説明

画像形成装置

【課題】像保持体表面を画像形成に適した状態に良好に維持することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光体ドラム11と、感光体ドラム11の表面を帯電させる帯電ロール12と、取得された画像情報に応じて静電潜像を形成するレーザ露光装置13と、静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置60と、トナー像を被転写体に転写する一次転写ロール14と、転写後の感光体ドラム11表面を、繊維布によって表面層が形成されたクリーニングロール72によりクリーニングするクリーニング装置70と、画像情報が、主走査方向の特定部位においてトナー消費が予め設定された量に満たない所定条件の連続する画像情報である場合に、帯電ロール12の帯電バイアスと現像装置60の現像バイアスとの差(Vcln)を増大させるように制御する機構制御部51と、を備えることを特徴とする画像形成装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子写真方式を利用した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送される記録材に画像を定着させる際に用いられる画像形成装置や、このような画像形成装置に用いられるクリーニング装置としては、従来から多くの提案がなされている。
公報記載の従来技術として、像担持体表面層より硬度が略同一もしくは大なる研磨材微粒子を含有させたトナーを用い、像担持体上の転写位置より回転方向下流側に、転写位置での残留トナーを清掃するクリーニング手段と、クリーニング手段の回転方向上流側に残留トナーを付着した状態で像担持体表面に摺擦させるクリーニング回転体と、を設けた画像形成装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−116592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的とするところは、あえてカブリのトナーを像保持体表面に供給することにより、クリーニングロールのクリーニング性能を維持し、ひいては像保持体表面を画像形成に適した状態に良好に維持することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明の画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、取得された画像情報に応じて、帯電手段により帯電した像保持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、被転写体にトナー像が転写された後の像保持体表面を、繊維布によって表面層が形成されたクリーニングロールによりクリーニングするクリーニング手段と、画像情報が、主走査方向の特定部位においてトナー消費が予め設定された量に満たない所定条件の連続する画像情報である場合に、帯電手段の帯電バイアスと現像手段の現像バイアスとの差(Vcln)を増大させるように制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0006】
ここで、制御手段は、特定部位における画像密度と連続頁数とによって予め定められた条件を所定条件として用いることを特徴とすることができる。また、制御手段は、メモリに予め格納されている所定条件を用いて画像形成前または画像形成途中に、主走査方向の特定部位においてトナー消費が予め設定された量に満たない画像であることを判断することを特徴とすることができる。更に、制御手段は、現像バイアスを低下させることによりVclnを増大させることを特徴とすることができる。また更に、クリーニング手段は、クリーニングロールによるクリーニングの前に像担持体上の残留トナーを帯電する帯電器を備えたことを特徴とすることができる。
【0007】
また、本発明の画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、取得された画像情報に応じて、帯電手段により帯電した像保持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、被転写体にトナー像が転写された後の像保持体表面を、繊維布によって表面層が形成されたクリーニングロールによりクリーニングするクリーニング手段と、画像情報が、主走査方向の特定部位においてトナー消費が予め設定された量に満たない所定条件の連続する画像情報である場合に、現像手段に像保持体上へ正帯電したトナーを供給させるように制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0008】
