説明

画像形成装置

【課題】 複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像を用紙等の被記録媒体に形成するに際して、ファイルの処理に多大な時間を割くことなく迅速にインデックス画像を形成可能な画像形成装置の提供。
【解決手段】 PDFのパターンなどの繰返し模様、または、透明データがファイルに含まれている場合(S39:YまたはS40:Y)、処理開始からのインデックス画像のデータの生成に費やされた時間が5分を超えた場合(S34:Y)、残メモリ容量が1MBを下回った場合などには(S35:Y)、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに代替画像のデータを生成する(S33)。このため、インデックス画像のデータの生成に時間のかかるファイルに対しては、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに代替画像のデータを生成して処理時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に画像を形成する画像形成装置に関し、詳しくは、複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像を被記録媒体に形成することのできる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、所定フォルダに記憶された複数のファイル(例えば、デジタルカメラで撮影した複数の写真)に対応する画像を、マトリックス状に配列したインデックス画像として用紙に形成する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−332985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、この種の装置でPDFファイルなど種々のファイルに対応するインデックス画像を形成する場合、ファイルを構成するデータによってはそのファイルの処理に使用者が想定する以上の時間がかかり、なかなかインデックス画像が形成されずに使用者に不満を抱かせる場合があった。
【0004】
そこで、本発明は、複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像を用紙等の被記録媒体に形成するに際して、ファイルの処理に多大な時間を割くことなく迅速にインデックス画像を形成可能な画像形成装置を提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達するためになされた本発明の画像形成装置は、複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像のデータを生成するインデックス画像生成手段と、該インデックス画像生成手段が生成したデータに基き被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、上記各ファイルに含まれる書体数を検出する書体数検出手段と、を備え、上記複数のファイルの中に、上記書体数検出手段に検出された書体数が第1の所定値を上回るファイルが存在したとき、上記インデックス画像生成手段は、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに、代替画像のデータを生成することを特徴としている。
【0006】
このように構成された本発明の画像形成装置では、複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像のデータをインデックス画像生成手段が生成し、その生成されたデータに基き、画像形成手段が、被記録媒体にインデックス画像を形成する。また、本発明の画像形成装置では、書体数検出手段が、上記各ファイルに含まれる書体数を検出し、その書体数検出手段に検出された書体数が第1の所定値を上回るファイルが上記複数のファイルの中に存在したとき、上記インデックス画像生成手段は、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに、代替画像のデータを生成する。
【0007】
このため、本発明の画像形成装置では、書体数が多く、インデックス画像のデータの生成に時間のかかるファイルに対しては、そのファイルに対応するインデックス画像のデータ代わりに代替画像のデータを生成して処理時間を短縮することができる。従って、複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像を被記録媒体に形成するに際して、ファイルの処理に多大な時間を割くことなく迅速にインデックス画像を形成することができる。
【0008】
また、本発明の画像形成装置は、複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像のデータを生成するインデックス画像生成手段と、該インデックス画像生成手段が生成したデータに基き被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、上記各ファイルに含まれる繰返し模様数を検出する繰返し模様数検出手段と、を備え、上記複数のファイルの中に、上記繰返し模様数検出手段に検出された繰返し模様数が第2の所定値を上回るファイルが存在したとき、上記インデックス画像生成手段は、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに、代替画像のデータを生成することを特徴とするものであってもよい。
