説明

画像形成装置

【課題】 電子写真装置において、帯電部材が直流電圧に交流電圧を重畳して電子写真感光体を非接触で印加帯電する際に発生する帯電音を実用上問題のないレベルにまで抑制可能にする画像形成装置、及びその画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】 電子写真画像形成装置において、該帯電手段において用いられる帯電部材は軸部と軸部を被覆する本体部とから構成され、該本体部は導電材を含む樹脂から形成されており、該帯電部材が該電子写真感光体に非接触にて対向して配置され、該帯電部材は直流電圧に交流電圧を重畳して該電子写真感光体を非接触にて印加帯電させ、かつ該電子写真感光体の導電性支持体の肉厚d(mm)が、d≧0.9となる関係を満たす部位が存在することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、レーザープリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関し、特に、画像形成装置に配設される電子写真感光体への帯電手段と画像形成装置用プロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ファクシミリ、レーザービームプリンタ、複写機など、間接電子写真法を使用して画像形成を行う画像形成装置では、電子写真用感光体(以下単に「感光体」と称する)を中心に帯電、画像露光、現像、転写、分離、清掃、除電等の各手段が配設され、感光体に対し、各手段が順に作動する形で、画像形成が行われる。
【0003】
まず、感光体には帯電手段により、−400〜−800ボルトの帯電(電荷付与)が行われる。帯電手段に電圧を印加する方法には、直流電圧が印加される場合と、交流電圧重畳の直流電圧が印加される場合の2通りの方法がある。通常は直流電圧のみで実用上問題のない作像が可能であるが、直流電圧に交流電圧を重畳することによって、さらに環境条件に左右されにくくなり、接触帯電方式を用いた場合に生じる、帯電部材、感光体の凹凸、部材の微小なムラ等に起因すると考えられる電位ムラを少なくすることができる。
【0004】
一方、現在一般的に採用される帯電方法には、シールドケース内に帳架された直径40〜80μmのタングステン線、ニッケル線などの金属線に−4000〜−6000V程度の高電圧を印加して感光体を帯電するコロナ帯電方法、102〜108Ω・cm程度の抵抗を有するローラ形状、ブラシ形状等の帯電部材に−1200〜−2000Vの直流電圧、もしくは−500〜−900Vの直流電圧に、1000〜2500V/500〜4500Hzの交流電圧を重畳させた電圧を印加しながら感光体を帯電する接触帯電方法、もしくは帯電部材と感光体間を30〜250μm程度離して近接配置させ、前記同様の電圧を印加し、感光体を帯電する非接触帯電方法がある。
【0005】
コロナ帯電方法では高電圧が印加されるため、10ppm前後の高濃度のオゾンが発生する。そのため、オゾン臭による環境上の問題がある。そのため近年では低い印加電圧で帯電可能な接触帯電方法が行われ、オゾンの発生は0.1ppm以下と極めて少ない。したがって、近年はオゾン生成量が少ない接触帯電法を使用し、帯電部材には交流電圧重畳直流電圧を印加する画像形成装置も多くなっている。
【0006】
しかし、直流電圧に交流電圧を重畳した帯電手段に印加した場合、画像品質低下の原因物質であるオゾン、窒素酸化物の発生以外に、帯電時に、耳障りな帯電音が発生するという騒音上の問題がある。この帯電音は直流電圧では殆ど問題とはならず、振動電流と言われるが故の交流特有の現象であり、振幅が大きくなるほど、また、電子写真感光体の導電性支持体が響きやすい材質ほど、帯電音が大きくなる。したがって、可能な限り低い条件に設定することが望ましいが、帯電安定性を高くするとどうしても条件が厳しくなり、帯電音が大きくなるため、対策を講じることは必要不可欠である。
【0007】
この現象を改善する手段として、電子写真感光体の導電性支持体を厚くする、ドラム状感光体の内部に制振材(充填材)を挿入する、帯電部材側の改善を行う等の方法が提案されている。これらの方法は感光体の響きを抑え、共振周波数を耳に感じにくい方へずらすことなどを目的としており、下記に示すような事例が提案されている。
【0008】
ドラム状感光体の内部に制振材を挿入し、帯電時の帯電音(高周波音)の発生を改善する方法として、感光ドラム内部に緩衝材を圧挿することが(例えば、特許文献1参照)、感光体内部に粘弾性材料を充填することが(例えば、特許文献2参照)、感光体の内部に密度2.0g/cm3以上の剛体を挿入することが(例えば、特許文献3参照)、2つ以上の弾性体(Oリング)と円柱状部材(比重1.5以上のプラスチック(ガラス繊維を20%以上含有するポリブチレンテレフタレート樹脂)から構成される部材を感光体へ挿入することが(例えば、特許文献4参照)、金属製バネを内蔵した樹脂製円筒状部材を挿入し、感光体内壁に押圧力で固定することが(例えば、特許文献5参照)、それぞれ提案されている。
【0009】
また、感光体基体の肉厚を厚くして、制振効果を高める方法として、感光体の基体がインローを有し、インロー以外の肉厚を1.9mm以上とすることで制振効果を得ることが(例えば、特許文献6参照)、感光体の堆積密度を0.6g/cm3以上、2.0g/cm3以下とすることで制振効果を得ることが(例えば、特許文献7参照)提案されている。
【0010】
さらに、帯電部材から帯電音抑制を達成する方法として、中空の帯電部材(ローラ)の表面に被覆層を設け、帯電部材の内部に弾性体を挿入し芯金をその弾性体を介して支持する構造にすることによって、帯電音の改善を行うことが(例えば、特許文献8参照)、提案されている。帯電音は感光体の振動周波数を耳障りにならないような可聴域にずらす様にするか、振動そのものを押さえ込むかのいずれかの方法により対策方法が異なってくる。
【特許文献1】特開昭63−60481号公報
【特許文献2】特開平3−105348号公報
【特許文献3】特開平5−197321号公報
【特許文献4】特開平11−184308号公報
【特許文献5】特開2000−321929号公報
【特許文献6】特開2000−19761号公報
【特許文献7】特開2000−155500号公報