ここで、制御手段は、特定部位における画像密度と連続頁数とによって予め定められた条件を所定条件として用いることを特徴とすることができる。また、制御手段は、メモリに予め格納されている所定条件を用いて画像形成前または画像形成途中に、主走査方向の特定部位においてトナー消費が予め設定された量に満たない画像であることを判断することを特徴とすることができる。更に、制御手段は、現像バイアスを低下させることにより正帯電したトナーを像保持体上に供給することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1によれば、クリーニングロールのクリーニング性能を維持し、ひいては像保持体表面を画像形成に適した状態に良好に維持することが可能な画像形成装置を提供することができる。
本発明の請求項2によれば、本発明の構成を有しない場合に比して、カブリのトナー量に影響するトナー消費量に関する情報をより容易に取得することができる。
本発明の請求項3によれば、トナー消費量に基づくVclnの制御をメモリに予め展開されている条件との対比において自動的に実行することができる。
本発明の請求項4によれば、本発明の構成を有しない場合に比して、画像形成装置の他の構成機構への影響が少ない状態でVclnの制御を実行することができる。
本発明の請求項5によれば、本発明の構成を有しない場合に比して、クリーニングロールのトナー保持力を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の請求項6によれば、クリーニングロールのクリーニング性能を維持し、ひいては像保持体表面を画像形成に適した状態に良好に維持することが可能な画像形成装置を提供することができる。
本発明の請求項7によれば、本発明の構成を有しない場合に比して、カブリのトナー量に影響するトナー消費量に関する情報をより容易に取得することができる。
本発明の請求項8によれば、トナー消費量に基づくVclnの制御をメモリに予め展開されている条件との対比において自動的に実行することができる。
本発明の請求項9によれば、本発明の構成を有しない場合に比して、画像形成装置の他の構成機構への影響が少ない状態でVclnの制御を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態を適用した画像形成装置1のブロック構成図である。なお、本実施の形態においては、中間転写ベルトを備える構成を有する画像形成装置1を例示するが、感光体ドラムから用紙Pに直接トナー像を転写する構成を有する画像形成装置を形成することも可能である。さらに、感光体ドラムを備える画像形成部が中間転写ベルトに臨んで複数配設され、それら画像形成部で異なる色(イエロー,マゼンタ,シアン,黒)のトナーで画像形成を行って全体としてカラーの画像を形成するいわゆるタンデム式のカラー画像形成装置を形成することも可能である。
【0012】
画像形成装置1は、表面に感光体層を有する像担持体としての感光体ドラム11と、感光体ドラム11上に形成されたトナー像が一次転写される中間転写ベルト20とを備えている。また、画像形成装置1は、中間転写ベルト20上に転写されたトナー像を被転写体としての用紙P(記録材)に転写させる二次転写部30と、トナー像を用紙P上に定着させる定着装置40とを備えている。更に、画像形成装置1は、画像形成装置1の全ての機構制御と画像処理とを行う制御装置50を備えている。
【0013】
感光体ドラム11の周囲には、感光体ドラム11を一様に帯電させる帯電ロール12と、帯電した感光体ドラム11をレーザ光で走査して静電潜像を形成するレーザ露光装置13とが配設されている。また、感光体ドラム11の周囲には、形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像化する現像装置60と、感光体ドラム11上に形成されたトナー像を中間転写ベルト20に転写する一次転写ロール14とが配設されている。更に、感光体ドラム11の周囲には、転写後に感光体ドラム11上に残留したトナーを除去するクリーニング装置70が配設されている。
【0014】
ここで、帯電ロール12における帯電バイアスは制御装置50に制御されている。また、レーザ露光装置13は制御装置50に制御されている。レーザ露光装置13は、取得された画像情報に基づいてレーザダイオードからレーザビームを出射する。レーザ露光装置13は、感光体ドラム11の周面となっている感光体を、その回転軸方向に露光走査(主走査)して画像情報に応じた静電潜像を形成する。
