説明

画像形成装置

【課題】 帯電の際にオゾンや窒素酸化物の発生がなく、像担持体の長寿命化が図れ、高画質化を実現できて装置全体をコンパクトにする。
【解決手段】 感光体1の感光層の外周面に、コンデンサの電極的役割を果たす電荷注入層の機能を有する表面層1dを形成し、その表面層1dに帯電装置2の磁気ブラシローラ21に形成される磁気ブラシを接触させて感光体1を注入帯電する。表面層1dは、水素を含有するダイヤモンド状カーボン構造もしくは非晶質カーボン構造である。それによって、低い電圧でも所望の帯電電位が得られながらオゾンや窒素酸化物の発生を抑えることができる。また、感光体1上の転写残トナーをクリーニングする機能も現像装置4に持たせることにより、装置全体をコンパクトにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、像担持体を帯電部材により帯電して、その帯電面に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置である複写機,プリンタ,ファクシミリ等では、像担持体の表面に静電潜像を形成するのに先立って、その像担持体を色々な方法で均一に帯電させている。
その帯電方法で主流となっているのは、コロナ放電を利用したものである。しかしながら、このコロナ放電によるものは放電時に多量のオゾンが発生すると共に、4〜10kV程度の高圧電源を必要とするという欠点があった。
【0003】
また、コロナ放電による帯電方法の場合には、窒素酸化物(以下NOxと称する)などの放電生成物も生成され、それが画像形成に悪影響を与えてしまうということもあった。
すなわち、帯電動作を開始させることにより放電が発生し、それによりNOxが形成されると、そのNOxが空気中の水分と反応して硝酸が生成されると共に、金属と反応して金属硝酸塩が生成される。
【0004】
その硝酸または硝酸塩が薄い膜になって像担持体の表面に形成されると、高湿環境下では画像が流れたような異常画像になる。これは硝酸や硝酸塩が吸湿することで低抵抗となり、像担持体の表面の静電潜像が壊れてしまうためである。
【0005】
そこで、近年ではコロナ放電による帯電器に代わる帯電装置として、帯電部材を感光体等の像担持体の表面に接触させた状態で帯電を行う接触帯電式の帯電装置が実用化されてきている。
この接触帯電装置は、導電性の部材でローラ状やブラシ状や、弾性ブレード状にそれぞれ形成した帯電部材を像担持体の表面に接触させ、その状態で帯電部材に電圧を印加することにより像担持体を帯電させるものであり、低オゾン化と低電力化が図れる(例えば特許文献1及び特許文献2等参照)。
【特許文献1】特開昭56−144453号公報
【特許文献2】特開平1−93762号公報
【0006】
その接触帯電装置における帯電部材としては、特に導電性ローラ(帯電ローラ)を用いるローラ帯電方式が、帯電の安定性という点から適している。
そのローラ帯電方式では、帯電部材を構成する導電性の弾性ローラ部分を像担持体の表面に加圧当接させ、その状態で帯電部材に電圧を印加することにより像担持体を帯電する。
【0007】
ところで、帯電装置により帯電された帯電面に静電潜像が形成される像担持体としては、暗所で静電潜像(潜像電荷)を保持するために、一般にその表面の体積抵抗率が、暗中にて1012Ω・cm以上の比較的高い抵抗率を有するものが用いられる。
従来の接触帯電装置を用いた画像形成装置でも、上述したような高抵抗の像担持体を用いることを前提としており、現在の技術解明状態では帯電装置の導電性部材と像担持体との微小ギャップの間で行われる放電現象によって、かかる高抵抗の像担持体が均一帯電されるものとされている。
【0008】
その根拠とするところは、像担持体と導電性部材との間でオゾンが発生することであり、図5に示すように帯電開始電圧が存在することである。
その図5に示した線図は、ローラ状やブラシ状に導電性部材で形成した帯電部材に印加する電圧をゼロから漸次上げていった場合に、像担持体の帯電電位がどのように変化するかを示したものであり、ゼロからEまでの間の電圧では像担持体がほとんど帯電されることがなく、印加電圧がEになると帯電電位が立ち上がるようになる。
【0009】
また、ローラ帯電方式に限らず接触式の帯電装置において、抵抗値の低い帯電部材を使用した場合には、ドラム上にキズやピンホールがあると帯電部材から過大なリーク電流が流れ込み、周辺の帯電不良やピンホールの拡大,帯電部材の通電破壊が生じたりする。
【0010】
それを防止するためには、帯電部材の抵抗値を1×104Ω 程度以上にする必要があるが、1×107Ω 以上にすると抵抗値が高過ぎて、今度は帯電に必要な電流を流すことができなくなる。
したがって、接触帯電部材の抵抗値は1×104〜1×107Ωの範囲でなければならない。つまり、電子写真に必要とされる像担持体表面電位Vdを得るためには、帯電ローラにはVd+E以上のDC電圧が必要となる。
【0011】
このようにして、DC電圧のみを接触帯電部材に印加して帯電を行う方法をDC帯電と称する。しかし、このDC帯電においては環境変動等によって接触帯電部材の抵抗値が変動したり、像担持体が削れることによって膜厚が変化すると帯電電位が立ち上がる電圧E(図5参照)が変動したりするため、像担持体の電位を所望の値にするのが難しかった。
このように、上述したいずれの帯電方法であっても、オゾンは少量ながら発生すると共に、帯電開始電圧(E)の分のロスもあって帯電ムラが生じやすいということがあった。
【0012】
そこで、このような帯電ムラを防いで帯電の均一を図るために、所望のVdに相当するDC電圧に、2×E以上のピーク間電圧を持つAC成分を重畳した電圧を接触帯電部材に印加するAC帯電方式が提案されている(例えば特許文献3参照)。
【特許文献3】特開昭63−149669号公報
【0013】
このAC帯電方式は、ACによる電位のならし効果を目的としたものであり、被帯電体(像担持体)の電位はAC電位のピークの中央であるVdに収束し、環境変動の如き外乱には影響されることがない。
しかしながら、このようなAC成分重畳の帯電方式による接触帯電装置であってもオゾンは発生する。
【0014】
そのオゾンの発生をできるだけ抑えるためには、像担持体に接触させる帯電部材に印加する電圧の値を下げ、像担持体に対して電荷を注入してその像担持体を帯電させるようにすればよい。
ところが、従来のように高抵抗の像担持体を用いた場合には、導電性部材からなる帯電部材に印加する電圧が低いと、像担持体上に所定の静電潜像を形成できる程度までに像担持体のVd(帯電電位)を高めることができないということがあった。
【0015】
その点について、図6を参照して説明する。
図6に示す帯電装置は、導電性の部材からなる帯電部材100を像担持体101に接触させた状態で、その帯電部材100に電圧を印加することにより像担持体101を帯電させる接触帯電方式の帯電装置の一例を示すものである。
帯電部材100は、ドラム状の像担持体101に接触幅Wをもって接触している。その像担持体101は、ドラム状に形成した導電性基体と、その表面に電荷発生層と電荷保持層(電荷輸送層)を順に積層した感光層とを有している。