【特許文献8】特開平9−230671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記した方式はいずれも大なり小なりの効果がある。ただ、接触帯電法では改善されても、帯電部材を感光体に極近接配置する非接触帯電方式では効果が得にくい場合がある。例えば帯電部材で帯電音を抑制する方法や電子写真感光体の導電性支持体を厚くしただけでは十分な効果が得られにくい場合がある。支持体の内部に充填材を挿入して、重量を上げ響き(鳴き)を抑える方法は効果が得られやすいが、単に挿入しても支持体と挿入材の間に隙間があるような場合、重さが小さい場合などでは予想通りの効果がえられ難い。また、単一構成の部材で構成した場合も効果が低くなることがある。更に、近年は環境問題があり、再生、再使用等が必要であるため、この点に関しての考慮が必要である。
【0012】
本発明は、上述した実情を考慮してなされたもので、帯電部材が直流電圧に交流電圧を重畳して電子写真感光体を非接触で印加帯電する際に発生する帯電音を実用上問題のないレベルにまで抑制可能にする画像形成装置、及びその画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電子写真感光体と、該電子写真感光体を一様に帯電する帯電手段と、像露光手段、現像手段、転写手段を備える画像形成装置において、該帯電手段において用いられる帯電部材は軸部と軸部を被覆する本体部とから構成され、該本体部は導電材を含む樹脂から形成されており、該帯電部材が該電子写真感光体に非接触にて対向して配置され、該帯電部材は直流電圧に交流電圧を重畳して該電子写真感光体を非接触にて印加帯電させ、かつ該電子写真感光体の導電性支持体の肉厚d(mm)がd≧0.9となる関係を満たす部位が存在する画像形成装置を特徴とする。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、前記帯電部材は、対向し配置される電子写真感光体の画像形成領域外にあたる該帯電部材の本体部にスペーサ部材を備えることにより、帯電部材と像担持体間に間隙を形成することにより非接触帯電を行う請求項1に記載の画像形成装置を特徴とする。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、前記電子写真感光体の画像形成領域外にあたる該電子写真感光体の両端にスペーサ部材を備えることにより、帯電部材と像担持体間に間隙を形成することにより非接触帯電を行う請求項1または2に記載の画像形成装置を特徴とする。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、前記帯電部材が電子写真感光体を帯電させるために供給する交流電圧周波数を100Hz以上、2.5kHz以下とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置を特徴とする。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、前記帯電部材が電子写真感光体を帯電させるために供給する交流電圧周波数の振動振幅(Vpp)が1.0kV以上、3.0kV以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置を特徴とする。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、前記電子写真感光体の導電性支持体の肉厚d(mm)が0.9≦d≦5となる関係を満たす部位が存在する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置を特徴とする。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は、前記電子写真感光体に対する前記帯電部材の本体部の体積抵抗率が1×105Ω・cm〜1×1010Ω・cmである請求項1または2に記載の画像形成装置を特徴とする。
【0020】
また、請求項8に記載の発明は、前記電子写真感光体は感光層を有し、最表面層として電荷輸送層を有し、該電荷輸送層の膜厚が10〜35μmである請求項1乃至7のいずれかに記載の画像形成装置を特徴とする。
【0021】
また、請求項9に記載の発明は、前記電子写真感光体は両端の開口部に軸受け部材が装着され、感光体内部を貫通する軸を具備する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置を特徴とする。
【0022】
また、請求項10に記載の発明は、前記電子写真感光体は動作時に前記帯電部材と連れ回りで動作し、該帯電部材による印加帯電時に該電子写真感光体が200rpm以下で回転し帯電する請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置を特徴とする。
【0023】
また、請求項11に記載の発明は、前記現像手段において使用されるトナーが少なくとも平均粒径が70nm以上、300nm以下の無機微粒子を含有する請求項1に記載の画像形成装置を特徴とする。
【0024】
また、請求項12に記載の発明は、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段の一つと電子写真感光体とを具備してなり、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の画像形成装置に用いられ、着脱自在であるプロセスカートリッジを特徴とする。
【0025】
また、請求項13に記載の発明は、請求項12に記載のプロセスカートリッジを複数具備してなる画像形成装置を特徴とする。
【0026】
また、請求項14に記載の発明は、前記画像形成装置が、電子写真感光体上に現像されたトナー像を中間転写体上に一次転写した後、該中間転写体上のトナー画像を記録材上に二次転写する中間転写手段を有する画像形成装置であって、複数色のトナー画像を記録材上に一括で二次転写する請求項1乃至11もしくは13のいずれかに記載の画像形成装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、少なくとも電子写真感光体と、該電子写真感光体を一様に帯電する帯電手段と、一様帯電後に像露光を行い、静電潜像を形成する像露光手段と、前記静電潜像にトナーを現像する現像手段及び現像像を転写する手段と、該電子写真感光体の転写残トナーをクリーニングするクリーニング手段を備える画像形成装置において、該帯電手段において用いられる帯電部材は軸部と軸部を被覆する本体部とから構成され、該本体部は導電材を含む樹脂から形成されており、該帯電部材が該電子写真感光体に非接触にて対向して配置され、該帯電部材は直流電圧に交流電圧を重畳して該電子写真感光体を非接触にて印加帯電させ、かつ該電子写真感光体の導電性支持体の肉厚d(mm)がd≧0.9となる関係を満たす部位が存在する画像形成装置により、画像形成装置では帯電音を実用上問題のないレベルにまで抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の画像形成装置を説明するための概略図であり、後述するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