【0015】
更に、現像装置60は、トナーとキャリアとを混合した現像剤を用いる二成分現像方式の現像装置である。現像装置60は、現像剤を収容するハウジング61と現像ロール62とを備えている。現像ロール62は、感光体ドラム11に対向させて設けられている。現像ロール62と感光体ドラム11との間に印加されるバイアス(現像バイアス)は、制御装置50によって制御されている。
なお、ハウジング61の内部には、二本のスクリューオーガ63が現像ロール62と平行に設けられている。ハウジング61内の現像剤は、このスクリューオーガ63により、現像ロール62に沿って攪拌されつつ搬送されてハウジング61内を循環するようになっている。また、現像装置60はトナー補給装置80と接続されており、トナー補給装置80から新しいトナーが供給されるようになっている。
【0016】
一次転写ロール14は、中間転写ベルト20を挟んで感光体ドラム11と対峙しており、一次転写部を形成している。一次転写ロール14には、トナーの帯電極性と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。感光体ドラム11上のトナー像は一次転写バイアスにより静電吸引されて、中間転写ベルト20に一次転写される。
【0017】
中間転写ベルト20は、複数の張架ロールによって所定の経路で周回可能に張架されている。また、中間転写ベルト20の所定位置に臨んで、二次転写ロール31が配設されている。この二次転写ロール31は中間転写ベルト20を挟んでその経路の外側に二次転写バックアップロール32と対峙しており、二次転写部30を形成している。二次転写バックアップロール32には二次転写バイアスが印加されるようになっている。また、二次転写ロール31は接地されている。中間転写ベルト20上に担持されたトナー像は二次転写バイアスにより静電吸引されて、図示しない搬送機構によって搬送供給される用紙P上に二次転写される。
【0018】
定着装置40は、加熱される定着ロール41に加圧ロール42が圧接配置されて構成されている。定着装置40は、トナー像が転写された用紙Pを定着ロール41と加圧ロール42の間に挟んで加熱・加圧して、用紙P上にトナー像を定着させる。
【0019】
クリーニング装置70は、ハウジング71内にクリーニングロール72を備えており、そのクリーニングロール72を感光体ドラム11に圧接させて構成されている。クリーニング装置70は、一次転写部で中間転写ベルト20にトナー像を転写した後も感光体ドラム11上に残存するトナーを、クリーニングロール72によって掻き落としてハウジング71内に回収する。
【0020】
図2は、クリーニングロール72の断面構造を示した図である。クリーニングロール72は、ハウジング71に回転自在に支持されたロールであって、シャフト721と、シャフト721の周囲に固着された弾性層722と、弾性層722の表面に被覆された繊維層(表面層)723とを備えている。
【0021】
シャフト721としては、例えば、鉄、SUS等の金属で形成された円柱ロールを用いることができる。また、弾性層722としては、例えば、カーボンブラック等の導電剤を配合した発泡ウレタンで形成されたスポンジ状の導電性円筒ロールを用いることができる。なお、弾性層722を形成する素材としては、発泡ウレタンの他、NBR、SBR、EPDM等のゴム材を適宜選択することができる。
更に、繊維層723としては、例えば、導電性繊維を編み込んで布状に形成したものや、導電性繊維を織り込んで布状に形成したもの、更には、導電性繊維からなる不織布等で形成したもの、繊維を導電性ポリマーに浸漬し均一に被覆させて導電化処理をしたもの、等が挙げられる。導電処理剤としては、例えば、アセチレン、ベンゼン、アニリン、フェニルアセチレン、ピロール、フラン、チオフェン、インドール及びこれらのモノマーの誘導体などを重合したものがある。
【0022】
ここで、上記導電性繊維としては、例えば、カーボンブラックを分散させたナイロン導電糸の割繊繊維(KBセイレン(株)製)を用いることができる。また、その繊維太さとしては、例えば、0.5デニール(248T/450F)とすることができる。
導電性繊維の繊維太さとしては、通常、2デニール(直径約15μm)以下、好ましくは1デニール(直径約11μm)以下である。
【0023】
また、上記不織布としては、例えば、乾式不織布、スポンジバンド、湿式不織布等を挙げることができる。なお、本実施の形態では、乾式不織布を用いている。