【0016】
そして、その像担持体101の各諸元は次のとおりである。
像担持体の線速度 v=100mm/sec
導電性部材が像担持体に接触する幅 W=1mm
導電性部材に印加する電圧 V1=1000V
像担持体の表面の電荷保持層の静電容量 C=100PF/cm2
像担持体表面の電荷保持層の膜厚 T=30μm
像担持体表面の電荷保持層の体積抵抗率 R=1012Ω・cm
【0017】
この帯電装置で、帯電部材100に1000Vという比較的低い電圧を印加してて、上述のような仕様条件で像担持体を電荷注入方式で帯電させると、帯電部材100と像担持体101との間には、ほとんど放電は起こらないものと考えられる。したがって、オゾンの発生も抑えられる。
ところが、像担持体表面の電荷保持層の体積抵抗率Rが1012Ω・cmと高いと、像担持体の帯電電位は100V以下となってしまうため、このような電位では静電潜像を形成するためには不充分である。
【0018】
そうかといって、帯電部材100に高い電圧を印加したのでは、放電によってオゾンが発生してしまう。そのため、電荷注入方式により、像担持体の表面を実用電位である例えば300〜1000V程度にまで高めるのは難しかった。これは、上述した形式以外の感光層を有する像担持体の場合も同様である。
【0019】
一方、別の帯電方式として、像担持体へ電荷を直接注入する帯電方式が、特許文献4及び特許文献5に提案されている。
この帯電方式は、帯電ローラ,帯電ブラシ,帯電磁気ブラシ等の接触式の帯電部材に電圧を印加し、表面に注入層を設けた像担持体上のフロート電極に電荷を注入して接触注入帯電を行う方法である。
【特許文献4】特開平6−3921号公報
【特許文献5】欧州特許出願公開第0615177号明細書
【0020】
具体的には、特許文献4には、電荷注入層として導電フィラーであるアンチモンドープで導電化したSnO2 粒子をアクリル樹脂に分散したものを像担持体表面に塗工して用いることが可能であるとの記述がある。
また、帯電装置に使用する帯電磁気ブラシは、導電性磁性粒子をマグネットロールで磁気拘束してブラシ状に形成した帯電部材であり、そのブラシ部分を像担持体に当接させた状態で帯電を行うものである。
このような帯電方式では、放電現象を用いないため、帯電に必要とされる電圧は所望する像担持体表面電位分のみのDC電圧であり、オゾンの発生もない。
【0021】
ところで、電子写真方式を用いた画像形成装置では、一般には光導電性物質を利用した像担持体である感光体上に種々の画像書き込み手段により静電潜像を形成し、その静電潜像をトナーで現像することによりトナー像(可視像)とし、そのトナー像を必要に応じて紙等の転写材に転写した後、そのトナー像を熱や圧力等により転写材上に定着させて複写物や印刷物を得るようにしている。
そして、その際に転写材に転写されずに感光体上に残った転写残トナーは、クリーニング工程でクリーニング装置により感光体上から除去している。
【0022】
そのクリーニング工程は、ブレード状やファーブラシ状やローラ状のクリーニング部材等を用いているのが一般的であり、それらのクリーニング部材により感光体上の転写残トナーを力学的に掻き落とすか、堰止めてそれを廃トナー容器に捕集したりしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、上述したように電荷注入層として導電フィラーであるアンチモンドープで導電化したSnO2 粒子をアクリル樹脂に分散したものを像担持体表面に塗工して用いる感光体の場合には、その感光体上に画像の転写後に残った転写残トナーをクリーニング工程でクリーニング部材を摺擦することにより掻き落としてクリーニングすると、その際にSnO2 粒子の電荷注入粒子が剥離しやすいという問題点があった。
【0024】
また、アクリル樹脂内に約70%程度バインドされた電荷注入層では電荷注入層の結束が弱いため、クリーニングブレード等のクリーニング部材により感光体表面を僅かずつ削り取るものでは、電荷注入層そのものを削ってしまうということがあった。
その電荷注入層の厚みが薄くなると、そのまま帯電電位の低下に繋がってしまうため、感光体の寿命が短くなってしまうということがあった。
【0025】
そこで、アクリル樹脂分を多くすれば電荷注入層の強度は増すが、そのようにすればアクリル樹脂分を多くした分だけ電荷の注入が弱くなってしまうため、必要な帯電電位を得ることができなくなる。
反対にSnO2 粒子を多くすれば、もろくなる現象が発生する。
【0026】
そのため、このようなクリーニング部材を感光体の表面に押し当てて感光体の表面をクリーニングする画像形成装置では、感光体が摩耗して短命化してしまうという問題点があった。
そこで、感光体の光導電層の厚さを厚くすることも考えられる。しかしながら、それを厚くすれば像露光時に生じる光キャリアの拡散が多くなり、解像力が低下してしまう。そのため、像担持体の長寿命化と高画質化を両立させることは難しかった。
【0027】
また、画像形成装置全体で考えると、転写残トナーをクリーニングする専用のクリーニング装置を具備すると、その分だけ装置が大きくなってしまうので、装置のコンパクト化を目指すときにはそれが障害になってしまうということがあった。
さらに、近年ではエコロジーの観点より、トナーの有効活用という意味で廃トナーが発生しないシステムの開発が望まれている。
【0028】
この発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、帯電の際にオゾンや窒素酸化物の発生がなく、像担持体の長寿命化が図れると共に高画質化を実現することができ、装置全体のコンパクト化を可能にすることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
この発明は上記の目的を達成するため、画像を形成する像担持体と、その像担持体に帯電部材を接触させた状態でその帯電部材に電圧を印加することにより像担持体を注入帯電する帯電装置と、像担持体上の転写残トナーをクリーニングする機能も備えた現像装置とを備え、像担持体の感光層の外周面に表面保護層を設けて画像形成装置を構成したものである。
【0030】
そして、その表面保護層には、電荷注入層を設けるとよい。
また、上記現像装置は、像担持体上に形成された静電潜像をトナーにより現像すると同時にその像担持体上の転写残トナーをクリーニングする装置であるようにするとよい。
さらに、上記表面保護層は、水素を含有するダイヤモンド炭素構造もしくは非晶質カーボン構造にするとよい。
また、上記表面保護層の体積抵抗率は、上記電荷注入層の体積抵抗率と同等もしくは同等以下であるようにすると効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はこの発明による画像形成装置の作像部付近を示す概略構成図、図2は同じくその作像部に設けられているドラム状の感光体と帯電装置を示す概略図である。
図1に作像部を示した画像形成装置は、電子写真プロセスを利用して画像を被転写材(転写紙)7に転写する転写式のプリンタあるいは複写機の例を示している。
