なお、画像形成装置Aの説明においては、カラー画像形成にて説明したが、モノクロ画像を形成する場合も本発明に含まれるものである。
【0041】
[定着装置の全体構成]
以下、画像形成装置Aの定着装置30を説明する。
【0042】
図2は、加熱ローラ方式の定着装置30の一実施の形態を示す断面図である。
【0043】
定着装置30は、加熱源33により加熱される定着ローラ31、加熱源34により加熱される加圧ローラ32等から構成されている。
【0044】
定着ローラ31の周囲には、クリーニングローラ35、温度検知手段(温度センサ)TS1、及び図示しない異常温度防止用のサーモスタット等が配置されている。加圧ローラ32の周囲にも、温度検知手段(温度センサ)TS2、異常温度防止用のサーモスタット等が配置されている。
【0045】
[定着ローラ]
加熱源33,34には、ハロゲンランプ、誘導加熱手段等が用いられる。
【0046】
定着ローラ31は、熱伝導性基体(芯金)311、弾性層312、被覆層313等により構成されている。
【0047】
温度センサTS1は、定着ローラ31の表面温度を検知する。温度センサTS1の検出信号により制御手段は、定着ローラ31の表面温度を所定温度に制御する。
【0048】
定着ローラ31と加圧ローラ32とが圧接する定着ニップ部Nに用紙Sが導入されると、加熱源33により加熱された定着ローラ31の熱が用紙Sに付与され、用紙S上のトナー像tが加熱定着される。
【0049】
定着ローラ31は、熱伝導性基体311、弾性層312、被覆層313から成る外径20〜70mmの円筒状部材である。円筒状の熱伝導性基体311としては、熱伝導性の良好なアルミニウム材が主として用いられ、非磁性ステンレス鋼材、耐熱性ガラス等も用いられる。熱伝導性基体311は、所要の機械的強度を有し、厚さ(肉厚)が0.8〜10mm厚のものである。
【0050】
弾性層312は、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴムで形成される。さらに画像形成の高速化対応のために、上記合成ゴム中に、フィラーとしてシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等の金属酸化物の粉末5〜30質量%を配合させて熱伝導率を向上させる方法が好ましい。混入されたフィラーは、導電性カーボンブラックと同様に、良導電性のものが好ましい。そうすることにより、弾性層312の電気抵抗(体積抵抗率)を容易に低く設定することができる。弾性層312の厚さ(肉厚)は、0.3〜3mm、好ましくは1〜3mm厚で、JIS−Aゴム硬度のゴム硬度5Hs〜30Hsである。
【0051】
弾性層312の外側(外周面)に、トナーとの離型性を良好とするため、厚さ20〜80μmのPFA(フッ素樹脂)チューブを被覆したものや、フッ素樹脂(PFAまたはPTFE)塗料を20〜100μm塗布したものや、層厚20〜500μmのシリコーンゴムやフッ素ゴムを成形したもので、熱伝導率が良好で耐熱性の被覆層313を設ける。被覆層313は、トナーとの離型性を良好とするとともに、弾性層312の耐久性を高める。
【0052】
[加圧ローラ]
上側の定着ローラ31と対をなす下側の円筒状の定着部材としての加圧ローラ32は、円筒状部材であり、熱伝導性基体321、弾性層322、被覆層323から成る。加圧ローラ32の構成部材は、定着ローラ31の構成部材とほぼ同一の材料、特性、寸法に形成されている。
【0053】
例えば厚さ1〜3mmのSTKMを用いた熱伝導性基体321と、熱伝導性基体321の外周面に、例えばシリコーンゴム層或いはフッ素ゴム層やシリコーンゴムの発泡材を用いたスポンジ状の、厚さ(肉厚)0.3〜5mm厚でゴム硬度が30Hs〜70Hs(JIS−Aゴム硬度)の厚肉ゴム層よりなる弾性層322とにより形成された外径30〜700mm程度のローラとして構成される。弾性層322の外側(外周面)には、離型性を有するPFA、PTFA等の耐熱性のフッ素樹脂のチューブを被覆した被覆層323が形成されている。固定位置に回転可能に支持された上側の定着ローラ31と、バネ付勢されて定着ローラ31に圧接する下側の加圧ローラ32との間に、平面状の定着ニップ部Nが形成されトナー像tの定着が行われる。
【0054】
定着装置30の定着ニップ部Nを通過した用紙Sは、分離爪36によって定着ローラ31の外周面から分離される。定着ニップ部Nの用紙搬送方向下流側には、駆動ローラ37Aと従動ローラ37Bから成る搬送ローラ対37が配置されている。
【0055】
[搬送ローラ対]
図3(a)は本発明の実施の形態を示す搬送ローラ対37の構成を示す斜視図、図3(b)は搬送ローラ対37の拡大断面図である。
【0056】
搬送ローラ対37は、図示しない駆動源に接続されて駆動回転する駆動ローラ37Aと、駆動ローラ37Aに図示しない付勢手段により押圧されて従動回転する従動ローラ37Bとから構成されている。搬送ローラ対37は、駆動ローラ37Aと従動ローラ37Bとが圧接する2組のローラ対を回転軸に固定したものである。
【0057】
図示しない駆動手段によって回転される回転軸に固定された駆動ローラ37Aの表面は、耐熱性ゴムにより形成されている。
【0058】
従動ローラ37Bの駆動ローラ37Aへの回転軸方向の圧接長さは、1組のローラ対を8mmとした場合、2組のローラ対では16mmとなる。この全長16mm当たりの搬送ローラ対37の押圧力は、0.42N乃至0.96N(Nはニュートン)に設定した。
【0059】