【0009】
このように構成された本発明の画像形成装置では、複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像のデータをインデックス画像生成手段が生成し、その生成されたデータに基き、画像形成手段が、被記録媒体にインデックス画像を形成する。また、本発明の画像形成装置では、繰返し模様数検出手段が、上記各ファイルに含まれる繰返し模様(PDFファイルであれば「パターン」、その他、アプリケーションにより「ブラシ」「タイリング」などとも呼ばれる)の数を検出し、その繰返し模様数検出手段に検出された繰返し模様数が第2の所定値を上回るファイルが上記複数のファイルの中に存在したとき、上記インデックス画像生成手段は、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに、代替画像のデータを生成する。
【0010】
このため、本発明の画像形成装置では、繰返し模様数が多く、インデックス画像のデータの生成に時間のかかるファイルに対しては、そのファイルに対応するインデックス画像のデータ代わりに代替画像のデータを生成して処理時間を短縮することができる。従って、複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像を被記録媒体に形成するに際して、ファイルの処理に多大な時間を割くことなく迅速にインデックス画像を形成することができる。なお、本発明において、繰返し模様数とは、繰返し模様の形成が指示された箇所の数であっても、繰返し模様の種類の数であってもよく、ファイル処理に要する時間との関係に応じて適宜選択することができる。
【0011】
更に、本発明の画像形成装置は、複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像のデータを生成するインデックス画像生成手段と、該インデックス画像生成手段が生成したデータに基き被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、上記各ファイルに含まれる透明データ数を検出する透明データ数検出手段と、を備え、上記複数のファイルの中に、上記透明データ数検出手段に検出された透明データ数が第3の所定値を上回るファイルが存在したとき、上記インデックス画像生成手段は、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに、代替画像のデータを生成することを特徴とするものであってもよい。
【0012】
このように構成された本発明の画像形成装置では、複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像のデータをインデックス画像生成手段が生成し、その生成されたデータに基き、画像形成手段が、被記録媒体にインデックス画像を形成する。また、本発明の画像形成装置では、透明データ数検出手段が、上記各ファイルに含まれる透明データの数を検出し、その透明データ数検出手段に検出された透明データ数が第3の所定値を上回るファイルが上記複数のファイルの中に存在したとき、上記インデックス画像生成手段は、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに、代替画像のデータを生成する。
【0013】
このため、本発明の画像形成装置では、透明データ数が多く、インデックス画像のデータの生成に時間のかかるファイルに対しては、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに代替画像のデータを生成して処理時間を短縮することができる。従って、複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像を被記録媒体に形成するに際して、ファイルの処理に多大な時間を割くことなく迅速にインデックス画像を形成することができる。
【0014】
また更に、本発明の画像形成装置は、複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像のデータを生成するインデックス画像生成手段と、該インデックス画像生成手段が生成したデータに基き被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、上記各ファイルに含まれるイメージ数を検出するイメージ数検出手段と、を備え、上記複数のファイルの中に、上記イメージ数検出手段に検出されたイメージ数が第4の所定値を上回るファイルが存在したとき、上記インデックス画像生成手段は、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに、代替画像のデータを生成することを特徴とするものであってもよい。
【0015】