【0029】
図1において、感光体11は、本発明の要件を満たす電子写真感光体である。
感光体11はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。帯電部材12は、帯電ローラが用いられる。帯電ローラは軸部と軸部を被覆する本体部とから構成され、該本体部は導電材を含む樹脂から形成される。帯電部材12は、感光体11と微小な間隙Gを持つことで非接触にて対向して配置される。帯電部材12と感光体11の間隙Gは、一定の厚さを有するスペーサ部材を帯電部材12の非画像形成領域に備えることで調整される。
【0030】
転写手段16には、一般に転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。また、露光手段13、除電手段1A等に用いられる光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を挙げることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0031】
現像手段14により感光体上に現像されたトナー15は、受像媒体18に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング手段17により、感光体より除去される。クリーニング手段は、ゴム製のクリーニングブレードやファーブラシ、マグファーブラシ等のブラシ等を用いることができる。
【0032】
現像手段において使用されるトナーは少なくとも平均粒径が70nm以上、300nm以下の無機微粒子を含有することにより良質な画像を出力することができる。電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用され、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0033】
以上の電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。
【0034】
また、以上に示すような画像形成手段は、複写機、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、電子写真感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段の少なくとも1つを含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられ、詳しくは説明しないが一般的な例として、図2に示すようなものが挙げられる。
【0035】
図3には本発明による画像形成装置の別の例を示す。この電子写真装置では、感光体11の周囲に帯電手段12、露光手段13、ブラックBk、シアンC、マゼンタM、およびイエローYの各色トナー毎の現像手段14Bk,14C,14M,14Y、中間転写体である中間転写ベルト1F、クリーニング手段17が順に配置されている。ここで、図中に示すBk、C、M、Yの添字は上記のトナーの色に対応し、必要に応じて添字を付けたり適宜省略する。
【0036】
各色の現像手段14Bk,14C,14M,14Yは各々独立に制御可能となっており、画像形成を行う色の現像手段のみが駆動される。感光体11上に形成されたトナー像は中間転写ベルト1Fの内側に配置された第1の転写手段1Dにより、中間転写ベルト1F上に転写される。第1の転写手段1Dは感光体11に対して接離可能に配置されており、転写動作時のみ中間転写ベルト1Fを感光体11に当接させる。各色の画像形成を順次行い、中間転写ベルト1F上で重ね合わされたトナー像は第2の転写手段1Eにより、受像媒体18に一括転写された後、定着手段19により定着されて画像が形成される。第2の転写手段1Eも中間転写ベルト1Fに対して接離可能に配置され、転写動作時のみ中間転写ベルト1Fに当接する。
【0037】
転写ドラム方式の画像形成装置では、転写ドラムに静電吸着させた転写材に各色のトナー像を順次転写するため、厚紙にはプリントできないという転写材の制限があるのに対し、図3に示すような中間転写方式の電子写真装置では中間転写体1F上で各色のトナー像を重ね合わせるため、転写材の制限を受けないという特徴がある。このような中間転写方式は図3に示す装置に限らず前述の図1および図2に記す画像形成装置に適用することができる。
【0038】
図4は、帯電手段に備えられる帯電部材の半径方向の断面図である。帯電部材12は、中心に金属製芯金による軸部12a、その外側に本体部12bからなる構造をしている。軸部12aは、例えば、直径が8〜20mmのステンレス、アルミニウムの高い剛性と導電性を有している金属製又は1×103Ω・cm以下、好ましくは1×102Ω・cm以下で高い剛性を有する導電性の樹脂等で構成される。
【0039】
本体部12bは、1×105Ω・cm〜1×1010Ω・cmの体積抵抗率で、1〜2mm程度の厚さにすることが好ましい。本体部12bの体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上となると放電が不十分となり、感光体11表面を十分に帯電させることができなくなるおそれがあり、逆にこの抵抗率が1×105Ω・cm以下となると、感光体11の感光層にピンホールなどの欠陥があった場合、放電電流がピンホールに集中して異常放電が生じ、さらに過電流がピンホールをさらに拡大させ、感光層が破壊され、異常画像が出力される原因となる。
【0040】
ここで、本体部12bは、1層構造で示したが、特にこの構造に限定されるものではなく、本体部の1層以上が導電性の樹脂等により構成されれば2層以上であっても良い。本体部12bには、従来は、ヒドリンゴム等のゴムを用いていたが、ここでは、ゴムより膨張係数の低い樹脂を用いて、導電剤を混入して電気抵抗を調整する。通常、樹脂の線膨張係数はゴムの約1/2以下であり、樹脂の体積膨張係数は等方性の場合ゴムの約1/6以下になる。従来のように、ゴムを用いると、熱や湿度により、ゴムの寸法精度が大きく変化することで、帯電部材12と感光体11との間隙Gが小さい場合、帯電部材と電子写真感光体が接触してしまい、帯電音が大きくなることがあったり、異常放電による帯電ムラの原因となることがある。
【0041】