【0032】
この画像形成装置は、作像部に画像を形成する像担持体であるドラム状の感光体1を備えている。
その感光体1の回りには、磁気ブラシを感光体1に接触させた状態で電圧を印加することにより感光体1を注入帯電する磁気ブラシ帯電器である帯電装置2と、露光装置3と、感光体1上の転写残トナーをクリーニングする機能を備えた現像装置4と、転写ローラ51を備えた転写装置5等がそれぞれ配設されている。
なお、図1で8はトナーカートリッジであり、9は定着装置である。
【0033】
感光体1は、例えば直径が30mmで、長さが340mmに形成された電荷注入帯電性・負極性・回転ドラム型の電子写真OPC感光体であり、それが矢示A方向に125mm/secのプロセススピード(周速度)で回転駆動されるようになっている。
【0034】
帯電装置2は、図2に示すように接触帯電部材である矢示B方向に125mm/secの周速度で回転する磁気ブラシローラ21を備えており、その表面に形成した磁気ブラシ部を図示のように感光体1の周面に当接させた状態で、帯電バイアス印加電源22から所定の帯電バイアスが印加されることにより感光体1の周面を表面電位−960Vに一様に電荷注入帯電処理する。
【0035】
図1に示した露光装置3は、感光体1の帯電処理された周面に対し目的とする画像情報に対応する露光La、すなわちレーザビーム走査露光、あるいは原稿画像のスリット露光等を行うことにより、感光体1の周面に露光画像情報に対応した静電潜像を形成する。
【0036】
現像装置4は、露光装置3により感光体1の周面に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像(可視像)とする。
その現像装置4は、この実施の形態では2成分接触現像方式であり、現像剤担持部材として機能して回転する現像スリーブ43を、その周面を感光体1から0.6mm 離間させて配設している。その現像スリーブ43には、電源(DC電源)42から−600Vの現像バイアスが印加されるようになっている。
なお、この現像装置4は、トナーにマイナストナーを用いる。
【0037】
転写装置5は、前述したように回転自在な転写ローラ51を備えており、その転写ローラ51に電源52からトナーと逆極性の所定の転写バイアスが、感光体1と転写ローラ51とが被転写材7を挾持搬送している間に印加される。
その転写ローラ51としては、例えば抵抗が5×107 Ωで、ローラの直径が16mmの導電性スポンジローラを使用し、そこに15μAの定電流制御によってDC電圧を印加して、被転写材7の裏面側をトナーと逆極性に帯電することにより、感光体1上のトナー像を被転写材7の表面(図1で上側の面)に静電転写を行なう。
【0038】
この画像形成装置は、作像動作を開始させると感光体1が矢示A方向に回転し、その周面が帯電装置2により一様に帯電される。そして、その帯電面に、所定のタイミングで露光装置3から照射される露光Laにより書き込みが行われ、そこに静電潜像が形成される。
その潜像は、感光体1が矢示A方向に回転することにより現像装置4の位置まで移動されると、そこで現像ローラ41の現像スリーブ43によりトナーが付着されてトナー像(顕像)となる。
【0039】
一方、図示しない給紙装置から被転写材7が給紙され、それがレジストローラ対6で一旦停止されて、その被転写材7の先端と感光体1上の画像の先端とが一致する正確なタイミングで、感光体1と転写装置5の転写ローラ51との間の接触ニップ部へ搬送され、そこで感光体1と転写ローラ51とにより挾持されて、図1で左方へ搬送されていく。
その際、感光体1上のトナー像が被転写材7に転写される。
【0040】
その被転写材7は、感光体1から分離されて定着装置9へ搬送され、そこでトナー像が定着され、その後は装置本体の外部に設けられている排紙トレイ等に排出されるが、裏面にも画像を形成する両面画像形成モードが選択されているときには、図示しない再給紙手段により再び作像部に向けて再給紙される。
そして、その後は、感光体1上に残った転写残トナーが、クリーニング装置としても機能する現像装置4によりクリーニングされ、再び次の作像工程に移る。
【0041】
次に、感光体1について、図2を参照して詳しく説明する。
図2に一例を示す感光体1は、機能分離型の感光感光体であり、同図にはその構成を模式的に示している。
その感光体1は、導電性基体1aの上に複数の各層が積層された構成になっている。すなわち、導電性基体1aの上に電荷発生層1bが、その上に電荷輸送層(電荷保持層)1cが、さらにその上に表面保護層である表面層1dがそれぞれ積層されている。
そして、その電荷発生層1bと電荷輸送層1cとで感光層を構成している。なお、その感光層は、単層型であっても積層型であってもよい。
【0042】
この画像形成装置の特徴とするところは、上述したような構成の感光体1の表面層1dの体積抵抗率を1011Ω・cm以下とし、その感光体1の周面に静電潜像を形成するのに先立って、帯電装置2の磁気ブラシ部を回転する感光体1の表面層1dに接触させ、磁気ブラシローラ21に電圧を印加することにより感光体1の表面を均一に帯電させる点にある。
【0043】
このように、体積抵抗率の低い表面層1dを有する感光体1を用い、電圧が印加された磁気ブラシローラ21の磁気ブラシ部をその表面層1dに接触させることにより、磁気ブラシローラ21への印加電圧が低くても、感光体1の表面をそこに静電潜像を形成するのに必要な電位まで帯電させることができる。
その際、感光体1は主として電荷注入によって帯電されるが、その際に帯電装置2の磁気ブラシローラ21への印加電圧は低いので、帯電装置2と感光体1との間でほとんど放電は発生しない。したがって、オゾンの発生を効果的に抑えることができ、実質的にオゾンの発生を抑制することができる。
【0044】
感光体1は、上述したように導電性基体1aの上に複数の各層を積層した構成になっているが、その導電性基体1aとしては、導電体を使用するか、あるいは導電処理をした絶縁体を使用する。
例えば、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、金(Au)などの金属や、それらの合金を使用する。
【0045】
あるいは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ガラス等の絶縁性基体上にアルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)等の金属あるいはIn2O3、酸化スズ(SnO2)等の導電材料の薄膜を形成したものや、導電処理をした紙等も使用することができる。
【0046】
また、その導電性基体1aの形状は、特に制約はない。したがって、ドラム状の他に、板状やベルト状のものを使用するようにしてもよい。
なお、その導電性基体1a上に、感光層(電荷発生層1bと電荷輸送層1cとからなる)との接着性の向上及び、モアレのなどの防止を目的とした下引き層を設けるようにしてもよい。
【0047】