このように構成された本発明の画像形成装置では、複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像のデータをインデックス画像生成手段が生成し、その生成されたデータに基き、画像形成手段が、被記録媒体にインデックス画像を形成する。また、本発明の画像形成装置では、イメージ数検出手段が、上記各ファイルに含まれるイメージの数を検出し、そのイメージ数検出手段に検出されたイメージ数が第4の所定値を上回るファイルが上記複数のファイルの中に存在したとき、上記インデックス画像生成手段は、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに、代替画像のデータを生成する。
【0016】
このため、本発明の画像形成装置では、イメージ数が多く、インデックス画像のデータの生成に時間のかかるファイルに対しては、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに代替画像のデータを生成して処理時間を短縮することができる。従って、複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像を被記録媒体に形成するに際して、ファイルの処理に多大な時間を割くことなく迅速にインデックス画像を形成することができる。
【0017】
また、本発明は、以下の構成に限定されるものではないが、上記いずれかの画像形成装置において、上記インデックス画像生成手段がデータ生成に費やした時間を計時する第1の計時手段を、更に備え、該第1の計時手段に計時された時間が第1の所定時間を上回ったとき、上記インデックス画像生成手段は、残りの全てのファイルに対して代替画像のデータを生成してもよい。
【0018】
この場合、インデックス画像生成手段がデータ生成に費やした全体としての処理時間が第1の所定時間を上回ったときは、残りの全てのファイルに対して代替画像を形成して処理時間を一層短縮することができる。
【0019】
また、上記いずれかの画像形成装置において、上記インデックス画像生成手段が1ファイル当りのデータ生成に費やした時間を計時する第2の計時手段を、更に備え、該第2の計時手段に計時された時間が第2の所定時間を上回ったとき、上記インデックス画像生成手段は、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに、代替画像のデータを生成してもよい。
【0020】
この場合、1つのファイルに対するインデックス画像の生成に、インデックス画像生成手段が第2の所定時間を上回る時間を要する場合は、そのファイルに対してインデックス画像の代わりに代替画像を形成して処理時間を一層短縮することができる。
【0021】
また、上記いずれかの画像形成装置において、上記インデックス画像生成手段が生成したデータを記憶するメモリと、該メモリに残されたメモリ容量を検出する残メモリ容量検出手段と、を更に備え、該残メモリ容量検出手段に検出されたメモリ容量が所定容量を下回ったとき、上記インデックス画像生成手段は、残りの全てのファイルに対して代替画像のデータを生成してもよい。
【0022】
この場合、インデックス画像生成手段が生成したデータをメモリが記憶して行く過程で、そのメモリに残されたメモリ容量が少なくなった場合は、残りのファイルに対してインデックス画像のデータの代わりに代替画像のデータを生成してメモリ容量を確保することができる。
【0023】
また、上記いずれかの画像形成装置において、上記代替画像の形態を設定する代替画像設定手段を、更に備えてもよい。この場合、代替画像設定手段にて代替画像の形態を設定することにより、使用者の所望などに応じた代替画像を、インデックス画像の代わりに形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[実施の形態の全体構成]
次に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明が適用されたプリントシステムの構成を表す外観図である。図1に示すように、本実施の形態のプリントシステムは、画像形成装置の一例としてのカラーレーザプリンタ(以下、単にプリンタという)1と、そのプリンタ1にケーブル200を介して接続されたプリンタ制御装置の一例としてのパーソナルコンピュータ(以下、単にパソコンという)300とから構成されている。なお、プリンタ1とパソコン300とは、LANなどのネットワークや、赤外線通信などを介して接続されていてもよい。
【0025】
プリンタ1は、イエロー,マゼンタ,シアン,及びブラックのトナーにて電子写真方式によって画像を形成する画像形成手段の一例としての周知のプリンタエンジン2(図2参照)を内部に備え、このプリンタエンジン2は、収容トレイ3に収容された被記録媒体の一例としての用紙P(図4参照)に1枚ずつ画像を形成してスタッカ4へ排出する。また、プリンタ1の表面には、各種設定や指示を行うための操作パネル5が設けられている。
【0026】
図2は、このプリントシステムにおける制御系の構成を表すブロック図である。図2に示すように、パソコン300のパソコン本体310は、CPU311、ROM312、RAM313、及び、ハードディスク装置(HDD)314を備えている。そして、このパソコン本体310には、CRT等のディスプレイ320、キーボード330、マウス340が接続されている(いずれも図1参照)。更に、パソコン本体310には、USBメモリ900を装着可能なUSBポート350、及び、プリンタ1と接続するためのプリンタポートインタフェース(プリンタポートI/F)360も接続されている。