乾式不織布は、具体的には繊維長が数センチ程度の繊維を、カードやエアランダム機で薄いシートとし、必要に応じて何枚かのシートを重ねて形成されたものであり、繊維の接合は、高圧細水流で絡めることで形成される。
なお、繊維層723には、繊維層723の耐久性を補強する観点から、繊維層723を形成する導電性繊維に、例えば絶縁性の繊維を混合することもできる。
【0024】
そして、このようなクリーニングロール72は、以下のようにして感光体ドラム11の表面をクリーニングする。
即ち、クリーニング装置70が設置された位置に感光体ドラム11の表面が回転してくると、感光体ドラム11の表面に残留したトナーや、感光体ドラム11の表面に存する放電生成物等が、クリーニングロール72にて感光体ドラム11表面から除去される。かかる除去は、静電的な作用(クリーニングロール72と帯電トナーとの静電的な吸引力)または機械的な作用(クリーニングロール72の表面で帯電トナー等を掻き取る力)によりもたらされる。
【0025】
ここで、本実施の形態においてはクリーニングロール72が用いられ、かかるクリーニングロール72の有する繊維層723は極細の導電性繊維が用いられて大きな表面積を有するので、掻き取られたトナー等を多量に保持するように作用する。
また、本実施の形態においては表面に柔らかい導電性繊維からなる繊維層723が配設され、加えて、繊維層723の下層に弾性層722が形成されたクリーニングロール72が用いられているため、かかるクリーニングロール72は感光体ドラム11表面に対して低い摺擦力をもって作用する。つまり、弾性層722と繊維層723とを積層して構成することで、クリーニングロール72の弾性が自在に調整され、感光体ドラム11の表面特性に対応した低い摺擦力(感光体ドラム11の表面を削ってフィルミング物質を生じたり、傷つけたりして画像不良を生じさせる虞が少ない押圧力)をもって、感光体ドラム11表面に作用することができる。布状のものではなくブラシ状のものを用いた場合、感光体ドラム表面にスクラッチ傷等、局所的なダメージを発生させてしまう虞がある。
【0026】
更に、表面に柔らかい導電性繊維からなる繊維層723が配設されたクリーニングロール72は、感光体ドラム11の表面に面接触することができる。従って、クリーニングロール72の感光体ドラム11表面に対する摺擦力を低く設定しながら、感光体ドラム11の表面に対し、残留トナー、放電生成物、トナー外添剤、フィルミング物質等を良好に除去するように作用することができる。中でも、放電生成物の除去については、クリーニングロール72上にトナーが保持されている状態においてより良好に発現される。
【0027】
なお、上記の通り、クリーニングロール72による感光体ドラム11の表面のクリーニング作用は、静電的な作用によってもたらされるものであっても良い。この場合、クリーニングロール72に電圧を印加し、クリーニングロール72から感光体ドラム11に向かう電界を形成すればよい。
更に、クリーニングロール72にて感光体ドラム11上の残留トナーを除去する前に、クリーニング前帯電器(プレクリーニングコロトロン,PCC)等を用いてトナーの帯電極性をある程度均一化することが可能である。この場合、トナーの極性を一定の極性にある程度揃えることが可能となるため、クリーニングロール72に印加するバイアスを適切に設定することができ、トナーをより良好にクリーニングロール72上に保持させる作用が期待できる。
【0028】
これらのような、画像形成装置1に設けられた機構はいずれも、制御装置50により制御される。制御装置50は、機構制御部51と、画像制御部52と、画像メモリ53を備えている。
機構制御部51は、図示しないが制御情報を格納する記憶手段としてのメモリを備えており、このメモリに格納された制御情報に基づいて、帯電ロール12における帯電バイアスや、現像装置60における現像バイアスといった、画像形成のプロセスに関する各機構の制御を行うことができる。
【0029】
また、画像制御部52は、画像読取装置SCやコンピュータPC等から入力された(取得された)画像情報を、画像形成データに変換してレーザ露光装置13に出力する。図示構成では、画像読取装置SCによって読み取られたコピー画像情報はそのまま入力されて一枚毎の画像形成を行い、コンピュータPC等からのプリント画像情報は一旦画像メモリ53に格納した後、画像形成データに変換して連続して画像形成を行うようになっている。また、画像メモリ53に格納された画像情報からその画像密度と頁数の情報を読み取って、制御情報とする機能を有している。
【0030】
そして、画像形成装置1は、制御装置50によって制御されて、下記のごとく画像形成を行う。