電荷発生層1bは、電荷発生物質を主成分とする層であり、必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。
その電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。電荷発生層を形成する方法には、例えば真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが挙げられる。
【0048】
前者の真空薄膜作製法には、真空蒸着法,グロ−放電重合法,イオンプレ−ティング法,スパッタリング法,反応性スパッタリング法,CVD法等が用いられ、そのいずれの方法を用いても、上述した無機系材料や有機系材料を良好に形成することができる。
【0049】
また、後述のキャスティング法により電荷発生層を形成するには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共に、テトラヒドロフラン,シクロヘキサノン,ジオキサン,ジクロロエタン,ブタノン等の溶媒を用いてボ−ルミル,アトライタ,サンドミル等により分散し、その分散液を適度に希釈して塗布することにより形成することができる。
このようにして形成する電荷発生層1bの膜厚は、0.01〜5μm 程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0050】
電荷輸送層1cは、帯電電荷を保持させ、かつ露光により電荷発生層1bで発生分離した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させることを目的とする層である。したがって、帯電電荷を保持させる目的があることから、電気抵抗が高いことが要求される。
また、この電荷輸送層1cは、保持していた帯電電荷で高い表面電位を得るため、誘電率が小さく、且つ電荷移動性がよいことが要求される。
【0051】
電荷輸送層1cは、これらの要件を満足させるため、電荷輸送物質、及び必要に応じて用いられるバインダー樹脂より構成される。
すなわち、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、それを形成しようとする場所に塗布して乾燥させることにより形成する。
また、必要に応じて上述した電荷輸送物質やバインダー樹脂以外に、可塑剤,酸化防止剤,レベリング剤等を適量添加したりする。
【0052】
電荷輸送物質としては、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。電荷輸送層の膜厚は5〜100μm程度が適当である。
また、その電荷輸送層の中に、ゴム,プラスチック,油脂類などに用いられる他の酸化防止剤や可塑剤を添加していてもかまわない。あるいは、その電荷輸送層の中に、レベリング剤を添加するようにしてもよい。
【0053】
そのレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル,メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量はバインダー樹脂100重量部に対して0〜1重量部が適当である。
【0054】
なお、感光体1の感光層は、次に説明するように単層構成にしてもよい。
すなわち、感光体1の感光層をキャスティング法で単層感光層に形成する場合には、電荷発生物質と低分子ならびに高分子電荷輸送物質を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成する。
その電荷発生物質ならびに電荷輸送物質としては、積層型の感光層の説明の際に前述した各材料を用いることができる。
【0055】
また、必要に応じて可塑剤を添加するようにしてもよい。さらに、必要に応じて用いることのできるバインダー樹脂としては、先に電荷輸送層の説明の際に挙げたバインダー樹脂をそのまま用いる他に、電荷発生層の説明の際に挙げたバインダー樹脂を混合して用いるようにしてもよい。なお、単層感光体の膜厚は、5〜100μm程度が適当である。
そして、このようにして形成した感光層の上に、表面層(表面保護層)1dを更に形成する。
【0056】
その表面層1dは、例えば次のような材料で形成する。
すなわち、表面層1dは、複写機の場合には複写枚数50万枚程度の使用に耐え得る耐摩耗性及び機械的強度を併せ持つように、樹脂の中に抵抗制御剤を分散し塗布したもので形成する。あるいは、a−C、a−Si:Nなど気相製膜法で形成してもよい。
【0057】
次に、樹脂中に抵抗制御剤を分散させて表面層1dを形成する場合について説明する。
表面層1dのバインダー樹脂としては、可視光に対して実質上透明であって、電圧絶縁性,強度,接着性に優れたものが望ましい。
具体的には、例えばポリスチレン,MMA,n−BMA,ポリアミド、ポリエスタル,ポリウレタン,ポリカーボネート,ポリビニルホルマール,シリコーン樹脂,ポリビニルアセタール,ポリビニルブチラール,エチルセルロース,メラミン樹脂及びそれらの共重合体や混合物等を用いる。
【0058】
また、それらの樹脂の中に分散させる抵抗制御剤としては、例えば脂肪酸塩類,高級アルコール類,硫酸エステル類,脂肪酸アミン類,第4級アンモニウム塩類,アルキルピリジウム塩類,ポリオキシエチレンアルキルエーテル類,ポリオキシエチレンアルキルエステル類,ソルビタンアルキルエステル類,イミダゾリン誘導体等のアニオン系、カチオン系、又はノニオン系有機電解質が挙げられる。
【0059】
あるいは、金(Au),銀(Ag),銅(Cu),ニッケル(Ni),アルミニウム(Al)等の金属や、ZnO、TiO2 、SnO2 、In2O3 、Sb2O3 含有SnO2 、In2O3 含有SnO2 等の金属酸化物、さらにはMgF2、CaF2、BiF2、AlF2、SnF2、SnF4、TiF4等の金属フッ化物も挙げられる。
【0060】
さらにまた、その抵抗制御剤としては、テトラインプロピルチタネート,テトラノルマルブチルチタネート,チタンアセチルアセトネート,チタンラクテートエチルエステル等の有機チタン化合物及びそれらの混合物等も挙げられる。
なお、表面層1dの中には、接着性や平滑性等を向上させる目的で種々添加剤を加えるようにしてもよい。
【0061】
一方、気相製膜法で表面層1dを形成する場合には、膜を炭素や珪素を主成分とする気相製膜法で高硬度の膜を作製する。その膜は、炭素、珪素を含有するガスやターゲットを用いて、プラズマCVD法,グロー放電分解法,光CVD法、スパッタリング法等により、製膜する。
【0062】
なお、その膜には、抵抗や光透過率の制御を目的として、炭素,珪素以外のドーピング元素を添加していてもよい。特に、その製膜法は限定されるものではないが、表面層として良好な特性を有する膜を形成する方法として、プラズマCVD法でありながらスパッタ効果を伴わせつつ製膜させる方法(特開昭58−49609号公報に記載有り)等が知られている。
そのプラズマCVD法を利用した表面層の製膜法では、支持体を特に加熱する必要がなく、約150℃以下の低温で被膜を形成できるため、耐熱性の低い有機系感光層上に表面層を形成する際にも、何ら支障がないというメリットがある。