【0027】
プリンタ1には、前述のプリンタエンジン2等を制御する制御部10が筐体内に設けられ、この制御部10は、CPU10A,ROM10B,RAM10Cを備えたマイクロコンピュータとして構成されている。また、制御部10は、電源スイッチが切られても記憶内容が消えないようにされたNVRAM10D、及び、処理時間等を計時するタイマ10Eも備えている。更に、この制御部10には、前述のプリンタエンジン2,操作パネル5の他、ケーブル200を介してパソコン300と接続するためのプリンタポートインタフェース(プリンタポートI/F)11、及び、USBメモリ900を装着可能なUSBポート12などが接続されている。
【0028】
[プリンタによるインデックス印刷処理]
次に、プリンタ1の制御部10が実行するインデックス印刷処理について説明する。パソコン300から、インデックス印刷を指示するコマンドと共に複数のファイル(1つのフォルダに収納されていてもよい)が送信されると、制御部10のCPU10Aは、ROM10Bに記憶されたプログラムに基き、次のようなインデックス印刷処理を実行する。なお、制御部10は、複数のファイルを記憶したUSBメモリ900がUSBポート12に装着され、そのUSBメモリ900に記憶された各ファイルをインデックス印刷する旨の指示が操作パネル5に入力された場合も、同様のインデックス印刷処理を実行する。
【0029】
図3は、そのインデックス印刷処理のメインルーチンを表すフローチャートである。処理が開始されると、先ずS1(Sはステップを表す:以下同様)にて、インデックス画像の列及び行を表す変数i,jが0にセットされ、残り全てのファイルに対する代替処理を指示するフラグEXがFALSEに設定される。続くS2では、上記インデックス印刷が指示されたファイルの数がデータ数DNとして取得され、更に、その時点でタイマ10Eが計時している時刻Time()が処理開始時刻STとして取得される。なお、時刻Time()は、実際の年月日時分秒等であってもよく、プリンタ1の電源投入時等からの経過時間であってもよい。なお、インデックス印刷は、図4に示すように、n行m列にインデックス画像が配置されて印刷される。
【0030】
続くS3では、DN=0であるか否かが判断されるが、通常、処理開始時にはDN≠0であるため(S3:N)、処理はS5へ移行する。S5では、上記フラグEXがTRUEであるか否かが判断されるが、処理開始時にはS1にてEX=FALSEに設定されているため(S5:N)、処理はS6へ移行する。
【0031】
S6では、その時点の(i,j)に対応するファイルが参照され、そのファイルの拡張子などに基いてそのファイルがイメージのみのファイルであるか否か、例えば、「.tif」「.bmp」等の拡張子を持つファイルであるか否かが判断される。イメージのみのファイルである場合は(S6:Y)、S7にて、その(i,j)のファイルに対応するインデックス画像(例えば、元の画像からドットを間引いて作成した縮小画像)のデータを生成する(i,j)インデックス処理がなされ、続くS8にて、変数iが1つインクリメントされると共にデータ数DNが1つデクリメントされる。続くS11では、変数iが定数mよりも小さいか否か、すなわち、図4において、一番右端に配置されるインデックス画像の処理が済んだか否かが判断され、i<mの場合は(S11:Y)、処理は前述のS3へ移行する。なお、定数mは、1行に配置されるインデックス画像の数mに設定されている。
【0032】
ここで、インデックス印刷が指示されたファイルが全てイメージのみのファイルであるとすると(S6:Y)、前述のS3〜S11の処理を繰り返しながら変数iがインクリメントされ、i=mとなると(S11:N)、すなわち、m個のインデックス画像が処理されると、処理はS12へ移行する。S12では、次の行の処理のために変数jが1つインクリメントされると共に変数iが0にセットされる。続くS13では、変数jが定数nよりも小さいか否かが判断され、j<n、すなわち、全ての行の処理が完了していない場合には(S13:Y)、処理は前述のS3へ移行する。なお、定数nは、印字用紙中の行数nに設定されている。
【0033】
こうして、n行m列のインデックス画像のデータが生成されると、j=nとなり(S13:N)、S14による印刷処理が実行されて処理が終了する。すると、図4(A)に例示するように、プリンタエンジン2を介して用紙Pにn行m列のインデックス画像が印刷(形成)される。また、n行m列全てのインデックス画像のデータが生成される前に(S11:YまたはS13:Y)、DN=0となると(S3:Y)、それ以上印刷すべきファイルが存在しないので、処理はそのままS14へ移行し、それまでに生成されたインデックス画像のデータがn行m列の形式で用紙Pに印刷される。
【0034】
一方、前述のS3〜S13の処理が繰り返される間に、(i,j)に対応するファイルがイメージのみのファイルでないと判断された場合は(S6:N)、S30にて次のような(i,j)データ展開処理が実行された後、処理は前述のS8へ移行する。