即ち、制御装置50は、感光体ドラム11を回転させてその表面を帯電ロール12によって一様に帯電させ、帯電した感光体ドラム11の表面を画像制御部52が形成した画像形成データに基づいてレーザ露光装置13により露光し、静電潜像を形成する。次いで、制御装置50は、この静電潜像を現像装置60に現像させてトナー像を形成し、このトナー像を一次転写部において用紙Pに転写させる。更に、制御装置50は、用紙P上に転写されたトナー像を定着装置40によって定着させ、排出させる。制御装置50は、用紙Pにトナー像を転写した後も感光体ドラム11上に残留するトナーを、クリーニング装置70に除去させる。
【0031】
ここで、制御装置50は、画像情報等に応じて異なる制御(以下、画像対応制御と称する場合がある)を行う。
即ち、画像対応制御は、まず、取得された画像情報等に基づいて、主走査方向の特定部位におけるトナー消費が予め設定された量に満たない所定条件の画像形成が連続するか否かを判断する。「特定部位」については、例えば、画像情報を主走査方向にN等分し(Nは1以上の整数。)、等分された個々の領域を、それぞれ特定部位として捉えて制御の対象とすることができる。
そして、この特定部位においてそのような所定条件の画像形成が連続すると判断された場合には、帯電ロール12における帯電バイアスと、現像装置60における現像バイアスとの差(クリーニングフィールドバイアス,Vcln)を増大させるVcln増大制御を行う。一方、そのような場合に該当しないと判断された場合には、通常制御を行う。
【0032】
なお、「トナー消費が予め設定された量に満たない所定条件の画像形成が連続するか否か」を判断する方法は、画像情報の入力状況に応じて異なる。画像情報の入力形態には、例えば、パーソナルコンピュータPCから複数頁の画像出力情報が一括して入力される際のように、制御装置50が予め頁数情報を取得できる場合と、例えば、画像読取装置SCがフィーダによって送られる原稿を読み取って、その都度画像形成を行ういわゆるコピーを取る際のように、制御装置50が予め頁数情報を取得できない場合とがある。予め頁数情報を取得できる場合には、スケジュールを定めて画像対応制御を行うことができるが、予め頁数情報を取得できない場合にはその都度判断を行って、必要に応じて画像対応制御を行うこととなる。
以下、この画像対応制御について詳細に説明する。
【0033】
[実施の形態1]
図3は、予め頁数情報を取得できる場合の、画像対応制御の一例のフローチャートを示す図である。なお、各構成機構の符号については図1を参照する。また、実施の形態1においては、主走査方向の特定部位においてトナー消費が予め設定された量に満たない所定条件の連続する画像情報であるか否かを、当該特定部位における画像密度と連続頁数とによって予め定められた値との対比により判断する。
【0034】
まず、機構制御部51が、画像メモリ53に展開された画像情報から、画像制御部52を介して主走査方向における特定部位の画像密度と、頁数の情報とを読み込む(S101)。
次に、機構制御部51は、上記特定部位における画像密度が所定値以下であり、且つ、連続頁数が所定頁数以上であるか否かを判断する(S102)。当該判断は、機構制御部51に内蔵されているメモリに予め記憶された値との対比に基づいて行われる。
【0035】
機構制御部51が、主走査方向の特定部位における画像密度が所定値以下であり、且つ、連続頁数が所定頁数以上であると判断した場合、機構制御部51は、現像装置60における現像バイアスを上昇させてVclnを増大させる(S103)。
ここで、現像バイアスの設定値としては、通常、トナーの感光体ドラム11表面へのカブリ量が最小となるように設定され、また通常、画像形成前、又は画像形成途中に現像バイアスの設定値が他の値に変更されることもない。
実施の形態1においては、取得された画像情報に基づくこのようなVclnの増大制御により、通常のトナー極性(負極性)とは異なる極性のトナー(正帯電したトナー。以下、「逆極性トナー」と略記することがある)をカブリのトナーとして感光体ドラム11上に供給する。
かかるカブリのトナーは、クリーニング装置70のクリーニングロール72において掻き取られ、トナーを保持したクリーニングロール72は感光体ドラム11上の放電生成物を良好にクリーニング(S104)することができる。しかも、かかるカブリのトナーは、逆極性トナーであり、トナー像の転写工程において用紙P上に転写され難く、用紙P上に形成される画像の品質を損ない難い。
【0036】