【0063】
なお、表面層1dの膜厚は10μm以下が好ましく、樹脂に抵抗制御剤を添加したものは強度の点から2〜6μmがより好ましい。また、a−c、a−Si;N等の膜強度の高いものは、膜厚を0.5〜2μmにすることが好ましい。
また、表面層1dの体積抵抗率は、前述したように1011Ω・cm以下に設定するが、その抵抗率が低すぎると、感光体1に形成される静電潜像が乱される恐れがあるので、この点について注意する必要がある。
【0064】
また、表面層1dは、水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造にしてもよい。
そして、その表面層1dは、好ましくはSP3軌道を有するダイアモンドと類似のC−C結合を有する方が望ましい。なお、この表面層1dは、SP2軌道を有するグラファイトと類似の構造を持つ膜でも構わないし、更に非晶質性のものであってもよい。
【0065】
その表面層1dの添加物元素は、窒素,フッ素,硼素,リン,塩素,臭素及び沃素が含有されていることが望ましい。また。その表面層1dの体積抵抗は、109〜1012Ω・cm であることが望ましい。
その表面層1dの膜厚は、0.5〜5μm であることが望ましい。また、その表面層1dは、ヌープ硬度が400kg/mm2 以上であることが望ましく、光透過率も露光される光の波長に対して、50%以上であることが望ましい。
【0066】
この表面層1dを作製するときには、炭化水素ガス(メタン、エタン、エチレン、アセチレン等)を主材料として、H2、アルゴン(Ar)等のキャリアガスを用いる。更に、添加物元素を供給するガスとしては、減圧下で気化できるもの、加熱することにより気化できるガスを使用する。
【0067】
例えば、窒素を供給するガスとしてNH3 、N2 等を用い、フッ素を供給するガスとしてC2F6、CH3F 等を用い、硼素を供給するガスとしてはB2H6等を用い、リンを供給するガスとしてはPH3 等を用い、塩素を供給するガスとしてはCH3Cl、CH2Cl2、CHCl3、CCl4等を用い、臭素を供給するガスとしてはCH3Br等を用い、沃素を供給するガスとしては、CH3I等を用いることができる。
【0068】
また、添加物元素を複数供給するガスとしては、NF3、BCl3、BBr、BF3、PF3、PCl3 等を用いる。上記のようなガスを用い、プラズマCVD法、グロー放電分解法、光CVD法などやグラファイト等をターゲットとしたスパッタリング法等により表面層1dを形成する。
特にその製膜法は限定されるものではないが、表面層1dとして良好な特性を有する炭素を主成分とする膜を形成する方法として、プラズマCVD法でありながらスパッタ効果を伴わせつつ製膜させる方法(特開昭58−49609号公報参照)等が知られている。
【0069】
プラズマCVD法を利用した炭素を主成分とする表面層の製膜法では、支持体を特に加熱する必要がなく、約150℃以下の低温で被膜を形成できるため、耐熱性の低い有機系感光層上に保護層を形成する際にも、何ら支障がないというメリットがある。
【0070】
このように、感光体1の最表層には、電荷注入層の機能を有する表面層1dを形成する。その電荷注入層は、いわゆるコンデンサの電極的役割を果たすものであり、その電極に対して導電性の接触帯電部材である帯電装置2の磁気ブラシローラ21に形成する磁気ブラシの部分を当接させ、そこに電圧を印加すると、感光体1の表面を電荷注入帯電することができる。
【0071】
したがって、このような電荷注入層を設けていない場合には、感光体1の表面には電極となりうるものがないので、十分な電荷注入ができない。
ところが、この感光体1のように、電荷注入層を感光層の表面に設けることにより、その電荷注入層の下側に位置する感光層面に均一なチャージシートを形成することができる。
【0072】
なお、電荷注入層は、帯電装置2により印加された電荷を速やかに感光層の表層に移動させ、均一なチャージシートを形成する特性が要求される。
その均ーなチャージシートを形成させるためには、電荷注入層及び接触式の帯電装置2の双方が均一な接触性を有すると共に、それらのニップ、接触抵抗及び各部材の体積固有抵抗等が適正なものである必要がある。
【0073】
次に、帯電装置2について詳しく説明する。
図2に示した磁気ブラシ式の帯電装置2は、磁気ブラシローラ(非磁性スリーブ)21と、その磁気ブラシローラ21に内包したマグネットロール23と、磁気ブラシローラ21上に磁気拘束された帯電キャリア24とによって構成されている。
【0074】
この帯電装置2の磁気ブラシの磁力の強さは、磁気ブラシローラ21の表面において400〜1500ガウス、好ましくは600〜1300ガウスであり、そうすることにより、磁気ブラシ内から磁性トナーの良好な吐き出しができる。
また、この帯電装置2に用いるマグネットロール23の磁極は、2極以上であることが好ましい。
【0075】
この帯電装置2のマグネットロール23の磁極の位置は、好ましくは帯電装置2の中心(磁気ブラシローラ21の中心)と感光体1の中心(ドラム中心)を結ぶ位置から、帯電装置2の中心から感光体1の回転方向に20°までの範囲にする。
そして、そのマグネットロール23の磁極の位置は、より好ましくは帯電装置2の中心(磁気ブラシローラ21の中心)と感光体1の中心(ドラム中心)を結ぶ位置から、帯電装置2の中心から感光体ドラムの回転方向の10°までの範囲に磁極のピークが向くように設定するのがよい。そうすることにより、磁気ブラシ内部からの磁性トナーの良好な吐き出しができる。
【0076】
帯電装置2は、感光体1に磁気ブラシローラ21と感光体1の表面との距離が0.6mm になるよう、磁気ブラシローラ21の長手方向の端部を面板部材(非図示)によって支持し、マグネットロール23を固定したまま磁気ブラシローラ21を感光体1と同方向(図2において矢示B方向)に回転させるようにしている。
そして、帯電時には磁気ブラシローラ21に、帯電バイアス印加電源22から所望の電圧を印加することで電荷注入層として機能する表面層1dに電荷を注入し、感光体1の表面を最終的に磁気ブラシと同電位に帯電(充電)する。
【0077】
帯電キャリア24は、フェライト,マグネタイトの如き導電性金属の単一、あるいは混晶の種々の材料が使用可能である。そして、一度焼結した帯電キャリアを還元又は酸化処理し、後述する抵抗値に調節したものである。
帯電キャリア24は、導電性及び磁性を有する微粒子をバインダーポリマーと混練し、粒状に成型することによって得られた導電性及び磁性を有する微粒子がバインダーポリマー中に分散された粒子や、上記の導電性磁性粒子を更に樹脂でコートする構成にしてもよい。
そのときは、コートした樹脂層の抵抗をカーボンの如き導電剤の含有量を調整することで、帯電キャリア24の全体の抵抗調整を行う。
【0078】
なお、この帯電装置2では、帯電キャリア24の平均粒径は、1〜100μm(好ましくは5〜50μm)のものが使用可能であり、その粒径のものは帯電性と粒子の保持の両立という点て優れている。