従動ローラ37Bは、用紙搬送路の上方に配置されてトナー像tに接触する。従動ローラ37Bのローラ基体37B1の外周面には複数の微小突起37B2が凸状に形成されている。微小突起37B2は、耐摩耗性に優れ、安定した点接触が得られる材料、又は剛性が高く均一な粒径を有し安定した点接触が得られ、トナー層との均一なギャップが確保される材料が好適である。
【0060】
【表1】

【0061】
表1は、微小突起37B2の粒径と、定着手段によって定着されて搬送ローラ対を通過して排出された用紙S上のトナー像tの評価とを示す。トナー像tの評価は目視判断による。
【0062】
微小突起37B2の平均粒径は、65〜300μm、好ましくは80〜170μmの範囲内のものが、ローラ痕やローラ擦れによる傷等の画質低下が発生する事がなく好適である。
【0063】
従動ローラ37Bを製造するに当たって、静電塗装装置によって塗料を噴射させて塗膜層37B3を形成する。引き続きセラミックス粉体から成る微小突起37B2を静電塗装装置によって噴射させる。噴射されたセラミックス粉体は塗膜層37B3に当接して入り込んだ状態でローラ基体37B1の外周面に均一に分布されて付着する。
【0064】
用紙Sの搬送に必要な押圧力を搬送ローラ対37に加え、対向する駆動ローラ37Aに圧接して用紙Sを搬送するとき、用紙S上の完全に固化していない状態のトナーが従動ローラ37Bのトナー面と点接触するから、従動ローラ37Bによる用紙S上のトナー像tに圧痕や擦り傷が発生する事が解消され、高品位の画像が提供される。
【0065】
また、従動ローラ37Bに形成された複数の微小突起37B2は、用紙Sに接触して搬送に必要な押圧力により搬送するから、搬送ローラ対37の用紙搬送下流側に配置された分岐板29(図1参照)に摺接して屈曲されるとき、摩擦抵抗を受けても搬送不良を発生する事がない。
【0066】
図1に示すカラー画像形成装置において、用紙S上に形成されるトナー像tの最大トナー付着量が、例えば、7g/m2を超える多層のカラートナー像tを形成する場合、従来、トナー付着量が多くなるに従って発生していた搬送ローラ対37による用紙S上のトナー像tに圧痕や擦り傷の問題が本発明により解消され、高品位の画像が提供される。また、カラートナー像tの光沢度を向上させるため定着温度を上昇させたり、記録媒体の搬送速度を低下させた場合においても、十分に溶融されたカラートナー像tに対して、圧痕や擦り傷の発生が解消され、高品位の画像が提供される。
【0067】
また、搬送ローラ対37を構成している駆動ローラ37Aの表面にも複数の微小突起を設ける事により、両面画像形成時の画質向上を図る事も可能である。
【0068】
本発明の実施の形態では、カラー画像形成装置に装着された定着装置について説明したが、単色又は多色の複写機、ファクシミリ、プリンタ、及びこれらの機能を有する複合機等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る定着装置を備えた画像形成装置の構成図。
【図2】加熱ローラ方式の定着装置の一実施の形態を示す断面図。
【図3】本発明の実施の形態を示す搬送ローラ対の構成を示す斜視図、及び搬送ローラ対の拡大断面図。
【符号の説明】
【0070】
30 定着装置
31 定着ローラ
32 加圧ローラ
33,34 加熱源(ヒータ)
37 搬送ローラ対
37A 駆動ローラ
37B 従動ローラ
37B1 ローラ基体
37B2 微小突起
37B3 塗膜層
A 画像形成装置
S 記録媒体(用紙)
N 定着ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着トナー像が転写された記録媒体を加熱加圧することにより定着する定着装置と、該定着装置の定着ニップ部の記録媒体搬送方向下流側に配設され、前記定着ニップ部を通過した前記記録媒体を挟持して搬送する搬送ローラ対を備えた画像形成装置において、
前記搬送ローラ対のうち、片面記録後の前記記録媒体のトナー像に接触する搬送ローラの外周面に複数の微小突起を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記微小突起は65〜300μmの平均粒径の部材から成ることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記微小突起の材料がガラスビーズ又はセラミックス粉体により形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記録媒体上に形成されるトナー像が、複数色のカラートナー像であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記搬送ローラ対を構成する両方の搬送ローラの外周面に、それぞれに複数の微小突起を設けたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記定着装置より記録媒体搬送方向下流側に、排紙部に向けて前記記録媒体を搬送させる排紙搬送路と、該排紙搬送路から分岐した反転搬送路と、を有し、前記搬送ローラ対を前記排紙搬送路と前記反転搬送路との分岐点よりも記録媒体搬送方向上流側に備えたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−145586(P2006−145586A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331593(P2004−331593)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】