つまり、クリーニングロール72による感光体ドラム11上の放電生成物を除去する効果は、上述の通り、クリーニングロール72にトナーがある程度保持されていない場合には良好に発揮されない場合がある。現像装置60により形成されたトナー像が一次転写部で転写された後に感光体ドラム11上に残存するトナーが、クリーニングロール72に供給されることとなる。そうすると、主走査方向の前面に亘る画像の形成がある程度継続して実行されることが、クリーニングロール72のクリーニング効果を維持する観点から好適である。しかし、場合によってはそのような主走査方向の前面に亘る画像の形成が継続して実行されない場合がある。画像読取装置SCやコンピュータPCを通じて取得された画像情報において、主走査方向の特定部位におけるトナー消費が少ない場合、残存トナー量も少なくなるため、該当部位におけるクリーニングロール72の感光体ドラム11表面に対するクリーニング効果が低減する虞がある。
実施の形態1において、機構制御部51は、そのような特定部位におけるトナー消費が少ない画像情報に基づく画像形成が一定の基準を超えて連続する場合に、逆極性トナーをカブリのトナーとして感光体ドラム11の表面に供給する制御を行うものである。このようなカブリのトナーの供給は、主走査方向の特定部位においてトナー消費の少ない画像形成が連続して実行される場合においても、クリーニングロール72のクリーニング効果を良好に維持させるように作用する。
【0037】
一方、機構制御部51が、上記特定部位における画像密度が所定値以上である、又は、連続頁数が所定頁数以下であると判断した場合、機構制御部51は、通常制御で画像形成を行う(S105)。
【0038】
なお、S102における判断の基準としては、例えば、取得された画像情報を主走査方向に10等分した個々の領域において、平均画像密度:3%、連続頁数:1000枚という基準を採用することができる。この判断基準の値は、予め定めて制御装置50のメモリ(機構制御部51に内臓)に格納しておくものである。なお、予め設定される連続頁数は、用紙Pのサイズによって適宜設定すればよい。
また、実施の形態1においてはVclnの増大制御を、現像バイアスを上昇させることにより行ったが、帯電バイアスを低減することにより行うことも可能である。
更に、S102における判断の基準としては、平均画像密度と連続頁数のそれぞれを独立した判断要素とするものに限るものではなく、平均画像密度に連続頁数を乗じて得られた積を判断基準としても良い。このような制御によれば、単一の基準値とした制御に比較して、画像密度に応じたきめ細かい制御が可能となると共に、より密度の低い画像形成が連続する際にはより早く対応することができる。
【0039】
[実施の形態2]
実施の形態1では、図3に示すように、予め頁数情報を取得できる場合の制御について例示した。実施の形態2では、予め頁数情報を取得できない場合にも実施の形態1と同様な課題に対応するために、通常制御で画像形成を開始した後に逐一、主走査方向の特定部位における画像密度情報と頁数情報を取得して必要な制御を行う。
尚、実施の形態1と同様な機能については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0040】
図4は、予め頁数情報を取得できない場合の、画像対応制御の一例のフローチャートを示す図である。
まず、機構制御部51は、通常制御で画像形成を開始させる(S201)。画像形成に用いた画像情報については、通常制御での画像形成後に逐一、主走査方向の特定部位における画像密度情報と頁数情報を取得する(S202)。
【0041】
そして、画像形成が連続する場合、主査方向の特定部位における、画像形成開始からの連続する画像密度の平均を演算し(S203)、連続画像平均密度を算出する。そして、特定部位における連続画像平均密度が所定値以下であり、且つ、連続頁数が所定頁数以上であるか否かを判断する(S204)。当該判断は、機構制御部51に内蔵されているメモリに予め記憶された値との対比に基づいて行われる。
【0042】
機構制御部51が、主走査方向の特定部位における連続画像平均密度が所定値以下であり、且つ、連続頁数が所定頁数以上であると判断した場合、機構制御部51は、現像装置60における現像バイアスを上昇させてVclnを増大させる(S205)。かかる制御によりクリーニングロール72のクリーニング(S206)が良好に実行されることについては実施の形態1と同様である。
【0043】
一方、機構制御部51が、上記特定部位における連続画像平均密度が所定値以上である、又は、連続頁数が所定頁数以下であると判断した場合、機構制御部51は、通常制御で画像形成を行う(S201)。以後、このような制御が繰り返される。