また、その帯電キャリア24の体積抵抗値は、1010Ωcm以下のものを使用するが、好ましくは、106〜109Ωcmのものを使用するとよい。
【0079】
すなわち、帯電キャリア24の体積抵抗値が1010Ωcmを超えると、帯電に必要な電流を流すことができなくなるため、帯電不良が生じて画質が劣化する。
また、この実施の形態では、帯電キャリア24の体積抵抗値は、底面積228mm2 の筒状の容器に帯電キャリア24を2g充填して加圧し、上下から100Vの電圧を印加して、この系に流れる電流から算出して正規化したもので定義した。
なお、磁気ブラシの構成は、磁気ブラシローラ21を用いずに、直接マグネットロール23に帯電キャリア24を担持させて帯電を行うようにすることも可能である。
【0080】
次に、感光体1の電荷輸送層1c(電荷保持層)の帯電電位を計算により求める数式について説明する。
各諸元を次のように定めると、図2に示すように、帯電装置2の感光体1に対する接触部の接触幅(ニップ幅)Wの部分における感光体1の電荷輸送層1cの電圧e2 は数1のようになる。
なお、図3はその等価回路を示しており、Sはスイッチである。
【0081】
v :感光体1の表面の線速度
V1:帯電装置2への印加電圧
T1:表面層1dの厚さ
C1:表面層1dの静電容量(比誘電率ε1)
G1:表面層1dの導電率(=W/(R・T1))
C2:電荷輸送層1c(電荷保持層)の静電容量
e2:電荷輸送層1cの電圧
t :帯電装置2の接触時間(最大W/v)
R :表面層1dの体積抵抗率
【0082】
【数1】

【0083】
ここで、帯電装置2から離れた感光体1の部分においては、図3に示した等価回路における抵抗G1 、すなわち表面層1dを通過した電荷のみが、電荷輸送層1cの電位に寄与するものと考えられるので、その電荷量をQとすると、電荷量Qは数2で求められる。
また、その帯電電位をe′2とすると、e′2は数3で求められる。
【0084】
【数2】

【数3】

【0085】
ところで、感光体1の実用的な電位は−300から−1000V程度である。したがって、帯電電位e′2を、そのような電位にするためには、各諸元数値を表1の例1又は例2のように定めればよい。
【0086】
【表1】

【0087】
すなわち、例1に示したように、感光体1の表面層1dの体積抵抗率Rを10
10Ωcmにすれば、帯電装置2を介しての電荷注入だけで、感光体1を帯電装置2への印加電圧(−1000V)とほぼ同等の−960Vに帯電させることができ、それによって感光体1の表面に所望の静電潜像を確実に形成することができる。
【0088】
また、例2では、表面層1dの体積抵抗率Rを1011Ωcmにした結果、感光体1の帯電電位は−270Vとなり、実用電位の下限値である−300Vには若干不足するが、その不足分の帯電電位については帯電装置2の感光体1に対する接触部の接触幅Wを広げることで補うことができるので、充分に使用可能である。
【0089】
いずれにしても、1011Ωcm以下、好ましくは1010Ωcm以下の表面層1dを有する感光体を用いることにより、帯電装置2に比較的低い電圧、例えば−1000V(表1)程度の電圧を印加するだけで、感光体を必要とされる電位にまで帯電させることができる。
したがって、従来のコロナ放電による帯電方法のように、大量のオゾンが発生するようなこともないし、高圧電源も必要としない。
【0090】
また、従来は高抵抗の感光体を使用して行う接触式の帯電方法であっても、少量のオゾンが発生した。さらに、帯電ムラを無くすために帯電装置に交流電圧を印加したりしていたが、この実施の形態による画像形成装置の帯電装置2によれば、その必要がない。
【0091】
すなわち、この実施の形態による帯電装置2では、図2に示した磁気ブラシローラ21に印加する電圧の値が低いので、ほとんど又は全く放電は発生せず、それによってオゾンの発生を一層効果的に抑えることができる。そして、帯電装置2に交流電圧を印加する必要もない。
【0092】
ところで、帯電装置により帯電を行う際に、磁気拘束力が強い磁性トナーを使用した場合には、磁性トナーが図2に示した磁気ブラシローラ21にその内側に設けられているマグネットロール23の磁力により付着して、磁気ブラシローラ21の抵抗を上昇させてしまうため帯電不良になりやすい。
【0093】
これは、磁性トナーが帯電に用いる帯電キャリア24に混入すると帯電キャリア24間や、帯電キャリア24と感光体1との間の導電経路を遮断してしまうことによるものである。
さらに、帯電キャリア24間に介在する磁性トナーが多い場合には、磁性トナーは帯電キャリア24に融着して帯電性を著しく劣化させるので、長期に亘る帯電は困難になる。
【0094】
しかしながら、この実施の形態では、非磁性トナーにマグネタイト等の磁性部材を重量比で30部以下を混入させた弱磁性トナーを使用するようにしている。
このように、低い磁気拘束力を有する弱磁性トナーを用いると、クリーナーレス構成において多くの転写残の磁性トナーが磁気ブラシローラ21に混入する場合であっても、その磁性トナーを速やかに回収して磁気ブラシローラ21の外部に吐き出すことができる。
【0095】
したがって、磁気ブラシローラ21の部分に存在する磁性トナーを制限することができるため、磁気ブラシローラ21の特性の低下を防ぐことができる。
それにより、感光体を最適な状態に帯電して良好な画像を得ることができる。
また、画像形成を長期に亘って続けた場合、ある適程の量のトナーが磁気ブラシローラ21に混入し、帯電装置2の抵抗も上昇しているので、感光体1上に存在するトナーが帯電を妨げるようになる。
したがって、その場合にはトナーに一定量の磁気拘束力を付与すれば、速やかなトナーの回収と磁気ブラシローラ21からの吐き出しができるので、長期に亘って優れた画像を得ることができる。
【0096】
次に、非磁性トナーを使用する場合について説明する。
帯電装置2は、磁気ブラシの部分に印加するバイアスは、磁気ブラシローラ21の電位に等しい負の直流電圧を印加する。それにより、転写残のトナーが帯電装置2に混入した場合でも、転写残のトナーを拡散し感光体1を帯電することが可能になる。
【0097】
感光体1上のトナー像を被転写材7に転写した後に、その感光体1の表面に残留した転写残トナーは、その多くが反転して正に帯電している。そして、それらの転写残トナーは、磁気ブラシローラ21の部分を通過すると、一様に正規の負に帯電される。
【0098】
したがって、現像装置4のバイアスを調節することにより、感光体1上の潜像をトナーにより現像してトナー像にするのと、そのトナー像を被転写材7に転写した後に感光体1上に残留する転写残トナーのクリーニングとを、現像装置4で同時に行うことができる。
【0099】
例えば、感光体1の表面の帯電電位が−960Vで、露光された部分の電位が−150Vであったとすると、現像スリーブ43には−600Vの直流電圧を印加することにより、ドラムの未露光部(非画像部)のトナーを現像スリーブ43上に回収することができると共に、露光部(静電潜像部)は現像スリーブ43上のトナーにより現像することができる。