【0035】
図5は、図3に示すS30の(i,j)データ展開処理を詳細に表すフローチャートである。図5に示すように、この処理では、先ずS31にて、次のようなコマンド処理前チェックが実行される。なお、このコマンド処理前チェックとは、ファイルのコンテンツ(内容)を直接チェックする処理ではなく、ファイルに添付された情報、例えば、PDFファイルの場合におけるリソース情報等をチェックする処理である。
【0036】
すなわち、PDFファイルの印刷データは、図6に例示するように、書体数の一例としてのフォント数,イメージ数,繰返し模様数としてのパターン数(他のアプリケーションでは「ブラシ」「タイリング」などとも呼ばれる)などが書き込まれたリソース情報と、パターンコマンド,透明コマンド等を含むコンテンツとしての印刷コマンドデータとから構成されている。本実施の形態におけるコマンド処理前チェックは、例えば、(i,j)に対応するファイルがPDFファイルである場合、上記リソース情報をチェックする処理である。
【0037】
図7は、このコマンド処理前チェックの処理を詳細に表すフローチャートである。図7に示すように、このコマンド処理前チェックでは、先ずS301にて、そのファイルに対する代替処理を指示するフラグDOC_CHKがFALSEに設定される。続くS302では、PDFファイルのリソース情報などに基づき、(i、j)に対応するファイル(以下、(i,j)印刷データともいう)のイメージ数IMGが取得される。続くS303では、S302にて取得されたイメージ数IMGが、第4の所定値の一例としての上限値IMG_LIMIT(ここでは「5」とする)を超えたか否かが判断される。
【0038】
IMG≦5の場合は(S303:N)、S305にて、PDFファイルのリソース情報などに基づき、(i,j)印刷データの書体数FONTが取得される。続くS306では、S305にて取得された書体数FONTが、第1の所定値の一例としての上限値FONT_LIMIT(ここでは「20」とする)を超えたか否かが判断される。
【0039】
FONT≦20の場合は、(S306:N)、S307にて、PDFファイルのリソース情報などに基づき、(i,j)印刷データの繰返し模様数(例えば、PDFファイルであればパターン数)PTNが取得される。続くS308では、S307にて取得された繰返し模様数PTNが、第2の所定値の一例としての上限値PTN_LIMIT(ここでは「0」とする)を超えたか否かが判断される。
【0040】
PTN=0の場合は(S308:N)、S309にて、PDFファイルのリソース情報などに基づき、(i,j)印刷データの透明データ数TPNが取得される。続くS311では、S309にて取得された透明データ数TPNが、第3の所定値の一例としての上限値TPN_LIMIT(ここでは「0」とする)を超えたか否かが判断される。
【0041】
TPN=0の場合は(S311:N)、処理はそのまま図5のS32へ移行する。一方、S303,S306,S308,S311のいずれかで肯定判断された場合は、S312にて上記フラグDOC_CHKがTRUEにセットされた後、処理は図5のS32へ移行する。すなわち、S31のコマンド処理前チェックでは、(i,j)印刷データのイメージ数IMGが5以下で(S303:N)、書体数FONTが20以下で(S306:N)、繰返し模様数PTNが0で(S308:N)、かつ、透明データ数TPNが0の場合は(S311:N)、上記フラグDOC_CHKがFALSEに設定され(S301)、それ以外の場合はDOC_CHKがTRUEに設定される(S312)。
【0042】
S32では、上記フラグDOC_CHKがTRUEに設定されているか否かが判断され、DOC_CHK=TRUEの場合は(S32:Y)、S33にて代替処理が実行された後、処理は前述のS8へ移行して次のファイルの処理等がなされる。ここで、代替処理とは、(i,j)に対応するファイルのインデックス画像のデータの代わりに、より簡単な代替画像のデータを生成する処理であり、処理の詳細は後に説明する。
【0043】
一方、DOC_CHK=FALSEの場合は(S32:N)、S34にて、現在の時刻Time()から前述の処理開始時刻ST(S2参照)を引いた値、すなわちインデックス印刷処理開始からの経過時間が第1の所定時間の一例としての上限値TIME_LIMIT(ここでは5分とする)を超えたか否かが判断される。Time()−STが5分以下の場合は(S34:N)、続くS35にて、RAM10Cの残メモリ容量が所定容量の一例としての下限値MEM_LIMIT(ここでは1MBとする)を下回ったか否かが判断される。すなわち、本処理によって生成されたインデックス画像のデータは、印刷処理(S14)が完了するまでメモリの一例としてのRAM10Cの所定領域に記憶されるが、S35ではその所定領域の残メモリ容量が1MBを下回ったか否かが判断されるのである。
【0044】