なお、S202において取得される画像密度情報としては、例えば、画像形成時におけるレーザ露光装置のレーザダイオードの点灯時間から得ることができる。また、S204における判断の基準としては、実施の形態1と同様の基準を採用することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本実施の形態を具体的に説明する。但し、本実施例は、本実施の形態を限定するものではない。
【0045】
[実施例1,比較例1]
以下のような基準で評価される感光体上カブリ(Grade)と、Vclnとの関係が図5のような関係となる、図1に示す画像形成装置1を構成した。
clnを、感光体上カブリが極小となる120Vに設定する条件(従来、通常採用される条件)とした場合を比較例1とした。また、同装置を用いてVclnを200Vに設定する条件とした場合を実施例1とした。
実施例1及び比較例1の場合において、ハーフトーン画像(画像密度3%)の連続印刷テストを行い、印刷枚数に対する用紙上の画像流れ発生の様子、及び印刷枚数に対する用紙上のカブリの様子を観察した。結果を表1に示した。
[感光体上カブリ]
Grade0(G0):カブリトナーは認められない。
Grade1(G1):25倍ルーペでカブリトナーが若干認められる。
Grade2(G2):25倍ルーペでカブリトナーが認められる。
Grade3(G3):目視でカブリトナーが若干認められる。
Grade4(G4):目視でカブリトナーが認められる。
Grade5(G5):全面にカブリ発生。
【0046】
【表1】

【0047】
[Kpv]
キロ・プリント・ボリュームの略。「5Kpv」は、5000枚印刷したことを示す。
[用紙上の画像流れ]
所定枚数の連続印刷テストを終えた時点での、用紙上に印刷された画像を目視にて評価した。評価基準を以下に示した。
○:画像流れの発生は無かった。
△:画像流れが若干発生したが、実用上問題の無い程度であった。
×:実用上問題のある程度において、画像流れが発生した。
[用紙上のカブリ]
所定枚数の連続印刷テストを終えた時点での、用紙上に印刷された画像を目視にて評価した。評価基準を以下に示した。
Grade0(G0):カブリの発生は無かった。
Grade1(G1):ルーペで確認可能な程度(目視では確認不可能な程度)においてカブリが発生した。
Grade2(G2):目視で確認可能なカブリが若干発生したが、実用上問題の無い程度であった。
Grade3(G3):実用上問題のある程度において、カブリが発生した。
【0048】
表1の結果から、Vcln値として120V(感光体カブリのGradeが極小となるVcln値。従来採用されている、通常の設定条件である。)が採用された比較例1の場合、印刷枚数が1万枚を超える頃から画像流れが観察されるようになり、感光体表面のクリーニングが不十分となっている様子が観察される。
一方、Vcln値として200Vが採用された実施例1の場合、印刷数が1万5千枚を超えても画像流れが観察されなかった。なお、Vcln値として200Vを採用する場合には感光体カブリが発生するものの(図5参照)、用紙上のカブリを目視で視認することはできなかった。つまり、実施例1においてはクリーニングロール72による感光体ドラム11表面の良好なクリーニング性(画像流れの抑止)が、用紙上に印刷される画像の品質を損なうことなく実現されていた。
【0049】
[実施例2]
実施例1で作成した画像形成装置1において、トナーの外添剤の粒径(キャリア粒径)毎に、Vclnと、以下の様な基準で評価されるBCOレベル(Grade)との関係を調べた。結果を図6に示した。
なお、BCOとはBead Carry Overの略であり、感光体表面にキャリアが転移する画像劣化現象を意味するものである。
[BCOレベル]
画像密度40%のハーフトーン画像をプリントアウトし評価した。評価基準を以下に示した。
Grade0(G0):BCOの発生は無かった。
Grade1(G1):BCOが若干発生したが、実用上問題の無い程度であった。
Grade2(G2):ハーフトーン画像で視認可能な程度にBCOが発生した。
Grade3(G3):実用上問題のある程度において、BCOが発生した。
Grade4(G4):BCOが激しく発生した。
【0050】
図6の結果から、現像剤に使用されるキャリアの粒径を調整することで、BCOの発生を抑制しつつVclnを制御可能な画像形成装置が実現されていることが読み取れる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施の形態を適用した画像形成装置のブロック構成図である。
【図2】クリーニングロールの断面構造を示した図である。