【0100】
ここで、使用するトナーとしては、転写残トナーの量を少なくすることに対して有効な球形のトナーが適当である。すなわち、球形のトナーは流動性に優れており、トナー間あるいはトナーと感光体1との間の離型性に優れているため、転写効率が高いからである。
【0101】
一般的に、転写残トナーをクリーニングする専用のクリーニング装置を備えていないクリーナーレス画像形成装置の場合には、転写残トナーが現像装置まで戻る際に帯電装置を通過するため、クリーニングブレードの如きクリーニング手段を有するクリーナーの装着された画像形成装置に比較すると多くの転写残のトナーが帯電装置に混入されやすい。
【0102】
しかしながら、上述したような球形のトナーを用いるようにすれば転写効率が高くなるので、帯電装置に混入するトナーの量が少なくなる。したがって、帯電装置の感光体に接触させている接触帯電部材の劣化を起こしにくくすることができる。
【0103】
なお、図1及び図2を使用して説明した実施の形態では、感光体1上に形成したトナー像を転写する被転写材7が紙の如き記録材(最終転写材)であったが、この発明は、被転写材をベルト状又はパイプ状中間転写体とし、その中間転写体を感光体に対向配置して、その感光体上のトナー像を中間転写体に転写した後に、その中間転写体上のトナー像を最終転写材に再度転写する場合にも、同様に適用することができる。
その場合には、転写工程が複数になるので、より転写効率のよい球形のトナーを用いることが好ましい。
【0104】
次に、現像装置4について、詳しく説明する。
図1に示すように、現像装置4に設けられている現像剤を担持する現像ローラ41は、感光体1に近接するように配置されており、両者の対向部分に現像領域が形成されるようになっている。
現像ローラ41は、アルミニウム,真鍮,ステンレス,導電性樹脂などの非磁性体を円筒状に形成してなる現像スリーブ43を備えており、図示を省略している回転駆動機構により矢示C方向に回転されるようになっている。
【0105】
現像スリーブ43は、スリーブ径が16mmに形成されており、その現像スリーブ43の線速度は312.5mm/sec に設定されている。
なお、感光体1は、ドラム径が30mmに形成されており、そのドラムの線速度は125mm/secに設定されている。
したがって感光体1のドラム線速度に対する現像スリーブ43のスリーブ線速度比は2.5 になっている。
【0106】
また、感光体1と現像スリーブ43との間隔である現像ギャップは0.6mm に設定されている。なお、その現像ギャップは、現像剤粒径の30倍以下に設定するとよい。それよりも現像ギャップが広いと、画像濃度が十分でない画像になる。
また、上述したスリーブ線速比は1.1 以上であれば十分な画像濃度を得ることができる。
【0107】
現像スリーブ43内には、図4に示すようにその現像スリーブ43の外面上に現像剤を穂立ちさせるように磁界を形成する磁石ローラ体44が固定状態で設けられている。
そして、現像剤を構成するキャリアは、磁石ローラ体44から発せられる磁力線に沿うようにして現像スリーブ43上にチェーン状に穂立ちされると共に、そのチェーン状に穂立ちされたキャリアに対して帯電トナーが付着されて磁気ブラシが構成されるようになっている。
【0108】
その磁気ブラシは、現像スリーブ43の回転移動に伴って、その現像スリーブ43の回転方向(矢示C方向)に移送される。
磁石ローラ体44は、複数の磁極を備えている。すなわち、現像領域部分に現像剤を穂立ちさせる現像主磁極P1と、現像スリーブ43上に現像剤を汲み上げるための磁極P5と、現像スリーブ43上に現像剤を汲み上げられた現像剤を現像領域まで搬送させる磁極P6と、現像後の領域で現像剤を搬送させる磁極P2及びP3を備えている。
【0109】
これら各磁極P1,P5,P6,P2及びP3は、現像スリーブ43の半径方向に向けてそれぞれ配置されている。
この磁石ローラ体44は、6極の磁石によって構成されているが、現像剤の汲み上げ性や黒ベタ画像追従性を向上させるために、P3極からドクタブレード45の間に磁極を更に増やして8極以上で構成するようにしてもよい。
【0110】
なお、この実施の形態では、現像ローラ41上で85mT以上の磁力を有する磁石を用いているが、60mT以上の磁力を有すれば、キャリア付着などの異常画像の発生が無いことも既に確認している。
実際に現像に寄与する磁極は主磁力である磁極P1であり、その磁極P1により感光体1上の潜像をトナー像に現像する。
【0111】
現像領域に対して、現像剤の搬送方向(図4で反時計回り方向)上流側には、現像剤によるチェーン穂の穂高さ、すなわち現像剤の量を規制する前述したドクタブレード45が設置されている。
そして、このドクタブレード45と現像スリーブ43の外面との間隔であるドクタギャップを0.6mm に設定している。
【0112】
さらに、現像ローラ41の後方には、図1に示したように現像ケーシング46内の現像剤を撹拌しながらその現像剤を現像ローラ41側に汲み上げる前スクリュウ47が設けられている。
また、現像ケーシング46内には、その長手方向の前後に開口部を持つ仕切り板48を境にして、後スクリュ49も設けられている。
【0113】
さらに、現像ケーシング46の後端部には、新規トナーを蓄えたトナーカートリッジ8が着脱自在に装着されている。そのトナーカートリッジ8により供給されるトナーは後スクリュ49に供給され、それが後スクリュ49の回転により、図1で奥側に搬送され、現像剤と混合撹拌される。
【0114】
その混合撹拌された現像剤は、仕切り板48の開口部より前スクリュ47に供給される。さらに、その前スクリュに47に供給された現像剤は、前スクリュ47の回転により図1で手前側に搬送される。
このとき、現像ローラ41に磁界によって現像剤が供給され、その現像剤が現像スリーブ43上で搬送される。
【0115】
すなわち、現像ローラ41に、現像ケーシング46内に蓄えられた現像剤が撹拌・帯電された上で磁極P5(図4)により汲み上げられる。その現像ローラ41の現像スリーブ43上に汲み上げられた現像剤は、磁極P6により現像領域まで搬送され、現像主極P1によって現像領域部分に現像剤が穂立ちされる。
【0116】
そして、残った現像剤は、図1で手前側に搬送され、仕切り板48の開口部より後スクリュ49に供給され循環する。
この現像装置4では、現像を行うことにより現像剤の濃度が低下したときにはトナーを供給しなければならないが、その際にはトナー濃度センサ81が現像ケーシング46内のトナー濃度を検知し、そのトナー濃度センサ81の出力値から規定トナー濃度値を割る値になったと判断したときに、トナーカートリッジ8からトナーを現像ケーシング46内に連続もしくは断続的に供給し、その現像ケーシング46内の現像剤のトナー濃度を既定値にまで上昇させる。
【0117】
次に、トナー像の転写後に感光体1上に残った転写残トナーの回収について説明する。
図1に作像部を示した画像形成装置は、クリーナレス(転写残トナー回収用の専用のクリーニング装置を持たない)の画像形成装置であり、感光体1から被転写材7へトナー像を転写した後に感光体1上に残留した転写残トナーは、感光体1の矢示A方向への回転により現像装置4まで移動し、いわゆる現像同時クリーニング作用により現像装置4に回収される。