上記残メモリ容量が1MB以上である場合は(S35:N)、処理はS37へ移行し、(i,j)印刷データの1つのコマンドが展開しながら取得される。続くS38では、(i,j)印刷データにS37で取得すべきコマンドがあったか否かが判断される。処理が初めてこのS37,S38へ移行したときは、(i,j)印刷データのコマンドが既に1つも残らず取得され終わっているといったことはあり得ないので、コマンドありと判断されて(S38:Y)、処理はS39へ移行する。S39では、その取得されたコマンドが繰返し模様のコマンドであるか否かが判断される。繰返し模様のコマンドである場合は(S39:N)、処理は前述のS33へ移行して代替処理が実行され、繰返し模様のコマンドでない場合は(S39:N)、処理はS40へ移行する。S40では、S37にて取得されたコマンドが透明コマンドであるか否かが判断され、透明コマンドである場合は(S40:Y)、処理は前述のS33へ移行し、透明コマンドでない場合は(S40:N)、処理は続くS41へ移行する。
【0045】
S41では、S37にて取得されたコマンドに対する処理が実行され、処理は前述のS34へ移行する。こうして、S34〜S41の処理が繰り返されることにより、(i,j)印刷データのコマンドが順次展開される。そして、全てのコマンドが展開されると、S38にてコマンドなしと判断されて(S38:N)、処理は前述のS8へ移行する。この場合は、展開された(i,j)印刷データの全てのコマンドに基き、そのファイルのインデックス画像のデータが通常通り生成される。
【0046】
一方、S34〜S41の処理が繰り返される間に、繰返し模様のコマンドまたは透明コマンドが展開されると(S39:YまたはS40:Y)、S33による代替処理が実行される。また、S34〜S41の処理が繰り返される間に、Time()−STが5分を超えるか(S34:Y)、若しくは残メモリ容量が1MBを下回ると(S35:Y)、S42にて前述のフラグEXがTRUEに設定され、処理は前述のS33へ移行する。
【0047】
S42にてフラグEXがTRUEに設定されると、残りの全てのファイルに対してS5にて肯定判断がなされ、S50によりS33と同様の代替処理が実行されて、処理は前述のS8へ移行する。すると、例えば、図4(B)に例示するように、矢印で示した位置のファイルからEX=TRUEに設定されたとすると(S42)、残りの全てのファイルに対して代替画像(図4(B)にハッチングで表示)が形成されることになる(S33,S50)。
【0048】
図8は、S33,S50の代替処理を詳細に表すフローチャートである。この処理では、先ずS51にて、予め操作パネル5またはパソコン300にて設定された代替処理モードMODEが取得される。続くS52では、その代替処理モードMODEが「代用」であるか否かが判断され、「代用」である場合は(S52:Y)、S53にて文字による代用画像が展開されて処理は前述のS8へ移行する。ここで、文字による代用画像とは、図9(A)に例示するような通常のインデックス画像に対して、図9(B)に例示するようにファイルの形式を文字で表したのみの代替画像をいう。
【0049】
一方、代替処理モードMODEが「代用」でない場合は(S52:N)、S54にて、代替処理モードMODEが「マーク」であるか否かが判断される。代替処理モードMODEが「マーク」である場合は(S54:Y)、S55にてマークデータが展開されて処理は前述のS8へ移行する。マークデータとは、図9(C)に例示するように、それまでにS41等で展開されたコマンドに対応するインデックス画像(全くコマンドが展開されていない場合は空白)に、画像が完全でないことを表す網掛けを施した画像のデータである。なお、このマークデータも代替画像のデータの1形態である。
【0050】
更に、代替処理モードMODEが「マーク」にも設定されていない場合は(S54:N)、そのままS8へ移行する。すると、その(i,j)のファイルに対応するインデックス画像として、それまでにS41等で展開されたコマンドに対応するインデックス画像(全くコマンドが展開されていない場合は空白)のデータが生成される。なお、このデータも代替画像のデータの1形態である。
【0051】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、(i,j)に対応するファイルに5個以上のイメージが含まれている場合(S303:Y)、20個以上の書体が含まれている場合(S306:Y)、或いは、PDFのパターンなどのような繰返し模様、または、透明データが1個でも含まれている場合には(S308:Y,S311:Y,S39:Y,またはS40:Y)、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに代替画像のデータを生成している(S33,S50)。このため、本実施の形態では、インデックス画像のデータの生成に時間のかかるファイルに対しては、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに代替画像のデータを生成して処理時間を短縮することができる。従って、複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像を用紙Pに形成するに際して、ファイルの処理に多大な時間を割くことなく迅速にインデックス画像を形成することができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、繰返し模様が1個でも含まれれば代替処理を実行しているが、繰返し模様数が2以上の所定値以上であった場合に代替処理を実行する場合(すなわちPTN_LIMITが1以上の値に設定された場合)、繰返し模様数とは、繰返し模様の形成が指示された箇所の数であっても、繰返し模様の種類の数であってもよく、ファイル処理に要する時間との関係に応じて適宜選択することができる。