ここで、本体部12bの樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、ポリスチレン及びその共重合体等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂等を用いることができる。樹脂には、導電剤のほかに強度を向上、寸法の精度を向上させるためにカーボンファイバー、グラスファイバー、炭化物、硼化物等のセラミックスを混入することにより膨張係数を小さくすることができる。
【0042】
導電剤としては、過酸化リチウム等のアルカリ金属塩、過塩素酸ナトリウム等の過塩素酸塩、テトラブチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩、高分子導電剤等のイオン系導電剤、カーボンブラック、銀粉、銅粉等の金属粉、ITO等のセラミックス粉を用いることができる。
【0043】
図5は本発明である画像形成装置に用いられる帯電部材の概略図である。帯電部材には本体部の両端にスペーサ部材を備える。帯電部材12と像担持体11との間隙Gは(図1参照)、スペーサ部材により100μm以下、特に、20〜50μmの範囲が好ましい。これにより、帯電装置100の作動時における異常画像の形成を抑えることができる。間隙Gが、100μm以上では、感光体11の表面の帯電電位が低下することにより出力画像に地汚れが生じやすくなるなど、出力画像の画質低下が起こることがある。また、この間隙Gが小さいと、感光体表面のクリーニング部材において除去されなかった感光体表面付着物が帯電部材に接触することにより、その一部が帯電部材に転移し、感光体帯電時の帯電ムラの原因となることがある。
【0044】
図5に示すスペーサ部材30は、ポリエチレン、ポリオレフィン等のオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂を用いることができる。また、スペーサ部材30には、弾性を有する金属又はゴムを用いることができる。金属としては、アルミニウム、鉄、銅、チタン又はこれらを主体とする合金を用いることができる。さらに、これらの表面を酸化物で被覆して、電気的に絶縁性にすることが好ましい。金属製のスペース部材30は、感光体11の樹脂による感光層と比較して硬いため、さらに、表面に樹脂で被覆することが好ましい。これにより、感光体11の感光層より硬度を低くして、感光体11の摩耗を減らすことができる。
【0045】
また、ゴムとしては、天然ゴム、ポリウレタンゴム、クロロプレンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムを用いることができる。JIS−A:ゴム硬度は70Hs以上が好ましく、さらに、シリカ、アルミナ、グラスファイバー等を添加して硬化させたものが好ましい。これにより、間隙Gの変動を防ぐことができる。
【0046】
このスペーサ部材は帯電部材に備えるのに代えて電子写真感光体の両端に備えることができ、これにより間隙Gを形成可能である。このときスペーサ部材には帯電部材と同様のものを用いることができる。
【0047】
電子写真感光体11に対向して配設された帯電部材12により感光体を帯電させる際、帯電部材12に印加する電圧は電子写真感光体11と帯電部材12が接触している場合直流電圧のみにより十分な実用性を持たせることは可能であり、実用上問題となるレベルの帯電音は生じにくい。しかし、非接触の場合は直流電圧のみにより帯電させる場合は帯電ムラが生じやすくなる。ゆえに帯電ムラの発生を大幅に抑えるために直流電圧に交流電圧を重畳し、交流電圧により補償を行うことは有効である。
【0048】
交流電圧は正弦波がのぞましく、周波数としては100Hz以上、2.5KHz以下に設定するのがのぞましい。100Hz以下では感光体に交流電圧が十分に作用しないため、帯電ムラが生じやすくなり、異常画像が生じやすくなる。また、2.5kHz以上では、異常放電を起こしやすいほか、感光体の感光層中にトラップされた電荷が帯電電位を低下させ、帯電電位の繰り返し特性を不安定にさせ、これによる地肌汚れを引き起こす。
【0049】
帯電部材に印加する交流電圧の周波数は感光体の線速により公的な値は変動するが、800Hz以上、2kHz以下に設定すれば実用的には支障はない。交流電圧周波数の振動振幅(Vpp)は1kV以上、3.0kV以上であることが好ましい。この範囲であれば安定した感光体帯電電位、および繰り返しの使用による感光体の残留電位の上昇を程良く抑えることができるが、Vppは高くなるほどに帯電音が大きくなるので2.5kV以下とすることが望まれる。また、1.3kV以下では感光体の帯電が部分的に不十分となる場合があり、帯電ムラとなり、異常画像が生じやすくなる。
【0050】
感光体の帯電時の回転速度は、速くなるほど帯電ムラなく、均一に帯電させたい電位へ帯電させるには、交流電圧周波数及び、Vppを高くすることがのぞましい。しかし、前述したように交流電圧周波数およびVppには適する範囲が存在するため、感光体回転速度は200rpm以下で回転し帯電することがのぞましい。
【0051】
感光体11の両端の開口部に軸受け部材が装着され、感光体内部を貫通する軸を具備しても良い。たとえば樹脂製の精度の良い軸受け部材に感光体内部を貫通する金属製の精度の良い軸を備えることにより外径振れ精度を向上させることができ、出力画質の向上に貢献することができる。
【0052】
図6は、本発明の画像形成装置に用いられる電子感光体の1つの例を円柱中心軸を含む平面で切った断面図である。電子写真感光体が対向する帯電部材により帯電印加させられる際の帯電音を抑えるため、感光体の導電性支持体の肉厚dが0.9mm≦d≦5mmであることが好ましい。0.9mm未満では感光体の帯電音が大きくなり実用上問題が生じてくる。また、5mmを超えると感光体の重量が増加することで感光体単体の取り扱いが困難になることや、ドラムを複数本備える画像形成装置においては重量の増加が顕著であり無視できない大きさとなる。また、画像形成装置内での駆動時に駆動機器に大きな負荷をかけることからも好ましくない。より好ましくは、肉厚dは0.9mm≦d≦2mmであることが好ましい。
【0053】
図7は本発明の画像形成装置に具備される電子写真感光体の模式断面図であり、導電性基体20上に感光層21を設けた構成の電子写真感光体を示している。図8及び図9は各々本発明の画像形成装置に具備される他の電子写真感光体の構成例を示すものである。図8は、感光層21が電荷発生層22(CGL)と電荷輸送層23(CTL)より構成される機能分離型タイプの電子写真感光体を示し、図9は、導電性基体20と機能分離型タイプの感光層のCGL22、CTL23との間に下引き層24を入れた電子写真感光体を示している。なお、本発明に係る電子写真感光体としては、導電性支持体上に少なくとも感光層を有しており、最表面層が電荷輸送層であれば、上記以外のその他の層が形成されていても構わない。