【図3】予め頁数情報を取得できる場合の、画像対応制御の一例のフローチャートを示す図である。
【図4】予め頁数情報を取得できない場合の、画像対応制御の一例のフローチャートを示す図である。
【図5】本実施例及び比較例で使用する画像形成装置が示す、感光体上のカブリ(Grade)と、Vclnとの関係を示す図である。
【図6】Vclnと、BCOレベル(Grade)との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1…画像形成装置、11…感光体ドラム、12…帯電ロール、13…レーザ露光装置、14…一次転写ロール、20…中間転写ベルト、30…二次転写部、31…二次転写ロール、40…定着装置、50…制御装置、51…機構制御部、60…現像装置、70…クリーニング装置、72…クリーニングロール、80…トナー補給装置、721…シャフト、722…弾性層、723…繊維層、P…用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、
取得された画像情報に応じて、前記帯電手段により帯電した前記像保持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、
前記被転写体にトナー像が転写された後の前記像保持体表面を、繊維布によって表面層が形成されたクリーニングロールによりクリーニングするクリーニング手段と、
前記画像情報が、主走査方向の特定部位においてトナー消費が予め設定された量に満たない所定条件の連続する画像情報である場合に、前記帯電手段の帯電バイアスと前記現像手段の現像バイアスとの差(Vcln)を増大させるように制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記特定部位における画像密度と連続頁数とによって予め定められた条件を前記所定条件として用いることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、メモリに予め格納されている前記所定条件を用いて画像形成前または画像形成途中に、主走査方向の特定部位においてトナー消費が予め設定された量に満たない画像であることを判断することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記現像バイアスを低下させることにより前記Vclnを増大させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記クリーニング手段は、前記クリーニングロールによるクリーニングの前に前記像担持体上の残留トナーを帯電する帯電器を備えたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、
取得された画像情報に応じて、前記帯電手段により帯電した前記像保持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、
前記被転写体にトナー像が転写された後の前記像保持体表面を、繊維布によって表面層が形成されたクリーニングロールによりクリーニングするクリーニング手段と、
前記画像情報が、主走査方向の特定部位においてトナー消費が予め設定された量に満たない所定条件の連続する画像情報である場合に、前記現像手段に前記像保持体上へ正帯電したトナーを供給させるように制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記特定部位における画像密度と連続頁数とによって予め定められた条件を前記所定条件として用いることを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、メモリに予め格納されている前記所定条件を用いて画像形成前または画像形成途中に、主走査方向の特定部位においてトナー消費が予め設定された量に満たない画像であることを判断することを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記現像バイアスを低下させることにより正帯電したトナーを像保持体上に供給することを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−40266(P2008−40266A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216154(P2006−216154)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】