【0053】
更に、本実施の形態では、処理開始からのインデックス画像のデータの生成に費やされた時間が5分を超えた場合や(S34:Y)、残メモリ容量が1MBを下回った場合には(S35:Y)、残りの全てのファイルに対して代替画像のデータを生成している(S42,S33,S50)。このため、処理時間を一層短縮すると共に、メモリ容量を良好に確保することができる。
【0054】
なお、上記実施の形態において、S7,S33,S41,S50の処理がインデックス画像生成手段に、S305の処理が書体数検出手段に、S307の処理が繰返し模様数検出手段に、S309の処理が透明データ数検出手段に、S302の処理がイメージ数検出手段に、タイマ10E及びS2,S34の処理が第1の計時手段に、S35の処理が残メモリ容量検出手段に、S51の処理が代替画像設定手段に、それぞれ相当する。
【0055】
[他の実施の形態]
また、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、上記構成に加えて、1つのファイルに対するインデックス画像のデータ生成に要した時間が所定時間を上回ったときにも、代替処理を実行するようにしてもよい。
【0056】
図10は、そのような実施の形態の処理を表すフローチャートである。なお、本実施の形態は、上記実施の形態の図5の処理において、S32とS34との間にS132の処理を、S40とS41との間にS140,S141の処理を、それぞれ挿入した点において異なり、それ以外は上記実施の形態と同様であるので、相違点についてのみ説明する。
【0057】
(i,j)データ展開処理(S30)のコマンド処理前チェック(S31)においてDOC_CHKがFALSEと設定されたままS32へ処理が移行すると、S32で否定判断されて処理はS132へ移行し、その時点の時刻Time()がタイマ値Startとして取得され、処理は前述のS34へ移行する。そして、前述のS34〜S39の処理を経由してS40へ移行し、ここでも否定判断されると、S140にて、その時点の時刻Time()がタイマ値Nowとして取得され、続くS141にて、そのタイマ値Nowが、第2の所定時間の一例としての所定値TIME_LIMIT2をタイマ値Startに加算した値よりも大きいか否かが判断される。そして、Now>Start+TIME_LIMIT2の場合は(S141:Y)、処理は前述のS33へ移行して代替処理が実行され、Now≦Start+TIME_LIMIT2の場合は(S141:N)、処理は前述のS41へ移行して印刷データのコマンド処理が実行されるのである。
【0058】
この場合、(i,j)印刷データに透明コマンドが含まれていた場合(S40:Y)など前述の各種場合に加えて、その(i,j)印刷データをコマンドに展開してインデックス画像のデータを生成するためにTIME_LIMIT2以上の時間が費やされた場合にも(S141:Y)、代替処理(S33)が実行される。このため、インデックス画像のデータの生成に時間のかかるファイルに対して、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに代替画像のデータを生成して処理時間を短縮することが、一層良好に実行できる。なお、本実施の形態において、タイマ10E及びS132,S140の処理が第2の計時手段に相当する。
【0059】
なお、代替画像にも上記以外に種々の形態が考えられ、例えば、透明処理を無視して形成した画像や、全ての文字をデフォルトの書体で形成した画像などが考えられる。更に、代替画像としては、「データが大きすぎるためインデックス画像の生成を中断しました」などといったデフォルトの文字列を表示するだけであってもよい。但し、上記実施の形態のように、使用者に設定された代替処理モードMODEに基いて代替画像を形成する場合、使用者の所望などに応じた代替画像を、インデックス画像の代わりに形成することができる。更に、本発明は、画像形成手段の構成を特に限定するものではなく、インクジェットプリンタ等の画像形成装置にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明が適用されたプリントシステムの構成を表す外観図である。
【図2】そのプリントシステムの制御系の構成を表すブロック図である。
【図3】その制御系で実行されるインデックス印刷処理のメインルーチンを表すフローチャートである。
【図4】そのインデックス印刷処理による印刷結果を例示する説明図である。
【図5】上記インデックス印刷処理の(i,j)データ展開処理を詳細に表すフローチャートである。
【図6】PDFファイルの構成を例示する説明図である。
【図7】上記(i,j)データ展開処理のコマンド処理前チェックの処理を詳細に表すフローチャートである。
【図8】上記インデックス印刷処理の代替処理を詳細に表すフローチャートである。
【図9】その代替処理による印刷結果を例示する説明図である。
【図10】上記(i,j)データ展開処理の変形例を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1…プリンタ 2…プリンタエンジン 5…操作パネル