【0054】
本発明において電子写真感光体に使用される導電性支持体20としては、導電体もしくは導電処理をした絶縁体、例えばAl、Ni、Fe、Cu、Auなどの金属、もしくはそれらの合金の他、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ガラス等の絶縁性基体上にAl、Ag、Au等の金属あるいはIn23、SnO2等の導電材料の薄膜を形成したもの、樹脂中にカーボンブラック、グラファイト、アルミニウム,銅,ニッケル等の金属粉、導電性ガラス粉などを均一に分散させ、樹脂に導電性を付与した樹脂基体、導電処理をした紙等が使用できる。
【0055】
導電性支持体20の形状は特に制約はなく、板状、ドラム状あるいはベルト状のいずれのものも使用できるが、ベルト状の導電性支持体を用いると、内部に駆動ローラ、従動ローラを設ける必要があるなど装置が複雑化、大型化する反面、レイアウトの自由度が増すなどのメリットがある。しかしながら、保護層を形成する場合は、該保護層の可撓性が不足して、表面にクラックとよばれる亀裂が入る可能性があり、それが原因で粒状の地肌汚れが発生することが考えられる。このようなことから、支持体としては剛性の高いドラム状のものが好ましく用いられる。
【0056】
導電性支持体と感光層21との間には、必要に応じて、下引き層24を設けてもよい。かかる下引き層24は、接着性を向上する、モアレなどを防止する、上層の塗工性を改良する、残留電位を低減するなどの目的で設けられる。下引き層は、一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂は、その上に感光層を、溶剤を用いて塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。
【0057】
このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。また、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を加えてもよい。これらの下引き層は、適当な溶媒を用いて、慣用される塗工法によって形成することができる。
【0058】
更に、かかる下引き層としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えばゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層も有用である。この他に、かかる下引き層として、Al23を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物や、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法にて設けてもよい。下引き層24の膜厚は約0.1〜5μmが適当である。
【0059】
電荷発生層22は、電荷発生物質を主成分とする層であって、必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。無機系材料としては、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物等が挙げられる。
【0060】
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0061】
電荷発生層21に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。また、必要に応じて、電荷輸送性物質を添加してもよい。また、電荷発生層のバインダー樹脂として、上述のバインダー樹脂の他に、高分子電荷輸送性物質も良好に用いられる。
【0062】
電荷発生層を形成する方法としては、真空薄膜作製法と、溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。前者の方法としては、グロー放電重合法、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、加速イオンインジェクション法等が挙げられる。この真空薄膜作製法は、上述した無機系材料又は有機系材料を良好に形成することができる。また、後者のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共に、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法などの慣用されている方法を用いて行うことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0063】
電荷輸送層23は、帯電電荷を保持させ、かつ、露光により電荷発生層で発生分離した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させることを目的とする層である。帯電電荷を保持させる目的を達成するためには、電気抵抗が高いことが要求される。また、保持していた帯電電荷で高い表面電位を得る目的を達成するためには、誘電率が小さく、かつ、電荷移動性が良いことが要求される。
【0064】
これらの要件を満足させるための電荷輸送層23は、電荷輸送性物質及び必要に応じて用いられるバインダー樹脂により構成される。かかる電荷輸送層は、これらの電荷輸送性物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。かかる電荷輸送層には、必要により、電荷輸送性物質及びバインダー樹脂以外に、可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等などの添加剤を適量添加することもできる。電荷輸送性物質としては、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
【0065】
電子輸送物質としては、たとえば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0066】
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。たとえば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0067】
また、高分子電荷輸送性物質は、以下のような構造を有していてもよい。
(a)カルバゾール環を有する重合体