また、帯電装置2から吐き出され、極性制御されたトナー(負の帯電)も、感光体1の回転により現像装置4に搬送されて回収される。
【0118】
すなわち、図1示した画像形成装置では、2成分接触式の現像装置4を用いているため、感光体1には現像スリーブ43に形成されている磁気ブラシの部分が接触していて、その間に現像バイアスが印加されている。
そして、上述した感光体1上の転写残トナー及び帯電装置2から吐き出されたトナーは、それが感光体1の回転により現像ニップ(感光体1と磁気ブラシとの接触部)に到達すると、現像スリーブ43上に形成されている磁気ブラシによって掻き取られて現像装置4内に回収される。
その際に、現像装置4は、同時に現像も行うため、感光体1上の静電潜像はトナーにより現像される。
【0119】
このように、この画像形成装置はクリーナレスであり、専用のクリーニング装置を持たないので、その分だけ画像形成装置全体を小型化できると共に、低コストにできる。
また、通常の転写残トナーを回収するクリーニング装置のように、クリーニングブレードを感光体1の表面に摺接させないので、感光体1の表面削れによる感光体の劣化も防止できる。
【0120】
なお、このようなクリーナレスの画像形成装置であっても、実験によれば、クリーニング装置を有する装置と同一の印加帯電バイアスを接触帯電部材(磁気ブラシローラ21)に印加しても、帯電不良による帯電ムラや画像ムラを生じることがなかった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
以上説明したように、この発明によれば、次に記載する効果を奏する。
請求項1の画像形成装置によれば、像担持体に帯電部材を接触させた状態でその像担持体を電荷注入によって帯電するので、低電力で均一な帯電ができると共に、コロナ放電による帯電の場合に比べてオゾンや窒素酸化物の発生を抑えることができる。
したがって、オゾンの発生に伴う像担持体の感光層破壊による不均一帯電を防止することができると共に、像担持体上の窒素酸化物による画像低下を抑えることができるため、高品位の画像を経時に亘って持続することができる。
【0122】
さらに、転写工程の後に像担持体上に残留したトナーを現像装置で回収するので、専用のクリーニング装置を設ける場合に比べて装置全体を小型化することができると共に、コストの低減も図れる。
また、像担持体の感光層の外周面に表面保護層を設けているので、像担持体の表面の削れを防止できるため、長期に亘って安定した帯電ができ、それにより安定した画像形成ができる。
【0123】
請求項2の画像形成装置によれば、像担持体の表面保護層に電荷注入層を設けるので、その電荷注入層の下に位置する感光層に均一なチャージシートを形成することができる。したがって、安定した帯電電位が得られ、それにより安定した画像が得られる。
【0124】
請求項3及び5の画像形成装置によれば、現像装置は像担持体上に形成された静電潜像をトナーにより現像すると同時にその像担持体上の転写残トナーをクリーニングして回収するので、その現像動作と転写残トナーのクリーニング動作とを異なるタイミングで行う場合に比べて作像工程の時間短縮ができる。したがって、単位時間あたりの作像枚数の増加が図れる。
【0125】
請求項4の画像形成装置によれば、像担持体の表面保護層を、水素を含有するダイヤモンド炭素構造もしくは非晶質カーボン構造にすることによって、像担持体の表面の耐摩耗性及び画像特性が向上すると共に、良好な注入帯電が可能になる。
【0126】
請求項6の画像形成装置によれば、像担持体の表面保護層の体積抵抗率を、像担持体の電荷注入層の体積抵抗率と同等もしくは同等以下にするので、上記表面保護層の耐摩耗性及び画像特性が向上すると共に、良好な注入帯電が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】この発明による画像形成装置の作像部付近を示す概略構成図である。
【図2】同じくその作像部に設けられているドラム状の感光体と帯電装置を示す概略図である。
【図3】図1の画像形成装置の帯電系の等価回路を示す電気回路図である。
【図4】図1の画像形成装置が有する現像装置に設けられている磁石ローラ体を説明するための概略図である。
【図5】帯電装置における帯電開始電圧を説明するための線図である。
【図6】従来の接触帯電方式の帯電装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0128】
1:感光体(像担持体) 1b:電荷発生層(感光層)
1c:電荷輸送層(感光層)
1d:表面層(表面保護層) 2:帯電装置
4:現像装置
21:磁気ブラシローラ(帯電部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成する像担持体と、該像担持体に帯電部材を接触させた状態でその帯電部材に電圧を印加することにより前記像担持体を注入帯電する帯電装置と、前記像担持体上の転写残トナーをクリーニングする機能も備えた現像装置とを備え、前記像担持体の感光層の外周面に表面保護層を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記表面保護層には、電荷注入層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像装置は、前記像担持体上に形成された静電潜像をトナーにより現像すると同時にその像担持体上の転写残トナーをクリーニングする装置であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記表面保護層は、水素を含有するダイヤモンド炭素構造もしくは非晶質カーボン構造であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像装置は、前記像担持体上に形成された静電潜像をトナーにより現像すると同時にその像担持体上の転写残トナーをクリーニングする装置であることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記表面保護層の体積抵抗率が、前記電荷注入層の体積抵抗率と同等もしくは同等以下であることを特徴とする請求項2又は5記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−79600(P2007−79600A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299979(P2006−299979)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【分割の表示】特願平11−237425の分割
【原出願日】平成11年8月24日(1999.8.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】