10…制御部 10A…CPU 10B…ROM
10E…タイマ 12…USBポート 300…パソコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像のデータを生成するインデックス画像生成手段と、
該インデックス画像生成手段が生成したデータに基き被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
上記各ファイルに含まれる書体数を検出する書体数検出手段と、
を備え、
上記複数のファイルの中に、上記書体数検出手段に検出された書体数が第1の所定値を上回るファイルが存在したとき、上記インデックス画像生成手段は、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに、代替画像のデータを生成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像のデータを生成するインデックス画像生成手段と、
該インデックス画像生成手段が生成したデータに基き被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
上記各ファイルに含まれる繰返し模様数を検出する繰返し模様数検出手段と、
を備え、
上記複数のファイルの中に、上記繰返し模様数検出手段に検出された繰返し模様数が第2の所定値を上回るファイルが存在したとき、上記インデックス画像生成手段は、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに、代替画像のデータを生成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像のデータを生成するインデックス画像生成手段と、
該インデックス画像生成手段が生成したデータに基き被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
上記各ファイルに含まれる透明データ数を検出する透明データ数検出手段と、
を備え、
上記複数のファイルの中に、上記透明データ数検出手段に検出された透明データ数が第3の所定値を上回るファイルが存在したとき、上記インデックス画像生成手段は、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに、代替画像のデータを生成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
複数のファイルにそれぞれ対応するインデックス画像のデータを生成するインデックス画像生成手段と、
該インデックス画像生成手段が生成したデータに基き被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
上記各ファイルに含まれるイメージ数を検出するイメージ数検出手段と、
を備え、
上記複数のファイルの中に、上記イメージ数検出手段に検出されたイメージ数が第4の所定値を上回るファイルが存在したとき、上記インデックス画像生成手段は、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに、代替画像のデータを生成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
上記インデックス画像生成手段がデータ生成に費やした時間を計時する第1の計時手段を、更に備え、
該第1の計時手段に計時された時間が第1の所定時間を上回ったとき、上記インデックス画像生成手段は、残りの全てのファイルに対して代替画像のデータを生成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
上記インデックス画像生成手段が1ファイル当りのデータ生成に費やした時間を計時する第2の計時手段を、更に備え、
該第2の計時手段に計時された時間が第2の所定時間を上回ったとき、上記インデックス画像生成手段は、そのファイルに対応するインデックス画像のデータの代わりに、代替画像のデータを生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
上記インデックス画像生成手段が生成したデータを記憶するメモリと、
該メモリに残されたメモリ容量を検出する残メモリ容量検出手段と、
を更に備え、
該残メモリ容量検出手段に検出されたメモリ容量が所定容量を下回ったとき、上記インデックス画像生成手段は、残りの全てのファイルに対して代替画像のデータを生成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
上記代替画像の形態を設定する代替画像設定手段を、更に備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−54232(P2008−54232A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231041(P2006−231041)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】