例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、特開昭50−82056号公報、特開昭54−9632号公報、特開昭54−11737号公報、特開平4−175337号公報、特開平4−183719号公報、特開平6−234841号公報に記載の化合物等が例示される。
【0068】
(b)ヒドラゾン構造を有する重合体
例えば、特開昭57−78402号公報、特開昭61−20953号公報、特開昭61−296358号公報、特開平1−134456号公報、特開平1−179164号公報、特開平3−180851号公報、特開平3−180852号公報、特開平3−50555号公報、特開平5−310904号公報、特開平6−234840号公報に記載の化合物等が例示される。
【0069】
(c)ポリシリレン重合体
例えば、特開昭63−285552号公報、特開平1−88461号公報、特開平4−264130号公報、特開平4−264131号公報、特開平4−264132号公報、特開平4−264133号公報、特開平4−289867号公報に記載の化合物等が例示される。
【0070】
(d)トリアリールアミン構造を有する重合体
例えば、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノポリスチレン、特開平1−134457号公報、特開平2−282264号公報、特開平2−304456号公報、特開平4−133065号公報、特開平4−133066号公報、特開平5−40350号公報、特開平5−202135号公報に記載の化合物等が例示される。
【0071】
(e)その他の重合体
例えば、ニトロピレンのホルムアルデヒド縮重合体、特開昭51−73888号公報、特開昭56−150749号公報、特開平6−234836号公報、特開平6−234837号公報に記載の化合物等が例示される。
本発明に使用される電子供与性基を有する重合体は、上記重合体だけでなく、公知単量体の共重合体や、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマーや、また、例えば特開平3−109406号公報に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体等を用いることも可能である。
【0072】
また、本発明に用いられる高分子電荷輸送性物質として更に有用なトリアリールアミン構造を有するポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテルとしては、例えば、特開昭64−1728号公報、特開昭64−13061号公報、特開昭64−19049号公報、特開平4−11627号公報、特開平4−225014号公報、特開平4−230767号公報、特開平4−320420号公報、特開平5−232727号公報、特開平7−56374号公報、特開平9−127713号公報、特開平9−222740号公報、特開平9−265197号公報、特開平9−211877号公報、特開平9−304956号公報等に記載の化合物が例示される。
【0073】
更に、電荷輸送層に併用できるバインダー樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、フェノキシ樹脂などが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0074】
電荷輸送層の膜厚は、約5〜100μm程度が適当であるが、近年の高画質化の要求から、電荷輸送層を薄膜化することが図られており、1200dpi以上の高画質化を達成するためには、より好ましくは10〜35μm程度が適当である。
【0075】
本発明における電荷輸送層中には、ゴム、プラスチック、油脂類などに用いられる他の酸化防止剤や可塑剤などの添加剤を添加してもかまわない。更に、電荷輸送層中にレベリング剤を添加してもかまわない。かかるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーなどが使用され、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して、0〜1重量部が適当である。
【0076】
塗工方法としては、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法などの慣用されている方法を用いて行うことができる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明の実施例および、比較例について説明する。
【0078】
(実施例1)
リコー製Ipsio Color 8100改造機において電子写真感光体11と帯電部材12を以下の条件のものを搭載した。トナーは少なくとも平均粒径70nm以上、300nm以下の無機微粒子を含有し、平均粒径5.9μmのものを使用した。
【0079】
画像濃度5%となる矩形のパッチと文字の混合画像のプリントを行い、Ipsio Color 8100改造機正面30cmにおいて音量を計測し、帯電音の1〜4倍音の大きさを平均し、帯電音量とした。
【0080】
(電子写真感光体)
アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50(大日本インキ化学工業社製))15重量部、メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60(大日本インキ化学工業社製))10重量部をメチルエチルケトン150重量部に溶解し、これに酸化チタン粉末(タイペールCR−EL(石原産業社製))90重量部を加えボールミルで12時間分散し、下引層用塗工液を作製した。
【0081】
これを1mmの肉厚をもつφ30mmの円筒状アルミニウム基体に浸漬塗工法によって塗工し130℃20分間乾燥し厚み4.5μmの下引き層を形成した。
次にポリビニルブチラール樹脂(XYHL(UCC社製))4重量部をシクロヘキサノン150重量部に溶解し、これを下記構造式(1)に示す。
【0082】
【化1】

【0083】
ビスアゾ顔料に10重量部を加え、ボールミルで48時間分散後、さらにシクロヘキサノン210重量部を加えて3時間分散を行った。これを容器に取り出し固形分が1.5重量%となるようにシクロヘキサノンで希釈した。こうして得られた電荷発生層用塗工液を前記中間層上に塗工し130℃、20分間乾燥し厚み0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0084】
次に、テトラヒドロフラン100重量部に、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂10重量部、シリコーンオイル(KF−50(信越化学工業社製))0.002重量部を溶解し、これに下記構造式(2)の電荷輸送物質10重量部を加えて電荷輸送層用塗工液を作製した。こうして得られた電荷輸送層用塗工液を電荷発生層上に浸漬塗工法によって塗工し、その後110℃20分間乾燥し、厚み31μmの電荷輸送層を形成した。
【0085】
【化2】

【0086】
電子写真感光体の帯電条件等は画像部電位−40V、非画像部電位−500V、感光体の線速を155mm/secとした。
【0087】
(帯電部材)
ステンレススチール製の芯軸(φ6mm導電性支持体)を本体部として樹脂で被覆した図4に示す構造の帯電ローラを製作した。樹脂の材料としてABS樹脂100重量部に、導電剤としてエーテルアミド0.5重量部を配合し、体積抵抗率が1×108Ω・cm〜1×109Ω・cmとなるよう調整した組成物を用い、この材料を押出成形機により成形して芯軸を被覆し、φ14mmの帯電ローラを得た。スペーサ部材には熱収縮性フッ素樹脂を用いた。加えた電圧条件は交流電圧周波数1.1kHz、Vpp2.0kV、直流電圧―450Vとした。
【0088】
(実施例2)
実施例1において電子写真感光体の導電性支持体の肉厚dを2mmとした以外は、リコー製Ipsio Color 8100改造機において、実施例1と同様にして評価を行った。
【0089】
(実施例3)
実施例1においてVppを1.7kVとした以外は、リコー製Ipsio Color 8100改造機において、実施例1と同様にして評価を行った。
【0090】
(実施例4)
実施例1においてVppを2.5kVとした以外は、リコー製Ipsio Color 8100改造機において、実施例1と同様にして評価を行った。
【0091】
(実施例5)
実施例1において感光体の電荷輸送層(CTL)の膜厚を20μmとした以外は、リコー製Ipsio Color 8100改造機において、実施例1と同様にして評価を行った。
【0092】
(実施例6)
実施例1において感光体の線速を77.5mm/secとした以外は、リコー製Ipsio Color 8100改造機において、実施例1と同様にして評価を行った。
【0093】
(比較例1)
実施例1においてリコー製Ipsio Color 8100改造機に搭載する帯電部材の条件を以下のものとした以外は、リコー製Ipsio Color 8100改造機において、実施例1と同様にして評価を行った。
【0094】
(帯電部材)
ステンレススチール製の芯軸(φ6mm導電性支持体)を本体部として半導電性弾性層で被覆した図4に示す構造の帯電ローラを製作した。樹脂の材料としてポリエステル成分を含む熱可塑性エラストマー100重量部に、過塩素酸リチウム0.5重量部を配合し、体積抵抗率が1×108Ω・cm〜1×109Ω・cmとなるよう調整した組成物を用い、この材料を押出成形機により成形して芯軸を被覆し、φ14mmの帯電ローラを得た。
【0095】
(比較例2)
比較例1において電子写真感光体の導電性支持体の肉厚dを2mmとした以外は、リコー製Ipsio Color 8100改造機において、比較例1と同様にして評価を行った。
【0096】
(比較例3)
実施例1において電子写真感光体の導電性支持体の肉厚dを0.7mmとした以外は、リコー製Ipsio Color 8100改造機において、実施例1と同様にして評価を行った。
実施例1〜6、比較例1〜3の評価結果を表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
表1から、本発明の構成要件を満たす実施例では帯電音の音量は小さく実用上、問題のない音量であることが確認された。本発明の要件を満たしていない比較例は、いずれも帯電音の音量が大きく、実用上問題である音量であった。
【0099】
(実施例7)
像露光の光源を655nmに改造し、さらに除電手段であるLED照射機構を取り除く改造を行ったリコー製imagio Neo 270改造機において実施例1において用いた電子写真感光体、帯電部材を実施例1の条件において搭載し、画像濃度5%となる矩形のパッチと文字の混合画像のプリントを行い、imagio Neo 270改造機正面30cmにおいて音量を計測し、帯電音の1〜4倍音の大きさを平均し、帯電音量とした。
【0100】
(実施例8)
実施例2において用いた電子写真感光体、帯電部材を実施例2の条件において、リコー製imagio Neo 270改造機に搭載し、実施例7と同様にして評価を行った。
【0101】
(実施例9)
実施例3において用いた電子写真感光体、帯電部材を実施例3の条件において、リコー製imagio Neo 270改造機に搭載し、実施例7と同様にして評価を行った。
【0102】
(実施例10)
実施例4において用いた電子写真感光体、帯電部材を実施例4の条件において、リコー製imagio Neo 270改造機に搭載し、実施例7と同様にして評価を行った。
【0103】
(実施例11)
実施例5において用いた電子写真感光体、帯電部材を実施例5の条件において、リコー製imagio Neo 270改造機に搭載し、実施例7と同様にして評価を行った。
【0104】
(実施例12)
実施例6において用いた電子写真感光体、帯電部材を実施例6の条件において、リコー製imagio Neo 270改造機に搭載し、実施例7と同様にして評価を行った。
【0105】
(比較例4)
比較例1において用いた電子写真感光体、帯電部材を比較例1の条件において、リコー製imagio Neo 270改造機に搭載し、実施例7と同様にして評価を行った。
【0106】
(比較例5)
比較例2において用いた電子写真感光体、帯電部材を比較例2の条件において、リコー製imagio Neo 270改造機に搭載し、実施例7と同様にして評価を行った。
【0107】
(比較例6)
比較例3において用いた電子写真感光体、帯電部材を比較例3の条件において、リコー製imagio Neo 270改造機に搭載し、実施例7と同様にして評価を行った。
実施例7〜12、比較例4〜6の評価結果を表2に示す。
【0108】
【表2】

【0109】
表2から、本発明の構成要件を満たす実施例では帯電音の音量は小さく実用上、問題のない音量であることが確認された。本発明の要件を満たしていない比較例は、いずれも帯電音の音量は大きく、実用上問題である音量であった。
【0110】
帯電音を抑制可能である理由は以下のようなものが考えられる。帯電部材の本体部を、導電材を含む樹脂から形成することにより、ゴムにより形成した帯電部材と比較して、形成精度が高まり、また、樹脂製はゴム製より変形しにくいことより、画像形成装置内で動作中に変形を起こすなどの電子写真感光体と帯電部材の間隙の大きさに変動を起こしにくい。これより樹脂製の帯電部材は非接触で安定して電子写真感光体を帯電させることが可能であると考えられる。さらに電子写真感光体の導電性支持体の肉厚d(mm)をd≧0.9とすることにより導電性支持体が振動を起こしにくいと考えられる。これらによる効果が複合的に組み合わされ、帯電音を小さくする効果が大きく現れるのではないかと推測される。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の画像形成装置の概略を示す構成図である。
【図2】本発明のプロセスカートリッジの1例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の画像形成装置のカラー現像の例を示す構成図である。
【図4】本発明の帯電部材の半径方向の断面を示す断面構成図である。
【図5】本発明の画像形成装置に用いられる帯電部材の概略図である。
【図6】本発明の画像形成装置の感光体の円柱軸方向断面図である。
【図7】本発明の画像形成装置に具備される感光体の模式断面図である。
【図8】本発明の画像形成装置に具備される感光体の1例の構成図である。
【図9】本発明の画像形成装置に具備される感光体の他の例の構成図である。
【符号の説明】
【0112】
11 電子写真感光体
12 帯電手段
12a 金属製芯金による軸部
12b 外側本体部
13 露光手段
14 現像手段
14Bk ブラック現像手段
14C シアン現像手段
14M マゼンタM現像手段
14Y イエロー現像手段
15 トナー
16 転写手段
17 クリーニング手段
18 受像媒体
19 定着手段
1A 除電手段
1B クリーニング前露光手段
1C 駆動手段
1D 第1の転写手段
1E 第2の転写手段
1F 中間転写体
G 間隙
20 導電性支持体
22 電荷発生層
23 電荷輸送層
24 下引き層
30 スペーサ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真感光体と、該電子写真感光体を一様に帯電する帯電手段と、像露光手段、現像手段、転写手段を備える画像形成装置において、
該帯電手段において用いられる帯電部材は軸部と軸部を被覆する本体部とから構成され、
該本体部は導電材を含む樹脂から形成されており、該帯電部材が該電子写真感光体に非接触にて対向して配置され、該帯電部材は直流電圧に交流電圧を重畳して該電子写真感光体を非接触にて印加帯電させ、かつ該電子写真感光体の導電性支持体の肉厚d(mm)がd≧0.9となる関係を満たす部位が存在することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記帯電部材は、対向し配置される電子写真感光体の画像形成領域外にあたる該帯電部材の本体部にスペーサ部材を備えることにより、帯電部材と像担持体間に間隙を形成することにより非接触帯電を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記電子写真感光体の画像形成領域外にあたる該電子写真感光体の両端にスペーサ部材を備えることにより、帯電部材と像担持体間に間隙を形成することにより非接触帯電を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記帯電部材が電子写真感光体を帯電させるために供給する交流電圧周波数を100Hz以上、2.5kHz以下とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記帯電部材が電子写真感光体を帯電させるために供給する交流電圧周波数の振動振幅(Vpp)が1.0kV以上、3.0kV以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記電子写真感光体の導電性支持体の肉厚d(mm)が0.9≦d≦5となる関係を満たす部位が存在することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記電子写真感光体に対する前記帯電部材の本体部の体積抵抗率が1×105Ω・cm〜1×1010Ω・cmであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記電子写真感光体は感光層を有し、最表面層として電荷輸送層を有し、該電荷輸送層の膜厚が10〜35μmであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記電子写真感光体は両端の開口部に軸受け部材が装着され、感光体内部を貫通する軸を具備することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記電子写真感光体は動作時に前記帯電部材と連れ回りで動作し、該帯電部材による印加帯電時に該電子写真感光体が200rpm以下で回転し帯電することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記現像手段において使用されるトナーが少なくとも平均粒径が70nm以上、300nm以下の無機微粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記画像形成装置は、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段の一つと電子写真感光体とを具備してなり、着脱自在なプロセスカートリッジを備えることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記画像形成装置は、前記プロセスカートリッジを複数具備してなることを特徴とする請求項12記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記画像形成装置が、電子写真感光体上に現像されたトナー像を中間転写体上に一次転写した後、該中間転写体上のトナー画像を記録材上に二次転写する中間転写手段を有する画像形成装置であって、複数色のトナー画像を記録材上に一括で二次転写することを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−47716(P2006−47716A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228953(P2004−228953)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】